(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034573
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】浮体
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20230306BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20230306BHJP
B63H 21/14 20060101ALI20230306BHJP
C01C 1/02 20060101ALI20230306BHJP
F17C 11/00 20060101ALI20230306BHJP
B01D 53/58 20060101ALI20230306BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20230306BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230306BHJP
F02B 43/10 20060101ALI20230306BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20230306BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B63B25/16 M
B63B25/16 D
B63B25/16 Z
B63H21/38 B
B63H21/14
C01C1/02 E
F17C11/00 B
B01D53/58 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 200
F02B43/10 Z
F02M21/02 M
F02M25/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140875
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 秀明
【テーマコード(参考)】
3E172
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172FA13
4D002AA13
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA35
4D002DA36
4D002EA02
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB04
4D002GB09
4D002GB11
4D002GB20
4D020AA10
4D020BA23
4D020CC01
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB03
4D020DB04
4D020DB06
4D020DB08
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】作業員の負担や燃料消費が増大することを抑制しつつアンモニアを除去可能とする。
【解決手段】浮体本体と、前記浮体本体に設けられて、アンモニアを吸収可能な吸収液が貯留された吸収タンクと、前記吸収タンク内の気相分を大気に開放可能な大気開放ラインと、前記浮体本体内の前記アンモニアを前記吸収液に導くアンモニア導入部と、前記吸収液におけるアンモニアの溶解度を調整可能な溶解度調整部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮かぶ浮体本体と、
前記浮体本体に設けられて、アンモニアを吸収可能な吸収液が貯留された吸収タンクと、
前記吸収タンク内の気相を大気に開放可能な大気開放ラインと、
前記浮体本体内のアンモニアを前記吸収タンクに貯留された前記吸収液に導入するアンモニア導入部と、
前記吸収液における前記アンモニアの溶解度を調整可能な溶解度調整部と、
を備える浮体。
【請求項2】
前記溶解度調整部は、
前記気相における前記アンモニアの濃度、前記吸収液の温度、前記吸収液のペーハー、前記気相のペーハー及び、前記気相の圧力のうち、少なくとも一つを調整することで前記アンモニアの溶解度を調整する
請求項1に記載の浮体。
【請求項3】
前記アンモニアを燃料とする燃焼装置と、
燃料としての前記アンモニアを貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンクから前記燃焼装置へ前記アンモニアを供給する燃料ラインと、
前記燃料ライン内にパージガスを供給するパージガス供給装置と、
前記パージガスにより押圧された前記燃料ライン内の前記アンモニアを排出するパージ排出ラインと、
を備え、
前記アンモニア導入部は、
前記パージ排出ラインにより排出された前記アンモニアを前記吸収液に導入させる
請求項1又は2に記載の浮体。
【請求項4】
前記浮体本体は、アンモニア関連機器が収容されると共に外気を導入可能な区画を備え、
前記アンモニア導入部は、前記区画内の気体を前記吸収液に導入する
請求項1又は2に記載の浮体。
【請求項5】
前記大気開放ラインを閉塞可能な大気開放バルブを備え、
前記吸収タンクは、大気圧よりも高圧で密閉可能な圧力タンクである
請求項1から4の何れか一項に記載の浮体。
【請求項6】
前記大気開放ラインを介して大気中に放出される前記気相の気体を、希釈気体により希釈可能な排出気体希釈部を備える
請求項1から5の何れか一項に記載の浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮体に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等の浮体においては、発電所向け燃料としてのアンモニアを運搬及び供給する場合や、主機等の燃料としてアンモニアを用いる場合に、アンモニアを取扱う機器を収容する機器室などの区画でアンモニアの漏洩が生じる可能性がある。このような区画でアンモニア漏洩が生じた場合、漏洩したアンモニアが気化して区画外に漏出することが想定される。
