(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034494
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
E03D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140751
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】石見 亘
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠也
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039AD01
2D039DB00
2D039DB06
(57)【要約】
【課題】リム吐水の静穏性及びリム吐水によるボウル部の洗浄性能を向上できる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器は、リム部からボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水口部48と、リム部内においてリム吐水口部まで延びるリム通水路46と、リム通水路内に設けられるガイド部50とを備え、ガイド部は、リム通水路の入口部と対向する位置に設けられ且つリム通水路の底面から上方に隆起するように形成されると共に、ガイド部は、底面から立ち上がるように形成されると共に上記リム部内において上記ガイド部の側方を通る側方流路53を形成する側壁52と、ガイド部の上部からリム通水路の下流側に向けて下方に傾斜する下り傾斜部54とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、上記汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、
上記リム部から上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水口部と、
上記リム部内において上記リム吐水口部まで延びるリム通水路と、
上記リム通水路内に設けられるガイド部と、を備え、
上記ガイド部は、上記リム通水路の入口部と対向する位置に設けられ且つ上記リム通水路の底面から上方に隆起するように形成されると共に、
上記ガイド部は、上記底面から立ち上がるように形成されると共に上記リム部内において上記ガイド部の側方を通る側方流路を形成する側壁と、
上記ガイド部の上部から上記リム通水路の下流側に向けて下方に傾斜する下り傾斜部と、を備えることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記下り傾斜部は、上記リム通水路の下流側に向かうにつれて幅が狭くなるように形成される、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記下り傾斜部は、上記リム通水路の底面側領域まで延びている、請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記下り傾斜部は、上記ガイド部の上部から延びる第1傾斜部と、上記第1傾斜部から延びると共に上記第1傾斜部よりさらに下方に向けて傾斜する第2傾斜部とを備えている、請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記ガイド部は、さらに、上記入口部と対向する位置に設けられ且つ上記底面から上記リム通水路の下流側に向けて上方に傾斜する上り傾斜部を備えている、請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記ガイド部の上記下り傾斜部は、上面視で、上記上り傾斜部よりも長い、請求項5に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記ガイド部は、さらに、その上部に形成された平坦部を備える、請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項8】
上記ガイド部の上記下り傾斜部は、側面視で、上記上り傾斜部よりも緩やかな傾斜に形成される、請求項5に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1乃至特許文献4に記載されているように、水洗大便器において、リム部の内部にリム通水路が形成され、リム通水路の下流側のリム吐水口に導かれた洗浄水が後方に向けて吐水されるものが知られている。
【0003】
ここで、特許文献1においては、リム導水路の上流側導水路に形成された絞り部により洗浄水の流速を上昇させ、絞り部よりも下流側に溜まった空気を撹拌することが開示されている。また、特許文献2においては、リム通水路に形成されたガイド壁部により洗浄水以外のエア空間を減らし、リム通水路内全体の容積空間を低減させることが開示されている。特許文献3においては、リム導水路内のガイド壁部の上部に段部が形成され、洗浄水が段部上の上部空間においても回転するような乱れた状態の流れを形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-272114号公報
【特許文献2】特開2019-27138号公報
【特許文献3】特開2019-49118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように上述した特許文献1乃至3に記載されているような水洗大便器においては、リム吐水時の洗浄水の空気による異音の発生を抑制するためリム通水路内の上部空気を撹拌するように洗浄水をリム通水路内のガイド壁部等を通過させること等が検討された。
しかしながら、洗浄水がこのようなリム通水路内のガイド壁部等を通過させるとき、洗浄水の圧力損失が比較的大きくなり、リム吐水口から吐水させる洗浄水の流速が落ち、リム吐水によるボウル部の洗浄力が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、リム吐水の静穏性及びリム吐水によるボウル部の洗浄性能を向上できる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施形態は、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、上記汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、上記リム部から上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水口部と、上記リム部内において上記リム吐水口部まで延びるリム通水路と、上記リム通水路内に設けられるガイド部と、を備え、上記ガイド部は、上記リム通水路の入口部と対向する位置に設けられ且つ上記リム通水路の底面から上方に隆起するように形成されると共に、上記ガイド部は、上記底面から立ち上がるように形成されると共に上記リム部内において上記ガイド部の側方を通る側方流路を形成する側壁と、上記ガイド部の上部から上記リム通水路の下流側に向けて下方に傾斜する下り傾斜部と、を備えることを特徴としている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ガイド部は、上記底面から立ち上がるように形成されると共に上記リム部内において上記ガイド部の側方を通る流路を形成する側壁と、上記ガイド部の上部から上記リム通水路の下流側に向けて下方に傾斜する下り傾斜部と、を備える。