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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034678
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】農作業システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230306BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230306BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141019
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】林田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】那須 和洋
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB13
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB06
2B043DA17
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG14
(57)【要約】
【課題】基地局の電源切れを抑制可能な農作業システムを提供する。
【解決手段】農作業システムは、走行装置に支持される走行機体と、前記走行機体を操向する操向部と、測位衛星から前記走行機体の位置情報を取得する受信ユニットと、報知部と、を有する作業車両と、前記走行機体の外に設けられ、前記位置情報を補正する補正信号を前記受信ユニットに送信する基地局と、圃場に設定された目標ラインに沿って前記走行機体が走行するように、前記位置情報に基づいて前記操向部を制御する制御部と、を備える。基地局は、前記基地局の電源残量に関する情報を前記受信ユニットに送信し、前記報知部は、前記情報に基づき、前記基地局の電源残量が所定値以下となった場合に報知する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持される走行機体と、前記走行機体を操向する操向部と、測位衛星から前記走行機体の位置情報を取得する受信ユニットと、報知部と、を有する作業車両と、
前記走行機体の外に設けられ、前記位置情報を補正する補正信号を前記受信ユニットに送信する基地局と、
圃場に設定された目標ラインに沿って前記走行機体が走行するように、前記位置情報に基づいて前記操向部を制御する制御部と、を備え、
前記基地局は、前記基地局の電源残量に関する情報を前記受信ユニットに送信し、
前記報知部は、前記情報に基づき、前記基地局の電源残量が所定値以下となった場合に報知する、
ことを特徴とする農作業システム。
【請求項2】
前記基地局は、前記補正信号と共に前記情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の農作業システム。
【請求項3】
前記基地局は、前記電源残量が前記所定値以下となった場合にのみ前記情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の農作業システム。
【請求項4】
前記報知部は、前記情報に基づき、前記電源残量が前記所定値以下となった場合に、前記走行機体の停止を促す報知を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の農作業システム。
【請求項5】
前記情報は、前記基地局の電源の残量値である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の農作業システム。
【請求項6】
前記基地局は、前記基地局の電源残量が前記所定値より大きい場合に第1状態となり、前記基地局の電源残量が前記所定値以下の場合に前記第1状態とは異なる第2状態となる電源状態表示部を有し、