特許文献1には、区画内に連通する密閉されたダクトを設けて、このダクト内で水を散布し、ダクト内でアンモニアを水に吸収させて区画内を負圧にすることで、区画外へのアンモニアの漏出を防止する技術が提案されている。この特許文献1では、アンモニアを吸収させた水を、水槽に戻して再度散水ノズルに循環させるか、又は、他の処理施設に排出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浮体においては、アンモニアと軽油などの他の燃料とを切り替えて用いる場合がある。このように燃料を切り替える場合、アンモニアと反応しない不活性ガスによるパージを行い、アンモニア燃料系統に残留したアンモニアを排出するようにしている。そのため、残留したアンモニアが短時間で大量に排出されてしまう場合がある。この場合に、特許文献1のようにアンモニアを水に吸収させて取り除こうとすると、排出されるアンモニアの量が増大するにつれて必要な水量も増加してしまう。しかし、浮体内のスペースには限りがあるため、アンモニアを吸収した大量の水の貯留場所が確保できない場合がある。そして、環境へ影響を及ぼす可能性が有るため、アンモニアを含む水を浮体の浮かぶ周囲の水中にそのまま放出することはできない。そこで、浮体上においてアンモニアを吸収した水を除害処理することが望まれている。
【0005】
アンモニアを吸収した水からアンモニアを除去する方法としては、例えば、希硫酸などの酸を用いる方法がある。しかし、希硫酸などの酸は、寄港地や係留場所等にて入手困難な場合があり、また取り扱いに熟練を要するため作業員の負担が増大するという課題がある。
さらに、パージにより排出された濃度の高いアンモニアは、水に吸収させずに燃焼させることで無害化することもできる。しかし、アンモニアのパージは、不定期に発生し、又、短時間で完了させる必要があることから、燃焼装置には常時種火が必要となり、燃料消費が増大するという課題がある。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、作業員の負担や燃料消費が増大することを抑制しつつアンモニアを吸収した吸収液を除害可能な浮体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
本開示に係る浮体は、水上に浮かぶ浮体本体と、前記浮体本体に設けられて、アンモニアを吸収可能な吸収液が貯留された吸収タンクと、前記吸収タンク内の気相分を大気に開放可能な大気開放ラインと、前記浮体本体のアンモニアを前記吸収タンクに貯留された前記吸収液に導入するアンモニア導入部と、前記吸収液におけるアンモニアの溶解度を調整可能な溶解度調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様の浮体によれば、作業員の負担や燃料消費が増大することを抑制しつつアンモニアを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る浮体の側面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態における燃料パージを行う配管系統及びアンモニア除害装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本開示の第一実施形態の第二変形例における
図2に相当する図である。
【
図4】本開示の第一実施形態の第三変形例における
図2に相当する図である。
【
図5】本開示の第一実施形態の第四変形例における
図2に相当する図である。
【
図6】本開示の第一実施形態の第五変形例における
図2に相当する図である。
【
図7】本開示の第一実施形態の第六変形例における
図2に相当する図である。
【
図8】本開示の第二実施形態における
図2に相当する図である。
【
図9】本開示の第二実施形態の変形例における
図8に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、本開示の第一実施形態に係る浮体について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の第一実施形態に係る浮体の側面図である。
(浮体の構成)
図1に示すように、この実施形態の浮体1は、浮体本体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニアタンク(燃料タンク)10と、配管系統(燃料ライン)20と、区画30と、アンモニア除害装置60と、を備えている。なお、本実施形態の浮体1は、主機等により航行可能な船舶を一例として説明する。浮体1の船種は、特定の船種に限られない。浮体1の船種としては、液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等を例示できる。
【0010】
浮体本体2は、その外殻をなす一対の舷側5A,5Bと船底6とを有している。舷側5A,5Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底6は、これら舷側5A,5Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側5A,5B及び船底6により、浮体本体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面においてU字状を成している。
【0011】
浮体本体2は、最も上層に配置される全通甲板である上甲板7を更に備えている。上部構造4は、この上甲板7上に形成されている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。本実施形態の浮体1では、例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首3a側に、貨物を搭載するカーゴスペース(図示無し)が設けられている。
【0012】
燃焼装置8は、燃料を燃焼させることで熱エネルギーを発生させる装置であり、上記の浮体本体2内に設けられている。燃焼装置8としては、浮体1を推進させるための主機に用いられる内燃機関、船内に電気を供給する発電設備に用いられる内燃機関、作動流体としての蒸気を発生させるボイラー等を例示できる。本実施形態の燃焼装置8は、燃料としてアンモニアと、アンモニアとは異なる軽油などの他の燃料と、を切り替えて用いることが可能となっている。
【0013】
アンモニアタンク10は、液体のアンモニア(言い換えれば、液化アンモニア)を貯留するタンクである。このアンモニアタンク10は、上部構造4よりも船尾3b側の上甲板7上に設置されている。なお、上記アンモニアタンク10の配置は一例であって、上部構造4よりも船尾3b側の上甲板7上に限られない。
【0014】
配管系統20は、燃焼装置8とアンモニアタンク10とを接続し、少なくともアンモニアタンク10に貯留されたアンモニアを燃焼装置8へ供給可能に構成されている。
【0015】
区画30は、アンモニア関連機器を収容する区画である。本実施形態における区画30は、上部構造4よりも船首3a側の上甲板7上に設けられている。上述した配管系統20は、この区画30内を経由して燃焼装置8とアンモニアタンク10とを接続している。ここで、上記アンモニア関連機器とは、アンモニアを取扱う機器全般を意味しており、例えば、アンモニアを取扱うアンモニア燃料機器や、貨物としてのアンモニアを取扱うアンモニア貨物機器を挙げることができる。以下の説明では、アンモニア燃料機器が収容されている区画30について説明するが、アンモニア貨物機器が収容されている区画30であってもよい。
