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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034586
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/14 20060101AFI20230306BHJP
   F16L 41/06 20060101ALN20230306BHJP
   F16L 37/47 20060101ALN20230306BHJP
【FI】
F16L37/14
F16L41/06
F16L37/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140896
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】西堀 慎一
(72)【発明者】
【氏名】上森 康大
【テーマコード(参考)】
3H019
3J106
【Fターム(参考)】
3H019DA03
3H019DA09
3J106BA02
3J106BC04
3J106BC12
3J106BE22
3J106CA16
3J106EB06
3J106EC01
3J106ED22
3J106ED33
3J106EE02
3J106EF05
3J106GA01
3J106GA30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外側管体と内側管体とをC型弾性リングによって抜け止め状態に接続する差込式の継手構造において、通常は確実に抜け止め機能を有し、取外しが必要な時には、特別な操作によりC型弾性リングを容易に取り外すことができるようにする。
【解決手段】C型弾性リング3は、外側管体1の内向き環状凹溝11と、内側管体2の外向き環状凹溝21の両方に係合され、外側管体1には、その外周面から内向き環状凹溝11に連通する切欠部10が形成される。C型弾性リング3の少なくとも一方の開放端部31を切欠部10内に露出させると共に、そのまま引出し可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側管体内に内側管体を差し込んで抜け止め状態に保持する差込式の継手構造において、
外側管体の内周面には内方に開放する内向き環状凹溝が周方向全域に形成され、
内側管体の外周面には外方に開放する外向き環状凹溝が周方向全域に形成され、
内向き環状凹溝と外向き環状凹溝とが一致した時点で弾性復帰して両者に同時に係合するC型弾性リングが備えられ、
前記外側管体には、その外周面から前記内向き環状凹溝に連通し且つ前記C型弾性リングの線径よりも大きな軸線方向の幅を有する切欠部が形成され、
前記切欠部を介して、前記C型弾性リングの少なくとも一方の開放端部を、引出し可能に露出させることができるようにした継手構造。
【請求項2】
請求項1に記載の継手構造において、前記切欠部は、前記外側管体を、外周円に対する接線に平行に切り欠くことにより、前記内向き環状凹溝に連通する切欠孔部と、その周方向両側にて同一面上に位置する前記外側管体の切欠面とから構成されるようにした継手構造。
【請求項3】
請求項1に記載の継手構造において、前記切欠部は、前記内向き環状凹溝に連通する切欠孔部と、その周方向両側に位置する前記外側管体の切欠面とから構成され、
前記切欠面は、前記内向き環状凹溝の環状底部との角度が鋭角になるように斜めに切り欠かれた傾斜面である継手構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の継手構造において、前記切欠部は、前記外側管体の外周面の複数個所に設けるようにした継手構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の継手構造において、前記切欠部は、前記外側管体の軸線方向の一方端側に開放する形状とした継手構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の継手構造において、前記外側管体の内向き環状凹溝又は前記内側管体の外向き環状凹溝の前記軸線方向の幅を、前記C型弾性リングの線径よりも大きく設定した継手構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の継手構造において、前記外側管体の内向き環状凹溝よりも管体奥側であって且つ前記内側管体の外向き環状凹溝よりも開放端側の両対向面間に、気密用シール部材を介在させた継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手構造、特に、抜け止めリングが備えられた差込式の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス栓の接続筒部に配管の継手部材を接続させる場合のように、流体が流れる2つの管体を接続させるための継手構造として、一方の管体内に他方の管体を抜け止め状態に差し込む差込式のものがある。