これにより、ガイド部により洗浄水の一部をリム通水路内の上方に導き、リム通水路内の上部の空気を洗浄水と共に下流側に抜きやすくすると共に、上記ガイド部の上部まで上昇した洗浄水が下り傾斜部により下方に導かれ、ガイド部を越える洗浄水の圧力損失を抑制できると共に、下り傾斜部により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、ガイド部の側方を通る側方流路からの洗浄水とスムーズに合流できる。従って、洗浄水がリム通水路を通過する際に空気が比較的大きな塊として排出されることにより生じる音を低減できると共にリム吐水の流速を落ちにくくできる。よって、水洗大便器のリム吐水の静穏性及びリム吐水によるボウル部の洗浄性能を向上できる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記下り傾斜部は、上記リム通水路の下流側に向かうにつれて幅が狭くなるように形成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記下り傾斜部は、上記リム通水路の下流側に向かうにつれて幅が狭くなるように形成されるので、上記ガイド部を越えた洗浄水が下り傾斜部により下方に導かれる際に洗浄水の流速を増加させ、ガイド部の側方を通る側方流路からの洗浄水とスムーズに合流できると共に合流後の洗浄水の流れを導きやすくできる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記下り傾斜部は、上記リム通水路の上記底面側領域まで延びている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記下り傾斜部は、上記リム通水路の上記底面側領域まで延びている。これにより、ガイド部を越えた洗浄水が下り傾斜部により底面側領域まで導かれることができ、ガイド部を越える洗浄水の圧力損失をより抑制できると共にガイド部の側方を通る側方流路からの洗浄水とスムーズに合流できる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記下り傾斜部は、上記ガイド部の上部から延びる第1傾斜部と、上記第1傾斜部から延びると共に上記第1傾斜部よりさらに下方に向けて傾斜する第2傾斜部とを備えている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記下り傾斜部は、上記ガイド部の上部から延びる第1傾斜部と、上記第1傾斜部から延びると共に上記第1傾斜部よりさらに下方に傾斜する第2傾斜部とを備えている。これにより、第1傾斜部に沿って流下する洗浄水の一部が第1傾斜部から下流側の空間に飛び出すように流れることができ、この飛び出すような流れの下方に、上記ガイド部の側方を通る流路からの流れが流入しやすくできる。従って、第1傾斜部からの洗浄水の流れと、ガイド部の側方を通る流路からの洗浄水の流れとをよりスムーズに合流させやすくできる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記ガイド部は、さらに、上記入口部と対向する位置に設けられ且つ上記底面から上記リム通水路の下流側に向けて上方に傾斜する上り傾斜部を備えている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ガイド部の上り傾斜部により、入口部から流入した洗浄水をガイド部の上部まで上昇させやすくでき、リム通水路内の上部の空気を洗浄水と共に下流側に比較的細かい塊により抜きやすくすると共に、ガイド部の上部まで上昇する洗浄水の圧力損失を抑制できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記ガイド部の上記下り傾斜部は、上面視で、上記上り傾斜部よりも長い。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ガイド部の上記下り傾斜部は、上面視で、上記上り傾斜部よりも長い。これにより、上り傾斜部により導かれる洗浄水の乱れを抑制すると共に、下り傾斜部により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、下り傾斜部に沿った方向の流れを形成しやすくでき、ガイド部の側方を通る流路からの洗浄水とよりスムーズに合流しやすくできる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記ガイド部は、さらに、その上部に形成された平坦部を備える。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ガイド部は、さらに、その上部に形成された平坦部を備えるので、上記ガイド部の上部まで上昇した洗浄水が平坦部に沿って流れやすくでき、洗浄水がこの上部から剥離することを抑制でき、洗浄水の流れが乱れて圧力損失を生じることを抑制できる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記ガイド部の上記下り傾斜部は、側面視で、上記上り傾斜部よりも緩やかな傾斜に形成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ガイド部の上記下り傾斜部は、側面視で、上記上り傾斜部よりも緩やかな傾斜に形成される。これにより、洗浄水が比較的急な上り傾斜部により比較的短時間に上昇されて上り傾斜部により導かれる洗浄水の乱れが抑制されると共に、下り傾斜部により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、洗浄水が比較的長い時間にわたって下り傾斜部に沿って流れ、下り傾斜部に沿った方向の流れが形成しやすくされ、ガイド部の側方を通る側方流路からの洗浄水とスムーズに合流しやすくできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水洗大便器によれば、リム吐水の静穏性及びリム吐水によるボウル部の洗浄性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム部の上部を省略した状態でリム通水路の内部及びガイド部を示す概略斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム部の上部を省略した状態でリム通水路の内部及びガイド部を上方から見た状態を示す上面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム通水路において洗浄水を入口部からリム通水路内に供給するときのリム通水路内の洗浄水及び空気の分布をコンピュータシミュレーションにより数値解析した結果の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態による水洗大便器のリム部の上部を省略した状態でリム通水路の内部及びガイド部を示す概略斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態による水洗大便器において
