(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034611
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】画像読取システム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/393 20060101AFI20230306BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H04N1/393
H04N1/04 106Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140933
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 優
【テーマコード(参考)】
5C072
5C076
【Fターム(参考)】
5C072AA01
5C072BA02
5C072DA25
5C072EA07
5C072NA01
5C072RA01
5C072RA07
5C076BA01
5C076BA06
5C076BB40
5C076CB05
(57)【要約】
【課題】原稿を搬送して固定の読み取りセンサーで読み取るタイプの画像読取装置では、搬送中に原稿が止まってしまい、読み取り画像が伸びてしまうことがあった。この時画像の伸びは一定にならず、原稿の伸びを正確に測り補正する必要があった。
【解決方法】原稿を挟んで搬送されるキャリアシートの表面を介して原稿の画像を読み取る画像読取装置を有する画像読取システムにおいて、キャリアシートの裏面に設けられ、キャリアシートが搬送される搬送方向に対し連続的に同じ傾きで搬送方向と直交する幅方向の座標位置が変化する直線状のマークMを読み取り、マークMの読み取り結果に基づいて前記原稿の画像に対し拡縮処理を行うことを特徴とする画像読取システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を挟んで搬送されるキャリアシートの表面を介して原稿の画像を読み取る画像読取装置を有する画像読取システムにおいて、
前記キャリアシートの裏面に設けられ、前記キャリアシートが搬送される搬送方向に対し連続的に同じ傾きで前記搬送方向と直交する幅方向の座標位置が変化する直線状のマークを読み取り、前記マークの読み取り結果に基づいて前記原稿の画像に対し拡縮処理を行うことを特徴とする画像読取システム。
【請求項2】
前記マークの読み取り結果に応じて前記裏面の画像の伸縮を検出し、前記伸縮が検出された前記裏面の画像における前記搬送方向の位置に対応する前記表面の画像に対して前記拡縮処理を行うことを特徴とする請求項1記載の画像読取システム。
【請求項3】
前記マークは、前記キャリアシートの裏面における対角線となるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置を有する画像読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置では、読み取りセンサーを固定して読み取り対象である原稿を搬送しながら読み取る形態のものがある。このような形態では、原稿を搬送する速度と読み取りセンサーの読み取りタイミングが一致していない場合、読み取った結果がおかしくなってしまう。
【0003】
例えば、パスポートのように通常の原稿と比較して非常に厚い原稿を読み取るときは、搬送する際に搬送路などに引っかかってしまい、場合によっては搬送が止まってしまう。もしくは、原稿を搬送する速度が予め設定された速度よりも遅くなってしまった場合は、読み取った画像は伸びることになる。
図9はパスポートを読み取った時の画像の例で、
図9におけるCが正常に読み取れたときの画像、Dが搬送中に原稿が引っ掛かるか止まってしまうかしたことにより伸びた画像の例である。このように画像が伸びてしまうと、見た目にも記載内容の認識にも悪影響を与えてしまう。
【0004】
読み取った画像が伸びてしまうことに対する対策として、キャリアシートに一定の間隔でマークを設けてそれを読み取り、その結果から原稿を搬送させる速度のバラつきを検出し、画像を適正な倍率に補正するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように一定の間隔でマークを設ける場合には、搬送速度をマークの長さで検出して補正処理をしている。これでは1つのマーク部分の間での平均速度しか計測できず、1つのマーク部分で速度が一定でなければ正しく補正することができない。このままでは原稿領域全体の倍率を大まかに補正できるが、実際に搬送する速度が変化した場所では画像の伸びは正しく補正できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記を鑑み、本発明に係る画像読取システムは、
