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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034516
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】被覆電線中間皮剥ぎ装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20230306BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20230306BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H02G1/12 056
H02G1/12 068
B26D3/00 603Z
B26D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140784
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000115142
【氏名又は名称】ユニオンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】椿 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 和真
【テーマコード(参考)】
3C021
5G353
【Fターム(参考)】
3C021JA04
3C021JA09
5G353AB06
5G353AC05
5G353AC06
5G353CA01
5G353DA02
5G353DA05
5G353DA08
5G353EA04
(57)【要約】
【課題】ストリップ刃部材の被覆電線への切込み量を高精度に調整することが可能な被覆電線中間皮剥ぎ装置を提供する。
【解決手段】被覆電線中間皮剥ぎ装置1は、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを備える。前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bは、前後方向に沿って互いに接近及び離間するようにそれぞれ前後方向に移動可能であり、互いに接近することにより被覆電線110の被覆体113に切り込み、被覆体113を左右方向に分断する。前ストリップブレード47aによる被覆体113への切込み量は、前側ブレード用モータ48aの回転を制御することにより調整され、後ストリップブレード47bによる被覆体113への切込み量は、後側ブレード用モータ48bの回転を制御することにより調整されるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と前記芯線の外周を覆う筒状の被覆体とを有して構成される被覆電線を直線的に延びた状態で保持する電線保持器を有し、前記電線保持器により保持された被保持被覆電線に対し、前記被保持被覆電線の長さ方向の中間部分における被覆体を所定範囲に亘り剥離する中間皮剥ぎ処理を実行する被覆電線中間皮剥ぎ装置であって、
前記被保持被覆電線の長さ方向を左右方向とし、この左右方向と直交する一方向を前後方向とするとき、
前記被保持被覆電線を挟んで互いに対向する一対のストリップ刃部材を有し、前記一対のストリップ刃部材は、前後方向に沿って互いに接近及び離間するようにそれぞれ前後方向に移動可能であり、互いに接近することにより前記被保持被覆電線の被覆体に切り込み、この被覆体を左右方向に分断するように構成されたストリップブレードと、
前記一対のストリップ刃部材のうちの一方を前後方向に移動させるため作動する第1のストリップブレード用位置制御モータと、
前記一対のストリップ刃部材のうちの他方を前後方向に移動させるため作動する第2のストリップブレード用位置制御モータと、
前記第1のストリップブレード用位置制御モータの回転及び前記第2のストリップブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のストリップ刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み量を調整するブレード位置決め調整部と、を備えて構成されることを特徴とする被覆電線中間皮剥ぎ装置。
【請求項2】
前記ストリップブレードは、前記一対のストリップ刃部材が互いに対向した状態で左右方向に移動可能に構成され、
前記ストリップブレードを左右方向に移動させるため作動する第3のストリップブレード用位置制御モータを有し、
前記ブレード位置決め調整部は、前記第3のストリップブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のストリップ刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み位置を調整するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の被覆電線中間皮剥ぎ装置。
【請求項3】
前記被保持被覆電線を挟んで互いに対向する一対のスリット刃部材を有し、前記一対のスリット刃部材は、前後方向に沿って互いに接近及び離間するようにそれぞれ前後方向に移動可能に構成され、互いに接近することにより前記被保持被覆電線の被覆体に切り込み、この被覆体をその周方向に分断する分断スリットを被覆体に形成するように構成されたスリットブレードと、
前記一対のスリット刃部材のうちの一方を前後方向に移動させるため作動する第1のスリットブレード用位置制御モータと、
前記一対のスリット刃部材のうちの他方を前後方向に移動させるため作動する第2のスリットブレード用位置制御モータと、を備え、
前記ブレード位置決め調整部は、前記第1のスリットブレード用位置制御モータの回転及び前記第2のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のスリット刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み量を調整するように構成されることを特徴とする請求項2に記載の被覆電線中間皮剥ぎ装置。
【請求項4】
前記スリットブレードは、前記一対のスリット刃部材が互いに対向した状態で左右方向に移動可能に構成され、
前記スリットブレードを左右方向に移動させるため作動する第3のスリットブレード用位置制御モータを有し、
前記ブレード位置決め調整部は、前記第3のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のスリット刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み位置
を調整するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の被覆電線中間皮剥ぎ装置。
【請求項5】
前記スリットブレードは、前記一対のスリット刃部材が前記被保持被覆電線の被覆体に切り込んだ状態で左右方向に移動することにより、前記被覆体に、左右方向に延びた所定長の前記分断スリットを形成するように構成され、
