IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝キヤリア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-圧縮機、および空気調和機 図1
  • 特開-圧縮機、および空気調和機 図2
  • 特開-圧縮機、および空気調和機 図3
  • 特開-圧縮機、および空気調和機 図4
  • 特開-圧縮機、および空気調和機 図5
  • 特開-圧縮機、および空気調和機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034612
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】圧縮機、および空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/06 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
F04C29/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140934
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】古川 亮
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA05
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129AB11
3H129BB22
3H129BB23
3H129BB25
3H129BB31
3H129BB32
3H129CC04
3H129CC15
3H129CC16
3H129CC17
3H129CC28
3H129CC30
(57)【要約】
【課題】回転軸が曲げ振動することで生じる騒音を低減可能な圧縮機および該圧縮機を備えた空気調和機を提供する。
【解決手段】圧縮機は、シリンダと、回転軸と、軸受と、吐出弁機構と、マフラとを備える。吐出弁機構は、シリンダで圧縮された冷媒が所定の吐出圧力に達した際に変形して開き、所定方向に長手の吐出弁と、吐出弁が開いた際にそれ以上の変形を抑制する弁押さえとを有し、軸受のフランジ部に配置される。マフラは、フランジ部と軸受のボス部との間を取り囲むように軸受を覆い、シリンダで圧縮された冷媒が吐出されるマフラ室を形成する。マフラは、回転軸の軸心方向における一端側の面部である端面部と、回転軸の軸心方向における他端側の面部である鍔部と、端面部と鍔部との間を回転軸の周方向の全周に亘って筒状に繋ぐ側面部とにより、マフラ室の外郭を規定し、端面部および側面部をマフラ室の内部にそれぞれ凹ませた凹部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するシリンダと、
前記シリンダに配置される偏心部を有する回転軸と、
前記シリンダにおける前記回転軸の軸心方向の一面を規定するフランジ部と、前記フランジ部と連続して前記回転軸と同心の筒状に延びて前記回転軸を回転自在に支持するボス部とを有する軸受と、
前記シリンダで圧縮された前記冷媒が所定の吐出圧力に達した際に変形して開き、所定方向に長手の吐出弁と、前記吐出弁が開いた際にそれ以上の変形を抑制する弁押さえとを有し、前記フランジ部に配置された吐出弁機構と、
前記フランジ部と前記ボス部との間を取り囲むように前記軸受を覆い、前記シリンダで圧縮された前記冷媒が吐出されるマフラ室を前記フランジ部と前記ボス部との間に形成するマフラと、を備え、
前記マフラは、前記回転軸の軸心方向における一端側の面部である端面部と、前記回転軸の軸心方向における他端側の面部である鍔部と、前記端面部と前記鍔部との間を前記回転軸の周方向の全周に亘って筒状に繋ぐ側面部とにより、前記マフラ室の外郭を規定し、前記端面部および前記側面部を前記マフラ室の内部にそれぞれ凹ませた凹部を有する
圧縮機。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記回転軸の軸心方向における一端側の端面を窪ませ、前記吐出弁と前記弁押さえとが組み付けられる掘り込み部を有し、
前記凹部は、前記回転軸の軸心方向から前記フランジ部に前記凹部を投影した場合、前記吐出弁の長手方向と交差して前記掘り込み部と重なるように配置されている
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記凹部は、第1の面部、第2の面部、第3の面部、および第4の面部を含んで構成され、
前記第1の面部および前記第2の面部は、前記回転軸の軸心を含んで前記吐出弁の長手方向と交差する所定の仮想平面と平行をなし、
前記第3の面部および前記第4の面部は、相互に連続し、前記第3の面部は、前記第1の面部と前記第2の面部との間を前記回転軸の軸心方向の一方側で繋ぎ、前記第4の面部は、前記第1の面部と前記第2の面部との間を前記回転軸の軸心方向の他方側で繋いでいる
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記第3の面部は、前記ボス部に対して前記マフラを固定する第1の固定具が挿通される貫通孔を有し、
前記第1の面部と前記第2の面部とは、前記第1の固定具と干渉しない離間距離で対向する
請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記鍔部は、前記フランジ部を介して前記シリンダに前記鍔部を固定する第2の固定具が挿通される複数の貫通孔を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載された圧縮機と、