図1のIII-III線と同様の線に沿った断面を示す断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態による水洗大便器のリム部の上部を省略した状態でリム通水路の内部及びガイド部を上方から見た状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、
図1~
図3を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。また、
図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の平面図であり、
図3は
図1のIII-III線に沿った断面図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、水道等の主給水源W0(洗浄水源)から供給された洗浄水が通水する主給水路2と、陶器製の便器本体4と、洗浄水供給装置6と、を備えている。水洗大便器1は、主給水源W0から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する。
以下、本発明の第1実施形態における説明において、水洗大便器1を使用する使用者側(水洗大便器1を使用するために水洗大便器1の前に立っている使用者側)から見て手前側を前方側とし、使用者から見て奥側を後方側とし、水洗大便器1を前方から見て右側を右側とし、前方から見て左側を左側として説明している。
【0018】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、便器本体4は、汚物を受けるボウル部8と、ボウル部8の底部から延びる排水トラップ管路12と、を備えている。
また、洗浄水供給装置6は、詳細については後述するが、便器本体4のボウル部8よりも後方側に設けられており、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にする機能部である。この機能部は、より具体的には、電力により作動し、便器本体4のボウル部8への洗浄水の吐止水を制御する機能を含む。
【0019】
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面9と、汚物受け面9の上縁に形成されたリム部10と、汚物受け面9とリム部10とを結ぶように全周に設けられた棚面11と、を備えている。棚面11は、汚物受け面9とリム部10との間に平坦面として形成され、内向きにやや下り傾斜を形成している。
【0020】
つぎに、
図2及び
図3に示すように、水洗大便器1は、さらに、洗浄水源から供給される洗浄水をボウル部8内に通水するように、ボウル部8の左右の何れか一方の側のリム部10内に形成されたリム通水路46と、リム通水路46の下流端に形成されると共に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口部48と、リム通水路46内に設けられると共に洗浄水の流れを導くガイド部50とを備えている。リム通水路46及びリム吐水口部48は、洗浄水源から供給される洗浄水をボウル部8内に吐水してボウル部8内に旋回流を形成するように形成されている。
【0021】
リム吐水口部48は、リム部10からボウル部8内に洗浄水を吐水する。リム吐水口部48は、便器本体4のボウル部8の左右の何れか一方の側(例えば便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10内においてリム通水路46の出口に設けられている。リム吐水口部48は、リム部10の開口部のリム導水路を形成している。リム吐水口部48は、陶器により形成されているが、樹脂等の他の素材により形成されていてもよい。リム吐水口部48は、便器本体4の中央(ボウル部8を前後方向に二等分するように左右方向に延びる中心横断線E)より後方側の便器本体4の後方領域に設けられている。リム吐水口部48は、単一のリム吐水部としてリム部10の内周面に1つのみ形成され、ボウル部後方へ吐水するように形成される。リム吐水口部48の開口方向は、内側部60の延びる方向とほぼ同じ方向である。
【0022】
ボウル部8は、さらに、リム吐水口部48の後方側においてリム吐水口部48から、後方に延びるリム吐水部通水路68を備えている。リム吐水部通水路68は、ボウル部8の内側から外側に向けてオーバハング状に形成される。
【0023】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、便器本体4のボウル部8の外側面から底部にかけてジェット導水路16が形成されている。このジェット導水路16の下流側は、ボウル部8の底部における排水トラップ管路12の入口部12aに向かって指向しており、ジェット導水路16の下流端には、ジェット吐水口16aが設けられている。
また、便器本体4のジェット導水路16の上流側には、詳細は後述する洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bが設けられている。このジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16に供給された洗浄水は、ジェット吐水口16aから排水トラップ管路12に向けて吐出され、ジェット吐水が行われるようになっている。
ここで、
図1に示すように、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aの上流側は、主給水路2の分岐部Bの切替弁18(詳細は後述する)に接続されている。
一方、
図1に示すように、洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bの上流側は、洗浄水供給装置6の貯水タンク20の下流側に設けられた洗浄水供給装置6の加圧ポンプ22(詳細は後述する)に接続されている。
【0024】
つぎに、便器本体4の排水トラップ管路12は、ボウル部8の下方に接続され汚物を排出する排水路を形成する。排水トラップ管路12は、ボウル部8の底部に設けられた入口部12aと、この入口部12aから上昇するトラップ上昇管12bと、このトラップ上昇管12bから下降するトラップ下降管12cとからなり、トラップ上昇管12bとトラップ下降管12cとの間が頂部12dとなっている。また、
図1に示すように、排水トラップ管路12のトラップ下降管12cの出口部12eは、便器本体4の後方かつ下方に配置された排水ソケットSの入口部に接続されている。さらに、
図1に示すように、排水ソケットSの後方側の出口部は、便器本体4の後方の壁(図示せず)側から延びる排水管Dの入口部に接続されている。汚物受け面9と排水トラップ管路12の連結部の上方に溜水が形成されている。なお、本実施例では、排水トラップ管路12から水洗大便器1の後方の壁の排水管Dに排水する態様が示されているが、壁排水に限定されず、床に排水する排水ソケットを接続し、床に設けられた排水管へ排水してもよい。
【0025】
つぎに、
図1により、本実施形態による水洗大便器1の洗浄水供給装置6の各構成について概略的に説明する。