【0016】
本実施形態の区画30は、燃料供給装置室であって、配管系統20の一部を構成するアンモニア燃料機器を収容している。燃料供給装置室に収容されるアンモニア燃料機器としては、例えばアンモニアタンク10から燃焼装置8へとアンモニアを圧送するポンプや、燃焼装置8へ送られるアンモニアを加熱するためのヒーター、電動弁等、を例示できる。なお、アンモニア燃料機器を収容する区画30は、アンモニア燃料供給装置室に限られない。アンモニア燃料機器を収容する区画30は、例えば、アンモニア燃料調圧弁室、アンモニア燃料取込室(言い換えれば、バンカーステーション)等であってもよい。
【0017】
図2は、本開示の第一実施形態における燃料パージを行う配管系統及びアンモニア除害装置の概略構成を示す図である。
図2に示すように、本実施形態の浮体1は、アンモニアタンク10から供給されたアンモニアを一時的に貯留するアンモニアバッファータンク40を備えている。アンモニアバッファータンク40は、アンモニアタンク10と燃焼装置8との間の配管系統20の途中に設置されている。また、配管系統20には、パージガス供給装置50が接続されている。
【0018】
配管系統20は、アンモニアバッファータンク40と燃焼装置8との間に、供給管21と、リターン管22と、開閉弁23、24と、パージ排出ライン25と、をそれぞれ備えている。供給管21、リターン管22は、それぞれ、アンモニアバッファータンク40と燃焼装置8とを接続する。供給管21は、燃焼装置8にアンモニアバッファータンク40からアンモニアを供給する。リターン管22は、燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰のアンモニアをアンモニアバッファータンク40に戻す。なお、供給管21には、燃焼装置8へ向けてアンモニアを加圧して圧送するアンモニア加圧ポンプや、アンモニア加圧ポンプで加圧されたアンモニアを加熱するアンモニア熱交換器(何れも図示せず)が設けられている。
【0019】
開閉弁23は、供給管21に設けられている。開閉弁24は、リターン管22に設けられている。これら開閉弁23,24は、燃焼装置8の稼働時に常時開放状態とされる。その一方で、開閉弁23,24は、燃焼装置8の停止時等に閉塞状態とされる。これら開閉弁23,24が閉塞状態にされることで、供給管21及びリターン管22の内部に形成された流路が遮断される。
【0020】
パージガス供給装置50は、燃焼装置8の燃料としてのアンモニアが流通する流通経路Rのアンモニアを窒素等の不活性ガス(パージガス)に置き換える、いわゆるパージを行う。パージガス供給装置50は、パージガス供給部51と、パージガス供給管52と、パージガス供給弁53と、を備えている。不活性ガスとしては、例えば、不活性ガス生成装置(図示せず)により浮体本体2の内部で生成した不活性ガスや、浮体本体2に設けられた不活性ガスタンク(図示せず)に予め貯留した不活性ガスを用いることができる。なお、不活性ガスは、アンモニアに接触した際に化学反応しない気体であればよい。
【0021】
パージガス供給部51は、不活性ガスをパージガス供給管52へ供給する。
パージガス供給管52は、パージガス供給部51と、流通経路Rとを接続している。より具体的には、パージガス供給管52は、パージガス供給部51と、流通経路Rのパージ対象領域20pとを接続している。本実施形態におけるパージ対象領域20pは、開閉弁23よりも燃焼装置8側の供給管21、開閉弁24よりも燃焼装置8側のリターン管22、及び、燃焼装置8内に形成される流通経路Rを例示できる。本実施形態で例示するパージガス供給管52は、パージ対象領域20pのうち供給管21のパージ対象領域20pに接続されている。
【0022】
パージガス供給弁53は、パージガス供給管52に設けられている。パージガス供給弁53は、通常時に閉塞状態とされ、パージガス供給部51からパージ対象領域20pへの不活性ガスの供給を遮断している。ここで、通常時とは、燃焼装置8を稼働しているとき等、アンモニアを燃焼装置8に供給可能にしているときである。この通常時において、開閉弁23,24は開放状態とされ、アンモニアバッファータンク40から供給管21を通して燃焼装置8にアンモニアが供給可能にされ、余剰のアンモニアが燃焼装置8からアンモニアバッファータンク40に戻される。
【0023】
パージガス供給弁53は、燃焼装置8の緊急停止時や長期停止時等に、閉塞状態から開放状態にされる。言い換えれば、パージ対象領域20pに残留するアンモニアをパージする際に閉塞状態から開放状態に操作される。この際、アンモニアバッファータンク40から燃焼装置8へのアンモニアの供給は停止状態とされる。そして、本実施形態の開閉弁23,24は閉塞状態としている。次いで、パージガス供給弁53が閉塞状態から開放状態とされると、これによりパージガス供給部51からパージ対象領域20pに不活性ガスが供給可能な状態になる。なお、パージ初期において、残留する液体のアンモニアをアンモニアバッファータンク40へ戻す場合には、開閉弁23,24を適宜開放状態としてもよい。
【0024】
パージ排出ライン25は、リターン管22に分岐接続されている。本実施形態のパージ排出ライン25は、開閉弁24と燃焼装置8との間のリターン管22から分岐している。パージ排出ライン25は、パージガス供給装置50によりパージされた液体のアンモニアや、パージガス供給装置50によりパージされた液体のアンモニア、気体のアンモニア及び不活性ガスの混合流体をアンモニア除害装置60へと導く。
【0025】
パージ排出ライン25は、パージ排出ライン本体26と、アンモニア一時貯留部27と、開閉弁28と、を備えている。パージ排出ライン本体26は、リターン管22とアンモニア一時貯留部27とを接続する配管である。アンモニア一時貯留部27は、パージ排出ライン本体26により導入された液体とガスを分離また気化させる。言い換えれば、アンモニア一時貯留部27は、パージ排出ライン本体26により導入された液体のアンモニア、及びパージ排出ライン本体26により導入された混合流体に含まれる液体のアンモニアを気化させて、気体のアンモニア(以下、アンモニアガスと称する)を含む気体をアンモニア除害装置60へ導入させる。開閉弁28は、通常時は閉塞状態され、パージガス供給装置50によるパージを行う際に閉塞状態から開放状態に操作される。
【0026】
アンモニア除害装置60は、吸収タンク61と、アンモニア導入部62と、溶解度調整部63と、大気開放ライン70と、排出気体希釈部64と、を備えている。
【0027】