原稿を挟んで搬送されるキャリアシートの表面を介して原稿の画像を読み取る画像読取装置を有する画像読取システムにおいて、
前記キャリアシートの裏面に設けられ、前記キャリアシートが搬送される搬送方向に対し連続的に同じ傾きで前記搬送方向と直交する幅方向の座標位置が変化する直線状のマークを読み取り、前記マークの読み取り結果に基づいて前記原稿の画像に対し拡縮処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原稿の画像を適正な倍率に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るキャリアシートに原稿を挟んだ状態の図。
【
図4】本発明に係る画像処理部における原稿領域検出処理のフローチャート。
【
図5】本発明に係る画像処理部におけるキャリアシートの対角線検出処理のフローチャート。
【
図6】本発明に係る画像処理部における画像補正処理のフローチャート。
【
図9】原稿搬送時に止まることなどにより伸びた画像の例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態に係る画像読取装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像読取装置で使用するキャリアシートに、原稿を挟んだ状態の一例を示す図である。
【0011】
当該キャリアシートは、二つ折り形式であり、
図1におけるAは表側の透明な面を正面から見た状態を示しており、キャリアシートに挟んだ原稿が透けている。Bは裏側の不透明な面であるため、挟んだ原稿は透けていない。以降の説明においてはA面を表面とし、B面を裏面とする。
【0012】
なお、裏面には1本の対角線が引かれている。画像読み取りの際には、原稿を当該キャリアシートに挟んだ状態で表面を下に向けて搬送路にセットする。
【0013】
次に、
図2は、本実施形態に係る画像読取装置の概略断面図である。また、
図3は本実施形態に係る画像読取装置の制御ブロック図である。なお、本実施形態においては、以後説明する画像処理について、後述の画像処理部103にて実行する態様について説明しているが、これに限られず、画像読取装置100に接続され、後述の画像出力部104から出力される画像を受信する情報処理装置によって画像処理が実行される画像読取システムとして構成しても良い。その場合、画像読み取りの開始指示なども情報処理装置から送信されるように構成しても良い。
【0014】
図2に示すように、本実施形態の画像読取装置100では、原稿(シート)を積載する給紙トレイ2が装置本体1Aに対してヒンジ部2aを介して開閉可能に支持されている。すなわち、給紙トレイ2は、閉じた状態で原稿の給紙口13を覆い(
図2の破線)、開放された状態(
図2の実線)で積載面2bに原稿が積載されるように構成される。
【0015】
また、給紙トレイ2に積載される複数枚の原稿は、フィードローラー4と分離パッド5とによって最も下の原稿から1枚ずつ搬送路に分離給送される。搬送路に給送される原稿は、搬送ローラー対6により下流側に搬送される。さらに、原稿は、画像読取部(画像読取手段)8、9により表裏両面の画像が読み取られ、その後、搬送ローラー対7により装置外に排紙される。
【0016】
このような構成の画像読取装置100は、コンピュータ等の情報処理装置に接続されて、情報処理装置からの操作により読取動作が制御される。画像読取装置100と情報処理装置との接続は、例えば、USBケーブル、SCSIケーブル、LANケーブルまたは無線通信などにより接続可能である。
【0017】
また、本実施形態の画像読取装置が接続される情報処理装置においては、画像読取装置100を制御可能とするソフトウエア(制御プログラム)が実行されることにより、画像読取装置100の制御が可能となる。
【0018】
なお、実際には、ユーザーは、上記ソフトウエアの実行により表示される画像読取装置100の制御画面等から、例えば、解像度、色数、階調数、読み取り面、読み取り領域等の画像読取条件が設定可能となるようにしても良い。この場合、画像読取装置100は、ユーザー指定の設定条件にしたがって、読取動作を実行するようになっている。これらの設定のうち、一部のみが設定可能に構成されていても良い。また、この制御プログラムは、情報処理装置のOS(Operating System)が有する汎用のスキャンプログラムであっても良い。
【0019】