【0003】
上記したような差込式のものでは、外側に位置する外側管体の内周面と内側に位置する内側管体の外周面に、それぞれ対向する面に向かって開放する環状凹溝が周方向に形成されており、各環状凹溝の開放部相互が一致した時点で、両環状凹溝に跨るように、抜け止めリングとしてのC型弾性リングを介在させることにより、外側管体と内側管体とは抜け止め状態に接続される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-124222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような継手構造では、外側管体の内周面に形成された内向き環状凹溝と、内側管体の外周面に形成された外向き環状凹溝との両方に係合するように弾性復帰状態で嵌め込まれたC型弾性リングを取り外すことは困難であるため、一旦C型弾性リングを介して抜け止め状態に接続させた外側管体と内側管体とは分解することはできない。よって、例えば、ガス栓の接続筒部または配管の継手部材のどちらかに不具合があった場合に、両者を分離して一方を取り換えたり、修理したりすることができず、ガス栓ごと取り換えなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、外側管体内に内側管体を差し込んで、両者間に介在させたC型弾性リングによって、両者を抜け止め状態に接続させる継手構造において、通常時は確実に抜け止め機能を有し、取外しが必要な時には、特別な操作によりC型弾性リングを容易に取り外すことができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための技術的手段は、
外側管体内に内側管体を差し込んで抜け止め状態に保持する差込式の継手構造において、
外側管体の内周面には内方に開放する内向き環状凹溝が周方向全域に形成され、
内側管体の外周面には外方に開放する外向き環状凹溝が周方向全域に形成され、
内向き環状凹溝と外向き環状凹溝とが一致した時点で弾性復帰して両者に同時に係合するC型弾性リングが備えられ、
前記外側管体には、その外周面から前記内向き環状凹溝に連通し且つ前記C型弾性リングの線径よりも大きな軸線方向の幅を有する切欠部が形成され、
前記切欠部を介して、前記C型弾性リングの少なくとも一方の開放端部を、引出し可能に露出させることができるようにしたことを特徴とする。
【0008】
上記技術的手段は次のように作用する。
C型弾性リングを内側管体の外向き環状凹溝に外嵌させると共に、外向き環状凹溝から外方へ突出しないように縮径させながら、外側管体の一方の開放端から内側管体を挿入させる。内側管体の外向き環状凹溝が外側管体の内向き環状凹溝に対向した時点で、C型弾性リングは弾性復帰し、内向き環状凹溝と外向き環状凹溝の両方に跨るように拡径する。これにより、外向き環状凹溝の構成壁及び内向き環状凹溝の構成壁が各々C型弾性リングに係合する態様となり、外側管体と内側管体とは抜け止め状態に接続される。弾性復帰状態にあるC型弾性リングによって抜け止め状態に接続された外側管体と内側管体とは不用意に分離されることなく、接続状態は保持される。なお、接続状態にて、外側管体の外周面に開放するように形成された切欠部からC型弾性リングの一部が露出し目視可能となっている。
【0009】
上記した要領で接続された外側管体と内側管体とを分解するには、切欠部内に露出しているC型弾性リングの一部分を工具で支持しながら周方向に回す。切欠部の幅はC型弾性リングの線径よりも大きく設定されているから、切欠部に工具等を挿入して、C型弾性リングを周方向に回すことができる。そして、C型弾性リングの少なくとも一方の開放端部が切欠部内に露出した時点で、その開放端部を切欠部の外方へ引っ張り出せば、C型弾性リングを取り外すことができる。これにより、内側管体は外側管体から引き抜くことができ、両者は分解可能となる。
