IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-油捕集装置 図1
  • 特開-油捕集装置 図2
  • 特開-油捕集装置 図3
  • 特開-油捕集装置 図4
  • 特開-油捕集装置 図5
  • 特開-油捕集装置 図6
  • 特開-油捕集装置 図7
  • 特開-油捕集装置 図8
  • 特開-油捕集装置 図9
  • 特開-油捕集装置 図10
  • 特開-油捕集装置 図11
  • 特開-油捕集装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034731
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】油捕集装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20230306BHJP
   F24F 8/183 20210101ALI20230306BHJP
   F24F 8/90 20210101ALI20230306BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20230306BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
F24F8/183
F24F8/90 140
B01D46/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141094
(22)【出願日】2021-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 圭一
(72)【発明者】
【氏名】島田 晃弘
【テーマコード(参考)】
3L058
4D058
【Fターム(参考)】
3L058BK02
3L058BK04
3L058BK05
4D058JA19
4D058JB03
4D058QA03
4D058QA17
4D058QA21
4D058RA01
4D058RA02
4D058SA15
(57)【要約】
【課題】 新たな原理に基づく油捕集効率向上手段の提供。
【解決手段】送風機とフィルタとガイドベーンを備え、送風機は、フィルタを介して空気を吸い込むものであり、フィルタは、複数の孔が設けられた有孔部を有する部材であり、回転軸を中心に動力で回転し、ガイドベーンは、フィルタの上流がわ面に設けられており、空気の流れを変えるものであり、ガイドベーンを通った空気の流れは、前記フィルタの回転方向と逆向きのベクトル成分を含むように設けられている油捕集装置。


【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機とフィルタとガイドベーンを備え、
前記送風機は、前記フィルタを介して空気を吸い込むものであり、
前記フィルタは、複数の孔が設けられた有孔部を有する部材であり、回転軸を中心に動力で回転し、
前記ガイドベーンは、
前記フィルタの上流がわに設けられており、空気の流れを変えるものであり、
前記ガイドベーンを通った空気の流れは、前記フィルタの回転方向と逆向きのベクトル成分を含むように設けられている油捕集装置。
【請求項2】
送風機とフィルタとガイドベーンを備え、
前記送風機は、前記フィルタを介して空気を吸い込むものであり、
前記フィルタは、複数の孔が設けられた有孔部を有する部材であり、回転軸を中心に動力で回転し、
前記ガイドベーンは、
前記フィルタの上流がわに設けられており、
一側端および他側端を有しており、
前記一側端は前記有孔部の外周近傍または前記有孔部の外に位置し、
前記他側端は、前記一側端より前記フィルタの内周側に位置しており、
前記一側端と前記他側端を結ぶ直線が、前記一側端を起点とする半径方向に対して前記他側端が前記フィルタの回転方向と逆側にずれて向くものであることを特徴とする油捕集装置。
【請求項3】
送風機とフィルタとガイドベーンを備え、
前記送風機は、前記フィルタを介して空気を吸い込むものであり、
前記フィルタは、複数の孔が設けられた有孔部を有する部材であり、回転軸を中心に動力で回転し、
前記ガイドベーンは、
前記フィルタの上流がわに設けられており、
下流がわ辺と上流がわ辺を有し、
前記下流がわ辺は、前記フィルタに近接する辺であり、
前記上流がわ辺は、前記下流がわ辺と対向し前記下流がわ辺より前記フィルタの遠方にある辺であり、
前記上流がわ辺は、前記下流がわ辺より前記フィルタの回転方向側にあることを特徴とする油捕集装置。
【請求項4】
前記ガイドベーンは、前記フィルタの周辺部材に取り付けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の油捕集装置。
【請求項5】
前記周辺部材は、整流板であり、
前記整流板は、前記ガイドベーンの上流がわを覆っている
請求項4に記載の油捕集装置。
【請求項6】
前記周辺部材は、油受けであり、
前記油受けは、前記フィルタの周囲を囲んでいる
請求項4に記載の油捕集装置。

【請求項7】
前記ガイドベーンは、
一側端および他側端を有しており、
前記他側端が、上流がわから観た平面視で前記フィルタの前記有孔部の最内周より外周側に位置し、前記一側端が、前記他側端より前記フィルタの外周側に位置することで、
前記有孔部の最内周側は、前記ガイドベーンで覆われていない
請求項1~6のいずれか1項に記載の油捕集装置。
【請求項8】
前記ガイドベーンは、
一側端および他側端を有しており、
前記一側端が、上流がわから観た平面視で前記フィルタの前記有孔部の最外周より内周側に位置し、前記他側端が、前記一側端より前記フィルタの内周側に位置することで、
前記有孔部の最外周側は、ガイドベーンで覆われていない
請求項1~7のいずれか1項に記載の油捕集装置。
【請求項9】
前記ガイドベーンは、
一側端および他側端を有しており、
前記一側端が、上流がわから観た平面視で前記フィルタの前記有孔部の最外周より外側に離間した位置にあり、
前記他側端が、前記フィルタの内周側に位置している
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の油捕集装置。
【請求項10】
前記フィルタに設けた前記孔は、スリットであり、
前記スリットは、前記フィルタの回転方向に凸に湾曲している
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の油捕集装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記油捕集装置を有する、レンジフード。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の油捕集装置を有する、空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場やキッチンなどの油煙に含まれる油を捕集する油捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レンジフードにみられるように、吸引ファンの吸い込み上流がわに着脱自在のフィルタを設けて、油を捕集する装置が開発されていた。例えば、特許文献1のようにフィルタを送風機の上流がわに設けるレンジフード(油捕集装置)がある。特許文献1では、矩形のフィルタの四辺をレンジフード内面に取り付けた仕切り板に預けることで、フィルタを取り外し自在とするものである。フィルタは固定式であり、油捕集効率を上げるためにフィルタの目を細かくすると、排気効率が低下してしまう難点があった。
近年、よりフィルタの捕集効率を向上させるため、特許文献2のように、吸引ファンにより空気を吸い込み、パンチング穴を複数有した円盤からなる金属製フィルタを空気流路上に位置させ、金属フィルタをモータで回転させて吸い込んだ油煙を含む空気から油を捕集する機構が開発された。この機構は、油捕集装置(レンジフードを含む)として応用されるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-3841号公報