まず、
図1に示すように、洗浄水供給装置6は、主給水路2の上流側から下流側に向かって、止水栓24、分岐金具26、バルブユニット28、及び、切替弁18をそれぞれ備えている。
つぎに、バルブユニット28は、定流量弁30、ダイヤフラム式の主弁32、及び、ソレノイドバブル等の電磁弁34をそれぞれ備えている。
また、洗浄水供給装置6は、コントローラ36を備えている。コントローラ36は、CPU等の演算装置及びメモリ等の記憶装置を内蔵し、所定の制御プログラム等に基づいて電気的に接続された機器の制御を行うことができる。本実施形態においては、コントローラ36は、バルブユニット28の開閉弁(電磁弁34)の開閉操作、切替弁18の切替操作、及び、加圧ポンプ22の回転数や作動時間等を制御する制御部として機能することができるようになっている。
【0026】
さらに、バルブユニット28の定流量弁30は、主給水路2における止水栓24から分岐金具26を通過した洗浄水について、所定の流量以下に絞るためのものである。
ちなみに、分岐金具26においては、水洗大便器1に対して局部衛生洗浄装置(図示せず)が設けられた形態では、局部衛生洗浄装置(図示せず)に洗浄水を供給するための給水管(図示せず)が接続可能にもなっている。
さらに、バルブユニット28においては、電磁弁34がコントローラ36の制御により開弁操作されると、主弁32が開弁し、定流量弁30から主弁32を通過した洗浄水が、主給水路2の下流側の分岐部Bの切替弁18に供給されるようになっている。
ここで、切替弁18は、主給水路2の洗浄水をリム側給水路2aとタンク側給水路2cの双方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であり、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更することができるようになっている。
【0027】
つぎに、洗浄水供給装置6は、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にするタンク装置Tを備えている。このタンク装置Tは、便器本体4の後方に連結されて主給水路2から供給された洗浄水を貯水する貯水タンク20と、この貯水タンク20内の洗浄水を便器本体4に圧送する加圧ポンプ22と、を備えている。
さらに、主給水路2の下流側の分岐部Bの下流側には、便器本体4のリム通水路46に連通するリム側給水路2a、及び、貯水タンク20に接続されるタンク側給水路2cがそれぞれ設けられている。
これにより、主給水源W0から主給水路2の分岐部Bに供給された洗浄水は、リム側給水路2aへのリム給水及びタンク側給水路2cへのタンク給水の少なくともいずれか一方の給水として利用されるようになっている。
【0028】
また、洗浄水供給装置6には、タンク側給水路2cの下流側から加圧ポンプ22まで延びるポンプ給水路2d、及び、加圧ポンプ22から下流側に延びるジェット側給水路2bがそれぞれ設けられている。
これらにより、本実施形態の水洗大便器1では、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水が、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aから便器本体4のリム通水路46を経てリム吐水口部48に供給され、リム吐水口部48からの吐水(いわゆる、「リム吐水」)が可能になっている。
さらに、主給水路2から洗浄水供給装置6に供給された洗浄水は、洗浄水供給装置6のタンク側給水路2c、貯水タンク20、ポンプ給水路2d及び加圧ポンプ22を経た後、ジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16を経てジェット吐水口16aに供給され、ジェット吐水口16aからの吐水(いわゆる、「ジェット吐水」)が可能になっている。
すなわち、本実施形態の水洗大便器1は、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水によるリム吐水と、貯水タンク20から加圧ポンプ22により加圧された洗浄水によるジェット吐水とを併用することができる、いわゆる、ハイブリット式の水洗大便器1として機能するようになっている。
【0029】
つぎに、貯水タンク20の内部には、上側フロートスイッチ38及び下側フロートスイッチ40がそれぞれ配置されている。これらのフロートスイッチ38,40により貯水タンク20内の水位を検出することができるようになっている。
例えば、上側フロートスイッチ38は、貯水タンク20内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、この上側フロートスイッチ38のオン状態をコントローラ36が検知して、電磁弁34を閉弁させるようになっている。
一方、下側フロートスイッチ40においては、貯水タンク20内の水位が、上側フロートスイッチ38が検知する所定の貯水水位よりも低い所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、この下側フロートスイッチ40のオン状態をコントローラ36が検知して、加圧ポンプ22を停止させるようになっている。
また、加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水をポンプ給水路2dに吸引し、このポンプ給水路2dから洗浄水をジェット側給水路2bに加圧することにより、ジェット吐水口16aから吐出させるためのものである。
【0030】
これらの構造により、通常の便器洗浄時においては、コントローラ36が、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作等を検知し、電磁弁34、切替弁18、加圧ポンプ22を順次作動させるようになっている。
これにより、リム吐水口部48及びジェット吐水口16aからの吐水が順次開始されて、ボウル部8内を洗浄した洗浄水は、ボウル部8内の汚物と共に排水トラップ管路12から排出されるようになっている。
さらに、コントローラ36は、洗浄終了後、電磁弁34を開放し、切替弁18がタンク側給水路2c側に切り替えられ、主給水路2内の洗浄水が貯水タンク20に補給されるようになっている。
そして、貯水タンク20内の水位が上昇し、上側フロートスイッチ38が規定の貯水量を検出すると、コントローラ36が電磁弁34を閉弁させることにより、主弁32が主給水路2を閉鎖し、給水が停止されるようになっている。
また、これらの洗浄水供給装置6(機能部)の各機器は、便器本体4のボウル部8よりも後方側の領域内における後方機能収納部V0(
図2参照)に収納されるようになっている。
【0031】
つぎに、
図1~
図4を参照して、本実施形態におけるリム通水路46の構造について具体的に説明する。
