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特開2023-34654視機能検査支援装置、視機能検査支援方法、及び、視機能検査支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034654
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】視機能検査支援装置、視機能検査支援方法、及び、視機能検査支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/06 20060101AFI20230306BHJP
   A61B 3/032 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61B3/06
A61B3/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140985
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】松村 祥子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】浅田 典明
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA14
4C316FA01
4C316FA18
4C316FB06
4C316FB07
4C316FY02
4C316FY08
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】視機能検査における初期の検査条件を被験者に応じて適切に設定でき、視機能検査にかかる時間を短縮することができる視機能検査支援装置を提供する。
【解決手段】視機能検査支援装置は、視標及び背景を含む画像を出力する画像出力部と、被験者の識別結果を受け付け、前記視標を前記被験者が識別可能であるか否かを判定する識別判定部と、前記被験者が識別可能な視標輝度の閾値を推定する閾値推定部と、を備え、前記画像出力部は、背景輝度を維持しつつ、前記識別判定部の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように前記視標輝度を増減させ、前記閾値推定部は、識別可能と判定された前記視標輝度と、識別不能と判定された前記視標輝度の差分が所定値以下である場合、それらの間の輝度値を、前記閾値として推定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視標及び背景を含む画像を出力する画像出力部と、
前記画像に対する被験者の識別結果を受け付け、当該識別結果に基づいて、前記視標を前記被験者が識別可能であるか否かを判定する識別判定部と、
前記被験者が識別可能な視標輝度の閾値を推定する閾値推定部と、
を備え、
前記画像出力部は、背景輝度を維持しつつ、前記識別判定部の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように前記視標輝度を増減させ、
前記閾値推定部は、識別可能と判定された前記視標輝度である第1の視標輝度値と、識別不能と判定された前記視標輝度である第2の視標輝度値との差分が所定値以下である場合、前記第1の視標輝度値と前記第2の視標輝度値の間の輝度値を、前記閾値として推定する、
視機能検査支援装置。
【請求項2】
前記差分に基づいて、視機能検査で前記視標輝度の制御に用いられる基準値を求める基準値算出部をさらに備える、
請求項1に記載の視機能検査支援装置。
【請求項3】
前記画像における前記視標輝度は前記背景輝度より小さく、
前記閾値推定部は、前記識別判定部の判定結果に基づいて、正対比における前記閾値を推定する、
請求項1または2に記載の視機能検査支援装置。
【請求項4】
前記画像における前記視標輝度は前記背景輝度より大きく、
前記閾値推定部は、前記識別判定部の判定結果に基づいて、逆対比における前記閾値を推定する、
請求項1から3のいずれかに記載の視機能検査支援装置。
【請求項5】
前記画像は、前記視標の周りに配置された妨害光を含み、
前記画像出力部は、前記背景輝度及び前記妨害光の輝度を維持しつつ、前記識別判定部の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように前記視標輝度を増減させる、
請求項1から4のいずれかに記載の視機能検査支援装置。
【請求項6】
前記画像は、カラー画像であり、
前記閾値推定部は、色毎に前記閾値を推定する、
請求項1から5のいずれかに記載の視機能検査支援装置。
【請求項7】
前記色毎に推定された閾値に基づいて、複数の前記色の中から検査対象の色を決定する色決定部をさらに備える、
請求項6に記載の視機能検査支援装置。
【請求項8】
前記色決定部は、前記色毎に推定された閾値の中で、最も小さい閾値に対応する色と、最も大きい閾値に対応する色とを検査対象の色として決定する、
請求項7に記載の視機能検査支援装置。
【請求項9】
前記被験者が識別可能な前記視標の最小サイズを推定するサイズ推定部をさらに備え、
前記画像出力部は、前記画像に含まれる前記視標のサイズを、前記サイズ推定部により推定された前記最小サイズに維持しつつ、前記視標輝度を変化させる、
請求項1から8のいずれかに記載の視機能検査支援装置。
【請求項10】
前記画像出力部は、前記背景輝度及び前記視標輝度を維持しつつ、前記視標のサイズを変更させて前記画像を出力し、
前記サイズ推定部は、前記識別判定部の判定結果に応じて、識別可能と判定された前記視標のサイズの中で、最も小さい前記視標のサイズを前記最小サイズとして推定する、
請求項9に記載の視機能検査支援装置。
【請求項11】
前記画像出力部は、前記識別判定部の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように、前記視標のサイズを増減させる、
請求項10に記載の視機能検査支援装置。
【請求項12】
前記被験者が眩しいと感じない輝度範囲を推定する輝度範囲推定部をさらに備え、
前記画像出力部は、前記背景輝度を前記輝度範囲推定部によって推定された前記輝度範囲内に維持しつつ、前記画像を出力する、
請求項1から11のいずれかに記載の視機能検査支援装置。
【請求項13】
前記画像に対する前記被験者の回答に応じて、前記画像が眩しいか否かを判定する眩しさ判定部をさらに備え、
前記画像出力部は、前記背景輝度と前記視標輝度とのコントラスト比を維持しつつ、前記背景輝度及び前記視標輝度を増加させ、
前記輝度範囲推定部は、前記眩しさ判定部の判定結果に基づいて、前記被験者が眩しいと感じない前記背景の輝度範囲を推定する、
請求項12に記載の視機能検査支援装置。
【請求項14】
前記画像は、前記視標の周りに配置された妨害光を含み、
前記画像出力部は、前記背景輝度及び前記視標輝度を維持しつつ、妨害光輝度を変化させ、
前記輝度範囲推定部は、前記眩しさ判定部の判定結果に基づいて、前記被験者が眩しいと感じない前記妨害光の輝度範囲を推定する、
請求項13に記載の視機能検査支援装置。
【請求項15】
視標及び背景を含む画像を出力し、
前記画像に対する被験者の識別結果を受け付け、
当該識別結果に基づいて、前記視標を前記被験者が識別可能であるか否かを判定し、
背景輝度を維持しつつ、判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させ、
識別可能と判定された前記視標輝度である第1の視標輝度値と、識別不能と判定された前記視標輝度である第2の視標輝度値との差分が所定値以下である場合、前記第1の視標輝度値と前記第2の視標輝度値の間の輝度値を、前記被験者が識別可能な視標輝度の閾値として推定する、
視機能検査支援方法。
【請求項16】
コンピューターが実行する視機能検査支援プログラムであって、
視標及び背景を含む画像を出力する手順と、
前記画像に対する被験者の識別結果を受け付ける手順と、
当該識別結果に基づいて、前記視標を前記被験者が識別可能であるか否かを判定する手順と、
背景輝度を維持しつつ、判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させる手順と、
識別可能と判定された前記視標輝度である第1の視標輝度値と、識別不能と判定された前記視標輝度である第2の視標輝度値との差分が所定値以下である場合、前記第1の視標輝度値と前記第2の視標輝度値の間の輝度値を、前記被験者が識別可能な視標輝度の閾値として推定する手順と、
を前記コンピューターに実行させる、視機能検査支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視機能検査支援装置、視機能検査支援方法、及び、視機能検査支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の視機能を補正するメガネ等の光学部材は、個々人の視機能に適した分光透過率、色収差又は屈折率等の光学特性を有するように製造される必要がある。個々人に適した光学部材を製造するために、視機能検査(例えば、特許文献1)が実施される。
【0003】
視機能検査では、視標(例えば、ランドルト環)及び背景を含む画像が、背景輝度を一定値に維持しつつ視標輝度を変化させながら、次々と被験者に提示される。また、グレア源を考慮した検査では、視標及び背景に加えて妨害光を含む画像が、背景輝度及び妨害光輝度を一定値に維持しつつ、視標輝度を変化させながら、次々と被験者に提示される。そして、被験者が視標を識別できる視標輝度の閾値が評価される。
【0004】
視機能検査で評価された閾値を使用すれば、個々人の視機能に適した光学部材を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/012334号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した視機能検査では、被験者に対して画像を提示し、被験者が当該画像中の視標を識別できたか否かを判定して閾値を評価するが、被験者ごとに視機能が異なることから設定する検査条件も異なるにも関わらず、初期の検査条件がほぼ同じに設定されるために、試行回数が増大し、長時間を要する場合があった。
【0007】
本開示は、視機能検査における初期の検査条件を被験者に応じて適切に設定でき、視機能検査にかかる時間を短縮することができる視機能検査支援装置、視機能検査支援方法、及び、視機能検査支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の視機能検査支援装置は、
視標及び背景を含む画像を出力する画像出力部と、
前記画像に対する被験者の識別結果を受け付け、当該識別結果に基づいて、前記視標を前記被験者が識別可能であるか否かを判定する識別判定部と、
前記被験者が識別可能な視標輝度の閾値を推定する閾値推定部と、
を備え、
前記画像出力部は、背景輝度を維持しつつ、前記識別判定部の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように前記視標輝度を増減させ、
前記閾値推定部は、識別可能と判定された前記視標輝度である第1の視標輝度値と、識別不能と判定された前記視標輝度である第2の視標輝度値との差分が所定値以下である場合、前記第1の視標輝度値と前記第2の視標輝度値の間の輝度値を、前記閾値として推定する。
【0009】
本開示の視機能検査支援方法は、
視標及び背景を含む画像を出力し、
前記画像に対する被験者の識別結果を受け付け、