【特許文献2】特開2016-180530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタを回転させる特許文献2の油捕集装置は、特許文献1記載の固定式のフィルタに比べれば油の捕集効率が高いものの、より油捕集効率の向上が望まれていた。
【0005】
本発明は、新たな原理に基づく油捕集効率向上手段の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題に対処するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
送風機とフィルタとガイドベーンを備え、前記送風機は、前記フィルタを介して空気を吸い込むものであり、前記フィルタは、複数の孔が設けられた有孔部を有する部材であり、回転軸を中心に動力で回転し、前記ガイドベーンは、前記フィルタの上流がわに設けられており、空気の流れを変えるものであり、前記ガイドベーンを通った空気の流れは、前記フィルタの回転方向と逆向きのベクトル成分を含むように設けられている油捕集装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】油捕集装置(レンジフード)を前から観た斜視図。
図2】油捕集装置(レンジフード)の説明図。(A)油捕集装置(レンジフード)を下(上流がわ・コンロ側)から観た斜視図。(B)図2(A)の分解斜視図。(一部の部材の拡大図を含む。)
図3】フィルタとガイドベーンユニットの説明図。
図4】ベーン部で整流された空気の流れとフィルタの回転方向の関係の説明図。(A)空気の流れを示した斜視図。(B)空気の流れを示した上流がわから観た平面図。
図5】孔(スリット)の説明図。(A)フィルタの上流がわから観た平面図。(見えている面はフィルタの下面である。) 枠B内の拡大図を含む。(B)図5(A)に付した枠A内にある一つの孔(スリット)を下(上流がわ・コンロ側)から観た拡大斜視図。
図6】ガイドベーンの取付範囲の説明図。(A-1)ガイドベーンの斜視図。(A-2)取付面部を説明のため図示せずベーン部だけを図示したガイドベーンの斜視図。(B)実施例1のガイドベーンの取付範囲を示す上流がわから観た平面図。(C)実施例1の変形例のガイドベーンの取付範囲を示す上流がわから観た平面図。
図7】実施例2のガイドベーンが無いときの油捕集の説明図。(A)フィルタの上流がわから観た平面図。(一部の拡大図を含む。)(B)図7(A)に付した枠B内のa-a間、b-b間およびc-c間の断面図。(a)はa-a間の最外周孔(スリット)の断面図。(b)はb-b間の中間周孔(スリット)の断面図。(c)はc-c間の最内周孔(スリット)の断面図。
図8】実施例2のガイドベーンが有るときの油捕集の説明図。(A)フィルタの上流がわから観た平面図。(一部の拡大図を含む。)(B)図8(A)に付した枠B内のa-a間、b-b間およびc-c間の断面図。(a)はa-a間の最外周孔(スリット)の断面図。(b)はb-b間の中間周孔(スリット)の断面図。(c)はc-c間の最内周孔(スリット)の断面図。
図9】孔(スリット)の断面図。(A)最内周孔(スリット)の下流がわ開口幅が上流がわ開口幅より大きいフィルタの断面図。(B)最内周孔(スリット)の下流がわ開口幅が上流がわ開口幅より小さいフィルタの断面図。
図10】実施例3の説明図。(A)油捕集装置(レンジフード)を下(上流がわ・コンロ側)から観た斜視図。(B)油受けに取り付けられたガイドベーンの一部拡大図。(説明のため、フィルタを図示しておらず、ガイドベーン4を数枚図示していない)。
図11】ガイドベーンの角度の説明図。(A)油捕集装置(レンジフード)の上流がわから観た平面図。(B)図11(A)に付したd-d間にあるガイドベーンの断面図。
図12】立体造形したガイドベーンユニットの説明図。(A)態様1の斜視図。(B)態様2の斜視図。(C)態様3の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
レンジフードの送風機の空気吸引流路を川の流れに例えれば、送風機は、空気を吸引するものであり最も下流に位置する。フィルタ3は送風機より上流にあり、コンロはフィルタ3の更に上流にある。
本発明においてフィルタ3は、垂直方向、斜め方向、水平方向のいずれの方向にも向いて設置することが可能である。以下の実施例では、フィルタ3を水平に設け、上から順に送風機、フィルタ3、ガイドベーン4、整流板14の順に並べている。送風機は、上記したように空気吸引流路の最も下流にあるから、位置関係と空気吸引流路の方向は逆になる。そこで、位置関係をいうときには、上、上側、上方などと表現し、空気吸引流路を言うときは上流のように表現する。
以下の実施例はすべて、位置関係の上と下と、空気吸引流路の上流と下流は逆になる。
【0010】
(実施例1)
図1は、実施例1に係る油捕集装置(レンジフード)1を前から観た斜視図である。送風機ボックス12内には、図示されていない送風機が取り付けられている。送風機は、吸い込んだ油煙を含む空気を、排気ダクトDUを介して、屋外に排気する。フード部11は、フード部11の下方(上流がわ)にあるフライパンなどの調理具から発生する油煙を含む空気を集めるものである。
【0011】
図2は油捕集装置(レンジフード)1の説明図である。図2(A)は油捕集装置(レンジフード)1を下(上流がわ・コンロ側)から観た斜視図である。フード部11のコンロ側面には、整流板14がフード部11覆うように取り付けられている。図2(B)は図2(A)の分解斜視図であり、一部の部材の拡大図を含む。フード部11には、内面パネル13が設けられている。内面パネル13の外周側には、4箇所にコ字状の整流板取付フック141が取り付けられている。整流板14は、図示されていない係合部材が整流板14の下流がわ面(図面では裏面)に取り付けられており、係合部材が整流板取付フック141と係合することでフード部11に取り付けられる。送風機ボックス12内の送風機は、フィルタ3から油煙を含む空気を吸引し、空気を排気ダクトDUから屋外へ排気する。取り付けられた整流板14と内面パネル13の間には、油煙を含んだ空気が通過する隙間が空いており、取り付けられた整流板14の四周から空気が吸い込まれる。
【0012】
[フィルタの回転]
図3はフィルタ3とガイドベーン4の位置関係を示す説明であり、フィルタ3は、送風機ボックス12内の送風機から観て、吸引される空気の流れの上流がわに取り付けられている。なお、送風機とフィルタ3の位置関係は適宜であり、フィルタ3の下流に送風機が有りさえすればよい。実施例1のフィルタ3は、数ミリの厚みの金属材料で作られている。フィルタ3は変形しない材料であることが好ましく実施例1では金属材料が採用されている。フィルタ3の材料は硬質樹脂でもよい。
【0013】
実施例1のフィルタ3は、フード部11の下面(コンロ側面)と略同じ位置にあるが、フード部11とは連結されていない。図3において、フィルタ3は、上流がわ面33(コンロ側面)が見えている。フィルタ3が設けられている部位を除いて、フード部11の下面(コンロ側面)が内面パネル13で覆われているため、図示しない送風機で吸引された油煙を含んだ空気は、確実にフィルタ3を通過する。多数の孔32が設けられたフィルタ3は、図示しない動力(モーター等)により回転軸31を中心として高速で回転し油を捕集する。なお、フィルタ3の回転軸31を、送風機のファンを駆動する回転軸と連結し、送風機の駆動部によりフィルタ3を回転させてもよい。また、フィルタ3は、送風機とは別の動力で回転させてもよい。
【0014】
フィルタ3には、多数の孔(スリット)32が設けられており、図3において黒く見える部分が有孔部326となっている。孔(スリット)32で捕集され付着した油は、遠心力でフィルタ3の外周側へと流れ、フィルタ3の周囲を囲む油受け5に溜まるようになっている。そのため、フィルタ3に、設けられた多数の孔32は目詰まりすることが無く、フィルタ3洗浄作業の頻度を格段に少なくするか、洗浄を不要にする。フィルタ3の回転方向Rは特に限定されないが、実施例1では、フィルタ3を下(上流がわ)から観たとき時計回りに回転している。