リム通水路46は、便器本体4のボウル部8の左右の何れか一方の側(例えば便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10内に設けられている。リム通水路46は、ボウル部8の後方側領域に位置する入口部46aからリム吐水口部48まで延びるリム導水路を形成している。リム通水路46は、便器本体4の後方側から前方に向かって延びた後、その途中から後方側に向かって屈曲する、いわゆる、Uターン形状となっている。さらに、リム通水路46の入口部46aには、詳細は後述する洗浄水供給装置6のリム側給水路2aが接続されている。このリム側給水路2aからリム通水路46に供給された洗浄水は、リム吐水としてリム吐水口部48から後方に向けてボウル部8内に吐出される。リム通水路46は、陶器により形成されているが、樹脂等の他の素材により形成されていてもよい。
【0032】
リム通水路46は、入口部56dからリム部10の内部を前方に向けて延びる外側部56と、外側部56の下流端部から内側に屈曲する屈曲部58と、屈曲部58から後方に向かってリム吐水口部48まで延びる内側部60とを備える。
【0033】
外側部56は便器本体4の後方領域から便器本体4の中心横断線Eより前方側の前方領域まで延びている。外側部56は内側部60よりも外側に位置する流路を形成している。外側部56内にガイド部50が設けられている。リム通水路46の外壁46eが外側部56の外側の壁面を形成している。
【0034】
屈曲部58は、便器本体4の片側のリム部内の限られた空間内において折り返す折り返し流路を形成している。屈曲部58は、外側部56と、内側部60とを接続するように上面視で、ほぼ180度折り返すU字状の流路を形成している。屈曲部58は、直線状に延びているリム部10内に形成される。屈曲部58は、便器本体4の中心横断線Eより前方側の前方領域に位置している。
【0035】
図3に示すように、内側部60は便器本体4の前方領域から便器本体4の中心横断線Eより後方側の後方領域まで延びている。内側部60はリム吐水口部48に至る直前の洗浄水の流れを直線状に整流させることができる。
【0036】
つぎに、
図3~
図6を参照して、本実施形態におけるガイド部50の構造について具体的に説明する。
ガイド部50は、洗浄水の流れの一部をリム通水路46内の上方の上方空間内まで導くように形成されている。ガイド部50は、リム通水路46の入口部46aと対向する位置に設けられ且つリム通水路46の底面46bから上方に隆起するように形成される。
【0037】
ガイド部50は、さらに、底面46bから立ち上がるように形成されると共にリム部10内においてガイド部50の側方を通る側方流路53を形成する側壁52と、ガイド部50の上部からリム通水路46の下流側に向けて下方に傾斜する下り傾斜部54と、入口部46aと対向する位置に設けられ且つ底面46bからリム通水路46の下流側に向けて上方に傾斜する上り傾斜部72と、その上部に形成された平坦部74と、を備える。
【0038】
図3に示すように、側壁52は、リム通水路46の内側の縦壁46dとの間においてガイド部50よりボウル部8の内側の側方流路53を区画する。側方流路53は、ガイド部50の便器内側に沿うように延びている。側方流路53は、ガイド部50の上流側の内側端部から下り傾斜部54の下流側の下流端部に向けて延びている。側方流路53は、底面が上流側から下流側までほぼ平坦に形成され、リム通水路46内において比較的流速が速く且つ整流された流れを形成しやすくできる。
【0039】
図4に示すように、下り傾斜部54は、リム通水路46の下流側に向かうにつれて幅が狭くなるように形成される。例えば、上面視で、下り傾斜部54は、概ね三角形状に形成され、リム通水路46の下流側に向かうにつれて徐々に左右方向の幅が狭くなるように形成される。
【0040】
下り傾斜部54は、その下端がリム通水路46の底面側領域70まで延びている。底面側領域70は、例えば、リム通水路46の高さのうち半分より底面46b側の下方領域であり、底面46bの近傍領域である。底面側領域70は、ガイド部50の高さのうち半分より底面46b側の領域等と他の方法により規定されてもよい。
【0041】
下り傾斜部54は、リム通水路46の下流側に向かうにつれて徐々に高さ方向において低くなるように形成される。下り傾斜部54は、ガイド部50の上部から延びる第1傾斜部54aと、第1傾斜部54aから延びると共に第1傾斜部54aよりさらに下方に向けて傾斜する第2傾斜部54bとを備えている。よって、下流端部側の第2傾斜部54bは、第1傾斜部54aからさらに下方側に折れ曲がるように形成されている。第1傾斜部54a及び第2傾斜部54bは、下流側に向けて下降傾斜すると共にやや便器内側の側方流路53側に向けてもやや下降傾斜されている。下り傾斜部54の外側部分は、リム通水路46の外壁46eと接続されている。
【0042】
図5に示すように、ガイド部50の下り傾斜部54は、上面視で、上り傾斜部72よりも長い。下り傾斜部54の上流側辺の中央と下流側辺の中央とを結ぶ長さL1は、上り傾斜部72の上流側辺の中央と下流側辺の中央とを結ぶ長さL2よりも長い。また、下り傾斜部54の内側辺の長さL3は、上り傾斜部72の内側辺の長さL4よりも長い。
【0043】
図6に示すように、ガイド部50の下り傾斜部54は、側面視で、上り傾斜部72よりも緩やかな傾斜に形成される。例えば、下り傾斜部54の水平に対する傾斜角度α1は、側面視で、上り傾斜部72の水平に対する傾斜角度α2よりも緩やかな傾斜である。下り傾斜部54の傾斜角度α1は、下り傾斜部54の上端と下端とを結ぶ仮想線と水平との角度である。下り傾斜部54の傾斜角度α1は、第1傾斜部54aの傾斜角度により規定されてもよい。上り傾斜部72の傾斜角度α2は、上り傾斜部72の上端と下端とを結ぶ仮想線と水平との角度である。
【0044】
上り傾斜部72は、底面46bからガイド部50の上部まで上昇する傾斜面を形成している。上り傾斜部72は、入口部46a側に向けて突出する円弧形状に形成されている。上り傾斜部72は、入口部46aから上り傾斜部72に向けて流入した洗浄水を上方に導きやすく形成されている。上り傾斜部72は、リム通水路46の下流側に向かうにつれて徐々に高さ方向に高くなるように形成される。上り傾斜部72は、リム通水路46の下流側に向かうにつれて徐々に左右方向の幅が狭くなるように形成される。上り傾斜部72の外側部分は、リム通水路46の外壁46eと接続されている。
【0045】
平坦部74は、ガイド部50の頂部においてほぼ水平な平坦面を形成している。平坦部74は、上り傾斜部72の下流端と接続されている。また、平坦部74は、下り傾斜部54の上流端と接続されている。平坦部74は、リム通水路46の外壁46eと接続されている。平坦部74は、上面視で、上り傾斜部72と合わせて三角形状を形成している。上り傾斜部72と平坦部74が連続して形成されており、平坦部74と下り傾斜部54が連続して形成されている。上り傾斜部72と下り傾斜部54の一部は、平坦部74を介さずに連続して形成されている。平坦部74と上り傾斜部72との接続部、及び/又は平坦部74と下り傾斜部54との接続部、及び/又は上り傾斜部72と下り傾斜部54との接続部は、段差を介して接続されている。なお、平坦部74と上り傾斜部72との接続部、及び/又は平坦部74と下り傾斜部54との接続部、及び/又は上り傾斜部72と下り傾斜部54との接続部は、段差を介さず、滑らかに接続されてもよい。
【0046】
つぎに、
図3~
図6を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器の動作(作用)について説明する。
