(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034666
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】塗布膜形成用組成物、塗布膜、ガスセンサ、及びガスセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20230306BHJP
C08F 20/18 20060101ALI20230306BHJP
C08F 20/42 20060101ALI20230306BHJP
C08F 20/52 20060101ALI20230306BHJP
C08F 12/08 20060101ALI20230306BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230306BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20230306BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20230306BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20230306BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20230306BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230306BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230306BHJP
H01L 21/312 20060101ALN20230306BHJP
【FI】
C09D11/30
C08F20/18
C08F20/42
C08F20/52
C08F12/08
C08L101/00
C09D11/101
C09D4/00
C09D7/20
G01N27/12 M
G01N27/12 C
B41J2/01 501
B41M5/00 120
H01L21/312 D
H01L21/312 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141004
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 舞
(72)【発明者】
【氏名】河口 康晃
【テーマコード(参考)】
2C056
2G046
2H186
4J002
4J038
4J039
4J100
5F058
【Fターム(参考)】
2C056FC02
2G046FA01
2G046FA04
2G046FA05
2G046FA09
2H186DA07
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2H186FB30
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2H186FB38
2H186FB44
2H186FB48
4J002BB141
4J002BB171
4J002BC031
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4J002BG031
4J002BG061
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4J002CM011
4J002DE026
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4J002GH00
4J002HA03
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4J100AL08P
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4J100FA18
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4J100JA01
5F058AA03
5F058AC07
5F058AC10
5F058AD08
5F058AD09
5F058AF04
(57)【要約】
【課題】電子基材に微小塗布膜を形成することができる塗布膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】塗布膜形成用組成物は、モノマー又はポリマーを含み、以下の(A)~(C)の条件の少なくとも1つを満たす。
(A)塗布膜形成用組成物がモノマー及び重合開始剤を含み、溶媒を含まず、モノマーの全体の分子量が50以上であり、かつ、モノマーの全体の密度が1.00g/cm3以上又はモノマーの沸点が105℃以上である
(B)塗布膜形成用組成物がモノマー、溶媒及び重合開始剤を含み、モノマー及び溶媒の全体の分子量が50以上であり、かつ、モノマー及び溶媒の全体の密度が1.00g/cm3以上又はモノマー及び溶媒の各々の沸点が105℃以上である
(C)塗布膜形成用組成物がポリマー及び溶媒を含み、ポリマーの全体の重量平均分子量が10000以上であり、かつ、溶媒の全体の密度が0.80g/cm3以上又は溶媒の沸点が80℃以上である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー又はポリマーを含み、
以下の(A)~(C)の条件の少なくとも1つを満たす、塗布膜形成用組成物。
(A)塗布膜形成用組成物が前記モノマー及び重合開始剤を含み、溶媒を含まず、
モノマーの全体の分子量が50以上であり、かつ、
モノマーの20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマーの沸点が105℃以上であること。
(B)塗布膜形成用組成物が前記モノマー、溶媒及び重合開始剤を含み、
モノマー及び溶媒の全体の分子量が50以上であり、かつ、
モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマー及び溶媒の各々の沸点が105℃以上であること。
(C)塗布膜形成用組成物が前記ポリマー及び溶媒を含み、
ポリマーの全体の重量平均分子量が10000以上であり、かつ、
溶媒の20℃における全体の密度が0.80g/cm3以上であるか又は溶媒の沸点が80℃以上であること。
【請求項2】
B型粘度計により測定した20℃における溶液粘度が0.5mPa・sec~2000mPa・secである、請求項1に記載の塗布膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(C)の条件におけるポリマーの含有量が、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、0.001質量部~25質量部である、請求項1又は請求項2に記載の塗布膜形成用組成物。
【請求項4】
硬化膜に成形されたときの色差系で測定されるΔEが10以下であり、
前記硬化膜は、前記塗布膜形成用組成物を18mm×18mm、厚さ0.14mmのカバーガラスに厚さ約400μmになるようにスピンコートして硬化させて得られる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の塗布膜形成用組成物。
【請求項5】
