(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034736
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】籾摺装置
(51)【国際特許分類】
B02B 3/04 20060101AFI20230306BHJP
B02B 3/00 20060101ALI20230306BHJP
B02B 7/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B02B3/04 104
B02B3/00 C
B02B7/02 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141101
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】松木 覚
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043AA02
4D043CB02
4D043DA01
4D043DG09
4D043DG10
4D043DG13
4D043DG15
4D043GB02
4D043GB13
4D043MA01
4D043MA05
4D043MA08
4D043MB05
(57)【要約】
【課題】固定ロール及び可動ロールの摩耗を抑制できる籾摺装置を提供すること。
【解決手段】変位用モータ51の負荷トルクを検出するトルクセンサを備え、そのトルクセンサで検出される負荷トルクが所定の閾値を超えた場合に、固定ロール20a及び可動ロール20bが接触したと判定するので、かかる接触を判定する際に、従来のように固定ロール20a及び可動ロール20bを回転状態で接触させることを不要にできる。よって、ロール間の初期間隔を繰り返し行っても、固定ロール20a及び可動ロール20bの摩耗を抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ロールと、その固定ロールに対して相対変位する可動ロールと、その可動ロールを変位させる変位用モータと、その変位用モータの駆動力によって前記可動ロールを前記固定ロールに近付ける方向へ変位させる変位手段と、その変位手段によって変位させた前記可動ロールが前記固定ロールに接触したか否かを判定する判定手段と、その判定手段で前記接触が生じたと判定された場合に前記可動ロールを前記固定ロールから所定量離隔させてロール間の初期間隔を設定する設定手段と、を備える籾摺装置において、
前記変位用モータの負荷トルクを検出するトルクセンサを備え、
前記判定手段は、前記トルクセンサで検出される前記負荷トルクが所定の閾値を超えた場合に前記接触が生じたと判定することを特徴とする籾摺装置。
【請求項2】
前記設定手段で前記初期間隔が設定された後の前記固定ロール及び前記可動ロールによる籾の処理量を推定する処理量推定手段と、
前記処理量推定手段で推定された前記処理量から前記固定ロール及び前記可動ロールの摩耗量を推定する摩耗量推定手段と、
前記摩耗量推定手段で推定された前記摩耗量に応じて前記可動ロールを前記固定ロールに近付ける方向に変位させることにより、籾摺り中のロール間隔を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の籾摺装置。
【請求項3】
前記固定ロール及び前記可動ロールに籾を供給するシュートと、
前記シュートに籾が流下しているか否かを検出する検出手段と、を備え、
前記処理量推定手段は、前記検出手段で籾の流下が検出された期間に基づいて前記処理量を推定することを特徴とする請求項2記載の籾摺装置。
【請求項4】
前記シュートに籾が供給される際に回転する回転体を備え、
前記処理量推定手段は、前記回転体が回転し、且つ前記検出手段で籾の流下が検出されている期間に基づいて前記処理量を推定することを特徴とする請求項3記載の籾摺装置。
【請求項5】