前記ブレード位置決め調整部は、前記第3のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御することにより前記一対のスリット刃部材が前記被保持被覆電線の被覆体に形成する前記分断スリットの長さを調整するように構成されることを特徴とする請求項4に記載の被覆電線中間皮剥ぎ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線に対し中間皮剥ぎ処理を行う被覆電線中間皮剥ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の被覆体によって芯線が被覆された被覆電線に対し中間皮剥ぎ処理を行う被覆電線中間皮剥ぎ装置が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。中間皮剥ぎ処理とは、被覆電線の長さ方向の中間部分における被覆体を所定範囲に亘り剥離する加工処理のことをいう。このような中間皮剥ぎ処理を行う被覆電線中間皮剥ぎ装置では、処理を施す被覆電線において、剥離する部分の被覆体と剥離せずに残す部分の被覆体とを分断するための切込みを入れる一対の刃部材(「ストリップ刃部材」と称する)を備えている。
【0003】
一対のストリップ刃部材は、例えば、直線的に延びた状態で保持された被覆電線を挟んで互いに対向して配置されるとともに互いに接近及び離間するように移動可能であり、互いに接近することにより被保持被覆電線にその径方向外方から切り込むように構成される。従来の被覆電線中間皮剥ぎ装置では、エアシリンダの作動により一対のストリップ刃部材を互いに接近させたり離間させたりするようになっている。エアシリンダの作動により一対のストリップ刃部材を移動させる構成の被覆電線中間皮剥ぎ装置では、被覆電線に切り込んだ一対のストリップ刃部材が互いに当接したり、予め設けられたストッパ部材に当接したりすることにより、一対のストリップ刃部材に移動が止まるようになっている。そのため、一対のストリップ刃部材による被覆電線への切込み量は、一対のストリップ刃部材の刃の形状やストッパ部材の設置位置によって決まることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-56716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、銅製の芯線に替わりアルミニウム製の芯線を用いた被覆電線が増えている。アルミニウムは銅に比較して引張強度が低い。そのため、アルミニウム製の芯線を用いた被覆電線に対し中間皮剥ぎ処理を行う場合には、芯線が傷付かないように細心の注意を払うことが強く求められている。ストリップ刃部材の被覆電線への切込み量が過大となると、ストリップ刃部材により芯線が傷付いてしまう。一方、ストリップ刃部材の被覆電線への切込み量が過小となると、被覆体が十分に分断されず被覆体を剥離し難くなってしまう。そこで、ストリップ刃部材を過不足なく被覆電線に切り込むことができるようにするため、ストリップ刃部材の被覆電線への切込み量を高精度に調整することが要望されている。
【0006】
しかし、エアシリンダの作動により一対のストリップ刃部材を被覆電線に切り込ませる構成の被覆電線中間皮剥ぎ装置では、ストリップ刃部材の刃の形状を変更したり、ストッパ部材の設置位置を変更したりすることによって、ストリップ刃部材の被覆電線への切込み量を調整する必要がある。そのため、ストリップ刃部材の被覆電線への切込み量を高精度に調整することが難しいという課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ストリップ刃部材の被覆電線への切込み量を高精度に調整することが可能な被覆電線中間皮剥ぎ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、芯線と前記芯線の外周を覆う筒状の被覆体とを有して構成される被覆電線を直線的に延びた状態で保持する電線保持器(例えば、実施形態における左クランプ14L及び右クランプ14R)を有し、前記電線保持器により保持された被保持被覆電線に対し、前記被保持被覆電線の長さ方向の中間部分における被覆体を所定範囲に亘り剥離する中間皮剥ぎ処理を実行する被覆電線中間皮剥ぎ装置であって、前記被保持被覆電線の長さ方向を左右方向とし、この左右方向と直交する一方向を前後方向とするとき、前記被保持被覆電線を挟んで互いに対向する一対のストリップ刃部材(例えば、実施形態における前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47b)を有し、前記一対のストリップ刃部材は、前後方向に沿って互いに接近及び離間するようにそれぞれ前後方向に移動可能であり、互いに接近することにより前記被保持被覆電線の被覆体に切り込み、この被覆体を左右方向に分断するように構成されたストリップブレードと、前記一対のストリップ刃部材のうちの一方を前後方向に移動させるため作動する第1のストリップブレード用位置制御モータ(例えば、実施形態における前側ブレード用モータ48a)と、前記一対のストリップ刃部材のうちの他方を前後方向に移動させるため作動する第2のストリップブレード用位置制御モータ(例えば、実施形態における後側ブレード用モータ48b)と、前記第1のストリップブレード用位置制御モータの回転及び前記第2のストリップブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のストリップ刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み量を調整するブレード位置決め調整部(例えば、実施形態におけるサーボモータ制御部61)と、を備えて構成される。
【0009】
本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置において、好ましくは、前記ストリップブレードは、前記一対のストリップ刃部材が互いに対向した状態で左右方向に移動可能に構成され、前記ストリップブレードを左右方向に移動させるため作動する第3のストリップブレード用位置制御モータ(例えば、実施形態における皮剥ぎユニット用モータ49)を有し、前記ブレード位置決め調整部は、前記第3のストリップブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のストリップ刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み位置を調整するように構成される。
【0010】
また、本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置において、好ましくは、前記被保持被覆電線を挟んで互いに対向する一対のスリット刃部材(例えば、実施形態における前スリットブレード44a及び後スリットブレード44b)を有し、前記一対のスリット刃部材は、前後方向に沿って互いに接近及び離間するようにそれぞれ前後方向に移動可能に構成され、互いに接近することにより前記被保持被覆電線の被覆体に切り込み、この被覆体をその周方向に分断する分断スリットを被覆体に形成するように構成されたスリットブレードと、前記一対のスリット刃部材のうちの一方を前後方向に移動させるため作動する第1のスリットブレード用位置制御モータ(例えば、実施形態における前側ブレード用モータ48a)と、前記一対のスリット刃部材のうちの他方を前後方向に移動させるため作動する第2のスリットブレード用位置制御モータ(例えば、実施形態における後側ブレード用モータ48b)と、を備え、前記ブレード位置決め調整部は、前記第1のスリットブレード用位置制御モータの回転及び前記第2のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のスリット刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み量を調整するように構成される。