また、画像読取装置100は、画像読取部8、9で読み取った画像データを送信するようになっている。例えば、
図3に示すように、本実施形態の画像読取装置は、画像読取部8、9で読み取られた画像データを画像出力部104により外部に送信するよう、CPUからなる制御部102が制御するようになっている。
【0020】
ここで、画像読取部8、9は、図示しないが、搬送される原稿に複数色の光を照射するLED等からなる光照射部と、原稿からの反射光を受光する受光部とからなる。本実施形態では、画像読取部8、9としては、原稿に照射する複数色の光として、R(赤)、G(緑)、B(青)の光を照射し、原稿からの反射光を1ラインで読み取るものとした。なお、このような光照射部により光を照射するタイミングは、制御部102により制御される。この画像読取部8と9は、原稿の表裏をそれぞれ読取可能なように搬送路を挟んで配置され、その読取位置は原稿の搬送方向で互いにずれた位置になるように取り付けられている。
図2には、その一例として、画像読取部8と9との読取位置が
図2の断面において点対称になるように配置されており、読取位置が上流と下流にずれている。
【0021】
本実施形態では基本的に、原稿を搬送する際には表面を下に向けて搬送して画像を読み込むことを想定しており、画像読取部8が表面を読み取り、画像読取部9が裏面を読み取るものとして説明する。原稿を挟んだキャリアシートでも同様である。
【0022】
また、制御部102は、
図2に示すように、PC等の情報処理装置から原稿の読取命令を受け取ると、フィードローラー4と分離パッド5とによって給紙トレイ2の原稿を1枚ずつ搬送路に分離給送させる。続いて、原稿は、搬送ローラー対6により画像読取部8、9に向かって搬送される。なお、図示しないが、搬送ローラー対6と画像読取部8、9との間には、原稿の到達及び通過を検知するレジストセンサーが設けられている。そして、制御部は、このレジストセンサーにより原稿の到達を検知すると、画像読取部8、9の上流側の位置に設定された画像の読取開始位置Pに原稿が到達する時から読取を開始するよう画像読取部8、9を制御する。
【0023】
具体的には、原稿が画像読取開始位置に到達したときに、光照射部よりR(赤)の光を照射させ、原稿で反射する光を受光部で受光する。続けて、光照射部によりG(緑)の光を照射させ、原稿で反射する光を受光部で受光する。さらに続けて、光照射部によりB(青)の光を照射させ、受光部で受光する。この3つの受光結果を合成することで1ラインの画像を読み取ることができる。制御部102は、これら各RGBの1ライン分の画像データを画像処理部103に転送する(
図3参照)。この間、常に搬送ローラー対6及び7を回転させて原稿を搬送し、原稿の後端が通過するまで画像読取部8、9で画像の読取を継続する。原稿の後端の通過は、上述したレジストセンサーで原稿の後端を検知してから所定の時間経過することや、画像読取部8、9の下流側に設けられた他の原稿検知センサーなどで原稿を検知することなどで検出すれば良い。画像読取装置100は、上述した動作を繰り返し行うことで、原稿をカラーで読み取り、画像データを出力する。
【0024】
次に、原稿領域を検知する手段について、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0025】
画像処理部103に入力された表面画像(
図1のA)全体のラインデータに対して、ラインデータを左側から走査することで原稿領域の左端を、ラインデータを右側から走査することで原稿領域の右端を検出する。
【0026】
まず、原稿領域の左端を検出する処理を行う。ここでは、原稿読取時の背景板が黒色もしくはそれに近い明度を示すものを用いている場合に、原稿領域の画素の明度が高くなることを用いて検出処理を行う。なお、表面から読み取ったキャリアシートの部分も明度が高いものを使用している状況について説明する。表面の画像データにおけるラインデータのx(画像データの左端からの画素数)番目の画素の明度をB(x)とし、あらかじめ決められている閾値をTh1とする。このとき、次の式1を満たすかどうかを判定する(ステップS201)。
【0027】
B(x) < Th1 ・・・(式1)
【0028】
ステップS201で式1が成り立った場合は、注目している画素を原稿領域外と判定する(ステップS203)。次に、注目している画素がラインデータの終端画素すなわち右端かを判定する(ステップS204)。ステップS204での判定でラインデータの終端と判断した場合には、処理を終了する。ステップS204での判定でラインデータの終端画素でなければ右隣の画素に注目画素をずらし(xをインクリメント)て(ステップS205)、判定を継続する。