前記情報は、前記電源状態表示部の状態である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の農作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び基地局を備える農作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに設けられた測位測量装置と、圃場の近傍に設置される基準局と、を用いて、トラクタの運転を支援する運転支援システムが提案されている(特許文献1参照)。トラクタは、測位衛星及び測位測量装置によって測定された衛星測位情報を、基準局から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタの現在位置情報を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-173827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の基準局は、トラクタの現在位置情報の精度を向上するために設けられているが、オペレータが圃場でのトラクタによる作業に従事していると、オペレータが気づかずに基準局の電源が切れてしまう場合がある。すると、トラクタの現在位置情報の精度が低下し、満足な作業が行えなくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、基地局の電源切れを抑制し、もって上述した課題を解決した農作業システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行装置(2,3)に支持される走行機体(5)と、前記走行機体(5)を操向する操向部(S)と、測位衛星から前記走行機体(5)の位置情報を取得する受信ユニット(80)と、報知部(81)と、を有する作業車両(1)と、
前記走行機体(5)の外に設けられ、前記位置情報を補正する補正信号を前記受信ユニット(80)に送信する基地局(33)と、
圃場に設定された目標ラインに沿って前記走行機体(5)が走行するように、前記位置情報に基づいて前記操向部(S)を制御する制御部(31)と、を備え、
前記基地局(33)は、前記基地局(33)の電源残量に関する情報を前記受信ユニット(80)に送信し、
前記報知部(81)は、前記情報に基づき、前記基地局(33)の電源残量が所定値以下となった場合に報知する、
ことを特徴とする農作業システム(100)にある。
【0007】
例えば、前記基地局(33)は、前記補正信号と共に前記情報を送信する。
【0008】
例えば、前記基地局(33)は、前記電源残量が前記所定値以下となった場合にのみ前記情報を送信する。
【0009】
例えば、前記報知部(81)は、前記情報に基づき、前記電源残量が前記所定値以下となった場合に、前記走行機体(5)の停止を促す報知を行う。
【0010】
例えば、前記情報は、前記基地局(33)の電源の残量値である。
【0011】
例えば、前記基地局(33)は、前記基地局(33)の電源残量が前記所定値より大きい場合に第1状態となり、前記基地局(33)の電源残量が前記所定値以下の場合に前記第1状態とは異なる第2状態となる電源状態表示部(63)を有し、
前記情報は、前記電源状態表示部(63)の状態である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、作業車両に設けられた報知部によって、基地局の電源残量が所定値以下となった場合に報知されるので、基地局の電源切れを抑制することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、補正信号と共に基地局の電源残量に関する情報が送信されるので、通信を簡略化し、省エネすることができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、基地局の電源残量に関する情報は、電源残量が所定値以下となった場合にのみ送信されるので、基地局の電源消費を抑えることができる。
【0015】
請求項4に係る本発明によると、報知部は、電源残量が所定値以下となった場合に、走行機体の停止を促す報知を行うので、基地局が電源切れとなった状態での作業を防止し、作業のやり直しを抑え、作業効率を向上することができる。
【0016】
請求項5に係る本発明によると、基地局の電源残量に関する情報は、基地局の電源の残量値であるので、例えば該残量値を作業車両側で表示することができ、ユーザビリティを向上できる。
【0017】
請求項6に係る本発明によると、基地局の電源残量に関する情報は、電源状態表示部の状態であるので、通信負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態に係る田植機を示す平面図。
図2】田植機を示す側面図。
図3】(a)はステアリングハンドル及び操作パネルを示す斜視図、(b)は操作パネルを示す正面図。
図4】作業車両の制御ブロックを示すブロック図。
