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特開2023-34668製麹支援システム及び製麹支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034668
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】製麹支援システム及び製麹支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20230306BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230306BHJP
   C12M 1/16 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C12M1/34 A
G06N20/00 130
C12M1/16 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141006
(22)【出願日】2021-08-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1. 令和2年9月1日に、下記アドレスのウェブサイトで公開された令和2年度日本醸造学会大会一般講演要旨にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。また、令和2年11月16日に発行された日本醸造協会誌2020年11月号にて、同内容について公開した。 https://www.jozo.or.jp/gakkai/competition/y2020/ 2. 令和2年10月21日から同年同月27日にかけて開催された令和2年度日本醸造学会大会(WEB開催)にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。 3. 令和2年11月30日に発行された日経研月報2020年12月号にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。また、令和2年12月1日に、下記アドレスのウェブサイトで公開された一般財団法人日本経済研究所のウェブサイトにて、同内容について公開した。 https://www.jeri.or.jp/ 4. 令和3年2月22日に、下記アドレスの株式会社日本経済新聞社のウェブサイトにて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。また、令和3年2月23日に発行された日本経済新聞にて、同内容について公開した。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJB1761Q0X10C21A2000000/ 5. 令和3年3月27日に放送されたRSK山陽放送「茂木健一郎の超域オンリーワン岡山」にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 6. 令和3年4月1日に発行された食品産業新聞の令和3年4月1日付第4806号第4面にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。 7. 令和3年4月9日に発行された酒類飲料日報の令和3年4月9日付第14185号にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。 8. 令和3年4月20日から同年5月20日にかけて開催された令和3年度清酒製造技術セミナー(WEB開催)にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。 9. 令和3年4月22日に、下記アドレスのウェブサイトで公開されている動画共有サービス「YouTube」にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。 https://www.youtube.com/watch?v=5NQrbZ1NW1Y 10.令和3年5月28日に発行された醸界タイムスの令和3年5月28日付第6面にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 11.令和3年5月31日に発行されたFOOMA技術ジャーナルのVol.16 No.1にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。 12.令和3年6月1日に、下記アドレスの株式会社知財図鑑のウェブサイトにて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。 https://chizaizukan.com/property/316/ 13.令和3年6月23日に開催された岡山大学工学部向けオンライン講義「情報化社会と技術」(WEB開催)にて、製麹支援システム及び製麹支援プログラムを公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000223931
【氏名又は名称】株式会社フジワラテクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 彰一
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜徳
(72)【発明者】
【氏名】森 章
(72)【発明者】
【氏名】狩山 昌弘
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B029BB20
4B029CC03
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済みモデルを用いて、麹の出来に対して再現性良く判定結果を出し、製麹を支援する。
【解決手段】教師用麹1粒破精データと、教師用麹1粒破精データに対応する複数のクラスに分類した教師用麹1粒クラスラベルとを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルに対し、任意の麹1粒破精データを入力して、任意の麹1粒破精データに対応する麹1粒クラスを推定することにより、麹の出来に対して再現性良く判定結果を出し、製麹を支援することを可能にしている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する製麹支援システムであって、
教師用麹1粒破精データと、
前記教師用麹1粒破精データに対応する複数のクラスに分類した教師用麹1粒クラスラベルとを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルに対し、
任意の麹1粒破精データを入力して、前記任意の麹1粒破精データに対応する麹1粒クラスを推定することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項2】
製麹条件から破精分布を予測する製麹支援システムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として前記請求項1に記載の学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布とを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み破精分布予測モデルに対し、
任意の製麹条件を入力して、破精分布を予測することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項3】
製麹条件から麹複数粒破精データを予測する製麹支援システムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された教師用麹複数粒破精データとを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、
任意の製麹条件を入力して、麹複数粒破精データを予測することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項4】
製麹条件及び破精分布から麹の酵素力価を予測する製麹支援システムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として前記請求項1に記載の学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、
任意の製麹条件及び前記任意の製麹条件に対応した破精分布を入力して、酵素力価を予測することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項5】
製麹条件及び麹複数粒破精データから麹の酵素力価を予測する製麹支援システムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された教師用麹複数粒破精データと、
前記教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、
任意の製麹条件及び前記任意の製麹条件に対応した麹複数粒破精データを入力して、酵素力価を予測することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項6】
検索条件に対して製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する製麹支援システムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項2に記載の学習済み破精分布予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の破精分布とにより構成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを作成し、
破精分布を構成する任意の各麹クラスの比率データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項7】
検索条件に対して製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出する製麹支援システムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項3に記載の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の麹複数粒破精データとにより構成された製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを作成し、
麹複数粒破精データを構成する任意の各破精データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項8】
検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する製麹支援システムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項4に記載の第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件と、前記データベース構成用の製麹条件を入力として前記請求項2に記載の学習済み破精分布予測モデルにより出力された破精分布とを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、
酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項9】
検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する製麹支援システムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項5に記載の第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件と、前記データベース構成用の製麹条件を入力として前記請求項3に記載の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルにより出力された麹複数粒破精データとを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、
酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出することを特徴とする製麹支援システム。
【請求項10】
前記目標データの個数を増やしたことを特徴とする請求項6乃至9に記載の製麹支援システム。
【請求項11】
麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
教師用麹1粒破精データと、
前記教師用麹1粒破精データに対応する複数のクラスに分類した教師用麹1粒クラスラベルとを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルに対し、
任意の麹1粒破精データを入力して、前記任意の麹1粒破精データに対応する麹1粒クラスを推定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項12】
製麹条件から破精分布を予測する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として前記請求項1に記載の学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布とを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み破精分布予測モデルに対し、
任意の製麹条件を入力して、破精分布を予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項13】
製麹条件から麹複数粒破精データを予測する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された教師用麹複数粒破精データとを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、
任意の製麹条件を入力して、麹複数粒破精データを予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項14】
製麹条件及び破精分布から麹の酵素力価を予測する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として前記請求項1に記載の学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、
任意の製麹条件及び前記任意の製麹条件に対応した破精分布を入力して、酵素力価を予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項15】
製麹条件及び麹複数粒破精データから麹の酵素力価を予測する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
教師用製麹条件と、
前記教師用製麹条件で製麹された麹から取得された教師用麹複数粒破精データと、
前記教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、
機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、
任意の製麹条件及び前記任意の製麹条件に対応した麹複数粒破精データを入力して、酵素力価を予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項16】
検索条件に対して製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項2に記載の学習済み破精分布予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の破精分布とにより構成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを作成し、
破精分布を構成する任意の各麹クラスの比率データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項17】
検索条件に対して製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項3に記載の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の麹複数粒破精データとにより構成された製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを作成し、
麹複数粒破精データを構成する任意の各破精データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項18】
検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項4に記載の第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件と、前記データベース構成用の製麹条件を入力として前記請求項2に記載の学習済み破精分布予測モデルにより出力された破精分布とを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、
酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項19】
検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させるための製麹支援プログラムであって、
データベース構成用の製麹条件と、
前記請求項5に記載の第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、前記データベース構成用の製麹条件と、前記データベース構成用の製麹条件を入力として前記請求項3に記載の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルにより出力された麹複数粒破精データとを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、
酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、前記検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする製麹支援プログラム。
【請求項20】
前記目標データの個数を増やしたことを特徴とする請求項16乃至19に記載の製麹支援プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製麹支援システム及び製麹支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製麹条件は造りたい麹の品質により多様に存在する。製麹条件の修正は、熟練者により麹の出来に応じて行われ、この麹の出来は酵素力価等の分析値や熟練者の経験と感覚により判断されてきた。ただ、麹の出来は、製麹条件が異なれば当然破精廻りや破精込み具合に違いが生まれ、麹1粒単位で比較しても、破精廻りや破精込み具合のばらつきが生じる。こうした製麹条件の違いや麹1粒単位での破精廻り、破精込み具合のばらつきに基づいて、次回の製麹管理のための製麹条件を修正することは非常に困難を極める作業である。また、製麹完了後の麹の各酵素力価の値も麹の出来を判断するために重要な要素である。破精廻り、破精込み具合に加え、目標とする酵素力価の麹を得るための製麹条件を決めることは更に困難を極める。