吸収タンク61は、浮体本体2に設けられて、アンモニアを吸収可能な吸収液Wが貯留されている。本実施形態における吸収タンク61は、浮体本体2に設けられたバラストタンクである。この吸収タンク61には、浮体本体2の浮かぶ周囲の水(例えば、海水、淡水)をポンプ(図示せず)によって導入して吸収液Wとして貯留可能となっている。つまり、吸収タンク61内には、吸収液W(液相)と気相とが存在している。吸収タンク61は、いわゆる常圧タンクであり、気相の圧力は、通常、大気圧となっている。また、本実施形態の吸収タンク61はバラストタンクであるため、バラスト水処理装置(図示せず)などを介して吸収タンク61に貯留された水を浮体本体2の周囲の水中に放出可能となっている。なお、吸収タンク61は、バラストタンクに限られず、例えば、バラストタンクとは別に設けられた海水タンクや清水タンクであってもよい。
【0028】
アンモニア導入部62は、浮体本体2内のアンモニアを吸収タンク61に貯留された吸収液Wに導入する。本実施形態のアンモニア導入部62は、アンモニアを吸収タンク61内に導入する配管である導入ライン65と、導入ライン65に接続されてアンモニアガスを小さな気泡として吸収液W内に放出させる散気管66と、を備えている。本実施形態の導入ライン65は、上述したアンモニア一時貯留部27に接続されており、アンモニア一時貯留部27で気液分離または気化された気体のアンモニアを、浮体本体2内のアンモニアとして吸収液Wに導入している。また本実施形態の散気管66は、吸収タンク61の底面に沿って延びており、散気管66から放出された気泡が吸収液W全体に広がるように形成されている。ここで、散気管66から放出される気体は、パージガス供給装置50の不活性ガスの圧力を利用して吸収液W内に放出される。ここで、アンモニア一時貯留部27から吸収液W内に導入される気体に含まれる不活性ガスの割合は、パージが進むにつれて増加する。
【0029】
溶解度調整部63は、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を調整可能に構成されている。この第一実施形態における溶解度調整部63は、吸収タンク61の気相におけるアンモニアガスの濃度を調整することで、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を調整可能とされている。ここで、吸収タンク61の気相と吸収液W(液相)とは、気液平衡状態になろうとする。つまり、吸収液Wのアンモニア濃度が高まるにつれて、気相のアンモニア濃度も徐々に高まる。その一方で、気相のアンモニア濃度が低下すると、分圧差によって液相のアンモニアが放散されて順次気相へ供給されるため、吸収液Wの溶解度が低下することとなる。
【0030】
第一実施形態の溶解度調整部63は、第一希釈気体供給ライン67と、第一ブロア68と、第一バルブ69と、を備えている。第一希釈気体供給ライン67は、吸収タンク61の気相に空気又は不活性ガスを導入可能な配管である。本実施形態の第一希釈気体供給ライン67は、吸収タンク61の気相に空気を導入可能とされている。第一希釈気体供給ライン67の上端は、例えば、上甲板7よりも上方に開口し、第一希釈気体供給ライン67の下端は、吸収タンク61の上壁に接続されている。なお、第一希釈気体供給ライン67が不活性ガスを導入する場合は、パージガス供給装置50の不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0031】
第一ブロア68は、第一希釈気体供給ライン67の途中に設けられ、第一希釈気体供給ライン67の空気又は不活性ガスを吸収タンク61に向けて送り込む。第一ブロア68は、例えば、可変速ブロアを用いることができる。第一バルブ69は、第一希釈気体供給ライン67の途中に設けられ、第一希釈気体供給ライン67の流路を開閉する。なお、第一ブロア68は、定速運転するブロアを用いることもできる。この場合、吸収タンク61内に供給される空気の流量を調整可能なように、第一バルブ69として開度調整可能なバルブを用いればよい。
【0032】
このように構成された溶解度調整部63は、吸収タンク61の気相におけるアンモニア濃度を飽和状態よりも低い所定のアンモニア濃度の範囲(例えば、0~10vol%)で調整する。
【0033】
大気開放ライン70は、吸収タンク61内の気相を大気開放可能としている。本実施形態の大気開放ライン70は、バラストタンクである吸収タンク61の空気抜き管を兼ねている。本実施形態の大気開放ライン70は、配管である開放ライン本体71と、開放ライン本体71内の流路を開閉する大気開放バルブ72と、を有している。開放ライン本体71の下端は、吸収タンク61の上壁に接続され、開放ライン本体71の上端は、上甲板7よりも上方で開口している。この第一実施形態における大気開放バルブ72は、常時開放状態とされている。なお、大気開放バルブ72は、必要に応じて設ければ良く省略するようにしてもよい。
【0034】
排出気体希釈部64は、大気開放ライン70を介して大気中に放出される吸収タンク61の気相の気体を、希釈気体により希釈可能に構成されている。本実施形態の排出気体希釈部64は、第二希釈気体供給ライン74と、第二ブロア75と、第二バルブ76と、を備えている。この排出気体希釈部64は、上述した溶解度調整部63と同様の構成となっている。第二希釈気体供給ライン74は、大気開放ライン70に空気又は不活性ガスを導入可能な配管である。本実施形態の第二希釈気体供給ライン74は、大気開放ライン70に空気を導入可能とされている。第二希釈気体供給ライン74の一端は、例えば、上甲板7よりも上方に開口し、第二希釈気体供給ライン74の他端は、大気開放ライン70の途中に合流接続されている。なお、第二希釈気体供給ライン74が不活性ガスを導入する場合は、パージガス供給装置50の不活性ガスを供給するようにしてもよい。なお、排出気体希釈部64は、必要に応じて設ければ良く、大気開放ライン70を流通する気体のアンモニア濃度が十分に低下している場合には省略してもよい。
【0035】
(作用効果)
上記第一実施形態の浮体1は、水上に浮かぶ浮体本体2と、浮体本体2に設けられて、アンモニアを吸収可能な吸収液Wが貯留された吸収タンク61と、吸収タンク61内の気相を大気に開放可能な大気開放ライン70と、浮体本体2内のアンモニアを吸収タンク61に貯留された吸収液Wに導入するアンモニア導入部62と、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を調整可能な溶解度調整部63と、を備えている。