【0010】
上記継手構造において、好ましくは、前記切欠部は、前記外側管体を、外周円に対する接線に平行に切り欠くことにより、前記内向き環状凹溝に連通する切欠孔部と、その周方向両側にて同一面上に位置する前記外側管体の切欠面とから構成されるようにしたことである。
前記外側管体の外周円に対する接線に平行に切り欠くだけで切欠部を形成することができるようにしたから、外側管体に加工を施し易い。また、前記切欠孔部内にC型弾性リングの開放端部を露出させた後、前記切欠孔部の開放端と同じ高さに位置する前記切欠面に沿うように切欠部の側方へ引っ張り出すことができるので、C型弾性リングが取り外し易い。よって、外側管体と内側管体との分解作業が一層容易となる。
【0011】
上記継手構造において、好ましくは、前記切欠部は、前記内向き環状凹溝に連通する切欠孔部と、その周方向両側に位置する前記外側管体の切欠面とから構成され、
前記切欠面は、前記内向き環状凹溝の環状底部との角度が鋭角になるように斜めに切り欠かれた傾斜面である。
このものでは、切欠孔部の周方向両側に位置する切欠面は、前記外側管体の外周面に向かって相互に離反する方向に傾斜する傾斜面からなり、切欠孔部内に露出させたC型弾性リングの開放端部をこの傾斜面に沿って引っ張り上げることにより、C型弾性リングを容易に取り出すことが出来る。
【0012】
上記継手構造において、好ましくは、前記切欠部は、前記外側管体の外周面の複数個所に設けるようにしたことである。
C型弾性リングの開放端部は、複数の切欠部のうちのいずれか一つに露出させれば良いから、C型弾性リングの回動角度は小さくて良い。よって、切欠部からC型弾性リングの開放端部を露出させるための作業が容易となり、C型弾性リングを一層取外し易い継手構造を提供することができる。
【0013】
上記継手構造において、好ましくは、前記切欠部は、前記外側管体の軸線方向の一方端側に開放する形状としたことである。
前記切欠部の軸線方向の幅が大きくなるから、切欠部を介して、C型弾性リングを工具で回したり、開放端部を引っ張り出したりする作業がより一層やり易くなる。
【0014】
上記継手構造において、好ましくは、前記外側管体の内向き環状凹溝又は前記内側管体の外向き環状凹溝の前記軸線方向の幅を、前記C型弾性リングの線径よりも大きく設定したことである。
このものでは、外側管体内に内側管体を差し込んだとき、内向き環状凹溝と外向き環状凹溝とが対応し易くなるから、C型弾性リングを弾性復帰させ易く、両者を抜け止め状態に接続し易い。また、接続後の外側管体と内側管体とは、軸線方向に移動可能となるから、長さ方向の微調整が可能となる。
【0015】
上記継手構造において、好ましくは、前記外側管体の内向き環状凹溝よりも管体奥側であって且つ前記内側管体の外向き環状凹溝よりも開放端側の両対向面間に、気密用シール部材を介在させたことである。
外側管体内に内側管体を差し込んで、内向き環状凹溝に外向き環状凹溝を対応させた接続完了状態にて、前記外側管体の管体奥側の内周面に内側管体の開放端側の外周面が対応することなるが、両者間に気密用シール部材を介在させることによって、前記外側管体と内側管体とは気密状態に且つ抜け止め状態に接続可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記構成であるから次の特有の効果を有する。
外側管体内に内側管体を差し込むと、C型弾性リングによって、両者は抜け止め状態に接続される。一旦C型弾性リングによって接続された外側管体と内側管体とは不用意に分離されることはないから、長期に渡って接続状態を保持することができる。接続状態にて、外側管体に形成した切欠部からC型弾性リングの一部が露出する態様となっている。
外側管体と内側管体とを分離させたい場合には、前記切欠部に所定の工具を差し込んで、C型弾性リングの少なくとも一方の開放端部が前記切欠部内に現れるまでC型弾性リングを環状凹溝に沿って回転させる。そして、前記切欠部に現れた開放端部を工具によって引っ張り出せば、C型弾性リングは取り外すことができる。このように、特別な操作によりC型弾性リングを取り外すことができ、外側管体と内側管体とを分離することができる。
