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  • 特開-ボイラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034570
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/18 20060101AFI20230306BHJP
   F23N 1/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F23N5/18 101Q
F23N1/02 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140872
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】宮川 亮
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003AB01
3K003AB03
3K003AB06
3K003AC02
3K003BB01
3K003CA06
3K003CB03
3K003CB05
3K003CC02
3K003DA03
3K003DA04
(57)【要約】
【課題】いずれの燃焼量においても空気比を適正範囲に収束させることができるボイラを提供することである。
【解決手段】ボイラ本体へ空気を送り込むための送風路と、ボイラ本体へ燃料を供給するための燃料供給路と、燃料供給路に設けられ、送風路の第1位置と当該第1位置よりも下流側の第2位置との差圧に応じて開度を調整する第1調整弁と、燃料供給路において第1調整弁よりも下流側に設けられ、開度を調整する第2調整弁と、第1の燃焼量から第1の燃焼量よりも大きい第2の燃焼量までを含む間において燃焼量を制御するとともに、第2調整弁の開度を制御する制御部とを備え、第2調整弁の開度の基準となる基準開度は、制御部により制御される燃焼量に応じて予め定められており、制御部は、制御する燃焼量に応じて定められている基準開度に基づいて第2調整弁の開度を制御するボイラ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ本体へ空気を送り込むための送風路と、
ボイラ本体へ燃料を供給するための燃料供給路と、
前記燃料供給路に設けられ、前記送風路の第1位置と当該第1位置よりも下流側の第2位置との差圧に応じて開度を調整する第1調整弁と、
前記燃料供給路において前記第1調整弁よりも下流側に設けられ、開度を調整する第2調整弁と、
第1の燃焼量から当該第1の燃焼量よりも大きい第2の燃焼量までを含む間において燃焼量を制御するとともに、前記第2調整弁の開度を制御する制御部とを備え、
前記第2調整弁の開度の基準となる基準開度は、前記制御部により制御される燃焼量に応じて予め定められており、
前記制御部は、制御する燃焼量に応じて定められている基準開度に基づいて前記第2調整弁の開度を制御する、ボイラ。
【請求項2】
前記第1調整弁は、前記第1の燃焼量に制御して稼働させた場合に取り得る前記第1位置と前記第2位置との第1の差圧時に第1の開度となり、前記第2の燃焼量に制御して稼働させた場合に取り得る前記第1位置と前記第2位置との第2の差圧時に第2の開度となるように予め定められており、前記第1の燃焼量と前記第2の燃焼量との間における第3の燃焼量に制御して稼働させた場合には当該第1の開度と第2の開度との間であって前記第1位置と前記第2位置との差圧に応じた開度となり、
前記第2調整弁の基準開度は、前記第1の燃焼量に応じて第3の開度が定められ、前記第2の燃焼量に応じて第4の開度が定められ、前記第3の燃焼量に応じて第5の開度が定められており、
前記第1調整弁の第1の開度と前記第2調整弁の第3の開度は、前記第1の燃焼量に制御して稼働させた場合において、空気比が閾値以下でかつ排ガス中の窒素酸化物濃度が所定値以下の特定状態となる開度に定められており、
前記第1調整弁の第2の開度と前記第2調整弁の第4の開度は、前記第2の燃焼量に制御して稼働させた場合において前記特定状態となる開度に定められており、