【0015】
[有孔部]
フィルタ3の有孔部326について説明する。実施例1のフィルタ3の外周は、上流がわ(コンロ側)から観たときに、油受け5によって隠れる部分がある。すなわち、当該隠れる部分の孔32は、フィルタ3として機能していない。本発明でいう有孔部326とは、フィルタ3として機能する部分を言う。「有孔部326の外周」などというときは、フィルタ3として機能し得る部分の外周であり、油受け5に隠されているフィルタ3の部分はこの外周に含まれない。
【0016】
[ガイドベーン取付部材]
図3はフィルタ3とガイドベーンユニット43の説明図である。図3は、説明のため、ガイドベーンユニット43の関連部材をやや大きく図示している。多数のガイドベーン4は、取付部材42に取り付けられ、ガイドベーンユニット43となる。ガイドベーンユニット43は、整流板14の下流がわ面(図2で図示された整流板14の裏面)に適宜な手段で取り付けられる。図2では、ガイドベーン4と取付部材42が分離しているように図示されているが、実際には、図3のようにガイドベーン4は取付部材42に取り付けられている。なお、ガイドベーンユニット43を着脱自在にして洗浄しやすくすることも可能である。
【0017】
各々のガイドベーン4は、拡大図に示す通りL字状に曲折した板から構成されている。L字状のガイドベーン4は、取付面部44とベーン部45で構成されている。取付面部44は、取付部材42と当接する部分であり、2箇所にガイドベーン取付孔41が穿孔されている。ガイドベーン4の取付面部44のガイドベーン取付孔41は、取付部材42に穿設された締結部材挿入孔421と位置合わせされる。そして、取付部材42とガイドベーン4は、図示されていな締結部材で締結されて一体化し、ガイドベーンユニット43となる。
【0018】
ガイドベーン4を取付部材42に固定して一体化する変形例として、溶接することもできる。その場合、ガイドベーン4の取付面部44には、ガイドベーン取付孔41に代えて、位置決め突起、または、位置決め凹部が設けられる。取付部材42には、締結部材挿入孔421に代えて、前記位置決め突起または位置決め凹部とはまり込む受け部が設けられる。取付部材42に位置決めされたガイドベーン4は、溶接により固定される。ガイドベーン4は、後述するようにその向きや位置が重要なところ、位置決め突起や位置決め凹所を設けることで、製造作業効率を向上できる。
さらに、ガイドベーン4は、洗浄を容易にするため、着脱自在に取り付けられてもよい。
このように、ガイドベーン4の取付部材42への固定は、様々な手段によってなし得る。
【0019】
実施例1では、取付部材42にガイドベーン4を取り付けてガイドベーンユニット43にしてから、整流板14の下流がわ面(図2で図示された整流板14の裏面)に取り付けたが、取付部材42を省いて、整流板14の下流がわ面(裏面)にガイドベーン4を直接取り付けてもよい。
さらに、ガイドベーン4は、それを支えることができる部材であればどのような部材に取り付けられてもよい。後述するようにガイドベーン4は、フィルタ3の直下(上流がわに近接配置)に設けなければならない位置的な制約がある。そのため、フィルタ3の周辺部材に設けられることが好ましい。例えば、油受け5や内面パネル13などが挙げられる。
いずれにせよ、ガイドベーン4は、フィルタ3より送風流路の上流に設けられている。
【0020】
[ガイドベーン]
ガイドベーンユニット43には、複数のガイドベーン4が円を描くように取付部材42に取り付けられている。ベーン部45は、取付部材42に対して垂直に立ち上がっている。図3に図示されている符号31は、フィルタ3の回転軸31を延長したものであり、ガイドベーンユニット43に取り付けられたガイドベーン4の向きは回転軸31の方向を向いておらず、半径方向からやや傾いている。
【0021】
図4は、ベーン部45で整流された空気の流れとフィルタ3の回転方向Rの関係の説明図である。図4(A)は空気の流れを示した斜視図であり、図4(B)は空気の流れを示した上流がわから観た平面図である。
これまで説明したとおり、ガイドベーン4の取付面部44は、取付部材42に取り付けられ、ガイドベーンユニット43となり、整流板14に固着されている。フィルタ3の下(上流がわ)が図示されていない整流板14で覆われており、整流板14の四周から吸い込まれた空気は、整流板14と内面パネル13の間にある隙間を横方向に流れる。そして、ガイドベーン4に到達する。次いで、ガイドベーン4に到達した横方向に流れる空気は、ベーン部45の向く方向に整流される。ベーン部45で方向を変えられ整流された空気の流れは、ベーン部45を通った空気の流れ「V」の付された矢印で示されている。その後、空気は再び方向を変え、ベーン部45より下流がわにあるフィルタ3に向かって吸い込まれて行く。
【0022】
このように、ガイドベーン4は、フィルタ3の上流がわ面33に設けられており、空気の流れを変えるものである。
【0023】
図4(B)で図示されているフィルタ3は、上流がわ面(コンロ側面)であり、ガイドベーン4はフィルタ3より送風流路のさらに上流に設けられている。フィルタ3の外周は油受け5により、上流がわ(コンロ側)から観て隠されている。ガイドベーン4のベーン部45の一側端455は、有孔部326の外、すなわち、油受け5の部分に位置している。また、ガイドベーン4のベーン部45は、一側端455より有孔部326の内周側に位置する他側端456を有しており、一側端455と他側端456を結ぶ直線が、一側端455を起点とする半径方向に対して他側端456がフィルタ3の回転方向Rと逆側にずれて向いている。
【0024】
実施例1は、ガイドベーン4のベーン部45が、直線状に延びているが、ベーン部45は湾曲していてもよい。ベーン部45が湾曲していても、一側端455と他側端456を結ぶ直線が、一側端455を起点とする半径方向に対して他側端456がフィルタ3の回転方向Rと逆側にずれていればよく、ベーン部45が直線状である必要はない。
【0025】
さらに、実施例1のベーン部45の一側端455は、有孔部326の外である油受け5に位置させた。しかし、一側端455は、有孔部326の外周近傍であってもよく、この場合、一側端455は、フィルタ3の外周の一部がベーン部45で覆われていない態様となる。
【0026】
以上のように、ガイドベーン4は、全体的にフィルタ3の回転方向Rと逆方向に傾いており、回転軸31の方向(半径方向)に向いていない。ガイドベーン4は、半径方向を基準として第1傾斜角度θでだけフィルタ3の回転方向Rと逆向きに傾いている。基準となる半径方向は、半径方向のベクトル成分Nとして図示している。図中の符号「V」は、ガイドベーン4を通った空気の流れの方向を示し、その方向はベーン部45の延びている方向である。第1傾斜角度θは、半径方向のベクトル成分Nとガイドベーン4を通った空気の流れVの角度の差でもある。
ガイドベーン4を通った空気の流れVは、半径方向と回転方向Rの法線方向にベクトル分解すると、第1傾斜角度θの影響によりフィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを含むようになる。
ガイドベーン4は、フィルタ3より上流がわに設けられており、空気の流れを変えるとともに整流機能を有する。
【0027】
[ガイドベーンの作用]
フィルタ3の動力は様々であり得るが、モータが好ましい。フィルタ3の回転速度(角速度)は、速ければ速いほど油捕集効率が向上する。しかし、速い回転速度(角速度)で回転させるには、電力を必要とし、速い回転速度(角速度)という要求性能を満たす高性能のモータを用意する必要が出てくるためコスト増となる。
【0028】