【0011】
また、本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置において、好ましくは、前記スリットブレードは、前記一対のスリット刃部材が互いに対向した状態で左右方向に移動可能に構成され、前記スリットブレードを左右方向に移動させるため作動する第3のスリットブレード用位置制御モータ(例えば、実施形態における皮剥ぎユニット用モータ49)を有し、前記ブレード位置決め調整部は、前記第3のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御して前記一対のスリット刃部材による前記被保持被覆電線の被覆体への切込み位置を調
整するように構成される。
【0012】
また、本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置において、好ましくは、前記スリットブレードは、前記一対のスリット刃部材が前記被保持被覆電線の被覆体に切り込んだ状態で左右方向に移動することにより、前記被覆体に、左右方向に延びた所定長の前記分断スリットを形成するように構成され、前記ブレード位置決め調整部は、前記第3のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御することにより前記一対のスリット刃部材が前記被保持被覆電線の被覆体に形成する前記分断スリットの長さを調整するように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置によれば、第1のストリップブレード用位置制御モータの回転及び第2のストリップブレード用位置制御モータの回転を制御して一対のストリップ刃部材による被保持被覆電線の被覆体への切込み量を調整するように構成されているので、一対のストリップ刃部材の被覆体への切込み量を高精度に調整することが可能である。
【0014】
また、本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置によれば、第3のストリップブレード用位置制御モータの回転を制御して一対のストリップ刃部材による被保持被覆電線の被覆体への切込み位置を調整するように構成することで、一対のストリップ刃部材の被覆体への切込み位置を高精度に調整することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置によれば、第1のスリットブレード用位置制御モータの回転及び第2のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御して一対のスリット刃部材による被保持被覆電線の被覆体への切込み量を調整するように構成成することで、一対のスリット刃部材の被覆体への切込み量を高精度に調整することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置によれば、第3のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御して一対のスリット刃部材による被保持被覆電線の被覆体への切込み位置を調整するように構成することで、一対のスリット刃部材の被覆体への切込み位置を高精度に調整することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置によれば、第3のスリットブレード用位置制御モータの回転を制御することにより一対のスリット刃部材が被保持被覆電線の被覆体に形成する分断スリットの長さを調整するように構成することで、分断スリットの長さを高精度に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置の斜視図である。
図2】上記被覆電線中間皮剥ぎ装置の平面図である。
図3】上記被覆電線中間皮剥ぎ装置の各モータ及びエアシリンダの役割を示す図である。
図4】上記被覆電線中間皮剥ぎ装置のストリップブレードを示す図である。
図5】上記ストリップブレードが電線被覆に切り込む際の刃の位置を示す図である。
図6】上記ストリップブレードが電線被覆を剥離する際の刃の位置を示す図である。
図7】上記被覆電線中間皮剥ぎ装置のスリットブレードが電線被覆に切り込む際の刃の位置を示す図である。
図8】上記被覆電線中間皮剥ぎ装置のサーボモータ制御システムを示すブロック図である。
図9】上記被覆電線中間皮剥ぎ装置による中間皮剥ぎ処理の手順1を示す図である。
図10】上記中間皮剥ぎ処理の手順2を示す図である。
図11】上記中間皮剥ぎ処理の手順3を示す図である。
図12】上記中間皮剥ぎ処理の手順4を示す図である。
図13】上記中間皮剥ぎ処理の手順5を示す図である。
図14】上記中間皮剥ぎ処理の手順6を示す図である。
図15】上記中間皮剥ぎ処理の手順7を示す図である。
図16】上記中間皮剥ぎ処理の手順8を示す図である。
図17】上記中間皮剥ぎ処理の手順9を示す図である。
図18】上記中間皮剥ぎ処理の手順10を示す図である。
図19】上記中間皮剥ぎ処理の手順11を示す図である。
図20】上記中間皮剥ぎ処理の手順12を示す図である。
図21】上記中間皮剥ぎ処理の手順13を示す図である。
図22】上記中間皮剥ぎ処理の手順14を示す図である。
図23】上記中間皮剥ぎ処理の手順15を示す図である。
図24】上記中間皮剥ぎ処理の手順16を示す図である。
図25】上記中間皮剥ぎ処理の手順17を示す図である。
図26】上記中間皮剥ぎ処理の手順18を示す図である。
図27】上記中間皮剥ぎ処理の手順19を示す図である。
図28】上記ストリップブレードによる被覆電線への切込み位置と上記スリットブレードにより被覆電線に形成される分断スリットの長さとの関係を示す図である。
図29】被覆端面捲れについての説明図である。
図30】上記中間皮剥ぎ処理の変更手順aを示す図である。
図31】上記中間皮剥ぎ処理の変更手順bを示す図である。
図32】上記中間皮剥ぎ処理の変更手順cを示す図である。
図33】上記中間皮剥ぎ処理の変更手順dを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1及び図2に本発明の一実施形態に係る被覆電線中間皮剥ぎ装置1を示している。まず、この被覆電線中間皮剥ぎ装置1の全体的な構成について、図1図7を参照して概要説明する。なお、図1及び図2には、前、後、左、右、上、下の各向きを示す矢印を示しており、以下の説明において方向について言及するときは、この矢印の向きに従うものとする。
【0020】
被覆電線中間皮剥ぎ装置1は、図1及び図2に示すように、装置全体を支持する左支持プレート3L及び右支持プレート3Rと、被覆電線110を保持する左クランプユニット5L及び右クランプユニット5Rと、被覆電線110に対する中間皮剥ぎ処理を実行する皮剥ぎユニット7とを主体に構成される。中間皮剥ぎ処理とは、被覆電線110の長さ方向の中間部分(途中部分)における被覆体113(図4を参照)を所定範囲に亘り剥離する加工処理のことをいう。被覆電線110は、図4に示すように(図4では被覆電線110径方向断面を示している)、導電性を有する単数又は複数の銅製やアルミニウム製の素線により構成される芯線111と、この芯線111の外周を覆う絶縁性の被覆体113とにより構成されている。
【0021】
左支持プレート3L及び右支持プレート3Rは、それぞれ前後及び上下に広がる板状に形成され、不図示の架台等に対しボルト結合されるように構成されている。左クランプユニット5Lは、左支持プレート3Lの上部に設けられた左クランプステージ11Lと、左クランプステージ11Lの上部に設けられた左前クランプアッセンブリ12La及び左後