前記第2調整弁の第5の開度は、前記第3の燃焼量に制御して稼働させた場合に、前記第1調整弁の開度が前記第1位置と前記第2位置との差圧に応じた開度となる場合であっても、前記特定状態となる開度に定められている、請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記第1の燃焼量と前記第2の燃焼量との間における第3の燃焼量には、前記第1の燃焼量および前記第2の燃焼量各々に応じて定められている基準開度とは異なる基準開度が定められている、請求項1または請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記第1の燃焼量に応じて定められている基準開度と、前記第2の燃焼量に応じて定められている基準開度とは、いずれも、全閉状態でも全開状態でもない開度に定められている、請求項1~請求項3のいずれかに記載のボイラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノズルに燃料を供給する燃料供給ライン上において、燃焼用空気の流量(圧力)に基づいて開度の調節を行う機械式の比例弁を設けたボイラがある(例えば、特許文献1参照)。機械式の比例弁は、電子式の比例弁よりも、部品点数が少ないため故障し難く安全性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-2787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のボイラが備える機械式の比例弁については、一般的に、最大燃焼量における燃焼用空気の流量に対して適正な空気比となるように最大開度が設定され、最小燃焼量における燃焼用空気の流量に対して適正な空気比となるように最小開度が設定される。一方、最小燃焼量より大きく最大燃焼量よりも小さい中間の燃焼量となる場合には、設定済の最小開度と最大開度との間であって実際の燃焼用空気の流量に応じた開度となり、空気比がなりゆき任せとなる。このため、中間の燃焼量となる場合には、空気比を適正範囲内に収束させることができずに、空気比が低すぎて排ガス中の窒素酸化物(NOx)の濃度(以下、「NOx値」ということがある)が一定値を超えてしまったり、空気比が高すぎて燃焼限界(閾値)を超えて失火してしまったりする虞がある。特に、近年、環境への関心が高まっているところ、NOxなどの大気汚染物質の排出濃度や排出量を規制して大気汚染を低減するためにも、ボイラが設定可能となるいずれの燃焼量においても空気比を適正範囲に収束させることが求められる。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、いずれの燃焼量においても空気比を適正範囲に収束させることができるボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うボイラは、ボイラ本体へ空気を送り込むための送風路と、ボイラ本体へ燃料を供給するための燃料供給路と、前記燃料供給路に設けられ、前記送風路の第1位置と当該第1位置よりも下流側の第2位置との差圧に応じて開度を調整する第1調整弁と、前記燃料供給路において前記第1調整弁よりも下流側に設けられ、開度を調整する第2調整弁と、第1の燃焼量から当該第1の燃焼量よりも大きい第2の燃焼量までを含む間において燃焼量を制御するとともに、前記第2調整弁の開度を制御する制御部とを備え、前記第2調整弁の開度の基準となる基準開度は、前記制御部により制御される燃焼量に応じて予め定められており、前記制御部は、制御する燃焼量に応じて定められている基準開度に基づいて前記第2調整弁の開度を制御する。
【0007】
上記の構成によれば、差圧に応じて開度を調整する第1調整弁を用いつつも、第2調整弁の基準開度が燃焼量に応じて空気比が適正範囲となる開度となるように定め、当該第2調整弁によりボイラ本体に供給する燃料の流量を調整することにより、いずれの燃焼量においても空気比を適正範囲に収束させることができる。
【0008】
好ましくは、前記第1調整弁は、前記第1の燃焼量に制御して稼働させた場合に取り得る前記第1位置と前記第2位置との第1の差圧時に第1の開度となり、前記第2の燃焼量に制御して稼働させた場合に取り得る前記第1位置と前記第2位置との第2の差圧時に第2の開度となるように予め定められており、前記第1の燃焼量と前記第2の燃焼量との間における第3の燃焼量に制御して稼働させた場合には当該第1の開度と第2の開度との間であって前記第1位置と前記第2位置との差圧に応じた開度となり、前記第2調整弁の基準開度は、前記第1の燃焼量に応じて第3の開度が定められ、前記第2の燃焼量に応じて第4の開度が定められ、前記第3の燃焼量に応じて第5の開度が定められており、前記第1調整弁の第1の開度と前記第2調整弁の第3の開度は、前記第1の燃焼量に制御して稼働させた場合において、空気比が閾値以下でかつ排ガス中の窒素酸化物濃度が所定値以下の特定状態となる開度に定められており、前記第1調整弁の第2の開度と前記第2調整弁の第4の開度は、前記第2の燃焼量に制御して稼働させた場合において前記特定状態となる開度に定められており、前記第2調整弁の第5の開度は、前記第3の燃焼量に制御して稼働させた場合に、前記第1調整弁の開度が前記第1位置と前記第2位置との差圧に応じた開度となる場合であっても、前記特定状態となる開度に定められている。
