(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034609
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】病変回収デバイス、及び、アテレクトミーデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3207 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A61B17/3207
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140929
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】古川 宗也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 賢一
(72)【発明者】
【氏名】石川 茜
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF21
4C160MM36
4C160NN03
4C160NN10
4C160NN13
4C160NN23
(57)【要約】
【課題】組織片の吸引効率や運搬効率の低下を抑制することが可能な病変回収デバイスを提供する。
【解決手段】病変回収デバイスは、長尺状の外形を有するシャフトと、シャフトの外周面から螺旋状に突出した螺旋状凸部と、筒状の外筒チューブであって、螺旋状凸部が設けられたシャフトの基端側の一部分を内側に収容した外筒チューブと、を備え、螺旋状凸部では、横断面における表面が凹凸形状を有する線材が、シャフトの外周面に螺旋状に巻回されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病変回収デバイスであって、
長尺状の外形を有するシャフトと、
前記シャフトの外周面から螺旋状に突出した螺旋状凸部と、
筒状の外筒チューブであって、前記螺旋状凸部が設けられた前記シャフトの基端側の一部分を内側に収容した外筒チューブと、
を備え、
前記螺旋状凸部では、横断面における表面が凹凸形状を有する線材が、前記シャフトの外周面に螺旋状に巻回されている、病変回収デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の病変回収デバイスであって、
前記線材は、横断面が多角形状又は楕円形状である基線材が螺旋状に捻られた構成を有しており、
前記基線材の捻り方向は、前記線材が前記シャフトに巻回される巻回方向と異なる、病変回収デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の病変回収デバイスであって、
前記線材は、横断面が多角形状又は楕円形状である基線材が螺旋状に捻られた構成を有しており、
前記基線材の捻り方向は、前記線材が前記シャフトに巻回される巻回方向と同じである、病変回収デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の病変回収デバイスであって、
前記シャフトは、1本の素線が単条に巻回された単条コイル、又は、複数本の素線が多条に巻回された多条コイルである、病変回収デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の病変回収デバイスであって、
前記シャフトは、内側に医療デバイスを挿通可能なデバイスルーメンを有している、病変回収デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の病変回収デバイスであって、さらに、
前記シャフトに接続されて、前記シャフトに対して回転力を伝達することで、前記シャフト及び前記螺旋状凸部を軸回りに回転させる回転伝達機構を備える、病変回収デバイス。
【請求項7】
アテレクトミーデバイスであって、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の病変回収デバイスと、
前記病変回収デバイスのうち、前記シャフトの先端部に設けられており、生体組織を切削することが可能なカッターと、
を備える、アテレクトミーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病変回収デバイス、及び、アテレクトミーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内に生じた狭窄病変や閉塞病変(以降、これらを総称して単に「病変」とも呼ぶ)を切削することで、病変を除去するデバイスが知られている。このデバイスにより病変組織を切削した際には、病変を構成していた組織片が飛散する。飛散した組織片は、血管下流において血管内に詰まり、新たな病変を生じさせる一因となり得る。このため、病変組織を切削するデバイスは、組織片をデバイス内に吸引してデバイスの外部まで運搬する機能を有することが好ましい。
【0003】
特許文献1には、シャフトを回転させることによって、シャフト先端のチップで病変組織を切削するとともに、外周面にねじ山を有する当該シャフトを内側に含む管内に組織片を吸引して運搬するアテローム切除装置が開示されている。特許文献2~5には、外周面に螺旋状に巻回された線材を有するシャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-164529号公報
【特許文献2】特開2012-183125号公報
【特許文献3】米国特許出願公開2016/0101262号明細書
【特許文献4】特開2015-93122号公報