前記圧縮機に接続された凝縮器と、
前記凝縮器に接続された膨張装置と、
前記膨張装置に接続された蒸発器と、を備える
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧縮機、および該圧縮機を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機などの冷凍サイクル装置には、冷媒を圧縮する圧縮機が搭載されている。圧縮機は、主たる要素として、例えば回転軸を回転させる電動機部と、回転軸を介して電動機部と連結された圧縮機構部と、電動機部および圧縮機構部を収容する密閉容器とを備えている。電動機部は、例えばいわゆるインナーロータ型のモータを含み、回転軸に固着された回転子、および密閉容器の内周部に固定された固定子を備えている。回転軸は、クランク部(偏心部)を有している。圧縮機構部は、例えばシリンダ室を形成するシリンダと、回転軸の偏心部に嵌着されてシリンダ室内で偏心回転するローラとを備えている。シリンダ室内は、冷媒の吸込室と圧縮室とにベーンで区画されている。回転軸は、軸受で回転自在に支持されている。軸受は、シリンダ室における回転軸の軸心方向の一面を規定するフランジ部と、フランジ部から筒状に延出するボス部を有している。また、軸受には、圧縮機構部のシリンダで圧縮されて密閉容器内に吐出される冷媒に起因する脈動や騒音を抑制するマフラが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3-30629号公報
【特許文献2】実開平2-69091号公報
【特許文献3】特開2010-116787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フランジ部には、シリンダで圧縮された冷媒を密閉容器内へ吐出する吐出口と、該吐出口の開閉を制御する吐出弁機構が設けられている。このため、フランジ部は、吐出弁機構が組み付けられる凹部(掘り込み部)を吐出口の近傍に有している。掘り込み部は、軸受における回転軸の軸心方向の一面、例えばフランジ部の上面を所定の深さで掘り下げて形成されている。このため、掘り込み部は、フランジ部の他の部位と比べて薄肉となり、軸受において相対的に剛性が低下しやすい。したがって、回転軸が回転した際、例えばフランジ部に対してボス部を傾かせるように、掘り込み部が弾性変形するおそれがある。かかる掘り込み部の変形の程度によっては、軸受による回転軸の支持剛性が低下し、回転軸が曲げ振動して騒音を増大させるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態に係る圧縮機は、シリンダと、回転軸と、軸受と、吐出弁機構と、マフラとを備える。前記シリンダは、冷媒を圧縮する。前記回転軸は、前記シリンダに配置される偏心部を有する。前記軸受は、前記シリンダにおける前記回転軸の軸心方向の一面を規定するフランジ部と、前記フランジ部と連続して前記回転軸と同心の筒状に延びて前記回転軸を回転自在に支持するボス部とを有する。前記吐出弁機構は、前記シリンダで圧縮された前記冷媒が所定の吐出圧力に達した際に変形して開き、所定方向に長手の吐出弁と、前記吐出弁が開いた際にそれ以上の変形を抑制する弁押さえとを有し、前記フランジ部に配置される。前記マフラは、前記フランジ部と前記ボス部との間を取り囲むように前記軸受を覆い、前記シリンダで圧縮された前記冷媒が吐出されるマフラ室を前記フランジ部と前記ボス部との間に形成する。前記マフラは、前記回転軸の軸心方向における一端側の面部である端面部と、前記回転軸の軸心方向における他端側の面部である鍔部と、前記端面部と前記鍔部との間を前記回転軸の周方向の全周に亘って筒状に繋ぐ側面部とにより、前記マフラ室の外郭を規定し、前記端面部および前記側面部を前記マフラ室の内部にそれぞれ凹ませた凹部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す回路図である。
図2】実施形態に係る圧縮機の縦断面図である。
図3】実施形態に係る圧縮機の吐出弁機構を有する軸受(第1の吐出弁機構を有する第1の軸受)を上方から概略的に示す図である。
図4図3に示す矢印A3部分における軸受(第1の軸受)の断面を概略的に示す図である。
図5】実施形態に係る圧縮機のマフラ(第1のマフラ)が軸受(第1の軸受)に組み付けられた状態を上方から概略的に示す図である。
図6】実施形態に係る圧縮機のマフラ(第1のマフラ)を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、一実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る空気調和機1の冷凍サイクル回路図である。空気調和機1は、かかる冷凍サイクルにより空気調和を行う装置であり、冷凍サイクル装置の一例である。空気調和機1は、主たる要素として、圧縮機2、四方弁3、室外熱交換器4、室外送風機40、膨張装置5、室内熱交換器6、および室内送風機60を備えている。
【0009】
図1に示すように、圧縮機2の吐出側は、四方弁3の第1ポート3aに接続されている。四方弁3の第2ポート3bは、室外熱交換器4に接続されている。室外熱交換器4は、膨張装置5を介して室内熱交換器6に接続されている。室内熱交換器6は、四方弁3の第3ポート3cに接続されている。四方弁3の第4ポート3dは、アキュムレータ8を介して圧縮機2の吸入側に接続されている。
【0010】
