(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034510
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】管理装置、情報提供方法、配車システム、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230306BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230306BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230306BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20230306BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20230306BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/09 F
G16Y10/40
G16Y20/10
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140774
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白須 潤一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA28
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE11
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF10
5H181MC02
5H181MC16
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】 車両走行の安全性と快適性を高めるエリアを広げる。
【解決手段】 本開示の一態様に係る装置は、走行ロボットと通信可能な通信部と、前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置であって、前記通信部は、前記走行ロボットにより計測された計測データを受信し、前記制御部は、受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成し、前記通信部は、生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行ロボットと通信可能な通信部と、
前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置であって、
前記通信部は、
前記走行ロボットにより計測された計測データを受信し、
前記制御部は、
受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成し、
前記通信部は、
生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信する管理装置。
【請求項2】
前記道路状態情報は、
道路の路面状態の種別と当該路面状態の位置情報及び計測時刻とを含む請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記道路状態情報は、
道路を通行中の移動体の種別と当該移動体の位置情報及び計測時刻とを含む請求項1又は請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記提供先の通信ノードは、
自装置に登録された車両、及び輸送車両を管理する第1サーバのうちの少なくとも1つを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記提供先の通信ノードは、
道路管理者又は道路交通情報を提供する事業主体が運用する第2サーバを含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記通信部は、
調査対象エリアの位置情報を含む調査依頼を前記第2サーバから受信し、
前記制御部は、
前記調査対象エリアの位置情報を含む計測指示を生成し、
前記通信部は、
生成した前記計測指示を前記走行ロボットに送信する請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記調査指示の送信先を、前記走行ロボットのうち業務中ではない余剰の走行ロボットに限定する請求項6に記載の管理装置。
【請求項8】
走行ロボットと通信可能な通信部と、
前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置が実行する情報提供方法であって、
前記通信部が、前記走行ロボットにより計測された計測データを受信するステップと、
前記制御部が、受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成するステップと、
前記通信部が、生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信するステップと、を含む情報提供方法。
【請求項9】
走行ロボットと通信可能な通信部と、
前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置として、コンピュータを機能させるコンピュータプログラムであって、