【特許文献5】特許第4051292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のアテローム切除装置では、吸引した組織片の量もしくは組織片のサイズによっては、管内に組織片が詰まることにより、組織片の吸引効率や運搬効率が低下するという課題があった。また、特許文献2~5に開示されたシャフトでは、当該シャフトを回転して当該シャフトを内側に含む管内に組織片を吸引して運搬することについては何ら考慮されていない。なお、このような課題は、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内の異物を除去するデバイス全般に共通する。
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、組織片の吸引効率や運搬効率の低下を抑制することが可能な病変回収デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、病変回収デバイスが提供される。この病変回収デバイスは、長尺状の外形を有するシャフトと、前記シャフトの外周面から螺旋状に突出した螺旋状凸部と、筒状の外筒チューブであって、前記螺旋状凸部が設けられた前記シャフトの基端側の一部分を内側に収容した外筒チューブと、を備え、前記螺旋状凸部では、横断面における表面が凹凸形状を有する線材が、前記シャフトの外周面に螺旋状に巻回されている。
【0009】
この構成によれば、外筒チューブに収容された部分のシャフトには、螺旋状凸部が設けられている。このため、シャフト及び螺旋状凸部を回転させることによって、外筒チューブ内に吸引された組織片を、外筒チューブ内においてアルキメデススクリューとして機能する螺旋状凸部により運搬することができる。また、この構成によれば、螺旋状凸部では、横断面における表面が凹凸形状を有する線材が、シャフトの外周面に螺旋状に巻回されている。このため、螺旋状凸部の表面における凹凸形状のうち凸形状の部分がエッジとなって、外筒チューブ内を運搬されている組織片を細断することができる。したがって、外筒チューブ内に吸引された組織片が詰まることを抑制できることから、組織片の吸引効率や運搬効率が低下することを抑制できる。
【0010】
(2)上記形態の病変回収デバイスにおいて、前記線材は、横断面が多角形状又は楕円形状である基線材が螺旋状に捻られた構成を有しており、前記基線材の捻り方向は、前記線材が前記シャフトに巻回される巻回方向と異なっていてもよい。
この構成によれば、線材が、横断面が多角形状又は楕円形状である基線材が螺旋状に捻られた構成を有することから、線材の横断面における表面の凹凸形状を容易に実現することができる。また、このような線材がシャフトの外周面に巻回されることにより、螺旋状凸部を構成していることから、螺旋状凸部を容易に実現することができる。また、この構成によれば、基線材の捻り方向は、線材がシャフトに巻回される巻回方向と異なる。このため、螺旋状凸部の延びる螺旋方向と、螺旋状凸部の表面における凸形状の部分の延びる延伸方向とは、ともに基端側を向いていることから、螺旋方向に沿った流体の流れと延伸方向に沿った流体の流れとが合成される。その結果、病変回収デバイスの基端側への組織片の運搬を促進することができる。
【0011】
(3)上記形態の病変回収デバイスにおいて、前記線材は、横断面が多角形状又は楕円形状である基線材が螺旋状に捻られた構成を有しており、前記基線材の捻り方向は、前記線材が前記シャフトに巻回される巻回方向と同じであってもよい。
この構成によれば、線材が、横断面が多角形状又は楕円形状である基線材が螺旋状に捻られた構成を有することから、線材の横断面における表面の凹凸形状を容易に実現することができる。また、このような線材がシャフトの外周面に巻回されることにより、螺旋状凸部を構成していることから、螺旋状凸部を容易に実現することができる。また、この構成によれば、基線材の捻り方向は、線材がシャフトに巻回される巻回方向と同じである。このため、螺旋状凸部の延びる螺旋方向は基端側を向いているとともに螺旋状凸部の表面における凸形状の部分の延びる延伸方向は先端側を向いていることから、螺旋方向に沿って流れる流体と延伸方向に沿って流れる流体との間で剪断力が生じやすい。この剪断力により組織片の細断を促進することができる。
【0012】
(4)上記形態の病変回収デバイスにおいて、前記シャフトは、1本の素線が単条に巻回された単条コイル、又は、複数本の素線が多条に巻回された多条コイルであってもよい。
この構成によれば、シャフトは、1本の素線が単条に巻回された単条コイル、又は、複数本の素線が多条に巻回された多条コイルであるため、シャフトのトルク伝達性や柔軟性を向上することができる。
【0013】
(5)上記形態の病変回収デバイスにおいて、前記シャフトは、内側に医療デバイスを挿通可能なデバイスルーメンを有していてもよい。
この構成によれば、シャフトは、内側に医療デバイスを挿通可能なデバイスルーメンを有しているため、デバイスルーメンに対してデリバリガイドワイヤを挿通させることで、病変回収デバイスを容易に病変までデリバリできる。
【0014】
(6)上記形態の病変回収デバイスにおいて、さらに、前記シャフトに接続されて、前記シャフトに対して回転力を伝達することで、前記シャフト及び前記螺旋状凸部を軸回りに回転させる回転伝達機構を備えていてもよい。
この構成によれば、シャフト及び螺旋状凸部を軸回りに回転させる回転伝達機構を備えることから、この回転伝達機構を用いて容易にシャフト及び螺旋状凸部を回転させることができる。
【0015】
(7)本発明の一形態によれば、アテレクトミーデバイスが提供される。このアテレクトミーデバイスは、上記形態の病変回収デバイスと、前記病変回収デバイスのうち、前記シャフトの先端部に設けられており、生体組織を切除することが可能なカッターと、を備える。