図5】田植機による作業経路を示す模式図。
図6】作業経路における目標ラインを示す模式図。
図7】RTK基地局を示す正面図。
図8】(a)は補正信号と電池残量情報の通信タイミングを示すグラフ、(b)はRTK基地局の電池残量を示すグラフ。
図9】(a)はタブレットの画面を示す図、(b)は電池残量表示が20%の状態の画面を示す図、(c)は電池残量表示が10%の状態の画面を示す図。
図10】(a)は自動操舵制御におけるタブレットの画面色を示す図、(b)は通信エラー時のタブレットの画面色を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。作業車両としての乗用型の田植機1は、図1及び図2に示すように、走行装置としての前輪2及び後輪3により支持される走行機体5を有し、走行機体5の後部には昇降リンク機構6を介して植付作業機7が昇降自在に支持されている。走行機体5の前部にはボンネット9で覆われているエンジンが搭載されており、該エンジンの左右両側には予備苗台10が配置されている。
【0020】
エンジンの動力は、後輪3の間に配置されたリヤアクスルケース(不図示)を介して後輪3に伝達され、また植付クラッチ(不図示)を介して植付作業機7に伝達される。植付クラッチが作動することにより、植付作業機7へ伝達されるエンジンからの動力が断接される。上記走行機体5の後部には、運転操作部11が設けられており、該運転操作部11にはオペレータが着座するシート12、ステアリングハンドル13及び主変速レバー15、副変速レバー16、作業機操作レバー17及び各種スイッチや表示用パネル等が配置されている。
【0021】
ステアリングハンドル13は、走行機体5の下部に配置されている操向装置4によって前輪2と連結されている。前輪2は、オペレータによるステアリングハンドル13の操向操作により、ステアリングハンドル13の操舵角に応じて操舵される。なお、本実施の形態では、ステアリングハンドル13及び操向装置4は、走行機体5を操向する操向部Sを構成している。
【0022】
主変速レバー15は、前後揺動操作によって走行変速を操作できる他、該主変速レバー15の上端側の把持部内側には、前記植付作業機の昇降作動を操作するための上昇スイッチと、下降スイッチとが上下に配置されている。
【0023】
副変速レバー16は、前後揺動操作されることにより、圃場面等での作業走行に適した低速状態と、路上走行に適した高速状態とに切換えることができるように構成されており、各状態に応じて、主変速レバー15によって変速操作可能な速度域が切換えられるように構成されている。
【0024】
上記走行機体5には運転操作部11の前方の左右において上方に延びた2本のステー19が立設されており、該ステー19の上方を幅方向に連結する横バー20に2個のGPS受信機21,21が機体中心から等間隔隔てて配置されている。これら2個のGPS受信機21は、田植機1の走行機体5の位置情報を取得すると共に、2個の受信機を結んだ直線に直交する直線方向を前後方向として、この前後方向に対して左右の受信機が左右何れにあるかにより、走行機体5の現在の前進方向を特定し得る。
【0025】
また、2個のGPS受信機21の間、すなわち機体中心には、補正信号受信装置35が配置されており、該補正信号受信装置35は、横バー20に固定されている。補正信号受信装置35は、作業走行する圃場面からある程度離れた場所に設置されたRTK(Real Time Kinematic)基地局33(補正情報出力装置)から補正信号(具体的には、該RTK基地局33の座標データと、走行機体5とRTK基地局33との間の距離データ)を受信するように構成されている。これにより、GPS受信機21によって取得された位置情報を、上記補正信号で補正することによって、走行機体5の位置情報の精度をセンチメートル単位まで向上させることができる。なお、本実施の形態では、GPS受信機21及び補正信号受信装置35は、測位衛星(GPS衛星)から走行機体5の位置情報を取得する受信ユニット80を構成する。また、本実施の形態では、田植機1及びRTK基地局33は、農作業システム100を構成する。
【0026】
運転操作部11の前方には、図3(a)(b)に示すように、操作パネル23が配置されており、該操作パネル23には始点A点登録スイッチ25a及び終点B点登録スイッチ25bを有するA-B地点入力部25と、自動操舵制御のON状態とOFF状態とを切り替える自動操舵スイッチ26と、速度超過、速度アップOK、目標ライン上等、自動操舵制御中の走行機体5の状態を表示する各種ランプから構成される報知表示部41と、が配置されている。各スイッチは、ランプが点灯することでON状態であることを示す。