前記通信部が、前記走行ロボットにより計測された計測データを受信するステップと、
前記制御部が、受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成するステップと、
前記通信部が、生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信するステップと、を含むコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の管理装置と、
前記管理装置と通信する前記走行ロボットと、を備える配車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理装置、情報提供方法、配車システム、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の自動運転において、無駄な加減速を抑制して安全でスムーズな走行を実現し、安全性及び快適性を向上させるため、車両と路上インフラ設備とを連携させる取り組みが行われている。
上記の取り組みの一環として、非特許文献1には、信号情報活用運転支援システム(TSPS)が記載されている。このシステムは、交差点の信号情報を光ビーコンで車両に提供し、車両に対する信号通過支援や赤信号減速支援を行うシステムである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「光ビーコン 信号情報活用運転支援システム(TSPS)」[https://www.vics.or.jp/know/service/tsps.html] 2021年5月8日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TSPSでは、路上インフラ設備を設置する必要があるので、すべての交差点で運用するのは困難であり時間及びコストがかかる。従って、自動運転などによる車両走行の安全性と快適性を高める効果は、当面の間は限定されたエリアのみになる可能性がある。
本開示は、車両走行の安全性と快適性を高めるエリアを広げることができる管理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る装置は、走行ロボットと通信可能な通信部と、前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置であって、前記通信部は、前記走行ロボットにより計測された計測データを受信し、前記制御部は、受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成し、前記通信部は、生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信する。
【0006】
本開示の一態様に係る方法は、走行ロボットと通信可能な通信部と、前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置が実行する情報提供方法であって、前記通信部が、前記走行ロボットにより計測された計測データを受信するステップと、前記制御部が、受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成するステップと、前記通信部が、生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信する。
【0007】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、走行ロボットと通信可能な通信部と、前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置として、コンピュータを機能させるコンピュータプログラムであって、前記通信部が、前記走行ロボットにより計測された計測データを受信するステップと、前記制御部が、受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成するステップと、前記通信部が、生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信するステップと、を含む。
【0008】
本開示の別態様に係るシステムは、上述の管理装置と、前記管理装置と通信する前記走行ロボットと、を備える。
【0009】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備えるシステム及び装置として実現できるだけでなく、かかる特徴的な構成をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。また、本開示は、システム及び装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、車両走行の安全性と快適性を高めるエリアを広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る配車システムの全体構成図である
【
図2】
図2は、ロボット管理装置及び自動走行ロボットのブロック図である。
【
図3】
図3は、ロボット管理装置及び自動走行ロボットの処理内容の一例を示すシーケンス図である。
【
図4】