当該識別結果に基づいて、前記視標を前記被験者が識別可能であるか否かを判定し、
背景輝度を維持しつつ、判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させ、
識別可能と判定された前記視標輝度である第1の視標輝度値と、識別不能と判定された前記視標輝度である第2の視標輝度値との差分が所定値以下である場合、前記第1の視標輝度値と前記第2の視標輝度値の間の輝度値を、前記被験者が識別可能な視標輝度の閾値として推定する。
【0010】
本開示の視機能検査支援プログラムは、
コンピューターが実行するプログラムであって、
視標及び背景を含む画像を出力する手順と、
前記画像に対する被験者の識別結果を受け付ける手順と、
当該識別結果に基づいて、前記視標を前記被験者が識別可能であるか否かを判定する手順と、
背景輝度を維持しつつ、判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させる手順と、
識別可能と判定された前記視標輝度である第1の視標輝度値と、識別不能と判定された前記視標輝度である第2の視標輝度値との差分が所定値以下である場合、前記第1の視標輝度値と前記第2の視標輝度値の間の輝度値を、前記被験者が識別可能な視標輝度の閾値として推定する手順と、
を前記コンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、視機能検査における初期の検査条件を被験者に応じて適切に設定でき、視機能検査にかかる時間を短縮することができる視機能検査支援装置、視機能検査支援方法、及び、視機能検査支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1A図1Cは、視機能検査において提示される画像の一例を示す図である。
図2図2A図2Fは、視機能検査において提示される画像の一例を示す図である。
図3図3は、ダブルステアケース法による視機能検査を説明する図である。
図4図4は、実施形態に係る視機能検査支援システムのブロック図である。
図5図5は、実施形態に係る視機能検査支援装置が実行する前処理を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係る視機能検査支援装置が実行する第1の前処理を示すフローチャートである。
図7図7A図7Hは、第1の前処理において提示される画像の一例を示す図である。
図8図8は、被験者が識別可能な視標の最小サイズを推定するプロセスを説明する図である。
図9図9は、実施形態に係る視機能検査支援装置が実行する第2の前処理を示すフローチャートである。
図10図10A図10Fは、第2の前処理において提示される画像の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る視機能検査支援装置が実行する第3の前処理を示すフローチャートである。
図12図12A図12Eは、第3の前処理において提示される画像の一例を示す図である。
図13図13は、視標輝度に関する閾値を推定するプロセスを説明する図である。
図14図14は、実施形態に係る視機能検査支援装置が実行する第4の前処理を示すフローチャートである。
図15図15A図15Cは、第4の前処理において提示される色付きの画像の一例を示す図である。
図16図16は、実施形態に係る視機能検査支援装置による前処理結果を用いて実行される視機能検査を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
[視機能検査]
まず、図1図3を参照しつつ、視機能検査について説明する。図1A図1Cは、視機能検査において提示される画像100の一例を示す図である。図1A図1Cに示す画像100は、視標101及び背景102を含む。図2A図2Fは、視機能検査において提示される画像110及び画像120の一例を示す図である。図2A図2Cに示す画像110は、色が付されていないモノクロ画像であり、視標111、背景112及び妨害光113を含む。図2D図2Fに示す画像120は、色が付されているカラー画像であり、視標121、背景122及び妨害光123を含む。図3は、ダブルステアケース法による視機能検査を説明する図である。図3の縦軸は、提示される画像中の視標の輝度であり、横軸は、試行回数である。試行回数は、検査用の画像の提示回数に相当する。
【0015】
なお、視標とは、視機能検査における視対象である。視機能検査では、視標として、例えば、ランドルト環が用いられる。背景とは、画像中の視標を除く領域である。妨害光とは、グレア光源を模した円環状の画像であり、視標を取り囲むように配置される。以下において、視標、背景及び妨害光の輝度を、それぞれ、「視標輝度」、「背景輝度」及び「妨害光輝度」と称する。
【0016】
一般に、背景輝度と視標輝度とのコントラスト(背景輝度と視標輝度の差)が大きくなるほど、被験者は視標を識別しやすくなり、コントラストが小さくなるほど、被験者は視標を識別しにくくなる。以下の説明において、背景輝度と視標輝度とのコントラストを単に「コントラスト」と呼ぶ。また、ランドルト環を視対象とした場合、視標輝度が背景輝度よりも小さい場合を「正対比」と称し、視標輝度が背景輝度よりも大きい場合を「逆対比」と称する。
【0017】
視機能検査では、あるコントラストにおいて、被験者が視標を識別可能であるか否かが判定され、識別可能な状態と識別不能な状態との境界となる視標輝度が求められる。この境界において識別可能な視標輝度を閾値とする。
【0018】
また、視標の近くに高輝度の光源(グレア源)が存在する場合、被験者が視標を見るときの視認能力が低下する。すなわち、グレア源が存在する場合、グレア源が存在しない場合に対して閾値が変わる。さらに、視標や背景の色に応じて、上述の閾値は異なる。よって、視機能検査では、グレア源が存在する場合の閾値、並びに、色別の閾値が求められる。
【0019】
例えば、図1A図1Cに示す画像100を用いて、グレア源が存在しない場合の閾値が求められ、図2A図2Fに示す画像110及び画像120を用いて、グレア源が存在する場合のモノクロ画像における閾値、並びに、色別の閾値が求められる。
【0020】
以下、一般的な視機能検査について詳細に説明する。
視機能検査は、視機能検査装置(不図示)を用いて実行される。なお、視機能検査には、正対比検査及び逆対比検査がある。
【0021】
(1)正対比検査
正対比検査では、視標輝度が背景輝度よりも小さい画像が被験者に提示される。図1A~1C及び図2A~2Fの画像100、画像110及び画像120は、いずれも正対比の画像である。
【0022】
<グレア源なし、モノクロ>
まず、視機能検査装置は、視標101及び背景102を含むモノクロの画像100(図1A参照)を被験者に提示する。そして、視機能検査装置は、背景輝度を維持しつつ、視標101の輝度を変化させながら、視標輝度の異なる画像100を次々と被験者に提示していく。
【0023】
例えば、図3に示されているように、視機能検査装置は、比較的小さい視標輝度から視標輝度を大きくしていく第1の提示パターン(図3で“〇”)、及び、比較的大きい視標輝度から視標輝度を小さくしていく第2の提示パターン(図3で“●”)に沿って、視標輝度を変化させていく。このように、2系統の提示パターンに沿って視標輝度を変化させていき、閾値XTを求める手法は、ダブルステアケース法と呼ばれる。
【0024】
具体的には、被験者が視標を識別可能であった場合は、コントラストが低くなるように所定の刻み幅(ステップサイズ)だけ視標輝度が増減され、識別不能であった場合は、コントラストが高くなるように視標輝度が増減される。例えば、図1Aに示す画像100の視標101を被験者が識別可能であった場合、視標輝度が増大された図1Bに示す画像100が提示される。さらに、図1Bに示す画像100の視標101を被験者が識別可能であった場合、視標輝度がさらに増大された図1Cに示す画像100が提示される。試行回数を重ねることで、識別可能な状態と識別不能な状態との境界が収束し、閾値XTが求まる。
【0025】
図3には、視機能検査装置が、第1の提示パターンに沿って、1回目に比較的小さい視標輝度にて画像100を提示し、2~4回目に提示する画像100の視標輝度を次第に大きくしていることが示されている。また、図3には、視機能検査装置が、第2の提示パターンに沿って、5回目に比較的大きい視標輝度にて画像100を提示し、6回目の画像100の視標輝度を5回目の提示画像100よりも小さくしていることが示されている。
【0026】
ダブルステアケース法では、第1の提示パターンに沿った視標輝度の変化と、第2の提示パターンに沿った視標輝度の変化とが数回毎に切り替えられる。なお、切り替えまでの試行回数は一定であってもよいし、ランダムであってもよい。
【0027】
また、視機能検査装置は、提示された画像100に対する被験者の回答が入力されると、入力された回答の正誤を判定する。よって、図3に示されているように、試行回数を重ねていくことで、閾値XTを求めることができる。
【0028】
なお、図1A図1Cの画像100の視標101はすべて同じ方向を向いているが、実際には試行回数毎に視標101の向きはランダムとなっている。視標101は、例えば、上下左右の四方のいずれかを向き得る。
【0029】
<グレア源あり、モノクロ>
次に、視機能検査装置は、視標111、背景112、及び、妨害光113を含むモノクロの画像110(図2A参照)を被験者に提示する。画像110は、グレア源が存在する場合の閾値を求めるために提示される画像である。
【0030】
視機能検査装置は、背景輝度及び妨害光輝度を維持しつつ、視標輝度を変化させながら、ダブルステアケース法に従って画像110を次々と被験者に提示する。例えば、図2Aに示す画像110の視標111を被験者が識別可能であった場合、視標輝度が増大された図2Bに示す画像110が提示される。さらに、図2Bに示す画像110の視標111を被験者が識別可能であった場合、視標輝度がさらに増大された図2Cに示す画像110が提示される。
【0031】
また、視機能検査装置は、提示された画像110に対する被験者の回答が入力されると、入力された回答の正誤を判定する。よって、図3に示されているように、試行回数を重ねていくことで、妨害光(グレア源)が存在する場合の閾値XTを求めることができる。
【0032】
<グレア源あり、カラー>
次に、視機能検査装置は、視標121、背景122、及び、妨害光123を含むカラーの画像120(図2D参照)を被験者に提示する。画像120は、グレア源が存在する場合の閾値を、色毎に求めるために提示される画像である。
【0033】
視機能検査装置は、背景輝度及び妨害光輝度を維持しつつ、視標輝度を変化させながら、上述したダブルステアケース法を実行して、色毎に閾値XTを求める。例えば、図2Dに示す画像120の視標121を被験者が識別可能であった場合、視標輝度が増大された図2Eに示す画像120が提示される。さらに、図2Eに示す画像120の視標121を被験者が識別可能であった場合、視標輝度がさらに増大された図2Fに示す画像120が提示される。図2D図2Fの画像120には同一色が付されているが、視機能検査では、複数の色(例えば、赤、緑、青の三原色)のそれぞれに対して閾値XTが求められる。
【0034】
(2)逆対比検査
逆対比検査では、視標輝度が背景輝度よりも大きい画像が被験者に提示される。検査内容は、提示される画像が異なること以外は、正対比検査と同じである。
【0035】
<視機能検査の課題>
ダブルステアケース法により視機能検査を実施して正確に閾値を求めようとすると、初回の視標輝度を比較的大きい値又は比較的小さい値に設定し、視標輝度の刻み幅を小さくする必要があるので、閾値を求めるまでに多くの試行回数を要する。ひいては、検査時間が長くなる。