【0027】
上記走行機体5には、図4に示すように、GNSS(全地球測位システム)ユニット30及び制御部としての制御ユニット31が配置されており、これらGNSSユニット30及び制御ユニット31がCAN通信されている。GNSSユニット30は、GPS受信機21から基準(位置)情報(21a)と方位(前進方向)情報(21b)が入力され、無線通信(Bluetooth(登録商標)等)を介してタブレット(携帯端末、ナビゲーションソフト)32からの各情報が入力される。また、GNSSユニット30は、RTK基地局(補正情報出力装置)33からの補正情報が補正信号受信装置35を介して入力されて、上記GPS受信機21からの情報が補正される。
【0028】
なお、タブレット32が本実施の形態における制御部を構成してもよいし、GNSSユニット30、制御ユニット31及びタブレット32によって本実施の形態における制御部が構成されていてもよいし、制御部の構成としては、多様な構成が考えられる。例えば、田植機1の外部に設けられるPCやサーバー等が本実施の形態における制御部を構成し、操向部Sを制御してもよい。また、タブレット32は、無線通信に限らず、例えばUSBケーブル等を用いた有線通信によってGNSSユニット30に接続されてもよい。
【0029】
制御ユニット31は、CPU31a、記憶部としてのROM31bやRAM31cを有しており、CPU31aは、必要に応じてROM31bやRAM31cに記憶された情報、タブレット32やGNSSユニット30から入力された情報を用いて各種演算を行う。制御ユニット31の入力側には、始点A点登録スイッチ25a、終点B点登録スイッチ25b、自動操舵スイッチ26が接続されている。また、制御ユニット31には、主変速レバー15、副変速レバー16、操舵角センサー38、車速センサー36及び回転センサー37からの信号が入力される。操舵角センサー38は、ステアリングハンドル13の操舵角(旋回角)を検知する。車速センサー36は、走行機体5の車速を検知し、回転センサー37は、走行機体5の走行距離を検知する。
【0030】
制御ユニット31の出力側には、ステアリングモータ39、報知ブザー40及び報知表示部41が接続されている。ステアリングモータ39は、ギヤ機構を介して、ステアリングハンドル13の回転軸を駆動させる。報知表示部41は、例えばモニタや各種ランプ等から構成され、ユーザに対して視覚的に報知可能に構成されている。
【0031】
このような構成により、制御ユニット31は、GNSSユニット30のGPS受信機21から取得された走行機体5の位置情報及び補正信号受信装置35からの補正信号に基づいて、走行機体5を予め演算・設定された圃場面上の作業経路に沿って走行させるようにステアリングハンドル13の操作を制御する自動操舵制御を実行可能に構成されている。また、該制御ユニット31は、詳しくは後述する内周経路と外周経路からなる作業経路を自動的に算出するティーチング走行制御が実行可能に構成されている。
【0032】
ちなみに、タブレット32によって、ティーチング走行制御によって作業走行が行われる圃場の範囲(走行エリア)や、圃場面内に設定された前記作業経路の他、走行機体5の現在位置や走行状況等を確認することができるように構成されている。
【0033】
次に、図5及び図6に基づいて、制御ユニット31によるティーチング走行制御と自動操舵制御の制御内容について説明する。図5は、作業経路と作業走行を行う走行順を示したモデル図であり、図6は、内周経路の設定方法を示したモデル図である。
【0034】
制御ユニット31は、自動操舵制御によってステアリングハンドル13による操向操作を制御することにより、走行機体5を複数の仮想線によって構成される作業経路に沿って作業走行させることができるように構成されている。また、該作業経路は、圃場面の内側で折返し走行を繰返す内周経路と、該内周経路の外側を囲うように走行する外周経路(枕地経路)とから構成されおり、図5に図示する例によれば、内周経路(1)→外周経路(2),(3)の順番で作業走行が行われる。
【0035】
制御ユニット31は、図6に示すように、ティーチング走行制御において、圃場面の内側に一本の基準線L0を設定することにより、該基準線L0の位置情報と、該基準線L0と交差する方向の圃場の幅や、圃場端から基準線L0の始点Aまでの距離(枕地の幅)、走行機体5(植付作業機7)の左右幅等の情報に基づいて、該基準線L0に平行な内側仮想線L1,L2,・・・,Lzを所定間隔で複数並べて配置することにより構成される内周経路を自動的に演算・設定することができる。