クランプアッセンブリ12Lbと、左クランプステージ11Lの前部(後部とすることも可)に取り付けられた左クランプ用エアシリンダ15Lと、左支持プレート3Lの左部に取り付けられたテンション用エアシリンダ16とを有している。左支持プレート3Lの上部に設けられた左クランプステージ11Lは、左支持プレート3Lに対し左右方向に移動可能に構成されている。
【0022】
左前クランプアッセンブリ12Laは、図2に示すように、左前クランプホルダ13Laと、左前クランプホルダ13Laに取り付けられた左前クランプ具14Laとを有し、左クランプステージ11Lに対し前後方向に移動可能に構成されている。左後クランプアッセンブリ12Lbは、左後クランプホルダ13Lbと、左後クランプホルダ13Lbに取り付けられた左後クランプ具14Lbとを有し、左クランプステージ11Lに対し前後方向に移動可能に構成されている。左前クランプ具14Laと左後クランプ具14Lbとにより、左クランプ14L(図3を参照)が構成される。
【0023】
左クランプ用エアシリンダ15Lは、空気圧縮機(図示略)から供給される圧縮空気により前後方向に作動するピストンロッド(図示略)を有し、このピストンロッドに左前クランプアッセンブリ12La及び左後クランプアッセンブリ12Lbが、図示せぬ連結機構を介して連結されている。左クランプ用エアシリンダ15Lが作動することにより、左前クランプアッセンブリ12La及び左後クランプアッセンブリ12Lbが、左クランプステージ11Lに対し前後方向に互いに逆向きに移動し、これにより、左前クランプ具14Laと左後クランプ具14Lbとが互いに当接したり離間したりすることが可能となっている。以下、左前クランプ具14Laと左後クランプ具14Lbとが互いに当接することを左クランプ14Lが閉じるとも称し、左前クランプ具14Laと左後クランプ具14Lbとが互いに離間することを左クランプ14Lが開くとも称する。左クランプ14Lは、閉じることにより、複数本の被覆電線110を上下方向に整列させた状態で把持できるようになっている。
【0024】
テンション用エアシリンダ16は、空気圧縮機から供給される圧縮空気により左右方向に作動するピストンロッド(図示略)を有し、このピストンロッドに左クランプステージ11Lが、図示せぬ連結機構を介して連結されている。テンション用エアシリンダ16が作動することにより、左支持プレート3Lに対し左クランプステージ11Lが左右方向に移動することが可能となっている。特に、左クランプユニット5L(左クランプ14L)及び右クランプユニット5R(後述する右クランプ14R)により被覆電線110が保持された状態でテンション用エアシリンダ16を作動させ、左支持プレート3Lに対し左クランプステージ11Lを左方に移動させることにより、被覆電線110に張力を作用させることができ、これにより、被覆電線110を左右方向に直線的に延びた(張った)状態で保持できるようになっている。
【0025】
右クランプユニット5Rは、右支持プレート3Rの上部に固定された右クランプステージ11Rと、右クランプステージ11Rの上部に設けられた右前クランプアッセンブリ12Ra及び右後クランプアッセンブリ12Rbと、右クランプステージ11Rの後部(前部とすることも可)に取り付けられた右クランプ用エアシリンダ15Rとを有している。
【0026】
右前クランプアッセンブリ12Raは、図2に示すように、右前クランプホルダ13Raと、右前クランプホルダ13Raに取り付けられた右前クランプ具14Raとを有し、右クランプステージ11Rに対し前後方向に移動可能に構成されている。右後クランプアッセンブリ12Rbは、右後クランプホルダ13Rbと、右後クランプホルダ13Rbに取り付けられた右後クランプ具14Rbとを有し、右クランプステージ11Rに対し前後方向に移動可能に構成されている。右前クランプ具14Raと右後クランプ具14Rbとにより、右クランプ14R(図3を参照)が構成される。
【0027】
右クランプ用エアシリンダ15Rは、空気圧縮機から供給される圧縮空気により前後方向に作動するピストンロッド(図示略)を有し、このピストンロッドに右前クランプアッセンブリ12Ra及び右後クランプアッセンブリ12Rbが、図示せぬ連結機構を介して連結されている。右クランプ用エアシリンダ15Rが作動することにより、右前クランプアッセンブリ12Ra及び右後クランプアッセンブリ12Rbが、右クランプステージ11Rに対し前後方向に互いに逆向きに移動し、これにより、右前クランプ具14Raと右後クランプ具14Rbとが互いに当接したり離間したりすることが可能となっている。以下、右前クランプ具14Raと右後クランプ具14Rbとが互いに当接することを右クランプ14Rが閉じるとも称し、右前クランプ具14Raと右後クランプ具14Rbとが互いに離間することを右クランプ14Rが開くとも称する。右クランプ14Rは、閉じることにより、複数本の被覆電線110を上下方向に整列させた状態で把持できるようになっている。
【0028】
皮剥ぎユニット7は、左右方向に長い矩形枠状の皮剥ぎユニットガイドフレーム30と皮剥ぎユニットガイドフレーム30に固定された皮剥ぎユニットステージ41と、皮剥ぎユニットステージ41の前上部に設けられた前スリット刃アッセンブリ42a及び前ストリップ刃アッセンブリ45aと、皮剥ぎユニットステージ41の後上部に設けられた後スリット刃アッセンブリ42b及び後ストリップ刃アッセンブリ45bと、皮剥ぎユニットステージ41の前下部に取り付けられた前側ブレード用モータ48aと、皮剥ぎユニットステージ41の後下部に取り付けられた後側ブレード用モータ48bと、被覆電線中間皮剥ぎ装置1の左端部に設けられた皮剥ぎユニット用モータ49とを有している。
【0029】
皮剥ぎユニットガイドフレーム30は、図2に示すように、当該フレーム30の左右両端部において前後方向に延びる左右一対の左エンドバー31L及び右エンドバー31Rと、左右方向に延びて左エンドバー31Lと右エンドバー31Rとを連結する前後一対の前ガイドバー32a及び後ガイドバー32bとを有して構成される。前ガイドバー32a及び後ガイドバー32bは、左支持プレート3Lに形成された挿通孔(図示略)及び右支持プレート3Rに形成された挿通孔(図示略)内に摺動可能に挿通されており、一方、皮剥ぎユニットステージ41に対しては固定されている。これにより、皮剥ぎユニットガイドフレーム30は、皮剥ぎユニットステージ41と一体的に、左支持プレート3L及び右支持プレート3Rに対し左右方向に移動可能に構成されている。
【0030】
前スリット刃アッセンブリ42aは、図2に示すように、前スリットブレードホルダ43aと、前スリットブレードホルダ43aに取り付けられた前スリットブレード44aとを有し、皮剥ぎユニットステージ41に対し前後方向に移動可能に構成されている。前ストリップ刃アッセンブリ45aは、前ストリップブレードホルダ46aと、前ストリップブレードホルダ46aに取り付けられた前ストリップブレード47aとを有し、皮剥ぎユニットステージ41に対し前後方向に移動可能に構成されている。
【0031】
後スリット刃アッセンブリ42bは、図2に示すように、後スリットブレードホルダ43bと、後スリットブレードホルダ43bに取り付けられた後スリットブレード44bとを有し、皮剥ぎユニットステージ41に対し前後方向に移動可能に構成されている。後ストリップ刃アッセンブリ45bは、後ストリップブレードホルダ46bと、後ストリップブレードホルダ46bに取り付けられた後ストリップブレード47bとを有し、皮剥ぎユニットステージ41に対し前後方向に移動可能に構成されている。