【0003】
これまでに従来技術として、特許文献1には、麹又は麹切片からなる試験片の画像情報を電気信号に変換し、画像処理装置により製麹に関する分析を行う方法(麹基質の破精定量分析方法及び装置)が提案されている。特許文献1が開示する製麹に関する分析を行う方法は、試験片の画像情報から得られる麹基質全体の面積、破精廻りの面積、及び破精込みの面積を計算することで、破精の程度を分析し、麹の良否あるいは麹の出来具合を判断することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-225151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する製麹に関する分析を行う方法は、試験片の画像情報から得られる麹基質全体の面積、破精廻りの面積、及び破精込みの面積を計算するのみであるため、当該方法によって熟練者の判断と同等に麹の良否を正確に判断することは困難であった。
【0006】
本発明に係る製麹支援システム及び製麹支援プログラムは、上記課題を解決するためになされたものであり、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済みモデルを用いて、麹の出来に対して再現性良く判定結果を出し、製麹を支援することを目的とする。また、本発明に係る製麹支援システム及び製麹支援プログラムは、学習済みモデルを使用して作成された組合せ候補抽出用データベースを用いて、目標とする品質の麹を得るための製麹条件を予測、提供することで、製麹を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る製麹支援システムは、教師用麹1粒破精データと、教師用麹1粒破精データに対応する複数のクラスに分類した教師用麹1粒クラスラベルとを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルに対し、任意の麹1粒破精データを入力して、任意の麹1粒破精データに対応する麹1粒クラスを推定することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る製麹支援システムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として、学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを、各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布とを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み破精分布予測モデルに対し、任意の製麹条件を入力して、破精分布を予測することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る製麹支援システムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹から取得された教師用麹複数粒破精データとを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、任意の製麹条件を入力して、麹複数粒破精データを予測することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る製麹支援システムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布と、教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、任意の製麹条件及び任意の製麹条件に対応した破精分布を入力して、酵素力価を予測することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る製麹支援システムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹の教師用麹複数粒破精データと、教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、任意の製麹条件及び任意の製麹条件に対応した麹複数粒破精データを入力して、酵素力価を予測することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る製麹支援システムは、データベース構成用の製麹条件と、学習済み破精分布予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の破精分布とにより構成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを作成し、破精分布を構成する任意の各麹クラスの比率データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る製麹支援システムは、データベース構成用の製麹条件と、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の麹複数粒破精データとにより構成された製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを作成し、麹複数粒破精データを構成する任意の各破精データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として前記製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る製麹支援システムは、データベース構成用の製麹条件と、第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件と、データベース構成用の製麹条件を入力として学習済み破精分布予測モデルにより出力された破精分布とを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る製麹支援システムは、データベース構成用の製麹条件と、第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件と、データベース構成用の製麹条件を入力として学習済み麹複数粒破精データ予測モデルにより出力された麹複数粒破精データとを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る製麹支援システムは、目標データの個数を増やしたことを特徴とすることが好ましい。
【0017】
本発明に係る製麹支援プログラムは、教師用麹1粒破精データと、教師用麹1粒破精データに対応する複数のクラスに分類した教師用麹1粒クラスラベルとを教師データとして、機械学習の手法により構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルに対し、任意の麹1粒破精データを入力して、任意の麹1粒破精データに対応する麹1粒クラスを推定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る製麹支援プログラムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布とを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み破精分布予測モデルに対し、任意の製麹条件を入力して、破精分布を予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る製麹支援プログラムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹から取得された教師用麹複数粒破精データとを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、任意の製麹条件を入力して、麹複数粒破精データを予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る製麹支援プログラムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹から取得された麹1粒破精データを入力として学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布と、教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、任意の製麹条件及び任意の製麹条件に対応した破精分布を入力して、酵素力価を予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る製麹支援プログラムは、教師用製麹条件と、教師用製麹条件で製麹された麹の教師用麹複数粒破精データと、教師用製麹条件で製麹された麹を分析して得られた教師用酵素力価分析値とを教師データとして、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、任意の製麹条件及び任意の製麹条件に対応した麹複数粒破精データを入力して、酵素力価を予測する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る製麹支援プログラムは、データベース構成用の製麹条件と、学習済み破精分布予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の破精分布とにより構成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを作成し、破精分布を構成する任意の各麹クラスの比率データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る製麹支援プログラムは、データベース構成用の製麹条件と、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件を入力して出力されたデータベース構成用の麹複数粒破精データとにより構成された製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを作成し、麹複数粒破精データを構成する任意の各破精データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る製麹支援プログラムは、データベース構成用の製麹条件と、第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件と、データベース構成用の製麹条件を入力として学習済み破精分布予測モデルにより出力された破精分布とを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る製麹支援プログラムは、データベース構成用の製麹条件と、第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、データベース構成用の製麹条件と、データベース構成用の製麹条件を入力として学習済み麹複数粒破精データ予測モデルにより出力された麹複数粒破精データとを入力して出力されたデータベース構成用の酵素力価とにより構成された第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを作成し、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件として第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを検索して、検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る製麹支援プログラムは、目標データの個数を増やしたことを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る製麹支援システム及び製麹支援プログラムは、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済みモデルを用いることで、麹の出来に対して再現性良く判定結果を出し、製麹を支援することができる。また、本発明に係る製麹支援システム及び製麹支援プログラムは、学習済みモデルを利用して作成された組合せ候補抽出用データベースを用いて、目標とする品質の麹を得るための製麹条件を予測、提供することで、製麹を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】製麹支援システムの一例を示す構成図である。
図2】複数粒の破精データの一例を示す図である。
図3】麹1粒破精データの一例を示す図である。
図4】麹1粒破精データが分類された結果の一例を示す図である。
図5】麹1粒破精データを分類する方法の一例を示す図である。
図6】学習済みモデル構築手段を備えた製麹支援システムの一例を示す構成図である。
図7】第1実施形態のテスト結果の一例を示す図である。
図8】製麹支援プログラムの一例を示すフロー図である。
図9】輪郭検出データの一例を示す図である。
図10】ピクセル分布データの一例を示す図である。
図11】第2実施形態のテスト結果の一例を示す図である。
図12】製麹支援プログラムの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。以下においては、11の実施形態(第1実施形態~第11実施形態)を例に挙げて、本発明を説明する。
【0030】
各実施形態の製麹支援システムは、コンピュータを用いて構成される。
【0031】
図1に示すように、各実施形態の製麹支援システム100は、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。
【0032】
各実施形態の製麹支援システム100において、記憶手段101は、各種データ及び各種プログラムを記録するハードディスク等の記憶装置からなる。記憶手段101は、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済みモデル、又はデータベースを格納する。本発明の製麹支援システムにおいて、記憶手段は、各種データ及び各種プログラムを一時的に記録するメインメモリ等の記憶装置であってもよく、各実施形態の構成に限定されない。
【0033】
各実施形態の製麹支援システム100において、入力手段102は、データを入力するためのカメラ、キーボード等の入力装置からなる。本発明の製麹支援システムにおいて、入力手段は、データを入力するための装置であれば、各実施形態の構成に限定されず、他の装置からデータを受信する受信装置であってもよい。
【0034】
各実施形態の製麹支援システム100において、制御手段103は、各種プログラムによる命令を実行するプロセッサ等の演算装置及び制御装置からなる。本発明の製麹支援システムにおいて、制御手段は、各種プログラムによる命令を実行し演算処理を行う装置であれば、各実施形態の構成に限定されず、例えば、CPU、DSP、GPU等であってもよい。
【0035】
各実施形態の製麹支援システム100において、出力手段104は、データを出力するためのディスプレイ、プリンタ等の出力装置からなる。本発明の製麹支援システムにおいて、出力手段は、データを出力するための装置であれば、各実施形態の構成に限定されず、他の装置へデータを送信する送信装置であってもよい。
【0036】
各実施形態の製麹支援システム100において、記憶手段101、入力手段102、制御手段103、出力手段104は、分離した複数のコンピュータにより構成されるものであってもよく、単一のコンピュータにより一体として構成されるものであってもよい。
【0037】
各実施形態において、製麹として、清酒に用いられる米麹の製造を例に挙げて説明する。本発明において、麹の用途や麹菌の種類又は培養基質は、各実施形態の構成に限定されない。
【0038】
各実施形態において、麹として、製麹の各工程を経て出来上がった状態(以下、「出麹」という。)の麹を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、各実施形態の構成に限定されず、麹として、製麹の各工程の途中段階において採取した麹を使用する構成であってもよい。
【0039】
1.第1実施形態
第1実施形態の麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する製麹支援システムについて説明する。
【0040】
本発明において、麹1粒破精データとは、1粒の麹から取得可能な破精データであって、カメラ等により麹を撮影することで取得されコンピュータによる処理が可能な形式の麹の画像データ、当該麹の画像データを加工したデータ、反射スペクトル分析値、吸収スペクトル分析値など、1粒の麹から取得可能な各種データである。本発明において、麹の画像データを加工したデータとは、例えば、麹の画像データのサイズを変更した画像データ、輪郭検出データ、ピクセル分布データなどが挙げられる。本発明において、輪郭検出データとは、例えば、麹1粒面積、麹の破精部面積、黒率、周長、集落個数などが挙げられる。本発明において、ピクセル分布データとは、ピクセル区分の度数データ、ピクセル値の度数分布などが挙げられる。
【0041】
第1実施形態において、破精データを得るために、平板及び光源を有する透過照明装置、及びカメラが用いられる。平板は、光透過性を有する部材である。透過照明装置の有する平板の上に複数粒の麹を置き、平板の下方に位置する光源により麹へ光を照射し、透過照明装置の上方に位置するカメラにより麹を撮影することで、透過光を用いた複数粒の麹の画像データを得ることができる。カメラにより撮影されコンピュータによる処理を行うことが可能な形式の複数粒の麹の画像データは、コンピュータにより処理され、複数粒の麹の画像データを加工したデータとして、ハードディスクからなるコンピュータの記憶装置へ保存される。
【0042】
第1実施形態は、破精データとして、透過光を用いてカメラにより麹を撮影することで取得されコンピュータによる処理が可能な形式に変換した麹の画像データを加工したデータを使用する構成となっている。ただし、本発明において、破精データとして、反射光を用いた画像を使用する構成としてもよい。なお、透過光を用いた画像を使用すると、麹菌の菌糸が麹の内部に入り込んでいる部分を濃い黒色として検出することができるため、本発明においては、破精データとして、透過光を用いてカメラにより麹を撮影することで取得されコンピュータによる処理が可能な形式に変換した麹の画像データ、又は当該麹の画像データを加工したデータを使用することが好ましい。また、麹の画像として、モノクローム画像、グレースケール画像、カラー画像のいずれを使用してもよい。
【0043】
また、本発明において、破精データを取得するために用いられる光は、第1実施形態の構成に限定されず、可視光線や紫外線など種類を問わず、波長帯も限定されない。
【0044】
第1実施形態は、破精データである麹の画像データを加工したデータを得るために、麹として、粒が割れたり、欠けたりしていない整粒のみを用いる構成となっている。ただし、本発明における麹は、第1実施形態の構成に限定されない。
【0045】
図2に示すように、麹複数粒の画像データは、コンピュータの記憶手段101である記憶装置へ保存される。麹複数粒の画像データは、制御手段103により麹1粒ごとに画像の切り取り処理が行われ、複数の麹1粒破精データである麹の画像データを加工したデータに分けられる。図3に示すように、麹1粒破精データである麹の画像データを加工したデータは、機械学習に必要な計算コストや学習済みモデルによる推定結果の精度を考慮して、サイズ変更等の処理により調整された加工データとなる。
【0046】