【0036】
また、視機能検査において、視標サイズが一定値に維持され、かつ、背景輝度、及び、妨害光輝度がそれぞれ一定値に維持されるが、視機能検査における視標サイズ、背景輝度、及び、妨害光輝度は、被験者毎に適切な値が異なる。
【0037】
視標サイズ、背景輝度、及び、妨害光輝度が不適切な値に設定された場合、視機能検査で求められる閾値の精度の低下や視機能検査の再現性の低下を招く。また、閾値を求めるためにより長い時間を要することもある。さらに、1回のダブルステアケース法による視機能検査では閾値を求めることができず、やり直す必要が生じる場合もある。また、例えば、背景輝度、及び、妨害光輝度が大きすぎた場合、視機能検査中に被験者が提示画像を見続けることができず、視機能検査が中断されることもある。
【0038】
本開示によれば、後述する前処理を実行することで、視標輝度に関する閾値、視機能検査で用いる視標サイズ、及び、視機能検査で使用可能な背景輝度の輝度範囲等を推定することができるので、これらの推定結果を視機能検査に適用して、上述した課題を解決することができる。
【0039】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0040】
[実施形態]
(システム構成)
まず、実施形態に係る視機能検査支援システム1の構成を説明する。
【0041】
図4は、実施形態に係る視機能検査支援システム1のブロック図である。視機能検査支援システム1は、視機能検査において適切な検査条件を設定するための前処理を実行する。より具体的には、視機能検査支援システム1は、視機能検査が実施される前に、メガネ等の光学部材の購入希望者を被験者として、画像の提示、及び、被験者が画像中の視標を識別できたか否かの判定等を実行し、検査条件を設定する上で有用な各種値(例えば、閾値)を推定する。なお、本実施形態において、「視標」は、「ランドルト環」であるとして説明する。
【0042】
視機能検査支援システム1は、視機能検査支援装置10と、入力デバイス11と、モニター12と、を備えている。
【0043】
視機能検査支援装置10は、視機能検査支援装置10の各構成部を制御する視機能検査支援プログラム41(後述)がインストールされたコンピューターである。
【0044】
入力デバイス11は、ボタン群、キーボード、又は、タッチパネル等、視機能検査支援装置10に対して情報を入力可能な機器である。例えば、被験者の回答を受けて、検査員が入力デバイス11を操作することにより情報が入力される。入力デバイス11は、入力された情報を受け付けると、受け付けた入力情報を視機能検査支援装置10に出力する。
【0045】
入力情報には、主に、識別結果情報及び羞明情報を含む。識別結果情報は、「上」、「下」、「左」、「右」及び「不明」等の視標に対する回答、「正解」又は「不正解」等の正誤、もしくは、「識別可能」又は「識別不能」等の可否等、被験者が視標を識別できているか否かが示されている情報である。以下、識別結果情報として、入力デバイス11から視標に対する回答が入力されることを例に挙げて実施形態について説明する。
【0046】
羞明情報は、提示された画像を被験者が眩しく感じるか否かを示す情報であり、例えば、「YES」(眩しい)又は「NO」(眩しくない)を示す情報のいずれかが含まれている。
【0047】
その他、入力情報には、前処理の条件を設定するための各種情報が含まれる。
【0048】
モニター12は、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置等のディスプレイである。モニター12は、視機能検査支援装置10の制御の下、視機能検査支援装置10から出力された画像データに基づいて、検査用の画像を表示する。
【0049】
視機能検査支援装置10は、バス20と、入出力I/F30と、記憶装置40と、CPU(Central Processing Unit)50とを備えている。
【0050】
入出力I/F30と、記憶装置40と、CPU50とは、バス20を介して相互に接続されている。
【0051】
入出力I/F30は、視機能検査支援装置10を入力デバイス11及びモニター12に接続するインターフェースである。よって、入出力I/F30を介して、入力デバイス11から視機能検査支援装置10に情報が入力されるとともに、視機能検査支援装置10からモニター12に画像データが出力される。
【0052】
記憶装置40は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有している。記憶装置40には、視機能検査支援プログラム41及び視機能検査支援プログラム41の実行に必要となる各種のデータが記憶されている。なお、CPU50が実行する処理の一部又は全部は、処理に応じて設けられたDSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)等の電子回路によって実行されてもよい。
【0053】
CPU50は、視機能検査支援装置10の動作を制御する制御部であり、ROMから視機能検査支援プログラム41を読み出し、RAMに展開することで、画像出力部51、識別判定部52、サイズ推定部53、眩しさ判定部54、輝度範囲推定部55、閾値推定部56、基準値算出部57、及び、色決定部58として機能する。
【0054】
画像出力部51は、前処理用の画像のデータを生成してモニター12に出力する。画像出力部51は、画像の領域毎に輝度及び色を調整可能である。前処理用の画像は、視標及び背景を含む画像であってもよいし、視標及び背景に加えて妨害光を含む画像であってもよい。
【0055】
識別判定部52は、被験者に提示されている画像に対して入力デバイス11から入力された識別結果情報を受け付ける。そして、識別判定部52は、識別結果情報に基づいて、被験者が画像中の視標を識別可能であるか否かを判定する。
【0056】
サイズ推定部53は、被験者に提示されている画像に対する識別判定部52の判定結果に基づいて、被験者が識別可能な視標の最小サイズを推定する。視機能検査では、サイズ推定部53によって推定された最小サイズの推定値(以下、「サイズ推定値」と称することもある。)が用いられる。なお、本実施形態において、視標のサイズとは、ランドルト環の直径のことである。
【0057】
眩しさ判定部54は、被験者に提示されている画像に対して入力デバイス11から入力された羞明情報に基づいて、被験者が当該画像を眩しいと感じるか否かを判定する。眩しさ判定部54は、例えば、被験者が画像を所定時間連続して見続けられる場合を「眩しくない」と判定し、見続けられない場合を「眩しい」と判定する。
【0058】
輝度範囲推定部55は、被験者に提示されている画像に対する眩しさ判定部54の判定結果に基づいて、被験者が眩しいと感じない背景及び妨害光の輝度範囲をそれぞれ推定する。視機能検査では、輝度範囲推定部55によって推定された背景の輝度範囲内のいずれかの値が背景輝度として用いられ、輝度範囲推定部55によって推定された妨害光の輝度範囲内のいずれかの値が妨害光輝度として用いられる。
【0059】
閾値推定部56は、被験者に提示されている画像に対する識別判定部52の判定結果に基づいて、閾値を推定する。以下、閾値推定部56によって推定された閾値を「閾値推定値」と称することもある。また、閾値推定部56は、色が付されたカラー画像に対する判定結果に基づいて、色毎に閾値を推定する。視機能検査では、閾値推定値に基づいて、視標輝度の初期値、及び、検査対象とする視標輝度の範囲が決定される。
【0060】
基準値算出部57は、被験者に提示されている画像に対する識別判定部52の判定結果に基づいて、視機能検査で行われる視標輝度の制御に用いられる基準値を算出する。この基準値は、視標輝度を増減させるときの刻み幅、及び、主な検査対象とする視標輝度の範囲等の算出の基準となる。
【0061】
色決定部58は、閾値推定部56によって推定された色毎の閾値推定値に基づいて、複数の色の中から視機能検査で検査対象とする色を決定する。
【0062】
(前処理の概略)
次に、実施形態に係る視機能検査支援装置10が実行する前処理の概略を説明する。図5は、実施形態に係る視機能検査支援装置10が実行する前処理を示すフローチャートである。図5に示されているように、前処理は、第1の前処理、第2の前処理、第3の前処理、及び、第4の前処理を含んでいる。この処理は、CPU50がROMに格納されている視機能検査支援プログラムを実行することにより実現される。
【0063】
まず、ステップS1において、CPU50は、第1の前処理を実行する。第1の前処理は、視機能検査で被験者に提示される画像として適した視標のサイズを決定するための処理である。
【0064】
次に、ステップS2において、CPU50は、第2の前処理を実行する。第2の前処理は、視機能検査で被験者に提示される画像として適した背景の輝度及び妨害光の輝度を決定するための処理である。
【0065】
そして、ステップS3において、CPU50は、第3の前処理を実行する。第3の前処理は、主に、色が付されていないモノクロ画像を用いた視機能検査における検査対象の視標輝度の範囲を決定するための処理である。
【0066】
具体的には、第3の前処理において、閾値推定部56は、識別判定部52によって識別可能と判定された視標輝度と、識別不能と判定された視標輝度との差分が所定値以下である場合、それらの間の輝度値を、閾値として推定する。
【0067】
次いで、ステップS4において、CPU50は、第4の前処理を実行する。第4の前処理は、主に、色付きのカラー画像を用いた視機能検査における検査対象の視標輝度の範囲を決定するための処理である。
【0068】
(第1の前処理)
図6は、視機能検査支援装置10が実行する第1の前処理を示すフローチャートである。図7A図7Hは、第1の前処理において提示される画像200の一例を示す図である。画像200は、視標201及び背景202を含んでいる。また、図7A図7Hの画像200において、視標輝度及び背景輝度は正対比の関係にある。図8は、被験者が識別可能な視標201の最小サイズを推定するプロセスを説明する図である。図8の縦軸は、画像200中の視標201のサイズであり、横軸は試行回数(つまり、画像200の提示回数)である。図8中の「○」は被験者の回答が「正解」であったことを意味し、「×」は被験者の回答が「不正解」であったことを意味する。また、図7A図7B図7C図7D図7E図7F図7G、及び、図7Hの画像200は、それぞれ試行回数が1~2回目、3~4回目、5~6回目、7~8回目、9~10回目、11~12回目、13~14回目、及び、15~18回目のときに被験者に提示される画像に対応する。
【0069】
まず、ステップS101において、CPU50は、視標201及び背景202を含む画像200(図7A参照)のデータを生成してモニター12に出力し、被験者に対して画像200を提示する(画像出力部51としての処理)。
【0070】
第1の前処理では、視標輝度と背景輝度のコントラスト比は、所定のコントラスト比に設定されている。所定のコントラスト比は、被験者毎に異なる値に設定される。例えば、被験者の過去の視機能検査データに基づいて、当該被験者が識別可能なコントラスト比の最小値に設定される。なお、所定のコントラスト比は、被験者にかかわらず一定値に設定されてもよく、その一定値は、例えば、健常者が識別可能なコントラスト比の最小値であってもよい。
【0071】
また、画像200における視標201の初期サイズは、被験者が確実に識別可能なサイズに設定される。具体的には、初期サイズは、識別可能と推測される視標201の最小サイズの数倍(例えば、5倍)に設定される。