例えば、外側管体としての配管の継手部材、内側管体としてのガス栓の接続筒部のどちらか一方に欠陥や不具合が生じた場合、上記操作によりC型弾性リングを取り外せば、両者を分離させることができるので、ガス栓又は継手部材のどちらか一方のみを取り換えたり、修理したりすることができる。よって、継手部材を接続させたガス栓ごと廃棄する不都合が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1番目の実施の形態の継手構造に採用したガス栓と継手部材との接続状態を示す断面図である。
図2図1の要部拡大断面図である。
図3図1のX-X断面図である。
図4図3の状態からC型弾性リングを回動させた状態を示す断面図である。
図5】本発明の第1番目の実施の形態の継手構造に採用したガス栓と継手部材との接続状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第2番目の実施の形態の継手構造に採用したガス栓と継手部材との接続状態を示す要部拡大断面図である。
図7】本発明の第3番目の実施の形態の継手構造に採用したガス栓と継手部材との接続状態を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すものは、第1番目の実施の形態の継手構造を、ガス栓(G)のガス通路(20)の開放端部である接続筒部(2)と、ガス器具のガス取入筒部またはガス配管に接続可される継手部材(1)との接続部に実施したものである。
【0019】
継手部材(1)は、ガス栓(G)の接続筒部(2)に気密状態に且つ抜け止め状態に外嵌される管体であり、この実施の形態では、継手部材(1)が発明特定事項の外側管体として機能する。他方、ガス栓(G)の接続筒部(2)が発明特定事項の内側管体として機能する。
【0020】
接続筒部(2)の外周面には、図1及び図2に示すように、外方に開放する3つの第1~第3外向き環状凹溝(21)(22)(23)が周方向全域に沿って形成されており、接続筒部(2)の開放端寄りに位置する2つの第2,第3外向き環状凹溝(22)(23)内には、気密用シール部材としてのゴム製の気密用Oリング(30)が収容されている。
【0021】
気密用Oリング(30)は、第2,第3外向き環状凹溝(22)(23)各々の環状底面(220)(230)で構成される小径部に密着する内径を有する環状体とし、気密用Oリング(30)の線径は、第2,第3外向き環状凹溝(22)(23)の深さ以上に設定されている。これにより、気密用Oリング(30)を第2,第3外向き環状凹溝(22)(23)内に嵌入させると、気密用Oリング(30)の外側周面が第2,第3外向き環状凹溝(22)(23)の開放端からわずかに突出する態様となる。
【0022】
接続筒部(2)の最も奥に位置する第1外向き環状凹溝(21)には、C型弾性リング(以下、Cリング(3)という)が嵌め込まれる。第1外向き環状凹溝(21)の環状底面(210)の軸線方向の幅は、Cリング(3)の線径よりも大きく設定されていると共に、自由状態におけるCリング(3)の内径は、環状底面(210)で構成される筒径よりも大きく設定されている。これにより、Cリング(3)の外側周面は第1外向き環状凹溝(21)の開放端から突出する態様で収容される。
【0023】
また、外側管体としての継手部材(1)の内周面(12)には、接続筒部(2)の継手部材(1)への差込みが完了した時点における第1外向き環状凹溝(21)に対応する所定個所に、継手部材(1)の内方に開放する内向き環状凹溝(11)が周方向全域に形成されている。なお、環状凹溝(11)の軸線方向の幅はCリング(3)の線径よりも大きく設定されていると共に、内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)までの深さは、Cリング(3)の線径よりも浅く設定されている。
なお、この第1番目の実施の形態では、内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)よりも、第1外向き環状凹溝(21)の環状底面(210)の方が、軸線方向に幅広に設定されている。
【0024】
継手部材(1)を接続筒部(2)に外嵌状態に接続させるには、接続筒部(2)の第1外向き環状凹溝(21)に外嵌させたCリング(3)を第1外向き環状凹溝(21)内に収容されるように縮径させると共に、第2,第3外向き環状凹溝(22)(23)に外嵌させた気密用Oリング(30)を圧縮させながら、接続筒部(2)を継手部材(1)の一方端(13)から差し込む。
【0025】