このようにすることで、吸収タンク61に貯留された吸収液Wに、浮体本体2内のアンモニアを吸収させることができる。そして、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を調整することで、吸収タンク61の吸収液Wから気相へアンモニアが放散される速度を調整することができる。つまり、アンモニアを一時貯留するバッファとして吸収液Wを用いて吸収タンク61内の吸収液Wから気相へ徐々にアンモニアを放散させて、アンモニア濃度の低い気体を大気中に放出することが可能となる。また、液相と気相との分圧差を利用して、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を極めて低い値、すなわち吸収液Wに吸収されたアンモニアの殆どを気相へ放散させて吸収液Wを実質的に除害できるため、希硫酸などの酸を用いて吸収液W中のアンモニアを除去する必要が無くなる。また、アンモニアを燃焼除害させるための種火も不要となる。したがって、作業員の負担や燃料消費が増大することを抑制しつつ、アンモニアを吸収した吸収液Wを除害することができる。
【0036】
上記第一実施形態の溶解度調整部63は、吸収タンク61内の気相におけるアンモニア濃度を調整している。
このようにすることで、吸収液Wに吸収されたアンモニアを気相に放散させる速さを調整することができる。例えば、気相のアンモニア濃度を低くすれば、気液の分圧差が大きくなり、吸収液Wに吸収されたアンモニアがすぐに気相に放散され、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度が低下する。そのため、吸収液Wから気相へのアンモニアの放散を速めることができる。また、気相のアンモニア濃度を高めれば、気液の分圧差が小さくなり、吸収液Wに吸収されたアンモニアが吸収液W内に留まり、アンモニアの溶解度が上昇する。そのため、吸収液Wから気相へのアンモニアの放散を遅らせることができる。
【0037】
上記第一実施形態では、更に、アンモニア導入部62が、パージ排出ライン25によって排出されたアンモニアを吸収液Wに導入させている。
このように不定期に発生して短時間で完了させる必要があるパージにより排出されたアンモニアであっても、吸収液Wに吸収させてから徐々に気相に放散させることができる。そのため、パージ排出ライン25により排出されたアンモニアを短時間で除害する必要が無くなる。したがって、大型の処理装置を用いずにアンモニアを除害できるため、アンモニア除害装置の大型化及び浮体1が大型化することを抑制できる。
【0038】
上記第一実施形態では、更に、溶解度調整部63と、排出気体希釈部64と、を備えている。
例えば、アンモニアを吸収液Wに吸収させた後に、第一バルブ69を開放状態にして、第一ブロア68から空気を供給することで、気相のアンモニア濃度を低下させることができる。そして、吸収タンク61内では気液平衡状態を保とうとするため、吸収液Wに吸収されているアンモニアを気相に徐々に放散させることができる。そして、吸収液Wのアンモニアを例えば吸収液Wのアンモニア濃度が極めて低い値となるように気相に放散させれば、吸収液Wが実質的に除害されて浮体本体2の浮かぶ周囲の水に放出することが可能となる。
また、第一ブロア68により気相に空気を供給し始めた直後、比較的アンモニア濃度の高い気体が大気開放ライン70に導入されるが、排出気体希釈部64の第二バルブ76を開放状態として第二ブロア75により空気を合流させることが可能であるため、大気中にアンモニア濃度の高い気体が放出されることを抑制できる。さらに、大気開放ライン70に導入される気体のアンモニア濃度が高く無い場合には、排出気体希釈部64の第二ブロア75を停止状態にすると共に第二バルブ76を閉塞状態にすることができるため、省エネルギー化を図ることができる。
【0039】
(第一実施形態の第一変形例)
上記第一実施形態では、溶解度調整部63、排出気体希釈部64、大気開放バルブ72を操作する場合について説明した。しかし、大気開放ライン70の開放ライン本体71内のアンモニア濃度、吸収タンク61の気相のアンモニア濃度及び吸収液Wのアンモニア濃度をセンサーで検出して、これらアンモニア濃度の検出結果に基づいて、例えば、第一バルブ69、第二バルブ及び大気開放バルブ72の開閉や、第一ブロア68や第二ブロアによる空気又は不活性ガスの供給量の調整などを、制御装置によって自動的に行うようにしてもよい。
【0040】
(第一実施形態の第二変形例)
上記第一実施形態では、溶解度調整部63が第一ブロア68によって吸収タンク61の気相に空気を押し込むことで気相のアンモニア濃度を調整する場合について説明した。しかし、気相のアンモニア濃度を調整する構成は、第一実施形態の構成に限られない。なお、この第二変形例の説明において、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して、重複説明を省略する。
図3は、本開示の第一実施形態の第二変形例における
図2に相当する図である。
【0041】
図3に示すように、この第二変形例の浮体1は、第一実施形態の排出気体希釈部64、溶解度調整部63に代えて、溶解度調整部163を備えている。この溶解度調整部163は、第一希釈気体供給ライン167と、第一バルブ69と、第三ブロア81と、を備えている。なお、この第二変形例における第一希釈気体供給ライン167は、第一ブロア68が設けられていない点でのみ、第一実施形態の第一希釈気体供給ライン67と異なる。同様に、第二希釈気体供給ライン174は、第二ブロア75が設けられていない点でのみ、第一実施形態の第二希釈気体供給ライン74とは異なる。
【0042】
大気開放ライン170は、開放ライン本体71と、大気開放バルブ72と、第三ブロア81とを備えている。つまり、この第二変形例における大気開放ライン170は、第三ブロア81を備えている点で、第一実施形態の大気開放ライン170と異なっている。
第三ブロア81は、大気開放ライン170の開放ライン本体71の途中に設けられており、気相の気体を吸引して大気中へ送り出すことが可能となっている。第二希釈気体供給ライン174は、第三ブロア81と吸収タンク61との間の開放ライン本体71に合流接続されている。第二希釈気体供給ライン174は、大気開放ライン70内を流れる気体に空気又は不活性ガスを合流させることが可能となっている。第二バルブ76は、第二希釈気体供給ライン174内の流路を開閉する。
【0043】
上記第一実施形態の第二変形例では、第一実施形態と同様に、アンモニア導入部62によって吸収液W内にアンモニアが導入され、吸収液Wにアンモニアが吸収された状態となる。吸収液Wに吸収されたアンモニアは、気液の分圧差により、徐々に気相へ放散する。ここで第三ブロア81を作動させると、大気開放ライン70によって気相の気体が吸引される。この際、第一希釈気体供給ライン167の第一バルブ69は開放状態とされ、空気又は不活性ガスが吸収タンク61の気相に引き込まれて導入される。これにより、気相のアンモニア濃度を低下させることができる。一方で、第三ブロア81を停止させると、気相のアンモニア濃度の上昇が継続される。
【0044】