この構成によれば、シャフトの先端部に生体組織を切削することが可能なカッターが設けられていることから、病変組織を効率よく切削することができると共に、石灰化病変等の硬い病変に対しても、病変組織を切削することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、病変回収デバイスもしくはアテレクトミーデバイスを含むカテーテル、病変回収デバイスもしくはアテレクトミーデバイスの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の病変回収デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図2】シャフトの外周面に螺旋状に巻回された線材について説明する図である。
【
図3】病変回収デバイスを用いた病変組織除去の一例を示す説明図である。
【
図4】螺旋状凸部による運搬について説明する説明図である。
【
図5】第2実施形態の病変回収デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図6】螺旋状凸部による運搬について説明する説明図である。
【
図7】第3実施形態の病変回収デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図8】
図7のB―B線における横断面を示した断面図である。
【
図9】第4実施形態の病変回収デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図10】第5実施形態の病変回収デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図11】第6実施形態の病変回収デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図12】第7実施形態の病変回収デバイスの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の病変回収デバイス1の構成を例示した説明図である。病変回収デバイス1は、例えば、血管内に生じた狭窄病変や閉塞病変(以降、これらを総称して単に「病変」とも呼ぶ)を構成する病変組織を除去する場合に使用されるデバイスである。なお、病変回収デバイス1は、冠動脈のほか、心臓等の他の血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に生じた病変組織(または異物)を除去するためのデバイスとして構成できる。病変回収デバイス1は、シャフト10と、外筒チューブ20と、先端側接合部31と、基端側接合部33と、チップ35と、モータハウジング40とを備えている。
【0019】
図1では、説明の便宜上、各構成部材の大きさの相対比を実際とは異なるように記載している部分を含んでいる。また、各構成部材の一部を誇張して記載している部分を含んでいる。また、
図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸は病変回収デバイス1の長手方向に対応し、Y軸は病変回収デバイス1の高さ方向に対応し、Z軸は病変回収デバイス1の幅方向に対応する。
図1の左側(-X軸方向)を病変回収デバイス1及び各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側(+X軸方向)を病変回収デバイス1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、病変回収デバイス1及び各構成部材の長手方向(X軸方向)における両端のうち、先端側に位置する一端を「先端」と呼び、基端側に位置する他端を「基端」と呼ぶ。また、先端及びその近傍を「先端部」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、
図1以降においても共通する。
【0020】
図1において、外筒チューブ20は、XY平面で切った断面が斜線ハッチングで示されており、モータハウジング40は、XY平面で切った断面が格子ハッチングで示されている。また、
図1において、説明の便宜上、病変回収デバイス1のうち外筒チューブ20及びモータハウジング40以外の構成は、外観で示されている。すなわち、
図1には、外筒チューブ20及びモータハウジング40の内側に含まれる構成が外側から見える状態の病変回収デバイス1が示されている。
【0021】
シャフト10は、病変回収デバイス1の長手方向に沿って延びる長尺状の外形を有する部材である。シャフト10は、外筒チューブ20及びモータハウジング40の内側(内腔1L)に設けられている。シャフト10は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料で形成することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用できる。金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金等を採用できる。本実施形態では、シャフト10は、複数本の素線が多条に巻回された多条コイルであり、SUS304等のステンレス鋼で構成されている。
【0022】
シャフト10は、内側にデバイスルーメン10Lを有する。
図1において破線で示すように、デバイスルーメン10Lは、病変回収デバイス1の長手方向(X軸方向)に沿って延びている。デバイスルーメン10Lは、内側に医療デバイスとしてのデリバリガイドワイヤを挿通可能である。以降では、デリバリガイドワイヤを単に「ガイドワイヤ」とも呼ぶ。シャフト10の外形及び長さ、デバイスルーメン10Lの内径は任意に設計できる。
【0023】