実施例1では、この問題を解決するために、ガイドベーン4をフィルタ3の下面側(コンロ側)に設置することとした。ガイドベーン4のベーン部45は、半径方向を基準として第1傾斜角度θだけ回転方向Rと逆向きに傾いている。これにより、ガイドベーン4を通った空気の流れVは、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを含むようになる。後述の[ガイドベーンの枚数と角度]で説明するように、油煙からの油捕集は、孔(スリット)32の回転方向後壁321に油煙が当たり油となって付着することによる。ガイドベーン4を通った空気の流れVは、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを含み、このベクトル成分は孔(スリット)32の回転方向後壁321に向かう成分である。ガイドベーンを通った空気の流れVは、実質的にフィルタ3の回転速度(角速度)を上げる作用をもたらす。フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVは、回転方向後壁321に向かう成分であり、その分、回転方向後壁321に空気が当たり、油捕集効率を高める。
【0029】
このように、ガイドベーン4は、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを含む空気の流れを作ることにより、フィルタ3の回転速度(角速度)を向上させたのと同等の作用をもたらす。既存の油捕集装置に、ガイドベーン4を設けるだけで性能を向上させることもできる。
【0030】
[ガイドベーンの枚数と向き]
ガイドベーン4は、回転軸31からずれた方向を向いている。ガイドベーン4の向き(第1傾斜角度θ)は、孔(スリット)32の回転方向後壁321の角度と直交する方向が好ましいが、実際には送風機で吸引される空気の流速やフィルタ3の回転速度(角速度)によって変わり得る。また、孔32の形や孔(スリット)32の方向によっても変わり得る。ガイドベーン4の向きの最適化を図ることは、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。また、ガイドベーン4の枚数を増やすと整流性能が向上するが、同時に空気抵抗も増す。枚数の最適化も適宜なし得ることである。ガイドベーン4の枚数や角度を決めるに当たり、実験やシミュレーションによる最適化を行うことは好ましい態様である。
【0031】
[フィルタの孔の平面形状]
図5は孔(スリット)32の説明図であり、説明に不要な部材は図示していない。図5(A)はフィルタ3の上流がわから観た平面図であり、見えている面はフィルタ3の下面(コンロ側面)である。図5(B)は図5(A)に付した枠A内にある孔(スリット)32を上流がわ(コンロ側)から観た拡大斜視図である。フィルタ3の回転方向Rは、フィルタ3を下(コンロ側)から観たとき時計回りとなっている。回転するフィルタ3の孔(スリット)32には、送風機で吸引される空気が通過しており、空気がコンロのある下(上流)から送風機のある上(下流)へと吸い込まれる。Nは半径方向のベクトル成分を示している。半径方向のベクトル成分Nは、回転軸31に向かう半径方向の流れである。孔(スリット)32の回転方向後壁321は、フィルタ3の回転により通過する空気に向かって進むため、空気に含まれる油煙が叩きつけられ、油が付着する。この原理から分かるように、回転方向Rの向きと逆側の回転方向後壁321に油が付着する。油捕集効率は、油が付着する回転方向後壁321が長ければ長いほど向上する。孔32の形状は様々であり得る。
【0032】
図5(A)の枠B拡大図に図示されているように、フィルタ3には、有孔部326があり、孔(スリット)32として、最外周孔(スリット)323、中間周孔(スリット)324、最内周孔(スリット)325が設けられている。いずれの孔(スリット)32も、回転方向Rに凸に湾曲している凸湾曲部327を備えている。枠Aに含まれる一つの孔(スリット)32の拡大図である図5(B)では、凸湾曲部327があることがより分かりやすく図示されている。
【0033】
フィルタ3は、凸湾曲部327を有する孔(スリット)32を並べて配置すると、図4(A)のように渦巻状の模様のように見える。
【0034】
孔32は、丸くてもよいし形状を問わないが、フィルタ3の外周から内周に向かって延びるスリットであることが好ましい。また、孔(スリット)32を図5(B)のように凸湾曲部327のスリットとしておくと、半径方向に設けた直線状の孔(スリット)32と比べて、油捕集に寄与する回転方向後壁321の長さを長くすることができるので好ましい。また、ガイドベーン4を通った空気の流れVと回転方向後壁321の壁面の方向の角度が90°に近づくほど、油を含む空気が効率よく回転方向後壁321に当たる。前記角度を90°に近づけるべく、実施例1の孔(スリット)32は、図5(B)のようにフィルタ3の回転方向Rに凸に湾曲している凸湾曲部327となっている。
【0035】
[実施例1のガイドベーンの取付範囲]
図6はガイドベーン4の取付範囲の説明図であり、図6(A-1)はガイドベーン4の斜視図である。図6(A-1)で図示したように、ガイドベーン4は、取付面部44を下(整流板14側)にして、ベーン部45の下流がわ辺451がフィルタ3に面するように配置される。図6(A-2)は取付面部44を説明のため図示せずベーン部45だけを図示したガイドベーン4の斜視図である。
【0036】
図6(B)は実施例1のガイドベーン4の取付範囲を示す上流がわから観た平面図であり、取付面部44は説明のため図示していない。複数設けられたガイドベーン4のベーン部45の多くは、フィルタ3の外側にある油受け5より外方に位置している。すなわち、一側端455が、上流がわから観た平面視で有孔部326の最外周より外側に離間した位置にあり、他側端456が、フィルタ3の内周側に位置している。
ベーン部45の一側端455が有孔部326の外側に位置しているため、フィルタ3に向かって流れる空気は、有孔部326に到達する前からベーン部45により整流を受けることとなる。この態様により、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分を含む空気が、きれいに整流されてフィルタ3に流れ込む。
【0037】
また、図6(B)は、ガイドベーン4の他側端456が、上流がわから観た平面視でフィルタ3の有孔部326の最内周より外周側に位置し、一側端455が、他側端456よりフィルタ3の外周側に位置することで、有孔部326の最内周側は、ガイドベーンで覆われていないようになる例でもある。
ガイドベーン4の作用により、最外周孔(スリット)323および中間周孔(スリット)324へは、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分を含む空気が流れ込む。上流がわから観た平面視でフィルタ3の最内周孔(スリット)325までガイドベーン4は延びていないが、ガイドベーン4の他側端456から最内周孔(スリット)325に向けて、整流された空気が噴き出し旋回流となって、最内周孔(スリット)325へ流れ込む。
【0038】
ガイドベーン4は、整流作用を有するが、同時に、空気抵抗ともなる。また、騒音源となることもあるため、短い方が好ましいこともある。上記有孔部326の最内周側は、ガイドベーンで覆われていないようになる例は、ガイドベーン4を必要に応じ短くできることを示すものである。また、ガイドベーンが短くなることで清掃性が向上する。ガイドベーン4の長さを短くするのであれば、有孔部326の半分程度の領域を覆うことが望ましい。
【0039】
(実施例1の変形例1)
[実施例1のガイドベーンの取付範囲]
ガイドベーン4のベーン部45に向かう空気は、整流板14がフィルタ3の直下(上流がわ)を覆っているため、整流板14と内面パネル13の間の隙間を通るよう制限を受ける。実施例1ではガイドベーン4を通った空気の流れVは外周側から内周側へと向かって流れ、最外周孔(スリット)323と中間周孔(スリット)324で吸い込まれなかった残りの空気が最内周孔(スリット)325へと流れる。また、ガイドベーン4は空気の流れる方向を変えるものであり、空気抵抗を有するため、ガイドベーン4の有る領域では、ガイドベーン4が無い場合と比較して空気の流量や流速はどうしても低下する。
【0040】