前記回転体は、その回転軸回りに並ぶ複数の羽根を有し、前記シュートに籾を定量供給する送り出しローラであることを特徴とする請求項4記載の籾摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺装置に関し、特に、固定ロール及び可動ロールの摩耗を抑制できる籾摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定ロール及び可動ロールのロール間に籾を通過させて籾摺り(脱ぷ)を行う籾摺装置が知られている。この種の籾摺装置において、変位用モータの駆動力によって可動ロールを固定ロールに対して相対変位させることによってロール間隔を調整する技術がある。このような籾摺装置として、例えば特許文献1には、固定ロール及び可動ロールを回転させる回転駆動モータ13の駆動電流または負荷トルクを検出し、その検出結果に基づいてロール間の初期間隔を設定する技術が記載されている。
【0003】
具体的には、特許文献1の技術では、まず回転駆動モータ13の駆動力によって可動ロールを回転させ、その回転状態の可動ロールを移動用モータ64の駆動力によって固定ロールに接触させる。この接触によって固定ロール及び可動ロールの回転には負荷(抵抗)が生じるため、各ロールを回転させる回転駆動モータ13の駆動電流や負荷トルクの値が上昇する。この値が所定値まで上昇した位置をロール同士が接触した基準点とし、その基準点から所定量ロール同士を離隔させることで初期間隔を設定する。この技術によれば、例えば固定ロールや可動ロールが摩耗した場合であっても、常に適切な初期間隔で籾摺りを開始できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-239282号公報(例えば、段落0018,0019、
図1,7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、ロール間の初期間隔を設定する度に回転状態のロール同士を接触させる必要があるため、固定ロール及び可動ロールが摩耗し易いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、固定ロール及び可動ロールの摩耗を抑制できる籾摺装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の籾摺装置は、固定ロールと、その固定ロールに対して相対変位する可動ロールと、その可動ロールを変位させる変位用モータと、その変位用モータの駆動力によって前記可動ロールを前記固定ロールに近付ける方向へ変位させる変位手段と、その変位手段によって変位させた前記可動ロールが前記固定ロールに接触したか否かを判定する判定手段と、その判定手段で前記接触が生じたと判定された場合に前記可動ロールを前記固定ロールから所定量離隔させてロール間の初期間隔を設定する設定手段と、を備えるものであり、前記変位用モータの負荷トルクを検出するトルクセンサを備え、前記判定手段は、前記トルクセンサで検出される前記負荷トルクが所定の閾値を超えた場合に前記接触が生じたと判定する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の籾摺装置によれば、変位用モータの負荷トルクを検出するトルクセンサを備え、そのトルクセンサで検出される負荷トルクが所定の閾値を超えた場合に、固定ロール及び可動ロールが接触したと判定するので、かかる接触を判定する際に、回転状態のロール同士を接触させることを不要にできる。よって、ロール間の初期間隔の設定を繰り返し行っても、固定ロール及び可動ロールの摩耗を抑制できるという効果がある。
【0009】
請求項2記載の籾摺装置によれば、請求項1記載の籾摺装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ロール間の初期間隔が設定された後の固定ロール及び可動ロールによる籾の処理量が推定され、その推定された処理量から固定ロール及び可動ロールの摩耗量が推定される。その摩耗量に応じて可動ロールを固定ロールに近付ける方向に変位させることにより、籾摺り中のロール間隔が調整されるので、籾摺り中に固定ロール及び可動ロールが摩耗した場合であっても、常に適切な間隔で籾摺りを行うことができる。よって、籾の脱ぷ率を向上できるという効果がある。
【0010】
請求項3記載の籾摺装置によれば、請求項2記載の籾摺装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。固定ロール及び可動ロールに籾を供給するシュートと、そのシュートに籾が流下しているか否かを検出する検出手段と、を備える。検出手段で籾の流下が検出された期間に基づいて籾の処理量が推定されるので、シュートを介して固定ロール及び可動ロールに供給された籾の量(即ち、籾の処理量)を精度良く推定できる。これにより、固定ロール及び可動ロールの摩耗量も精度良く推定できるので、籾摺り中のロール間隔をより適切な間隔に設定できる。よって、籾の脱ぷ率を向上できるという効果がある。