シャフト10は、螺旋状凸部11および太径部12を備える。螺旋状凸部11は、シャフト10の外周面10aから螺旋状に突出している。螺旋状凸部11では、横断面における表面が凹凸形状を有する線材がシャフト10の外周面10aに螺旋状に巻回されている。これ以降、シャフト10の外周面10aに螺旋状に巻回される線材を、巻回線材11Wと呼ぶこととする。本実施形態では、螺旋状凸部11は、巻回線材11Wがシャフト10の外周面10aにZ巻きの方向に巻回されることによって形成されている。太径部12は、シャフト10の基端側において他の部分より径が大きくなっている部分である。
【0024】
外筒チューブ20は、螺旋状凸部11が設けられたシャフト10の基端側の一部分を内側に収容した筒状の部材である。換言すれば、螺旋状凸部11が設けられたシャフト10の先端側は、外筒チューブ20から露出している。外筒チューブ20から露出している部分のシャフト10に設けられた螺旋状凸部11は、シャフト10及び螺旋状凸部11が回転した場合に、病変回収デバイス1の先端側における周囲から病変回収デバイス1内への流体の吸引を促進する。外筒チューブ20の先端には、開口22が形成されている。開口22は、先端側から病変回収デバイス1を見たときに、シャフト10の周囲にわたって形成されている。本実施形態では、外筒チューブ20は、PFA(4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で形成された筒状部材を熱収縮させることによって形成される。外筒チューブ20は、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体)で形成されてもよいし、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有する他の樹脂材料によって形成されてもよい。また、外筒チューブ20は、金属編組を内部に含む樹脂チューブであってもよい。
【0025】
先端側接合部31は、円盤状の部材であり、シャフト10の先端部とチップ35の基端部とを接合している。また、先端側接合部31の基端部は、螺旋状凸部11の先端部とも接合している。基端側接合部33は、シャフト10が挿通可能な環状の部材であり、シャフト10が挿通された状態でシャフト10に固定されている。本実施形態では、基端側接合部33が固定されているシャフト10上の位置は、X軸方向において外筒チューブ20の基端部に相当する位置である。また、基端側接合部33の先端部は、螺旋状凸部11の基端部と接合している。先端側接合部31、基端側接合部33における接合には、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤を採用できる。
【0026】
チップ35は、先端側接合部31の先端部に接合されて、他の部材よりも先行して生体管腔内を進行する部材である。
図1に示すように、チップ35は、生体管腔内での病変回収デバイス1の進行をスムーズにするために、基端側から先端側にかけて縮径した外観形状を有している。チップ35が血管内に形成された病変組織と接触した際には、病変組織は切削される(
図3参照)。
【0027】
モータハウジング40は、パッキン43と、モータ46とを収容するとともに、シャフト10が内部に挿通される略円筒状の部材である。また、モータハウジング40の先端部には、外筒チューブ20が接合されている。モータハウジング40は、+Y軸方向に突出した突出部41を備える。また、突出部41には、排出口42が形成されている。排出口42は、開口22から病変回収デバイス1内に吸引された病変組織の組織片を病変回収デバイス1の外側へ排出するための開口である(
図3参照)。
【0028】
パッキン43は、シャフト10が挿通可能な環状の部材であり、ゴムや各種エラストマー等の材料によって形成されている。パッキン43は、モータハウジング40の内部空間において内壁の突出により縮径している先端側縮径部44に嵌められ、先端側縮径部44から基端側へ流体が漏れないよう先端側縮径部44を密封している。
【0029】
基端側縮径部45は、先端側縮径部44より基端側に形成された縮径部である。先端側縮径部44と基端側縮径部45との間に太径部12が配置されることにより、病変回収デバイス1の長手方向(X軸方向)におけるシャフト10の移動が抑制される。
【0030】
モータ46は、シャフト10に接続されて、シャフト10に対して回転力を伝達することで、シャフト10及び螺旋状凸部11を軸回りに回転させる回転伝達機構である。本実施形態では、モータ46は、シャフト10へ回転力を直接伝達する。モータ46は、他の部材を介して間接的にシャフト10へ回転力を伝達してもよい。また、モータ46に代えて、手動でハンドルを回転させることで、シャフト10への回転力を伝達するようにしてもよい。
【0031】
図2は、螺旋状凸部11として、シャフト10の外周面10aに螺旋状に巻回された線材(巻回線材11W)について説明する図である。
図2(A)に示された基線材11paは、横断面が矩形形状の線材である。詳細には、基線材11paは、横断面が円形の丸線を圧延することによって形成された線材であるため、横断面である矩形形状の四隅の角は丸みを帯びている。巻回線材11Wは、基線材11paが螺旋状に捻られた構成を有する。本実施形態では、基線材11paは、S巻きの方向に捻られている。螺旋状凸部11は、螺旋状に捻られた状態の基線材11paを、シャフト10の外周面10aに螺旋状に巻回することによって形成される。上述したように、本実施形態では、螺旋状凸部11は、シャフト10に対してZ巻きの方向に巻回されていることから、基線材11paの捻り方向は、巻回線材11Wがシャフト10に巻回される巻回方向と異なる。
【0032】