図6(C)は実施例1の変形例1のガイドベーン4の取付範囲を示す上流がわから観た平面図である。ガイドベーン4の有無にかかわらず最外周孔(スリット)323は、最外周孔(スリット)移動速度MS1が速いため、他の孔(スリット)32と比較して油捕集効率が高いという利点がある。
ガイドベーン4による空気の流量や流速の低下を考慮して、敢えて最外周孔(スリット)323の直下(上流がわ)にはガイドベーン4を設けず、油捕集効率が劣る中間周孔(スリット)324と最内周孔(スリット)325の直下(上流がわ)にガイドベーン4を設けたものが変形例1である。
このような変形例1とするために、ガイドベーンは次のような構成となる。
一側端455が、上流がわから観た平面視でフィルタ3の有孔部326の最外周より内周側に位置し、他側端456が、一側端455よりフィルタ3の内周側に位置することで、有孔部326の最外周側は、ガイドベーン4で覆われていないようになる。
【0041】
中間周孔(スリット)324と最内周孔(スリット)325の直下(上流がわ)にガイドベーン4が位置するため、中間周孔(スリット)移動速度MS2や最内周孔(スリット)移動速度MS3は、最外周孔(スリット)移動速度MS1より遅い。だが、中間周孔(スリット)324と最内周孔(スリット)325は、ガイドベーン4の作用により、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを有する空気の流れが生じ、この空気が中間周孔(スリット)324と最内周孔(スリット)325を通過するため、捕集効率が劣るこれらの孔(スリット)32で油捕集効率が高まる。
【0042】
以上、最外周孔(スリット)323、中間周孔(スリット)324、最内周孔(スリット)325というスリットの領域を用いて説明してきたが、一側端455が最外周孔(スリット)323の途中にあってもよいし、一側端455が中間周孔(スリット)の途中にあってもよい。
【0043】
変形例1では、最外周孔(スリット)323・中間周孔(スリット)324・最内周孔(スリット)325を備えた孔(スリット)32に分割したが、連続する一本の孔(スリット)32でもよい。その場合は、連続する一本の孔(スリット)32の途中にガイドベーン4の一側端455を置いてもよい。
さらに、周孔(スリット)の分割数は、4以上に分割してもよい。特に大型の油捕集装置は、フィルタ3の直径が大きくなることもあるため、分割数を増やすことが好ましい場合もある。
【0044】
変形例1もガイドベーン4を短くできる例であり、ガイドベーン4を必要に応じ短くできることを示すものである。また、ガイドベーンが短くなることで清掃性が向上する。
【0045】
[実施例1のまとめ]
実施例1は、整流板14を備えていることが好ましい態様である。
実施例は、次の態様を包含している。
油捕集装置1は、送風機とフィルタ3とガイドベーン4を備え、送風機は、フィルタ3を介して空気を吸い込むものであり、フィルタ3は、複数の孔32が設けられた有孔部326を有する部材であり、回転軸31を中心に動力で回転する。そして、ガイドベーン4は、フィルタ3の上流がわ面33に設けられており、空気の流れを変えるものであり、ガイドベーン4を通った空気の流れは、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分を含むようなる。
【0046】
また、実施例1は、次の油捕集装置1の態様を包含している。
油捕集装置1は、送風機とフィルタ3とガイドベーン4と整流板14を備え、前記送風機は、フィルタ3を介して空気を吸い込むものである。
そして、フィルタ3は、複数の孔32が設けられた有孔部326を有する部材であり、回転軸31を中心に動力で回転し、整流板14は、ガイドベーン4の上流がわを覆うものである。ガイドベーン4は、フィルタ3の上流がわ面33に設けられており、一側端455および他側端456を有しており、一側端455は有孔部326の外周近傍または有孔部326の外に位置し、他側端456は、一側端455よりフィルタ3の内周側に位置している。一側端455と他側端456を結ぶ直線が、一側端455を起点とする半径方向に対して他側端456がフィルタ3の回転方向Rと逆側にずれて向くものとなっている。
【0047】
(実施例2)
[フィルタの孔の断面形状]
図5(B)で示すように、各々の孔(スリット)32は、回転方向前壁322と回転方向後壁321を少なくとも含む空間となっている。孔32が平面視で円形の場合は、回転方向Rの前側周辺が回転方向前壁322となり、回転方向Rの後側周辺が回転方向後壁321となる。各々の孔(スリット)32を通った油煙を含む空気は、フィルタ3の回転により回転方向後壁321に衝突し、油が捕集されることは前述したとおりである。
【0048】
図7は、実施例2のガイドベーンが無いときの油捕集の説明図である。図7(A)はフィルタ3の上流がわから観た平面図であり、図示されている枠Bの拡大図が含まれている。実施例2のフィルタ3は、外周側から、最外周孔(スリット)323、中間周孔(スリット)324、最内周孔(スリット)325を有する有孔部326を備えている。有孔部326に設けられている孔(スリット)32の総面積が大きいほど、フィルタ3を通過する空気抵抗は下がるが、フィルタ3の物理的な強度は落ちる。有孔部326に含まれる孔(スリット)32の配置や面積は、フィルタ3の強度や空気抵抗などを考慮して決められる。どの孔(スリット)32も回転速度(角速度)は同じであるが、外周ほど回転軸31からの距離が遠くなるため、最外周孔移動速度MS1が最も高速になる。そのため、油捕集効率は最外周孔(スリット)323が最も高い。
【0049】
ところが、回転軸31に近い中間周孔移動速度MS2と最内周孔移動速度MS3は、最外周孔移動速度MS1に比べて小さいため、油捕集効率が最外周孔(スリット)323より劣る。
【0050】
そこで、これらの孔(スリット)32の油捕集に寄与する回転方向後壁321(断面図では回転方向後辺3211)の形状を工夫することで油捕集効率の向上を図った。
送風機は、フィルタ3を介して空気を吸い込むものであり、フィルタ3は、複数の孔(スリット)32が設けられた有孔部326を有する部材であり、回転軸31を中心に動力で回転することは、実施例1と同様である。
【0051】
図7(B)は図7(A)に付した枠B内のa-a間、b-b間およびc-c間の断面図である。図7(B)(a)はa-a間の最外周孔(スリット)323の断面図、図7(B)(b)はb-b間の中間周孔(スリット)324の断面図、図7(B)(c)はc-c間の最内周孔(スリット)325の断面図である。これらの断面図は、フィルタ3を、回転軸31を中心とした円周方向に切断したときの孔(スリット)32の断面を表している。
【0052】
[ガイドベーンが無いときの実施例2の作用]
ガイドベーンの有無にかかわらず、フィルタ3の孔(スリット)32の断面は、回転方向後辺3211と回転方向前辺3221を含む空間となっている。この空間は、油煙を含む空気がフィルタ3を通過する流路となる。そして、回転方向後辺3211は、上流がわ面33(コンロ側の面)の一端3211Dと、下流がわ面34(送風機側の面)の他端3211Uを有している。
【0053】
図7(B)(b)の中間周孔(スリット)324の断面と図7(B)(c)の最内周孔(スリット)325の断面を参照されたい。回転方向後辺3211は、上流がわ面33(コンロ側の面)の一端3211Dと、下流がわ面34(送風機側の面)の他端3211Uを有しており、従来タイプと異なり上流がわ面33の一端3211Dは、下流がわ面34の他端3211Uより、フィルタ3の回転方向Rと逆側にあるため、回転方向後辺3211は傾斜している。この傾斜を、以下「当該傾斜」という。当該傾斜を第2傾斜角度φとして示すと、0°<第2傾斜角度φ<90°となるのが、実施例2である。これに対して、従来タイプの図7(B)(a)は第2傾斜角度φが90°となっている。
【0054】
整流板14が無いときの空気の流れは、上流がわから下流がわに向かう回転軸31方向のベクトル成分Aを含む空気の流れとなって孔(スリット)32を通過して吸い込まれる。