また、大気開放ライン170の流路内に流入した気相の気体のアンモニア濃度が高い場合には、第二バルブ76を開放することで、大気開放ライン70に流入した気相の気体に空気又は不活性ガスを合流させることができるため、大気中にアンモニア濃度の高い気体が放出されることを抑制できる。そのため、第一実施形態よりもブロアの個数を削減しつつ、第一実施形態と同様に吸収液Wの溶解度を調整することが可能となる。
【0045】
(第一実施形態の第三変形例)
上記第一実施形態では、吸収タンク61が常圧タンクであるバラストタンクの場合を一例にして説明した。しかし、吸収タンク61は、常圧タンクに限られない。なお、この第三変形例の説明においても、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して、重複説明を省略する。
図4は、本開示の第一実施形態の第三変形例における
図2に相当する図である。
【0046】
図4に示すように、この第三変形例の浮体1は、第一実施形態の吸収タンク61を、加圧タイプの吸収タンク161に置き換えている。また、第三変形例では、第一実施形態の第一ブロア68は、第一コンプレッサ168に置き換えている。
【0047】
上記第一実施形態の第三変形例の浮体1によれば、第一バルブ69と大気開放バルブ72とを閉塞状態としてアンモニア導入部62によって吸収液Wにアンモニアを吸収させる。吸収液Wに吸収されたアンモニアは、気液平衡状態になろうとして気相へ徐々に放散される。その一方で、この状態から第一バルブ69を開放状態として、第一コンプレッサ168により空気や不活性ガスを吸収タンク161へ圧送すると、吸収タンク161の気相の圧力が上昇する。これにより、吸収タンク161内の圧力が高まり、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を高めることができる。第三変形例においては、第一希釈気体供給ライン67と、第一コンプレッサ168と、第一バルブ69と、によって溶解度調整部163が構成されている。
【0048】
また、第三変形例によれば、吸収液Wに対するアンモニアの溶解度を高めることで、より多くのアンモニアを吸収液Wに吸収させることが可能となる。さらに、例えば、大気開放バルブ72の開度と、第一バルブ69の開度とを調整するなど、吸収タンク161に導入される希釈気体の流量よりも吸収タンク161から排出される排出気体の流量を小さくすることで、気相の気体を、大気開放ライン70を介して大気中に放出しつつ、吸収タンク161内の圧力を大気圧よりも高い状態に維持することも可能となる。
【0049】
なお、この第三変形例においても、上述した第一実施形態と同様に、大気開放ライン70に流れ込む気体を、排出気体希釈部64によって希釈可能とされている。
上記第三変形例の説明では、第一希釈気体供給ライン67と、第一コンプレッサ168と、第一バルブ69と、によって、吸収タンク161内の圧力を調整する場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、アンモニア導入部62によって吸収液Wに導入される気体が、アンモニアガスと窒素などの不活性ガスとの混合気体である場合、吸収液Wに導入された不活性ガスは吸収液Wに吸収されずに気相へ溜まる。そして、気相の圧力を上昇させることができる。そのため、このようにして気相の圧力を上昇させることができる場合には、第一希釈気体供給ライン67と、第一コンプレッサ168と、第一バルブ69と、を省略することもできる。この場合、アンモニア導入部62と、大気開放バルブ72とによって本開示の溶解度調整部が構成されることとなる。
【0050】
(第一実施形態の第四から第六変形例)
図5は、本開示の第一実施形態の第四変形例における
図2に相当する図である。
図6は、本開示の第一実施形態の第五変形例における
図2に相当する図である。
図7は、本開示の第一実施形態の第六変形例における
図2に相当する図である。
上記第一実施形態の溶解度調整部63では、気相におけるアンモニア濃度を調整することで吸収液Wに対するアンモニアの溶解度を調整する場合について説明した。また、上記第一実施形態の第三変形例の溶解度調整部163では、気相の圧力を調整することで、吸収液Wに対するアンモニアの溶解度を調整する場合について説明した。しかし、溶解度調整部63,163の構成は、これら第一実施形態及び、第一実施形態の第三変形例の構成に限られない。例えば、
図5に示す第四変形例のように、溶解度調整部263として、吸収液Wの温度を調整する吸収液温度調整部82を備えていてもよい。この吸収液温度調整部82は、吸収液Wの加熱と吸収液Wの冷却との少なくとも一方を行うことが可能となっている。吸収液Wの温度が高い場合、吸収液Wに含まれるアンモニアの気相への放散速度を増加させることができ、吸収液Wの温度が低い場合、吸収液Wに含まれるアンモニアの気相への放散速度を低下させることができる。
【0051】
また、
図6に示す第五変形例のように、溶解度調整部363として、吸収液Wのペーハーを調整する吸収液ペーハー調整装置83を設けたり、
図7に示す第六変形例のように、気相に弱酸性の液体または気体を導入する酸性流体導入装置84を設けたりして、吸収液Wや気相のペーハーを調整することで、吸収液Wに対するアンモニアの溶解度を調整するようにしてもよい。さらに、気相のアンモニア濃度を調整する構成、吸収液Wの温度を調整する構成、吸収液Wのペーハーを調整する構成、気相のペーハーを調整する構成及び、気相の圧力を調整する構成を適宜組み合わせてアンモニアの溶解度を調整するようにしてもよい。
【0052】
(第二実施形態)
次に、本開示の第二実施形態における浮体1を図面に基づき説明する。この第二実施形態は、上述した第一実施形態に対して、アンモニア関連機器の収容された区画30内で漏洩したアンモニアを吸収液Wに導入する点でのみ異なる。そのため、この第二実施形態では、
図1を援用すると共に、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明し、重複する説明を省略する。
【0053】
図8は、本開示の第二実施形態における
図2に相当する図である。
第二実施形態の浮体1は、浮体本体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニアタンク10と、配管系統20と、区画30と、アンモニア除害装置260と、を備えている。
【0054】
図8に示すように、アンモニア除害装置260は、吸収タンク61と、アンモニア導入部262と、溶解度調整部63と、排出気体希釈部64と、を備えている。
【0055】