冷媒は、圧縮機2の吐出側から室外熱交換器4、膨張装置5、室内熱交換器6、およびアキュムレータ8を経由し、吸込側に至る循環回路7を循環する。冷媒としては、塩素を含まない冷媒が好ましく、例えばR448A、R449A、R449B、R407G、R407H、R449C、R456A、R516A、R406B、R463A、R744、HC系冷媒などが適用可能である。
【0011】
例えば、空気調和機1が冷房モードで運転を行う場合、四方弁3は、第1ポート3aが第2ポート3bに連通し、第3ポート3cが第4ポート3dに連通するように切り替わる。冷房モードで空気調和機1の運転が開始されると、圧縮機2で圧縮された高温・高圧の気相冷媒が循環回路7に吐出される。吐出された気相冷媒は、四方弁3を経由して凝縮器(放熱器)として機能する室外熱交換器4に導かれる。
【0012】
室外熱交換器4に導かれた気相冷媒は、室外送風機40で吸い込まれた空気(外気)との熱交換により凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。高圧の液相冷媒は、膨張装置5を通過する過程で減圧されて低圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、蒸発器(吸熱器)として機能する室内熱交換器6に導かれるとともに、室内送風機60で吸い込まれた空気(内気)と室内熱交換器6を通過する過程で熱交換する。
【0013】
この結果、気液二相冷媒は、空気から熱を奪って蒸発し、低温・低圧の気相冷媒に変化する。室内熱交換器6を通過する空気は、液相冷媒の蒸発潜熱により冷やされ、室内送風機60によって空調(冷房)すべき場所に冷風として送られる。
【0014】
室内熱交換器6を通過した低温・低圧の気相冷媒は、四方弁3を経由してアキュムレータ8に導かれる。冷媒中に蒸発し切れなかった液相冷媒が混入している場合は、ここで液相冷媒と気相冷媒とに分離される。液相冷媒から分離された低温・低圧の気相冷媒は、アキュムレータ8から圧縮機2に吸い込まれるとともに、圧縮機2で再び高温・高圧の気相冷媒に圧縮されて循環回路7に吐出される。
【0015】
一方、空気調和機1が暖房モードで運転を行う場合、四方弁3は、第1ポート3aが第3ポート3cに連通し、第2ポート3bが第4ポート3dに連通するように切り替わる。暖房モードで空気調和機1の運転が開始されると、圧縮機2から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁3を経由して室内熱交換器6に導かれ、室内熱交換器6を通過する空気と熱交換される。この場合、室内熱交換器6は凝縮器として機能する。
【0016】
この結果、室内熱交換器6を通過する気相冷媒は、室内送風機60で吸い込まれた空気(内気)と熱交換することにより凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。室内熱交換器6を通過する空気は、気相冷媒との熱交換により加熱され、室内送風機60によって空調(暖房)すべき場所に温風として送られる。
【0017】
室内熱交換器6を通過した高温の液相冷媒は、膨張装置5に導かれるとともに、膨張装置5を通過する過程で減圧されて低圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、蒸発器として機能する室外熱交換器4に導かれるとともに、室外送風機40で吸い込まれた空気(外気)と熱交換することにより蒸発し、低温・低圧の気相冷媒に変化する。室外熱交換器4を通過した低温・低圧の気相冷媒は、四方弁3およびアキュムレータ8を経由して圧縮機2に吸い込まれるとともに、圧縮機2で再び高温・高圧の気相冷媒に圧縮されて循環回路7に吐出される。
【0018】
なお、本実施形態では、空気調和機1を冷房モードおよび暖房モードのいずれでも運転可能としているが、空気調和機1は、例えば冷房モードもしくは暖房モードのいずれかのみで運転可能な冷房専用機もしくは暖房専用機であってもよい。
【0019】
次に、空気調和機1に用いられる圧縮機2の具体的な構成について、図2を参照して説明する。図2は、圧縮機2の縦断面図である。図2に示すように、圧縮機2は、いわゆる縦型の回転式圧縮機(ロータリーコンプレッサ)であって、主たる要素として、密閉容器10、圧縮機構部11、および電動機部12を備えている。なお、以下の説明においては、後述する密閉容器10の中心軸線O1に沿って並んだ圧縮機構部11と電動機部12の相対的な位置関係を基準として、圧縮機構部11が位置する側を下、電動機部12が位置する側を上とする。
【0020】
密閉容器10は、円筒状の周壁10aを有するとともに、設置面に対して垂直に起立している。設置面は、例えば室外機の底板などである。密閉容器10の上端には、吐出管10bが設けられている。吐出管10bは、循環回路7を介して四方弁3の第1ポート3aに接続されている。密閉容器10の下部には、潤滑油を蓄える油溜まり部10cが設けられている。
【0021】
圧縮機構部11は、潤滑油に浸かるように密閉容器10の下部に収容されている。図2に示す例において、圧縮機構部11は、ツイン型のシリンダ構造を有し、第1のシリンダ13、第2のシリンダ14、回転軸15を主たる要素として備えている。第1のシリンダ13および第2のシリンダ14は、それぞれローラ(ローリングピストン)およびベーンを内部に有している。なお、圧縮機構部のシリンダ数は、二つに限定されず、一つもしくは三つ以上であってもよい。
【0022】
第1のシリンダ13は、密閉容器10の周壁10aの内周面に固定されている。第2のシリンダ14は、第1のシリンダ13の下面に仕切板18を介して固定されている。
【0023】