第1実施形態において、麹1粒破精データは、縦横32×32ピクセルのサイズに変更される構成となっている。ただし、本発明において、麹1粒破精データは、縦横8×8ピクセルや、縦横64×64ピクセルに変更してもよく、第1実施形態の構成に限定されない。なお、サイズが小さすぎると高い精度の推定結果が得られず、サイズが大きすぎると解析時間が長くなり計算コストが高くなったり、高い精度の推定結果が得られなかったりするため、麹1粒破精データのサイズは、適切な範囲で適宜決定することができる。
【0047】
第1実施形態において、麹1粒破精データは、麹複数粒の画像データから矩形画像として切り取られてから、縦横32×32ピクセルのサイズに変更される構成となっている。ただし、本発明において、切り取り処理の形状は、第1実施形態の構成に限定されない。
【0048】
麹1粒破精データは、熟練者により、麹菌の菌糸が広がっている状態(以下、「破精廻り」という。)、及び、麹菌の菌糸が麹の内部に入り込んでいる状態(以下、「破精込み」という。)に基づいて、麹の良否を評価され、4つのクラスのいずれかに分類される。第1実施形態において、麹の良否とは、吟醸酒用の麹として適しているか否かといった観点から評価されるものである。以下においては、麹1粒破精データが4つのクラスのいずれかに分類された結果を、麹1粒クラスとして説明する。
【0049】
図4に示すように、破精廻り及び破精込みの程度が少ない麹はクラス0に分類され、破精廻り及び破精込みの程度が適度である麹はクラス1に分類され、破精廻り及び破精込みの程度が多い麹はクラス2に分類され、破精廻り及び破精込みの程度が過多である麹はクラス3に分類される。
【0050】
図5に示すように、麹1粒クラスは、破精込みの程度が良好な部分の集合(以下、「集落」という。)の広がり方を考慮して分類される。第1実施形態においては、一定の面積に満たない集落を評価対象の破精廻りに含まないものとして、熟練者は麹の良否を評価することができる。
【0051】
図5に示す例では、麹a及び麹bは、画像としては麹1粒の面積及び破精廻り部の合計面積が同一であると見なされる。麹aは、破精込みの程度が良好な部分が比較的まとまって局所的に存在している。破精込みの程度が良好な部分が比較的まとまって局所的に存在している麹aの各集落は、一定の面積を満たすため、評価対象の破精廻りに含むものとして評価される。これにより、麹aは、破精廻り及び破精込みの程度が適度であるクラス1に分類される。一方、麹bは、小さな破精廻り部が全体に散在している。小さな破精廻り部が全体に散在している麹bの各集落は、一定の面積を満たさないため、評価対象の破精廻りに含まないものとして評価される。これにより、麹bは、破精廻り及び破精込みの程度が少ないクラス0に分類される。このように、麹1粒の面積及び破精廻り部の合計面積が同一であっても、破精込みの程度が良好な部分が比較的まとまって局所的に存在している麹は、小さな破精廻り部が全体に散在している麹と比較すると、吟醸酒用の麹として適していると評価される。
【0052】
第1実施形態において、熟練者による麹の良否の評価基準として、上述した他に、破精廻った部分とそれ以外の部分の比率、及び、破精廻った部分の色の濃さ等を用いている。
【0053】
第1実施形態において、麹1粒破精データは、4つのクラスのいずれかに分類される構成となっている。ただし、本発明において、クラスの数は、複数であればよく、第1実施形態の構成に限定されない。なお、クラスの数が少なすぎると高い精度の推定結果が得られず、クラスの数が多すぎると麹の良否を評価する作業が困難となるため、クラスの数は、4つ程度が好ましい。
【0054】
第1実施形態において、上述の方法により取得した麹1粒破精データである麹の画像データを加工したデータを1件の教師用麹1粒破精データとし、当該麹1粒破精データを上述の方法により熟練者が分類した麹1粒クラスを1件の教師用麹1粒クラスラベルとし、これらの教師用麹1粒破精データ及び教師用麹1粒クラスラベルにより、一組の教師用データが作成される。一組の教師用データにおいて、教師用麹1粒破精データは説明変数として機能し、教師用麹1粒クラスラベルは目的変数として機能する。上記の手順による教師用データの作成を繰り返すことで、複数の教師用データが蓄積された教師用データセットが作成される。
【0055】
図6に示すように、製麹支援システム100は、学習済みモデル構築手段200を備える。学習済みモデル構築手段200は、上記教師用データセットを用いて、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで、学習済みモデルである学習済み麹1粒クラス推定モデルを構築する。学習済みモデル構築手段200により構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルは、記憶手段101に格納される。
【0056】
第1実施形態において、学習済みモデル構築手段200は、製麹支援システム100を構成するコンピュータと同一のコンピュータにより一体として構成される。ただし、本発明において、学習済みモデル構築手段は、製麹支援システムを構成するコンピュータと分離したコンピュータを用いて構成されるものであってもよく、学習済みモデル構築手段により構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルは、ネットワークを介して、製麹支援システムへ送信され、記憶手段に格納される構成としてもよい。
【0057】
第1実施形態において、機械学習の手法である学習モデルとして、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)が用いられる。第1実施形態において、CNNは、入力層、中間層、出力層からなる3つの階層により構成される。入力層は、入力されたデータを中間層へ受け渡す。中間層は、コンボリューション層(Convolution Layer)及びプーリング層(Pooling Layer)を有し、データから特徴量を抽出し、抽出した特徴量を出力層へ受け渡す。出力層は、抽出された特徴量に基づいて、出力するデータを判定する。
【0058】
第1実施形態において、学習済みモデル構築手段200は、教師用データセットをCNNへ入力する。入力層へ入力された教師用麹1粒破精データは、中間層の処理を経て、出力層により推定結果として出力される。CNNは、出力層により出力される推定結果が、入力層へ入力された教師用麹1粒破精データに対応する教師用麹1粒クラスラベルに近づくように、中間層のパラメータを調整する。数多くの教師用データセットを用いて、上記の手順によるパラメータの調整を繰り返すことで、入力された麹1粒破精データに基づいて、対応する教師用麹1粒クラスラベルと近い麹1粒クラスを出力することが可能な学習済み麹1粒クラス推定モデルが構築される。
【0059】
第1実施形態は、機械学習の手法である学習モデルとして、CNNを用いる構成となっている。ただし、本発明は、第1実施形態の構成に限定されず、例えば麹の画像データからクラス分類を行うことのできる他のアルゴリズムを用いる構成としてもよい。
【0060】
第1実施形態において、学習済み麹1粒クラス推定モデルは、テスト用データセットにより、推定結果の精度を評価される。テスト用データセットは、教師用データセットと同様に麹1粒破精データと麹1粒クラスラベルの組合せであるが、学習済み麹1粒クラス推定モデルの構築に使用していないものである。
【0061】
第1実施形態において、学習済み麹1粒クラス推定モデルの構築に使用する教師用データセットは、クラス0~3の各クラスについて1600件ずつ、合計で6400件を使用する。また、学習済み麹1粒クラス推定モデルによる推定結果の精度は、合計で1600件のテスト用データセットを使用して評価される。
【0062】
図7に示すように、学習済み麹1粒クラス推定モデルは、テスト用データセットにより、推定結果の精度を評価される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス0に分類される399件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:393件、クラス1:6件、クラス2:0件、クラス3:0件が出力される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス1に分類される407件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:4件、クラス1:367件、クラス2:36件、クラス3:0件が出力される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス2に分類される398件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:0件、クラス1:26件、クラス2:357件、クラス3:15件が出力される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス3に分類される396件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:0件、クラス1:0件、クラス2:26件、クラス3:370件が出力される。
【0063】
上記のテスト結果に示されるように、学習済み麹1粒クラス推定モデルは、入力された麹1粒破精データに基づいて、正解である麹1粒クラスを高い精度で出力することが可能となっている。上記テスト用データセットにおける正解率は、クラス0が約98%、クラス1が約90%、クラス2が約90%、クラス3が約93%となっており、全体としての正解率は、約93%となっている。また、第1実施形態における学習済み麹1粒クラス推定モデルによる推定に、正解である麹1粒クラスと大きく離れた誤りは見られない。例えば、上記のテスト結果において、クラス0であると判定されるべき麹の破精データが、クラス2又は3であると判定されるといったような誤りは見られない。
【0064】
図1に示すように、第1実施形態の製麹支援システム100は、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。記憶手段101は、ハードディスクである。入力手段102は、カメラである。制御手段103は、プロセッサである。出力手段104は、ディスプレイである。
【0065】
記憶手段101は、上述した機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルを格納している。入力手段102は、上述した透過照明装置を用いる方法により麹を撮影し、麹1粒破精データである麹の画像データを取得する。制御手段103は、学習済み麹1粒クラス推定モデルによる演算を制御する。出力手段104は、学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された麹1粒クラスを表示する。
【0066】
第1実施形態の製麹支援システム100において、記憶手段101は、製麹支援プログラム300を格納する。また、制御手段103は、製麹支援プログラム300による命令を実行する。
【0067】
図8に示すように、第1実施形態の製麹支援プログラム300は、入力ステップ301と、制御ステップ302と、出力ステップ303を備える。入力ステップ301は、入力手段102により取得された麹1粒破精データを記憶手段101に格納された学習済み麹1粒クラス推定モデルへ入力する。制御ステップ302は、学習済み麹1粒クラス推定モデルによる演算を制御し、入力された麹1粒破精データに基づいて麹1粒クラスを出力する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ303は、学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された麹1粒クラスを取得し、出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム300は、麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0068】
第1実施形態の製麹支援システム100は、1つの学習済み麹1粒クラス推定モデルを使用して、麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する構成となっている。ただし、本発明の製麹支援システムにおいて、学習済み麹1粒クラス推定モデルの数は、複数であってもよく、第1実施形態の構成に限定されない。例えば、本発明の製麹支援システムは、それぞれ異なるハイパーパラメータを設定して構築された複数の学習済み麹1粒クラス推定モデルを使用する構成としてもよい。ここで、複数の学習済み麹1粒クラス推定モデルに対し、共通の麹1粒破精データを入力して、それぞれ出力された麹1粒クラスのうち、最も多く出力されたものを最終的な推定結果として決定する構成としてもよい。
【0069】
第1実施形態の製麹支援システム100は、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、任意の麹1粒破精データを入力することにより、当該任意の麹1粒破精データに対応する麹1粒クラスを正確に推定することができ、熟練者による麹の良否を評価する方法と同等の判断が安定的に可能となる。
【0070】
第1実施形態の製麹支援システム100において、学習済み麹1粒クラス推定モデルは、破精廻り、破精込み、集落の広がり方、破精廻った部分の色の濃さ等を評価基準として熟練者により分類された教師用麹1粒クラスラベルを用いて、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築されるため、麹基質全体の面積、破精廻りの面積、及び破精込みの面積を計算することのみにより麹の良否を判断する従来の方法と比較すると、より正確に麹の良否を評価することができる。
【0071】
2.第2実施形態
第1実施形態とは異なる麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する第2実施形態の製麹支援システムについて説明する。
【0072】
第2実施形態において、麹は、第1実施形態と同様の方法によって、撮影され、麹の画像データとして保存され、サイズ変更等の処理により調整され加工データとなる。また、一組の教師用データとして、当該麹の破精データである麹の画像データを加工したデータと組となる麹1粒クラスラベルは、第1実施形態と同様の方法によって、熟練者により判断される。
【0073】
第2実施形態において、製麹支援システム100を構成するコンピュータは、輪郭検出部及びピクセル分布データ取得部を備える。
【0074】
第2実施形態において、輪郭検出部は、麹の画像データを加工したデータから、輪郭検出データを取得する。図9に示すように、第2実施形態において、輪郭検出データは、麹1粒面積T、破精部面積A、黒率B、周長L、及び集落個数Cからなる。
【0075】
第2実施形態において、ピクセルの持つ色の濃淡を0~255の整数で表した値を、ピクセル値として説明する。第2実施形態において、ピクセル値が0である場合、当該ピクセルは黒色であり、ピクセル値が255である場合、当該ピクセルは白色である。
【0076】
輪郭検出部は、麹の画像データを加工したデータにおいて、一定のピクセル値以下のピクセル数の合計を、麹1粒面積Tとして算出する。第2実施形態の麹の画像データを加工したデータにおいて、背景部分のピクセル値は高く、麹の部分のピクセル値は低く、両者は明らかにピクセル値が異なるため、一定のピクセル値より大きい値の部分を背景とみなし、一定のピクセル値以下の部分を麹としてみなすことにより、背景と麹とを判別することができる。第2実施形態において、背景と麹とを判別するピクセル値の閾値を240として2値化処理を行う。
【0077】
図9に示すように、輪郭検出部は、ピクセル値の閾値を60として、麹の画像データを加工したデータに対して2値化処理を行う。輪郭検出部は、2値化処理により検出された黒色部を破精部として、破精部の輪郭に輪郭線を描画する。輪郭検出部は、輪郭線の内部のピクセル数の合計を、破精部面積Aとして算出する。輪郭検出部は、破精部面積Aを麹1粒面積Tで除算することにより、黒率Bを算出する。輪郭検出部は、輪郭線のピクセル数の合計を、周長Lとして算出する。輪郭検出部は、輪郭線により描画された集落の数の合計を、集落個数Cとして算出する。
【0078】
図9に示す例では、輪郭検出部は、麹の画像データを加工したデータを基に、麹1粒面積T:769、破精部面積A:217、黒率B:0.28、周長L:82、集落個数C:2からなる輪郭検出データを取得する。
【0079】
第2実施形態において、破精部の輪郭を描画するために、ピクセル値の閾値を60としている。ただし、本発明におけるピクセル値の閾値は、第2実施形態の構成に限定されず、40、60、80、100、120など、適切な値を適宜設定することができる。
【0080】
第2実施形態において、輪郭検出部は、2値化処理により検出された黒色部のうち、一定の面積に満たないものを、破精部に含まないものとすることができる。
【0081】
第2実施形態において、ピクセル分布データ取得部は、麹の画像データを加工したデータから、ピクセル分布データを取得する。
【0082】
第2実施形態において、図10に示すように、ピクセル分布データ取得部は、麹の画像データを加工したデータに含まれる各ピクセルからピクセル値を取得し、ピクセル値の度数分布を作成する。具体的には、まず、ピクセル分布データ取得部は、麹の画像データを加工したデータに含まれる各ピクセルを、0~255のピクセル値として取得する。ピクセル分布データ取得部は、麹の画像における背景部分の色がピクセル分布データに影響を与えることを防ぐため、241~255の特定の範囲のピクセル値を除外したデータを取得する。当該ピクセルから取得されたピクセル値に基づいて、0~240の値を8区分に分割した各ピクセル区分のうちのいずれかに分類する。次に、ピクセル分布データ取得部は、各ピクセル区分に分類されたピクセルの数を、当該ピクセル区分の度数データとして取得する。ピクセル分布データ取得部は、これらのピクセル区分の度数データにより、ピクセル値の度数分布を作成する。本発明におけるピクセル分布データは、第2実施形態に限定されるものでなく、適宜設定すればよく、例えば、0~255のピクセル値を用いてもよいし、各区分に分割した各ピクセル区分を目的に応じて取捨選択して用いてもよい。本発明におけるピクセル分布データ取得部では、麹の画像データの背景部分の色が黒色の場合、麹の画像データにおける背景部分の色がピクセル分布データに影響を与えることを防ぐため、0~15の特定の範囲のピクセル値を除外したデータを取得することとしてもよい。
【0083】
第2実施形態において、ピクセル分布データとは、ピクセル区分の度数データより作成されたピクセル値の度数分布である。第2実施形態においては、8区分に分割されたピクセル区分を、H_1~H_8として説明する。図10に示す例では、ピクセル分布データ取得部は、ピクセル分布データとして、[H_1:76、H_2:107、H_3:99、H_4:91、H_5:155、H_6:165、H_7:39、H_8:37]を取得する。
【0084】
第2実施形態において、麹の画像データを加工したデータの中で麹の画像に相当する各ピクセルは、8区分に分割された各ピクセル区分のうちのいずれかに分類される構成となっている。ただし、本発明において、麹の画像に相当する各ピクセルは、16区分に分割された各ピクセル区分のうちのいずれかに分類される構成としてもよく、ピクセル区分の数は、適切な値を適宜設定することができる。
【0085】
第2実施形態において、輪郭検出部及びピクセル分布データ取得部は、製麹支援システム100を構成するコンピュータと同一のコンピュータにより一体として構成される。本発明において、輪郭検出部及びピクセル分布データ取得部は、製麹支援システム100を構成するコンピュータと分離したコンピュータを用いて構成されるものであってもよい。
【0086】