このとき、フィルタ3は、回転方向Rに高速で回転しているため、回転軸方向のベクトル成分Aを含む空気の流れは、図中鉛直方向に図示された回転方向後辺3211、すなわち、回転方向後壁321の回転方向後辺3211に叩きつけられることとなり、油が回転方向後壁321に捕集されることとなる。図7(B)(a)は、その様子を図示しており、従来タイプの孔(スリット)32となっている。いわば、従来タイプでは、フィルタ3の回転を主に利用して、油の捕集を行っている。実施例2では、最外周孔移動速度MS1が最も高速であり、油捕集効率は最外周孔(スリット)323が最も高いため、敢えて最外周孔(スリット)323に当該傾斜を設けない従来タイプの孔(スリット)32を採用している。
【0055】
従来タイプの図7(B)(a)では、当該傾斜の第2傾斜角度φが90°となっているため、図示された通り、回転方向後壁321の回転方向後辺3211の方向と孔(スリット)を通過する回転軸31方向のベクトル成分Aを含む空気の流れの方向は平行となる。フィルタ3が回転方向Rに回転することにより、油煙を含んだ空気が回転方向後壁321に当たり、油が捕集される。
【0056】
他方、実施例2の図7(B)(b)と中間周孔(スリット)324と図7(c)の最内周孔(スリット)325は、共に当該傾斜を有している。孔(スリット)を通過する回転軸31方向のベクトル成分Aを含む空気の流れは、回転方向後壁321の回転方向後辺3211に当たるように向かうことになる。
【0057】
吸い込まれる空気は、孔(スリット)32を通過する際に、当該傾斜により転向する。油滴は空気より質量が大きいため、空気より慣性力が大きい。そのため、油煙に含まれる微小な油滴は、空気の流れが転向するにもかかわらず、その慣性力により直進し、傾斜する回転方向後辺3211(回転方向後壁321)に当たることとなる。当該傾斜は、油捕集効率の向上に寄与する。
【0058】
また、当該傾斜の角度を第2傾斜角度φとすると、第2傾斜角度φが90°より小さくなればなるほど、回転方向後辺3211が長くなる。これは、油捕集面となる回転方向後壁321の面積を増やすことに相当し、油捕集効率が向上する。
【0059】
最外周孔(スリット)323は、最外周孔移動速度MS1が最も高速になり、当該傾斜を設けなくとも油捕集効率が高い。中間周孔(スリット)324と最内周孔(スリット)325は、最外周孔移動速度MS1より小さい移動速度MSとなっており、油捕集効率において劣る。当該傾斜は、回転方向後壁321の油捕集効率を高め、移動速度MSの小ささを補うことができる。当該傾斜は、孔(スリット)32の回転軸31からの距離による油捕集効率の違い(移動速度MSの違い)を補い、フィルタ3全体の油捕集効率の均一に寄与できる。
実施例2では、フィルタ3が回転方向Rに回転することによる油捕集の作用に加えて、当該傾斜による油捕集の作用が加わるため、油捕集効率が向上する。
【0060】
さらに、実施例2では、図7(B)(b)と中間周孔(スリット)324と図7(c)の最内周孔(スリット)325の回転方向後辺3211と回転方向前辺3221は、略平行になっており、平行四辺形の空間となっている。これにより、孔(スリット)32を通過する空気がスムーズに流れる。
【0061】
[ガイドベーンとの相乗作用]
図8は実施例2のガイドベーン4が有るときの油捕集の説明図である。図8(A)は、フィルタ3の上流がわから観た平面図(一部の拡大図を含む。)である。
図8(B)は図8(A)に付した枠B内のa-a間、b-b間およびc-c間の断面図である。
図8(B)(a)はa-a間の最外周孔(スリット)323の断面図であり、図8(B)(b)はb-b間の中間周孔(スリット)324の断面図、図8(B)(c)はc-c間の最内周孔(スリット)325の断面図である。いずれの図面もフィルタ3の孔(スリット)の形状は、図7(B)の各図と同じであるが、実施例1のガイドベーン4が設けられている点でのみ異なる。
【0062】
実施例1で説明したように、ガイドベーン4を通った空気の流れVは、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを含んでいる。これに対して、最外周孔(スリット)323、中間周孔(スリット)324および最内周孔(スリット)325を通過して吸い込まれる空気の流れは、上流がわから下流がわに向く回転軸31方向のベクトル成分Aを含む。
両ベクトル成分が組み合わされることで、孔(スリット)32を通り抜けようとする空気の流れTは、回転方向後辺3211に向かうようになる。これにより、回転方向後壁321に油煙を含む空気が当たり、捕集効率が高まる。
【0063】
図8(B)(a)の最外周孔(スリット)323には、当該傾斜が設けられていない。他方、図8(B)(b)の中間周孔(スリット)324と、図8(B)(c)の最内周孔(スリット)325の回転方向後辺3211は、当該傾斜を有している。
(注:「当該傾斜」とは、前述したように、回転方向後辺3211の上流がわ面33(コンロ側の面)の一端3211Dと、下流がわ面34(送風機側の面)の他端3211Uがあり、上流がわ面33の一端3211Dは、下流がわ面34の他端3211Uより、フィルタ3の回転方向Rと逆側にあるため生じる、回転方向後辺3211の傾斜のことをいう。)
【0064】
当該傾斜があることで、図8(B)(b)の中間周孔(スリット)324と、図8(B)(c)の最内周孔(スリット)325の回転方向後辺3211の油捕集効率が高まることは、前述の[ガイドベーンが無いときの作用]で説明したとおりである。ガイドベーン4を設けることで、ガイドベーン4を通った空気の流れVは、回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを有するようになる。ガイドベーン4を設ける態様においては、当該傾斜による効果に加えて、ガイドベーン4による逆向きのベクトル成分RVを生じる効果が加わる。
【0065】
以上のように、ガイドベーン4と当該傾斜を孔(スリット)32に設けることは、互いに矛盾することなく相乗効果を生む。
【0066】
[実施例2の当該傾斜の作用のまとめ]
吸い込まれる空気は、孔(スリット)32を通過する際に、当該傾斜により転向する。油滴は空気より質量が大きいため、空気より慣性力が大きい。そのため、空気が転向するにもかかわらず、慣性力により直進し、傾斜する孔(スリット)32の回転方向後辺3211(回転方向後壁321)に当たり、付着しやすくなる。
また、当該傾斜の角度を第2傾斜角度φとすると、第2傾斜角度φが90°より小さくなればなるほど、回転方向後辺3211が長くなる。これは、油捕集面となる回転方向後壁321の面積を増やすことに相当し、油捕集効率が向上する。
【0067】
上述実施例2の回転方向後辺3211(回転方向後壁321)に当該傾斜を設ける工夫は、ガイドベーン4による油捕集効率の向上と別の原理によるものであり、ガイドベーン4の有無に依らず油捕集効率が向上する。
【0068】
説明してきた実施例2では、最外周孔(スリット)323に当該傾斜を設けていない。他方、中間周孔(スリット)324と最内周孔(スリット)325は、各周孔(スリット)毎に回転軸31に近づくに従い、第2傾斜角度φは小さくなり、回転方向後辺3211の一端3211Dからの他端3321Uの長さが長くなるように構成されている。最外周孔(スリット)323から最内周孔(スリット)325にかけて、油捕集効率の差が少なくなり、均一で高い油捕集効率のフィルタ3となる。
【0069】
上記したように実施例2では、孔(スリット)32を回転軸31からの距離に応じて、最外周孔(スリット)323から最内周孔(スリット)325まで3種類の周孔(スリット)としている。そして、最外周孔(スリット)323の回転方向後辺3211はどこも同じ第2傾斜角度φ1となっており、中間周孔(スリット)324の回転方向後辺3211はどこも同じ第2傾斜角度φ2となっており、最内周孔(スリット)325の回転方向後辺3211はどこも同じ第2傾斜角度φ3となっている。つまり、第2傾斜角度φは、周孔(スリット)ごとに同じ角度であり、φ1>φ2>φ3となるように段階的に変化するようにしている。