1辺の長さまたは直径が10mm以下である微小領域に塗布される、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の塗布膜形成用組成物。
【請求項6】
インクジェット法又はディスペンサ法により前記微小領域に塗布される、請求項5に記載の塗布膜形成用組成物。
【請求項7】
硬化して塗布膜に形成されたときの前記塗布膜が、ガスセンサ感応膜に用いられる、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の塗布膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の塗布膜形成用組成物が硬化して形成された塗布膜。
【請求項9】
平均膜厚が0.5nm~50μmである、請求項8に記載の塗布膜。
【請求項10】
ガスセンサ感応膜として用いられる、請求項8又は請求項9に記載の塗布膜。
【請求項11】
センシング部を含むガスセンサであって、請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の塗布膜がセンシング部の上に形成された、ガスセンサ。
【請求項12】
前記塗布膜の1辺の長さまたは直径が10mm以下である、請求項11のガスセンサ。
【請求項13】
請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の塗布膜をガスセンサのセンシング部の上に形成する工程を有する、ガスセンサの製造方法。
【請求項14】
1辺の長さまたは直径が10mm以下である微小領域に前記塗布膜を塗布する、請求項13に記載のガスセンサの製造方法。
【請求項15】
インクジェット法又はディスペンサ法により、1辺の長さまたは直径が10mm以下である微小領域に前記塗布膜を塗布する、請求項13又は請求項14に記載のガスセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布膜形成用組成物、塗布膜、ガスセンサ、及びガスセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の構成部材中の液体及びスラリー材料を用いた薄膜や塗膜作成の方法として、スプレーコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット法等の種々印刷法や、ニードルディスペンサ法等の塗布方法が知られている。特に微細配線の形成パターン手段として、インクジェット法及びディスペンサ法の薄膜作製方法が広く普及している。
インクジェット法では、塗膜厚みの制御や高速印刷に優れる一方、使用可能な溶液粘度範囲が狭く、安定な液滴形成のための組成や、インクの蒸発条件を制御するための工夫がなされている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。ディスペンサ法では使用可能な粘度範囲が広く、ペースト状の組成物も塗布可能であるが、高速塗布や塗布量の制御に課題があり、広範囲への塗布には向かず、断線した配線などの修復に向いている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-001479号公報
【特許文献2】特開2010-082562号公報
【特許文献3】特開2018-090434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体及びMEMSで用いられるモノマー、ポリマー、又はポリマーコンポジットは、一般的にレジスト材料、絶縁膜、導電層等として用いられる場合が多い。例えば、フォトリソグラフィでは、レジスト材料はシリコン基板にスピンコート等で均一薄膜を形成させる。
一方、複雑な形状を有する回路基板やMEMS内に配線や感応膜等を任意の形状、サイズ、及び位置に配置しようとする場合、上述の方法では対応できないおそれがある。ポリマー等の溶液は、インクジェット法やニードルディスペンサ法のような微小領域(例えば、10mm×10mm)に塗布できる方式は限られているため、その精度や適応溶液を最適化する必要がある。一方で、インクジェット法では極低粘度の溶液しか塗布できないため、溶液種が限定される。
例えば、特許文献1に記載のインクジェット油性インクでは、吐出速度や最大吐出周波数のほか、溶液粘度、溶液密度、及び液滴径の制御により、安定して液滴を吐出する方法が開示されている。
特許文献2に記載のパターン形成方法では、基板の加熱によりパターン形成材料を滴下・乾燥させた後、塗布領域の溶液の蒸発速度の違いにより発生する膜厚の不均一部分に、更に溶液を吐出させパターンを均一化させている。
特許文献3には、ディスペンサでペースト材料の塗布する際、糸引きやノズル詰まりの発生しにくい材料が提案されている。
【0005】
上述したように、微小領域への配線やセンサ用感応膜等は、それぞれの用途や目的に応じたサイズ、厚み、形状が求められる。そのため、ディスペンサ法は、薄膜塗布方法として有用であるが、溶液および組成物に関しては、糸引きやノズル詰まりの発生しにくい溶液特性の点でいまだ改善の余地がある。特に、ポリマー溶液の製膜においては、感応膜が検知する物質に応じて設計するものであるから、通常のコーターなどによる塗膜形成方法では揮発しにくい溶液であっても、ピコリットル程度の液滴になると揮発しやすくなるなどが原因で安定な液滴形成が出来ず、薄膜形成が難しいケースが多々あるのが現状である。
【0006】
そのため、インクジェット法又はディスペンサ法によって、揮発しにくく、かつ安定な液滴を形成して、電子基材に微小塗布膜(例えば、10,000μm×10,000μm×50μm)を形成することができる塗布膜形成用組成物、塗布膜、ガスセンサ、及びガスセンサの製造方法が求められている。
【0007】
上記課題に鑑み、本開示の一実施形態は、電子基材に微小塗布膜を形成することができる塗布膜形成用組成物、塗布膜、ガスセンサ、及びガスセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、下記の実施態様が含まれる。
<1> モノマー又はポリマーを含み、
以下の(A)~(C)の条件の少なくとも1つを満たす、塗布膜形成用組成物。
(A)塗布膜形成用組成物が前記モノマー及び重合開始剤を含み、溶媒を含まず、
モノマーの全体の分子量が50以上であり、かつ、
モノマーの20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマーの沸点が105℃以上であること。
(B)塗布膜形成用組成物が前記モノマー、溶媒及び重合開始剤を含み、
モノマー及び溶媒の全体の分子量が50以上であり、かつ、
モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマー及び溶媒の各々の沸点が105℃以上であること。
(C)塗布膜形成用組成物が前記ポリマー及び溶媒を含み、
ポリマーの全体の重量平均分子量が10000以上であり、かつ、
溶媒の20℃における全体の密度が0.80g/cm3以上であるか又は溶媒の沸点が80℃以上であること。
<2> B型粘度計により測定した20℃における溶液粘度が0.5mPa・sec~2000mPa・secである、前記<1>に記載の塗布膜形成用組成物。
<3> 前記(C)の条件におけるポリマーの含有量が、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、0.001質量部~25質量部である、前記<1>又は<2>に記載の塗布膜形成用組成物。