第2実施形態において、麹1粒破精データは、1粒の麹から取得した輪郭検出データ及びピクセル分布データである。第2実施形態において、上述の方法により取得した麹1粒破精データを1件の教師用麹1粒破精データとし、当該麹1粒破精データと対応する熟練者が分類した麹1粒クラスを1件の教師用麹1粒クラスラベルとし、これらの教師用麹1粒破精データ及び教師用麹1粒クラスラベルにより、一組の教師用データが作成される。一組の教師用データにおいて、教師用麹1粒破精データは説明変数として機能し、教師用麹1粒クラスラベルは目的変数として機能する。表1に示すように、上記の手順による教師用データの作成を繰り返すことで、複数の教師用データが蓄積された教師用データセットが作成される。
【0087】
【表1】
【0088】
第2実施形態において、麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する学習済み麹1粒クラス推定モデルは、上記教師用データセットを用いて、第1実施形態と同様に、学習済みモデル構築手段200により構築され、製麹支援システム100の記憶手段101に格納している。
【0089】
第2実施形態は、機械学習の手法である学習モデルとして、ロジスティック回帰(LGR:Logistic Regression)を用いる構成となっている。ただし、本発明は、第2実施形態の構成に限定されず、例えばニューラルネットワーク(NN:Neural Network)、ランダムフォレスト(RFC:Random Forest Classifier)、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)、決定木(DT:Decision Tree)、K最近傍法(KNN:K-Nearest Neighbor Algorithm)、ナイーブベイズ法(NB:Naive Bayes)など、数値データからクラス分類を行うことのできる他のアルゴリズムを用いる構成としてもよい。
【0090】
第2実施形態において、学習済み麹1粒クラス推定モデルの構築に使用する教師用データセットは、クラス0~3の各クラスについて1600件ずつ、合計で6400件を使用する。また、学習済み麹1粒クラス推定モデルによる推定結果の精度は、合計で1600件のテスト用データセットを使用して評価される。第2実施形態において、テスト用データセットは、第1実施形態と同様に、学習済み麹1粒クラス推定モデルの構築に使用していないものである。
【0091】
図11に示すように、学習済み麹1粒クラス推定モデルは、テスト用データセットにより、推定結果の精度を評価される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス0に分類される399件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:395件、クラス1:4件、クラス2:0件、クラス3:0件が出力される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス1に分類される407件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:5件、クラス1:332件、クラス2:70件、クラス3:0件が出力される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス2に分類される398件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:0件、クラス1:67件、クラス2:291件、クラス3:40件が出力される。学習済み麹1粒クラス推定モデルに対して、クラス3に分類される396件の麹1粒破精データを入力すると、麹1粒クラスとして、クラス0:0件、クラス1:1件、クラス2:18件、クラス3:377件が出力される。
【0092】
上記のテスト結果に示されるように、学習済み麹1粒クラス推定モデルは、入力された麹1粒破精データに基づいて、正解である麹1粒クラスを高い精度で出力することが可能となっている。上記テスト用データセットにおける正解率は、クラス0が約99%、クラス1が約82%、クラス2が約73%、クラス3が約95%となっており、全体としての正解率は、約87%となっている。第2実施形態における学習済み麹1粒クラス推定モデルによる推定に、正解である麹1粒クラスと大きく離れた誤りはほとんど見られない。
【0093】
図1に示すように、第2実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。また、図8に示すように、第2実施形態の製麹支援プログラム300は、第1実施形態と同様に、入力ステップ301と、制御ステップ302と、出力ステップ303を備える。製麹支援プログラム300は、製麹支援システム100の記憶手段101に格納され、麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0094】
第2実施形態において、入力手段102がカメラである場合、製麹支援システム100は、上述した輪郭検出部及びピクセル分布データ取得部を備える。第2実施形態において、製麹支援システム100は、入力手段102により撮影された麹の画像データを基に、輪郭検出データ及びピクセル分布データからなる麹1粒破精データを取得することができる。
【0095】
本発明は、第2実施形態に限定されず、入力手段102がキーボードである場合、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された輪郭検出データ及びピクセル分布データからなる麹1粒破精データを取得することができる。
【0096】
本発明の製麹支援システム100は、LGRを用いて構築された学習済み麹1粒クラス推定モデル、NNを用いて構築された学習済み麹1粒クラス推定モデル、RFCを用いて構築された学習済み麹1粒クラス推定モデルなど、各クラスそれぞれ異なる手法により構築された複数の学習済み麹1粒クラス推定モデルを使用して、麹1粒破精データから麹1粒クラスを推定する構成としてもよい。また、それぞれ異なるハイパーパラメータを設定して同一の手法により構築された複数の学習済み麹1粒クラス推定モデルを使用する構成としてもよい。ここで、複数の学習済み麹1粒クラス推定モデルに対し、共通の麹から取得された麹1粒破精データを入力して、それぞれ出力された麹1粒クラスのうち、最も多く出力されたものを最終的な推定結果として決定する構成としてもよい。
【0097】
3.第3実施形態
第3実施形態の製麹条件から破精分布を予測する製麹支援システムについて説明する。
【0098】
第3実施形態において、破精分布は、上述した4つのクラスのいずれかに分類された複数粒の麹における各クラスが構成する比率により表される。例えば、100粒の麹において、クラス0に分類される麹が10粒、クラス1に分類される麹が40粒、クラス2に分類される麹が30粒、クラス3に分類される麹が20粒である場合、当該100粒の麹における破精分布は、[クラス0:10%、クラス1:40%、クラス2:30%、クラス3:20%]である。出麹の破精分布は、製麹における指標の一つであり、麹の品質を表すものである。
【0099】
第3実施形態において、製麹条件は、種付量、水分、及び品温からなる。
【0100】
第3実施形態において、種付量とは、蒸米に種麹を散布する工程において測定される値である。種付量は、元白米重量あたりの種麹の重量を換算することにより算出される。製麹における種付量は、麹の破精廻りに影響を与える要因の1つである。
【0101】
第3実施形態は、種付量として、元白米重量あたりの種麹の重量を数値化したものを用いる構成となっている。ただし、本発明における種付量は、第3実施形態の構成に限定されず、麹菌の胞子のみの重量を種麹の重量としてもよく、増量剤を含む重量を種麹の重量としてもよい。
【0102】
第3実施形態において、水分とは、蒸米に種麹を散布した直後に測定される値である。水分は、蒸米の重量と、当該蒸米を乾燥させた状態の重量とを比較することにより算出される。麹菌の活動は、培養基質である蒸米に含まれる水の量によって異なるため、製麹における水分は、麹の破精廻りや破精込みに影響を与える要因の1つである。
【0103】
第3実施形態は、水分として、蒸米に種麹を散布した直後に測定される値を用いる構成となっている。ただし、本発明は、第3実施形態の構成に限定されず、水分として、白米を浸漬する工程において測定された値を用いる構成としてもよく、また、蒸し後に冷却された蒸米の水分量を用いる構成としてもよい。なお、蒸米の水分量は、蒸し条件、放冷条件、外気条件等により変化するため、本発明においては、水分として、蒸米に種麹を散布した直後、すなわち製麹開始時に測定された値を用いることが好ましい。
【0104】
第3実施形態において、品温とは、製麹の各工程において測定される値である。品温は、蒸米に差し込まれた温度センサにより測定される。温度センサにより測定された品温は、所定の時間が経過する毎にコンピュータの記憶手段101である記憶装置に自動的に記録される。麹菌の活動は、環境の温度や湿度によって異なり、製麹における品温は、結果的に麹の破精廻りや破精込みに影響を与える要因の1つである。
【0105】
第3実施形態が例として挙げる製麹の各工程は、前半である床工程、及び、後半である棚工程に分けることができる。床工程は、合計して約22時間の工程であり、棚工程は、合計して約24時間の工程である。第3実施形態においては、製麹条件に設定する品温として、床工程における1、5、15、22時間の品温、及び、棚工程における1、5、10、15、20、24時間の品温がそれぞれ用いられる。
【0106】
第3実施形態では、製麹条件として設定する品温は、上述した経過時間の品温を用いる構成となっている。ただし、本発明は、第3実施形態の構成に限定されず、製麹条件として設定する品温は、1時間毎や数分毎に測定した品温を用いる構成としてもよく、測定の間隔について適切な範囲で適宜設定することができる。なお、測定間隔を短くすると、製麹条件として設定する品温のデータサイズが増え、測定間隔を長くすると、製麹条件として設定する品温のデータが少なくなるといった問題が生じるため、学習済みモデルを構築する環境に合わせて適切な間隔で適宜設定することが好ましい。
【0107】
第3実施形態は、製麹条件として、種付量、水分、及び品温を用いる構成となっている。ただし、本発明は、第3実施形態の構成に限定されず、製麹条件として、原料の種類や総重量などの情報、種麹の種類などの情報、製麹前までの製造工程の情報、製麹室の温度、製麹室の湿度、手入れの回数、手入れの時期等を用いる構成としてもよい。原料の種類などの情報として、例えば、原料が白米である場合は、生産年度、品種、精米歩合などを用いてもよい。
【0108】
第3実施形態の製麹の過程において、種付量、水分、及び品温からなる製麹条件の結果は、一連のデータとしてコンピュータの記憶手段101である記憶装置へ保存される。また、当該製麹条件で製麹された麹は、その一部が採取され、第1実施形態と同様の方法によって複数の麹1粒破精データに変換される。さらに、当該複数の麹1粒破精データは、それぞれ学習済み麹1粒クラス推定モデルへ入力され、複数の麹1粒クラスが出力される。上記の手順により取得された当該複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで、当該製麹条件で製麹された麹の破精分布が生成される。本発明において、製麹条件で製麹された麹は、第3実施形態に限定されず、第2実施形態と同様の方法によって複数の麹1粒破精データに変換されて、複数の麹1粒クラスが出力され、各クラスの比率に変換してもよい。
【0109】
第3実施形態においては、製麹された麹から、粒が割れていない100粒の整粒を採取し、上述した破精分布を生成する構成となっている。ただし、本発明は、第3実施形態の構成に限定されず、採取する麹の数は、適切な数を適宜設定することができる。なお、採取する麹の数が少ない場合は、サンプリング誤差の影響が大きくなり、採取する麹の数が多い場合は、作業の量が増えるため、採取する麹の数は、これらを考慮した適切な数に適宜設定することができる。
【0110】
第3実施形態において、上述の方法により取得した製麹条件を1件の教師用製麹条件とし、当該製麹条件で製麹された麹から上述の方法により取得した破精分布を1件の教師用破精分布とし、これらの教師用製麹条件及び教師用破精分布により、一組の教師用データが作成される。一組の教師用データにおいて、教師用製麹条件は説明変数として機能し、教師用破精分布は目的変数として機能する。上記の手順による教師用データの作成を繰り返すことで、複数の教師用データが蓄積された教師用データセットが作成される。
【0111】
第3実施形態において、製麹条件から破精分布を予測する学習済み破精分布予測モデルは、上記教師用データセットを用いて、第1実施形態と同様に、学習済みモデル構築手段200により構築され、製麹支援システム100の記憶手段101に格納される。
【0112】
第3実施形態は、機械学習の手法である学習モデルとして、ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)又は線形回帰(LR:Linear Regression)を用いる構成となっている。ただし、本発明は、第3実施形態の構成に限定されず、例えば、ランダムフォレスト(RFR:Random Forest Regressor)、サポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)、決定木(DT:Decision Tree)など、他の回帰アルゴリズムを用いる構成としてもよい。
【0113】
第3実施形態において、破精分布が4種類なので、機械学習の手法である学習モデルの目的変数は4つとなる。NNを用いる構成とした場合、学習済みモデル構築手段200は、当該4つの目的変数に対して、1つの学習済み破精分布予測モデルを構築することになる。LRを用いる構成とした場合、学習済みモデル構築手段200は、4つの目的変数に対して、同数である4つの学習済み破精分布予測モデルを構築することになる。
【0114】
第3実施形態において、学習済み破精分布予測モデルの構築に使用する教師用データセットは、180件の教師用データを使用する。また、学習済み破精分布予測モデルの精度は、20件のテスト用データセットを使用して評価される。第3実施形態において、テスト用データセットは、第1実施形態と同様に、学習済み破精分布予測モデルの構築に使用していないデータからなるものである。
【0115】
表2に示すように、学習済み破精分布予測モデルは、テスト用データセットにより、予測結果の精度を評価される。第3実施形態においては、予測結果の評価指標として、決定係数Rが用いられる。
【0116】
【表2】
【0117】
上記のテスト結果に示されるように、NNを用いて構築された学習済み破精分布予測モデルは、入力された製麹条件に基づいて、精度の高い破精分布の予測値を出力することが可能となっている。また、表2に示されるように、第3実施形態における教師用データセットを使用した場合においては、NNを用いて構築された学習済み破精分布予測モデルの予測精度が、4つのクラス全てにおいてLRを用いて構築された学習済み破精分布予測モデルの予測精度よりも高い。第3実施形態で使用した教師用データセットに対して、さらに教師用データセットが追加されて機械学習を実行した場合、学習済み破精分布予測モデルの予測精度が向上することもある。本発明においては、第3実施形態に限定されず、4つのクラスの予測精度が高い学習済み破精分布予測モデルを使用してもよく、各クラスで予測精度の高い学習済み破精分布予測モデルを適宜選択して使用してもよい。
【0118】
図1に示すように、第3実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。また、図8に示すように、第3実施形態の製麹支援プログラム300は、第1実施形態と同様に、入力ステップ301と、制御ステップ302と、出力ステップ303を備える。製麹支援プログラム300は、製麹支援システム100の記憶手段101に格納されている。入力ステップ301は、入力手段102により取得された製麹条件を記憶手段101に格納された学習済み破精分布予測モデルへ入力する。制御ステップ302は、学習済み破精分布予測モデルによる演算を制御し、入力された製麹条件に基づいて破精分布を出力する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ303は、学習済み破精分布予測モデルにより出力された破精分布を取得し、出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム300は、製麹条件から破精分布を予測する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0119】
第3実施形態において、入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された製麹条件を取得することができる。
【0120】
本発明の製麹支援システム100は、NNを用いて構築された学習済み破精分布予測モデル、LRを用いて構築された学習済み破精分布予測モデル、RFRを用いて構築された学習済み破精分布予測モデルなど、それぞれ異なる手法により構築された複数の学習済み破精分布予測モデルを使用して、製麹条件から破精分布を予測する構成としてもよい。また、それぞれ異なるハイパーパラメータを設定して同一の手法により構築された複数の学習済み破精分布予測モデルを使用する構成としてもよい。ここで、複数の学習済み破精分布予測モデルに対し、共通の製麹条件を入力して、それぞれ出力された破精分布から平均値を算出し、当該平均値を最終的な予測結果として決定する構成としてもよい。
【0121】
第3実施形態の製麹支援システム100において、学習済み破精分布予測モデルを構築するための教師用データのうち、教師用破精分布は、学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成される構成となっている。当該学習済み麹1粒クラス推定モデルにより出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された教師用破精分布を用いて構築された学習済み破精分布予測モデルは、入力された製麹条件に基づいて、正確な破精分布を予測することができる。
【0122】
第3実施形態の製麹支援システム100は、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み破精分布予測モデルを用いて、任意の製麹条件から破精分布を予測することができるため、使用者は、実際に製麹を行わなくとも、製麹の結果についてシミュレーションを行うことができる。
【0123】
4.第4実施形態
第4実施形態の製麹条件から麹複数粒破精データを予測する製麹支援システムについて説明する。
【0124】
第4実施形態において、麹複数粒破精データとは、1粒の麹から取得可能な破精データを複数集めたデータの平均値であって、複数粒の麹の輪郭検出データの平均値である。第4実施形態において、麹の輪郭検出データは、第2実施形態と同様の手法により得られる。
【0125】
第4実施形態において、複数粒の麹の輪郭検出データの平均値は、複数粒の破精部面積の平均値、複数粒の黒率の平均値、複数粒の周長の平均値、及び複数粒の集落個数の平均値の4種類からなる。例えば、複数粒の黒率の平均値は、表1に示すように、1粒の麹から取得可能な破精データである麹の輪郭検出データのうち、黒率のデータを100粒分集めて、100粒分の黒率のデータを加算した数値が「40(=0.28+0.39+0.07+・・・)」である場合、粒数の「100」で除算して算出された「0.4」となる。本発明において、麹複数粒破精データは、第4実施形態に限定されず、例えば、複数粒の麹のピクセル分布データ、複数粒の麹の反射スペクトル分析値、複数粒の麹の吸収スペクトル分析値など、複数粒の麹から取得可能な各種データの平均値であってもよい。