アンモニア導入部262は、第一実施形態のアンモニア導入部62と同様に、浮体本体2内のアンモニアを吸収タンク61に貯留された吸収液Wに導入する。そして、本実施形態のアンモニア導入部262は、アンモニアを吸収タンク61内に導入する配管である導入ライン265と、導入ライン265に接続されてアンモニアガスを小さな気泡として吸収液W内に放出させる散気管66と、を備えている。散気管66は、第一実施形態の散気管66と同様に、吸収タンク61の底面に沿って延びており、散気管66から放出された気泡が吸収液W全体に広がるように形成されている。
【0056】
この第二実施形態の導入ライン265は、区画30に接続されている。導入ライン265は、区画30内で漏洩して気化した気体のアンモニアを、浮体本体2内のアンモニアとして吸収液Wに導入している。区画30には、換気用の給気設備91及び排気設備92が設けられている。吸気設備91は、給気ダンパ94と給気ダクト95とを備え、排気設備92は、排気ファン93と排気ダンパ96と排気ダクト97とを備えている。
【0057】
導入ライン265は、ライン本体86と、導入送風機87と、導入送風機入口ダンパ88と、導入ダンパ89と、を備えている。ライン本体86は、内部に流路を有する配管である。導入送風機87は、ライン本体86の途中に設けられ、ライン本体86内の気体を吸収タンク61に向けて送り込む。導入送風機87は、例えば、可変速の送風機を用いることができる。
【0058】
導入送風機入口ダンパ88は、ライン本体86のうち導入送風機87よりも区画30に近い入口側のライン本体86に設けられ、ライン本体86の流路を開閉する。導入送風機入口ダンパ88は、区画30内にアンモニア漏洩が生じていない通常時に閉塞状態とされ、区画30内にアンモニア漏洩が生じた場合に開放状態とされる。なお、導入送風機入口ダンパ88は、適宜設ければよく省略してもよい。
【0059】
導入ダンパ89は、ライン本体86のうち導入送風機87と吸収タンク61との間のライン本体86に設けられ、ライン本体86の流路を開閉する。導入ダンパ89は、区画30内にアンモニア漏洩が生じていない通常に閉塞状態とされ、区画30内にアンモニア漏洩が生じた場合に開放状態とされる。
なお、導入送風機87は、定速運転する送風機を用いることもでき、この場合、吸収タンク61内に供給される空気の流量を調整可能なように、導入送風機入口ダンパ88及び導入ダンパ89として開度調整可能なダンパを用いればよい。
【0060】
この第二実施形態では、区画30内にアンモニア漏洩が発生した場合、例えば、作業員によって排気ファン93が停止状態、排気ダンパ96が閉塞状態にされると共に、給気ダンパ94及び導入送風機入口ダンパ88及び導入ダンパ89が開放状態にされる。さらに、例えば、作業員によって、導入送風機87が作動開始される。そして、この際、区画30内が大気圧よりも低い圧力に維持されるように、導入送風機87の回転数と、給気ダンパ94の開度とが調整される。このように区画30内を大気圧よりも低圧にすることで、区画30外へのアンモニア漏洩が抑制される。
【0061】
(作用効果)
上記第二実施形態のアンモニア導入部262は、区画30で漏洩したアンモニアを吸収タンク61の吸収液Wに導入している。したがって、区画30で漏洩したアンモニアを除去することができると共に、第一実施形態と同様に、アンモニアを吸収した吸収液Wを除害することができる。その結果、作業員の負担や燃料消費が増大することを抑制しつつ、アンモニアを吸収した吸収液Wを除害することができる。
【0062】
(第二実施形態の変形例)
図9は、本開示の第二実施形態の変形例における
図8に相当する図である。
上記の第二実施形態では、区画30に排気設備92が接続されている場合について説明した。しかし、例えば、第二実施形態の排気設備92を省略し、
図9に示す第二実施形態の変形例のように構成することもできる。この第二実施形態の変形例では、アンモニア導入部262のライン本体86のうち、導入送風機87と導入ダンパ89との間のライン本体86に、排気設備192が接続されている。この排気設備192は、区画30の排気用の設備であって、排気ダンパ196と排気ライン197とを備えている。
【0063】
排気ダンパ196は、排気ライン197の途中に設けられ、排気ライン197内の流路を開閉する。この排気ダンパ196は、区画30内にアンモニア漏洩が生じていない通常時に開放状態とされ、区画30内にアンモニア漏洩が生じた場合に閉塞状態とされる。排気ライン197は、ライン本体86のうち導入送風機87と導入ダンパ89との間のライン本体86から分岐しており、区画30にアンモニア漏洩が生じていない通常時に、区画30内の空気を浮体本体2の外部に放出する流路を形成している。
【0064】
この第二実施形態の変形例では、導入送風機87が常時作動状態とされる。そして、区画30内にアンモニア漏洩が発生していない通常時には、作業員によって排気ダンパ196、導入送風機入口ダンパ88及び給気ダンパ94が開放状態にされ、導入ダンパ89が閉塞状態にされる。これにより、給気設備91から区画30に外気が取り込まれると共に、区画30内の空気がライン本体86及び排気ライン197を通じて浮体本体2の外部に放出される。言い換えれば、区画30内が換気される。
【0065】
一方で、区画30内にアンモニア漏洩が発生した場合には、例えば、作業員によって排気ダンパ196が閉塞状態にされ、給気ダンパ94及び導入送風機入口ダンパ88及び導入ダンパ89が開放状態にされる。そして、この際、第二実施形態と同様に、区画30内が大気圧よりも低い圧力に維持される。なお、第二実施形態と同様に、この第二実施形態の変形例でも導入送風機入口ダンパ88は省略してもよい。
【0066】
したがって、第二実施形態の変形例によれば、第二実施形態の作用効果に加えて、導入送風機87を、区画30で漏洩したアンモニアを除去するための送風機としてだけではなく、通常時に区画30を換気するための排気ファンとして用いることができるため、部品点数を低減することが可能となる。
【0067】
〈他の実施形態〉
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記の各実施形態では、浮体1が主機等により航行可能な船舶である場合について説明したが、アンモニアを貯蔵可能な浮体であれば船舶に限られない。
【0068】
また、各実施形態及び各変形例において大気開放ライン70,170が大気開放されている場合について説明した。しかし、大気開放ライン70,170から大気中に気体を放出する前に、スクラバー等のアンモニア除去装置によって大気開放ライン70を流通する気体に含まれるアンモニアを除去するようにしてもよい。このようにすることで、大気中に放出される気体のアンモニア濃度をより一層低下させることが可能となる。ここで、大気開放ライン70を流通する気体に含まれるアンモニアは少量であるので、小型のスクラバー等、小容量のアンモニア除去装置を用いればよく、浮体本体2内におけるアンモニア除去装置の設置自由度の低下を抑制できる。
【0069】