【0032】
前側ブレード用モータ48aは、サーボモータ(例えばACサーボモータにより構成されるがDCサーボモータでも可)により構成され、そのモータ軸(図示略)に前スリット刃アッセンブリ42a及び前ストリップ刃アッセンブリ45aが、図示せぬ連結機構を介
して連結されている。前側ブレード用モータ48aが作動することにより、前スリット刃アッセンブリ42a及び前ストリップ刃アッセンブリ45aが、皮剥ぎユニットステージ41に対し前後方向に互いに逆向きに移動するように構成されている。
【0033】
後側ブレード用モータ48bは、サーボモータ(例えばACサーボモータにより構成されるがDCサーボモータでも可)により構成され、そのモータ軸(図示略)に後スリット刃アッセンブリ42b及び後ストリップ刃アッセンブリ45bが、図示せぬ連結機構を介して連結されている。後側ブレード用モータ48bが作動することにより、後スリット刃アッセンブリ42b及び後ストリップ刃アッセンブリ45bが、皮剥ぎユニットステージ41に対し前後方向に互いに逆向きに移動するように構成されている。
【0034】
前側ブレード用モータ48a及び後側ブレード用モータ48bが同時に作動することにより、前スリットブレード44aと後スリットブレード44bとが互いに近接したり離間したりすることが可能となっている。前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bは、図3に示すように、それぞれの刃先441が互いに対向するように配置されており、各々が互いに近接するように移動することにより、各々の刃先441が被覆電線110の被覆体113に切り込むようになっている(図7を参照)。前スリットブレード44aと後スリットブレード44bとにより、スリットブレード44が構成される(図3を参照)。以下、前スリットブレード44aと後スリットブレード44bとが互いに近接することをスリットブレード44が閉じるとも称し、前スリットブレード44aと後スリットブレード44bとが互いに離間することをスリットブレード44が開くとも称する。なお、図示していないがスリットブレード44(対となる前スリットブレード44a及び後スリットブレード44b)は、左クランプ14L及び右クランプ14Rにより上下方向に
整列した状態で保持された複数本の被覆電線110にそれぞれ対応可能なように、上下方向に複数並んで設置されている。
【0035】
また、前側ブレード用モータ48a及び後側ブレード用モータ48bが同時に作動することにより、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとが互いに近接したり離間したりすることが可能となっている。前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bは、図4に示すように、それぞれの湾曲刃471が互いに対向するように配置されており、各々が互いに近接するように移動することにより、各々の湾曲刃471が被覆電線110の被覆体113に切り込むようになっている(図5及び図6を参照)。前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとにより、ストリップブレード47が構成される(図3を参照)。以下、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとが互いに近接することをストリップブレード47が閉じるとも称し、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとが互いに離間することをストリップブレード47が開くとも称する。なお、図示していないがストリップブレード47の湾曲刃471は、左クランプ14L及び右クランプ14Rにより上下方向に整列した状態で保持された複数本の被覆電線110にそれぞれ対応可能なように、上下方向に複数並んで設けられている。
【0036】
皮剥ぎユニット用モータ49は、サーボモータ(例えばACサーボモータにより構成されるがDCサーボモータでも可)により構成され、モータ支持台50を介して左支持プレート3Lに取り付けられている。モータ支持台50は、図2に示すように、皮剥ぎユニット用モータ49が固定される支持板51と、支持板51と左支持プレート3Lとを連結する複数本の連結バー52とから構成される。皮剥ぎユニット用モータ49のモータ軸(図示略)に皮剥ぎユニットステージ41が、図示せぬ連結機構を介して連結されている。皮剥ぎユニット用モータ49が作動することにより、皮剥ぎユニットステージ41が左右方向に移動し、これにより、スリットブレード44(前スリットブレード44a及び後スリットブレード44b)及びストリップブレード47(前ストリップブレード47a及び後
ストリップブレード47b)が、左クランプ14L及び右クランプ14Rにより保持された被覆電線110に対し左右方向(被覆電線110の長さ方向)に移動するように構成されている。
【0037】
このように被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、左クランプ用エアシリンダ15Lの作動により左クランプ14Lが開閉し、右クランプ用エアシリンダ15Rの作動により右クランプ14Rが開閉する。また、テンション用エアシリンダ16の作動により左クランプステージ11Lが左右方向に移動する。これに対し、スリットブレード44及びストリップブレード47は、前側ブレード用モータ48a及び後側ブレード用モータ48bの作動によりそれぞれ開閉し、皮剥ぎユニット用モータ49の作動により左右方向に移動するように構成されている。そのため、スリットブレード44(前スリットブレード44a及び後スリットブレード44b)の刃先441による被覆電線110(被覆体113)への切込み位置、被覆電線110の径方向への切込み量、及びスリットブレード44の刃先441により被覆電線110の被覆体113に形成する分割スリット115(図14を参照、詳細後述)の長さを高精度に調整することができる。また、ストリップブレード47(前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47b)の湾曲刃471による被覆電線110の径方向への切込み量、及びストリップブレード47の湾曲刃471による被覆電線110への切込み位置を高精度に調整することができる。
【0038】
ここで、図8を追加参照して、被覆電線中間皮剥ぎ装置1における各サーボモータ(前側ブレード用モータ48a、後側ブレード用モータ48b及び皮剥ぎユニット用モータ49)の制御システム(サーボモータ制御システム60)について説明する。このサーボモータ制御システム60は、サーボモータ制御部61とサーボモータ操作入力部62とを備えて構成される。サーボモータ制御部61は、指令部63とモータ回転制御部64とを備え、モータ回転制御部64は更に前側ブレード用モータ回転制御部64a、後側ブレード用モータ回転制御部64b及び皮剥ぎユニット用モータ回転制御部64cを備えている。前側ブレード用モータ回転制御部64aは、前側ブレード用モータ48aの回転速度及び回転位置を制御するものであり、前側ブレード用モータ48aのエンコーダ(図示略)からの検出信号を受けて参照しながら前側ブレード用モータ48aに制御信号を出力するようになっている。後側ブレード用モータ回転制御部64bは、後側ブレード用モータ48bの回転速度及び回転位置を制御するものであり、後側ブレード用モータ48bのエンコーダ(図示略)からの検出信号を受けて参照しながら後側ブレード用モータ48bに制御信号を出力するようになっている。