【0126】
本発明において、麹複数粒破精データの各種データは、第4実施形態に限定されず、複数粒の平均値、最頻値、中央値など適宜設定することができる。出麹の麹複数粒破精データは、製麹における指標の一つであり、麹の品質を表すものである。ただし、本発明において、麹複数粒破精データには、破精分布は含まれない。
【0127】
第4実施形態において、製麹条件は、第3実施形態と同様に、種付量、水分、及び品温からなる。
【0128】
第4実施形態の製麹の過程において、製麹条件は、第3実施形態と同様に、一連のデータとしてコンピュータの記憶手段101である記憶装置へ保存される。また、当該製麹条件で製麹された麹は、その一部が採取され、第2実施形態と同様の方法によって複数粒の麹から取得可能な麹複数粒破精データに変換される。
【0129】
第4実施形態においては、製麹された麹から、粒が割れていない100粒の整粒を採取し、上述した複数粒の麹から取得可能な麹複数粒破精データに変換する構成となっている。ただし、本発明は、第4実施形態の構成に限定されず、採取する麹の数は、適切な数を適宜設定することができる。
【0130】
第4実施形態において、上述の方法により取得した製麹条件を1件の教師用製麹条件とし、当該製麹条件で製麹された麹から上述の方法により取得した麹複数粒破精データを1件の教師用麹複数粒破精データとし、これらの教師用製麹条件及び教師用麹複数粒破精データにより、一組の教師用データが作成される。一組の教師用データにおいて、教師用製麹条件は説明変数として機能し、教師用麹複数粒破精データは目的変数として機能する。上記の手順による教師用データの作成を繰り返すことで、複数の教師用データが蓄積された教師用データセットが作成される。
【0131】
第4実施形態において、製麹条件から麹複数粒破精データを予測する学習済み麹複数粒破精データ予測モデルは、上記教師用データセットを用いて、第1実施形態と同様に、学習済みモデル構築手段200により構築され、製麹支援システム100の記憶手段101に格納される。
【0132】
第4実施形態は、機械学習の手法である学習モデルとして、線形回帰(LR:Linear Regression)を用いる構成となっている。ただし、本発明は、第4実施形態の構成に限定されず、例えば、ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)、ランダムフォレスト(RFR:Random Forest Regressor)、サポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)、決定木(DT:Decision Tree)など、他の回帰アルゴリズムを用いる構成としてもよい。
【0133】
第4実施形態において、麹複数粒破精データが4種類なので、LRの目的変数は4つとなる。LRを用いるので、学習済みモデル構築手段200は、4つの目的変数に対して、同数である4つの学習済み麹複数粒破精データ予測モデルを構築することになる。本発明において、第4実施形態に限定されず、機械学習の手法である学習モデルとしてNNを用いる構成とした場合、学習済みモデル構築手段200は、当該4つの目的変数に対して、1つの学習済み麹複数粒破精データ予測モデルを構築することになる。
【0134】
第4実施形態において、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルの構築に使用する教師用データセットは、180件を使用する。また、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルの精度は、20件のテスト用データセットを使用して評価される。第4実施形態において、テスト用データセットは、第1実施形態と同様に、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルの構築に使用していないものである。
【0135】
表3に示すように、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルは、テスト用データセットにより、予測結果の精度を評価される。第4実施形態においては、予測結果の評価指標として、決定係数Rが用いられる。
【0136】
【表3】
【0137】
上記のテスト結果に示されるように、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルは、入力された製麹条件に基づいて、精度よく麹複数粒破精データである破精部面積A、黒率B、周長L、集落個数Cを予測することが可能となっている。
【0138】
図1に示すように、第4実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。また、図8に示すように、第4実施形態の製麹支援プログラム300は、第1実施形態と同様に、入力ステップ301と、制御ステップ302と、出力ステップ303を備える。製麹支援プログラム300は、製麹支援システム100の記憶手段101に格納されている。入力ステップ301は、入力手段102により取得された製麹条件を記憶手段101に格納された学習済み麹複数粒破精データ予測モデルへ入力する。制御ステップ302は、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルによる演算を制御し、入力された製麹条件に基づいて麹複数粒破精データを出力する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ303は、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルにより出力された麹複数粒破精データを取得し、出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム300は、製麹条件から麹複数粒破精データを予測する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0139】
第4実施形態において、入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された製麹条件を取得することができる。
【0140】
本発明の製麹支援システム100は、NNを用いて構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデル、LRを用いて構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデル、RFRを用いて構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデルなど、それぞれ異なる手法により構築された複数の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルを使用して、製麹条件から麹複数粒破精データを予測する構成としてもよい。また、それぞれ異なるハイパーパラメータを設定して同一の手法により構築された複数の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルを使用する構成としてもよい。ここで、複数の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対し、共通の製麹条件を入力して、それぞれ出力された麹複数粒破精データから平均値を算出し、当該平均値を最終的な予測結果として決定する構成としてもよい。
【0141】
第4実施形態の製麹支援システム100は、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された学習済み麹複数粒破精データ予測モデルを用いて、任意の製麹条件から麹複数粒破精データを予測することができるため、使用者は、実際に製麹を行わなくとも、製麹の結果についてシミュレーションを行うことができる。
【0142】
5.第5実施形態
第5実施形態の製麹条件及び破精分布から麹の酵素力価を予測する製麹支援システムについて説明する。
【0143】
第5実施形態において、酵素力価は、製麹された麹から所定分析法によって測定されるα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼの各酵素力価からなる。出麹の酵素力価は、製麹における指標の一つであり、麹の品質を表すものである。
【0144】
第5実施形態は、酵素力価として、α-アミラーゼ及びグルコアミラーゼを用いる構成となっている。ただし、本発明は、第5実施形態の構成に限定されず、上記の酵素力価に加えて、酸性プロテアーゼ、酸性カルボキシペプチダーゼ等の酵素力価を用いる構成としてもよい。
【0145】
第5実施形態の製麹の過程において、製麹条件は、第3実施形態と同様に、一連のデータとしてコンピュータの記憶手段101である記憶装置へ保存される。また、当該製麹条件で製麹された麹は、その一部が採取され、第1実施形態と同様の方法によって複数の麹1粒破精データに変換される。さらに、当該複数の麹1粒破精データは、それぞれ学習済み麹1粒クラス推定モデルへ入力され、複数の麹1粒クラスが出力される。上記の手順により取得された当該複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで、当該製麹条件で製麹された麹の破精分布が生成される。同時に、当該製麹条件で製麹された麹は、その一部が採取され、所定分析法により酵素力価を測定される。
【0146】
第5実施形態において、上述の方法により取得した製麹条件を1件の教師用製麹条件とし、当該製麹条件で製麹された麹から上述の方法により取得した破精分布を1件の教師用破精分布とし、当該製麹条件で製麹された麹から上述の方法により取得した酵素力価を1件の教師用酵素力価分析値とし、これらの教師用製麹条件、教師用破精分布、及び教師用酵素力価分析値により、一組の教師用データが作成される。一組の教師用データにおいて、教師用製麹条件及び教師用破精分布からなるデータは説明変数として機能し、教師用酵素力価分析値は目的変数として機能する。上記の手順による教師用データの作成を繰り返すことで、複数の教師用データが蓄積された教師用データセットが作成される。
【0147】
第5実施形態において、製麹条件及び破精分布から麹の酵素力価を予測する第1の学習済み酵素力価予測モデルは、上記教師用データセットを用いて、第1実施形態と同様に、学習済みモデル構築手段200により構築され、製麹支援システム100の記憶手段101に格納される。
【0148】
第5実施形態は、機械学習の手法である学習モデルとして、LRを用いる構成となっている。ただし、本発明は、第5実施形態の構成に限定されず、例えば、NN、RFR、SVR、DTなど、他の回帰アルゴリズムを用いる構成としてもよい。
【0149】
第5実施形態の第1の学習済み酵素力価予測モデルにおいて、製麹条件及び破精分布のデータは説明変数となり、酵素力価は目的変数となる。第5実施形態において、酵素力価がα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼの2種類なので、LRの目的変数は2つとなる。また、LRを用いるので、学習済みモデル構築手段200は、2つの目的変数に対して、同数である2つの第1の学習済み酵素力価予測モデルを構築することになる。本発明において、第5実施形態には限定されず、機械学習の手法である学習モデルとしてNNを用いる構成とした場合、学習済みモデル構築手段200は、当該2つの目的変数に対して、1つの第1の学習済み酵素力価予測モデルを構築することになる。
【0150】
第5実施形態において、第1の学習済み酵素力価予測モデルの構築に使用する教師用データセットは、180件を使用する。また、第1の学習済み酵素力価予測モデルの精度は、20件のテスト用データセットを使用して評価される。第5実施形態において、テスト用データセットは、第1実施形態と同様に、第1の学習済み酵素力価予測モデルの構築に使用していないものである。
【0151】
表4に示すように、第1の学習済み酵素力価予測モデルは、テスト用データセットにより、予測結果の精度を評価される。第5実施形態においては、予測結果の評価指標として、決定係数Rが用いられる。
【0152】
【表4】
【0153】
上記のテスト結果に示されるように、第1の学習済み酵素力価予測モデルは、入力された製麹条件及び破精分布に基づいて、精度の高い酵素力価の予測値を出力することが可能となっている。
【0154】
図1に示すように、第5実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。また、図8に示すように、第5実施形態の製麹支援プログラム300は、第1実施形態と同様に、入力ステップ301と、制御ステップ302と、出力ステップ303を備える。製麹支援プログラム300は、製麹支援システム100の記憶手段101に格納されている。制御ステップ302は、入力手段102により取得された麹1粒破精データである麹の画像データを加工する処理を制御し、出力された麹の画像データを加工したデータを記憶手段101に格納する処理を制御手段103に実行させる。入力ステップ301は、記憶手段101に格納された麹の画像データを加工したデータを記憶手段101に格納された学習済み麹1粒クラス推定モデルへ入力する。制御ステップ302は、学習済み麹1粒クラス推定モデルによる演算を制御し、出力された麹1粒クラスを各クラスの比率に変換し、変換することで生成された破精分布を記憶手段101に格納する処理を制御手段103に実行させる。入力ステップ301は、入力手段102により取得された製麹条件と記憶手段101に格納された破精分布を、記憶手段101に格納された第1の学習済み酵素力価予測モデルへ入力する。制御ステップ302は、第1の学習済み酵素力価予測モデルによる演算を制御し、入力された製麹条件及び破精分布に基づいて酵素力価を出力する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ303は、第1の学習済み酵素力価予測モデルにより出力された酵素力価を取得し、出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム300は、製麹条件及び破精分布から酵素力価を予測する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0155】
第5実施形態において、麹1粒破精データである麹の画像データを取得するための入力手段102は、カメラであり、製麹支援システム100は、入力手段102により取得された複数の麹の画像データを処理することで生成された破精分布を取得することができる。また、製麹条件を取得するための入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された製麹条件を取得することができる。
【0156】
本発明の製麹支援システム100は、NNを用いて構築された第1の学習済み酵素力価予測モデル、LRを用いて構築された第1の学習済み酵素力価予測モデル、RFRを用いて構築された第1の学習済み酵素力価予測モデルなど、それぞれ異なる手法により構築された複数の第1の学習済み酵素力価予測モデルを使用して、製麹条件及び破精分布から酵素力価を予測する構成としてもよい。また、それぞれ異なるハイパーパラメータを設定して同一の手法により構築された複数の第1の学習済み酵素力価予測モデルを使用する構成としてもよい。ここで、複数の第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、共通の製麹条件及び破精分布を入力して、それぞれ出力された酵素力価から平均値を算出し、当該平均値を最終的な予測結果として決定する構成としてもよい。
【0157】
第5実施形態の製麹支援システム100は、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第1の学習済み酵素力価予測モデルを用いて、任意の製麹条件及び当該任意の製麹条件に対応した破精分布から酵素力価を予測することができるため、使用者は、製麹が終了した直後に所定分析法で測定しなくても、酵素力価を予測することができ、当該予測結果に基づいて醪管理の微調整を行うことが可能となる。
【0158】
第5実施形態において、任意の製麹条件に対応した破精分布は、任意の製麹条件を学習済み麹1粒クラス推定モデルに入力して出力された複数の麹1粒クラスを各クラスの比率に変換することで生成された破精分布の実測値である。本発明において、任意の製麹条件に対応した破精分布は、第5実施形態に限定されず、第3実施形態の製麹条件から破精分布を予測する学習済み破精分布予測モデルから出力された破精分布の予測値であってもよい。ただし、製麹条件から破精分布を予測する学習済み破精分布予測モデルから出力された破精分布の予測値を使用する場合、当該学習済み破精分布予測モデルの予測精度に依るため、第5実施形態における破精分布の実測値を使用する場合よりも麹の酵素力価を予測する精度が劣るおそれがある。
【0159】
目的変数である酵素力価に代えて、菌体量など、麹から得られるその他の物性値を目的変数として予測することも可能である。
【0160】
6.第6実施形態
第6実施形態の製麹条件及び麹複数粒破精データから麹の酵素力価を予測する製麹支援システムについて説明する。
【0161】
第6実施形態において、麹複数粒破精データとは、第4実施形態と同様の手法により得られた1粒の麹から取得可能な破精データを複数集めたデータの平均値であって、複数粒の麹の輪郭検出データの平均値である。
【0162】
第6実施形態において、酵素力価は、第5実施形態と同様に、製麹された麹から所定分析法によって測定されるα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼの各酵素力価からなる。出麹の酵素力価は、製麹における指標の一つであり、麹の品質を表すものである。
【0163】
第6実施形態は、酵素力価として、α-アミラーゼ及びグルコアミラーゼを用いる構成となっている。ただし、本発明は、第6実施形態の構成に限定されず、上記の酵素力価に加えて、酸性プロテアーゼ、酸性カルボキシペプチダーゼ等の酵素力価を用いる構成としてもよい。
【0164】
第6実施形態の製麹の過程において、製麹条件は、第4実施形態と同様に、一連のデータとしてコンピュータの記憶手段101である記憶装置へ保存される。また、当該製麹条件で製麹された麹は、その一部が採取され、第2実施形態と同様の方法によって麹複数粒破精データに変換される。同時に、当該製麹条件で製麹された麹は、その一部が採取され、所定分析法により酵素力価を測定される。
【0165】
第6実施形態において、上述の方法により取得した製麹条件を1件の教師用製麹条件とし、当該製麹条件で製麹された麹から上述の方法により取得した麹複数粒破精データを1件の教師用麹複数粒破精データとし、当該製麹条件で製麹された麹から上述の方法により取得した酵素力価を1件の教師用酵素力価分析値とし、これらの教師用製麹条件、教師用麹複数粒破精データ、及び教師用酵素力価分析値により、一組の教師用データが作成される。一組の教師用データにおいて、教師用製麹条件及び教師用麹複数粒破精データからなるデータは説明変数として機能し、教師用酵素力価分析値は目的変数として機能する。上記の手順による教師用データの作成を繰り返すことで、複数の教師用データが蓄積された教師用データセットが作成される。
【0166】
第6実施形態において、製麹条件及び麹複数粒破精データから麹の酵素力価を予測する第2の学習済み酵素力価予測モデルは、上記教師用データセットを用いて、第1実施形態と同様に、学習済みモデル構築手段200により構築され、製麹支援システム100の記憶手段101に格納される。
【0167】