【0036】
具体的に説明すると、該基準線L0は、まず、走行機体5を圃場の出入口から内周経路の開始地点となる始点Aまで移動し、操作パネル23の始点A点登録スイッチ25aを押操作することによって、基準線L0の始点(A点)を登録し、その後、圃場端に向けて直線状に作業(ティーチング)走行し、枕地側で旋回走行する前に終点B点登録スイッチ25bを押操作することによって、基準線L0の終点(B点)を登録する。これにより、制御ユニット31は、始点と終点とを結ぶことにより内周経路の端部を構成する基準線L0を特定(設定)することができる。
【0037】
上記自動操舵制御では、GNSSユニット30により検出された走行機体5の現在位置に基づいて、作業経路を構成する仮想線の中から走行機体5から最も距離が近い仮想線を検出し、検出された仮想線を目標ライン(目標線)として設定し、走行機体5が目標ライン上に沿って作業走行するように操向部Sを制御するように構成されている。
【0038】
すなわち、該自動操舵制御は、例えば、所定の目標ライン(仮想線)の端部側まで作業走行し終わって、該走行機体5を旋回することにより隣接する仮想線に移動する場合には、移動先の仮想線を新たな目標ラインと設定して作業走行を再開することができる。この作業を繰返すことにより、ステアリングモータ39によりステアリング操作を制御しながら圃場面上に張り巡らされた作業経路上を隈なく作業走行することができる(図5参照)。
【0039】
ちなみに、該制御ユニット31は、作業経路を構成する複数の仮想線から目標ラインを設定する際には、走行機体5から最も距離が近い仮想線であって且つ、該仮想線の向きが走行機体5の向きと同じ方向の場合に、新たな目標ラインとして設定されるように構成されている。これにより、目標ラインが他の仮想線に切換った際に、ステアリングモータ39により走行機体5が急旋回される事態を防止することができる。
【0040】
また、図3(b)に示すように、操作パネル23に設けられた報知表示部41は、目標ライン走行ランプ41aと、基地局電池交換ランプ41bと、を含む。目標ライン走行ランプ41aは、点灯することで、走行機体5が自動操舵制御の実行中に後述する目標ライン上を走行している状態であることを報知する。基地局電池交換ランプ41bは、基地局としてのRTK基地局33の電池残量が所定値(例えば10%)以下となった場合に点灯する。なお、基地局電池交換ランプ41bは、連続的に点灯(以下、単に点灯という)してもよいし、点滅してもよい。
【0041】
次に、RTK基地局33について詳しく説明する。RTK基地局33は、図7に示すように、圃場面からある程度離れた場所、すなわち田植機1の走行機体5の外に配置される。RTK基地局33は、上述したように、GPS受信機21が受信する走行機体5の位置情報を補正する補正信号を出力する。
【0042】
RTK基地局33は、表示部60と、電源ボタン64と、GNSSアンテナ65と、無線通信アンテナ66と、を有しており、電源ボタン64は、押下されることでRTK基地局33の電源をオンまたはオフする。GNSSアンテナ65は、GPS衛星と通信して、RTK基地局33の位置情報(座標データ)を取得する。無線通信アンテナ66は、田植機1の補正信号受信装置35と無線通信を行う。
【0043】
表示部60は、電源ランプ61と、GNSS状態ランプ62と、電池残量ランプ63と、を有している。電源ランプ61は、RTK基地局33の電源のオン状態又はオフ状態を示し、点灯することでオン状態を、消灯することでオフ状態を示している。GNSS状態ランプ62は、GNSSユニット30の動作状態を示し、点滅することでGNSSユニット30がGPS衛星から走行機体5の位置情報を取得していることを示し、消灯することでGNSSユニット30がGPS衛星を探索中であることを示す。
【0044】
電池残量ランプ63は、RTK基地局33の電池残量(電源残量)を示す。電池残量ランプ63は、RTK基地局33の電池残量が20%~50%であることを示すランプ63aと、RTK基地局33の電池残量が10%~20%であることを示すランプ63bと、RTK基地局33の電池残量が10%以下であることを示すランプ63cと、を有する。なお、RTK基地局33の電源は、交換式の電池や、充電式のバッテリー等が用いられる。例えば、電池の交換タイミングやバッテリーの充電完了タイミングにおけるRTK基地局33の電池残量を100%とし、現在のRTK基地局33の電池残量は、電池残量が100%の状態からの電圧の低下量から推定される。なお、RTK基地局33の電池残量の推定(算出方法)はこれに限定されず、電池やバッテリーの電圧値を直接的に検知する等の他の方法でもよい。