【0072】
識別可能な視標201の最小サイズは、背景202と視標201のコントラストに応じて異なる。例えば、視力1.0の被験者は、120cd/mの背景輝度、かつ、0cd/mの視標輝度で提示された画像200において、1.5mmのサイズの視標201を識別できるが、120cd/mの背景輝度、かつ、96cd/mの視標輝度で提示された画像200においては、視標201のサイズを3.0mm程度まで大きくしないと識別できない。
【0073】
よって、第1の前処理を開始する際の初期サイズは、上述の所定のコントラスト比が小さくなるほど、大きい値に設定される。
【0074】
以下、画像200のコントラスト比(背景輝度:視標輝度)が10:6、初期サイズが10mmであることを例に挙げて第1の前処理について説明する。
【0075】
画像200がモニター12に提示されると、被験者は画像200を見て視標201の向き(ランドルト環の切れ目の方向)を回答する。検査員は、画像200が提示されるたびに、入力デバイス11を介して画像200に対する被験者の識別結果情報(「上」、「下」、「右」、「左」、及び「不明」)を入力する。
【0076】
次に、ステップS102において、CPU50は、入力された識別結果情報に基づいて識別判定を行う(識別判定部52としての処理)。識別判定部52は、提示されている画像200の視標201の向きと識別結果情報とが一致する場合、「正解」と判定し、提示中の画像200の視標201の向きと識別結果情報とが一致しない場合又は識別結果情報が「不明」である場合、「不正解」と判定する。
【0077】
次いで、ステップS103において、CPU50は、識別判定の結果を確定するための確定条件が成立したか否かを判定する(識別判定部52としての処理)。識別判定部52は、例えば、以下の確定条件(A1)または確定条件(A2)のいずれかが成立している場合、確定条件が成立していると判定し、いずれも成立していない場合、確定条件が成立していないと判定する。
(A1)2回連続で「正解」の判定結果が得られた。
(A2)2回連続で「不正解」の判定結果が得られた。
【0078】
確定条件が成立していない場合(ステップS103で“NO”)、CPU50は、ステップS104の処理に移行し、視標輝度、背景輝度、及び視標サイズを変更せずに、再度画像200を提示する。ステップS104で提示される画像200の視標201の向きは、前回提示された画像200(例えば、ステップS101で提示された画像200)の視標201と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
そして、確定条件が成立するまで、ステップS102~S104が繰り返される。
【0080】
例えば、図8に示されているように、1回目と2回目にサイズ10mmの視標201を含む画像200(図7A参照)が被験者に提示され、2回とも「正解」であった場合、確定条件(A1)が成立し、識別可能であると判定される。
【0081】
また、3回目と4回目にサイズ2mmの視標201を含む画像200(図7B参照)が被験者に提示され、2回とも「不正解」であった場合、確定条件(A2)が成立し、識別不能であると判定される。
【0082】
いずれかの確定条件が成立した場合(ステップS103で“YES”)、CPU50は、ステップS105の処理に移行する。ステップS105において、CPU50は、視標201のサイズを変更し、サイズが変更された視標201を含む画像200を、被験者に対して提示する(画像出力部51としての処理)。このとき、画像200のコントラスト比、すなわち視標輝度及び背景輝度は維持される。
【0083】
ステップS103において確定条件(A1)が成立して識別可能と判定されていた場合、ステップS105において、視標201のサイズは、提示していた視標サイズよりも縮小される。一方、ステップS103において確定条件(A2)が成立して識別不能と判定されていた場合、ステップS105において、視標201のサイズは、提示していた視標サイズよりも拡大される。
【0084】
例えば、図8では、1~2回目に提示された画像200に対して確定条件(A1)が成立して「識別可能」と判定されているので、3~4回目に提示される画像200における視標サイズは、1~2回目の画像200における視標サイズよりも縮小されている。
【0085】
次に、ステップS106において、CPU50は、入力された識別結果情報を受け付け、当該識別結果情報に基づいて識別判定を行う(識別判定部52としての処理)。次いで、ステップS107において、CPU50は、確定条件が成立したか否かを判定する(識別判定部52としての処理)。そして、確定条件が成立していない場合(ステップS107で“NO”)、ステップS108において、CPU50は、視標輝度、背景輝度及び視標サイズを変更せずに、再度画像200を出力する(画像出力部51としての処理)。ステップS106~S108は、ステップS102~S104と同様に行われる。
【0086】
例えば、図8に示されているように、3~4回目にサイズ2mmの視標201を含む画像200(図7B参照)が被験者に提示され、2回とも「不正解」であった場合、確定条件(A2)が成立し、識別不能であると判定される。
【0087】
いずれかの確定条件が成立した場合(ステップS107で“YES”)、CPU50は、ステップS109の処理に移行する。ステップS109において、CPU50は、視標サイズの増減幅dDが比較値dDB(図8参照)以下となったか否かを判定する(サイズ推定部53としての処理)。
【0088】
直近の増減幅dDが比較値dDBよりも大きい場合(ステップS109で“NO”)、CPU50は、ステップS105の処理に移行し、ステップS105~S109の処理を繰り返す。
【0089】
なお、ステップS105において、CPU50は、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように、視標サイズを増減させる(画像出力部51としての処理)。具体的には、現在の試行までで識別可能であった視標サイズの最小値と識別不能であった視標サイズの最大値との差分の所定の比率(例えば、80%)を増減幅として、視標サイズを増減させる。なお、初回の視標サイズが識別不能であった場合は、視標サイズを所定倍率(例えば、1.2倍)で拡大させればよい。
【0090】
例えば、図8では、1~2回目に提示された1個目のサイズの画像200(図7A参照)に対して確定条件(A1)が成立して「識別可能」と判定されたことに応じて、3~4回目に提示される画像200(図7B参照)の視標サイズ(2個目のサイズ)は、現在の試行までで識別可能であった視標サイズの最小値である初期サイズ(10mm)と、識別不能であった視標サイズの最大値である0mm(該当するサイズがないため便宜上0とする)との差分(10mm)の80%だけ縮小させて、2mm(=10mm-8mm)となっている。
【0091】
また、3~4回目に提示された2個目のサイズの画像200(図7B参照)に対して確定条件(A2)が成立して「識別不能」と判定されたことに応じて、5~6回目に提示される画像200(図7C参照)の視標サイズ(3個目のサイズ)は、現在の試行までで識別可能であった視標サイズの最小値である初期サイズ(10mm)と、識別不能であった視標サイズの最大値である2個目のサイズ(2mm)との差分(8mm)の80%だけ増大させて、8.4mm(=2mm+6.4mm)となっている。
【0092】
また、11~12回目に提示された6個目のサイズの画像200(図7F参照)に対して確定条件(A1)が成立して「識別可能」と判定されたことに応じて、13~14回目に提示される画像200(図7G参照)の視標サイズ(7個目のサイズ)は、現在の試行までで識別可能であった視標サイズの最小値である6個目のサイズと、識別不能であった視標サイズの最大値である4個目のサイズとの差分の80%だけ縮小させたサイズとなっている。
【0093】
図6のステップS109において、直近の増減幅dDが比較値dDB以下であると判定された場合(ステップS109で“YES”)、CPU50は、ステップS110の処理に移行し、ステップS110において、被験者が識別可能な視標201の最小サイズを推定する(サイズ推定部53としての処理)。具体的には、CPU50は、「識別可能」と判定された視標サイズの中で、最も小さい視標サイズを視標201の最小サイズと推定する。
【0094】
図8には、7個目のサイズから8個目のサイズまでの増減幅(ここでは、増加幅)dDが、比較値dDB以下であることが示されている。また、図8には、15~18回目に8個目のサイズの視標201を含む画像200(図7H参照)が被験者に提示され、17~18回目に連続して「正解」して確定条件(A1)が成立し、識別可能であると判定されている。この場合、8個目のサイズが、「識別可能」と判定された視標サイズの中で最も小さい視標サイズであると推定される。
【0095】
ステップS110が終了した後、視機能検査支援装置10は、第1の前処理を終了する。第1の前処理により、被験者が識別可能な最小の視標サイズが取得される。
【0096】
なお、ステップS109において、現在の試行までで「識別可能」と判定された視標201のサイズと「識別不能」と判定された視標201のサイズとのサイズ差が比較値dDB1以下であるか否かが判定されてもよい。ここで、比較値dDB1は、比較値dDBと同じであっても異なっていてもよい。
【0097】
(第2の前処理)
図9は、視機能検査支援装置10が実行する第2の前処理を示すフローチャートである。図10A図10Fは、第2の前処理において提示される画像300及び画像310の一例を示す図である。画像300は、視標301及び背景302を含んでおり、画像310は、視標311及び背景312に加えて、妨害光313を含んでいる。また、図10A図10Fの画像300及び画像310において、視標輝度及び背景輝度は正対比の関係にある。
【0098】
まず、ステップS201において、CPU50は、視標301及び背景302を含む画像300(図10A参照)のデータを生成してモニター12に出力し、被験者に対して画像300を提示する(画像出力部51としての処理)。ステップS201で出力される画像300において、背景輝度は、所定の輝度値に設定され、コントラスト比は、第1の前処理において提示された画像200と同じく、所定のコントラスト比(ここでは、10:6)に設定されている。所定の輝度値は、被験者が確実に眩しいと感じないくらい小さい輝度値である。所定の輝度値は、予め設定されていてもよいし、第2の前処理が実行されるたびに検査員によって設定されてもよい。
【0099】
被験者は、モニター12に提示された画像300を連続して見続ける。検査員は、被験者が画像300を第1の時間よりも長く見続けることができるかを観察し、羞明情報(「YES」又は「NO」)を入力する。第1の時間は、例えば、30秒である。
【0100】
次いで、ステップS202において、CPU50は、コントラスト比を維持しつつ、背景輝度及び視標輝度を増加させた画像300を被験者に提示する(画像出力部51としての処理)。
【0101】
ステップS202において、例えば、図10Bの画像300が出力される。図10Bの画像300の背景輝度及び視標輝度は、図10Aの画像300の背景輝度及び視標輝度よりも大きい。
【0102】
次に、ステップS203において、CPU50は、入力された羞明情報に基づいて眩しさ判定を行う(眩しさ判定部54としての処理)。本実施形態では、被験者が画像300を第1の時間よりも長く見続けられることをもって、被験者は当該画像300を眩しいと感じていないと判断し、第1の時間経過するよりも前に視線が外れた場合は、被験者は当該画像300を眩しいと感じていると判断する。なお、被験者に眩しいかどうかを回答してもらい、その回答に基づいて検査員が羞明情報を視機能検査支援装置10に入力してもよい。