【0009】
上記の構成によれば、第1の燃焼量および第2の燃焼量に制御して稼働させている場合のみならず第3の燃焼量に制御して稼働させている場合においても、第1調整弁の開度が差圧に応じた開度としつつも、第2調整弁により特定状態となるように制御できる。
【0010】
好ましくは、前記第1の燃焼量と前記第2の燃焼量との間における第3の燃焼量には、前記第1の燃焼量および前記第2の燃焼量各々に応じて定められている基準開度とは異なる基準開度が定められている。
【0011】
上記の構成によれば、第1の燃焼量および第2の燃焼量各々に応じた基準開度にかかわらず、第3の燃焼量に応じた基準開度を定めることにより、燃焼量に応じてより適正な空気比となるように厳密に調整可能となる。
【0012】
好ましくは、前記第1の燃焼量に応じて定められている基準開度と、前記第2の燃焼量に応じて定められている基準開度とは、いずれも、全閉状態でも全開状態でもない開度に定められている。
【0013】
上記の構成によれば、第3の燃焼量に応じた基準開度を、第1の燃焼量および第2の燃焼量各々に応じて定められている基準開度よりも大きくすることも小さくすることも可能であり、よりフレキシブルに調整可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ボイラの概略構成を模式的に示す図である。
図2】(a)および(b)は、第1調整弁のみで燃料の流量を調整する場合において中燃焼段階時における空気比が適正範囲内とならない例を示し、(c)および(d)は、第1調整弁と第2調整弁とにより燃料の流量を調整する場合において中燃焼段階を含むいずれの燃焼段階においても空気比が適正範囲内となる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態に係るボイラの概略構成について説明する。
【0016】
ボイラ1は、図1に示すように、ボイラ本体2と、送風路30を介してボイラ本体2の燃焼室内に空気を送り込む送風機3と、ボイラ本体2からの排ガスを導出する排気通路4と、ボイラ本体2に燃料を供給する燃料供給路5と、ボイラ本体2に給水を行う給水ライン(図示せず)と、ボイラ1の運転・動作を制御する制御部6とを備えている。なお、燃料は、ガスである例について説明するが、ガスなどの気体に限らず、油などの液体であってもよい。
【0017】
燃料供給路5は、送風路30に接続されている。燃料供給路5から供給される燃料は、送風路30において、送風機3から送風される空気と混合されて、ボイラ本体2内のバーナ20に供給される。
【0018】
送風機3から供給される空気は、燃焼用空気として送風路30を介してボイラ本体2内のバーナ20に供給される。燃焼用空気の流量の調整は、送風路30にダンパ7を設けて、ダンパ7の位置(開度)を調整するか、これに代えてまたはこれに加えて、インバータを用いて送風機3のファンの回転速度を変えることでなされる。
【0019】
制御部6は、例えば、燃焼量が異なる複数種類の燃焼段階として、例えば、低燃焼段階(第1の燃焼量)、中燃焼段階(第3の燃焼量)、高燃焼段階(第2の燃焼量)のいずれかの燃焼段階に制御する。制御部6は、設定されている目標蒸気圧と蒸気ヘッダの蒸気圧とに応じて、燃焼段階を制御する。制御部6は、制御されている燃焼段階に応じた態様(例えば、回転数、周波数、開度)となるよう送風機3やダンパ7を制御し、燃焼段階に応じた量の燃焼用空気を供給する。
【0020】
燃料供給路5には、流路を開閉するための開閉弁11(電磁弁)と、供給する燃料の流量を調整する第1調整弁12と、当該第1調整弁12の下流側においてバイパスラインが設けられ、オリフィス16と第2調整弁17とが並列に設けられている。第1調整弁12は、供給される燃焼用空気の流量に応じて、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整可能な調整弁として機能するとともに遮断機能をも備える。本実施の形態における第1調整弁12としては、例えば、供給される燃焼用空気の流量に応じた開度に、機械的に自動調整されるガバナを例示するが、供給される燃焼用空気の流量に応じた開度に調整される調整弁であればこれに限るものではない。