【0070】
変形例として回転軸31からの距離に応じて連続的に第2傾斜角度φを変化させてもよい。この場合、1つの孔(スリット)32でも、回転軸からの距離に応じて第2傾斜角度φが変化することとなる。
また、すべての孔(スリット)32の第2傾斜角度φを、その位置にかかわらず、すべて同じにしてもよい。
【0071】
さらに、当該傾斜が設けられた中間周孔(スリット)324や最内周孔(スリット)325を通る空気の流速と流量は、当該傾斜により孔(スリット)32を通る空気の方向が曲げられ、空気抵抗が大きくなるので、流速が遅くなり流量も減る。そのため、これら領域では、最外周孔移動速度MS1より遅い中間周孔移動速度MS2や最内周孔移動速度MS3であっても油捕集効率が高くなる。
【0072】
他方、最も高い油捕集効率の最外周孔(スリット)323は、当該傾斜が設けられておらず、空気がフィルタ3の下面(上流・コンロ側)から上面(下流・送風機側)に抵抗なく流れる。最外周孔(スリット)323を通る空気の流速や流量は、当該傾斜が設けられた中間周孔(スリット)324や最内周孔(スリット)325と比較して流速や流量が大きくなる。最も高い油捕集効率の最外周孔(スリット)323を通る流量が増えるため、最外周孔(スリット)323の特性を十分活かすことができる。
【0073】
このように構成された孔(スリット)32は、有孔部326の内周側から外周側にかけてあり、回転方向後壁321の回転方向後辺3211の当該傾斜は、有孔部326の外周側に行くほど第2傾斜角度φが垂直に近づくようにすると好ましい。
また、少なくとも一部の孔(スリット)32が当該傾斜を備えればよく、全部の孔(スリット)32が当該傾斜を備える必要はない。
【0074】
なお、実施例2では、最外周孔(スリット)323の回転方向後壁321(回転方向後辺3211)に当該傾斜を設けない態様としたが、当該傾斜を設けてもよいことは言うまでもない。この場合、油捕集効率が高い最外周孔(スリット)323の特性をより向上させることができる。特に、サイクロン式の送風機を採用する場合は、渦巻状に吸引された空気が吸い込まれ最外周孔(スリット)323を経由して大半の空気が吸い込まれる。油を十分捕集するため、最外周孔(スリット)323に当該傾斜を設けることは好ましい態様である。
【0075】
また、一つの孔(スリット)32でも、回転方向後辺3211の当該傾斜は、回転軸31からの位置に応じて当該傾斜を連続的に変化させてもよいし、段階的変化させてもよい。
【0076】
以上のように、実施例2ではフィルタ3に工夫が加えられており、送風機とフィルタ3とを備え、送風機は、フィルタ3を介して空気を吸い込むものであり、フィルタ3は、複数の孔(スリット)32が設けられた有孔部326を有する部材である。そして、フィルタ3は、回転軸31を中心に動力で回転し、送風機側の面を下流がわ面34とし、空気を吸い込む側を上流がわ面33としたとき、有孔部326を円周方向に切断した孔32の断面は、フィルタ3の回転方向前辺3221と、回転方向後辺3211を少なくとも含む空間となっている。そして、少なくとも一部の孔32の断面は、回転方向後辺3211の上流がわ面33の一端3211Dが下流がわ面34の他端3211Uに比べてフィルタ3の回転方向Rの逆側にあり、回転方向後辺3211は傾斜しているように構成されている。
【0077】
[孔(スリット)の開口幅]
図9は、孔(スリット)32の断面図であり、図7(A)のc-c間に相当する位置の断面図である。図9(A)は最内周孔(スリット)325の下流がわ開口幅OW2が上流がわ開口幅OW1より大きいフィルタの断面図であり、図9(B)は最内周孔(スリット)325の下流がわ開口幅OW2が上流がわ開口幅OW1より小さいフィルタ3の断面図である。
図9(A)の態様と図9(B)の態様を比較すると、油捕集効率は、図9(A)の方が有利となる。空気の出口である下流がわ開口幅OW2が広いことにより、孔(スリット)32を通る空気の転向が大きくなるからである。
また、下流がわ開口幅OW2が上流がわ開口幅OW1と同じ幅のフィルタ3と比較して下流がわ開口幅OW2や上流がわ開口幅OW1を広くしたフィルタ3は、孔(スリット)32の奥までブラシ等の洗浄具が届きやすくなるため、洗浄性が向上する。
【0078】
(実施例3)
実施例3は整流板14が存在しない油捕集装置(レンジフード)1の例である。
図10は実施例3の説明図であり、図10(A)は油捕集装置(レンジフード)1を下(上流がわ・コンロ側)から観た斜視図である。図10(B)は油受けに取り付けられたガイドベーン4の一部拡大図である(説明のため、フィルタ3を図示しておらず、ガイドベーン4を数枚図示していない)。また、図11は、ガイドベーン4の角度の説明図であり、図11(A)は油捕集装置(レンジフード)1の上流がわから観た平面図、図11(B)は図11(A)に付したd-d間にあるガイドベーン4の断面図である。
フィルタ3は、油受け5で周囲が取り囲まれている。そして、個々のガイドベーン4は、取付面部44とベーン部45から構成されている。ガイドベーン4は、取付面部44が油受け5に取り付けられており、油受け5を洗浄などのために取り外すと、ガイドベーン4も取り外すことができるように全体としてガイドベーンユニット43となっている。そのため、清掃性が高くなる。
【0079】
実施例3の油捕集装置(レンジフード)1は整流板14を有しておらず、フィルタ3の下(上流がわ・コンロ側)に吸引される空気の流れを遮るものがない。そのため、フィルタ3の直下(上流がわ)にあるコンロ側の位置から、フィルタに向かって鉛直方向に空気が流れるようになっている。なお、この上方(下流がわ)に向かう鉛直方向の空気の流れは、整流板14が有る実施例1でも生じ得るが、整流板14が無い実施例3では、実施例1と比較して顕著に生じる。
【0080】
また、図10(A)や図11(A)に図示されているように、ガイドベーン4は、フィルタ3の外周側から内周側へと回転軸31方向へ延びている。ガイドベーン4の延びる方向は、実施例1のガイドベーン4が延びる方向とは異なっている。
【0081】
実施例3は、送風機とフィルタ3とガイドベーン4を備え、送風機は、フィルタ3を介して空気を吸い込むものである。そして、フィルタ3は、複数の孔(スリット)32が設けられた有孔部326を有する部材であり、回転軸31を中心に動力で回転する。 図10(B)や図11(B)に図示されているように、ガイドベーン4は、フィルタ3より送風流路の上流に設けられており、フィルタ3に近接する下流がわ辺451を有し、下流がわ辺451と対向し下流がわ辺451よりフィルタ3の遠方にある上流がわ辺452を有している。
そして、上流がわ辺452は、下流がわ辺451よりフィルタ3の回転方向R側にある油捕集装置(レンジフード)1となっている。
【0082】
図11(B)は、図11(A)に付したd-d間にあるガイドベーン4の断面図である。ガイドベーン4は、矩形の取付面部44とベーン部45とを接続する下流がわ辺451の部分でフィルタ3の回転方向R側へ曲折されている。図示してないコンロからフィルタ3に向かう空気の流れFは、下(コンロ側)からフィルタ3へと真っ直ぐに向かうが、ガイドベーン4のある箇所で方向へ方向が変わり、ガイドベーン4を通った空気の流れVの方向へと誘導される。ベーン部45は、上流がわ辺452が、下流がわ辺451よりフィルタ3の回転方向R側にあることで、フィルタ3の上流がわ面33に対して、90°以下の第3傾斜角度δで傾いている。
これにより、ガイドベーン4を通った空気の流れVは、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを含むようになる。
【0083】
[ガイドベーンの傾斜]
第3傾斜角度δは、ベーン部45のどの位置でも同じである必要はなく、フィルタ3の外周側から内周側に向かって変わるようにしてもよい。