図2(B)に示された基線材11pbは、横断面が楕円形状の線材である。巻回線材11Wは、基線材11pbが螺旋状に捻られた構成を有してもよい。なお、基線材の横断面は角張っている部分を含む方が好ましい。基線材の横断面において角張っている部分は、基線材が捻られた際に巻回線材11Wの表面において凸形状の部分となる部分であり、基線材が捻られる際には、捻り方向に向かって延ばされることにより尖りやすいからである。そのように尖った凸形状の部分は、開口22から外筒チューブ20内に吸引された組織片の細断に寄与する。
【0033】
図3は、本実施形態の病変回収デバイス1を用いた病変組織除去の一例を示す説明図である。
図3では、生体管腔の一例として血管200を例示し、病変組織の例として病変組織210を例示する。
図3に示された血管200には、病変組織210で閉塞した病変が形成されている。
【0034】
病変回収デバイス1を用いて病変組織の除去を行う際、まず、術者は、病変組織210の遠位端側にガイドワイヤGWの先端部が位置するようガイドワイヤGWをデリバリする。次に、術者は、デバイスルーメン10Lの先端側からガイドワイヤGWの基端側を先頭にして、ガイドワイヤGWをデバイスルーメン10Lに挿通する。ガイドワイヤGWを挿通したのち、術者は、病変回収デバイス1をガイドワイヤGWに沿って押し進め、チップ35が病変組織210の位置に到達するまで、病変回収デバイス1をデリバリする。
【0035】
病変回収デバイス1が病変組織210の位置に到達してから、術者は、モータ46を稼働させることによって、シャフト10及び螺旋状凸部11を回転させる。シャフト10とともに回転しているチップ35を病変組織210に押し当てると、病変組織210が切削されて組織片CPが飛散する。また、外筒チューブ20から露出している螺旋状凸部11が回転している状態で病変組織210に押し当たる場合にも、病変組織210が切削されて組織片CPが飛散する。シャフト10及び螺旋状凸部11が回転している状態においては、必要に応じて、病変組織210と病変回収デバイス1との距離を遠ざけたり近づけたりする。組織片CPは、螺旋状凸部11の回転により開口22を介して外筒チューブ20内に吸引されたのち、更にアルキメデススクリューとして機能する螺旋状凸部11により病変回収デバイス1の基端側へと運搬される。運搬されている組織片CPは、螺旋状凸部11の表面における凹凸形状のうちエッジとなる凸形状の部分により細断される。このようにして細断されながら運搬された組織片CPは、排出口42から病変回収デバイス1の外側へ排出される。
図3においては、排出口42に吸引部50が接続されており、排出口42に到達した組織片CPは吸引部50に吸引される。
【0036】
図4は、螺旋状凸部11による運搬について説明する説明図である。上述したように、病変回収デバイス1において、基線材11paをS巻きの方向に捻った構成である巻回線材11Wが、シャフト10に対してZ巻きの方向に巻回されることによって、螺旋状凸部11が形成されている。このように螺旋状凸部11が形成されていることにより、螺旋状凸部11の延びる螺旋方向SD1と、螺旋状凸部11の表面における凸形状の部分の延びる延伸方向TS1とは、ともに基端側(+X軸方向)を向くことになる。その結果、螺旋状凸部11が回転する際には、螺旋方向SD1に沿った流体の流れに対して延伸方向TS1に沿った流体の流れが加わって合成されることから、基端側への組織片の吸引が促進される。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態の病変回収デバイス1によれば、外筒チューブ20に収容された部分のシャフト10には、螺旋状凸部11が設けられている。このため、シャフト10及び螺旋状凸部11を回転させることによって、外筒チューブ20内に吸引された組織片を、外筒チューブ20内においてアルキメデススクリューとして機能する螺旋状凸部11により運搬することができる。また、この構成によれば、螺旋状凸部11では、横断面における表面が凹凸形状を有する巻回線材11Wが、シャフト10の外周面10aに螺旋状に巻回されている。このため、螺旋状凸部11の表面における凹凸形状のうち凸形状の部分がエッジとなって、外筒チューブ20内を運搬されている組織片を細断することができる。したがって、外筒チューブ20内に吸引された組織片が詰まることを抑制できることから、組織片の吸引効率や運搬効率が低下することを抑制できる。
【0038】
また、第1実施形態の病変回収デバイス1によれば、巻回線材11Wが、横断面が矩形形状である基線材11paが螺旋状に捻られた構成を有することから、巻回線材11Wの横断面における表面の凹凸形状を容易に実現することができる。また、このような巻回線材11Wがシャフト10の外周面10aに巻回されることにより、螺旋状凸部11を構成していることから、螺旋状凸部11を容易に実現することができる。また、この構成によれば、基線材11paの捻り方向は、巻回線材11Wがシャフト10に巻回される巻回方向と異なる。このため、螺旋状凸部11の延びる螺旋方向SD1と、螺旋状凸部11の表面における凸形状の部分の延びる延伸方向TS1とは、ともに基端側を向いていることから、螺旋方向SD1に沿った流体の流れと延伸方向TS1に沿った流体の流れとが合成される。その結果、病変回収デバイス1の基端側への組織片の運搬を促進することができる。
【0039】
さらに、第1実施形態の病変回収デバイス1によれば、シャフト10は、複数本の素線が多条に巻回された多条コイルであるため、シャフト10のトルク伝達性や柔軟性を向上することができる。
【0040】
さらに、第1実施形態の病変回収デバイス1によれば、シャフト10は、内側に医療デバイスを挿通可能なデバイスルーメン10Lを有しているため、デバイスルーメン10Lに対してデリバリガイドワイヤを挿通させることで、病変回収デバイス1を容易に病変までデリバリできる。
【0041】