【0103】
「眩しいと感じていない」と判定された場合(ステップS203で“NO”)、CPU50は、ステップS202の処理に移行する。そして、「眩しいと感じている」と判定されるまで、ステップS202~S203の処理が繰り返し実行される。一方、「眩しいと感じている」と判定された場合(ステップS203で“YES”)、CPU50は、ステップS204の処理に移行する。
【0104】
なお、図10Cの画像は、図10Bの画像300よりも後に提示された画像であり、図10Cの画像300の背景輝度及び視標輝度は、図10Bの画像300の背景輝度及び視標輝度よりも大きい。
【0105】
例えば、CPU50(画像出力部51)は、コントラスト比を維持しつつ、背景輝度を初期の輝度値100cd/mから、150cd/m、250cd/m、400cd/m、500cd/m、650cd/m、800cd/m、1000cd/m、1300cd/m、1600cd/m、2000cd/m、2400cd/m、…に順に増加させる。なお、背景輝度は、一定値ずつ増加されてもよい。視標輝度は、コントラスト比が維持されるように、背景輝度と同じ比率で増加される。
【0106】
「眩しいと感じている」と判定された場合(ステップS203で“YES”)、ステップS204において、CPU50は、被験者が眩しいと感じない背景の輝度範囲を推定する(輝度範囲推定部55としての処理)。
【0107】
例えば、背景輝度2000cd/mの画像300に対して「眩しいと感じていない」と判定され、背景輝度が2000cd/mから2400cd/mに増加されたときに「眩しいと感じている」と判定された場合、CPU50(輝度範囲推定部55)は、2000cd/m以下を、被験者が支障なく見続けることが可能な背景の輝度範囲として推定する。詳細は後述するが、推定された背景の輝度範囲内の特定の輝度値が、視機能検査で使用される背景輝度値として決定される。なお、視機能検査支援装置10が出力可能な最大輝度の背景302を含む画像300に対して「眩しいと感じていない」と判定された場合には、当該最大輝度以下が、被験者が支障なく見続けることが可能な背景の輝度範囲として推定される。それに加えて、視機能検査装置が出力可能な最大輝度が、推定された背景の輝度範囲の上限値以下である場合、視機能検査装置が出力可能な輝度範囲内のどの輝度値が、視機能検査で使用される背景輝度値として決定されても構わない。
【0108】
次に、ステップS205において、CPU50は、視標311及び背景312に加えて妨害光313を含む画像310(例えば図10Dの画像)のデータを生成してモニター12に出力し、被験者に対して画像300を提示する(画像出力部51としての処理)。ステップS205で提示される画像310のコントラスト比は、妨害光313がない場合の画像300のコントラスト比とは異なる値に設定されている。例えば、画像310のコントラスト比は、画像300のコントラスト比よりも大きく(例えば、10:4)設定されている。画像310の背景輝度は、ステップS204で推定された背景の輝度範囲(2000cd/m以下)内の値(例えば、400cd/m)に設定される。なお、この背景輝度は、ステップS204で推定された背景の輝度範囲の上限値の1/10以上1/5以下程度を目安に設定される。視標輝度は、設定された背景輝度と、コントラスト比(10:4)とに基づいて設定される(160cd/m)。また、妨害光313の輝度は、ステップS204で推定された背景の輝度範囲の上限値(2000cd/m)以下、かつ、画像310中の背景輝度よりも大きい値(例えば、500cd/m)に設定される。
【0109】
被験者は、モニター12に提示された画像310を連続して見続ける。検査員は、被験者が画像310を第2の時間よりも長く見続けることができるかを観察し、羞明情報(「YES」又は「NO」)を入力する。第2の時間は、例えば、60秒である。第2の時間は、第1の時間よりも長くてもよいし、第1の時間よりも短くてもよいし、第1の時間と同じであってもよい。
【0110】
次いで、ステップS206において、CPU50は、背景312の輝度と視標311の輝度とを維持しつつ、妨害光313の輝度を増加させた画像310を提示する(画像出力部51としての処理)。ステップS206において、例えば、図10Eの画像310が出力される。なお、ステップS206では、CPU50は、ステップS204で推定された背景の輝度範囲内で妨害光313の輝度を増加させる。
【0111】
次に、ステップS207において、CPU50は、ステップS206において提示された画像310に対して、入力された羞明情報に基づいて眩しさ判定を行う(眩しさ判定部54としての処理)。ステップS207は、ステップS203と同様の処理である。
【0112】
「眩しいと感じていない」と判定された場合(ステップS207で“NO”)、CPU50は、ステップS206の処理に移行する。そして、「眩しいと感じている」と判定されるまで、ステップS206~S207の処理が繰り返し実行される。一方、「眩しいと感じている」と判定された場合(ステップS207で“YES”)、CPU50は、ステップS208の処理に移行する。なお、図10Fの画像は、図10Eの画像310よりも後に提示された画像であり、図10Fの画像310の妨害光輝度は、図10Eの画像310の妨害光輝度よりも大きい。
【0113】
そして、ステップS208において、CPU50は、妨害光がある画像310に対して、被験者が眩しいと感じない妨害光の輝度範囲を推定する(輝度範囲推定部55としての処理)。
【0114】
例えば、妨害光輝度1600cd/mの画像310が出力されたときに、「眩しいと感じていない」と判定され、背景輝度が1600cd/mから2000cd/mに増加されたときに「眩しいと感じている」と判定された場合、CPU50(輝度範囲推定部55)は、1600cd/m以下を、妨害光がある画像を被験者が支障なく見続けることが可能な妨害光の輝度範囲として推定する。
【0115】
ステップS208が終了した後、視機能検査支援装置10は、第2の前処理を終了する。第2の前処理により、被験者にとって眩しくない背景の輝度範囲及び妨害光の輝度範囲、すなわち、視機能検査に適した背景の輝度範囲及び妨害光の輝度範囲が取得される。
【0116】
なお、第2の前処理が実行されている間、画像300の視標301、及び、画像310の視標311のサイズは、第1の前処理で推定されたサイズ推定値に維持される。
【0117】
また、ステップS207において、ステップS204で推定された背景の輝度範囲の上限値(2000cd/m)と同じ輝度値の妨害光313を含む画像310に対して、「眩しいと感じていない」と判定された場合、CPU50は、ステップS208の処理に移行し、当該上限値以下(つまり、2000cd/m以下)を妨害光の輝度範囲として推定してもよい。
【0118】
さらに、CPU50は、ステップS205以降の処理において、画像310の妨害光輝度を、ステップS204で推定された背景の輝度範囲内、かつ、画像310の背景輝度よりも大きい輝度範囲内で変化させ、眩しさ判定の結果に応じて、妨害光の輝度範囲を推定すればよい。
【0119】
よって、例えば、ステップS205において、CPU50は、ステップS204で推定された背景の輝度範囲の上限値(2000cd/m)と同じ輝度値の妨害光313を含む画像310を出力してもよい。そして、当該画像310に対して「眩しいと感じていない」と判定された場合、CPU50は、ステップS204で推定された背景の輝度範囲の上限値以下(つまり、2000cd/m以下)を妨害光の輝度範囲として推定してもよい。当該画像310に対して「眩しいと感じている」と判定された場合、CPU50は、「眩しいと感じていない」と判定されるまで、背景312の輝度と視標311の輝度とを維持しつつ、妨害光313の輝度値を減少させる。そして、ある妨害光輝度(例えば、2000cd/m)の画像310に対して「眩しいと感じている」と判定され、ある妨害光輝度から別の妨害光輝度(例えば、1600cd/m)に減少されたときに「眩しいと感じていない」と判定された場合、CPU50は、当該別の妨害光輝度以下(1600cd/m以下)を、妨害光の輝度範囲として推定する。詳細は後述するが、推定された妨害光の輝度範囲内の特定の輝度値が、視機能検査で使用される妨害光輝度値として決定される。なお、視機能検査支援装置10が出力可能な最大輝度の妨害光313を含む画像310に対して「眩しいと感じていない」と判定された場合には、当該最大輝度以下が、被験者が支障なく見続けることが可能な妨害光の輝度範囲として推定される。それに加えて、視機能検査装置が出力可能な最大輝度が、推定された妨害光の輝度範囲の上限値以下である場合、視機能検査装置が出力可能な輝度範囲内のどの輝度値が、視機能検査で使用される妨害光輝度値として決定されても構わない。
【0120】
(第3の前処理)
図11は、視機能検査支援装置10が実行する第3の前処理を示すフローチャートである。図12A図12Eは、第3の前処理において提示される画像400の一例を示す図である。画像400は、視標401及び背景402を含んでいる。また、画像400において、視標輝度と背景輝度とは正対比の関係にある。図13は、視標輝度の閾値を推定するプロセスを説明する図である。図13の縦軸は、画像400中の視標401の輝度であり、横軸は試行回数(つまり、画像400の提示回数)である。図13中の「○」は被験者の回答が「正解」であったことを意味し、「×」は被験者の回答が「不正解」であったことを意味する。また、図13A図13B図13C図13D、及び、図13Eの画像400は、それぞれ試行回数が1~2回目、3~4回目、5~6回目、7~9回目、及び10~11回目に被験者に提示される画像に対応する。
【0121】
まず、ステップS301において、CPU50は、視標401及び背景402を含む画像400(図12A参照)のデータをモニター12に出力し、被験者に対して画像400を提示する(画像出力部51としての処理)。第3の前処理では、視標401のサイズは、第1の前処理で推定された最小サイズに設定されている。コントラスト比は、正対比用の所定の初期コントラスト比に設定されている。本実施形態では、所定の初期コントラスト比は、例えば、10:0である。また、背景402の輝度は、第2の前処理で推定された背景の輝度範囲(ここでは、2000cd/m以下)内の所定の背景輝度値に設定されている。例えば、この所定の背景輝度値は、第2の前処理のステップS205において出力された画像310の背景輝度値と同じ輝度値(400cd/m)に設定される。
【0122】
以下、所定の背景輝度値が400cd/m、及び、所定の初期コントラスト比が10:0(すなわち、視標401の輝度の初期値は0cd/m)であることを例に挙げて第3の前処理について説明する。
【0123】
画像400がモニター12に提示されると、被験者は、画像400を見て視標401の向き(ランドルト環の切れ目の方向)を回答する。検査員は、画像400が提示されるたびに、入力デバイス11を介して画像400に対する被験者の識別結果情報(「上」、「下」、「右」、「左」、及び「不明」)を入力する。
【0124】
次に、ステップS302において、CPU50は、入力された識別結果情報に基づいて識別判定を行う(識別判定部52としての処理)。ステップS302は、図6のステップS102と同様に行われる。
【0125】