【0011】
請求項4記載の籾摺装置によれば、請求項3記載の籾摺装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。シュートに籾が供給される際に回転する回転体を備え、その回転体が回転し、且つ検出手段で籾の流下が検出されている期間に基づいて籾の処理量が推定されるので、例えば回転体の回転数のみから籾の処理量を推定する場合に比べ、固定ロール及び可動ロールに供給された籾の量をより精度良く推定できる。これにより、固定ロール及び可動ロールの摩耗量もより精度良く推定できるので、籾摺り中のロール間隔を更に適切な間隔に設定できる。よって、籾の脱ぷ率を向上できるという効果がある。
【0012】
請求項5記載の籾摺装置によれば、請求項4記載の籾摺装置の奏する効果に加え、回転体は、その回転軸回りに並ぶ複数の羽根を有し、シュートに籾を定量供給する送り出しローラであるので、籾の処理量を推定するめの機能と、シュートに籾を定量供給する機能と、を送り出しローラに持たせることができる。これにより、籾の処理量を推定するための回転体を送り出しローラに加えて別途設けることを不要にできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態における籾摺装置の断面を模式的に図示した断面模式図であり、(b)は、
図1(a)のIb-Ib線における籾摺装置の断面模式図である。
【
図4】
図1(b)のIV-IV線における籾摺装置の断面模式図である。
【
図5】
図4の状態から可動ロールの変位に追従してシュートの角度が変化した状態を示す籾摺装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、籾摺装置1の全体構成について説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態における籾摺装置1の断面を模式的に図示した断面模式図であり、
図1(b)は、
図1(a)のIb-Ib線における籾摺装置1の断面模式図である。なお、
図1(b)では、シュート14(
図1(a)参照)の図示を省略している。
【0015】
籾摺装置1は、その筐体10に収納される固定ロール20a及び可動ロール20bを備え、それら固定ロール20a及び可動ロール20bのロール間の籾摺領域Aに籾を通過させて籾摺り(脱ぷ)を行う装置である。なお、以下の説明においては、固定ロール20a及び可動ロール20bをまとめて記載する場合には、各ロール20a,20bと記載して説明する。
【0016】
筐体10の上端(
図1(a)上側)には、投入ホッパ(図示せず)から供給された籾を受け入れる受入口11が形成される。受入口11の縁部(
図1(a)の左側の端部)からは傾斜板12が下方に延びており、この傾斜板12の下端と近接する位置に送り出しローラ30が配置される。
【0017】
送り出しローラ30は、その回転軸31回り(周方向)に並ぶ複数の羽根32を有するロータリーバルブである。この送り出しローラ30は、公知の構成が採用可能であるので詳細構成の図示を省略するが、公知の構成としては特開2017-064660号公報のロータリーバルブ130が例示される。
【0018】
送り出しローラ30には、円盤状の仕切板33が回転軸31の軸方向(
図1(a)の紙面垂直方向)に複数並べて設けられる。この仕切板33と羽根32とにより、籾を定量ずつ送り出すための空間34が仕切られる。
【0019】
送り出しローラ30の外周面のうち、傾斜板12から籾が供給される側(
図1(a)の右側)の外周面の略半周がカバー13によって覆われる。カバー13は、送り出しローラ30の外周面との間に籾の流路を形成するようにして受入口11から下方に延びており、カバー13の先端(下端)は送り出しローラ30の下端部に近接して配置される。よって、傾斜板12から送り出しローラ30とカバー13との間の流路に供給された籾は、送り出しローラ30の空間34に収容され、その空間34に収容された籾は、送り出しローラ30の一方向(
図1(a)の時計回りの方向)への回転により、複数の羽根32によって定量ずつ送り出されてカバー13の先端部分から繰り出される。