使用者が、便器使用後に、例えば、大洗浄用の操作ボタン(図示せず)を押すと、この操作ボタン(図示せず)からの信号がコントローラ36に送信され、水洗大便器1の大洗浄用の洗浄動作が開始される。使用者が操作ボタン(図示せず)を操作すると、コントローラ36は洗浄水を水道等の給水源から洗浄水供給装置6のリム側給水路2aを介してリム通水路46の入口部46aに供給する。洗浄水は、矢印W0に示すように(
図5参照)、リム側給水路2aからリム通水路46内に吐水される。
【0047】
図5に示すように、リム側給水路2aからリム通水路46内に吐水された洗浄水は、入口部46aと対向する位置にあるガイド部50に到達する。ガイド部50に到達した洗浄水のうち一部は、矢印W1に示すように、上り傾斜部72に沿って、リム通水路46内の上部空間に向けて上昇される。洗浄水は、ガイド部50により、リム通水路46内の高さ方向の中心線C2(
図6参照)よりも上方の上部空間に流れ込みやすくなっている。従って、リム通水路46内の上部に溜まっている空気が洗浄水により撹拌され、この空気が排出されやすくできる。従って、溜まっている空気が洗浄水と共に排出されることにより空気の炸裂音や空気の混じり音などの異音が発生されることをより抑制することができ、静音性をより向上させることができる。
【0048】
矢印W2に示すように、ガイド部50の上部まで上昇した洗浄水は、上り傾斜部72から平坦部74に沿って流れる。平坦部74は前方側が先細の三角形状であるので、洗浄水は、平坦部74から徐々に下り傾斜部54に流下する。
【0049】
下り傾斜部54に流れ込む洗浄水は、矢印W3に示すように、第1傾斜部54aに沿って流下する。洗浄水は、第1傾斜部54aの傾斜方向に沿って前方側に向けて直線的に流れる。洗浄水の一部は、矢印W4(
図6参照)に示すように、第1傾斜部54aの下流端から第2傾斜部54bに沿ってさらに流下する。第2傾斜部54bは、第1傾斜部54aよりもより急な傾斜角度で形成されるので、洗浄水は第2傾斜部54b上でより加速される。一方、洗浄水の一部は、矢印W5に示すように、第1傾斜部54aの下流端から第2傾斜部54bに沿わずに下流側(前方側)の空中に飛び出すように流れる。
【0050】
矢印W6に示すように、ガイド部50の側方には、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの流れが形成されている。従って、矢印W5に示すような第1傾斜部54aの下流端から飛び出すような流れの下方に、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの流れが流入しやすくできる。従って、第1傾斜部54aからの洗浄水の流れと、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの洗浄水の流れとが衝突しにくくなり、これらの流れをよりスムーズに合流させやすくできる。
【0051】
矢印W7に示すように、洗浄水は、合流後は、外側部56を直線的に前方側に向けて流れる。このとき、空気が、洗浄水中に比較的小さいサイズの塊として撹拌されており、屈曲部58において空気の比較的大きな塊が分離されにくく、空気による異音の発生を抑制することができる。
【0052】
洗浄水は、屈曲部58において後方側に向きを変え、内側部60を通ってリム吐水口部48から後方に向けて吐出される。リム吐水口部48から吐水された洗浄水は、ボウル部8内を旋回しながら下方へ流下する旋回流を形成し、ボウル部8の内壁面が洗浄される。
【0053】
その後、ゼット吐水が開始される。先ず、コントローラ36は、加圧ポンプ22に信号を送ってこれを起動させる。貯水タンク20内に貯水されていた洗浄水は、加圧ポンプ22によって加圧され、ボウル部8の下部に開口したジェット吐水口16aから吐出される。ジェット吐水口16aから吐出された洗浄水が排水トラップ管路12内に流入し、排水トラップ管路12を満水にしてするとサイホン現象が引き起こされる。このサイホン現象により、ボウル部8内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路12に吸引され、下流側の排水管(図示せず)から排出される。便器本体4に洗浄水が供給されてから所定時間経過後、コントローラ36は、リム吐水口部48からの吐水を終了させ、加圧ポンプ22の作動を停止させ、一連の洗浄動作が終了する。
【0054】
つぎに、
図7を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器の動作(作用)についての解析例を説明する。
図7は、本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム通水路において洗浄水を入口部からリム通水路内に供給するときのリム通水路内の洗浄水及び空気の分布をコンピュータシミュレーションにより数値解析した結果の一例を示す図である。
図7の数値解析結果において、白色部分が洗浄水が流れている領域を示し、黒色部分が空気の領域を示している。
図7において、上から順にリム通水路46への給水開始後0.15秒、0.30秒、0.45秒、0.60秒の数値解析結果を示している。
【0055】
図7に示す解析結果によれば、リム側給水路2aからリム通水路46内に吐水された洗浄水は、上り傾斜部72に沿って、リム通水路46内の上部空間に向けて上昇される。よって、リム通水路46内の上部に溜まっている空気が洗浄水により撹拌され、この空気が比較的小さなサイズの塊として徐々に排出されている。洗浄水は、さらに、平坦部74に沿って下流側に流れる。洗浄水の一部は、リム通水路46内の上部空間において下流側に向けて流れやすくなっており、リム通水路46内の上部空間の領域Gや領域Hにおいて空気溜まりの形成が抑制されていることが分かる。また、洗浄水は、下り傾斜部54に沿って流下し、下り傾斜部54により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの洗浄水とスムーズに合流されている。従って、合流後の洗浄水の流れの乱れも抑制され、領域Hにおいて空気溜まりが生じることも抑制できている。このように比較的大きな音を生じさせる原因となりやすい比較的大きな空気の塊である空気溜まりの形成を抑制できている。
【0056】
つぎに、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1における作用について説明する。
まず、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、ガイド部50は、底面46bから立ち上がるように形成されると共にリム部10内においてガイド部50の側方を通る側方流路53を形成する側壁52と、ガイド部50の上部からリム通水路46の下流側に向けて下方に傾斜する下り傾斜部54と、を備える。これにより、ガイド部50により洗浄水の一部をリム通水路46内の上方に導き、リム通水路46内の上部の空気を洗浄水と共に下流側に抜きやすくすると共に、ガイド部50の上部まで上昇した洗浄水が下り傾斜部54により下方に導かれ、ガイド部50を越える洗浄水の圧力損失を抑制できると共に、下り傾斜部54により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの洗浄水とスムーズに合流できる。従って、洗浄水がリム通水路46を通過する際に空気が比較的大きな塊として排出されることにより生じる音を低減できると共にリム吐水の流速を落ちにくくできる。よって、水洗大便器1のリム吐水の静穏性及びリム吐水によるボウル部8の洗浄性能を向上できる。