図4は、ロボット管理装置及び自動走行ロボットの処理内容の別例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の管理装置は、走行ロボットと通信可能な通信部と、前記走行ロボットの配車処理を実行する制御部と、を備える管理装置であって、前記通信部は、前記走行ロボットにより計測された計測データを受信し、前記制御部は、受信した前記計測データに基づいて、現時点の道路状況を表す道路状態情報を生成し、前記通信部は、生成した前記道路状態情報を提供先の通信ノードに送信する。
【0013】
本実施形態の管理装置によれば、道路状態情報の生成に用いられる計測データを走行ロボットが計測するので、路上インフラ設備を利用しなくても、管理装置が道路状態情報を生成できるようになる。
従って、路上インフラ設備が未設置のエリアについても、道路状態情報を提供先の通信ノード(例えば車両)に提供可能となり、車両走行の安全性と快適性を高めるエリアを広げることができる。
【0014】
(2) 本実施形態の管理供装置において、前記道路状態情報は、道路の路面状態の種別と当該路面状態の位置情報及び計測時刻とを含むことが好ましい。
この場合、路面状態(例えば段差又は障害物など)の位置情報及び計測時刻を提供先の通信ノードに提供できるので、車両走行の安全性と快適性を高めることができる。
【0015】
(3) 本実施形態の管理装置において、前記道路状態情報は、道路を通行中の移動体の種別と当該移動体の位置情報及び計測時刻とを含むことが好ましい。
この場合、移動体(例えば車両又は歩行者)の位置情報及び計測時刻を提供先の通信ノードに提供できるので、車両の安全運転を支援することができる。
【0016】
(4) 本実施形態の管理装置において、前記提供先の通信ノードは、自装置に登録された車両、及び輸送車両を管理する第1サーバのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
管理装置に登録された車両に情報提供する場合には、管理装置を情報提供装置として併用することができる。第1サーバに情報提供する場合には、道路状態情報を有料で提供することにより、配車サービス以外の別の情報提供サービスを実行できるようになる。
【0017】
(5) 本実施形態の管理装置において、前記提供先の通信ノードは、道路管理者又は道路交通情報を提供する事業主体が運用する第2サーバを含むことが好ましい。
第2サーバに情報提供する場合にも、道路状態情報を有料で提供することにより、配車サービス以外の別の情報提供サービスを実行できるようになる。
【0018】
(6) 本実施形態の管理装置において、前記通信部は、調査対象エリアの位置情報を含む調査依頼を前記第2サーバから受信し、前記制御部は、前記調査対象エリアの位置情報を含む計測指示を生成し、前記通信部は、生成した前記計測指示を前記走行ロボットに送信することが好ましい。
この場合、調査対象エリアに関する計測データが走行ロボットから得られるので、第2サーバの運用主体の依頼内容に沿う適切な道路状態情報を第2サーバに送信できる。
【0019】
(7) 本実施形態の管理装置において、前記制御部は、前記調査指示の送信先を、前記走行ロボットのうち業務中ではない余剰の走行ロボットに限定することが好ましい。
このようにすれば、走行ロボットの配車業務を阻害せずに、走行ロボットを計測用途として利用できる。従って、本来の配車サービスと道路状態情報の調査及び提供サービスを効率的に両立することができる。
【0020】
(8) 本実施形態に係る方法は、上述の(1)~(7)の管理装置が実行する情報提供方法である。従って、本実施形態の情報提供方法は、上述の(1)~(7)の管理装置と同様の作用効果を奏する。
【0021】
(9) 本実施形態に係るプログラムは、上述の(1)~(7)の管理装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。従って、本実施形態のプログラムは、上述の(1)~(7)の管理装置と同様の作用効果を奏する。
【0022】
(10) 本実施形態に係るシステムは、上述の(1)~(7)の管理装置と、前記管理装置と通信する前記走行ロボットと、を備える配車システムである。従って、本実施形態の配車システムは、上述の(1)~(7)の管理装置と同様の作用効果を奏する。
【0023】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0024】
〔システムの全体構成〕
図1は、本実施形態に係る配車システム1の全体構成図である。
図2は、配車システム1に含まれる、ロボット管理装置2及び自動走行ロボット3のブロック図ある。
図1及び
図2に示すように、配車システム1は、データセンタなどに設置されたサーバの一種であるロボット管理装置2と、ロボット管理装置2と通信可能な自動走行ロボット3と、ロボット管理装置2と通信可能な車両5とを備える。
【0025】
ロボット管理装置2は、1つ以上の自動走行ロボット3を無線通信により遠隔制御するサーバよりなり、配車業者又は配車業務を代行するIT企業などにより運用される。ロボット管理装置2は、オンプレミスサーバ及びクラウドサーバのいずれであってもよい。
自動走行ロボット3は、遠隔制御による自動走行が可能な比較的小型の車両よりなる。自動走行ロボット3は、荷物配送用及び道路清掃用などの種々の用途の車両を採用し得るが、本実施形態では荷物配送用である場合を想定する。
【0026】
具体的には、自動走行ロボット3は、荷物の収納庫を有する非搭乗式の小型車両よりなり、政府又は自治体などから公道の通行が許可された車両である。
従って、自動走行ロボット3は、例えば