【0039】
皮剥ぎユニット用モータ回転制御部64cは、皮剥ぎユニット用モータ49の回転速度及び回転位置を制御するものであり、皮剥ぎユニット用モータ49のエンコーダ(図示略)からの検出信号を受けて参照しながら皮剥ぎユニット用モータ49に制御信号を出力するようになっている。指令部63は、モータ回転制御部64(前側ブレード用モータ回転制御部64a、後側ブレード用モータ回転制御部64b及び皮剥ぎユニット用モータ回転制御部64c)に、モータの回転速度及び回転位置に関する指令を与えるものであり、モータ回転制御部64からのフィードバック信号を参照しながらモータ回転制御部64に指令信号を出力するようになっている。サーボモータ操作入力部62は、各サーボモータ(前側ブレード用モータ48a、後側ブレード用モータ48b及び皮剥ぎユニット用モータ49)の回転速度及び回転位置を決めたり変更したりする際に作業者によって操作されるものであり、例えば、タッチペンや指により操作入力可能なタッチパネルにより構成される。サーボモータ操作入力部62が操作されてサーボモータの回転速度や回転位置に関する指定値が入力されると、その指定値を示す指定信号がサーボモータ制御部61に出力され、サーボモータ制御部61はその指定値に基づきサーボモータを制御する。
【0040】
次に、被覆電線中間皮剥ぎ装置1によって行われる、被覆電線110に対する中間皮剥
ぎ処理の手順について、図9図33を追加参照して説明する。なお、以下では、中間皮剥ぎ処理を施される被覆電線110が1本として説明する。中間皮剥ぎ処理では、まず、図9の〈手順1〉に示すように、左クランプ14L及び右クランプ14Rを開いた状態とし、左前クランプ具14Laと左後クランプ具14Lbとの間、及び右前クランプ具14Raと右後クランプ具14Rbとの間に被覆電線110をセットする。次いで、図10の〈手順2〉に示すように、左クランプ14L及び右クランプ14Rを閉じて被覆電線110を把持する。さらに、図11の〈手順3〉に示すように、被覆電線110を把持した状態のまま左クランプ14Lを左方に少し移動させ、被覆電線110に張力を作用させる。これにより、被覆電線110は、左右方向に直線的に延びた状態で左クランプ14L及び右クランプ14Rにより保持される。
【0041】
次に、図12の〈手順4〉に示すように、スリットブレード44を閉じ、前スリットブレード44aと後スリットブレード44bとにより被覆電線110を前後から挟持しつつ、前スリットブレード44a(詳細にはその刃先441(図7を参照))を前方から被覆電線110の被覆体113に切り込ませるとともに、後スリットブレード44b(詳細にはその刃先441(図7を参照))を後方から被覆電線110の被覆体113に切り込ませる。このときの前スリットブレード44aの刃先441による被覆電線110の被覆体113への切込み量は、図7に示すように、被覆体113の径方向の厚みと略一致するか、若干上回るが刃先441と芯線111との間に僅かながら隙間ができるように設定される。すなわち、切り込んだ際、前スリットブレード44aの刃先441が被覆体113を十分に分断しつつ、前スリットブレード44aの刃先441が芯線111内には切り込まない位置で停止するように設定される。同様に、後スリットブレード44bの刃先441による被覆体113への切込み量も、被覆体113の径方向の厚みと略一致するか、若干上回るが刃先441と芯線111との間に僅かながら隙間ができるように設定される。すなわち、切り込んだ際、後スリットブレード44bの刃先441が被覆体113を十分に分断しつつ、後スリットブレード44bの刃先441が芯線111内には切り込まない位置で停止するように設定される。
【0042】
被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、前スリットブレード44aの刃先441による被覆体113への切込み量は、前側ブレード用モータ48aの回転(回転位置)を制御することにより調整され、後スリットブレード44bの刃先441による被覆体113への切込み量は、後側ブレード用モータ48bの回転(回転位置)を制御することにより調整される。そのため、これらの切込み量を高精度に調整することができ、これにより、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bの各刃先441を被覆体113に過不足なく切り込ませることができる。なお、同メーカーにより製造された同種類、同サイズ仕様の被覆電線であっても、製造ロットや製造場所の違い等により芯線の外形寸法や被覆体の外形寸法等にバラつき(「製品バラつき」とも称する)が生じることがある。したがって、このような製品バラつきがある被覆電線110に対して中間皮剥ぎ処理を実行する場合には、前スリットブレード44aの刃先441による被覆体113への切込み量及び後スリットブレード44bの刃先441による被覆体113への切込み量を再調整する必要がある。被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、このような切込み量の再調整を行う場合、作業者がサーボモータ操作入力部62を操作してこれらの切込み量に関する指定値を入力し直すことにより容易に行うことができる。また、被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bの各刃先441による被覆体113への切込み位置(被覆電線110に対する左右方向の位置)は、皮剥ぎユニット用モータ49の回転(回転位置)を制御することにより調整される。そのため、これらの切込み位置を高精度に調整することができる。また、これらの切込み位置を変更する場合は、作業者がサーボモータ操作入力部62を操作してこれらの切込み位置に関する指定値を入力し直すことにより容易に行うことができる。
【0043】
続いて、図13の〈手順5〉に示すように、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bを被覆電線110の被覆体113に切り込ませた状態のまま、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bを左右方向(右方)に所定距離移動させ、被覆体113に、被覆体113をその周方向に分断する左右方向に延びた所定長の分断スリット115を形成する。なお、分断スリット115は、被覆電線110(被覆体113)の前部及び後部に形成されるが、図13以降の図では便宜的に、分断スリット115が被覆電線110(被覆体113)の上部及び下部に形成されるかのように図示する。なお、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bを右方に移動させる際には、その前に、前スリットブレード44aと後スリットブレード44bとを、被覆電線110に切り込んだ当初の状態よりも、互いに僅かに離間させておく。これにより、分断スリット115を形成する際に、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bにより被覆電線110の芯線111が傷付けられる可能性を低減することができる。
【0044】