さらに、第1実施形態の病変回収デバイス1によれば、シャフト10及び螺旋状凸部11を軸回りに回転させる回転伝達機構としてモータ46を備えることから、この回転伝達機構を用いて容易にシャフト10及び螺旋状凸部11を回転させることができる。
【0042】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の病変回収デバイス1Aの構成を例示した説明図である。第2実施形態の病変回収デバイス1Aは、第1実施形態の螺旋状凸部11に代えて螺旋状凸部11aを備える点を除いて、第1実施形態の病変回収デバイス1と同じ構成を備える。
【0043】
螺旋状凸部11aは、第1実施形態の螺旋状凸部11と同様に、螺旋状に捻られた状態の基線材11pa(巻回線材11Wa)を、シャフト10の外周面10aにZ巻きの方向に巻回することによって形成される。一方、螺旋状凸部11aでは、第1実施形態の螺旋状凸部11と異なり、基線材11pa(巻回線材11Wa)は、Z巻きの方向に捻られている。したがって、第2実施形態では、基線材11paの捻り方向は、巻回線材11Waがシャフト10に巻回される巻回方向と同じである。
【0044】
図6は、螺旋状凸部11aによる運搬について説明する説明図である。上述したように、病変回収デバイス1Aにおいて、基線材11paをZ巻きの方向に捻った構成である巻回線材11Waが、シャフト10に対してZ巻きの方向に巻回されることによって、螺旋状凸部11aが形成されている。このように螺旋状凸部11aが形成されていることにより、螺旋状凸部11aの延びる螺旋方向SD2は基端側(+X軸方向)を向くとともに、螺旋状凸部11aの表面における凸形状の部分の延びる延伸方向は先端側(-X軸方向)を向くことになる。その結果、螺旋状凸部11aが回転する際には、螺旋方向SD2に沿って流れる流体と延伸方向TS2に沿って流れる流体との間で剪断力が生じやすい。このような剪断力は、螺旋状凸部11の表面においてエッジとなる凸形状の部分に加えて、組織片の細断に寄与することから、組織片の細断が促進される。
【0045】
以上のような第2実施形態の病変回収デバイス1Aによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の病変回収デバイス1Aによれば、上述したように、螺旋方向SD2に沿って流れる流体と延伸方向TS2に沿って流れる流体との間で剪断力が生じやすいことから、組織片の細断を促進することができる。
【0046】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の病変回収デバイス1Bの構成を例示した説明図である。
図8は、
図7のB―B線における横断面を示した断面図である。第3実施形態の病変回収デバイス1Bは、第1実施形態のチップ35に代えてカッターアセンブリ35bを備える点を除いて、第1実施形態の病変回収デバイス1と同じ構成を備える。カッターアセンブリ35bを備える病変回収デバイス1Bは、アテレクトミーデバイスに相当する。
【0047】
カッターアセンブリ35bは、先端側接合部31を介してシャフト10の先端部に設けられている。カッターアセンブリ35bは、基端側から先端側にかけて縮径した外観形状の部材である。カッターアセンブリ35bは、周面開口36b及び基端側開口37bを有するとともに、生体組織を切削することが可能なカッター38bを内側に収容している。周面開口36bは、カッターアセンブリ35bの周面に設けられた開口である。基端側開口37bは、先端側接合部31の周囲に設けられ、基端側を向いている開口である(
図8参照)。カッターアセンブリ35bは、シャフト10の回転に伴って回転する。第3実施形態においては、血管内に形成された病変組織を除去する際、シャフト10が回転している状態でカッターアセンブリ35bを病変組織に押し当てる。このとき、周面開口36bからカッターアセンブリ35b内に入った病変組織(もしくは病変組織から飛散した組織片)は、カッター38bによって細断されたのち基端側開口37bからカッターアセンブリ35bの外側へと排出される。基端側開口37bから排出された病変組織の組織片は、螺旋状凸部11の回転により開口22を介して外筒チューブ20内に吸引される。
【0048】
以上のような第3実施形態の病変回収デバイス1Bによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態の病変回収デバイス1Bによれば、シャフト10の先端部に生体組織を切削することが可能なカッター38bが設けられていることから、病変組織を効率よく切削することができると共に、石灰化病変等の硬い病変に対しても、病変組織を切削することができる。また、血管内に形成された病変組織が硬質である場合、カッター38bによって病変組織を細断したのちに外筒チューブ20内に吸引されることから、硬質の病変組織を除去する場合に吸引効率や運搬効率が低下することを抑制できる。
【0049】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態の病変回収デバイス1Cの構成を例示した説明図である。第4実施形態の病変回収デバイス1Cは、第1実施形態の外筒チューブ20に代えて外筒チューブ20cを備える点と、第1実施形態の先端側接合部31に代えて先端側接合部31cを備える点と、を除いて、第1実施形態の病変回収デバイス1と同じ構成を備える。外筒チューブ20cには、開口22に代えて開口22c及び開口24cが形成されている。
【0050】
開口22cは、外筒チューブ20cの外周面において病変回収デバイス1の長手方向(X軸方向)に沿って形成されている。開口22cは、螺旋状凸部11が回転した際に外筒チューブ20c内に組織片を吸引するための開口である。
図9においては、開口22cは、+Y軸方向に形成されているが、外筒チューブ20cの外周面においていずれの位置に形成されていてもよいし、2つ以上形成されていてもよい。