第1のシリンダ13の上方には、第1の軸受20が固定されている。第1の軸受20は、第1のシリンダ13の内径部を上方から覆うとともに、第1のシリンダ13の上方に向けて突出している。第1のシリンダ13の内径部、仕切板18および第1の軸受20で囲まれた空間は、第1のシリンダ室を構成する。仕切板18は、第1のシリンダ室の下面、第1の軸受20は、第1のシリンダ室の上面をそれぞれ規定する閉鎖部材に相当する。
【0024】
第2のシリンダ14の下方には、第2の軸受22が固定されている。第2の軸受22は、第2のシリンダ14の内径部を下方から覆うとともに、第2のシリンダ14の下方に向けて突出している。第2のシリンダ14の内径部、仕切板18および第2の軸受22で囲まれた空間は、第2のシリンダ室を構成する。仕切板18は、第2のシリンダ室の上面、第2の軸受22は、第2のシリンダ室の下面をそれぞれ規定する閉鎖部材に相当する。第1のシリンダ室および第2のシリンダ室は、密閉容器10の中心軸線O1と同心状に配置されている。
【0025】
第1のシリンダ室および第2のシリンダ室は、循環回路7の一部である吸込管(図示省略)を介してアキュムレータ8に接続されている。アキュムレータ8で液相冷媒から分離された気相冷媒は、かかる吸込管を通って第1のシリンダ室および第2のシリンダ室に導かれる。
【0026】
回転軸15は、軸心が密閉容器10の中心軸線O1と同軸状に位置し、第1のシリンダ室、第2のシリンダ室および仕切板18を貫通している。回転軸15は、第1のジャーナル部27a、第2のジャーナル部27bおよび一対のクランクピン部(偏心部)28a,28bを有している。すなわち、回転軸15は、クランクシャフトとして構成されている。第1のジャーナル部27aは、第1の軸受20によって回転自在に支持されている。第2のジャーナル部27bは、第2の軸受22によって回転自在に支持されている。
【0027】
さらに、回転軸15は、第1のジャーナル部27aから同軸状に延長された延長部27cを有している。延長部27cは、第1の軸受20を貫通して圧縮機構部11の上方に突出している。延長部27cには、後述する電動機部12の回転子33が固着されている。
【0028】
偏心部28a,28bは、第1のジャーナル部27aと第2のジャーナル部27bの間に位置している。偏心部28a,28bは、例えば180度の位相差を有するとともに、密閉容器10の中心軸線O1に対する偏心量が互いに同一とされている。一方の偏心部(以下、第1の偏心部という)28aは、第1のシリンダ室に収容されている。他方の偏心部(以下、第2の偏心部という)28bは、第2のシリンダ室に収容されている。
【0029】
ローラ16,17は、第1の偏心部28aおよび第2の偏心部28bの外周面にそれぞれ嵌着されている。ローラ16,17の内周面と偏心部28a,28bの外周面との間には、偏心部28a,28bに対するローラ16,17の回転を許容する僅かな隙間が設けられている。これにより、ローラ16,17は、回転軸15が回転した時に、シリンダ室内で偏心回転するとともに、ローラ16,17の外周面の一部がシリンダ室の内周面に油膜を介して接触する。
【0030】
第1のシリンダ13および第2のシリンダ14には、ベーン(図示省略)がそれぞれ配置されている。ベーンは、径方向の内側へ付勢手段で付勢された状態でシリンダ13,14に支持されている。各ベーンの先端部は、ローラ16,17の外周面に摺動可能に押し付けられている。これらのベーンは、ローラ16,17と協働してシリンダ13,14のシリンダ室をそれぞれ吸入室と圧縮室とに区画するとともに、各ローラ16,17の偏心回転に伴ってシリンダ室に突出したり、シリンダ室から退去したりする方向に移動(進退)するようになっている。このようにシリンダ室に対してベーンが進退することで、シリンダ室の吸入室および圧縮室の容積が変化し、上述した吸込管からシリンダ室に吸い込まれた気相冷媒が圧縮される。
【0031】
第1のシリンダ13および第2のシリンダ14の各シリンダ室で圧縮された高温・高圧の気相冷媒は、後述する吐出弁機構21,23を介して密閉容器10の内部に吐出される。吐出された気相冷媒は、密閉容器10の内部を上昇する。さらに、圧縮機構部11の動作中は、密閉容器10の油溜まり部10cに貯溜された潤滑油が攪拌される。攪拌された潤滑油は、ミスト状となるとともに、気相冷媒の流れに乗じて密閉容器10の内部を吐出管10bに向けて上昇する。密閉容器10には、内部を上昇する気相冷媒に含まれる潤滑油を分離する油分離器などが組み込まれている。
【0032】
電動機部12は、圧縮機構部11と吐出管10bとの間に位置するように密閉容器10の中心軸線O1に沿った中間部に収容されている。電動機部12は、いわゆるインナーロータ型のモータを含み、回転軸15に固着された回転子33、および密閉容器10の周壁10aの内周面に固定された固定子34を備えている。電源から電動機部12に対して電圧が印加されることで、回転子33が固定子34に対して中心軸線O1を中心に回転し、回転軸15が回転子33とともに回転する。回転軸15は、二つの軸受20,22で回転可能に支持されている。
【0033】
二つの軸受20,22のうち、一方は主軸受(以下、第1の軸受という)20であり、他方は副軸受(以下、第2の軸受という)22である。第1の軸受20および第2の軸受22は、それぞれ回転軸15を回転可能に支持する。また、第1の軸受20は第1のシリンダ13における第1のシリンダ室の上面を規定し、第2の軸受22は第2のシリンダ14における第2のシリンダ室の下面を規定する。上面は回転軸15の軸心方向(密閉容器10の中心軸線O1に沿った方向)におけるシリンダ13,14の一端側の端面であり、下面は該方向におけるシリンダ13,14の他端側の端面である。換言すれば、第1の軸受20は第1のシリンダ室を上方から閉塞する部材に相当し、第2の軸受22は第2のシリンダ室を下方から閉塞する部材に相当する。