次いで、ステップS303において、CPU50は、識別判定の結果を確定するための確定条件が成立したか否かを判定する(識別判定部52としての処理)。ステップS303は、図6のステップS103と同様に行われる。
【0126】
確定条件が成立していない場合(ステップS303で“NO”)、CPU50は、ステップS304の処理に移行し、視標輝度、背景輝度、及び視標サイズを変更せずに、再度画像400を提示する(画像出力部51としての処理)。ステップS304で提示される画像400の視標401の向きは、前回提示された画像400(例えば、ステップS301で提示された画像400)の視標401と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0127】
そして、確定条件が成立するまでステップS302~S304が繰り返される。
【0128】
例えば、図13に示されているように、1~2回目に視標輝度0cd/mの視標401を含む画像400(図12A参照)が被験者に提示され、2回とも「正解」であった場合、確定条件(A1)が成立し、識別可能であると判定される。
【0129】
いずれかの確定条件が成立した場合(ステップS303で“YES”)、CPU50は、ステップS305の処理に移行する。ステップS305において、CPU50は、背景輝度を維持しつつ、背景輝度よりも小さい範囲で視標輝度を増加又は減少させた画像400を被験者に提示する。
【0130】
また、ステップS303において確定条件(A1)が成立して識別可能と判定されていた場合、視標401の輝度は、提示していた視標401の輝度よりも増加される(コントラスト比の減少)。一方、確定条件(A2)が成立して識別不能と判定されていた場合、視標401の輝度は、提示していた視標401の輝度よりも減少される(コントラスト比の増加)。
【0131】
例えば、図13では、1~2回目に提示された画像400に対して確定条件(A1)が成立して「識別可能」と判定され、3~4回目に提示される画像400における視標輝度は、1~2回目の画像400における視標輝度よりも増加されている。
【0132】
次に、ステップS306において、CPU50は、入力された識別結果情報を受け付け、当該識別結果情報に基づいて識別判定を行う(識別判定部52としての処理)。次いで、ステップS307において、CPU50は、確定条件が成立したか否かを判定する(識別判定部52としての処理)。そして、確定条件が成立していない場合(ステップS307で“NO”)、CPU50は、ステップS308に移行し、視標輝度、背景輝度及び視標サイズを変更せずに、再度画像400を出力する(画像出力部51としての処理)。ステップS306~S308は、ステップS302~S304と同様に行われる。
【0133】
例えば、図13に示されているように、3~4回目に視標輝度が200cd/mの視標401を含む画像400(図12B参照)が被験者に提示され、2回とも「正解」であった場合、確定条件(A1)が成立し、識別可能であると判定される。
【0134】
いずれかの確定条件が成立した場合(ステップS307で“YES”)、CPU50は、ステップS309の処理に移行する。ステップS309において、CPU50は、視標輝度の増減幅dLが比較値dLB(図13参照)以下となったか否かを判定する(閾値推定部56としての処理)。
【0135】
直近の増減幅dLが比較値dLBよりも大きい場合(ステップS309で“NO”)、CPU50は、ステップS305の処理に移行し、ステップS305~S309の処理を繰り返す。
【0136】
なお、ステップS305において、CPU50は、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように、背景輝度を維持しつつ、背景輝度よりも小さい範囲で視標輝度を増減させる(画像出力部51としての処理)。具体的には、現在の試行までで識別可能であった視標輝度の最小値と識別不能であった視標輝度の最大値との差分の所定の比率(例えば、50%)を増減幅として、視標輝度を増減させる。
【0137】
例えば、図13では、1~2回目に提示された1個目の視標輝度の画像400(図12A参照)に対して確定条件(A1)が成立して「識別可能」と判定されたことに応じて、3~4回目に提示される画像400(図12B参照)の視標輝度(2個目の視標輝度)は、現在の試行までで識別可能であった視標輝度の最小値である1個目の視標輝度(0cd/m)と、識別不能であった視標輝度の最大値である400cd/m(該当する視標輝度がないため便宜上、所定の背景輝度値400cd/mであるとする)との差分(400cd/m)の50%だけ増加させて、200cd/m(=0cd/m+200cd/m)となっている。
【0138】
また、5~6回目に提示された3個目の視標輝度の画像400(図12C参照)に対して確定条件(A2)が成立して「識別不能」と判定されたことに応じて、7~9回目に提示される画像400の視標輝度(4個目の視標輝度)は、現在の試行までで識別可能であった視標輝度の最大値である2個目の視標輝度(200cd/m)と、識別不能であった視標輝度の最小値である3個目の視標輝度(300cd/m)との差分(100cd/m)の50%だけ減少させて、250cd/m(=300cd/m-50cd/m)となっている。
【0139】
また、7~9回目に提示された4個目の視標輝度の画像400(図12D参照)に対して確定条件(A2)が成立して「識別不能」と判定されたことに応じて、10~11回目に提示される画像400の視標輝度(5個目の視標輝度)は、現在の試行までで識別可能であった視標輝度の最大値である2個目の視標輝度(200cd/m)と、識別不能であった視標輝度の最小値である4個目の視標輝度(250cd/m)との差分(50cd/m)の50%だけ減少させて、225cd/m(=250cd/m-25cd/m)となっている。
【0140】
図11のステップS309において、直近の増減幅dLが比較値dLB以下であると判定された場合(ステップS309で“YES”)、CPU50は、ステップS310の処理に移行し、ステップS310において、閾値を推定する(閾値推定部56としての処理)。具体的には、CPU50は、「識別可能」と判定された視標輝度と、「識別不能」と判定された視標輝度と差分dLLがはじめて所定値dLB0以下となったときの「識別可能」と判定された視標輝度と、「識別不能」と判定された視標輝度との間の輝度を、閾値として推定する。
【0141】
図13には、4個目の視標輝度から5個目の視標輝度までの増減幅(ここでは、減少幅)dLが、比較値dLB以下であることが示されている。また、図13には、2個目の視標輝度と4個目の視標輝度との差分dLLが、所定値dLB0以下であることが示されている。
【0142】
また、図13には、3~4回目に2個目の視標輝度の視標401を含む画像400(図12B参照)が被験者に提示され、3~4回目に連続して「正解」して確定条件(A1)が成立し、識別可能であると判定されている。その後、7~9回目に4個目の視標輝度の視標401を含む画像400(図12D参照)が被験者に提示され、8~9回目に連続して「不正解」となり確定条件(A2)が成立し、識別不能であると判定されている。この場合、2個目の視標輝度と4個目の視標輝度との間の視標輝度である5個の視標輝度が、視標輝度の閾値であると推定される。
【0143】
次いで、ステップS311において、CPU50は、視機能検査で行われる視標輝度の制御に用いられる基準値Δを算出する(基準値算出部57としての処理)。基準値Δは、視機能検査において、視標輝度を増減させる際の輝度範囲及び刻み幅(増減幅)を決定する際に用いられる。CPU50(基準値算出部57)は、例えば、提示された画像400の視標輝度の中の所定の2つの輝度値の差分に、所定の係数(例えば、1/4)を乗算することで算出された値を基準値として求める。
【0144】
所定の2つの輝度値は、閾値推定値よりも大きい視標輝度の中で、閾値推定値に最も近い輝度値と、閾値推定値よりも小さい視標輝度の中で、閾値推定値に最も近い輝度値である。
【0145】
図13には、閾値として推定された5個目の視標輝度よりも大きい視標輝度(3、4個目の視標輝度)の中で、4個目の視標輝度が5個目の視標輝度に最も近く、5個目の視標輝度よりも小さい視標輝度(1、2個目の視標輝度)の中で、2個目の視標輝度が5個目の視標輝度に最も近いことが示されている。また、2個目の視標輝度と、4個目の視標輝度との差分dLLの4分の1が基準値Δとして求められることが示されている。
【0146】
ステップS301~S311の処理により、正対比における閾値推定値及び基準値Δが求められる。
【0147】
次に、ステップS312において、CPU50は、視標及び背景を含み、かつ、視標輝度と背景輝度とが逆対比の関係を満たす画像のデータを生成して、モニター12に出力し、被験者に対して当該画像を提示する(画像出力部51としての処理)。ステップS312では、コントラスト比は、逆対比用の初期コントラスト比に設定されている。本実施形態では、初期コントラスト比は、例えば、10:15である。また、背景輝度及び視標のサイズは、ステップS301で提示される画像400と同じである。
【0148】
以下、初期コントラスト比が10:15、(すなわち、逆対比の画像における視標輝度の初期値は、600cd/m)であることを例に挙げて第3の前処理について説明する。
【0149】
次いで、ステップS313において、CPU50は、逆対比の画像に対する閾値推定処理及び基準値算出処理を実行する。逆対比の画像に対する閾値推定処理及び基準値算出処理は、背景輝度よりも大きい範囲で視標輝度を増加又は減少させた逆対比の画像を被験者に提示する点を除いて、上述のステップS302~S311の処理とほぼ同様である。この処理により、逆対比における閾値推定値及び基準値Δが求められる。
【0150】
ステップS313が終了すると、視機能検査支援装置10は、第3の前処理を終了する。第3の前処理により、正対比及び逆対比における視標輝度の閾値推定値及び基準値Δが取得される。
【0151】
なお、閾値の推定及び基準値の算出において、必ずしも上述のステップS309~S311の処理が実行されなくてもよい。その場合、例えば、以下のようにして閾値推定及び基準値算出が実行されてもよい。
【0152】
ステップS307の後、CPU50は、現在の試行までで識別可能であった視標輝度と、識別不能であった視標輝度と差分dLLが所定値dLB0以下となったか否かを判定する(閾値推定部56としての処理)。差分dLLが所定値dLB0以下となったと判定されなければ、CPU50は、ステップS305の処理に移行する。差分dLLが所定値dLB0以下となったと判定されれば、CPU50は、「識別可能」と判定された視標輝度と、「識別不能」と判定された視標輝度との間の輝度を閾値として推定する(閾値推定部56としての処理)。そして、CPU50は、「識別可能」と判定された視標輝度と、「識別不能」と判定された視標輝度との差分dLLに基づいて、基準値を算出する(基準値算出部57としての処理)。
【0153】
このようにして、閾値の推定及び基準値の算出が実行された場合、画像400の提示回数を少なくすることができる。すなわち、図13において、4個目の視標輝度の画像400が識別不能と判定された時点で、2個目の視標輝度と4個目の視標輝度との差分dLLが所定値dLB0以下となり、閾値の推定及び基準値の算出が実行されるので、10~11回目の画像400の提示を省略することができる。
【0154】