接続筒部(2)を継手部材(1)に差し込んだ状態にて、気密用Oリング(30)は、継手部材(1)の内周面(12)で押圧変形されて、継手部材(1)の内周面(12)に密着することとなり、継手部材(1)と接続筒部(2)間の気密が確保される。そして、継手部材(1)の内向き環状凹溝(11)が接続筒部(2)の第1外向き環状凹溝(21)に一致した時点で、第1外向き環状凹溝(21)内に縮径状態で収容されていたCリング(3)が弾性復帰することにより、継手部材(1)の内向き環状凹溝(11)内へ向かって拡径し、内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)を押圧する。なお、この実施の形態では、第1外向き環状凹溝(21)の環状底面(210)の軸線方向幅を、内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)のそれよりも幅広に設定されているから、内向き環状凹溝(11)を第1外向き環状凹溝(21)に一致させ易く、Cリング(3)を弾性復帰させ易い。
【0026】
また、内向き環状凹溝(11)の深さは、Cリング(3)の線径よりも浅く設定されているから、弾性復帰したCリング(3)は内向き環状凹溝(11)の開放端部から内方へはみ出して、接続筒部(2)の第1外向き環状凹溝(21)内へ入り込む。これにより、Cリング(3)は、内向き環状凹溝(11)と第1外向き環状凹溝(21)の両方に係合する態様となるため、継手部材(1)は接続筒部(2)に、弾性復帰状態にあるCリング(3)によって、抜け止め状態に接続される。
この接続状態にて、Cリング(3)の線径と、内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)の軸線方向の幅と、第1外向き環状凹溝(21)の環状底面(210)の軸線方向の幅を、それぞれ異なる大きさに設定されているから、ガス栓(G)の接続筒部(2)に接続されている継手部材(1)の突出長さを微調整することができる。
【0027】
なお、継手部材(1)には、図3に示すように、その外周面から内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)を貫通する所定深さを、その外周円に対する接線(L)に対して平行に切り欠くことにより、内向き環状凹溝(11)に連通する切欠孔部(10a)と、その周方向両側に位置する継手部材(1)の切欠面(10b)とからなる切欠部(10)が形成されている。継手部材(1)を接続筒部(2)にCリング(3)を介して接続した状態においては、同図及び図1に示すように、切欠部(10)の切欠孔部(10a)から、Cリング(3)の一部が露出し目視可能となっている。
切欠部(10)の軸線方向の幅は、Cリング(3)の線径より大きく設定されている。
【0028】
継手部材(1)の内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)を押圧するように拡径方向に弾性復帰させたCリング(3)は縮径させることできないので、一旦、Cリング(3)によって接続された継手部材(1)と接続筒部(2)とは通常では分離することはできない。
以下では、継手部材(1)と接続筒部(2)の接続個所に不具合が生じたり、どちらか一方に欠陥があったりした場合等、継手部材(1)と接続筒部(2)とを分離させる必要が生じた場合について説明する。
【0029】
まず、専用の工具(図示せず)を用いて、切欠部(10)の切欠孔部(10a)に露出しているCリング(3)を回動させる。切欠部(10)、内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)及び第1外向き環状凹溝(21)の環状底面(210)各々の軸線方向に幅は、Cリング(3)の線径よりも大きく設定されているから、容易に切欠部(10)内に工具を挿入して、切欠孔部(10a)内に露出しているCリング(3)の一部を内向き環状凹溝(11)に沿って回動させることができる。
【0030】
そして、図4に示すように、Cリング(3)の一方の開放端部(31)が、切欠孔部(10a)内に現れた時点で、この開放端部(31)を切欠部(10)の外方へ引っ張り出す。この実施の形態では、継手部材(1)を外周円に対する接線(L)に平行に切り欠くことにより、図3及び図4に示すように、切欠部(10)を上向き姿勢としたとき、切欠孔部(10a)の両側に、切欠孔部(10a)の開放端と同じ高さの切欠面(10b)が水平に位置する態様となっているから、工具でCリング(3)の開放端部(31)を引き出す際に、図5の二点鎖線に示すように、水平な切欠面(10b)に沿わせて継手部材(1)の側方へ引っ張ることができ、Cリング(3)をスムーズに取り外すことが出来る。