【0020】
この籾の繰り出し部分の下方側には、各ロール20a,20bに向けて下降傾斜する板状のシュート14が設けられる。よって、カバー13と送り出しローラ30との間から繰り出された籾は、シュート14の流下面14aに沿って流下して各ロール20a,20bに供給される。シュート14は、回転軸14bによって筐体10に回転可能に軸支されており、この回転によるシュート14の角度は、後述するカム67によって調整される。
【0021】
また、シュート14には、その流下面14aで流下する籾の有無を検出する静電容量センサSが設けられる。静電容量センサSによる籾の有無の検出は、籾の処理量に応じて各ロール20a,20b間のロール間隔を調整するためのものであるが、このロール間隔の調整については後述する。
【0022】
各ロール20a,20bの回転軸21a,21bには、外径が異なるベルトプーリP1,P2がそれぞれ固着され、それらベルトプーリP1,P2には、回転用モータ40の駆動軸に固着されたベルトプーリ(図示せず)及び筐体10に軸支されたベルトプーリP3に掛け回された駆動ベルト(図示せず)が掛け回される。
【0023】
回転用モータ40の駆動力が駆動ベルトを介して伝達されることで、各ロール20a,20bの回転軸21a,21bは、互いに逆方向に異なる回転速度で回転する。回転軸21a,21bには、金属材料(鉄鋼)を用いて円筒状に形成されるリム22a,22bが固定されており、このリム22a,22bの外周面が弾性材料(ゴム状弾性体)の弾性ロール23a,23bによって覆われる。
【0024】
回転する各弾性ロール23a,23b同士の間の籾摺領域Aを籾が通過することにより、籾が脱ぷされて玄米となる。籾摺領域Aを通過して分離された籾殻および玄米は、筐体10の下端(
図1(a)下側)に形成された排出口15から筐体10の外部に排出される。
【0025】
このような籾摺りによって弾性ロール23a,23bが摩耗すると、各ロール20a,20b間のロール間隔が拡大する。この間隔の拡大によって籾の脱ぷ率(籾から得られる玄米の割合)が低下するため、本実施形態の籾摺装置1は、かかる間隔を常に適切な状態に調整するように構成されている。この構成について、以下に説明する。
【0026】
固定ロール20aの回転軸21aは、筐体10に回転可能に軸支される一方、可動ロール20bの回転軸21bは、揺動アーム16に回転可能に軸支される。揺動アーム16の軸16aは、筐体10に回転可能に軸支されており、この軸16aを中心にした揺動アーム16の揺動(回転)の駆動力が間隔調整機構50から付与される。
【0027】
間隔調整機構50は、変位用モータ51と、筐体10に回転可能に軸支される回転軸52と、その回転軸52と共にボールねじ機構を構成し揺動アーム16に連結される連結体53とを備える。変位用モータ51の駆動軸に固着された歯車51aと回転軸52に固着された歯車52aとの間には、チェーン(図示せず)が掛け回される。
【0028】
変位用モータ51の駆動力により回転軸52が正方向または逆方向に回転され、回転軸52に対して連結体53が伸長方向または短縮方向に直線運動されることで、連結体53により揺動アーム16が押し引きされる。これにより、揺動アーム16が軸16aを中心に揺動(回転)され、各ロール20a,20bの対向間隔が増加または減少される。
【0029】
変位用モータ51には、図示しないトルクセンサが設けられており、変位用モータ51に生じる負荷トルクがトルクセンサで検出される。本実施形態では、このトルクセンサで検出される負荷トルクを用いて、ロール間隔の初期値(以下「初期間隔」と称す)が設定される。この初期間隔を設定する処理について、
図2を参照して説明する。
図2は、初期間隔設定処理のフローチャートである。初期間隔設定処理は、籾摺装置1に電源が投入されると、籾摺装置1の制御装置(CPU)で実行される。
【0030】
図2に示すように、初期間隔設定処理はまず、可動ロール20bを退避位置から固定ロール20aに接近する方向へ変位させる(S1)。なお、退避位置とは、後述する籾摺処理のS18(
図2参照)の処理において、籾摺りの停止指示の後に固定ロール20aから可動ロール20bを所定量離隔させた位置である。
【0031】