第二実施形態では、作業員が手動で、排気ファン93、排気ダンパ96、給気ダンパ94、導入送風機入口ダンパ88及び導入ダンパ89の開閉操作と、導入送風機87の作動操作及び停止操作とを行う場合について説明した。また、第二実施形態の変形例では、作業員が手動で、排気ダンパ196、給気ダンパ94、導入送風機入口ダンパ88及び導入ダンパ89の開閉操作を行う場合について説明した。しかし、作業員により手動操作する構成に限られない。例えば、区画30内におけるアンモニア濃度等、アンモニア漏洩の検出結果に基づいて、排気ファン93、排気ダンパ96,196、給気ダンパ94、導入送風機入口ダンパ88及び導入ダンパ89の開閉操作と、導入送風機87の作動操作及び停止操作とを、制御装置によって自動制御するようにしてもよい。
【0070】
<付記>
実施形態に記載の浮体1は、例えば以下のように把握される。
【0071】
(1)第1の態様によれば浮体1は、水上に浮かぶ浮体本体2と、前記浮体本体2に設けられて、アンモニアを吸収可能な吸収液Wが貯留された吸収タンク61,161と、前記吸収タンク61,161内の気相を大気に開放可能な大気開放ライン70と、前記浮体本体2内のアンモニアを前記吸収タンク61,161に貯留された前記吸収液Wに導入するアンモニア導入部62,262と、前記吸収液Wにおける前記アンモニアの溶解度を調整可能な溶解度調整部63,163,263,363と、を備える。
吸収液Wの例としては、海水や清水が挙げられる。吸収タンク61の例としては、バラストタンクが挙げられる。
【0072】
これにより、吸収タンク61,161に貯留された吸収液Wに、浮体本体2内のアンモニアを吸収させることができる。そして、溶解度調整部63,163,263,363によって吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を調整することで、吸収タンク61,161の液相から気相へアンモニアが放散される速度を調整することができる。これにより、アンモニアを一時貯留するバッファとして吸収液Wを用いて吸収タンク61,161内の吸収液Wから気相へ徐々にアンモニアを放散させて、アンモニア濃度の低い気体を大気中に放出することが可能となる。また、液相と気相との分圧差を利用して、吸収液Wにおけるアンモニアの溶解度を極めて低い値、すなわち吸収液Wに吸収されたアンモニアの殆どを気相へ放散させて吸収液Wを実質的に除害できるため、希硫酸などの酸を用いて吸収液W中のアンモニアを除去する必要が無くなる。また、アンモニアを燃焼除外させるための種火も不要となる。したがって、作業員の負担や燃料消費が増大することを抑制しつつ、アンモニアを吸収した吸収液Wを除害することができる。
【0073】
(2)第2の態様に係る浮体1は、(1)の浮体1であって、前記溶解度調整部63,163,263,363は、前記気相における前記アンモニアの濃度、前記吸収液Wの温度、前記吸収液Wのペーハー、前記気相のペーハー及び、前記気相の圧力のうち、少なくとも一つを調整することで前記アンモニアの溶解度を調整する。
これにより、吸収液Wに対するアンモニアの溶解度を容易に調整することができる。
【0074】
(3)第3の態様に係る浮体1は、(1)又は(2)の浮体1であって、前記アンモニアを燃料とする燃焼装置8と、燃料としての前記アンモニアを貯留する燃料タンク10と、前記燃料タンク10から前記燃焼装置8へ前記アンモニアを供給する燃料ライン20と、前記燃料ライン20内にパージガスを供給するパージガス供給装置50と、前記パージガスにより押圧された前記燃料ライン内の前記アンモニアを排出するパージ排出ラインと、を備え、前記アンモニア導入部は、前記パージ排出ラインにより排出された前記アンモニアを前記吸収液Wに導入させる。
これにより、パージ排出ラインから排出されたアンモニアを短時間で吸収タンク61,161に吸収させることができる一方で、吸収液Wに吸収されたアンモニアを徐々に気相に放散させることができる。したがって、燃焼装置8、燃料タンク10、燃料ライン20などからパージされたアンモニアを短時間で除害する必要が無くなる。
【0075】
(4)第4の態様に係る浮体1は、(1)又は(2)の浮体1であって、アンモニア関連機器が収容されると共に外気を導入可能な区画30を備え、前記アンモニア導入部262は、前記区画30内の気体を前記吸収液Wに導入する。
これにより、浮体本体2の区画30内で漏洩したアンモニアを吸収液Wに吸収させて、区画30内に漏洩したアンモニアを吸収タンク61の吸収液Wに吸収させて除去することができる。また、吸収液Wに吸収させたアンモニアを徐々に気相へ放散させて吸収液Wを除害することができる。
【0076】
(5)第5の態様に係る浮体1は、(1)から(4)の何れか一つの浮体1であって、前記大気開放ライン70を閉塞可能な大気開放バルブ72を備え、前記吸収タンク161は、大気圧よりも高圧で密閉可能な圧力タンクである。
これにより、吸収タンク161内の圧力を高めることができる。そのため、気相の圧力を高めて吸収液Wに対するアンモニアの溶解度を調整することができる。
【0077】
(6)第6の態様に係る浮体1は、(1)から(5)の何れか一つの浮体1であって、前記大気開放ライン70を介して大気中に放出される前記気相の気体を、希釈気体により希釈可能な排出気体希釈部64を備える。
これにより、大気開放ライン70から大気中にアンモニア濃度の高い気体が放出されることを抑制できる。
【符号の説明】
【0078】
1…浮体 2…浮体本体 4…上部構造 5A,5B…舷側 6…船底 7…上甲板 8…燃焼装置 10…アンモニアタンク 20…配管系統 21…供給管 22…リターン管 23,24…開閉弁 25…パージ排出ライン 26…パージ排出ライン本体 27…アンモニア一時貯留部 28…開閉弁 30…区画 40…アンモニアバッファータンク 50…パージガス供給装置 51…パージガス供給部 52…パージガス供給管 53…パージガス供給弁 60,260…アンモニア除害装置 61,161…吸収タンク 62,262…アンモニア導入部 63,163,263,363…溶解度調整部 64…排出気体希釈部 65…導入ライン 66…散気管 67,167…第一希釈気体供給ライン 68…第一ブロア 69…第一バルブ 70,170…大気開放ライン 71…開放ライン本体 72…大気開放バルブ 74,174…第二希釈気体供給ライン 75…第二ブロア 76…第二バルブ 81…第三ブロア 82…吸収液温度調整部 83…吸収液ペーハー調整装置 84…酸性流体導入装置 86…ライン本体 87…導入送風機 88…導入送風機入口ダンパ 89…導入ダンパ 91…給気設備 92…排気設備 93…排気ファン 94…給気ダンパ 95…給気ダクト 96…排気ダンパ 97…排気ダクト 168…第一コンプレッサ 192…排気設備 196…排気ダンパ 197…排気ライン R…流通経路