<4> 硬化膜に成形されたときの色差系で測定されるΔEが10以下であり、
前記硬化膜は、前記塗布膜形成用組成物を18mm×18mm、厚さ0.14mmのカバーガラスに厚さ約400μmになるようにスピンコートして硬化させて得られる、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の塗布膜形成用組成物。
<5> 1辺の長さまたは直径が10mm以下である微小領域に塗布される、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の塗布膜形成用組成物。
<6> インクジェット法又はディスペンサ法により前記微小領域に塗布される、前記<5>に記載の塗布膜形成用組成物。
<7> 硬化して塗布膜に形成されたときの前記塗布膜が、ガスセンサ感応膜に用いられる、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の塗布膜形成用組成物。
<8> 前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の塗布膜形成用組成物が硬化して形成された塗布膜。
<9> 平均膜厚が0.5nm~50μmである、前記<8>に記載の塗布膜。
<10> ガスセンサ感応膜として用いられる、前記<8>又は<9>に記載の塗布膜。
<11> センシング部を含むガスセンサであって、前記<8>~<10>のいずれか1つに記載の塗布膜がセンシング部の上に形成された、ガスセンサ。
<12> 前記塗布膜の1辺の長さまたは直径が10mm以下である、前記<11>のガスセンサ。
<13> 前記<8>~<10>のいずれか1つに記載の塗布膜をガスセンサのセンシング部の上に形成する工程を有する、ガスセンサの製造方法。
<14> 1辺の長さまたは直径が10mm以下である微小領域に前記塗布膜を塗布する、前記<13>に記載のガスセンサの製造方法。
<15> インクジェット法又はディスペンサ法により、1辺の長さまたは直径が10mm以下である微小領域に前記塗布膜を塗布する、前記<13>又は<14>に記載のガスセンサの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電子基材に微小塗布膜を形成することができる塗布膜形成用組成物、塗布膜、ガスセンサ、及びガスセンサの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、材料中の各成分の量は、材料中の各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、材料中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
(1)塗布膜形成用組成物
本開示の塗布膜形成用組成物は、モノマー又はポリマーを含み、以下の(A)~(C)の条件の少なくとも1つを満たす。
条件(A):塗布膜形成用組成物がモノマー及び重合開始剤を含み、溶媒を含まず、モノマーの全体の分子量が50以上であり、かつ、
モノマーの20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマーの沸点が105℃以上であること。
条件(B):塗布膜形成用組成物がモノマー、溶媒及び重合開始剤を含み、
モノマー及び溶媒の全体の重量平均分子量が50以上であり、かつ、
モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマー及び溶媒の各々の沸点が105℃以上であること。
条件(C):塗布膜形成用組成物がポリマー及び溶媒を含み、
ポリマーの全体の重量平均分子量が10000以上であり、かつ、
溶媒の20℃における全体の密度が0.80g/cm3以上であるか又は溶媒の沸点が80℃以上であること。
【0013】
本開示において、条件(A)における「モノマーの全体の分子量」、「モノマーの20℃における全体の密度」、及び「モノマーの沸点」について、「モノマー」は、条件(A)の塗布膜形成用組成物に含まれるモノマーを示す。
本開示において、条件(A)における「モノマーの全体の分子量」とは、塗布膜形成用組成物に含まれる全モノマーの各々の分子量に、全モノマーの各々の質量分率を乗じたものを合計した値である。
本開示において、条件(A)における「モノマーの20℃における全体の密度」とは、塗料形成用組成物に含まれる全モノマーの各々の質量に基づいて、算出される値である。
本開示において、条件(A)における「モノマーの沸点」とは、1気圧のときの塗料形成用組成物に含まれる全モノマーの各々の沸点を示す。
本開示において、条件(B)における「モノマー及び溶媒の全体の分子量」、「モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度」、及び「モノマー及び溶媒の各々の沸点」について、「モノマー」は、条件(B)の塗布膜形成用組成物に含まれるモノマーを示し、「溶媒」は、条件(B)の塗布膜形成用組成物に含まれる溶媒を示す。
本開示において、条件(B)における「モノマー及び溶媒の全体の分子量」とは、塗布膜形成用組成物に含まれる全モノマー及び全溶媒の各々の分子量に、全モノマー及び全溶媒の各々の質量分率を乗じたものを合計した値である。
本開示において、条件(B)における「モノマーの20℃における全体の密度」とは、塗料形成用組成物に含まれる全モノマー及び全溶媒の各々の質量に基づいて、算出される値である。
本開示において、条件(B)における「モノマーの及び溶媒の各々の沸点」とは、1気圧のときの塗料形成用組成物に含まれる全モノマー及び全溶媒の各々の沸点を示す。
本開示において、条件(C)における「ポリマーの全体の重量平均分子量」、「溶媒の20℃における全体の密度」、及び「溶媒の沸点」について、「ポリマー」は、条件(C)の塗布膜形成用組成物に含まれるポリマーを示し、「溶媒」は、条件(C)の塗布膜形成用組成物に含まれる溶媒を示す。
本開示において、条件(C)における「ポリマーの全体の重量平均分子量」とは、塗布膜形成用組成物に含まれる全ポリマーの重量平均分子量の測定値を示す。
本開示において、条件(C)における「溶媒の20℃における全体の密度」とは、塗布膜形成用組成物に含まれる全ポリマー及び全溶媒の各々の質量に基づいて、算出される値である。
本開示において、条件(C)における「溶媒の沸点」とは、1気圧のときの塗布膜形成用組成物に含まれる全溶媒の各々の沸点を示す。
【0014】
本開示の塗布膜形成用組成物は、上記の構成を有するので、電子基材に微小塗布膜(例えば、10,000μm×10,000μm×50μmt)を形成することができる。詳しくは、本開示の塗布膜形成用組成物は、例えば、インクジェット法又はディスペンサ法によって、電子基材に塗布される際、揮発しにくく、かつ安定な液滴を形成して、電子基材に微小塗布膜を形成することができる。
【0015】
本開示の塗布膜形成用組成物は、モノマー、ポリマー、またポリマーコンポジットを含む液状組成物であり、例えば、半導体およびMEMSで用いられるレジスト材料、絶縁膜、導電層、保護層、感応膜等として用いられる。一般的に、半導体やMEMSに使用される有機材料およびそのコンポジット材料は、半導体・MEMSの製造工程や素子を汚染する可能性があることから、ポリイミド系レジスト材料やエポキシ系絶縁膜等、特定用途以外での使用が限られている。一方で、半導体やMEMSの特定の微小領域に精度よく塗布膜を形成できる方法があれば素子の汚染の恐れは低減される。本開示の塗布膜形成用組成物の液滴量がピコリットル~数マイクロリットル程度に塗布できるディスペンサ法は優れた塗布膜を形成できると推測される。