【0029】
以上の判定処理をラインデータの右端に到達するか、ステップS201で式1が成り立たなくなる、すなわち原稿領域内であると判定されるまで継続する。
【0030】
ステップS201で式1が成り立たなかった場合は、注目している画素は原稿領域内の画素であると判定し現在の座標を原稿領域の左端aとして記憶して(ステップS202)、終了する。
【0031】
注目画素が、ステップS201で原稿領域内であると判定されるか、ステップS204で終端画素と判定された場合は、次のラインに移行してこのフローチャートの処理を再開する。
【0032】
原稿領域の左端aを検出できたら、次は原稿領域の右端を検出するために同様の処理を右側から行う。前述の左側から走査したときの処理と同様に、まず式1を満たすか確認する(ステップS201)。以後の処理は、上述した説明における「左」と「右」を入れ替えて読んだ処理と同等の処理を実行し、検出した画像データの右端からの画素数を端部b’として記憶すれば良い。ただし、ステップS204の判定においては、終端画素かどうかではなく、左端の検出処理で記憶した端部aかどうかを判定する(S204)。もし注目画素が左端aになるまで走査したのならば、このラインでは原稿領域ではないと判定し、端部aを削除した上で左端の検出処理を次のラインから再度実行する。
【0033】
そして左端a、端部b’を検知できた時のライン数を原稿の上端tとする。また、画像の左右方向の全体の画素数Tに対し、右端b=T-b’とすることで、座標としての原稿の右端bを算出する。
【0034】
以上を画像の先頭から繰り返すことで、画像内における原稿領域の左端a、右端b、そして原稿の上端tを検知することができる。なお、本実施形態においては、後述する処理において原稿の下端を用いずとも処理可能なため、下端の検出を行っていないが、下端t’の検出を行った上で、それを後述の処理に用いても良い。
【0035】
次に、裏面画像からキャリアシートに書かれた対角線を検出する方法について、
図5を用いて説明する。
【0036】
表面画像に対して検出した原稿の上端tライン目を基準とし、そこからyライン目のラインデータに対して、裏面画像(
図1のB)のラインデータにおいて注目画素を原稿領域の左端aから右へ走査することで対角線を検出する。yの初期値は0とする。なお、実際には表面と裏面とでは幅方向における原稿の搬送位置の対称性により左端aと右端bの座標は主走査方向の中央を挟んで対称な位置となるはずだが、本実施形態の説明においては、簡略化のために、表面と裏面とで共通の記号を用いて説明する。
【0037】
まず、注目画素が対角線かを検出する処理を行う。ここでは、キャリアシートの裏面のメインの色が白色あるいはそれに近い色とし、対角線が黒色あるいはそれに近い色で描かれた場合について説明し、対角線を検出するためにあらかじめ決められている閾値をTh2とする。このとき、次の式2を満たすかどうかを判定する(ステップS301)。なお、xは注目画素の左端aからの画素数を意味している。
【0038】
B(x) > Th2 ・・・(式2)
【0039】
ステップS301で、式2が成り立つかどうかを判定する。式2が成り立った場合、注目画素は対角線ではないと判定し(ステップS303)、ステップS304に進む。
【0040】
ステップS304では、注目画素がここでの処理の終端である右端b以上かどうかを判定する。注目画素が原稿領域の右端b以上ではないと判定された場合は、注目画素の更に右隣の画素を参照(xをインクリメント)して判定を継続する(ステップS305)。ステップS304で注目画素が右端b以上であると判定された場合は、そのラインにおいて対角線が見つからないという異常であるので、処理を終了して異常を報知して以後の処理が実行されずに停止する。
【0041】
ステップS301で式2が成り立たなかった場合、注目画素が対角線の左端の画素であると判定し、現在の座標を対角線Lyの座標として記憶して(ステップS302)、終了する。
【0042】
以上の判定処理を画像の下端に到達するか、上端tと同様に原稿画像の下端t’を算出していれば、そのラインまでの走査が終了したと判定されるまで繰り返す。
【0043】
次に対角線の座標データから画像の伸びを補正する処理について、
図6を用いて説明する。まずキャリアシートの対角線の角度からあらかじめ決められたライン数を示す値Δにおいて、基準変化量σを以下のように求める(S401)。なお、この基準変化量σは、Δライン進んだ時に対角線が主走査方向に何画素変化するかを示す画素数を意味しており、整数である。また、上述した処理の説明においては、対角線が複数画素分の幅を有するものを前提として左端の画素を検出し、それらを結んだものを対角線として扱って処理しており、以下の説明においては簡略化のために実際の対角線の左端を結んだものを対角線と称することがある。