【0034】
第1の軸受20は、第1のシリンダ13における第1のシリンダ室の上面を規定する第1のフランジ部20aと、第1のフランジ部20aと連続して筒状に上方へ延びる第1のボス部20bを有している。
【0035】
第1のフランジ部20aは、第1のボス部20bの下端に位置し、第1のボス部20bの径方向の外側に向けて延びるとともに、回転軸15の軸心と同心の円形状に全周に亘って連続している。第1のフランジ部20aには、第1のシリンダ13の圧縮室から冷媒を吐出させる吐出孔(以下、第1の吐出孔という)20c(図3参照)が形成されている。第1の吐出孔20cは、第1のフランジ部20aの一部を上下に貫通し、第1のシリンダ13の圧縮室内に連通している。第1の吐出孔20cは、所定の弁機構(以下、第1の吐出弁機構という)21によって開閉される。第1の吐出弁機構21は、第1のフランジ部20aに配置され、第1のシリンダ13の圧縮室内の圧力上昇に伴って第1の吐出孔20cを開放し、該圧縮室から高温・高圧の気相冷媒を吐出させる。
【0036】
第1のボス部20bは、第1の軸受20において回転軸15、具体的には第1のジャーナル部27aを挿通して回転可能に支持する部分である。第1のボス部20bは、回転軸15と同心状に配置されている。すなわち、第1のボス部20bは、第1のフランジ部20aに対して垂直に配置されている。第1のジャーナル部27aは、第1のボス部20bに挿通された状態で、外周面が第1のボス部20bの内周面に対して摺動する。
【0037】
第2の軸受22は、第2のシリンダ14における第2のシリンダ室の下面を規定する第2のフランジ部22aと、第2のフランジ部22aと連続して筒状に下方へ延びる第2のボス部22bを有している。
【0038】
第2のフランジ部22aは、第2のボス部22bの上端に位置し、第2のボス部22bの径方向の外側に向けて延びるとともに、回転軸15の軸心と同心の円形状に全周に亘って連続している。第2のフランジ部22aには、第2のシリンダ14の圧縮室から冷媒を吐出させる吐出孔(図示省略。以下、第2の吐出孔という)が形成されている。第2の吐出孔は、第2のフランジ部22aの一部を上下に貫通し、第2のシリンダ14の圧縮室内に連通している。第2の吐出孔は、所定の弁機構(以下、第2の吐出弁機構という)23によって開閉される。第2の吐出弁機構23は、第2のシリンダ14の圧縮室内の圧力上昇に伴って第2の吐出孔を開放し、該圧縮室から高温・高圧の気相冷媒を吐出させる。
【0039】
第2のボス部22bは、第2の軸受22において回転軸15、具体的には第2のジャーナル部27bを挿通して回転可能に支持する部分である。第2のボス部22bは、回転軸15と同心状に配置されている。すなわち、第2のボス部22bは、第2のフランジ部22aに対して垂直に配置されている。第2のジャーナル部27bは、第2のボス部22bに挿通された状態で、外周面が第2のボス部22bの内周面に対して摺動する。
【0040】
図3および図4には、第1の吐出弁機構21の構成を示す。図3は、第1の吐出弁機構21を有する第1の軸受20を上方から概略的に示す図である。図4は、図3に示す矢印A3部分における第1の軸受20を概略的に示す断面図である。第1の吐出弁機構21と第2の吐出弁機構23の構成は、互いに上下(天地)が逆に位置することに伴う相違点を除き、ほぼ同等である。したがって、第2の吐出弁機構23の構成は、図3および図4に示す構成に準ずる。このため、以下では第1の吐出弁機構21の構成例について説明する。
【0041】
図3および図4に示すように、第1の吐出弁機構21は、第1の軸受20の第1のフランジ部20aに設けられ、第1の吐出孔20cを適宜開放し、第1のシリンダ13の圧縮室で圧縮された冷媒を該圧縮室から吐出させる。第1の吐出弁機構21は、吐出弁21aと、弁押さえ21bとを備えている。吐出弁21aおよび弁押さえ21bは、所定の固定具21cで第1のフランジ部20aに固定されている。固定具21cとしては、例えばボルト、ビス、リベットなどの任意の固定具が適用される。
【0042】
第1の吐出孔20cは、第1のフランジ部20aに形成された凹部(以下、掘り込み部という)20dの底に開口している。掘り込み部20dは、第1のフランジ部20aの上面(回転軸15の軸心方向の一端側の端面)20eを所定の深さで窪ませて形成されている。掘り込み部20dの深さは、第1の吐出弁機構21(重なった吐出弁21aおよび弁押さえ21b)の上下方向の寸法とほぼ同等とされている。第1のフランジ部20aの上方からみた掘り込み部20dの輪郭は、第1の吐出弁機構21(吐出弁21aおよび弁押さえ21b)が組み付け可能となるように、該上方からみた第1の吐出弁機構21の輪郭よりもわずかに大きな該輪郭の相似形状とされている。すなわち、掘り込み部20dの長手方向は、後述する吐出弁21aおよび弁押さえ21bの長手方向と平行をなす。掘り込み部20dをこのような形態とすることで、掘り込み部20dに組み付けられた状態では、第1の吐出弁機構21が掘り込み部20dに没入した状態となる。換言すれば、掘り込み部20dは、第1の吐出弁機構21を組み付けるための凹部として、第1のフランジ部20aに形成されている。なお、第2の軸受22の第2のフランジ部22aには、第2の吐出弁機構23を組み付けるための凹部として、掘り込み部20dと同様の掘り込み部22d(図2参照)が形成されている。
【0043】