S1の処理の後、トルクセンサで検出される変位用モータ51の負荷トルクの値が所定の閾値を超えたか否かを確認する(S2)。トルクセンサの検出値が所定の閾値を超えていない場合は(S2:No)、可動ロール20bが固定ロール20aから離隔した状態で変位している(又は各ロール20a,20bが僅かに接触している)状態であるので、S2の処理を繰り返す。
【0032】
一方、トルクセンサの検出値が所定の閾値を超えている場合、即ち変位用モータ51に生じている負荷トルクが所定以上に大きくなっている場合は(S2:Yes)、可動ロール20bが固定ロール20aに接触している状態であるため、固定ロール20aから離隔する方向へ可動ロール20bを変位させる(S3)。
【0033】
S3の処理の後、固定ロール20aから離隔する方向への可動ロール20bの変位量が所定の閾値を超えているか否かを確認する(S4)。このS4の閾値は、設定したい初期間隔に応じて適宜変更すれば良い。固定ロール20aから離隔する方向への可動ロール20bの変位量が所定の閾値を超えていない場合は(S4:No)、所望の初期間隔に達していない状態であるので、S4の処理を繰り返す。
【0034】
一方、可動ロール20bの変位量が所定の閾値を超えた場合は(S4:Yes)、ロール間隔が所望の初期間隔になった状態であるので、可動ロール20bの変位を停止して(S5)、初期間隔設定処理を終了する。
【0035】
このように、各ロール20a,20bが接触した位置を基準点とし、その基準点から所定量ロール同士を離隔させて初期間隔を設定することにより、各ロール20a,20bが摩耗した場合であっても、常に適切な初期間隔で籾摺りを開始できる。そして、本実施形態では、トルクセンサで検出される変位用モータ51の負荷トルクが所定の閾値を超えた場合に、各ロール20a,20bが接触したと判定する。これにより、従来の技術(例えば、特開平09-239282号公報)のように、各ロール20a,20bの接触を判定する際に回転用モータ40によって各ロール20a,20bを回転させることを不要にできる。よって、ロール間の初期間隔の設定を繰り返し行っても、各ロール20a,20bの摩耗を抑制できる。
【0036】
このような初期間隔の設定により、適切なロール間隔で籾摺りを開始できるが、籾摺りを継続して行うと各ロール20a,20bの摩耗によってロール間隔が拡大する。よって、本実施形態では、初期間隔を設定した後の籾摺り中もロール間隔を調整する処理を行う。この処理について、
図3を参照して説明する。
図3は、籾摺処理のフローチャートである。籾摺処理は、籾摺りを開始する指示が入力される(例えば各ロール20a,20bの回転開始のスイッチが押される)と実行される。
【0037】
図3に示すように、籾摺処理ではまず、送り出しローラ30を駆動させ(S10)、シュート14に向けて籾を定量ずつ繰り出す。S10の処理の後、シュート14の流下面14aで籾が流下しているか否か、即ち静電容量センサSがONであるかを確認する(S11)。
【0038】
静電容量センサSがONである場合(S11:Yes)、シュート14を介して各ロール20a,20bに籾が供給されている状態であるので、静電容量センサSがONになっている時間と、送り出しローラ30の回転速度とから送り出しローラ30の回転数を算出する(S12)。つまり、静電容量センサSがONになっている期間中の送り出しローラ30の積算回転数を算出する。
【0039】
S12の処理の後、算出された送り出しローラ30の回転数から籾の処理量を推定する(S13)。この処理量の推定は、籾摺装置1に記憶される処理量データであって、送り出しローラ30の回転数と、その回転数で送り出しローラ30から繰り出される籾の量と、の関係を予め計測した処理量データを参照することで行われる。
【0040】
S13の処理の後、予めプログラムされた、籾の処理量と各ロール20a,20bの摩耗量との相関を示すデータを参照し、S13で推定された籾の処理量から各ロール20a,20bの摩耗量を推定する(S14)。
【0041】
S14の処理で各ロール20a,20bの摩耗量を推定した後、その推定される摩耗量の分、固定ロール20aに接近する方向へ可動ロール20bを変位させる(S15)。これにより、初期間隔の設定後の籾摺り中に各ロール20a,20bが摩耗した場合であっても、常に適切な間隔で籾摺りを行うことができるので、籾の脱ぷ率を向上できる。
【0042】