次いで、図14の〈手順6〉に示すように、スリットブレード44を開き(前スリットブレード44aと後スリットブレード44bとを互いに大きく離間させ)、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bの刃先441を被覆電線110の被覆体113から離脱させる。被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、前スリットブレード44a及び後スリットブレード44bにより被覆体113に形成される分断スリット115の長さ(左右方向の全長寸法)は、皮剥ぎユニット用モータ49の回転(回転位置)を制御することにより調整される。そのため、分断スリット115の長さを高精度に調整することができる。また、分断スリット115の長さを変更する場合は、作業者がサーボモータ操作入力部62を操作して分断スリット115の長さに関する指定値を入力し直すことにより容易に行うことができる。
【0045】
次に、図15の〈手順7〉に示すように、ストリップブレード47(前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47b)を左方に移動させ、分断スリット115の右端部に対応した左右方向の位置(「第1の位置」とも称する)で停止させる。次いで、図16の〈手順8〉に示すように、第1の位置においてストリップブレード47を閉じ、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとにより被覆電線110を前後から挟持しつつ、前ストリップブレード47a(詳細にはその湾曲刃471(図5を参照))を前方から被覆電線110の被覆体113に切り込ませるとともに、後ストリップブレード47b(詳細にはその湾曲刃471(図5を参照))を後方から被覆電線110の被覆体113に切り込ませる。このときの前ストリップブレード47aの湾曲刃471による被覆電線110の被覆体113への切込み量は、図5に示すように、被覆体113の径方向の厚みと略一致するか、若干上回るが湾曲刃471と芯線111との間に僅かながら隙間ができるように設定される。すなわち、切り込んだ際、前ストリップブレード47aの湾曲刃471が被覆体113を十分に分断しつつ、芯線111内には切り込まない位置で停止するように設定される。同様に、後ストリップブレード47bの湾曲刃471による被覆体113への切込み量も、被覆体113の径方向の厚みと略一致するか、若干上回るが湾曲刃471と芯線111との間に僅かながら隙間ができるように設定される。すなわち、切り込んだ際、後ストリップブレード47bの湾曲刃471が被覆体113を十分に分断しつつ、芯線111内には切り込まない位置で停止するように設定される。
【0046】
続いて、図17の〈手順9〉に示すように、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを被覆電線110の被覆体113に切り込ませた状態のまま、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを左右方向(左方)に移動させ、分断スリット115が形成された部分に対応する被覆体(「中間部被覆体113a」とも称する)を左方に押圧する。次に、図18の〈手順10〉に示すように、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bの左方への移動を所定距離継続し、中間部被覆体113aを折り曲げながら被覆電線110の芯線111から剥離する。なお、前ス
トリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを左方に移動させる際には、その前に、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとを、被覆電線110に切り込んだ当初の状態(図5を参照)よりも、互いに僅かに離間させておく(図6を参照)。これにより、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを左方に移動させて中間部被覆体113aを剥離する際に、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bにより芯線111が傷付けられる可能性を低減することができる。
【0047】
次いで、図19の〈手順11〉に示すように、ストリップブレード47を開き、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを被覆電線110から引き離すとともに、ストリップブレード47を左方に移動させる。そして、図20の〈手順12〉に示すように、ストリップブレード47を分断スリット115の左端部に対応した左右方向の位置(「第2の位置」とも称する)で停止させる。次いで、図21の〈手順13〉に示すように、第2の位置においてストリップブレード47を閉じ、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとにより被覆電線110を前後から挟持しつつ、前ストリップブレード47a(詳細にはその湾曲刃471(図5を参照))を前方から被覆電線110の被覆体113に切り込ませるとともに、後ストリップブレード47b(詳細にはその湾曲刃471(図5を参照))を後方から被覆電線110の被覆体113に切り込ませる。このときの前ストリップブレード47aの湾曲刃471による被覆電線110の被覆体113への切込み量は、図5に示すように、被覆体113の径方向の厚みと略一致するか、若干上回るが湾曲刃471と芯線111との間に僅かながら隙間ができるように設定される。すなわち、切り込んだ際、前ストリップブレード47aの湾曲刃471が被覆体113を十分に分断しつつ、芯線111内には切り込まない位置で停止するように設定される。同様に、後ストリップブレード47bの湾曲刃471による被覆体113への切込み量も、被覆体113の径方向の厚みと略一致するか、若干上回るが湾曲刃471と芯線111との間に僅かながら隙間ができるように設定される。すなわち、切り込んだ際、後ストリップブレード47bの湾曲刃471が被覆体113を十分に分断しつつ、芯線111内には切り込まない位置で停止するように設定される。
【0048】
続いて、図22の〈手順14〉に示すように、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを被覆電線110の被覆体113に切り込ませた状態のまま、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを左右方向(右方)に移動させ、中間部被覆体113aを右方に押圧する。なお、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを右方に移動させる際には、その前に、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとを互いに僅かに離間させておく(図6を参照)。これにより、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを右方に移動させる際に、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bにより芯線111が傷付けられる可能性を低減することができる。
【0049】
次に、図23の〈手順15〉及び図24の〈手順16〉に示すように、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとの間隔を徐々に広げながら、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bの右方への移動を継続し、中間部被覆体113aを芯線111から完全に剥離して除去する(剥がし落とす)。そして、図25の〈手順17〉に示すように、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bの右方への移動を停止する。次いで、図26の〈手順18〉に示すように、左クランプ14L及び右クランプ14Rを開いて被覆電線110の保持を解除する。さらに、図27の〈手順19〉に示すように、開いた状態の左クランプ14Lを右方に少し移動させて元の位置に戻し、中間皮剥ぎ処理の一連の工程を終了する。