【0021】
本実施の形態では、送風路30には、ダンパ7より下流にパンチングメタル等の燃焼用空気減圧部材8が設けられている。送風路30は、燃焼用空気減圧部材8より上流の第1位置P1において、第1連通路14により燃料供給路5上に設けられた第1調整弁12と連通している。また、送風路30は、燃焼用空気減圧部材8より下流の第2位置P2において、第2連通路15により燃料供給路5上に設けられた第1調整弁12と連通している。
【0022】
第1調整弁12は、第1連通路14内と第2連通路15内との差圧(基本的には送風路30内の燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧と同じとなる)に応じて開度が変化するように構成されている。第1調整弁12は、導入される差圧と供給する燃料の圧力(2次側の圧力)とが均圧となるように機械的に開度が調整される均圧弁である。ガバナの下流側流路からは、分岐路13が設けられている。第1調整弁12は、分岐路13から得られる二次側の圧力が、導入される送風路30内の燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧に応じた圧力となるように開度を調整することができる。これにより、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧が増大すれば、第1調整弁12を通過可能となる燃料の流量が増大し、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧が減少すれば、第1調整弁12を通過可能となる燃料の流量が減少する。
【0023】
本実施の形態における第1調整弁12のように差圧に応じて開度を調整する調整弁については、一般的に、ボイラを最小燃焼量(例えば、低燃焼段階)に制御して稼働させた場合には、その際に取り得る第1位置P1と第2位置P2との差圧時において、供給される燃焼用空気の流量に対して空気比(空燃比ともいう)が適正範囲となる燃料を供給する開度(最小開度)となり、ボイラを最大燃焼量(例えば、高燃焼段階)に制御して稼働させた場合には、その際に取り得る第1位置P1と第2位置P2との差圧時において、空気比が適正範囲となる燃料を供給する開度(最大開度)となるように、当該調整弁の最小開度と最大開度とが初期設定(ゼロスパンともいう)される。これにより、最小燃焼量および最大燃焼量においては、適正な空気比で燃焼させることができる。適正な空気比とは、例えば、排ガス中のNOxの濃度が一定値を超えてしまうような低空気比ではなく、燃焼限界を超えて失火してしまうような高空気比でもない、これらの間(適正範囲)における空気比をいう。また、適正な空気比となっている状態を特定状態ともいう。
【0024】
これに対して、ボイラを最小燃焼量と最大燃焼量との間における中間の燃焼量(例えば、中燃焼段階)に制御して稼働させた場合には、調整弁の開度が、初期設定された最小開度・最大開度、最小燃焼量・最大燃焼量における燃焼用空気の流量、および、当該中間の燃焼量における実際の差圧などに応じたなりゆき任せの開度となり、その結果、空気比もなりゆき任せとなる。中間の燃焼量に制御して稼働させた場合の調整弁の開度は、例えば、(「最大開度」-「最小開度」)÷(「最大燃焼量における燃焼用空気の流量」-「最小燃焼量における燃焼用空気の流量」)×(「中間の燃焼量における燃焼用空気の流量」-「最小燃焼量における燃焼用空気の流量」)+「最小開度」から算出される値などになる。このため、中間の燃焼量となる場合には、空気比を適正範囲内に収束させることができずに、空気比が低すぎて排ガス中のNOxの濃度が一定値を超えてしまったり、空気比が高すぎて燃焼限界を超えて失火してしまったりする虞がある。
【0025】