図1でハッチングを付した歩道R1及び脇道R2などを通行することができる。歩道R1は車道に沿った歩道であり、脇道R2は車道と交差する比較的幅員が狭い道路である。また、自動走行ロボット3は、必要に応じて高層ビルなどの構造物(図示せず)の内部通路を通行することもできる。
【0027】
以下において、「ロボット管理装置2」及び「自動走行ロボット3」を、それぞれ「管理装置2」及び「走行ロボット3」と略記することがある。
走行ロボット3は、各地の無線基地局7(例えば携帯基地局)との無線通信が可能である。無線基地局7は、移動体通信のコアネットワーク及びインターネットなどを含む公衆通信網8を介して管理装置2と通信可能である。
【0028】
公衆通信網8に接続されるサーバには、管理装置2とは異なる第1及び第2サーバ9A,9Bが含まれる。管理装置2は、これらのサーバ9A,9Bとも通信可能である。
第1サーバ9Aは、例えば物流又は旅客輸送業者などが運用するサーバであり、トラック又はバスなどの輸送車両を管理する。第2サーバ9Bは、警察などの道路管理者又は道路交通情報を提供する事業主体などが運用するサーバである。道路管理者が運用するサーバは、例えば交通信号制御機を遠隔制御する中央装置よりなる。
【0029】
走行ロボット3は、アップリンクデータを含む管理装置2宛ての通信パケットを無線基地局7に無線送信することができる。アップリンクデータには、走行ロボット3が道路を通行中にセンシングする計測データS1などが含まれる。
管理装置2は、ダウンリンクデータを含む走行ロボット3宛ての通信パケットを公衆通信網8に送信することができる。ダウンリンクデータには、目的地までの経路情報S2などが含まれる。
【0030】
管理装置2は、特定の者に限定的に提供するための提供データを含む、所定の通信ノード宛ての通信パケットを公衆通信網8に送信することができる。提供データには、現時点の道路状況を表す情報(以下、「道路状態情報」という。)S3などが含まれる。
管理装置2から提供データを受信可能な通信ノードには、例えば、管理装置2に登録されたユーザの車両5、及び第1及び第2サーバ9A,9Bなどが含まれる。車両5は、ユーザ自身が運転する通常の車両でもよいし、レベル4以上の自動運転車両でもよい。
【0031】
本実施形態の配車システム1は、管理装置2が、本来的なサービス業務として、ユーザからの配車要求に応じて、1又は複数の走行ロボット3を所定位置に移動させる配車サービスを実行するシステムである。
また、本実施形態の配車システム1は、管理装置2が、配車サービスと異なる付随的なサービス業務として、道路状態情報S3の提供サービスを実行するシステムである。
【0032】
具体的には、管理装置2は、配車中の複数の走行ロボット3から計測データS1を収集し、収集した計測データS1を元データとして道路状態情報S3を生成する。
また、管理装置2は、生成した道路状態情報S3を、車両5、第1及び第2サーバ9A,9Bのうちの少なくとも1つの特定の通信ノードに配信する。
【0033】
道路状態情報S3には、例えば、以下の「動的情報」、「准動的情報」、「准静的情報」、及び「静的情報」のうちの少なくとも1つが含まれる。
「動的情報」(~1秒)は、1秒以内の遅延時間が要求される動的なデータである。例えば、ITS(Intelligent Transport Systems)先読み情報として活用される、道路を通行する移動体の種別(車両及び歩行者など)とその位置情報及び計測時刻である。
【0034】
「准動的情報」(~1分)は、1分以内の遅延時間が要求される准動的なデータである。例えば、交通事故、渋滞、及び狭域気象の種別とその位置情報及び計測時刻がこれに該当する。「准静的情報」(~1時間)は、1時間以内の遅延時間が許容される准静的なデータである。例えば、交通規制、及び道路工事の種別とその位置情報及び計測時刻がこれに該当する。「静的情報」(~1カ月)は、1カ月以内の遅延時間が許容される静的なデータである。例えば、道路の路面状態(障害物や段差)の種別とその位置情報及び計測時刻がこれに該当する。
【0035】
道路状態情報S3のサービスエリアは、1又は複数の走行ロボット3によるセンシング(例えばカメラ撮影)が可能なエリアに対応する。
従って、走行ロボット3が配送業務を実行中である場合は、道路状態情報S3のサービスエリアは、目的地までの走行経路に沿ったエリアとなる。また、業務中ではない余剰の走行ロボット3を計測用途のみに利用する場合は、管理装置2は、調査対象として決定されたサービスエリアに向かうように、1又は複数の走行ロボット3を配車する。
【0036】
〔ロボット管理装置の構成〕
図2に示すように、ロボット管理装置2は、ワークステーションなどよりなるサーバコンピュータ10と、複数種類のデータベース21~24とを備える。サーバコンピュータ10は、制御部11、記憶部12、通信部13、及び同期処理部14などを備える。
データベース21~24は、記憶部12に所定のデータ配列で構築される電子データよりなる。もっとも、データベース21~24の一部又は全部をサーバコンピュータ10に接続された外部記憶装置(図示せず)に構築してもよい。
【0037】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを含む演算処理装置よりなる。制御部11には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路が含まれていてもよい。