【0044】
σ = Lt+Δ - Lt ・・・(式3)
【0045】
更に各yに対して変化量σyを以下のように求める(S402) 。
【0046】
σy = Ly+Δ - Ly ・・・(式4)
【0047】
次にσyをσと比較し、σyの方が小さいかどうかを確認する(S403)。σyの方が小さい場合は画像が伸びていると判断して、伸び量を補正する。まず、次の式5を満たすΔ’を求める(S404)。
【0048】
σ = Ly+Δ’ - Ly ・・・(式5)
【0049】
そして、yライン目からのΔ’ラインのラインデータがΔラインになるように裏面画像および表面画像の同じ座標に対して縮小処理を行う(S405)。縮小処理の例として、間隔が均等になるように間引き処理を施してやればよい。
【0050】
S403でσyの方が小さくないと判断された場合は、画像の伸びは無いと判断し、S406、S407に進み、次のラインを判定する。S407で終端ラインである場合には処理を終了する。
【0051】
以上の処理を画像または原稿領域の下端まで行うことで、画像の伸びを補正することができる。
【0052】
ここで、
図7、
図8には、以上説明した画像の伸びを補正する処理をする際の裏面画像の例を示している。なお、以下の説明においては裏面画像に対してのみ縮小処理を施すなどの説明をしているが、本発明においては、裏面画像の位置に対応する表面画像の位置に対して同様の処理を施すものであるが、説明の簡略化のためにその説明を省略しているに過ぎない。
【0053】
図7、
図8において、それぞれの図の縦軸にライン数を、横軸に主走査方向の画素数を示している。
図7の左側には、基準変化量σの例を示す図を示しており、この例だと4ライン目から9ライン目までの5ラインで5画素ずれるものを基準変化量σとしている。
図7の右側、
図8には、処理の順番に沿って図を示している。
【0054】
まず、
図7の右側上段の図は、処理の途中の状態を示しており、
図6のS402のyを3として処理している状態を示している。このとき式4は、σ
y = L
y+Δ - L
y = 5となり、σ
y = σであるため、yを1つインクリメントする。
【0055】
図7の右側中段の図に示すように、y=4としたとき、式4は、σ
y = L
y+Δ - L
y = 4となっている。このときは、σ
y < σであるので、
図6のS403でYesとなり、S404に進む。
【0056】
図7の右側下段の図は、式5を満たすΔ’を求めるためにΔを1つ増やした状態を示しており、この状態での式4は、σ
y = L
y+Δ - L
y = 4となっていることから、さらにΔを1つ増やしていく。
【0057】
図8上段の図は、デルタをさらに1つ増やした状態を示しており、このとき式4は、σ
y = L
y+Δ - L
y = 5となっており、σ
y = σとなっている。
図6のS405に進み、縮小処理が実行される。
【0058】
図8の中段の図に示す例では、
図6のS403の処理でデルタを増やしていったときにσ
yの値が変わらなかった9ライン目と10ライン目をそのまま間引くことにより縮小処理を実行している。これは一例であり、σ
yが変わらないライン(8ライン目から10ライン目)の画素値を平均するなどの処理により縮小処理しても良い。
【0059】
縮小処理の結果、4ライン目までのσ
yがσと一致している状態であり、
図6のS406に進んで注目ラインをずらし、5ライン目からS402の処理を繰り返す。
【0060】
以上のように処理を繰り返すことによって、対角線を含む裏面画像を用いて原稿画像の伸びを補正することができる。
【0061】
なお、以上説明した変化量σyの比較処理において、各yについて比較を行うように説明したが、2ライン以上の所定間隔で比較処理を実行しても良い。その場合、縮小処理する際にそのまま所定間隔単位で縮小処理をしても良いし、ステップS404、ステップS405の処理のみ、上述した通り1ラインごとに処理をしても良い。これによれば、比較処理自体は所定間隔ごとに実行して処理時間を速めると共に、縮小処理はライン単位で適用することができる。
【0062】
また、上述した縮小処理において、1ライン単位での間引き処理では変化量σyをσに一致させられないときに、複数ライン単位まとめて縮小処理を施すように構成しても良い。
【0063】