なお、第3の前処理において、CPU50は、妨害光がない場合の閾値推定値及び基準値だけでなく、妨害光を含む画像を提示しつつ、妨害光がある場合の閾値推定値及び基準値を求めてもよい。妨害光がある場合の閾値推定値及び基準値を求める場合、第2の前処理で推定された背景の輝度範囲(ここでは、2000cd/m以下)内の所定の背景輝度値(400cd/m)の背景、及び、第2の前処理で推定された妨害光の輝度範囲(1600cd/m以下)内、かつ、当該所定の背景輝度値(400cd/m)よりも大きい輝度値(例えば、1600cd/m)の妨害光を含む画像が被験者に提示される。そして、当該画像に対する識別判定の結果に基づいて視標輝度が増減される。
【0155】
また、第3の前処理において、基準値の算出が省略されてもよい。
【0156】
(第4の前処理)
図14は、視機能検査支援装置10が実行する第4の前処理を示すフローチャートである。図15A図15Cは、第4の前処理において提示される色付きの画像500の一例を示す図である。画像500は、視標501、背景502及び妨害光503を含み、同一色が付されている。また、図15A図15Cの画像500は、視標輝度と背景輝度とが正対比の関係にある場合を示している。
【0157】
第4の前処理において、画像500に付される検査対象色は、視機能検査で検査され得る色であり、典型的には三原色(赤、緑、青)である。なお、被験者の過去の視機能検査データに基づいて、被験者毎に検査対象色が指定されてもよい。
【0158】
まず、ステップS401において、CPU50は、視標501、背景502、及び、妨害光503を含むカラーの画像500(図15A参照)のデータを生成してモニター12に出力し、被験者に対して画像500を提示する(画像出力部51としての処理)。ステップS401で提示される画像500において、コントラスト比は、上述の所定の初期コントラスト比に設定されている。また、背景502の輝度は、第3の前処理のステップS301(図11参照)と同様、第2の前処理で推定された背景の輝度範囲(ここでは、2000cd/m以下)内の所定の背景輝度値(400cd/m)に設定されている。また、妨害光503の輝度は、第2の前処理のステップS208(図9参照)で推定された妨害光の輝度範囲(1600cd/m以下)内、かつ、背景502の輝度値(400cd/m)よりも大きい輝度値(例えば、1600cd/m)に設定される。
【0159】
次に、ステップS402において、CPU50は、閾値推定処理及び基準値算出処理を実行する。閾値推定処理及び基準値算出処理は、提示される画像500に妨害光503が含まれている点を除いて、図9のステップS302~S311の処理とほぼ同様である。
【0160】
閾値推定処理及び基準値算出処理の完了後、ステップS403において、CPU50は、検査対象色のすべてに対して、閾値推定処理及び基準値算出処理が完了したか否かを判定する。
【0161】
検査対象色の中に未完了の色が存在する場合(ステップS403で“NO”)、CPU50は、ステップS404の処理に移行し、出力画像を切り替える(画像出力部51としての処理)。具体的には、CPU50は、ステップS401で出力した画像500とは異なる検査対象色が付された画像500のデータを生成してモニター12に出力する。その後、当該検査対象色に対して閾値推定処理及び基準値算出処理が実行される。検査対象色のすべてに対して閾値推定処理及び基準値算出処理が完了するまで、ステップS402~S404の処理が繰り返される。
【0162】
検査対象色のすべてに対して、閾値推定処理及び基準値算出処理が完了した場合(ステップS403で“YES”)、CPU50は、ステップS405の処理に移行して、検査対象色毎の閾値推定値に基づいて、上述の複数の検査対象色の中から視機能検査の検査対象とする色を決定する(色決定部58としての処理)。
【0163】
ステップS405において、CPU50(色決定部58)は、被験者にとって最も識別しやすい検査対象色と、被験者にとって最も識別しにくい検査対象色とを視機能検査の検査対象として決定する。具体的には、閾値推定値が最も小さい検査対象色が最も識別にくい検査対象色であり、閾値推定値が最も大きい検査対象色が最も識別しやすい検査対象色である。例えば、検査対象色が、赤色、青色、及び、緑色であり、赤色、青色及び緑色の閾値推定値XSR、XSB、及び、XSGの大小関係が、XSR>XSB>XSGであった場合、赤色、及び、緑色を視機能検査の検査対象として決定する。
【0164】
ステップS405が終了すると、視機能検査支援装置10は、第4の前処理を終了する。第4の前処理により、色毎の視標輝度の閾値及び基準値Δ、並びに、被験者が識別しやすい色及び識別しにくい色が取得される。
【0165】
なお、第4の前処理において、基準値の算出が省略されてもよい。
【0166】
(前処理を踏まえた視機能検査)
図16は、前処理結果を用いて実行される視機能検査を説明する図である。図16の「○」は第1の提示パターンによる視標輝度と試行回数との関係を示し、「●」は第2の提示パターンによる視標輝度と試行回数との関係を示している。
【0167】
(1)正対比検査
<グレア源なし、モノクロ>
視機能検査装置は、視標輝度と背景輝度とが正対比の関係にあり、視標101及び背景102を含むモノクロの画像100を被験者に提示する(図1A~1C参照)。そして、例えば、ダブルステアケース法により、視標輝度の閾値を求める。
【0168】
ここで、視標サイズは、第1の前処理で推定されたサイズ推定値に設定される。背景輝度は、第2の前処理で推定された背景の輝度範囲に基づいて決定される。具体的には、背景輝度は、第2の前処理で推定された背景の輝度範囲(2000cd/m以下)内のいずれかの輝度値、例えば、400cd/mに決定される。
【0169】
また、視標輝度の初期値は、第3の前処理で推定された正対比の場合の閾値推定値を踏まえて設定される。視標輝度の初期値が被験者の実際の閾値から大幅に乖離して設定されることはなく、実際の閾値に近い視標輝度から視機能検査が開始されるので、視機能検査を効率よく実行することができる。
【0170】
また、視機能検査装置は、閾値推定値及び第3の前処理で推定された正対比の場合の基準値Δに基づいて、視機能検査での視標輝度の検査範囲を決定する。例えば、図16には、閾値推定値XSが中央値であり、当該中央値よりも9Δ(基準値Δの9倍)だけ大きい輝度値を上限値とし、当該中央値よりも9Δだけ小さい輝度値を下限値とする範囲で視標輝度を変化させながら、視機能検査が実行されていることが示されている。つまり、第3の前処理により、実際の閾値の存在範囲が大まかに特定されているので、視機能検査における検査範囲を絞ることができる。
【0171】
なお、図示されてはいないが、視機能検査装置は、基準値Δに基づいて、視機能検査における視標輝度の刻み幅(増減幅)を決定する。例えば、視機能検査装置は、刻み幅を2Δと決定してもよいし、第1の提示パターンでの視標輝度と第2の提示パターンでの視標輝度とが交差するまでの刻み幅を3Δ、交差後の刻み幅をΔに決定してもよい。第1の提示パターンでの視標輝度と第2の提示パターンでの視標輝度の交差タイミングは、例えば、図16のTCである。
【0172】
<グレア源あり、モノクロ>
視機能検査装置は、<グレア源なし、モノクロ>の正対比検査と同様にして、視標輝度と背景輝度が正対比の関係にあり、視標111、背景112及び妨害光113を含むモノクロの画像110(図2A~2C参照)を被験者に提示し、グレア源を考慮した視機能検査を実行する。この視機能検査では、第3の前処理で推定された妨害光がない場合の閾値推定値及び基準値を元に、視標輝度の初期値、検査範囲及び刻み幅が設定される。また、背景輝度は、<グレア源なし、モノクロ>の正対比検査と同様、第2の前処理で推定された背景の輝度範囲(2000cd/m以下)内の輝度値(400cd/m)に設定され、妨害光輝度は、第2の前処理のステップS208(図9参照)で推定された妨害光の輝度範囲(1600cd/m以下)内、かつ、設定された背景輝度値(400cd/m)よりも大きい輝度値(例えば、1600cd/m)に設定される。
【0173】
なお、第3の前処理において、妨害光がある場合の閾値推定値及び基準値が求められている場合、妨害光を含む画像を使用する視機能検査において、妨害光がある場合の閾値推定値及び基準値を元に、視標輝度の初期値、検査範囲及び刻み幅が設定される。
【0174】
<グレア源あり、カラー>
視機能検査装置は、<グレア源あり、モノクロ>の場合の正対比検査と同様にして、視標輝度と背景輝度が正対比の関係にあり、視標121、背景122及び妨害光123を含むカラーの画像120(図2D~2F参照)を被験者に提示し、検査対象色毎に視機能検査を実行する。この視機能検査では、第4の前処理で推定された妨害光がある場合の閾値推定値及び基準値を元に、視標輝度の初期値、検査範囲及び刻み幅が設定される。なお、第4の前処理で決定された検査対象色だけを対象として、視機能検査が実行されてもよい。なお、背景輝度及び妨害光輝度は、<グレア源あり、モノクロ>の正対比検査と同様にして設定される。
【0175】
(2)逆対比検査
視機能検査装置は、正対比検査と同様に実行する。ただし、妨害光を含まないモノクロ画像を使用する検査、妨害光を含むモノクロ画像を使用する検査、及び、妨害光を含むカラー画像を使用する検査のいずれにおいても、第3の前処理で推定された逆対比の場合の閾値推定値及び基準値を元に、視標輝度の初期値、検査範囲及び刻み幅が設定される。
【0176】
なお、第3の前処理及び第4の前処理において、基準値が算出されていない場合、例えば、視機能検査装置は、閾値推定値を中央値とし、当該閾値推定値よりも所定割合分大きい値及び小さい値をそれぞれ上限値及び下限値とする検査範囲を決定し、その検査範囲で視標輝度を変化させてもよい。また、当該上限値及び下限値との差分に基づいて刻み幅が決定されもよい。
【0177】
本実施形態に係る視機能検査支援装置10は、視標及び背景を含む画像を出力する画像出力部51と、出力された画像に対する被験者の識別結果を受け付け、当該識別結果に基づいて、視標を被験者が識別可能であるか否かを判定する識別判定部52と、被験者が識別可能な視標輝度の閾値を推定する閾値推定部56とを備えている。
【0178】
第3の前処理では、画像出力部51は、背景輝度を維持しつつ、識別判定部52の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させ、閾値推定部56は、識別可能と判定された視標輝度と、識別不能と判定された視標輝度との差分dLLが所定値dLB0以下である場合、それらの輝度同士の間の輝度値を、閾値として推定する。
【0179】
また、実施形態に係る視機能検査支援方法は、視標及び背景を含む画像を出力し(ステップS301の処理)、出力された画像に対する被験者の識別結果を受け付け、当該識別結果に基づいて、視標を被験者が識別可能であるか否かを判定し(ステップS302~S303の処理)、背景輝度を維持しつつ、判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させ(ステップS305の処理)、識別可能と判定された視標輝度と、識別不能と判定された視標輝度との差分dLLが所定値dLB0以下である場合、それらの輝度の間の輝度値の処を、被験者が識別可能な視標輝度の閾値として推定する(ステップS309の処理)。
【0180】
また、実施形態では、CPU50が視機能検査支援プログラム41を実行することにより、本開示に係る視機能検査支援装置10が実現されている。すなわち、視機能検査支援プログラム41は、コンピューターが実行するプログラムであって、視標及び背景を含む画像を出力する手順と、出力された画像に対する被験者の識別結果を受け付ける手順と、当該識別結果に基づいて、視標を被験者が識別可能であるか否かを判定する手順と、背景輝度を維持しつつ、判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させる手順と、識別可能と判定された視標輝度と、識別不能と判定された視標輝度との差分dLLが所定値dLB0以下である場合、それらの輝度同士の間の輝度値を、被験者が識別可能な視標輝度の閾値として推定する手順と、をコンピューターに実行させる。