上記塗布方法を用いて微小領域に塗布膜を形成する際、塗布膜形成用組成物の物性が液滴の吐出可否および均一塗布膜の作製に大きく影響する。上記方法においては、ノズルやニードルから吐出される液滴量がフェムトリットルからピコリットルとごく微量である。このため、溶媒の沸点や密度が実使用環境下で充分に高く、電子基材への塗布膜形成時に揮発や糸引きを起こすことなく吐出され、かつ電子基材に着弾するまで揮発や糸引きなく液滴を維持する必要がある。バルクとして揮発しにくくても、表面積の大きいミストや液滴の場合は塗布膜形成の前に塗布膜形成用組成物が揮発することがある。本検討を実施した結果、本開示の塗布膜形成用組成物であれば、安定的な液滴が形成され、吐出や塗布膜形成が可能となり、微小領域であっても均一な塗布膜を得ることができる。
【0016】
本開示において、微小領域の定義としては、半導体・MEMS等電子素子上の塗布膜形成用組成物の塗布範囲のうち1辺または直径が10mm以下、好ましくは0.5μm~10mm、より好ましくは1μm~10mm、更に好ましくは3μm~8.0mm、最も好ましくは5μm~6.0mmである。微小領域が上記範囲内であれば、インクジェット法やディスペンサ法で本開示の塗布膜形成用組成物を塗布することが容易で、コスト的に優れる。
微小領域の形状は、多角形又は円形であることが好ましい。多角形としては、三角形、正方形、長方形、五角形等が挙げられる。
【0017】
インクジェット法又はディスペンサ法においては、特に、揮発しにくく、かつ安定な液滴を形成して、電子基材に微小塗布膜を形成することは容易であり、上記のとおり本開示の塗布膜形成用組成物によれば、電子基材に塗布される際、揮発しにくく、かつ安定な液滴を形成して、電子基材に微小塗布膜を形成することができる。そのため、本開示の塗布膜形成用組成物はインクジェット法又はディスペンサ法により微小領域に塗布されることが好適である。
【0018】
本開示の塗布膜形成用組成物は、モノマー又はポリマーを含む。
モノマー又はポリマーの詳細については後述する。
【0019】
(1.1)条件(A)
条件(A)では、塗布膜形成用組成物がモノマー及び重合開始剤を含み、溶媒を含まず、モノマーの全体の重量平均分子量が50以上であり、かつ、モノマーの20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマーの沸点が105℃以上である。
条件(A)を満たす場合、本開示の塗布膜形成用組成物は、電子基材に微小塗布膜を形成することができる。詳しくは、本開示の塗布膜形成用組成物は、例えば、インクジェット法又はディスペンサ法によって、電子基材に塗布される際、吐出又は塗布がされやすく、安定な液滴を形成することができ、電子基材に塗布された後のにじみの発生を回避することができる。
【0020】
(1.1.1)物性
条件(A)では、モノマーの全体の分子量は、50以上であり、好ましくは60以上、更に好ましくは70以上、最も好ましくは90以上である。モノマーの全体の分子量は、1000以下、750以下、500以下等であってもよい。モノマーの全体の分子量は、その構造式から算術計算した値である。
条件(A)では、モノマーの20℃における全体の密度は、好ましくは1.00g/cm3以上であり、より好ましくは1.01g/cm3以上、更に好ましくは1.02g/cm3以上、最も好ましくは1.03g/cm3以上である。モノマーの20℃における全体の密度は、1.50g/cm3以下、1.30g/cm3以下、1.10g/cm3以下等であってもよい。モノマーの20℃における全体の密度は、モノマー全体の質量及び体積から算術計算した値である。
条件(A)では、モノマーの沸点は、好ましくは105℃以上であり、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である。モノマーの沸点は、600℃以下、500℃以下、400℃以下等であってもよい。モノマーの沸点は、カタログ値、又はガスクロマトグラフ法蒸留試験法(JIS K 2254)による測定値である。
【0021】
(1.1.2)モノマー
条件(A)では、本開示の塗布膜形成用組成物は、安定な液滴形成及び着弾後の寸法精度の良い微小塗布膜を得る観点からは、ポリマーの前駆体であるモノマーを含有する。
条件(A)におけるモノマーとしては、例えば、ラジカル重合可能なモノマーが挙げられ、より具体的には、ビニル化合物やビニリデン化合物が挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド誘導体、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)等が挙げられる。条件(A)におけるモノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
条件(A)では、モノマーの含有量は、特に限定されない。モノマーの含有量の上限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは99.9質量部以下である。モノマーの含有量の下限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは90質量部以上、より好ましくは95質量部以上、さらに好ましくは98質量部以上である。
【0022】
(1.1.3)重合開始剤
条件(A)では、本開示の塗布膜形成用組成物は、重合開始剤を含有する。
条件(A)における重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が挙げられるが、塗膜の熱ダメージを減らすため、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α-アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、有機色素系化合物、鉄-フタロシアニン系、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、およびアントラキノン類等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は単独で用いても良いし、複数含んでいてもよい。光重合開始剤のより具体的な例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、フェニルビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
条件(A)における重合開始剤の含有量は、特に限定されない。重合開始剤の含有量の上限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。重合開始剤の含有量の下限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上である。
【0023】
(1.2)条件(B)
条件(B)では、塗布膜形成用組成物がモノマー、溶媒、及び重合開始剤を含み、モノマー及び溶媒の全体の分子量が50以上であり、かつ、モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度が1.00g/cm3以上であるか又はモノマー及び溶媒の各々の沸点が105℃以上である。