ここで、図2(a)および図2(b)を参照して具体例を説明する。図2(a)および図2(b)には、第1調整弁12のようなガバナのみで燃料の流量を調整する場合において中燃焼段階時における空気比が適正範囲内とならない例を示している。図2(a)および図2(b)では、横軸に高燃焼段階、中燃焼段階、低燃焼段階が示され、縦軸に燃焼段階毎の燃焼量、当該燃焼量で稼働させた場合の差圧、差圧に応じたガバナの開度、および、空気比が示されている。図2では、高燃焼段階における燃焼量が100%であり、中燃焼段階における燃焼量が60%であり、低燃焼段階における燃焼量が25%であるものとする。また、図2(a)および図2(b)では、ボイラを高燃焼段階に制御して稼働させた場合には、その際に取り得る第1位置P1と第2位置P2との差圧が「a」となり、当該「a」に対して空気比が適正範囲となる燃料を供給する第1調整弁の最大開度として「80%」を初期設定し、ボイラを低燃焼段階に制御して稼働させた場合には、その際に取り得る第1位置P1と第2位置P2との差圧が「c」となり、当該「c」に対して空気比が適正範囲となる燃料を供給する第1調整弁の最小開度として「30%」を初期設定しているものとする。なお、開度に対するパーセンテージは、全開に対して開いている割合を示している。
【0026】
このような前提において、図2(a)では、ボイラを中燃焼段階に制御して稼働させた場合に、差圧が「b1」となり、第1調整弁の開度が当該「b1」に応じたなりゆき任せの開度として「58%」となり、供給されている燃焼用空気の流量に対して供給する燃料が多くなり過ぎる結果、空気比が低すぎて排ガス中のNOxの濃度が一定値を超えてしまう虞がある場合を例示している。また、図2(b)では、ボイラを中燃焼段階に制御して稼働させた場合に、差圧が「b2」(例えば、b2<b1)となり、第1調整弁の開度が当該「b2」に応じたなりゆき任せの開度として「50%」となり、供給されている燃焼用空気の流量に対して供給する燃料が少なくなり過ぎる結果、空気比が高すぎて燃焼限界を超えて失火してしまう虞がある場合を例示している。このように、第1調整弁12のようなガバナのみで燃料の流量を調整する場合には、高燃焼段階および低燃焼段階においては空気比が適正範囲となるように第1調整弁の開度を初期設定できるものの、中間の燃焼段階においては、初期設定された最小・最大開度、最小燃焼量・最大燃焼量における燃焼用空気の流量、および、当該中間の燃焼量における実際の差圧などに応じたなりゆき任せの開度となり、空気比もなりゆき任せとなる。その結果、必ずしも空気比を適正範囲内に収束させることができるとはいえない。
【0027】
そこで、本実施の形態では、差圧に応じて第1調整弁12により供給可能(通過可能)となる燃料の最大流量を調整し、第1調整弁12よりも下流側に第2調整弁17を設けて、第2調整弁17の開度を燃焼量に応じた基準開度に調整する。具体的に、第1調整弁12の最小開度および最大開度は、当該第1調整弁12のみで調整する場合により大きな開度(供給されている燃焼用空気の流量に対して通過可能とする燃料が多くなる開度)が初期設定され、第2調整弁17の開度を燃焼量に応じた開度に調整することにより、第1調整弁12を通過する燃料のうちボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整する。燃焼量に応じた第2調整弁17の基準開度としては、第1調整弁12の開度が実際の差圧に応じた開度となった場合に、空気比が適正範囲内となる開度が予め定められている。
【0028】
第1調整弁12の初期設定に関して、ボイラ1を最小燃焼量(例えば、低燃焼段階)に制御して稼働させた場合には、その際に取り得る第1位置P1と第2位置P2との差圧時において、空気比が適正範囲となる燃料の流量よりも多い流量を供給可能とする開度を最小開度として初期設定し、ボイラ1を最大燃焼量(例えば、高燃焼段階)に制御して稼働させた場合には、その際に取り得る第1位置P1と第2位置P2との差圧時において、空気比が適正範囲となる燃料の流量よりも多い流量を供給可能とする開度を最大開度として初期設定する。また、ボイラ1を中燃焼段階に制御して稼働させた場合には、初期設定された最小・最大開度、最小燃焼量・最大燃焼量における燃焼用空気の流量、および、当該中燃焼段階における実際の差圧などに応じたなりゆき任せの開度となる。これらを前提とし、第2調整弁17の開度として燃焼量(高燃焼段階、中燃焼段階、低燃焼段階)毎にボイラ1における燃焼時の空気比が適正範囲内となる基準開度を予め定め、制御部6は、実際に制御する燃焼量に応じて予め定められている基準開度に基づいて、第2調整弁17の開度を制御する。なお、燃焼量毎の第2調整弁17の基準開度は、ボイラの設計段階あるいは設置段階等において事前に算出・特定され、制御部6の記憶部などに予め記憶されているものとする。
【0029】