【0057】
つぎに、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、下り傾斜部54は、リム通水路46の下流側に向かうにつれて幅が狭くなるように形成されるので、ガイド部50を越えた洗浄水が下り傾斜部54により下方に導かれる際に洗浄水の流速を増加させ、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの洗浄水とスムーズに合流できると共に合流後の洗浄水の流れを導きやすくできる。
【0058】
また、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、下り傾斜部54は、リム通水路46の底面側領域70まで延びている。これにより、ガイド部50を越えた洗浄水が下り傾斜部54により底面側領域70まで導かれることができ、ガイド部50を越える洗浄水の圧力損失をより抑制できると共にガイド部50の側方を通る側方流路53からの洗浄水とスムーズに合流できる。
【0059】
さらに、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、下り傾斜部54は、ガイド部50の上部から延びる第1傾斜部54aと、第1傾斜部54aから延びると共に第1傾斜部54aよりさらに下方に傾斜する第2傾斜部54bとを備えている。これにより、第1傾斜部54aに沿って流下する洗浄水の一部が第1傾斜部54aから下流側の空間に飛び出すように流れることができ、この飛び出すような流れの下方に、ガイド部50の側方を通る流路からの流れが流入しやすくできる。従って、第1傾斜部54aからの洗浄水の流れと、ガイド部50の側方を通る流路からの洗浄水の流れとをよりスムーズに合流させやすくできる。
【0060】
さらに、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、ガイド部50の上り傾斜部72により、入口部46aから流入した洗浄水をガイド部50の上部まで上昇させやすくでき、リム通水路46内の上部の空気を洗浄水と共に下流側に比較的細かい塊により抜きやすくすると共に、ガイド部50の上部まで上昇する洗浄水の圧力損失を抑制できる。
【0061】
さらに、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、ガイド部50の下り傾斜部54は、上面視で、上り傾斜部72よりも長い。これにより、上り傾斜部72により導かれる洗浄水の乱れを抑制すると共に、下り傾斜部54により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、下り傾斜部54に沿った方向の流れを形成しやすくでき、ガイド部50の側方を通る流路からの洗浄水とよりスムーズに合流しやすくできる。
【0062】
さらに、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、ガイド部50は、さらに、その上部に形成された平坦部74を備えるので、ガイド部50の上部まで上昇した洗浄水が平坦部74に沿って流れやすくでき、洗浄水がこの上部から剥離することを抑制でき、洗浄水の流れが乱れて圧力損失を生じることを抑制できる。
【0063】
さらに、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、ガイド部50の下り傾斜部54は、側面視で、上り傾斜部72よりも緩やかな傾斜に形成される。これにより、洗浄水が比較的急な上り傾斜部72により比較的短時間に上昇されて上り傾斜部72により導かれる洗浄水の乱れが抑制されると共に、下り傾斜部54により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、洗浄水が比較的長い時間にわたって下り傾斜部54に沿って流れ、下り傾斜部54に沿った方向の流れが形成しやすくされ、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの洗浄水とスムーズに合流しやすくできる。
【0064】
次に、
図8乃至
図11により、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。第2実施形態は、本発明による水洗大便器のガイド部の下り傾斜部を異なる形状に形成した例である。
図8は本発明の第2実施形態による水洗大便器のリム部の上部を省略した状態でリム通水路の内部及びガイド部を示す概略斜視図である。
図9は本発明の第2実施形態による水洗大便器において
図1のIII-III線と同様の線に沿った断面を示す断面図である。
図10は本発明の第2実施形態による水洗大便器のリム部の上部を省略した状態でリム通水路の内部及びガイド部を上方から見た状態を示す上面図である。
図11は、
図10のXI-XI線に沿った断面図である。
第2実施形態による水洗大便器101は、上述した第1実施形態による水洗大便器1と構造がほぼ同じであるため、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、水洗大便器1は、リム通水路46内に設けられると共に洗浄水の流れを導くガイド部150を備えている。リム通水路46の外側部56にガイド部150が設けられている。
【0066】
つぎに、
図8~
図11を参照して、本実施形態におけるガイド部150の構造について具体的に説明する。
ガイド部150は、洗浄水の流れの一部をリム通水路46内の上方の上方空間内まで導くように形成されている。ガイド部150は、リム通水路46の入口部46aと対向する位置に設けられ且つリム通水路46の底面46bから上方に隆起するように形成される。
【0067】
ガイド部150は、さらに、底面46bから立ち上がるように形成されると共にリム部10内においてガイド部150の側方を通る側方流路53を形成する側壁52と、ガイド部150の上部からリム通水路46の下流側に向けて下方に傾斜する下り傾斜部154と、入口部46aと対向する位置に設けられ且つ底面46bからリム通水路46の下流側に向けて上方に傾斜する上り傾斜部72と、その上部に形成された平坦部74と、を備える。
【0068】
図9に示すように、側壁52は、リム通水路46の内側の縦壁46dとの間においてガイド部150よりボウル部8の内側の側方流路53を区画する。側方流路53は、ガイド部150の便器内側に沿うように延びている。側方流路53は、ガイド部150の上流側の内側端部から下り傾斜部154の下流側の下流端部に向けて延びている。
【0069】
下り傾斜部154は、リム通水路46の下流側に向かうにつれて幅が狭くなるように形成される。例えば、上面視で、下り傾斜部154は、概ね三角形状に形成され、リム通水路46の下流側に向かうにつれて徐々に左右方向の幅が狭くなるように形成される。
【0070】
下り傾斜部154は、その下端がリム通水路46の底面側領域70まで延びている。底面側領域70は、例えば、リム通水路46の高さのうち半分より底面46b側の下方領域であり、底面46bの近傍領域である。底面側領域70は、ガイド部150の高さのうち半分より底面46b側の領域等と他の方法により規定されてもよい。