前述したように、フィルタ3は、内周側より外周側の移動速度MSが大きく、外周側ほど油捕集効率が高い。第3傾斜角度δを内周側に行くに小さくすることで、ベーン部45をフィルタ3に向けて倒し、中間周孔(スリット)324と最内周孔(スリット)325による油捕集効率を向上させることもできる。
これにより、油捕集効率を外周側から内周側にかけて均等にすることもできる。
【0084】
さらに、最も高い油捕集効率の最外周孔(スリット)323の性能を活かすため、最外周孔(スリット)323に位置するガイドベーン4の第3傾斜角度δは、垂直にされてもよい。このように構成されると、最外周孔(スリット)323の領域では、ガイドベーン4の空気抵抗が減り空気の流量が増え油捕集効率の高さを生かすことができる。
【0085】
他方、中間周孔(スリット)324や最内周孔(スリット)325の領域のベーン部45の上流がわ辺452から下流がわ辺451に向けた傾斜の角度は、内周側ほど大きくなっている。これにより、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを多く含む空気の流れが生じ、油捕集効率を高める。それと同時に、吸い込まれる空気の流れの方向が変わるため空気抵抗が増し、これらの孔(スリット)32を通過する空気の流量及び流速が減る。これら領域では、移動速度MSが最外周孔(スリット)323より遅い中間周孔移動速度MS2や最内周孔移動速度MS3であっても油捕集効率が高くなる。
【0086】
[ガイドベーンの湾曲]
ベーン部45は上流がわから下流がわに向けて湾曲していてもよい。ベーン部45の上流がわ辺452付近をフィルタ3の上流がわ面33に対して鉛直方向とし、下流がわ辺451に近くなるほど第3傾斜角度δが小さくなるよう湾曲させることもできる。コンロのある上流がわから吸い込まれる空気は、ベーン部45の湾曲に従い、徐々に方向を変え、スムーズな整流ができる。
【0087】
[実施例3のまとめ]
実施例3は、整流板14を設けないことが好ましい油捕集装置1の態様であるが、実施例3のガイドベーン4でも整流板14を設けることを妨げるものではない。
油捕集装置1は、送風機とフィルタ3とガイドベーン4を備えている。送風機は、フィルタ3を介して空気を吸い込むものであり、フィルタ3は、複数の孔32が設けられた有孔部326を有する部材であり、回転軸31を中心に動力で回転する。そして、ガイドベーン4は、フィルタ3の上流がわ面33に設けられており、下流がわ辺451と上流がわ辺452を有する。下流がわ辺451は、フィルタ3に近接する辺であり、上流がわ辺452は、下流がわ辺451と対向し前記下流がわ辺451よりフィルタ3の遠方にある辺である。上流がわ辺452は、下流がわ辺451よりフィルタ3の回転方向R側にある。
【0088】
(実施例4)
実施例4は、ガイドベーン4として一体成形により複数のベーン部45を有するガイドベーンユニット43を採用した例である。実施例1と同じく整流板14を使用する態様に用いられる。図12は立体造形したガイドベーンユニット43の説明図である。図12(A)~図12(C)は、態様1~態様3の斜視図である。立体造形は様々な手段で行うことができるが、プレス機による打ち抜き加工は生産性が高く好ましい。
【0089】
図12(A)の態様1では、ガイドベーンユニット43は円環状に構成された薄板からなるものである。円環の領域には角張った波が連続する形状をしている。真ん中の穴は、フィルタ3が位置する部分であり、フィルタ3を囲むようにガイドベーンユニット43が取付けられる。角張った波の部分がベーン部45となる箇所であり、薄板の下(コンロ側)と上(フィルタ側)の両方から、空気が吸い込まれる。ガイドベーン4を通った空気の流れVは、フィルタ3の回転方向Rと逆向きのベクトル成分RVを含むようになる。
【0090】
図12(B)の態様2は、ベーン部45が湾曲している例である。ガイドベーンユニット43の円環の幅は非常に大きくなっており、また、ベーン部45が湾曲しているため、図示されているようにガイドベーン4を通った空気の流れVは、ほぼフィルタ3の回転方向Rと逆向きになるまで整流できる。空気の流れの相対速度は、ほぼフィルタ3の角速度にガイドベーン4を通った空気の流れVの速度を加えた速度となる。ガイドベーン4の機能を著しく高める態様である。
このように、ガイドベーン4のベーン部45は、直線状に空気の流れを整流するものである必要はなく、湾曲していてもよい。
【0091】
図12(C)の態様3は、態様1の変形例であり、ガイドベーンユニット43の下(コンロ側)に取付面部44を一体成形で作り出している。この取付面部44は、整流板14の裏面等に取り付けることが可能である。
【0092】
(変形例2)
変形例2では、本発明に含まれる多様な態様を説明する。
ガイドベーン4に油煙の油が付着するため、ガイドベーン4は、着脱自在に取り付けられることが好ましい。例えば、マグネットなど着脱可能な方法で固定してもよい。一枚一枚のガイドベーン4を着脱自在に構成する場合は、ガイドベーン4の方向を決めるため、取付位置の目印や取付位置に受け部を用意するなど適宜工夫できる。
また、取付手法は問わない。例えば、ガイドベーン4をフィルタ3の周辺部材に溶接したものでもよい。
【0093】
本発明のガイドベーン4は様々なタイプの送風機に適用可能であって、送風機の種類に応じてフィルタ3の周辺部材も変化する。また、コストカットのため、整流板14のみを設け内面パネル13のない態様や、内面パネル13はあるが整流板14のない態様など様々なものが本発明に含まれることは言うまでもない。
さらに、ガイドベーン4を取り付けるフィルタ3の周辺部材は、例えば、特許文献1のようなブーツタイプのレンジフード等にあっては、仕切り板であってもよい。実施例1~実施例4では、レンジフードを例として説明してきたが、本発明は油捕集機能を有する空気清浄機などに適用することもでき、レンジフードには存在しない空気清浄機特有の周辺部材が存在することもあり、これにガイドベーン4を取り付けてもよい。
また、本発明のガイドベーン4を取り付ける周辺部材は、ブラケット等を介してガイドベーン4を取り付けることができる部材を含み、フィルタ3と位置的に近い部材に限られない。
【0094】
実施例1~実施例4では、レンジフードを油捕集装置1として説明した。レンジフードでは、排気を屋外に放出するものであるが、室内を循環する形式の空気清浄装置なども本発明に含まれる。排気をどのようにするかは、本発明の本質と無関係である。
【0095】
以上、本発明に係る実施例や変形例などの実施の形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施の形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 油捕集装置
11 フード部
12 送風機ボックス
13 内面パネル
14 整流板
141 整流板取付フック
3 フィルタ
31 回転軸
32 孔(スリット)
321 回転方向後壁
3211 回転方向後辺
3211D 上流がわ面の一端
3211U 下流がわ面の他端
322 回転方向前壁
3221 回転方向前辺
323 最外周孔(スリット)
324 中間周孔(スリット)
325 最内周孔(スリット)
326 有孔部
327 凸湾曲
33 上流がわ面
34 下流がわ面
4 ガイドベーン
41 ガイドベーン取付孔
42 取付部材
421 締結部材挿入孔
43 ガイドベーンユニット
44 取付面部
45 ベーン部
451 下流がわ辺
452 上流がわ辺
455 一側端
456 他側端
5 油受け
DU 排気ダクト
MS 移動速度
MS1 最外周孔移動速度
MS2 中間周孔移動速度
MS3 最内周孔移動速度
OW1 上流がわ開口幅
OW2 下流がわ開口幅
R フィルタの回転方向
RV 回転方向と逆向きのベクトル成分
A 回転軸方向のベクトル成分
V ガイドベーンを通った空気の流れ
N 半径方向のベクトル成分
F フィルタに向かう空気の流れ
T 孔(スリット)を通り抜けようとする空気の流れ
θ 第1傾斜角度
φ 第2傾斜角度
δ 第3傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12