【0051】
開口24cは、外筒チューブ20cの先端に形成されている。開口24cは、デバイスルーメン10Lをシャフト10の先端側(-X軸方向側)に延長した位置に形成されている。開口24cは、病変組織除去を行う際にガイドワイヤをデバイスルーメン10Lに挿通する際の入り口として用いられる開口である。
【0052】
先端側接合部31cは、半球形状の部材であり、シャフト10の先端部と接合している。また、先端側接合部31cの基端部は、螺旋状凸部11の先端部と接合している。第4実施形態においては、血管内に形成された病変組織を除去する際、外筒チューブ20cの先端部を病変組織210に押し当てて病変組織210を切削し、飛散する組織片を開口22cから病変回収デバイス1内に吸引する。
【0053】
このような第4実施形態の病変回収デバイス1Cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態の病変回収デバイス1Cによれば、開口22cが、外筒チューブ20cの外周面において病変回収デバイス1の長手方向(X軸方向)に沿って形成されている。このため、外筒チューブ20cの先端部に開口を形成する場合と比べて、開口22cを大きく形成することができる。開口22cが大きいほど組織片を病変回収デバイス1C内に吸引しやすくなることから、組織片の吸引効率を向上することができる。
【0054】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態の病変回収デバイス1Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態の病変回収デバイス1Dは、第1実施形態の基端側接合部33に代えて基端側接合部33dを備える点と、第1実施形態のパッキン43を備えていない点を除いて、第1実施形態の病変回収デバイス1と同じ構成を備える。
【0055】
基端側接合部33dは、シャフト10が挿通可能な環状の部材であり、螺旋状凸部11の基端部と接合している。基端側接合部33dは、シャフト10が挿通された状態で、X軸方向において突出部41の基端部BSに相当するシャフト10上の位置に固定されている。基端側接合部33dは、シャフト10の回転に伴って回転するためモータハウジング40の内側に嵌めることはできないが、基端側への流体の流れを抑制するようYZ平面における断面が大きく形成されている方が好ましい。
【0056】
このような第5実施形態の病変回収デバイス1Dによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態の病変回収デバイス1Dによれば、基端側接合部33dを備えているため、パッキンを備えていなくても、基端側への流体の流れを抑制することができる。むろん、病変回収デバイス1Dにおいて、先端側縮径部44にパッキンが嵌められてもよい。
【0057】
<第6実施形態>
図11は、第6実施形態の病変回収デバイス1Eの構成を例示した説明図である。第6実施形態の病変回収デバイス1Eは、第1実施形態の外筒チューブ20に代えて外筒チューブ20eを備える点を除いて、第1実施形態の病変回収デバイス1と同じ構成を備える。外筒チューブ20eには、拡径部24eが形成されている。拡径部24eは、外筒チューブ20eの先端部に形成されており、先端側に向かうほど外筒チューブ20eの径が拡大している部分である。
【0058】
このような第6実施形態の病変回収デバイス1Eによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第6実施形態の病変回収デバイス1Eによれば、外筒チューブ20eには拡径部24eが形成されているため、外筒チューブ20eの先端に形成される開口22を大きくすることができる。開口22を大きく形成するほど、組織片が病変回収デバイス1内に吸引される可能性が上昇することから、病変回収デバイス1内への組織片への吸引効率を向上することができる。
【0059】
<第7実施形態>
図12は、第7実施形態の病変回収デバイス1Fの構成を例示した説明図である。第7実施形態の病変回収デバイス1Fは、第1実施形態の外筒チューブ20に代えて外筒チューブ20fを備える点を除いて、第1実施形態の病変回収デバイス1と同じ構成を備える。外筒チューブ20fには、複数の開口26fが形成されている。複数の開口26fは、外筒チューブ20の外周面に形成されており、開口22と比べて、小さい開口である。
【0060】
このような第7実施形態の病変回収デバイス1Fによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第7実施形態の病変回収デバイス1Fによれば、外筒チューブ20が複数の開口26fを有している。開口22から外筒チューブ20内に吸引された組織片は、基端側に向かいながら螺旋状凸部11により順次細断される。このとき、開口26fの開口面積が比較的小さい場合には、組織片は開口26fを通過できず、螺旋状凸部11の回転により開口26fから外筒チューブ20の内側に血液が導入される。組織片の粘度は高いことから、組織片が外筒チューブ20内に集積することによって外筒チューブ20内を流れる流体の粘度も高くなる傾向にあるが、導入される血液によりそのような流体の粘度を低下させることができる。したがって、開口26fの開口面積を比較的小さくした場合には、組織片の運搬効率が低下することを抑制できる。
【0061】
一方、開口26fの開口面積が比較的大きい場合には、開口26fは、開口22と同様に、病変組織が切削されて血管内に飛散した組織片を外筒チューブ20内に吸引する際の入り口となり得る。すなわち、螺旋状凸部11が回転している際、開口22に加えて、開口26fからも組織片を外筒チューブ20内に吸引することが可能となる。したがって、開口26fの開口面積を比較的大きくした場合には、血管内に飛散した組織片の回収効率を向上することができる。