【0071】
図8に示すように、下り傾斜部154は、リム通水路46の下流側に向かうにつれて徐々に高さ方向において低くなるように形成される。下り傾斜部154は、ガイド部150の上部から底面46bまでほぼ一定の傾斜角度の傾斜面により形成されている。下り傾斜部154は、下流側に向けて下降傾斜すると共にやや便器内側の側方流路53側に向けてもやや傾斜されている。下り傾斜部154の外側部分は、リム通水路46の外壁46eと接続されている。
【0072】
図10に示すように、ガイド部150の下り傾斜部154は、上面視で、上り傾斜部72よりも長い。下り傾斜部154の上流側辺の中央と下流側辺の中央とを結ぶ長さL11は、上り傾斜部72の上流側辺の中央と下流側辺の中央とを結ぶ長さL12よりも長い。また、下り傾斜部154の内側辺の長さL13は、上り傾斜部72の内側辺の長さL14よりも長い。
【0073】
ガイド部50の下り傾斜部154は、側面視で、上り傾斜部72よりも緩やかな傾斜に形成される。例えば、下り傾斜部154の水平に対する傾斜角度α1(
図6参照)は、側面視で、上り傾斜部72の水平に対する傾斜角度α2(
図6参照)よりも緩やかな傾斜である。下り傾斜部154の傾斜角度α1は、下り傾斜部154の上端と下端とを結ぶ仮想線と水平との角度である。上り傾斜部72の傾斜角度α2は、上り傾斜部72の上端と下端とを結ぶ仮想線と水平との角度である。
【0074】
図11に示すように、下り傾斜部154は、ガイド部150の上部から底面46bまで比較的大きな傾斜面を形成している。従って、下り傾斜部154と接する部分近傍のリム通水路46の外壁46eの厚みI1は、下り傾斜部154が形成されている部分において、従来よりも厚みを小さくできる。仮に従来のように下り傾斜部154が形成されていない場合には、
図11において点線により示すように、下り傾斜部154が形成されない部分までリム通水路内に台状の突出部が形成され、外壁46eの厚みI2が比較的大きな厚みとなっていた。これに対し、下り傾斜部154が形成されることにより、傾斜部の上方部分が取り除かれるように形成され、下り傾斜部154が形成される部分の外壁46eの厚みI1が小さくでき、陶器製の外壁46eからの水分の抜けが向上され、製品の不良率を低減できる。また、比較的大きな厚みを有する外壁46eの範囲をより低減でき、製品の不良率を低減できる。説明の都合上第2実施形態において説明したが、第1実施形態においても、下り傾斜部54が形成され、同様に製品の不良率が低減できる。
【0075】
再び、本実施形態において、上り傾斜部72は、底面46bからガイド部150の上部まで上昇する傾斜面を形成している。平坦部74は、ガイド部150の頂部においてほぼ水平な平坦面を形成している。平坦部74は、下り傾斜部154の上流端と接続されている。
【0076】
つぎに、
図10等を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器の動作(作用)について説明する。
水洗大便器101の大洗浄用の洗浄動作が開始されると、洗浄水は、矢印W10に示すように(
図10参照)、リム側給水路2aからリム通水路46内に吐水される。
【0077】
図10に示すように、リム側給水路2aからリム通水路46内に吐水された洗浄水は、入口部46aと対向する位置にあるガイド部150に到達する。ガイド部150に到達した洗浄水のうち一部は、矢印W11に示すように、上り傾斜部72に沿って、リム通水路46内の上部空間に向けて上昇される。洗浄水は、ガイド部150により、リム通水路46内の高さ方向の中心線C2(
図6参照)よりも上方の上部空間に流れ込みやすくなっている。従って、リム通水路46内の上部に溜まっている空気が比較的小さな塊により静かに洗浄水により撹拌され、この空気が比較的細かい空気の塊により静かに排出されやすくできる。従って、溜まっている空気の比較的大きな塊が洗浄水と共に一気に排出されることにより空気の炸裂音や空気の混じり音などの異音が発生されることをより抑制することができ、静音性をより向上させることができる。
【0078】
矢印W12に示すように、ガイド部150の上部まで上昇した洗浄水は、上り傾斜部72から平坦部74に沿って沿いやすく、平坦部74に沿って流れる。平坦部74は前方側が先細の三角形状であるので、洗浄水は、平坦部74から徐々に下り傾斜部154に流下する。
【0079】
下り傾斜部154に流れ込む洗浄水は、矢印W13に示すように、下り傾斜部154に沿って流下する。洗浄水は、下り傾斜部154の傾斜方向に沿って前方側に向けて直線的に流れる。下り傾斜部154に沿って流下する洗浄水は、底面46b近傍までスムーズに流下でき、主に底面46b近傍において側方流路53からの流れに合流される。
【0080】
矢印W14に示すように、ガイド部150の側方には、ガイド部150の側方を通る側方流路53からの流れが形成されている。下り傾斜部154からの洗浄水の流れは、側方流路53からの流れと概ね同じ方向に流れるので、下り傾斜部154からの洗浄水の流れと、ガイド部50の側方を通る側方流路53からの洗浄水の流れとが衝突しにくくなり、これらの流れをよりスムーズに合流させやすくできる。
【0081】
矢印W15に示すように、洗浄水は、合流後は、外側部56を直線的に前方側に向けて流れる。このとき、空気が、洗浄水中に撹拌されており、屈曲部58において空気の塊が分離されにくく、空気による異音の発生を抑制することができる。
【0082】
洗浄水は、屈曲部58において後方側に向きを変え、内側部60を通ってリム吐水口部48から後方に向けて吐出される。リム吐水口部48から吐水された洗浄水は、ボウル部8内を旋回しながら下方へ流下する旋回流を形成し、ボウル部8の内壁面が洗浄される。
【0083】
つぎに、上述した本発明の第2実施形態による水洗大便器101における作用について説明する。
このように構成された本発明の第2実施形態においては、ガイド部150により洗浄水の一部をリム通水路46内の上方に導き、リム通水路46内の上部の空気を洗浄水と共に下流側に抜きやすくすると共に、ガイド部150の上部まで上昇した洗浄水が下り傾斜部54により下方に導かれ、ガイド部150を越える洗浄水の圧力損失を抑制できると共に、下り傾斜部54により導かれる洗浄水の流速を落としにくくしながら、ガイド部150の側方を通る側方流路53からの洗浄水とスムーズに合流できる。従って、洗浄水がリム通水路46を通過する際に空気が比較的大きな塊として排出されることにより生じる音を低減できると共にリム吐水の流速を落ちにくくできる。よって、水洗大便器101のリム吐水の静穏性及びリム吐水によるボウル部8の洗浄性能を向上できる。
【符号の説明】
【0084】
1 :水洗大便器
8 :ボウル部
9 :汚物受け面
10 :リム部
12a :入口部
46 :リム通水路
46a :入口部
46b :底面
48 :リム吐水口部
50 :ガイド部
52 :側壁
53 :側方流路
54 :下り傾斜部
54a :第1傾斜部
54b :第2傾斜部
56d :入口部
70 :底面側領域
72 :上り傾斜部
74 :平坦部
101 :水洗大便器
150 :ガイド部
154 :下り傾斜部