条件(B)を満たす場合、本開示の塗布膜形成用組成物は、電子基材に微小塗布膜を形成することができる。詳しくは、本開示の塗布膜形成用組成物は、例えば、インクジェット法又はディスペンサ法によって、電子基材に塗布される際、吐出又は塗布がされやすく、安定な液滴を形成することができ、電子基材に塗布された後のにじみの発生を回避することができる。
【0024】
(1.2.1)物性
条件(B)では、モノマー及び溶媒の全体の分子量は、50以上であり、好ましくは60以上、更に好ましくは70以上、最も好ましくは90以上である。モノマー及び溶媒の全体の分子量は、1000以下、750以下、500以下等であってもよい。モノマー及び溶媒の全体の分子量は、構造式算術計算した値である。
条件(B)では、モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度は、好ましくは1.00g/cm3以上であり、より好ましくは1.01g/cm3以上、更に好ましくは1.02g/cm3以上、最も好ましくは1.03g/cm3以上である。モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度は、1.50g/cm3以下、1.30g/cm3以下、1.10g/cm3以下等であってもよい。モノマー及び溶媒の20℃における全体の密度は、モノマー及び溶媒の全体の質量及び体積から算術計算した値である。
条件(B)では、モノマー及び溶媒の各々の沸点は、好ましくは105℃以上であり、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である。モノマー及び溶媒の各々の沸点は、600℃以下、500℃以下、400℃以下等であってもよい。モノマー及び溶媒の沸点は、カタログ値又はガスクロマトグラフ法蒸留試験法(JIS K 2254)による測定値である。
【0025】
(1.2.2)モノマー
条件(B)では、本開示の塗布膜形成用組成物は、安定な液滴形成及び着弾後の寸法精度の良い微小塗布膜を得る観点からは、ポリマーの前駆体であるモノマーを含有する。
条件(B)におけるモノマーとしては、例えば、ラジカル重合可能なモノマーが挙げられ、ビニル化合物やビニリデン化合物が挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリレート系モノマー、(α-メチル)スチレン系モノマー、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド誘導体、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)等が挙げられる。また、条件(B)の場合、溶媒として密度、沸点、分子量が条件(B)より大きく上回るものを使用することで、モノマーとしてのみでは条件(B)を満たさないものも使用可能である。条件(B)におけるモノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
条件(B)では、モノマーの含有量は、特に限定されない。モノマーの含有量の上限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは99.9質量部以下、より好ましくは99.0質量部以下、さらに好ましくは90.0質量部以下である。モノマーの含有量の下限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上である。
【0026】
(1.2.3)溶媒
条件(B)では、塗布膜形成用組成物は、溶媒を含有する。塗布膜形成用組成物が溶媒を含有することで、塗布膜形成用組成物の粘度や密度は調整され得る。
条件(B)における溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n-ヘプタン、n-オクタン、デカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、p-ジオキサンなどのエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を挙げることができる。これらのうち、条件(B)における溶媒としては、安定な液滴形成と着弾後の良好な塗布膜形成の点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、カルボニル系化合物、アミド系化合物が好ましく、更に好ましい溶媒としては、水、炭化水素系化合物、アミド化合物類、カルボニル化合物類を挙げることができる。条件(B)における溶媒としては、特に水、グリセロール添加水、キシレン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。これらの溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としてもよい。
条件(B)では、溶媒の含有量は、特に限定されない。溶媒の含有量の上限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは99質量部以下、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下である。溶媒の含有量の下限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。
【0027】
(1.2.4)重合開始剤
条件(B)では、塗布膜形成用組成物は、重合開始剤を含有する。
条件(B)における重合開始剤としては、条件(A)における重合開始剤として例示したものと同様のものが挙げられる。
条件(B)における重合開始剤の含有量は、特に限定されず、条件(A)における重合開始剤の含有量として例示した含有量と同様であることが好ましい。
【0028】
(1.3)条件(C)
条件(C)では、塗布膜形成用組成物がポリマー及び溶媒を含み、ポリマーの全体の重量平均分子量が10000以上であり、かつ、溶媒の20℃における全体の密度が0.80g/cm3以上であるか又は溶媒の沸点が80℃以上である。
条件(C)を満たす場合、本開示の塗布膜形成用組成物は、電子基材に微小塗布膜を形成することができる。詳しくは、本開示の塗布膜形成用組成物は、例えば、インクジェット法又はディスペンサ法によって、電子基材に塗布される際、吐出又は塗布がされやすく、安定な液滴を形成することができ、電子基材に塗布された後のにじみの発生を回避することができる。
【0029】
(1.3.1)物性
条件(C)では、ポリマーの全体の重量平均分子量(Mw)は、10000以上であり、好ましくは11000以上、更に好ましくは12000以上、最も好ましくは13000以上である。ポリマーの全体の重量平均分子量(Mw)は、1500000以下、1000000以下、500000以下等であってもよい。ポリマーの全体の重量平均分子量(Mw)の測定方法は、実施例に記載の測定方法と同様である。
条件(C)では、溶媒の20℃における全体の密度は、好ましくは0.80g/cm3以上であり、好ましくは0.82g/cm3以上、更に好ましくは0.83g/cm3以上、最も好ましくは0.85g/cm3以上である。また、溶媒の20℃における全体の密度は、1.50g/cm3以下、1.30g/cm3以下、1.10g/cm3以下等であってもよい。溶媒の20℃のおける全体の密度は、溶媒の質量及び体積から算術計算した値である。