【0062】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
[変形例1]
上記第1~7実施形態では、病変回収デバイス1,1A~1Fの構成を例示した。しかし、基線材の構成は種々の変更が可能である。例えば、基線材は、横断面が矩形形状に限らず、横断面が多角形形状であってもよい。多角形状とは、三角形、五角形、六角形等のことである。上述したように、基線材の横断面において角張っている部分は、基線材が捻られた際に巻回線材の表面において凸形状の部分となる部分であり、基線材が捻られる際には、捻り方向に向かって延ばされることにより尖ることから、組織片の細断に寄与する。
【0064】
例えば、シャフトは、1本の素線が単条に巻回された単条コイルであってもよい。また、コイルではなく中空の棒状部材であってもよい。また、シャフトは、中空でなく中実の部材であってもよいし、ハイポチューブ等の金属管であってもよい。なお、シャフトに中実の部材やハイポチューブを用いた場合は、剛性が高い傾向にあるため、レーザーでスリットを入れるなど脆弱部を設けて剛性を調整することが好ましい。また、例えば、外筒チューブは、単線の密巻きコイルや、複数の素線を螺旋状に巻回した密巻きコイルで形成された筒状部材であってもよいし、ハイポチューブ等の金属管であってもよい。また、モータは省略してもよく、代わりにシャフトを手動で回転させることが可能なハンドル部を備えていてもよい。
【0065】
例えば、螺旋状凸部の巻回ピッチは、図示した病変回収デバイス1,1A~1Fのように一定でなくてもよく、シャフトの先端側と基端側とで異なっていてもよい。一例として、シャフトの先端側では巻回ピッチを大きくして組織片の吸引効率を上げ、シャフトの基端側では巻回ピッチを小さくして螺旋状凸部の表面においてエッジとなる凸形状の部分と組織片との接触機会を増やすよう設計してもよい。また、それとは反対に、シャフトの先端側では巻回ピッチを小さくし、シャフトの基端側では巻回ピッチを大きくしてもよい。
【0066】
例えば、螺旋状凸部は、基線材をZ巻きの方向に捻った構成である巻回線材を、シャフトに対してS巻きの方向に巻回されることによって形成されてもよい。このような形態であっても、基端側への組織片の運搬を促進することができる。
【0067】
例えば、螺旋状凸部は、基線材をS巻きの方向に捻った構成である巻回線材を、シャフトに対してS巻きの方向に巻回されることによって形成されてもよい。このような形態であっても、組織片の細断を促進することができる。
【0068】
例えば、螺旋状凸部において、基線材の捻り方向と、巻回線材がシャフトに巻回される巻回方向と、の方向関係は、図示した病変回収デバイス1,1A~1Fのように一定でなくてもよく、シャフトの先端側と基端側とで異なっていてもよい。ここでいう方向関係とは、捻り方向と巻回方向とが異なる、もしくは、捻り方向と巻回方向とが同じである、という関係のことである。一例として、病変回収デバイスが対象とする病変組織の硬さが硬いほど、螺旋状凸部の全長のうち、捻り方向と巻回方向とが同じである方向関係の部分の割合を増やしてもよい。このような部分では、組織片の細断が促進されるからである。また、多量の組織片の飛散が想定される病変組織を対象とする病変回収デバイスでは、螺旋状凸部の全長のうち、捻り方向と巻回方向とが異なる方向関係の部分の割合を増やしてもよい。このような部分では、基端側への組織片の運搬が促進されるからである。
【0069】
例えば、巻回線材の横断面における表面の凹凸形状は、基線材が螺旋状に捻られることによって形成されるのではなく、例えば、線材の周面に凹凸形状を形成するための金型を用いたプレス加工により形成されてもよい。
【0070】
[変形例2]
上記第1~7実施形態の病変回収デバイス1,1A~1Fの構成、及び上記変形例1の各構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第3実施形態の病変回収デバイス1Bにおいて、第5実施形態で説明した基端側接合部33dを採用してパッキン43を省略してもよく、第6実施形態で説明した拡径部24eを採用してもよく、第7実施形態で説明した複数の開口26fを採用してもよい。また、第4実施形態の病変回収デバイス1Cにおいて、第5実施形態で説明した基端側接合部33dを採用してパッキン43を省略してもよい。また、第5実施形態の病変回収デバイス1Dにおいて、第6実施形態で説明した拡径部24eを採用してもよく、第7実施形態で説明した複数の開口26fを採用してもよい。また、第6実施形態の病変回収デバイス1Eにおいて、第7実施形態で説明した複数の開口26fを採用してもよい。また、第7実施形態の病変回収デバイス1Fにおいて、第3実施形態で説明したカッターアセンブリ35bを採用してもよく、第6実施形態で説明した拡径部24eを採用してもよい。
【0071】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0072】
1,1A~1F…病変回収デバイス
10…シャフト
10L…デバイスルーメン
11pa,11pb…基線材
11,11a…螺旋状凸部
11W,11Wa…巻回線材
12…太径部
20…外筒チューブ
22…開口
22c…開口
24c…開口
24e…拡径部
26f…開口
31,31c…先端側接合部
33,33d,33f…基端側接合部
35…チップ
35b…カッターアセンブリ
36b…周面開口
37b…基端側開口
38b…カッター
40…モータハウジング
41…突出部
42…排出口
43…パッキン
44…先端側縮径部
45…基端側縮径部
46…モータ
50…吸引部