【0031】
Cリング(3)を取り外した後、継手部材(1)を接続筒部(2)から抜き取れば、継手部材(1)をガス栓(G)から分離することができる。よって、継手部材(1)又は接続筒部(2)の不具合や欠陥が生じた場合には、どちらか一方を修理したり、交換したりすることができるから、ガス栓(G)自体を廃棄する必要はない。
【0032】
また、上記したような切欠部(10)は、継手部材(1)を平行に切り欠くだけで形成することができるから、継手部材(1)の加工が容易である。
なお、切欠部(10)の切欠面(10b)は、必ずしも同一面上に位置する水平面とする必要はなく、図4の二点鎖線に示すように、内向き環状凹溝(11)の環状底部(110)との角度が鋭角になるように斜めに切り欠いてなる傾斜面としても良い。
切欠面(10b)を外側管体の外周面に向かって相互に離反する方向に傾斜する傾斜面とすることにより、切欠孔部(10a)内に露出させたCリング(3)の開放端部(31)を、傾斜面に沿って引っ張り上げ易く、Cリング(3)は取り出し易いものとなる。
【0033】
図6に示すものは、第2番目の実施の形態の継手構造を採用したガス栓(G)の接続筒部(2)と継手部材(1)との接続状態を示す要部拡大断面図であり、内向き環状凹溝(11)の環状底面(110)の軸線方向の幅を、第1外向き環状凹溝(21)の環状底面(210)のそれよりも幅広に設定したものである。
このものも、上記した第1番目の実施の形態の継手構造と同様に、接続筒部(2)に継手部材(1)を外嵌させる際に、内向き環状凹溝(11)と第1外向き環状凹溝(21)とを対応させ易いから、Cリング(3)を弾性復帰させ易く、両者を抜け止め状態に接続し易い。また、接続後の外側管体と内側管体とは、軸線方向に移動可能となるから、長さ方向の微調整が可能となる
【0034】
図7に示すものは、第3番目の実施の形態の継手構造を採用したガス栓(G)の接続筒部(2)と継手部材(1)との接続状態を示す要部拡大側面図である。
このものでは、第1番目の実施の形態で採用した切欠部(10)を、接続筒部(2)が差し込まれる側である継手部材(1)の一方端(13)に開放するように切り欠いた形状としたものであり、継手部材(1)への加工がより一層容易となる上に、切欠部(10)の軸線方向の幅が一層大きくなることから、切欠部(10)内に専用の工具を差し込んで、Cリング(3)を回したり、引っ張り出したりし易いものとなる。
【0035】
また、図7に示すものでは、切欠部(10)を継手部材(1)の直径方向の両端に一つずつ形成している。この場合、Cリング(3)の開放端部(31)を、2つの切欠部(10)のどちらかに露出させればよいから、Cリング(3)の回動角度は小さくて良い。このように、切欠部(10)を継手部材(1)の外周面の複数個所形成しておくことによって、Cリング(3)を回す角度は小さくて済むから、Cリング(3)の取出し作業が一層容易となる。
【0036】
上記継手構造では、継手部材(1)はガス栓(G)の接続筒部(2)に、Cリング(3)とOリング(30)を介して接続させる構成としたから、継手部材(1)は接続筒部(2)に、長期に渡って、気密状態に且つ抜け止め状態に保持される。そして、継手部材(1)又は接続筒部(2)を分離させる必要が生じた場合には、継手部材(1)に形成した切欠部(10)を介する特別な操作によって、Cリング(3)を引き抜くことができる。このように、必要に応じて継手部材(1)は接続筒部(2)から分離することができるから、ガス栓又は継手部材のどちらか一方を取り換えたり、修理したりすることができ、ガス栓ごと廃棄する不都合は解消される。
【符号の説明】
【0037】
(1) ・・・・・・・・継手部材(外側管体)
(2) ・・・・・・・・接続筒部(内側管体)
(3) ・・・・・・・・Cリング(C型弾性リング)
(10)・・・・・・・・切欠部
(11)・・・・・・・・内向き環状凹溝
(12)・・・・・・・・内周面
(21)・・・・・・・・第1外向き環状凹溝(外向き環状凹溝)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7