第6実施形態は、機械学習の手法である学習モデルとして、LRを用いる構成となっている。ただし、本発明は、第6実施形態の構成に限定されず、例えば、NN、RFR、SVR、DTなど、他の回帰アルゴリズムを用いる構成としてもよい。
【0168】
第6実施形態の第2の学習済み酵素力価予測モデルにおいて、製麹条件及び麹複数粒破精データは説明変数となり、酵素力価は目的変数となる。第6実施形態において、酵素力価がα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼの2種類なので、LRの目的変数は2つとなる。また、LRを用いるので、学習済みモデル構築手段200は、2つの目的変数に対して、同数である2つの第2の学習済み酵素力価予測モデルを構築することになる。本発明において、第6実施形態には限定されず、機械学習の手法である学習モデルとしてNNを用いる構成とした場合、学習済みモデル構築手段200は、当該2つの目的変数に対して、1つの第2の学習済み酵素力価予測モデルを構築することになる。
【0169】
第6実施形態において、第2の学習済み酵素力価予測モデルの構築に使用する教師用データセットは、180件を使用する。また、第2の学習済み酵素力価予測モデルの精度は、20件のテスト用データセットを使用して評価される。第6実施形態において、テスト用データセットは、第1実施形態と同様に、第2の学習済み酵素力価予測モデルの構築に使用していないものである。
【0170】
表5に示すように、第2の学習済み酵素力価予測モデルは、テスト用データセットにより、予測結果の精度を評価される。第6実施形態においては、予測結果の評価指標として、決定係数Rが用いられる。
【0171】
【表5】
【0172】
上記のテスト結果に示されるように、第2の学習済み酵素力価予測モデルは、入力された製麹条件及び麹複数粒破精データに基づいて、精度の高い酵素力価の予測値を出力することが可能となっている。
【0173】
図1に示すように、第6実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。また、図8に示すように、第6実施形態の製麹支援プログラム300は、第1実施形態と同様に、入力ステップ301と、制御ステップ302と、出力ステップ303を備える。製麹支援プログラム300は、製麹支援システム100の記憶手段101に格納されている。制御ステップ302は、入力手段102により取得された麹の画像データを加工する処理を制御し、出力された加工したデータを記憶手段101に格納する処理を制御手段103に実行させる。入力ステップ301は、記憶手段101に格納された加工したデータを輪郭検出部に入力する。制御ステップ302は、輪郭検出部による処理を制御し、出力された複数の輪郭検出データを記憶手段101に格納する処理を制御手段103に実行させる。制御ステップ302は、記憶手段101に格納された複数の輪郭検出データを平均し、平均値化された複数の輪郭検出データを麹複数粒破精データとして記憶手段101に格納する処理を制御手段103に実行させる。入力ステップ301は、入力手段102により取得された製麹条件と記憶手段101に格納された麹複数粒破精データを記憶手段101に格納された第2の学習済み酵素力価予測モデルへ入力する。制御ステップ302は、第2の学習済み酵素力価予測モデルによる演算を制御し、入力された製麹条件及び麹複数粒破精データに基づいて酵素力価を出力する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ303は、第2の学習済み酵素力価予測モデルにより出力された酵素力価を取得し、出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム300は、製麹条件及び麹複数粒破精データから酵素力価を予測する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0174】
第6実施形態において、麹1粒破精データである麹の画像データを取得するための入力手段102は、カメラであり、製麹支援システム100は、入力手段102により取得された複数の麹の画像データを処理することで生成された麹複数粒破精データを取得することができる。また、製麹条件を取得するための入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された製麹条件を取得することができる。
【0175】
本発明の製麹支援システム100は、NNを用いて構築された第2の学習済み酵素力価予測モデル、LRを用いて構築された第2の学習済み酵素力価予測モデル、RFRを用いて構築された第2の学習済み酵素力価予測モデルなど、それぞれ異なる手法により構築された複数の第2の学習済み酵素力価予測モデルを使用して、製麹条件及び麹複数粒破精データから酵素力価を予測する構成としてもよい。また、それぞれ異なるハイパーパラメータを設定して同一の手法により構築された複数の第2の学習済み酵素力価予測モデルを使用する構成としてもよい。ここで、複数の第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、共通の製麹条件及び麹複数粒破精データを入力して、それぞれ出力された酵素力価から平均値を算出し、当該平均値を最終的な予測結果として決定する構成としてもよい。
【0176】
第6実施形態の製麹支援システム100は、機械学習の手法である学習モデルに機械学習を実行させることで構築された第2の学習済み酵素力価予測モデルを用いて、任意の製麹条件及び当該任意の製麹条件に対応した麹複数粒破精データから酵素力価を予測することができるため、使用者は、製麹が終了した直後に酵素力価を予測することができ、当該予測結果に基づいて醪管理の微調整を行うことが可能となる。
【0177】
第6実施形態において、任意の製麹条件に対応した麹複数粒破精データは、製麹された複数粒の麹から取得された画像データを加工したデータである。本発明において、任意の製麹条件に対応した麹複数粒破精データは、第6実施形態に限定されず、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに任意の製麹条件を入力して出力された麹複数粒破精データの予測値であってもよい。ただし、製麹条件から麹複数粒破精データを予測する学習済み麹複数粒破精データ予測モデルから出力された麹複数粒破精データの予測値を使用する場合、当該学習済み麹複数粒破精データ予測モデルの予測精度に依るため、第6実施形態における麹複数粒破精データの実測値を使用する場合よりも麹の酵素力価を予測する精度が劣るおそれがある。
【0178】
目的変数である酵素力価に代えて、菌体量など、麹から得られるその他の物性値を目的変数として予測することも可能である。
【0179】
7.第7実施形態
第7実施形態の検索条件に対して製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する製麹支援システムについて説明する。
【0180】
第7実施形態において、製麹条件は、種付量、水分、床工程における1、5、15、22時間の各品温、及び、棚工程における1、5、10、15、20、24時間の各品温からなる計12種類の条件データにより構成される。
【0181】
第7実施形態において、基準となる1件の製麹条件(以下、「基準製麹条件」という。)を構成する各条件データに対して、3つの水準を設定し、設定された各条件データの組合せから構成される全ての製麹条件をそれぞれ保存することにより、複数のデータベース構成用の製麹条件が作成される。
【0182】
第7実施形態は、基準製麹条件として、過去に実際に行った製麹において記録された製麹条件を用いる構成となっている。基準製麹条件を構成する各条件データの有する値を基準値として説明する。3つの水準とは、基準値から所定の値を減算する水準、基準値をそのまま用いる水準、基準値に所定の値を加算する水準からなる。
【0183】
第7実施形態においては、基準製麹条件を構成する条件データである種付量に対して、基準値-0.01g/kg、基準値、基準値+0.01g/kgからなる3つの水準が設定される。また、基準製麹条件を構成する条件データである水分に対して、基準値-1%、基準値、基準値+1%からなる3つの水準が設定される。さらに、基準製麹条件を構成する条件データである各品温に対して、基準値-1℃、基準値、基準値+1℃からなる3つの水準が設定される。
【0184】
第7実施形態において、基準製麹条件を構成する計12種類の各条件データに対して、3つの水準を設定し、設定された各条件データの組合せから構成される全ての製麹条件をそれぞれ保存することにより、約53万件(312件)のデータベース構成用の製麹条件が作成される。
【0185】
本発明は、第7実施形態の構成に限定されず、水準の数を変更してもよく、例えば、基準製麹条件を構成する条件データである各品温に対して、基準値-2℃、基準値-1℃、基準値、基準値+1℃、基準値+2℃からなる5つの水準を設定する構成としてもよい。また、基準製麹条件として、過去に実際に行った製麹において記録された複数の製麹条件の平均値を用いる構成としてもよく、使用者が妥当と判断した製麹条件を用いる構成としてもよい。さらに、基準製麹条件を設定せず、データベース構成用の製麹条件として、過去に実際に行った製麹において蓄積された数多くの製麹条件を用いる構成としてもよく、使用者が妥当と判断した数多くの製麹条件を用いる構成としてもよい。
【0186】
第7実施形態は、データベース構成用の破精分布として、第3実施形態の学習済み破精分布予測モデルに対して、データベース構成用の製麹条件を入力することにより出力された破精分布を用いる構成となっている。
【0187】
第7実施形態において、1件のデータベース構成用の製麹条件と、当該データベース構成用の製麹条件を学習済み破精分布予測モデルへ入力することにより出力された1件のデータベース構成用の破精分布とにより、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを構成する1件のレコードが作成される。上記の手順によるレコードの作成を繰り返すことで、約53万件のレコードにより構成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースが作成される。
【0188】
第7実施形態において、麹クラスの比率データとは、破精分布における各クラスの比率で表されるデータである。
【0189】
第7実施形態において、目標データとは、破精分布を構成する各麹クラスの比率データのことであり、目標データは、1つ以上のデータを含むものであればよい。第7実施形態において、目標データは、個数を増やして検索条件とすることが好ましい。目標データの個数を増やして使用することで、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードのうちから、最適な製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する精度を上げることができる。
【0190】
第7実施形態においては、目標データとして、各麹クラスの比率データの全てを設定することができる。例えば、使用者は、クラス0の比率データを「10」、クラス1の比率データを「40」、クラス2の比率データを「30」、クラス3の比率データを「20」として設定し、これらの比率データを、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースからデータを検索する際の目標データとすることができる。また、破精分布を構成する全ての麹クラスについて比率データを設定しないで、例えば、使用者は、クラス1の比率データを「40」として設定し、当該比率データを、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースからデータを検索する際の目標データとすることができる。
【0191】
図1に示すように、第7実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースは、記憶手段101に格納されている。また、記憶手段101には、製麹支援プログラム400も格納されている。第7実施形態の入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された麹クラスの比率データを取得することができる。
【0192】
図12に示すように、第7実施形態の製麹支援プログラム400は、入力ステップ401と、検索ステップ402と、出力ステップ403を備える。入力ステップ401は、入力手段102により取得された麹クラスの比率データを検索ステップ402へ受け渡す。検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡された麹クラスの比率データと、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる麹クラスの比率データとの二乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Squared Error)を算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び破精分布の組合せ候補として取得する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ403は、取得された製麹条件及び破精分布の組合せ候補を出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム400は、検索条件に対して製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0193】
第7実施形態において、例えば、クラス0の比率データを「10」、クラス1の比率データを「40」、クラス2の比率データを「30」、クラス3の比率データを「20」として、4つの麹クラスの比率データを含む目標データが設定された場合、検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡されたこれらの麹クラスの比率データと、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれるクラス0~3からなる4つの麹クラスの比率データとのRMSEを算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び破精分布の組合せ候補として取得する。また、例えば、クラス1の比率データを「40」として、1つの麹クラスの比率データを含む目標データが設定された場合、検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡された当該麹クラスの比率データと、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれるクラス1からなる1つの麹クラスの比率データとのRMSEを算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び破精分布の組合せ候補として取得する。
【0194】
本発明は、第7実施形態の構成に限定されず、検索ステップは、算出されたRMSEが一定の値よりも小さいレコードを全て取得する構成としてもよく、また、算出されたRMSEが小さい順にレコードを並べ、上位のレコードから一定の数だけ取得する構成としてもよい。また、検索ステップは、RMSEに代えて、平均絶対誤差(MAE:Mean Absolute Error)など、その他の評価指標を用いてレコードを取得する構成としてもよい。
【0195】
第7実施形態において、製麹支援システム100は、使用者により検索条件として設定された破精分布の目標値と、抽出された製麹条件を用いて実際に製麹を行うことにより取得された破精分布の実測値とを比較することで、抽出結果の精度を評価される。
【0196】
第7実施形態において、抽出結果の精度を評価するための破精分布の目標値として、[クラス0:20%、クラス1:40%、クラス2:30%、クラス3:10%]を設定した。製麹支援システム100は、当該破精分布の目標値を構成する麹クラスの比率データに基づいて、[種付量:0.01g/kg、水分:33.0%、床工程1h品温:31.0℃、床工程5h品温:31.0℃、床工程15h品温:31.5℃、床工程22h品温:32.0℃、棚工程1h品温:33.0℃、棚工程5h品温:34.0℃、棚工程10h品温:38.0℃、棚工程15h品温:42.0℃、棚工程20h品温:43.0℃、棚工程24h品温:43.0℃]からなる製麹条件を抽出した。抽出された製麹条件を用いて実際に製麹を行うと、[クラス0:19%、クラス1:48%、クラス2:29%、クラス3:5%]からなる破精分布の実測値が取得された。当該破精分布の目標値と当該破精分布の実測値とのRMSEは、約4.8である。当該RMSEの数値は、実用上支障ない範囲であると評価される。
【0197】
上記のテスト結果に示されるように、製麹支援システム100は、検索条件に対して、製麹条件及び破精分布の組合せ候補を高い精度で抽出することが可能となっている。
【0198】
第7実施形態は、データベース構成用の破精分布として、学習済み破精分布予測モデルに対して、データベース構成用の製麹条件を入力することにより出力された破精分布を用いる構成となっている。こうした構成とすることで、大量に作成されたデータベース構成用の製麹条件を基に、大量のデータベース構成用の破精分布を作成することが可能となる。
【0199】
第7実施形態の製麹支援システム100は、各麹クラスの比率データのうちの1つ以上に基づいて、製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出することができるため、使用者は、目標となる全ての麹クラスの比率データからなる破精分布又はその一部である麹クラスの比率データを入力することにより、当該目標となる破精分布又は麹クラスの比率データを得るために必要な製麹条件を分析することができる。
【0200】
本発明は、第7実施形態の構成に限定されず、上述の方法により作成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースに対して、実際に行った製麹において記録された製麹条件及び破精分布の実測値からなるレコードを追加する構成としてもよく、製麹支援システム100は、これらのレコードが追加された実測値追加型の製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを用いて、製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出してもよい。
【0201】
8.第8実施形態
第8実施形態の検索条件に対して製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出する製麹支援システムについて説明する。
【0202】
第8実施形態において、データベース構成用の製麹条件は、第7実施形態と同様の方法により作成される。第8実施形態は、データベース構成用の麹複数粒破精データとして、第4実施形態の学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対して、当該データベース構成用の製麹条件を入力することにより出力された麹複数粒破精データを用いる構成となっている。
【0203】
第8実施形態において、1件のデータベース構成用の製麹条件と、当該データベース構成用の製麹条件を学習済み麹複数粒破精データ予測モデルへ入力することにより出力された1件のデータベース構成用の麹複数粒破精データとにより、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する1件のレコードが作成される。上記の手順によるレコードの作成を繰り返すことで、約53万件のレコードにより構成された製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースが作成される。