【0045】
そして、RTK基地局33の電池残量が50%~100%の場合、ランプ63a~63cのいずれも点灯しない、若しくはランプ63aのみが点灯する。RTK基地局33の電池残量が20%~50%である場合、ランプ63aのみが点灯する。RTK基地局33の電池残量が10%~20%である場合、ランプ63bのみが点灯する。RTK基地局33の電池残量が10%以下である場合、ランプ63cのみが点滅する。例えば、図8(b)に示すように、電池の交換タイミングやバッテリーの充電完了タイミングにおけるRTK基地局33の電源電圧が100Vだった場合、現在の電源電圧が10V以下となると、ランプ63cが点滅し、RTK基地局33の電池(バッテリー)を交換するタイミングであることを田植機1に搭乗したオペレータに報知することができる。
【0046】
上述したように、電源状態表示部としての電池残量ランプ63は、RTK基地局33の電池残量に応じて点灯する複数のランプ63a~63cを有している。特に、RTK基地局33の電池残量が10%より大きい場合には、ランプ63a又はランプ63bが点灯する第1状態となり、RTK基地局33の電池残量が10%以下の場合には、ランプ63cが点灯する、第1状態とは異なる第2状態となる。このように、RTK基地局33の電池残量に応じて状態が変化する電池残量ランプ63を視認することで、オペレータはRTK基地局33の電池残量を把握することができる。
【0047】
また、RTK基地局33の電池残量情報は、図8(a)に示すように、所定の間隔で補正信号と共に補正信号受信装置35に無線通信される。例えば、RTK基地局33は、1[msec]毎に補正信号を補正信号受信装置35に送信すると共に、RTK基地局33の電池残量に関する情報である電池残量情報を3[msec]毎に補正信号の送信タイミングと同期を取って送信する。すなわち、補正信号が送信される3回に1回のタイミングで、同時に電池残量情報も送信される。
【0048】
なお、上方としての上記電池残量情報は、推定された又は直接的に検知されたRTK基地局33の電源の残量値であってもよいし、ランプ63cが点滅したこと、すなわちランプ63cの状態であってもよい。ランプ63cの状態のみを電池残量情報として送信することで、通信負荷を大幅に低減できる。また、RTK基地局33による電池残量情報の送信は、RTK基地局33の電池残量が10%以下、すなわちランプ63cが点滅するタイミングになって初めて行われてもよい。これにより、RTK基地局33の電源消費を抑えることができる。
【0049】
ここで、図9(a)に示すように、田植機1の運転操作部11に設けられたタブレット32は、画面32aを有している。画面32aには、圃場に設定された目標ラインと、走行機体5の位置(図に矢印で示す)と、自動操舵制御の開始/停止ボタン71と、A点又はB点の登録ボタン72と、RTK基地局33の電池残量表示73と、等が表示されている。
【0050】
図9(a)では、電池残量表示73は、RTK基地局33の電池残量が20%~50%であることを示している。この時、RTK基地局33のランプ63aが点灯している。図9(b)では、電池残量表示73は、RTK基地局33の電池残量が10%~20%であることを示している。この時、RTK基地局33のランプ63bが点灯している。また、タブレット32の画面32aには、電池残量が少なくなってきたことを示すメッセージ74が表示されている。具体的には、画面32aには「電池残量20%です。」とのメッセージ74が表示されている。
【0051】
図9(c)では、電池残量表示73は、RTK基地局33の電池残量が0%~10%であることを示している。この時、RTK基地局33のランプ63cが点滅している。また、タブレット32の画面32aには、電池交換を促すメッセージ75が表示されている。具体的には、画面32aには「電池残量10%です。電池を交換して下さい。」とのメッセージ75が表示されている。更に、メッセージ75の下方には、走行機体5の停止を促すメッセージ76が表示されている。具体的には、画面32aには「一旦、走行を停止してください。」又は「一旦、走行を停止します。」とのメッセージ76が表示されている。後者のメッセージの場合、制御ユニット31は、走行機体5を停止させる。なお、メッセージ75,76が表示される際のRTK基地局33の電池残量を、互いに異なるように設定してもよい。例えば、メッセージ75は電池残量が5%~10%の時に表示し、メッセージ76は電池残量が5%以下の時に表示するように構成してもよい。
【0052】