吐出弁21aは、第1の吐出孔20cを閉塞もしくは開放させるための部材であり、所定方向に長手の板状をなす。吐出弁21aは、例えばばね鋼などの弾性変形可能な素材で短冊状に形成されている。これにより、吐出弁21aは、固定具21cで固定された長手方向の一端を固定端とし、長手方向の他端を自由端として撓み変形可能な片持ちの板ばね構造とされている。具体的には、吐出弁21aは、第1のシリンダ13の圧縮室で圧縮された高温・高圧の気相冷媒が所定の吐出圧力に達した際に変形して、第1の吐出孔20cを開放する。以下、吐出弁21aのこの状態を変形状態という。第1の吐出孔20cを開放する前の状態(以下、通常状態という)において、吐出弁21aは、かかる所定の吐出圧力よりも小さな弾性力(押圧力)で第1の吐出孔20cを閉塞するように、第1の吐出孔20cの周縁に圧接している。したがって、冷媒が第1のマフラ41内の雰囲気圧力を超え、所定の吐出圧力に達すると、吐出弁21aは、前記弾性力(押圧力)に抗して変形して第1の吐出孔20cを開放し、冷媒を吐出させる。第1の吐出孔20cを開いて冷媒を吐出させ、冷媒の吐出圧力が所定圧よりも低下すると、吐出弁21aは、変形状態から弾性復帰して通常状態に戻り、第1の吐出孔20cを再び閉塞する。
【0044】
弁押さえ21bは、吐出弁21aの変形を規制するための部材であり、所定方向に長手で、吐出弁21aよりも厚肉の板状をなす。弁押さえ21bは、例えば鋼材などで形成されている。弁押さえ21bは、長手方向を吐出弁21aの長手方向に沿わせて配置されている。これらの長手方向は、第1のフランジ部20aの径方向と交差する方向、換言すれば回転軸15の軸心を含む平面と交差する方向である。また、これらの長手方向は、掘り込み部20dの長手方向と平行をなす。図3に示す例では、かかる長手方向は、第1のフランジ部20aの径方向と直交する方向、換言すれば回転軸15の軸心を含む平面と直交する方向である。弁押さえ21bは、第1の吐出孔20cを開く際に吐出弁21aが第1の吐出孔20cから離れた位置に変位する過程で、該吐出弁21aと対向するように配置されている。図3および図4に示す例において、弁押さえ21bは、吐出弁21aに被さるように吐出弁21aの上方に配置されている。弁押さえ21bは、第1の吐出孔20cを開放するように撓んだ(浮き上がった)状態、つまり変形状態の吐出弁21aに沿うように、反り返った形態をなしている。これにより、吐出弁21aが第1の吐出孔20cを開放するように撓み変形した際、つまり変形状態となった際、弁押さえ21bは、変形した吐出弁21aと接触し、吐出弁21aのそれ以上の変形(浮き上がり)を抑制する。
【0045】
第1の軸受20の上方には、第1の軸受20を覆うマフラ(以下、第1のマフラという)41が備えられている。第1のマフラ41は、例えば第1のシリンダ13の圧縮室から密閉容器10内に吐出される冷媒に起因する脈動や騒音を抑制する。第1のマフラ41は、第1のフランジ部20aと第1のボス部20bとの間を取り囲むように第1の軸受20を覆い、第1のフランジ部20aと第1のボス部20bとの間に第1のマフラ室43を形成する。第1のマフラ室43は、第1のシリンダ13の圧縮室で圧縮された高温・高圧の冷媒が第1の吐出孔20cから最初に吐出される空間である。第1のマフラ41は、第1のマフラ41の内外(上下)を連通する連通孔41aを有している。第1の吐出孔20cを通して第1のマフラ室43に吐出された高温・高圧の気相冷媒は、連通孔41aを通して密閉容器10内に吐出される。
【0046】
図2に示すように、第2の軸受22の下方には、第2の軸受22を覆うマフラ(以下、第2のマフラという)42が備えられている。第2のマフラ42は、例えば第2のシリンダ14の圧縮室から密閉容器10内に吐出される冷媒に起因する脈動や騒音を抑制する。第2のマフラ42は、第2のフランジ部22aと第2のボス部22bとの間を取り囲むように第2の軸受22を覆い、第2のフランジ部22aと第2のボス部22bとの間に第2のマフラ室44を形成する。第2のマフラ室44は、第2のシリンダ14の圧縮室で圧縮された高温・高圧の冷媒が第2の吐出孔から最初に吐出される空間である。第2のマフラ室44は、圧縮機構部11内に設けられた導通孔を通して第1のマフラ室43と連通している。導通孔は、第2のフランジ部22a、第2のシリンダ14、仕切板18、第1のシリンダ13、第1のフランジ部20aをそれぞれ貫通し、第2のマフラ室44と第1のマフラ室43に開口している。第2の吐出孔を通して第2のマフラ室44に吐出された高温・高圧の気相冷媒は、前記導通孔を通して第1のマフラ室43に達した後、連通孔41aを通して密閉容器10内に吐出される。
【0047】
図5および図6には、本実施形態に係る第1のマフラ41の構成を示す。図5は、第1のマフラ41が第1の軸受20に組み付けられた状態を上方から概略的に示す図である。図6は、第1のマフラ41を概略的に示す斜視図である。
【0048】
図4から図6に示すように、第1のマフラ41は、端面部45、側面部46、鍔部47の三つの部分を有する立体的な要素であり、これら三つの部分が薄肉状に構成されている。端面部45、側面部46、および鍔部47は、第1のマフラ室43の外郭を規定する。端面部45は、回転軸15の軸心方向(密閉容器10の中心軸線O1に沿った方向)における第1のマフラ41の一端側の面部であり、回転軸15の軸心に対して放射状に広がる面部である。図5および図6に示す例では、端面部45は、第1のマフラ41の上面部に相当する。端面部45は、第1の軸受20の第1のボス部20bが挿通される円形状の開口45aを有する環状をなしている。開口45aの中心は、回転軸15の軸心(密閉容器10の中心軸線O1)上に位置する。換言すれば、第1のマフラ41は、開口45aが回転軸15と同心状となるように配置されている。開口45aの口径(差し渡し径)は、第1のボス部20bの挿通部位における外径の寸法とほぼ同等とされている。