制御部11は、記憶部12に格納されたコンピュータプログラム15をメインメモリ(RAM)に読み出し、当該プログラム15に従って各種の情報処理を実行する。この情報処理には、上述の道路状態情報S3の生成処理などが含まれる。
【0038】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを含む補助記憶装置よりなる。
記憶部12は、フラッシュROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はSDカードなどが含まれていてもよい。
【0039】
通信部13は、公衆通信網8を介した通信が可能な通信インタフェースよりなる。通信部13は、無線基地局7から計測データS1を受信可能であり、制御部11が生成した経路情報S2を無線基地局7に送信可能である。
通信部13は、車両5及びサーバ9A,9Bとも通信可能である。制御部11は、道路状態情報S3を生成すると、車両5又はサーバ9A,9B宛ての通信パケットを通信部13に入力し、通信部13は当該通信パケットを公衆通信網8に送信する。
【0040】
複数種類のデータベース21~24には、地図データベース21、会員データベース22、静的情報データベース23、及び動的情報データベース24が含まれる。
地図データベース21には、国内を網羅する道路地図データ25が記録される。道路地図データ25は、「交差点データ」と「リンクデータ」が含まれる高精細のデジタル地図データよりなる。
【0041】
「交差点データ」は、国内の交差点に付与された交差点IDと、交差点の位置情報とを対応付けたデータである。「リンクデータ」は、国内の道路に対応して付与された特定リンクのリンクIDに対して、次の情報を対応付けたデータよりなる。
情報A:特定リンクの始点・終点・補間点の位置情報
情報B:特定リンクの始点・終点・補間点の方位情報
情報C:特定リンクの始点に接続するリンクID
情報D:特定リンクの終点に接続するリンクID
【0042】
道路地図データ25は、実際の道路線形と道路の走行方向に対応したネットワークを構成する。このため、道路地図データ25は、交差点を表すノード間の道路区間を有向リンクl(小文字のエル)で繋いだネットワークになっている。
具体的には、道路地図データ25は、交差点ごとにノードnが設定され、各ノードn間が逆向きの一対の有向リンクlで繋がった有向グラフよりなる。従って、一方通行の道路の場合は、一方向の有向リンクlのみノードnが接続される。
【0043】
会員データベース22には、登録会員(例えば、配車サービスのユーザ及び車両5の所有者)の住所及び氏名などの個人情報、及び、登録会員の通信装置の識別情報(例えばMACアドレス、メールアドレス及び電話番号のうちの少なくとも1つ)が含まれる。
静的情報データベース23には、上述の准静的情報及び静的情報が記録される。制御部11は、走行ロボット3から受信した計測データS1に基づいて、准静的情報及び静的情報を生成し、生成した情報を静的情報データベース23に記録する。
【0044】
動的情報データベース24には、上述の准動的情報及び動的情報が記録される。制御部11は、走行ロボット3から受信した計測データS1に基づいて、准動的情報及び動的情報を生成し、生成した情報を動的情報データベース24に記録する。
【0045】
同期処理部14は、所定の同期方式により、走行ロボット3などの他の通信ノードと時刻同期を図るための処理部である。制御部11は、同期処理部14が生成するローカル時刻に従って、外部装置に送信する情報の発生時刻などを決定する。
同期処理部14の同期方式は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力に基づく同期方式や、NTP(Network Time Protocol)及びPTP(Precision Time Protocol)などの通信フレームを用いた同期方式などを採用し得る。
【0046】
通信部13は、無線基地局7及び公衆通信網8を介して、宅配などの配車サービスを利用するユーザ端末6(
図2参照)とも通信可能である。通信部13は、ユーザ端末6から配車要求のメッセージを受信すると、当該メッセージを制御部11に転送する。
配車要求のメッセージを受信した制御部11は、メッセージに含まれる配車の指定位置に走行ロボット3を向かわせる配車処理を実行する。配車処理には、例えば以下の処理1~4が含まれる。
【0047】
処理1:荷物を配送中でない走行ロボット3の中から、配車位置に最も近いロボットを配車対象のロボットとして決定する。
処理2:決定した走行ロボット3の現在位置から指定位置までの最適経路を探索する。
処理3:探索した最適経路の通過点位置を含む経路情報S2を生成する。
処理4:生成した経路情報S2を含む走行ロボット3宛ての通信パケットを生成し、生成した通信パケットを通信部33に入力する。
【0048】
処理2の最適経路の探索は、例えば、ダイクストラ法又はポテンシャル法などの所定の経路探索アルゴリズムなどが利用される。
具体的には、制御部11は、道路地図データ25に含まれるリンクを構成リンクとして上記の経路探索アルゴリズムを実行することにより、複数の候補経路のリンクコスト(例えば時間)を比較し、リンクコストが最も低い経路を最適経路とする。
【0049】
〔自動走行ロボットの制御システム〕
図2に示すように、自動走行ロボット3は、自動走行の制御システム4を有する。制御システム4は、制御部31、記憶部32、通信部33、同期処理部34、カメラ35、及びセンサ36などを備える。