条件(C)では、溶媒の沸点は、好ましくは85℃以上であり、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上、最も好ましくは100℃以上である。溶媒の沸点は、500℃以下、400℃以下、300℃以下等であってもよい。溶媒の沸点は、カタログ値又はガスクロマトグラフ法蒸留試験法(JIS K 2254)による測定値である。
【0030】
(1.3.2)ポリマー
条件(C)では、本開示の塗布膜形成用組成物は、安定な液滴形成及び着弾後の寸法精度の良い微小塗布膜を得る観点からは、ポリマーを含有する。
条件(C)におけるポリマーの種類としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の合成樹脂、及び生体高分子等の天然由来樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等)、ポリオレフィン系ワックス(例えば、ポリエチレンオリゴマー、ポリプロピレンオリゴマー等)、ポリサルファイド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、エラストマー(例えば、ポリオレフィン系エラストマー、水添スチレン系ブロック共重合体、水添スチレン系ランダム共重合体等)、スーパーエンジニアリングプラスチック(例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン等)、シンジオタクティックポリスチレン等が挙げられる。熱可塑性樹脂は2種類以上のコモノマーからなる共重合化合物、グラフト重合化合物、又はリビングラジカル重合法等から合成されるブロック重合化合物であってもよい。
熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。塗布膜形成用組成物が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含む場合、硬化前のモノマー及び開始剤等を混合し、その直後に混合物を収容空間に充填し、熱又は光によって混合物を硬化させることにより塗布膜を形成してもよい。
なかでも、ポリマーは、ポリオレフィンエラストマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンイミン、ポリメチルメタクリレート、又はポリスチレンが好ましい。
【0031】
ポリマーの含有量は、特に限定されず、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部~25質量部、より好ましくは0.002質量部~23質量部、更に好ましくは0.003質量部~22.5質量部、最も好ましくは0.005質量部~22質量部である。
ポリマーの含有量が上記範囲内であれば、本開示の塗布膜形成用組成物は、均一な塗布膜を形成しやすく、液滴の生成・吐出・塗布が容易となる。
【0032】
(1.3.3)溶媒
条件(C)では、塗布膜形成用組成物は、溶媒を含有する。塗布膜形成用組成物が溶媒を含有することで、ポリマーの粘度は調整され得る。
条件(C)における溶媒としては、条件(B)における溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、条件(C)における溶媒としては、安定な液滴形成と着弾後の良好な塗布膜形成の点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、カルボニル系化合物、アミド系化合物が好ましく、更に好ましい溶媒としては、水、炭化水素系化合物、アミド化合物類、カルボニル化合物類を挙げることができる。条件(C)における溶媒としては、特に水、グリセロール添加水、キシレン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。これらの溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としてもよい。
条件(C)では、溶媒の含有量は、特に限定されない。溶媒の含有量の上限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは99質量部以下、より好ましくは97質量部以下、さらに好ましくは95質量部以下である。溶媒の含有量の下限は、塗布膜形成用組成物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。
【0033】
(1.4)塗布膜形成用組成物の物性等
(1.4.1)溶液粘度
本開示の塗布膜形成用組成物のB型粘度計を用いて20℃で測定した時の溶液粘度は、特に限定されない。
本開示の塗布膜形成用組成物の溶液粘度の上限は、好ましくは2000mPa・sec以下、より好ましくは1000mPa・sec以下、さらに好ましくは500mPa・sec以下、最も好ましくは350mPa・sec以下である。
本開示の塗布膜形成用組成物の溶液粘度の下限は、好ましくは0.5mPa・sec以上、より好ましくは1mPa・sec以上、さらに好ましくは5mPa・sec以上、最も好ましくは10mPa・sec以上である。
本開示の塗布膜形成用組成物の溶液粘度が上記範囲内であれば、本開示の塗布膜形成用組成物は、例えば、インクジェット法又はディスペンサ法によって、電子基材に塗布される際、吐出又は塗布がされやすく、より安定な液滴を形成することができ、電子基材に塗布された後のにじみの発生をより回避することができる。
本開示の塗布膜形成用組成物の溶液粘度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0034】
(1.4.2)式差(ΔE)
本開示の塗布膜形成用組成物が硬化膜に成形されたときの色差系で測定されるΔEは、特に限定されない。硬化膜は、塗布膜形成用組成物を18mm×18mm、厚さ0.14mmのカバーガラスに厚さ約400μmになるようにスピンコートして硬化させて得られる。
ΔEの上限は、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
ΔEの下限は、例えば、0であってもよい。
ΔEが上記範囲内であれば、得られる微小塗布膜は透明性が低く、光吸収による影響を受けやすくなる。
ΔEが10以下であることは、例えば、本開示の塗布膜形成用組成物は、インクジェット法等に用いられる塗料に含まれる顔料を含有しないことを意味する。
ΔEの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0035】
(1.4.3)添加剤
本開示の塗布膜形成用組成物は、金属、セラミックス等の無機材料、カーボン材料、低分子化合物(パラフィン、グリセロール等)の添加剤を含んでもよい。ただし、本開示の塗布膜形成用組成物は、添加剤として顔料を含まないことが好ましい。
【0036】
無機材料としては、例えば、ガラス繊維、単結晶シリコン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、及び無機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、無定形フィラー(例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム等)、板状フィラー(例えば、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ガラスフレーク等)、針状フィラー(例えば、ワラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム等)、導電性フィラー(例えば、金属粉、金属フレーク、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、ペロブスカイト化合物(チタン酸ストロンチウム等)、ガラスビーズ、ガラス粉、アパタイト、ハイドロキシアパタイト及びゼオライトが挙げられる。無機フィラーは、表面が炭素等で被覆されていてもよく、シランカップリング処理等が施されていてもよい。