また、上述した画像の伸びを補正する処理において、変化量σを何画素変化したかを示す整数として扱う例について説明したが、これに限られない。例えば、Δライン進んだ時に何画素変化したかを、傾きσyとして小数第一位程度までの画素数として扱っても良く、その場合には、各ライン間の傾きを算出して、傾きがσに一致しないラインをすべて算出し、それらのσに対する大小関係を用いて、各ライン間での傾きσyがσに一致もしくはできるだけ近づくように拡縮処理を行っても良い。
【0064】
また、上述した処理においては、キャリアシートを含めた画像全体に対して処理を行ったが、表面画像から原稿画像領域を判定し、その原稿画像領域あるいはその周囲にマージン領域を設けた所定の範囲のみに対して一連の処理を適用しても構わない。その場合、裏面画像においてマークMが見つからない場合があり得るが、その場合には拡縮処理を適用しないなどの判定を追加しても良い。
【0065】
本実施例では、キャリアシートの裏面に設けられた対角線が1本のみである例を用いて説明したが、2本以上設けたものに対し同様に処理しても良い。
【0066】
また、対角線でなくても角度により伸びが判別できる斜線でも良い。例えば、キャリアシートの裏面に直交でなくかつ平行でない2本の斜線を引いても良い。
【0067】
いずれにしても、裏面画像に含まれる、副走査方向の位置に対し連続的に同じ傾きで主走査方向の座標位置が変化する直線状のマークMを用いて原稿画像の伸びを補正するものであれば良い。なお、原稿が斜行するなどして斜めに読み取られてしまうと、斜線の角度を用いて原稿の搬送速度(画像の伸び)を検出することができなくなる恐れがあるが、2本の斜線を用いることでいずれか1本は必ず角度を用いて原稿の搬送速度を検出し、また補正することができる。なお、副走査方向の位置に対し連続的に同じ傾きで主走査方向の座標位置が変化する直線として、原稿が斜行した場合にその原稿自体の枠に対応した影や、読取背景との明度差で枠の検出が可能である場合には、その枠線を用いても良い。
【0068】
本実施例では、画像の縮小処理を行うときに間引き処理を行ったが、他の縮小処理を行っても良い。例えば、各ラインデータを平均化して縮小処理を行っても良い。
【0069】
本実施例では、裏面画像の伸びを検出したときに表面の同じ座標に対して縮小処理を行ったが、画像読取装置の表面と裏面との読み取り位置の位置ずれ分だけズレた場所に対して縮小処理を行うようにしても良い。このようにすることで、表面の読み取りセンサーと裏面の読み取りセンサーの位置がズレていても、表面画像の伸びの位置を正確に補正することができる。また、補正処理は表面にのみ行い、裏面画像は伸びの検出を行った後で破棄しても良い。
【0070】
本実施例では、画像の伸びを検出したことに対する縮小処理のみを行っていたが、逆に画像の縮みを検出したことに対し拡大処理を行っても良い。拡大処理を行う場合は、S403でδyとδを比較してδyが大きかった場合においても、δyとδとが同じになるようなΔ’を求める。その後、Δ’ライン分のデータからΔライン分のデータを、補間処理を用いて出力すればよい。このようにすることで、例えば分離部などにより搬送抵抗がかかっていたところから原稿後端が抜けることなどによって搬送速度が当初より速くなることで発生する画像の縮みにも対応することができる。
【0071】
以上説明したように、本発明は、キャリアシートの裏面に設けられ、副走査方向に対し連続的に同じ傾きで主走査方向の座標位置が変化する直線状のマークMを読み取り、そのマークMを読み取った結果に基づいて、原稿画像の伸縮を検出し、原稿の画像に対する拡縮処理(拡大または縮小処理)を行い、画像を適正な倍率に補正することができる。
【0072】
なお、上記実施例においては、キャリアシートの裏面に設けられるマークMは、副走査方向(搬送方向)に対し、主走査方向(幅方向)の位置が同じ傾きで線形に変化するものについて説明したが、これに限られず、予めマークMの形状を画像処理部103に入力されていれば、対数変化、指数変化、あるいはそれ以外にも単調増加、単調減少する曲線であっても構わない。さらに、予め画像処理部103に対してマークMの形状(種類)が指定されるように構成されていれば、マークMは必ずしも線状でなくても良く、何らかの図柄などであっても良い。画像処理部103は、予め入力されたマークMの形状との間でパターンマッチングすることなどで、一致しない部分に画像の伸びや縮みがあることを検出することができる。なお、マークMの形状(種類)については、キャリアシート自体に設けられた他のマークなどを読み取った結果に基づいて判定するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0073】
8、9 画像読取部
100 画像読取装置
102 制御部
103 画像処理部
104 画像出力部
M マーク