このうち、制御部31、記憶部32、及び同期処理部34は、1つ又は複数の電子制御ユニット(ECU)から構成される。ECU、通信部33、カメラ35、及びセンサ36は、所定の通信ケーブルを通信経路とする車内ネットワークの通信ノードである。
【0050】
制御部31は、CPU及びRAMなどを含む演算処理装置よりなる。制御部31には、FPGAなどの集積回路が含まれていてもよい。記憶部32は、HDD及びSSDなどの不揮発性メモリを含む補助記憶装置よりなる。
制御部31は、記憶部32に格納されたコンピュータプログラム37をメインメモリ(RAM)に読み出し、当該プログラム37に従って各種の情報処理を実行する。この情報処理には、上述の計測データS1の生成処理などが含まれる。
【0051】
通信部33は、車両5に恒常的に搭載されたゲートウェイなどの無線通信機、或いは、走行ロボット3に一時的に搭載される通信端末(例えばスマートフォン、タブレット型コンピュータ又はノード型パソコンなど)よりなる。
カメラ35は、走行ロボット3からの景色を撮影するカメラであり、アクチュエータにより撮影方向を変更可能である。カメラ35は、例えば、TOF(Time Of Flight)方式のイメージセンサを有するデジタルカメラよりなり、画素ごとの距離情報を含む画像データを所定のフレームレートで制御部31に出力する。
【0052】
センサ36には、自車両の現在位置を計測する位置センサと、自車両の現在方位を検出する方位センサと、前方や周囲に存在する物体を検出するLiDAR方式などのレーダセンサが含まれる。
位置センサは、例えばGNSS受信機よりなり、走行ロボット3の現在位置をほぼリアルタイムで制御部31に出力する。方位センサは、例えばジャイロセンサよりなり、カメラ35の撮影方向をほぼリアルタイムで制御部31に出力する。
【0053】
制御部31は、カメラ35から距離情報付きの画像データが入力されると、管理装置2に提供する計測データS1を生成する。
具体的には、制御部31は、入力された画像データと、入力時の現在位置、現在時刻、及び撮影方向を含む計測データS1を生成し、生成した計測データS1を含む走行ロボット3宛ての通信パケットを通信部33に入力する。これにより、計測データS1が管理装置2にアップリンク送信される。
【0054】
同期処理部34は、所定の同期方式により、ロボット管理装置2などの他の通信ノードと時刻同期を図るための処理部である。制御部31は、同期処理部34が生成するローカル時刻に従って、計測データS1に含める現在時刻(計測時刻)などを決定する。
同期処理部34の同期方式は、例えば、GNSS受信機の出力に基づく同期方式や、NTP及びPTPなどの通信フレームを用いた同期方式などを採用し得る。
【0055】
制御部31は、管理装置2から受信した経路情報S2に従って走行ロボット3の自動走行制御を実行する。
具体的には、制御部31は、現在位置から経路情報S2の次の通過点位置までの進行方位に進むように、走行ロボット3の駆動及び操舵系統(図示せず)を制御する。制御部31は、この制御を目的地に到達するまで繰り返す。また、制御部31は、進行方向の前方に障害物を検出すると、障害物を回避するように駆動及び操舵系統を制御する。
【0056】
〔配車システムにおける情報処理の一例〕
図3は、ロボット管理装置2及び自動走行ロボット3の処理内容の一例を示すシーケンス図である。
図3及び以下の説明においては、情報処理の動作主体がロボット管理装置2及び自動走行ロボット3となっているが、実際の情報処理を実行するのは、ロボット管理装置2の制御部11と自動走行ロボット3の制御システム4の制御部31である。
【0057】
図3に示すように、管理装置2の管理対象である各走行ロボット3は、道路を通行中にセンシング処理(ステップST1)を実行する。センシング処理(ステップST1)は、上述の計測データS1を生成する処理である。
具体的には、走行ロボット3は、カメラ35から入力される画像データと、入力時の現在位置、現在時刻、及び撮影方向を含む計測データS1を生成する。走行ロボット3は、生成した計測データS1を管理装置2に送信する。
【0058】
ロボット管理装置2は、走行ロボット3から計測データS1を受信すると、情報生成処理(ステップST2)を実行する。
情報生成処理(ステップST2)には、物体認識(ステップST21)、種別判定(ステップST22)、及び情報記録(ステップST23)が含まれる。
【0059】
物体認識(ステップST21)は、走行ロボット3の計測データS1に基づいて、画像データに含まれる所定の物体又は事象(以下、「オブジェクト」という。)を検出し、検出したオブジェクトの位置を算出する処理である。
具体的には、管理装置2は、特徴点検出などのアルゴリズムにより画像データからオブジェクトを検出すると、計測データS1に含まれる現在位置(カメラ位置)及び撮影方向と、オブジェクトの画素の距離情報とに基づいて、オブジェクトの位置を算出する。
【0060】
種別判定(ステップST22)は、検出したオブジェクトが予め設定されたどの種別に該当するかを判定する処理である。具体的には、制御部11は、オブジェクトが車道の障害物又は段差である場合は、当該オブジェクトの種別を静的情報と判定し、オブジェクトが交通規制、又は道路工事である場合は、当該オブジェクトを准静的情報と判定する。
また、制御部11は、オブジェクトが通行中の車両又は歩行者である場合は、当該オブジェクトの種別を動的情報と判定し、オブジェクトが交通事故、渋滞、又は狭域気象である場合は、当該オブジェクトを准動的情報と判定する。
【0061】