また、図10(a)に示すように、タブレット32の画面32aは、自動操舵制御の状態に応じて、画面色(背景色)が変化する。例えば、自動操舵制御の準備が完了したとき、すなわち終点B点登録スイッチ25bが押下された際に、画面32aの画面色が黄色となる。そして、自動操舵制御が開始される、すなわち自動操舵スイッチ26が押下されて自動操舵制御がON状態となると、画面32aの画面色が緑色となる。更に、自動操舵制御が停止される、すなわち自動操舵スイッチ26が押下されて自動操舵制御がOFF状態となると、画面32aの画面色が黄色となる。このように、画面32aの画面色が変化することによって、オペレータは視覚的に自動操舵制御の状態を認識することができ、意図しない作業を防止することができる。
【0053】
また、図10(b)に示すように、RTK基地局33と田植機1のGNSSユニット30との通信にエラーが発生すると、通信エラーを報知するメッセージ77が画面32aに表示されると共に、画面32aの画面色が赤又は赤点滅となる。これにより、オペレータは視覚的にRTK基地局33との通信エラーを認識することができ、通信エラーを早期に把握することができる。このため、オペレータは、走行機体5を早い段階で停止でき、作業のやり直しを低減できる。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、RTK基地局33が、補正信号と共に電池残量情報を補正信号受信装置35に送信するので、田植機1に設けられたタブレット32にRTK基地局33の電池残量を表示することができる。特に、RTK基地局33の電池残量が所定値(本実施の形態では10%)以下となったことを、操作パネル23の基地局電池交換ランプ41bが点灯することやタブレット32の画面32aにメッセージ75を表示させることで、オペレータにRTK基地局33の電池交換を報知して促すことができる。このため、意図せずRTK基地局33の電源が切れてしまうことを抑制し、作業効率を向上することができる。なお、本実施の形態では、基地局電池交換ランプ41b及び画面32aは、報知部81を構成する。
【0055】
この時、RTK基地局33のランプ63bも点灯するが、オペレータは、走行機体5外かつ圃場外に設置されたRTK基地局33のランプ63bを視認しなくても、運転操作部11の基地局電池交換ランプ41bやタブレット32の画面32bを視ることによって、RTK基地局33の電池交換を行うべきことを認識でき、ユーザビリティを向上できる。また、RTK基地局33のランプ63bの点灯と、運転操作部11の基地局電池交換ランプ41bやタブレット32のメッセージ75と、の両方を視ることで、確実にRTK基地局33の電池交換を行うべきことを知覚することができる。
【0056】
このように、オペレータは、RTK基地局33の電池残量が0になる前に電池交換が促されるので、RTK基地局33からの補正信号が受信できなくなって自動操舵制御の直進性が乱れることを防止できる。また、RTK基地局33の電池残量が10%以下となると、走行機体5の走行の停止を促すメッセージ76がタブレット32に表示されるので、自動操舵制御の直進性が乱れる前に、田植機1による作業を停止することができる。このため、作業のやり直しを防止することができ、作業効率を向上することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、RTK基地局33の電池残量が10%以下となるとタブレット32及び基地局電池交換ランプ41bによる報知を行っていたが、これに限定されない。すなわち、タブレット32及び基地局電池交換ランプ41bによる報知の指標となるRTK基地局33の電池残量の値は、10%に限らず、任意に設定してもよい。また、RTK基地局33の電池交換を促す報知は、タブレット32及び基地局電池交換ランプ41bの両方に限らず、これらのいずれか一方のみでもよく、ブザー等の他の方法による報知でもよい。
【0058】
また、上述したいずれの実施の形態においても、作業車両として乗用型の田植機1について説明をしたが、これに限定されない。作業車両は、例えば、トラクタやコンバイン等、他の作業車両であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 作業車両(田植機)
2,3 走行装置(前輪、後輪)
5 走行機体
31 制御部(制御ユニット)
33 基地局(RTK基地局)
63 電源状態表示部(電池残量ランプ)
80 受信ユニット
81 報知部
100 農作業システム
S 操向部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10