【0049】
端面部45は、開口45aの中心に対して放射状に延びる五つの片部45b~45fを有している。五つの片部45b~45fは、開口45aの周方向へほぼ等間隔で並んでいる。五つの片部45b~45fは、片部45bと片部45fとの間を除き、隣り合うもの同士が開口45aの中心線(密閉容器10の中心軸線O1)に徐々に近づくようになだらかに連続している。このうち、四つの片部45b~45eには、連通孔41aがそれぞれ形成されている。なお、端面部が有する片部の数は、五つに限定されず、四つ以下であってもよいし六つ以上であってもよい。
【0050】
側面部46は、端面部45(具体的には五つの片部45b~45f)と鍔部47との間を開口45a、換言すれば回転軸15の軸心の周方向の全周に亘って筒状に繋いでいる。すなわち、側面部46は、第1のマフラ41の外周部に相当する。側面部46は、鍔部47との連続側よりも端面部45との連続側の方が細い筒状をなしている。換言すれば、側面部46は、鍔部47との連続側から端面部45との連続側へ向かうほど開口45aの中心線(密閉容器10の中心軸線O1)に近づくように傾斜している。
【0051】
鍔部47は、回転軸15の軸心方向(密閉容器10の中心軸線O1に沿った方向)における第1のマフラ41の他端側の面部であり、回転軸15の軸心と同心の円形状に端面部45とほぼ平行に広がる面部である。図5および図6に示す例では、鍔部47は、第1のマフラ41の下面部に相当し、第1のマフラ41の下端側で側面部46と連続する。鍔部47は、ボルトが挿通される貫通孔を有している。ボルトは、第1のフランジ部20aに対して第1のマフラ41を固定するための固定具(本実施形態では、第1のマフラ41を固定する第2の固定具)の一例である。図5および図6に示す例では、鍔部47は五つの貫通孔47a~47eを有している。これらの貫通孔47a~47eには、各々にそれぞれ一本ずつ、計五本のボルト48a~48eが挿通されている。これらの貫通孔47a~47eは、開口45aの周方向へほぼ等間隔で並んで配置されている。回転軸15の軸心方向からみて、五つの貫通孔47a~47eは、端面部45において隣り合う片部45b~45fの間に一つずつ位置付けられるように並んでいる。換言すれば、五つの貫通孔47a~47eと五つの片部45b~45fとは、開口45aの周方向においてほぼ同等の位相差で交互に位置付けられるように、それぞれ配置されている。なお、鍔部が有する貫通孔の数は、五つに限定されず、四つ以下であってもよいし六つ以上であってもよい。例えば、鍔部が有する貫通孔の数は、端面部が有する片部の数と一致させればよい。
【0052】
貫通孔47a~47eは、第1の軸受20の第1のフランジ部20aに形成された貫通孔20f~20jとそれぞれ一つずつ連通する。図3から図6に示す例では、第1の貫通孔47aは第1の貫通孔20fと連通している。連通したこれらの貫通孔47a,20fには、ボルト48aが挿通されている。同様に、第2の貫通孔47bは、第2の貫通孔20gと連通している。連通したこれらの貫通孔47b,20gには、ボルト48bが挿通されている。第3の貫通孔47cは、第3の貫通孔20hと連通している。連通したこれらの貫通孔47c,20hには、ボルト48cが挿通されている。第4の貫通孔47dは、第4の貫通孔20iと連通している。連通したこれらの貫通孔47d,20iには、ボルト48dが挿通されている。第5の貫通孔47eは、第5の貫通孔20jと連通している。連通したこれらの貫通孔47e,20jには、ボルト48eが挿通されている。これらのボルト48a~48eは、第1のシリンダ13にそれぞれ締結されている。これにより、第1のマフラ41および第1の軸受20は、第1のシリンダ13に組み付けられる。換言すれば、鍔部47は、第1の軸受20の第1のフランジ部20aを介して第1のシリンダ13にボルト48a~48eで固定される。すなわち、ボルト48a~48eは、第1のフランジ部20aを介して第1のシリンダ13に鍔部47を固定する。
【0053】
第1のマフラ41は、形成する第1のマフラ室43の外郭を規定する部位を第1のマフラ室43の内部に凹ませた凹部49を有している。以下、凹部49の構成について、図4から図6を参照して説明する。
【0054】
凹部49は、端面部45および側面部46を第1のマフラ室43の内部にそれぞれ凹ませた形態をなす。第1のマフラ室43からみた場合、凹部49は、第1のマフラ室43に突出する凸部であり、第1のマフラ41のリブに相当する。すなわち、凹部49は、第1のマフラ41の変形を抑制する補強部として機能する。図4から図6に示す例では、凹部49は、端面部45における片部45bと片部45fとの間の部位、および側面部46における片部45bと片部45fとの間と鍔部47とを繋ぐ部位を、それぞれ第1のマフラ室43の内部に凹ませた形態をなしている。
【0055】
回転軸15の軸心方向から第1のフランジ部20aの上面20eに凹部49を投影した場合、凹部49は、掘り込み部20dの長手方向と交差して掘り込み部20dと重なるように配置されている。すなわち、凹部49は、掘り込み部20d、換言すれば吐出弁21aおよび弁押さえ21bの近傍に配置されている。
【0056】