【0204】
第8実施形態において、麹複数粒破精データを構成する破精データとは、第4実施形態と同様に、複数粒の麹の破精部面積の平均値、複数粒の黒率の平均値、複数粒の周長の平均値、及び複数粒の集落個数の平均値の4種類からなるデータである。第8実施形態においては、麹100粒分の各破精データの平均値である。
【0205】
第8実施形態において、目標データとは、麹複数粒破精データを構成する各破精データのことであり、目標データは、1つ以上のデータを含むものであればよい。第8実施形態において、目標データは、個数を増やして検索条件とすることが好ましい。目標データの個数を増やして使用することで、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードのうちから、最適な製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出する精度を上げることができる。
【0206】
第8実施形態においては、目標データとして、各破精データの全てを設定することができる。例えば、使用者は、破精部面積の破精データを「200」、黒率の破精データを「0.20」、周長の破精データを「85」、集落個数の破精データを「3」として設定し、これらの破精データを、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースからデータを検索する際の目標データとすることができる。また、麹複数粒破精データを構成する各破精データの全てを設定しないで、例えば、使用者は、破精部面積の破精データを「200」として設定し、当該破精データを、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースからデータを検索する際の目標データとすることができる。
【0207】
図1に示すように、第8実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースは、記憶手段101に格納されている。また、記憶手段101には、製麹支援プログラム400も格納されている。第8実施形態の入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された破精データを取得することができる。
【0208】
図12に示すように、第8実施形態の製麹支援プログラム400は、入力ステップ401と、検索ステップ402と、出力ステップ403を備える。入力ステップ401は、入力手段102により取得された破精データを検索ステップ402へ受け渡す。検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡された破精データと、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる破精データとのRMSEを算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補として取得する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ403は、取得された製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム400は、検索条件に対して製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0209】
第8実施形態において、RMSEは、目標とする破精データと製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる破精データとの差を二乗した値を用いて算出されるのではなく、目標とする破精データと製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる破精データとの差を、当該目標とする破精データの数値で除算することで、当該目標とする破精データに対する相対的な数値とする。当該相対的な数値をそれぞれ二乗して加算し、データ数で除算した数値を平方根した値を用いる。各破精データの取り得る値の範囲は、破精データの種類によって大きく異なるため、一般的な方法によると、値の大きい破精データに強い影響を与えられたRMSEが算出される。一方、第8実施形態は、上述の方法によりRMSEを算出することで、異なる種類の各破精データを同等に処理して評価することができる。詳細については、具体的な数値を用いて後述する。
【0210】
第8実施形態において、例えば、破精部面積の破精データを「200」、黒率の破精データを「0.20」、周長の破精データを「85」、集落個数の破精データを「3」として、4つの破精データを含む目標データが設定された場合、検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡されたこれらの破精データと、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる破精部面積、黒率、周長、及び集落個数からなる4つの破精データ(例えば、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードのうちの1件:破精部面積の破精データ「190」、黒率の破精データ「0.18」、周長の破精データ「80」、集落個数の破精データ「3」)との差を、目標とする破精データに対する相対的な数値に変換する。具体的には、目標とする破精部面積の破精データ「200」と製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成するレコードの破精部面積の破精データとの偏差「10」を算出し、偏差「10」を目標とする破精部面積の破精データ「200」で除算することにより取得された「0.05(5%)」を、「5」からなる相対的な数値に変換する。黒率、周長、及び集落個数についても同様の手法により各破精データについても相対的な数値を算出し、それぞれ「10」、「6」、及び「0」からなる目標とする各破精データに対する相対的な数値を取得する。次に算出された4つの相対的な数値をそれぞれ二乗し、二乗した4つの数値を加算する。加算した数値をデータ数(n=4)で除算して、平方根することでRMSE「6.3」の値が算出される。各レコードに対して算出されたRMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補として取得する。また、第8実施形態において、例えば、破精部面積の破精データを「300」として、1種類の破精データを含む目標データが設定された場合、検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡された当該破精データと、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる破精部面積からなる1種類の破精データとのRMSEを算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補として取得する。
【0211】
本発明は、第8実施形態の構成に限定されず、検索ステップは、算出されたRMSEが一定の値よりも小さいレコードを全て取得する構成としてもよく、また、算出されたRMSEが小さい順にレコードを並べ、上位のレコードから一定の数だけ取得する構成としてもよい。また、検索ステップは、RMSEに代えて、平均絶対誤差(MAE:Mean Absolute Error)など、その他の評価指標を用いてレコードを取得する構成としてもよい。
【0212】
第8実施形態において、製麹支援システム100は、使用者により検索条件として設定された麹複数粒破精データの目標値と、抽出された製麹条件を用いて実際に製麹を行うことにより取得された麹複数粒破精データの実測値とを比較することで、抽出結果の精度を評価される。
【0213】
第8実施形態は、データベース構成用の麹複数粒破精データとして、学習済み麹複数粒破精データ予測モデルに対して、データベース構成用の製麹条件を入力することにより出力された麹複数粒破精データを用いる構成となっている。こうした構成とすることで、大量に作成されたデータベース構成用の製麹条件を基に、大量のデータベース構成用の麹複数粒破精データを作成することが可能となる。
【0214】
第8実施形態の製麹支援システム100は、各破精データのうちの1つ以上に基づいて、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出することができるため、使用者は、目標となる全ての破精データからなる麹複数粒破精データ又はその一部である破精データを入力することにより、当該目標となる麹複数粒破精データ又は破精データを得るために必要な製麹条件を分析することができる。
【0215】
本発明は、第8実施形態の構成に限定されず、上述の方法により作成された製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースに対して、実際に行った製麹において記録された製麹条件及び麹複数粒破精データの実測値からなるレコードを追加する構成としてもよく、製麹支援システム100は、これらのレコードが追加された実測値追加型の製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補抽出用データベースを用いて、製麹条件及び麹複数粒破精データの組合せ候補を抽出してもよい。
【0216】
9.第9実施形態
第9実施形態の検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する製麹支援システムについて説明する。
【0217】
第9実施形態において、データベース構成用の製麹条件は、第7実施形態と同様の方法により作成される。破精分布は、当該データベース構成用の製麹条件を入力として、第3実施形態と同様の方法により作成される。また、データベース構成用の酵素力価は、第5実施形態と同様の方法により作成される。
【0218】
第9実施形態において、1件のデータベース構成用の製麹条件と、第1の学習済み酵素力価予測モデルに対し、当該1件のデータベース構成用の製麹条件と、当該1件のデータベース構成用の製麹条件を学習済み破精分布予測モデルへ入力することにより出力された1件の破精分布とを入力して出力された1件のデータベース構成用の酵素力価とにより、第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する1件のレコードが作成される。上記の手順によるレコードの作成を繰り返すことで、複数のレコードが蓄積された第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースが作成される。
【0219】
第9実施形態において、酵素力価を構成する各酵素力価データは、α-アミラーゼ及びグルコアミラーゼであり、α-アミラーゼが700(unit/g・麹)の数値を有し、グルコアミラーゼが200(unit/g・麹)の数値を有する場合、α-アミラーゼの酵素力価データは「700」であり、グルコアミラーゼの酵素力価データは「200」である。
【0220】
第9実施形態において、目標データとは、酵素力価を構成する各酵素力価データのことであり、目標データは、1つ以上のデータを含むものであればよい。目標データは、個数を増やして検索条件とすることが好ましい。目標データの個数を増やして使用することで、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードのうちから、最適な製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する精度を上げることができる。
【0221】
第9実施形態においては、目標データとして、各酵素力価データの全てを設定することができる。例えば、使用者は、α-アミラーゼの酵素力価データを「700」、グルコアミラーゼの酵素力価を「200」として設定し、これらの酵素力価データを第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースからデータを検索する際の目標データとすることができる。また、酵素力価を構成する全てのデータについて酵素力価データを設定しないで、例えば、使用者は、α-アミラーゼの酵素力価データを「700」として設定し、当該酵素力価データを第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースからデータを検索する際の目標データとすることができる。
【0222】
図1に示すように、第9実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースは、記憶手段101に格納される。また、記憶手段101には、製麹支援プログラム400も格納されている。入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された目標データである各酵素力価データを取得することができる。
【0223】
図12に示すように、第9実施形態の製麹支援プログラム400は、入力ステップ401と、検索ステップ402と、出力ステップ403を備える。入力ステップ401は、入力手段102により取得された各酵素力価データを検索ステップ402へ受け渡す。検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡された各酵素力価データと、第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる酵素力価データとのRMSEを算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補として取得する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ403は、取得された製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム400は、検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0224】
第9実施形態において、RMSEは、第8実施形態と同様に、目標とする各酵素力価データと第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる各酵素力価データとの差を、目標とする各酵素力価データで除算することで、当該目標とする各酵素力価データに対する相対的な数値とする。当該相対的な数値をそれぞれ二乗して加算し、データ数で除算した数値を平方根した値を用いる。各酵素力価データの取り得る値の範囲は、酵素力価データの種類によって大きく異なるため、一般的な方法によると、値の大きい酵素力価データに強い影響を与えられたRMSEが算出される。上述の方法によりRMSEを算出することで、異なる種類の各酵素力価データを同等に処理して評価することができる。
【0225】
第9実施形態において、使用者は、酵素力価の目標値を設定し、製麹支援システム100は、当該酵素力価の目標値を構成する酵素力価データに基づいて、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する構成となっている。ここで、製麹支援システム100は、使用者により検索条件として設定された酵素力価の目標値と、抽出された製麹条件を用いて実際に製麹を行うことにより取得された酵素力価の実測値とを比較することで、抽出結果の精度を評価される。
【0226】
第9実施形態において、抽出結果の精度を評価するための酵素力価の目標データとして、α-アミラーゼ[700]及びグルコアミラーゼ[200]を設定した。製麹支援システム100は、当該酵素力価の目標値を構成する酵素力価データに基づいて、[種付量:0.02g/kg、水分:34.0%、床工程1h品温:31.0℃、床工程5h品温:31.0℃、床工程15h品温:31.5℃、床工程22h品温:32.0℃、棚工程1h品温:33.0℃、棚工程5h品温:35.0℃、棚工程10h品温:40.0℃、棚工程15h品温:43.0℃、棚工程20h品温:44.0℃、棚工程24h品温:44.0℃]からなる製麹条件を抽出した。抽出された製麹条件を用いて実際に製麹を行うと、α-アミラーゼ[720]及びグルコアミラーゼ[210]からなる酵素力価の実測値が取得された。当該酵素力価の目標値と当該酵素力価の実測値とのRMSEは、約4.1である。当該RMSEの数値は、実用上支障ない範囲であると評価される。
【0227】
上記のテスト結果に示されるように、製麹支援システム100は、検索条件に対して、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を高い精度で抽出することが可能となっている。
【0228】
第9実施形態は、データベース構成用の酵素力価として、第1の学習済み酵素力価予測モデルに対して、データベース構成用の製麹条件と破精分布とを入力することにより出力された酵素力価を用いる構成となっている。こうした構成とすることで、大量に作成されたデータベース構成用の製麹条件を基に、大量のデータベース構成用の酵素力価を作成することが可能となる。
【0229】
第9実施形態の製麹支援システム100は、各酵素力価データのうちの1つ以上に基づいて、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出することができるため、使用者は、目標となる全ての酵素力価データ又はその一部である酵素力価データを入力することにより、当該目標となる酵素力価又は酵素力価データを得るために必要な製麹条件を分析することができる。
【0230】
本発明は、第9実施形態の構成に限定されず、上述の方法により作成された第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースに対して、実際に行った製麹において記録された製麹条件及び酵素力価の実測値からなるレコードを追加する構成としてもよく、製麹支援システム100は、これらのレコードが追加された実測値追加型の第1の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを用いて、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出してもよい。
【0231】
本発明において、第9実施形態に限定されず、製麹条件、破精分布、及び酵素力価から構成される製麹条件、破精分布、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースとしてもよい。この場合、破精分布には、データベース構成用の製麹条件を学習済み破精分布予測モデルへ入力することにより出力されたデータベース構成用の破精分布を使用することができる。
【0232】
本発明において、製麹条件、破精分布、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを使用する場合でも、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件とすることができる。また、製麹条件、破精分布、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを使用する場合、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データに加え、製麹条件を構成する任意の各条件データのうちの1つ以上の目標データ、又は破精分布を構成する任意の各麹クラスの比率データのうちの1つ以上の目標データを追加して検索条件とするように、目標データの個数又は種類を増やした検索条件とすることができる。目標データの個数又は種類を増やして使用することで、製麹条件、破精分布、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードのうちから、最適な製麹条件、破精分布、及び酵素力価の組合せ候補を抽出することができる。