【0181】
視機能検査支援プログラム41は、例えば、当該プログラムが格納されたコンピューター読取可能な可搬型記憶媒体(光ディスク、光磁気ディスク、及びメモリカードを含む)を介して提供することができる。また、例えば、視機能検査支援プログラム41は、当該プログラムを保有するサーバーから、ネットワークを介してダウンロードにより提供することもできる。
【0182】
実施形態で説明した視機能検査支援装置10、視機能検査支援方法、及び視機能検査支援プログラム41によれば、視機能検査支援装置10によって推定された閾値推定値を元に、視機能検査における視標輝度の初期値、視標輝度の検査範囲及び刻み幅を適切に設定し、検査初期から実際の閾値の近傍で視標輝度を変化させることができるので、閾値を求めるまでの試行回数を少なくすることができる。よって、視機能検査にかかる時間を短縮することができ、視機能検査の効率化を図ることができる。特に、ダブルステアケース法を利用した視機能検査において、これらの効果は大きい。
【0183】
また、基準値算出部57は、識別可能と判定された視標輝度と、識別不能と判定された視標輝度との差分dLLに基づいて、視機能検査で視標輝度の制御に用いられる基準値Δを求める。
【0184】
これにより、基準値Δを基準として、視機能検査における視標輝度の初期値、視標輝度の検査範囲及び視標輝度の刻み幅をより一層適切に決定できる。よって、任意に視標輝度の初期値、視標輝度の検査範囲及び視標輝度の刻み幅を決定する場合よりも、精度の高い視機能検査を実行できる。ひいては、より一層、試行回数を少なくし、検査時間を短縮することができる。
【0185】
なお、第3の前処理では、視標輝度が背景輝度より小さい画像400、つまり、正対比の画像が被験者に提示され、閾値推定部56は、画像400に対する識別判定部52の判定結果に基づいて、正対比における閾値を推定する。
【0186】
また、第3の前処理では、視標輝度が背景輝度より大きい画像、つまり、逆対比の画像が被験者に提示され、閾値推定部56は、当該画像に対する識別判定部52の判定結果に基づいて、逆対比における閾値を推定する。
【0187】
正対比の閾値と逆対比の閾値とが異なる被験者もいる。よって、それらの閾値が異なる場合であっても、正対比の閾値推定値及び逆対比の閾値推定値を推定しておくことで、視機能検査において、正確かつ短時間で正対比の閾値と逆対比の閾値とを求めることができる。
【0188】
第3の前処理では、視標の周りに配置された妨害光を含む画像が被験者に提示され、画像出力部51は、背景輝度及び妨害光輝度を維持しつつ、識別判定部52の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように視標輝度を増減させてもよい。
【0189】
これにより、妨害光を含むモノクロ画像を被験者に提示した場合の視標輝度の閾値を推定することができる。よって、妨害光を含むモノクロ画像を使用する視機能検査において、少ない試行回数で閾値を求めることができる。ひいては、視機能検査の検査時間を短縮できる。
【0190】
第4の前処理では、カラー画像500が被験者に提示され、閾値推定部56は、色毎に閾値を推定する。
【0191】
これにより、視機能検査において、色毎の閾値推定値を使用することで、少ない試行回数で色毎に閾値を求めることができる。ひいては、視機能検査の検査時間を短縮できる。
【0192】
第4の前処理において、色決定部58は、色毎に推定された閾値に基づいて、複数の色の中から検査対象の色を決定する。具体的には、色決定部58は、色毎に推定された閾値の中で、最も小さい閾値に対応する色と、最も大きい閾値に対応する色とを検査対象の色として決定する。
【0193】
これにより、視機能検査の検査対象の色を絞ることができるので、検査精度を維持しつつ、視機能検査にかかる時間をより一層短縮できる。
【0194】
第1の前処理において、サイズ推定部53は、被験者が識別可能な視標201の最小サイズを推定する。
【0195】
すなわち、第1の前処理においてサイズ推定値を求めることで、視機能検査で提示される視標のサイズを被験者にとって適切なサイズに設定することができる。これにより、視機能検査において、閾値を精度よく求めることができるとともに、視機能検査の再現性を高めることができる。また、閾値を求めることができない等の理由による視機能検査のやり直しの可能性が低くなるので、効率的に視機能検査を実行できる。
【0196】
また、第3の前処理において、画像出力部51は、画像400に含まれる視標401のサイズを、サイズ推定値に維持しつつ、視標401の輝度を変化させる。よって、第3の前処理における閾値の推定精度が高くなる。
【0197】
また、第4の前処理において、画像出力部51は、画像500に含まれる視標501のサイズを、サイズ推定値に維持しつつ、視標501の輝度を変化させる。よって、第4の前処理における閾値の推定精度が高くなる。
【0198】
第1の前処理において、画像出力部51は、背景輝度及び視標輝度を維持しつつ、視標201のサイズを変更させて画像200を出力する。そして、サイズ推定部53は、識別判定部52の判定結果に応じて、識別可能と判定された視標201のサイズの中で、最も小さい視標201のサイズを最小サイズとして推定する。
【0199】
画像出力部51は、識別判定部52の判定結果に応じて、試行回数が増えるほど増減幅が小さくなるように、視標201のサイズを増減させる。
【0200】
このように、実際の最小サイズよりも大きい側と小さい側とから最小サイズに徐々に近づけるように視標201のサイズを変更することで、最小サイズの推定精度が高くなる。
【0201】
第2の前処理において、輝度範囲推定部55は、被験者が眩しいと感じない輝度範囲を推定する。そして、第3の前処理において、画像出力部51は、背景輝度を、輝度範囲推定部55によって推定された輝度範囲内に維持しつつ、画像400を出力する。
【0202】
よって、第2の前処理において、被験者が眩しいと感じない背景の輝度範囲を推定することで、第3の前処理における閾値の推定精度が高くなる。
【0203】
第2の前処理において、眩しさ判定部54は、画像300及び画像310に対する被験者の回答に応じて、画像300及び画像310が眩しいか否かを判定する。そして、画像出力部51は、背景輝度と視標輝度とのコントラスト比を維持しつつ、背景輝度及び視標輝度を増加させる。
【0204】
このように、第2の前処理では、被験者に提示される画像300及び画像310の背景輝度及び視標輝度を比較的小さい値から増加させることで、被験者に対する高輝度の画像の提示を回避できる。よって、被験者に快適に第2の前処理を受けてもらうことができる。
【0205】
そして、輝度範囲推定部55は、画像300に対する眩しさ判定部54の判定結果に基づいて、被験者が眩しいと感じない背景の輝度範囲を推定する。
【0206】
よって、視機能検査で提示される背景輝度を被験者にとって適切な輝度に設定することができる。これにより、視機能検査での閾値を精度よく求めることができるとともに、視機能検査の再現性を高めることができる。また、視機能検査のやり直しの可能性が低くなる。さらに、眩しすぎるなどの理由により視機能検査が中断される可能性が低くなる。よって、効率的に視機能検査を実行できる。
【0207】
第2の前処理で提示される画像310は、視標311の周りに配置された妨害光313を含んでおり、画像出力部51は、背景輝度及び視標輝度を維持しつつ、妨害光輝度を変化させる。そして、輝度範囲推定部55は、画像310に対する眩しさ判定部54の判定結果に基づいて、被験者が眩しいと感じない妨害光313の輝度範囲を推定する。
【0208】
このように、第2の前処理で、被験者が眩しいと感じない妨害光の輝度範囲を求めることで、視機能検査において、妨害光がある場合の検査の精度及び再現性を高めることができる。また、視機能検査のやり直しや中断の可能性が低くなり、効率的に視機能検査を実行できる。
【0209】
[その他]
上述した実施形態では、視標のサイズとはランドルト環の直径であるとして説明したが、視標のサイズは、ランドルト環の切り欠き部分のサイズであってもよい。
【0210】
第3の前処理において、逆対比の場合の閾値推定値及び基準値が求められなくてもよい。この場合、視機能検査の逆対比検査において、正対比の閾値推定値及び基準値を元に、視標輝度の初期値、検査範囲及び刻み幅が設定される。
【0211】
また、第4の前処理において、検査対象色毎に正対比の場合の閾値推定処理及び基準値算出処理を実行するだけでなく、検査対象色毎に逆対比の場合の閾値推定及び基準値算出処理が実行されてもよい。この場合、逆対比において検査対象色毎に実行された閾値推定処理及び基準値算出処理の結果を、視機能検査の逆対比検査で使用できる。
【0212】
さらに、第4の前処理において、視機能検査の検査対象色を決定するステップ(つまり、ステップS405)が省略されてもよい。
【0213】
また、上述の視機能検査支援装置10は、少なくとも第3の前処理を実行することで、視機能検査にかかる時間を短縮することができる。よって、視機能検査支援装置10は、第1の前処理、第2の前処理、及び第4の前処理については必ずしも実行しなくてもよい。この場合、第3の前処理で提示される画像の視標のサイズ、及び、背景輝度は、例えば、被験者の過去の視機能検査データに基づいて指定されてもよい。また、前処理として、第3の前処理に加えて、第1の前処理、第2の前処理、及び第4の前処理の中の少なくとも1つが実行されてもよい。
【0214】
第1の前処理、第3の前処理、及び、第4の前処理において、識別判定部52は、必ずしも確定条件(A1)及び(A2)に基づいて、確定条件が成立したか否かを判定しなくてもよい。識別判定部52は、例えば、「正解」の判定が得られた、又は、「不正解」の判定が得られた時点で、確定条件が成立したと判定してもよい。
【0215】
また、上述の視機能検査支援装置10は、視機能検査装置とは別の装置であってもよいし、視機能検査支援装置と視機能検査装置とを兼ねていてもよい。
【0216】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本開示に係る視機能検査支援装置、視機能検査支援方法、及び、視機能検査支援プログラムは、視機能検査の前処理を実行する装置に対して好適である。
【符号の説明】
【0218】
1 視機能検査支援システム
10 視機能検査支援装置
11 入力デバイス
12 モニター
20 バス
40 記憶装置
41 視機能検査支援プログラム
51 画像出力部
52 識別判定部
53 サイズ推定部
54 眩しさ判定部
55 輝度範囲推定部
56 閾値推定部
57 基準値算出部
58 色決定部
100 画像
101 視標
102 背景
110 画像
111 視標
112 背景
113 妨害光
120 画像
121 視標
122 背景
123 妨害光
200 画像
201 視標
202 背景
300 画像
301 視標
302 背景
310 画像
311 視標
312 背景
313 妨害光
400 画像
401 視標
402 背景
500 画像
501 視標
502 背景
503 妨害光
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