凹部49は、四つの面部49a~49dを主たる面部として含んで構成されている。第1の面部49aおよび第2の面部49bは、開口45aの周方向へほぼ平行に対をなして対向する。また、第1の面部49aおよび第2の面部49bは、回転軸15の軸心を含んで吐出弁21aの長手方向と交差する所定の平面(仮想平面)と平行をなす。本実施形態では一例として、第1の面部49aおよび第2の面部49bは、回転軸15の軸心を含んで吐出弁21aの長手方向と直交する平面と平行をなしている。別の捉え方をすれば、回転軸15の軸心方向から第1のフランジ部20aの上面20eに凹部49を投影した場合、第1の面部49aおよび第2の面部49bは、掘り込み部20dの長手方向と交差して、ここでは直交して掘り込み部20d、換言すれば吐出弁21aおよび弁押さえ21bと重なるように配置されている。
【0057】
第3の面部49cおよび第4の面部49dは、相互に連続するとともに、第1の面部49aと第2の面部49bとの間を繋ぐ面部である。第1の面部49aと第2の面部49bは、第3の面部49cおよび第4の面部49dを介して連続する。第3の面部49cは、開口45aの中心線(密閉容器10の中心軸線O1)とほぼ平行をなして起立し、第1の面部49aと第2の面部49bとの間を上方で繋いでいる。第4の面部49dは、開口45aの中心線(密閉容器10の中心軸線O1)に対して傾斜して起立し、第1の面部49aと第2の面部49bとの間を下方で繋いでいる。第4の面部49dは、第3の面部49cとの連続側(ここでは上側)へ向かうほど、開口45aの中心線(密閉容器10の中心軸線O1)に近づくように傾斜している。第3の面部49cおよび第4の面部49dは、第1の面部49aおよび第2の面部49bに対して垂直に連続している。
【0058】
第3の面部49cは、ボルト50が挿通される貫通孔49eを有している。ボルト50は、第1のボス部20bに対して第1のマフラ41、具体的には側面部46を固定するための固定具(本実施形態では、第1のマフラ41を固定する第1の固定具)の一例である。図5に示すように、第1のボス部20bには、第3の面部49cと当接可能な平坦状の座面を有する座面部20kが設けられている。ボルト50は、座面部20kに形成されたボルト穴20lに締結されている。また、第1の面部49aと第2の面部49bとは、ボルト50の頭部50aと干渉しない離間距離で対向している。
【0059】
このように第1のマフラ41は、第1の軸受20に対してボルト48a~48eによって第1のフランジ部20aを介して第1のシリンダ13に固定されるとともに、ボルト50によって第1のボス部20bに固定されている。第1のフランジ部20aは、回転軸15の径方向の外側に向けて延びるように配置され、第1のボス部20bは、回転軸15と同心状に配置されている。すなわち、第1のフランジ部20aと第1のボス部20bとは、互いに直交するように配置されている。したがって、回転軸15の径方向および軸方向の二方向から第1のマフラ41を第1の軸受20に対して強固に固定できる。これにより、例えば回転軸15の回転時における第1のボス部20bの傾きに対する第1のマフラ41の剛性を高めることができる。
【0060】
また、第1のマフラ41は、第1のフランジ部20aの掘り込み部20dの近傍に配置された凹部49を有している。上述したとおり、凹部49は、第1のマフラ41の変形を抑制する補強部として機能する。したがって、回転軸15が回転した際、例えば第1のフランジ部20aに対して第1のボス部20bを傾かせるように掘り込み部20dが弾性変形しようとする力を、凹部49で負荷できる。このため、掘り込み部20dの弾性変形を抑制でき、第1のフランジ部20aに対して第1のボス部20bが傾くような変形を抑制できる。結果として、例えば回転軸15が曲げ振動することで生じる騒音を低減させることが可能となる。
【0061】
なお、第2のマフラ42は、上述した第1のマフラ41が有する凹部49に相当する部分を有していない。これは次のような理由によるものである。図2に示すように、第2の軸受22の第2のボス部22bは、第1の軸受20の第1のボス部20bよりも回転軸15の軸心方向の長さが短い。すなわち、第2のボス部22bは、第2のフランジ部22aに対して傾くような変形が起こり難く、変形した場合であっても第1のボス部20bほど大きくは変形しない。したがって、本実施形態では、第2のマフラ42を凹部49に相当する部分を省略した構成としている。すなわち、第2のマフラ42は、凹部49に相当する部分を有していない点、および上下(天地)が逆に位置することに伴う相違点を除き、第1のマフラ41と同様に構成可能である。ただし、第2のマフラ42は、第1のマフラ41と同様の凹部を有していてもよい。
【0062】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…空気調和機、2…圧縮機、3…四方弁、4…室外熱交換器、5…膨張装置、6…室内熱交換器、7…循環回路、8…アキュムレータ、10…密閉容器、11…圧縮機構部、12…電動機部、13…第1のシリンダ、14…第2のシリンダ、15…回転軸、18…仕切板、20…第1の軸受、20a…第1のフランジ部、20b…第1のボス部、20c…第1の吐出孔、20d…凹部(掘り込み部)、20e…上面、20f~20j…貫通孔、20k…座面部、20l…ボルト穴、21…第1の吐出弁機構、21a…吐出弁、21b…弁押さえ、21c…固定具、22…第2の軸受、22a…第2のフランジ部、22b…第2のボス部、23…第2の吐出弁機構、41…第1のマフラ、41a…連通孔、42…第2のマフラ、43…第1のマフラ室、44…第2のマフラ室、45…端面部、45a…開口、45b~45f…片部、46…側面部、47…鍔部、47a~47e…貫通孔、48a~48e…ボルト、49…凹部、49a…第1の面部、49b…第2の面部、49c…第3の面部、49d…第4の面部、49e…貫通孔、50…ボルト、50a…頭部、O1…密閉容器の中心軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6