【0233】
本発明において、製麹条件、破精分布、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを使用する場合、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件とすることに代えて、製麹条件を構成する任意の各条件データのうちの1つ以上、又は破精分布を構成する任意の各麹クラスの比率データのうちの1つ以上の目標データを検索条件としてもよい。
【0234】
10.第10実施形態
第10実施形態の検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する製麹支援システムについて説明する。
【0235】
第10実施形態において、データベース構成用の製麹条件は、第7実施形態と同様の方法により作成される。麹複数粒破精データは、当該データベース構成用の製麹条件を入力として、第4実施形態と同様の方法により作成される。また、データベース構成用の酵素力価として、第6実施形態と同様の方法により作成される。
【0236】
第10実施形態において、1件のデータベース構成用の製麹条件と、第2の学習済み酵素力価予測モデルに対し、当該1件のデータベース構成用の製麹条件と、当該1件のデータベース構成用の製麹条件を入力として学習済み麹複数粒破精データ予測モデルにより出力された1件の麹複数粒破精データとを入力することにより出力された1件のデータベース構成用の酵素力価とにより、第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する1件のレコードが作成される。上記の手順によるレコードの作成を繰り返すことで、複数のレコードが蓄積された第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースが作成される。
【0237】
第10実施形態において、酵素力価データとは、第9実施形態と同様に、酵素力価を構成する各酵素力価データである。
【0238】
第10実施形態において、目標データとは、酵素力価を構成する各酵素力価データのことであり、目標データは、1つ以上のデータを含むものであればよい。目標データは、個数を増やして検索条件とすることが好ましい。目標データの個数を増やして使用することで、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードのうちから、最適な製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する精度を上げることができる。
【0239】
第10実施形態においては、目標データとして、第9実施形態と同様に、各酵素力価データの全てを設定することができる。
【0240】
図1に示すように、第10実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースは、記憶手段101に格納される。また、記憶手段101には、製麹支援プログラム400も格納されている。入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された目標データである各酵素力価データを取得することができる。
【0241】
図12に示すように、第10実施形態の製麹支援プログラム400は、入力ステップ401と、検索ステップ402と、出力ステップ403を備える。入力ステップ401は、入力手段102により取得された各酵素力価データを検索ステップ402へ受け渡す。検索ステップ402は、入力ステップ401から受け渡された各酵素力価データと、第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる酵素力価データとのRMSEを算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件及び酵素力価の組合せ候補として取得する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ403は、取得された製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム400は、検索条件に対して製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0242】
第10実施形態において、RMSEは、第9実施形態と同様に、目標とする各酵素力価データと第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる各酵素力価データとの差を、目標とする各酵素力価データで除算することで、当該目標とする各酵素力価データに対する相対的な数値とする。当該相対的な数値をそれぞれ二乗して加算し、データ数で除算した数値を平方根した値を用いる。各酵素力価データの取り得る値の範囲は、酵素力価データの種類によって大きく異なるため、一般的な方法によると、値の大きい酵素力価データに強い影響を与えられたRMSEが算出される。上述の方法によりRMSEを算出することで、異なる種類の各酵素力価データを同等に処理して評価することができる。
【0243】
第10実施形態において、使用者は、酵素力価の目標値を設定し、製麹支援システム100は、当該酵素力価の目標値を構成する酵素力価データに基づいて、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出する構成となっている。ここで、製麹支援システム100は、使用者により検索条件として設定された酵素力価の目標値と、抽出された製麹条件を用いて実際に製麹を行うことにより取得された酵素力価の実測値とを比較することで、抽出結果の精度を評価される。
【0244】
第10実施形態は、データベース構成用の酵素力価として、第2の学習済み酵素力価予測モデルに対して、データベース構成用の製麹条件と麹複数粒破精データとを入力することにより出力された酵素力価を用いる構成となっている。こうした構成とすることで、大量に作成されたデータベース構成用の製麹条件を基に、大量のデータベース構成用の酵素力価を作成することが可能となる。
【0245】
第10実施形態の製麹支援システム100は、各酵素力価データのうちの1つ以上に基づいて、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出することができるため、使用者は、目標となる全ての酵素力価データ又はその一部である酵素力価データを入力することにより、当該目標となる酵素力価又は酵素力価データを得るために必要な製麹条件を分析することができる。
【0246】
本発明は、第10実施形態の構成に限定されず、上述の方法により作成された第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースに対して、実際に行った製麹において記録された製麹条件及び酵素力価の実測値からなるレコードを追加する構成としてもよく、製麹支援システム100は、これらのレコードが追加された実測値追加型の第2の製麹条件及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを用いて、製麹条件及び酵素力価の組合せ候補を抽出してもよい。
【0247】
本発明において、第10実施形態に限定されず、製麹条件、麹複数粒破精データ、及び酵素力価から構成される製麹条件、麹複数粒破精データ、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースとしてもよい。この場合、麹複数粒破精データには、データベース構成用の製麹条件を学習済み麹複数粒破精データ予測モデルへ入力することにより出力されたデータベース構成用の麹複数粒破精データを使用することができる。
【0248】
本発明において、製麹条件、麹複数粒破精データ、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを使用する場合でも、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件とすることができる。また、製麹条件、麹複数粒破精データ、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを使用する場合、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データに加え、製麹条件を構成する任意の各条件データのうちの1つ以上の目標データ、又は麹複数粒破精データを構成する任意の各破精データのうちの1つ以上の目標データを追加して検索条件とするように、目標データの個数又は種類を増やした検索条件とすることができる。目標データの個数又は種類を増やして使用することで、製麹条件、麹複数粒破精データ、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードのうちから、最適な製麹条件、麹複数粒破精データ、及び酵素力価の組合せ候補を抽出することができる。
【0249】
製麹条件、麹複数粒破精データ、及び酵素力価の組合せ候補抽出用データベースを使用する場合、酵素力価を構成する任意の各酵素力価データのうちの1つ以上の目標データを検索条件とすることに代えて、製麹条件を構成する任意の各条件データのうちの1つ以上、又は麹複数粒破精データを構成する任意の各破精データのうちの1つ以上の目標データを検索条件としてもよい。
【0250】
11.第11実施形態
第11実施形態の製麹の途中に目標データの破精分布とこれまでの製麹条件を構成する条件データからなる検索条件に対して修正されたこれからの製麹条件を構成する条件データを抽出する製麹支援システムについて説明する。
【0251】
第11実施形態において、実際に行った製麹の各工程において取得された条件データを、条件データの実測値として説明する。また、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースから抽出された製麹条件を、製麹条件の予測値として説明し、当該製麹条件の予測値を構成する条件データを、条件データの予測値として説明する。
【0252】
第11実施形態において、使用者は、破精分布の目標値を設定する。また、第11実施形態の製麹支援システム100は、第7実施形態と同様の方法により、使用者により設定された破精分布の目標値を基に、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースから製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する。使用者は、抽出された条件データの予測に従って、実際に製麹を行う。各条件データの予測値と各条件データの実測値の差が大きくなり、目標とする破精分布から乖離する恐れがある場合、目標とする破精分布に近づけるため、製麹の途中に、これまでの条件データの実測値を考慮して改めて製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを作成する。作成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースに対し、初めに設定した破精分布の目標値を設定し、これからの条件データを取得することで、製麹の途中に製麹条件を修正することができる。
【0253】
実際の製麹において、例えば品温など、条件データの全てを完全に制御することは困難であるため、各条件データの予測値と、各条件データの実測値は、同一の値とならない場合がある。このような場合において、製麹条件の予測値に従って製麹を続けると、当該製麹により得られる出麹の破精分布は、目標とする破精分布から乖離するおそれがある。このため、目標とする破精分布に近づけるために、製麹の途中において、製麹条件を修正する必要がある。
【0254】
第11実施形態の製麹支援システム100は、製麹の途中において、条件データの実測値及び条件データの予測値から製麹条件を作成する。具体的には、まず、製麹支援システム100は、当該製麹条件を構成する条件データのうち、既に条件データの実測値が取得されている部分について、条件データの実測値を採用する。次に、製麹支援システム100は、当該製麹条件を構成する条件データのうち、未だ条件データの実測値が取得されていない部分について、これまで設定されていた条件データの予測値を採用する。これにより、設定された各条件データの実測値及び各条件データの予測値により構成された基準製麹条件が作成される。
【0255】
第11実施形態の製麹支援システム100は、基準製麹条件を基に、第7実施形態と同様の方法により、複数のデータベース構成用の製麹条件を作成する。なお、第11実施形態において、基準製麹条件を構成する条件データのうち、条件データの実測値からなる部分は、固定値であるため、水準の設定が行われない構成となっている。
【0256】
例えば、基準製麹条件を構成する条件データが計12種類であり、基準製麹条件を構成する条件データのうち、固定値である実測値からなる条件データが計7種類であり、予測値からなる条件データが計5種類である場合においては、条件データの予測値からなる各条件データに対して、3つの水準が設定され、設定された各条件データの組合せから構成される全ての製麹条件がそれぞれ保存されることにより、243件(3件)のデータベース構成用の製麹条件が作成される。
【0257】
第11実施形態の製麹支援システム100は、当該データベース構成用の製麹条件を用いて、第7実施形態と同様の方法により、データベース構成用の製麹条件と、データベース構成用の破精分布とにより構成される製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを作成する。
【0258】
第11実施形態の製麹支援システム100は、破精分布の目標値を構成する麹クラスの比率データを目標データとして、第7実施形態と同様の方法により、当該作成した製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースからデータを検索し、製麹条件及び破精分布の組合せ候補を抽出する。
【0259】
第11実施形態の製麹支援システム100は、当該抽出された製麹条件を、製麹の途中において修正された製麹条件(以下、「製麹条件の修正値」という。)として取得する。
【0260】
図1に示すように、第11実施形態の製麹支援システム100は、第1実施形態と同様に、記憶手段101と、入力手段102と、制御手段103と、出力手段104を備える。第11実施形態において、データベース構成用の製麹条件とデータベース構成用の破精分布とにより構成された製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースは、記憶手段101に格納される。
【0261】
第11実施形態において、入力手段102は、キーボードであり、製麹支援システム100は、入力手段102により数値として入力された破精分布の目標値及び条件データの実測値を取得することができる。
【0262】
第11実施形態の製麹支援システム100において、記憶手段101は、製麹支援プログラム400を格納する。また、制御手段103は、製麹支援プログラム400による命令を実行する。
【0263】
図12に示すように、第11実施形態の製麹支援プログラム400は、入力ステップ401と、検索ステップ402と、出力ステップ403を備える。入力ステップ401は、入力手段102により取得された破精分布の目標値、条件データの予測値、及び条件データの実測値を検索ステップ402へ受け渡す。検索ステップ402は、受け渡された条件データの予測値及び製麹条件を構成する条件データの実測値に基づいて、製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを作成し、破精分布の目標値と製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースを構成する各レコードに含まれる比率データとのRMSEを算出し、RMSEが最小となるレコードを、検索条件を満たす製麹条件の修正値として取得する処理を制御手段103に実行させる。出力ステップ403は、取得された製麹条件の修正値を出力手段104に表示させる。これらの各ステップを備えることにより、製麹支援プログラム400は、製麹条件を修正する処理を製麹支援システム100に実行させることができる。
【0264】
第11実施形態の製麹支援システム100は、破精分布の目標値とこれまでの条件データの実測値及びこれまで設定されていた条件データの予測値から作成された製麹条件に従って製麹を続けた場合における出麹の破精分布とのRMSEと、破精分布の目標値とこれまでの条件データの実測値及びこれからの条件データの修正値から作成された製麹条件に従って製麹を続けた場合における出麹の破精分布とのRMSEとを比較することで、修正結果の精度を評価される。
【0265】
第11実施形態において、表6に示すように、初めに設定した破精分布の目標値と製麹条件及び破精分布の組合せ候補抽出用データベースから抽出された破精分布とのRMSEは0.5であった。表6に示すように、修正結果の精度を評価したところ、初めに設定した破精分布の目標値とこれまでの条件データの実測値及びこれまで設定されていた条件データの予測値から作成された製麹条件に従って製麹を続けた場合における出麹の破精分布とのRMSEは8.7であった。また、初めに設定した破精分布の目標値とこれまでの条件データの固定値及びこれからの条件データの修正値から作成された製麹条件に従って製麹を続けた場合における出麹の破精分布とのRMSEは2.6であった。
【0266】
【表6】
【0267】
上記のように、第11実施形態の製麹支援システム100は、製麹の途中において、製麹条件の予測値と製麹条件の実測値との間に差異が生じた場合においても、破精分布の目標値により近い破精分布が得られるように、製麹条件を修正し、製麹を支援することが可能となっている。
【0268】
本発明において、製麹条件を修正するタイミングは、第11実施形態に限定されず、製麹条件の予測値と製麹条件の実測値とを比較しながら、適宜設定すればよい。例えば、製麹条件の予測値と製麹条件の実測値に、既定以上の差異が生じた場合に、製麹条件を修正するようにしてもよい。
【0269】
本発明において、作成されたデータベースに対し、目標データを入力し、目的の組合せ候補を抽出するタイミングは、第7実施形態、第8実施形態、第9実施形態、第10実施形態、及び第11実施形態に限定されず、適宜設定すればよい。例えば、第7実施形態において、目標データを入力して目的の組合せ候補を抽出するタイミングを、床工程の終了時点とすることもできる。この際、目標データには、目標となる破精分布を構成する麹クラスの比率データの全てのデータと、床工程終了時点までの条件データの実測値を入力することで、製麹条件を構成する残りの条件データの予測値を取得することができる。
【0270】
本発明の製麹支援システム及び製麹支援プログラムは、製麹装置に搭載して使用することができる。例えば、目標とする麹品質を予め設定しておけば、目標の品質の麹を得るための製麹条件候補を選定し、選定された製麹条件候補を製麹装置へ自動転送し、最適な製麹条件のもと自動で製麹を行うことなどが可能となる。
【符号の説明】
【0271】
100 製麹支援システム
101 記憶手段
102 入力手段
103 制御手段
104 出力手段
200 学習済みモデル構築手段
300 製麹支援プログラム
301 入力ステップ
302 制御ステップ
303 出力ステップ
400 製麹支援プログラム
401 入力ステップ
402 検索ステップ
403 出力ステップ

図1
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