ここで、図2(c)および図2(d)を参照して具体例を説明する。図2(c)および図2(d)には、第1調整弁12と第2調整弁17とにより燃料の流量を調整する場合において中燃焼段階を含むいずれの燃焼段階においても空気比が適正範囲内となる例を示している。図2(c)は、図2(a)で示された例に対して、第2調整弁17の開度を調整することにより、空気比を適正範囲内に収束させた例を示している。また、図2(d)は、図2(b)で示された例に対して、第2調整弁17の開度を調整することにより、空気比を適正範囲内に収束させた例を示している。なお、図2(c)および図2(d)では、図2(a)等で示した縦軸の項目に加えて第2調整弁17の開度が示されている。
【0030】
図2(c)および図2(d)では、ボイラを低燃焼段階に制御して稼働させた場合には、差圧「c」に対して第1調整弁12の最小開度として「40%」(第1の開度)を初期設定し、ボイラを高燃焼段階に制御して稼働させた場合には、差圧「a」に対して第1調整弁12の最大開度として「100%」(第2の開度)を初期設定しているものとする。このように、図2(a)等と比較して、大きな開度が初期設定される。また、ボイラを低燃焼段階に制御して稼働させた場合の第2調整弁17の開度として「75%」(第3の開度)が設定され、ボイラを高燃焼段階に制御して稼働させた場合の第2調整弁17の開度として「80%」(第4の開度)が設定されている。第2調整弁17の開度「75%」は、ボイラを低燃焼段階に制御して稼働させた場合であって、第1調整弁12の開度を最小開度「40%」とした場合に、ボイラ1における燃焼時の空気比が適正範囲内となる開度である。また、第2調整弁17の開度「80%」は、ボイラを高燃焼段階に制御して稼働させた場合であって、第1調整弁12の開度を最大開度「100%」とした場合に、ボイラ1における燃焼時の空気比が適正範囲内となる開度である。このため、図2(c)および図2(d)では、低燃焼段階および高燃焼段階各々における空気比が適正範囲内となっていることが示されている。
【0031】
一方、図2(c)では、ボイラ1を中燃焼段階に制御して稼働させた場合に、図2(a)でも例示したように、差圧が「b1」となり、第1調整弁12の開度が当該「b1」に応じたなりゆき任せの開度として「77%」となった場合を例示している。また、図2(d)では、ボイラ1を中燃焼段階に制御して稼働させた場合に、図2(c)でも例示したように、差圧が「b2」(例えば、b2<b1)となり、第1調整弁12の開度が当該「b2」に応じたなりゆき任せの開度として「70%」となった場合を例示している。このように第1調整弁12の開度がなりゆき任せの開度となる場合であっても、第2調整弁17の中燃焼段階に応じた開度として、ボイラ1における燃焼時の空気比が適正範囲内となる開度(第5の開度)が定められている。具体的には、図2(c)の場合においては、第2調整弁17の中燃焼段階に応じた基準開度として「71%」が定められており、中燃焼段階における空気比が適正範囲内となっていることが示されている。また、図2(d)の場合においては、第2調整弁17の中燃焼段階に応じた基準開度として「78%」が定められており、中燃焼段階における空気比が適正範囲内となっていることが示されている。これにより、図2(c)および図2(d)に示されるように、低燃焼段階および高燃焼段階のみならず、中燃焼段階における空気比についても適正範囲内となっていることが示されている。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、図1に示すように、差圧に応じて開度を調整する第1調整弁12を用いつつも、当該第1調整弁12の下流側において第2調整弁17を設けて、図2(c)および図2(d)で例示したように、当該第2調整弁17の基準開度が燃焼量(燃焼段階)に応じて空気比が適正範囲となる開度となるように定められ、当該第2調整弁17によりボイラ1に供給する燃料の流量を調整する。これにより、いずれの燃焼量においても空気比を適正範囲に収束させることができる。
【0033】
また、図2(c)および図2(d)で例示したように、第1調整弁12の最小開度と低燃焼段階に応じた第2調整弁17の基準開度は、低燃焼段階に制御して稼働させた場合において、空気比が適正範囲内となる開度に定められている。また、第1調整弁12の最大開度と高燃焼段階に応じた第2調整弁17の基準開度は、高燃焼段階に制御して稼働させた場合において、空気比が適正範囲内となる開度に定められている。さらに、中燃焼段階に応じた第2調整弁17の基準開度は、中燃焼段階に制御して稼働させた場合に、第1調整弁12の開度が差圧に応じたなりゆき任せの開度となる場合であっても、空気比が適正範囲内となる開度に定められている。これにより、低燃焼段階および高燃焼段階に制御して稼働させている場合のみならず中燃焼段階に制御して稼働させている場合においても、第1調整弁12の開度が差圧に応じたなりゆき任せの開度となりつつも、第2調整弁17により空気比が適正範囲内となるように収束させることができる。