情報記録(ステップST23)は、検出したオブジェクトの種別と、その位置情報及び計測時刻をデータベース23,24に記録する処理である。具体的には、制御部11は、オブジェクトの種別が静的情報又は准静的情報である場合は、当該オブジェクトの種別、位置情報及び計測時刻を、静的情報データベース23に記録する。また、制御部11は、オブジェクトの種別が動的情報又は准動的情報である場合は、当該オブジェクトの種別、位置情報及び計測時刻を、動的情報データベース24に記録する。
【0062】
次に、管理装置2は、情報提供処理(ステップST3)を実行する。情報提供処理(ステップST3)は、データベース23,24に記録した情報を、道路状態情報S3として車両5及び第1サーバ9Aのうちの少なくとも1つの提供先に配信する処理である。
道路状態情報S3の配信は、情報要求を条件としてもよいし、情報要求なしで行うことにしてもよい。また、道路状態情報S3は、動的、准動的、静的、及び准静的の全種類の情報ではなく、提供先の要求に応じた少なくとも1種類の情報であればよい。
【0063】
〔配車システムにおける情報処理の別例(変形例)〕
図4は、ロボット管理装置2及び自動走行ロボット3の処理内容の別例を示すシーケンス図である。
図4及び以下の説明においても、情報処理の動作主体がロボット管理装置2及び自動走行ロボット3となっているが、実際の情報処理を実行するのは、ロボット管理装置2の制御部11と自動走行ロボット3の制御システム4の制御部31である。
【0064】
図4の変形例が
図3の実施例と異なる点は、第2サーバ9Bからの調査依頼に応じて、第2サーバ9Bの運用主体が所望する所定エリアに走行ロボット3を配車する点にある。
具体的には、第2サーバ9Bは、管理装置2に調査依頼のメッセージM1を管理装置2に送信する。ここでは、車道の路面状態の調査である場合を想定する。この場合、調査依頼のメッセージM1には、調査対象エリアの位置情報と、調査対象として選択された道路状態情報S3の種別(ここでは「路面状態」)が含まれる。
【0065】
調査依頼のメッセージM1を受信した管理装置2は、稼働計画を作成する(ステップST11)。稼働計画は、管理装置2が管理する複数の走行ロボット3のうち、業務効率の観点から最適となるように作成される。例えば、稼働計画は次の基準1~3に準拠する。
基準1:業務中ではない余剰の走行ロボット3を配車対象とする。
基準2:余剰の走行ロボット3のうち調査対象エリアに近いロボットを優先する。
基準3:調査対象エリアの広狭と走行ロボット3の走行速度に応じて、配車する走行ロボット3の台数を決定する。
【0066】
次に、管理装置2は、稼働計画により選定された余剰の走行ロボット3に、計測指示のメッセージM1を送信する。計測指示のメッセージM2には、調査対象エリアの位置情報(目的地)と、目的地までの経路情報S2が含まれる。
計測メッセージM2を受信した走行ロボット3は、経路情報S2に従って調査対象エリアまで走行し、調査対象エリアにおいてセンシング処理(ステップST1)を実行する。
【0067】
センシング処理(ステップST1)以後の情報処理は、
図3の実施例の場合と同様であるから、詳細な説明を省略する。
もっとも、
図4の変形例では、第2サーバ9Bの調査依頼に応じて走行ロボット3を配車するので、道路状態情報S3は第2サーバ9Bのみに送信される。また、第2サーバ9Bに提供される道路状態情報S3には、少なくとも、調査対象として指定された種別の情報(ここでは「路面状態」)を含めればよい。
【0068】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0069】
上述の実施形態において、走行ロボット3が物体認識を実行可能である場合には、走行ロボット3の制御部31が物体認識(ステップST21)と種別判定(ステップST22)までの処理を行い、種別判定の結果を計測データS1としてもよい。
この場合の計測データS1には、検出したオブジェクトの種別及び内容、位置情報及び発生時刻が含まれる。また、管理装置2は、走行ロボット3から受信した計測データS1に含まれる各情報を、データベース23,24に記録する。
【0070】
上述の実施形態において、管理装置2は、配車システム1の走行ロボット3から受信する計測データS1に加えて、他のセンシングデバイスから受信した計測データS1を利用してもよい。
すなわち、管理装置2が利用する計測データS1の生成元には、配車システム1の走行ロボット3だけでなく、例えば防犯カメラやドローンなどの他のセンシングデバイスが含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 配車システム
2 ロボット管理装置(管理装置)
3 自動走行ロボット(走行ロボット)
4 制御システム
5 車両(通信ノード)
6 ユーザ端末
7 無線基地局
8 公衆通信網
9A 第1サーバ(通信ノード)
9B 第2サーバ(通信ノード)
10 サーバコンピュータ
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 同期処理部
15 コンピュータプログラム
21 地図データベース
22 会員データベース
23 静的情報データベース
24 動的情報データベース
25 道路地図データ
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
34 同期処理部
35 カメラ
36 センサ
37 コンピュータプログラム
R1 歩道
R2 脇道