【0037】
カーボン材料としては、カーボン繊維、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、グラファイト等が挙げられる。
【0038】
本開示の塗布膜形成用組成物は、金属有機構造体(MOF;Metal Organic Frameworks)等の合成された多孔質体を含んでもよい。金属有機構造体は、多孔性配位高分子と呼ばれてもよい。例えば、金属有機構造体は、Basolite(登録商標)C300(BASF社製)等であってよい。
【0039】
本開示の塗布膜形成用組成物が樹脂を含む微量液滴の場合、液滴形成の条件は溶液密度、沸点、分子量および分子量分布、粘度、表面張力等の物性、沸点上昇に関係する副次成分の種類等の影響を受けるため、所望の液性が得られるようにこれらを選択することが好ましい。
【0040】
本開示の塗布膜形成用組成物の密度を大きくする、あるいは沸点上昇させる具体的な方法としては、例えば、使用する溶媒やモノマー、またはポリマーの密度が1.00g/cm3よりも大きい及び/または沸点が100℃以上であるものを選択する方法、溶液に相溶し、かつ密度または沸点上昇させるような添加剤(例えば、グリセロール等)を添加する方法等が挙げられる。
【0041】
本開示の塗布膜形成用組成物を支持体の表面に形成する方法は、微小領域に特定の膜厚で均一に塗布することから、ディスペンサ法を用いて成膜することが好ましい。MEMSのような素子へ塗布膜を形成する場合、微小領域としては平面だけでなく、段差、凹凸、曲面のある複雑な形状への塗布することが可能である。
【0042】
本開示の塗布膜形成用組成物は、硬化して塗装膜に形成されたときの塗装膜が、ガスセンサ感応膜に用いられることが好ましい。
塗装膜については、後述する。
ガスセンサ感応膜としては、特定のガスを吸着等して質量や体積、電導度等が変化する変化体等の性質を有するものであってもよい。変化体が吸着等するガスの種類は、変化体の原料に依存する。
変化体としては、例えば、国際公開2019-188164号公報、又は特開2019-174331号公報に記載の体積変化体等が挙げられる。
ガスセンサ及びセンシング部の簡単な例示をお願いします
【0043】
本開示の塗布膜形成用組成物を塗布膜にしたときに、塗布膜の気体と接触する面における臨界表面張力は、特に限定されない。塗布膜の臨界表面張力の上限は、好ましくは36dynes/cm以下、より好ましくは35dynes/cm以下、更に好ましくは34dynes/cm以下である。塗布膜の臨界表面張力の下限値は、好ましくは15dynes/cm以上である。本開示において塗布膜の臨界表面張力は、Zismannプロット方法で測定される。
【0044】
(1.5)塗布膜
本開示の塗布膜は、本開示の塗布膜形成用組成物が硬化して形成されている。
【0045】
本開示の塗布膜の平均膜厚は、特に限定されず、好ましくは0.5nm~50μm、より好ましくは1nm~25μm、更に好ましくは2nm~10μmである。
本開示の塗布膜が上記範囲内であれば、より均一な薄膜であり、ガスセンサ感応膜、分離膜または保護膜としての効果を十分に発揮することができる。
本開示の塗布膜の平均膜厚の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0046】
本開示の塗布膜は、ガスセンサ感応膜として用いられることが好ましい。
ガスセンサ感応膜については、国際公開2019-188164号公報、特開2019-174331号公報を参照することができる。
【0047】
(1.6)ガスセンサ
本開示のガスセンサは、センシング部を含むガスセンサであって、本開示の塗布膜がセンシング部の上に形成されている。
ガスセンサとしては、例えば、応力センサ、質量センサ等が挙げられる。また、ガスセンサとしては、国際公開2019-188164号公報、特開2019-174331号公報に記載のセンサ等であってもよい。
【0048】
本開示のガスセンサでは、塗布膜の1辺の長さまたは直径が10mm以下であることが好ましい。
塗布膜の形状は、多角形又は円形であることが好ましい。多角形としては、三角形、正方形、長方形、五角形等が挙げられる。
【0049】
(1.7)ガスセンサの製造方法
本開示のガスセンサの製造方法は、本開示の塗布膜をガスセンサのセンシング部の上に形成する工程を有する。
本開示のガスセンサの製造方法については、国際公開2019-188164号公報、特開2019-174331号公報を参照することができる。
【0050】
本開示のガスセンサの製造方法では、1辺の長さまたは直径が10mm以下である微小領域に塗布膜を塗布することが好ましい。
【0051】
本開示のガスセンサの製造方法では、インクジェット法又はディスペンサ法により前記微小領域に塗布膜を塗布することが好ましい。
【実施例0052】
以下、本開示を実施例により説明するが、本開示は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0053】
<塗布膜形成用組成物の準備>
塗布膜形成用組成物として、モノマー溶液A~F、及びポリマー溶液A~Gを準備した。モノマー溶液A~Fについては、各モノマー溶液100重量部に対し、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Ciba(登録商標)IRGACURE(登録商標) 819)を1重量部添加したものを使用した。
【0054】
モノマー溶液A:Dimethylol tricyclodecane diacrylate(「ライトアクリレートDCP-A」、共栄社化学株式会社)モノマー溶液
モノマー溶液B:3-(Acryloyloxy)-2-Hydroxypropyl Methacrylate(「ライトエステルG-201P」、共栄社化学株式会社)モノマー溶液
モノマー溶液C:Mono(2-acryloyloxyethyl) succinate(「ライトアクリレートHOA―MS(N)」、共栄社化学株式会社)モノマー溶液
モノマー溶液D:メチルメタクリレート(MMA、シグマ-アルドリッチ社)モノマー溶液
モノマー溶液E:メチルシクロヘキサン(シグマ-アルドリッチ社)溶媒
モノマー溶液F:水(蒸留水)
【0055】
ポリマー溶液A:ポリオレフィンエラストマー(国際公開2004/087775号に記載の方法にて重合、重量平均分子量150,000)の3質量%トルエン溶液
ポリマー溶液B:ポリフッ化ビニリデン(PVDF、シグマ-アルドリッチ社、重量平均分子量180,000)の10質量%シクロヘキサノン溶液
ポリマー溶液C:ポリエチレンイミン(PEI、富士フイルム和光純薬株式会社、重量平均分子量70,000)の25質量%水溶液
ポリマー溶液D:ポリメチルメタクリレート(PMMA、富士フイルム和光純薬株式会社、重量平均分子量15,000)の25質量%(N-メチル-2-ピロリドン)NMP溶液