【0050】
被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、前ストリップブレード47aの湾曲刃471による被
覆体113への切込み量(第1の位置及び第2の位置における切込み量)は、前側ブレード用モータ48aの回転(回転位置)を制御することにより調整され、後ストリップブレード47bの湾曲刃471による被覆体113への切込み量(第1の位置及び第2の位置における切込み量)は、後側ブレード用モータ48bの回転(回転位置)を制御することにより調整される。そのため、これらの切込み量を高精度に調整することができ、これにより、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bの各湾曲刃471を被覆体113に過不足なく切り込ませることができる。なお、製品バラつきがある被覆電線110に対して中間皮剥ぎ処理を実行する場合には、前ストリップブレード47aの湾曲刃471による被覆体113への切込み量及び後ストリップブレード47bの湾曲刃471による被覆体113への切込み量を再調整する必要がある。被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、このような切込み量の再調整を行う場合、作業者がサーボモータ操作入力部62を操作してこれらの切込み量に関する指定値を入力し直すことにより容易に行うことができる。また、被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bの各湾曲刃471による被覆体113への切込み位置(第1の位置に対応した切込み位置及び第2の位置に対応した切込み位置)は、皮剥ぎユニット用モータ49の回転(回転位置)を制御することにより調整される。そのため、これらの切込み位置を高精度に調整することができる。
【0051】
なお、中間皮剥ぎ処理においては被覆体113を剥離し易くために、ストリップブレード47(前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47b)による被覆体113への2つの切込み位置間の範囲R1が、スリットブレード44(前スリットブレード44a及び後スリットブレード44b)による分割スリット115の形成範囲R2(図28を参照)内に含まれるように、分割スリット115の形成位置及び長さとストリップブレード47による2つの切込み位置が設定される。これにより、分割スリット115の左右両端部がストリップブレード47による2つの切込み位置よりも左右方向にはみ出す(このはみ出した部分を「スリット切込みオーバー部115a」と称する)ことになるが、このオーバー部115aの長さはなるべく短くなるようにすることが好ましい。スリット切込みオーバー部115aが長すぎると、図29に示すように、被覆体113の端面が捲れ上がる被覆端面捲れが生じる虞があるからである。被覆電線中間皮剥ぎ装置1では、ストリップブレード47(前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47b)による被覆体113への2つの切込み位置、並びに、分割スリット115の形成位置及び長さを高精度に調整することができる。そのため、スリット切込みオーバー部115aの長さを適正な長さに調整することができ、これにより被覆端面捲れの発生を防止し、中間皮剥ぎ処理を行った被覆電線110の製品品質を高めることができる。
【0052】
上述した中間皮剥ぎ処理における手順を一部変更してもよい。例えば、上述の〈手順9〉~〈手順16〉に替えて図30図33に示す〈変更手順a〉~〈変更手順d〉を行うようにしてもよい。図30に示す〈変更手順a〉では、図17の〈手順9〉とは異なり、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを被覆電線110の被覆体113に切り込ませた状態のままでの前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bの左方への移動は行わない。替わりに、ストリップブレード47を開き、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを被覆電線110から引き離す。そして、図31の〈変更手順b〉に示すように、ストリップブレード47(前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47b)を左方に移動させ、分断スリット115の左端部に対応した第2の位置で停止させる。
【0053】
次いで、図32の〈変更手順c〉に示すように、第2の位置においてストリップブレード47を閉じ、前ストリップブレード47aと後ストリップブレード47bとにより被覆電線110を前後から挟持しつつ、前ストリップブレード47aを前方から被覆電線110の被覆体113に切り込ませるとともに、後ストリップブレード47bを後方から被覆
電線110の被覆体113に切り込ませる。続いて、図33の〈変更手順d〉に示すように、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを被覆電線110の被覆体113に切り込ませた状態のまま、前ストリップブレード47a及び後ストリップブレード47bを左右方向(右方)に移動させ、中間部被覆体113aを芯線111から剥離して除去する。このような〈変更手順a〉~〈変更手順d〉によっても中間部被覆体113aを剥離することができるが、上述の〈手順9〉~〈手順16〉によって中間部被覆体113aを折り曲げた状態で剥離する方が、中間部被覆体113aが剥がれ落ち易くなるという利点がある。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、前スリットブレード44aを前後方向に移動させるサーボモータと、前ストリップブレード47aを前後方向に移動させるサーボモータが、1つの前側ブレード用モータ48aにより構成されているが、これらのサーボモータを別々に構成してもよい。同様に、上記実施形態では、後スリットブレード44bを前後方向に移動させるサーボモータと、後ストリップブレード47bを前後方向に移動させるサーボモータが、1つの後側ブレード用モータ48bにより構成されているが、これらのサーボモータを別々に構成してもよい。なお、サーボモータに替えてステッピングモータを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 被覆電線中間皮剥ぎ装置
5L 左クランプユニット
5R 右クランプユニット
7 皮剥ぎユニット
14L 左クランプ
14R 右クランプ
41 皮剥ぎユニットステージ
44a 前スリットブレード
44b 後スリットブレード
47a 前ストリップブレード
47b 後ストリップブレード
48a 前側ブレード用モータ
48b 後側ブレード用モータ
49 皮剥ぎユニット用モータ
110 被覆電線
111 芯線
113 被覆体
113a 中間部被覆体
115 分割スリット
図1
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