【0034】
また、本実施の形態では、第2調整弁17について、中燃焼段階に応じた基準開度として、図2(c)では「71%」、図2(d)では「78%」が定められている。これらの数値は、図2(c)および図2(d)において、低燃焼段階の基準開度として設定された「75%」、および高燃焼段階の基準開度として設定された「80%」とは異なる数値となっている。このように中燃焼段階に応じた基準開度として、低燃焼段階および高燃焼段階に応じた基準開度にかかわらない基準開度が定められているため、燃焼量に応じてより適正な空気比となるように厳密に調整可能となる。
【0035】
また、本実施の形態では、図2(c)および図2(d)に示すように、第2調整弁17の低燃焼段階および高燃焼段階に応じた基準開度は、それぞれ「75%」および「80%」であり、いずれも、全閉状態でも全開状態でもない開度に定められている。このため、中燃焼段階に応じた基準開度は、低燃焼時および高燃焼時の基準開度よりも大きくすることも小さくすることも可能であり、例えば、図2(c)では「71%」、図2(d)では「78%」としており、よりフレキシブルに調整可能となる。例えば、低燃焼段階および高燃焼段階に応じた基準開度として100%と設定することも可能であるが、その場合には、中燃焼段階に応じた基準開度を低燃焼段階および高燃焼段階に応じた基準開度よりも小さい開度方向にしか調整できないところ、このような制約を受けてしまうことを回避できる。
【0036】
本発明では、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0037】
上記の実施の形態においては、第2調整弁17を燃焼量に応じた基準開度に基づく開度に制御する例について説明したが、当該開度を運転状態中における使用環境・状況等に応じて制御装置6により随時補正してもよい。制御装置6は、例えば、空気比と、排ガス中のNOxの濃度を随時検出し、検出された空気比と排ガス中のNOx濃度とに基づいて、例えば、高空気比となって燃焼限界が近づいているといきには燃料の供給量を増やし、排ガス中のNOx濃度が高くなっているときには低空気比となっているため燃料の供給量を減らすよう、燃焼量に応じて制御された第2調整弁17の開度を調整するものであってもよい。これに替えて、あるいは加えて、制御装置6は、例えば、燃料の温度や燃焼用空気の温度等に応じて、燃焼量に応じて制御された第2調整弁17の開度を調整するものであってもよい。
【0038】
上記の実施の形態におけるボイラ1は、設定されている目標蒸気圧と蒸気ヘッダの蒸気圧に応じて、燃焼量が異なる複数の燃焼段階のいずれかに制御する例(いわゆる多位置制御)について説明したが、これに限らず、設定されている目標蒸気圧と蒸気ヘッダの蒸気圧に応じて、任意の燃焼量となるように比例制御するものであってもよい。
【0039】
上記の実施の形態では、第2調整弁17と並列でオリフィス16が設けられている。このオリフィス16については、仮に第2調整弁17が全開状態あるいは全閉状態で故障した場合であっても、安全に燃焼可能な範囲(あるいは空気比が適正範囲内)に収まる圧力損失となるものが望ましい。これにより、仮に第2調整弁17が故障した場合であっても、ボイラ1の稼働を継続できる。
【0040】
上記の実施の形態においては、第2調整弁17を燃焼量に応じた基準開度に基づく開度に制御する例について説明したが、着火時における第2調整弁17の開度は、低燃焼段階に応じて定められた基準開度と、高燃焼段階に応じて定められた基準開度のいずれよりも大きくすることが望ましい。空気比が高い場合には着火しにくいため、着火時に第2調整弁17の開度を大きくして燃料供給量を一時的に大きくすることで不着火を防止することができる。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 ボイラ
2 ボイラ本体
3 送風機
4 排気通路
5 燃料供給路
6 制御部
7 ダンパ
8 燃焼用空気減圧部材
11 開閉弁
12 第1調整弁
13 分岐路
14 第1連通路
15 第2連通路
16 オリフィス
17 第2調整弁
20 バーナ
30 送風路

図1
図2