ポリマー溶液E:ポリスチレン(PS、シグマ-アルドリッチ社、重量平均分子量35,000)の1質量%N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液
ポリマー溶液F:ポリビニルクロライド(PVC、シグマ-アルドリッチ社、重量平均分子量43,000)の10質量%ヘキサン溶液
ポリマー溶液G:ポリオレフィン(特開2003-147010号公報に記載の方法にて重合、重量平均分子量1,200)の5質量%キシレン溶液
【0056】
<塗布膜形成用組成物の各物性の測定条件等>
塗布膜形成用組成物の各物性の測定条件等は、以下のとおりである。
【0057】
塗布膜形成用組成物のモノマー及び溶媒の分子量、沸点、並びに密度は、カタログ値を用いた。
【0058】
塗布膜形成用組成物の溶液粘度は、B型粘度計(コーンプレート型粘度計CPA-52Z、英弘精機社)を用いて20℃、剪断速度2.0N/secで測定した。
【0059】
塗布膜の平均膜厚は、白色干渉式非接触型膜厚測定装置(FILMETRICS(R))を用いて、3点を測定した測定値の平均値である。
【0060】
塗布膜形成用組成物に含まれるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、以下の方法により測定した。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記の条件で測定される。
<GPCの条件>
装置 :ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤 :o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速 :1.0mL/分
試料 :0.15mg/mL o-ジクロロベンゼン溶液
温度 :140℃
分子量換算:PE換算/汎用較正法
【0061】
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark-Houwink粘度式の係数を用いた。
ポリスチレン(PS)の係数:KPS=1.38×10-4、aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数:KPE=5.06×10-4、aPE=0.70
【0062】
分子量が大きいと溶媒和の効果が大きく溶媒沸点が低くても沸点上昇の度合いが大きくなり、揮発の影響が小さくなる。また、分子量分布が広い場合には、ポリマー濃度が小さくても粘度上昇の効果が大きくなるため、適正な吐出条件範囲から外れる場合がある。
【0063】
塗布膜形成用組成物の色相は、以下のように測定した。18mm×18mm、厚さ0.14mmのカバーガラス(マツナミカバーグラスNo.1)に厚さ約400μmになるようにスピンコートした塗布膜の色相を、Colour Cute i 型式CC-i(スガ試験機株式会社製)を用い、反射モードを用いて色差(ΔE)測定を行った。
【0064】
<実施例1>
ディスペンサ方式の塗布装置として、NTN株式会社製の卓上型微細塗布装置NRS-3018(Fine Pasting System)及び高繰返塗布針HR-100(塗布針直径100μm)を使用した。
塗布膜形成用組成物として、モノマー溶液Aを用いた。
評価のための電子基材の例として、カンチレバー(NPX1CTP004、株式会社日立ハイテク、またはOMCL―AC240―TN―C3、オリンパス株式会社)を使用した。
カンチレバーのステージ部に、塗布膜形成用組成物を塗布して、「トランスルックス(登録商標)2ウエーブ」(クルツァージャパン株式会社製)を用いLED照射を行い、微小塗布膜(直径100μm、厚さ約100nm)を形成した。
【0065】
<塗布膜形成用組成物の塗布膜形成評価(ディペンサ法)>
塗布膜形成用組成物をディスペンサ方式の塗布装置を用いて電子基材に塗布した際、塗布された塗布膜形成用組成物の外観を目視によって確認した。塗布された塗布膜形成用組成物の外観に基づいて、下記の基準で、微小塗布膜を形成できか否かを評価した。許容できる評価は「A」である。
A:液滴が吐出され、かつ、揮発せずに塗布膜を形成できた。
B:液滴が吐出できなかったか、あるいは液滴を吐出できたものの揮発により液滴として着弾に至らず塗布膜が形成できなかった。
【0066】
<塗布膜形成用組成物の塗布膜形成評価(インクジェット法)>
塗布膜形成用組成物をダイマティックス・マテリアルプリンター(FUJIFILM Dimatix社製の「DMP-2831」)(吐出条件:26V、5kHz)を用いて電子基材に塗布した際、塗布された塗布膜形成用組成物の外観を目視によって確認した。塗布された塗布膜形成用組成物の外観に基づいて、下記の基準で、微小塗布膜を形成できたか否かを評価した。許容できる評価は「A」である。
A:液滴が吐出され、かつ、揮発せずに塗布膜を形成できた。
B:液滴が吐出できなかったか、あるいは液滴を吐出できたものの揮発により液滴として着弾に至らず塗布膜が形成できなかった。
【0067】
評価結果を表1に示す。
【0068】
<実施例2~実施例8、比較例1~比較例5>
塗布膜形成用組成物として、モノマー溶液Aの代わりに、表1に記載のモノマー溶液又は表2に記載のポリマー溶液を用いた他は、実施例1と同様にして、微小塗布膜を形成できたか否かを評価した。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
表1中、「DTA」はジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを示し、「AHM」は3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを示し、「MAS」はコハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)を示し、「MMA」はメチルメタクリレートを示し、「MCH」はメチルシクロヘキサンを示す。
表2中、「PO elastmer」は、ポリオレフィンエラストマーを示し、「PVDF」はポリフッ化ビニリデンを示し、「PEI」はポリエチレンイミンを示し、「PMMA」はポリメチルメタクリレートを示し、「NMP」はN-メチル-2-ピロリドンを示し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを示し、「軟質PVC」はポリビニルクロライドを示す。
【0072】
表1の結果に示すように、塗布膜形成用組成物のモノマーの分子量および沸点または密度が請求項1を満たす実施例1~実施例3の塗布膜形成用組成物はディスペンサ法での電子基材への微小塗布膜形成が可能であった。
塗布膜形成用組成物のモノマーの分子量および沸点または密度が請求項を満たさない比較例1~比較例3の塗布膜形成用組成物は、ディスペンサ法での電子基材への微小塗布膜形成ができなかった。
【0073】
表2の結果に示すように、塗布膜形成用組成物のポリマーの分子量および、溶媒の沸点または密度が請求項1を満たす実施例4~実施例8の塗布膜形成用組成物はディスペンサ法での電子基材への微小塗布膜形成が可能であった。
塗布膜形成用組成物のポリマーの分子量および、溶媒の沸点または密度が請求項を満たさない比較例4~比較例5の塗布膜形成用組成物は、ディスペンサ法での電子基材への微小塗布膜形成ができなかった。
【0074】
これらのことから、塗布膜形成用組成物が請求項1に規定の条件(A)~(C)のいずれか1つを満たすことにより、電子基材に微小塗布膜を形成することができることがわかった。