また、S14における籾の処理量の推定は、静電容量センサSで籾の流下が検出された期間(ON時間)に基づいて行われる。つまり、シュート14を介して各ロール20a,20bに実際に籾が流下している期間に基づいて、各ロール20a,20bに供給された籾の量が推定されるので、各ロール20a,20bによる籾の処理量を精度良く推定できる。これにより、各ロール20a,20bの摩耗量も精度良く推定できるので、籾摺り中のロール間隔をより適切な間隔に設定できる。
【0043】
ここで、例えば、静電容量センサSを省略し、例えば送り出しローラ30の回転数のみから籾の処理量を推定することも可能である。しかしながら、そのような構成では、例えば送り出しローラ30が空回りしている場合には、実際には各ロール20a,20bに籾が供給されていない期間も合算して籾の処理量(各ロール20a,20bの摩耗量)が推定されてしまう。
【0044】
これに対して本実施形態では、送り出しローラ30が回転し、且つ静電容量センサSで籾の流下が検出されている期間(当該期間における送り出しローラ30の回転数)から籾の処理量が推定される。これにより、例えば送り出しローラ30の回転数のみから籾の処理量を推定する場合に比べ、各ロール20a,20bでの籾の処理量を精度良く推定できる。よって、各ロール20a,20bの摩耗量も精度良く推定できるので、籾摺り中のロール間隔を適切な間隔に設定できる。
【0045】
また、シュート14に籾を定量供給する送り出しローラ30の回転数から籾の処理量を推定することにより、当該処理量を推定するための機能と、シュート14に籾を定量供給するための機能とを送り出しローラ30に持たせることができる。これにより、籾の処理量を推定するための回転体を送り出しローラ30に加えて別途設けることを不要にできるので、籾摺装置1の製品コストを低減できる。
【0046】
S15の処理の後、及び、S11の処理で静電容量センサSがONではない場合(S11:No)、籾摺処理の停止指示が有るか(例えば終了や一時停止のスイッチが押されたか)否かを確認する(S16)。籾摺処理の停止指示が無い場合(S16:No)、S11の処理に戻る。
【0047】
一方、籾摺処理の停止指示が有る場合には(S16:Yes)、送り出しローラ30を停止させ(S17)、可動ロール20bを退避位置へ変位させて(S18)、一連の処理を終了する。
【0048】
次いで、
図4及び
図5を参照して、可動ロール20bの変位にシュート14を追従させる構成について説明する。
図4は、
図1(b)のIV-IV線における籾摺装置1の断面模式図であり、
図5は、
図4の状態から可動ロール20bの変位に追従してシュート14の角度が変化した状態を示す籾摺装置1の断面模式図である。なお、
図4及び
図5では、筐体10を仕切る仕切壁17(
図1参照)に隠れている部分を破線で図示している。
【0049】
図4及び
図5に示すように、各ロール20a,20bの摩耗に応じて可動ロール20bを固定ロール20aに近付けるように変位させると、ロール間の籾摺領域A(
図4参照)は、各ロール20a,20bの摩耗が進むにつれて固定ロール20aに近付く方向に移動する(
図5の籾摺領域B参照)。籾摺装置1には、この籾摺領域Aの移動にシュート14を追従させるためのリンク機構60が設けられる。
【0050】
リンク機構60は、揺動アーム16に固定されるボス金具61を備える。ボス金具61は、可動ロール20bの回転軸21bを挟んで揺動アーム16の軸16aとは反対側(揺動アーム16の上端部)に固定される。
【0051】
ボス金具61には、揺動アーム16の軸16aと同一の方向(
図4の紙面垂直方向)に延びる第1軸62が固定され、この第1軸62に第1リンク63の一端が回転可能に軸支される。
【0052】
第1リンク63は、第1軸62との接続部分から固定ロール20aの回転軸21aの上方側に向けて略水平方向に延びており、第1リンク63の他端は、第1軸62と同一の方向に延びる第2軸64に回転可能に軸支される。
【0053】
第2軸64は第2リンク65に一端(上端)に固定され、第2リンク65は、第1リンク63との接続部分から下方(固定ロール20aの回転軸21a側)に向けて延びている。第2リンク65の他端(下端)にはカム軸66が固定され、カム軸66は、筐体10の仕切壁17(
図1参照)に回転可能に軸支される。
【0054】
カム軸66には、仕切壁17(
図1参照)を挟んで第2リンク65とは反対側の部位にカム67が取付けられる。カム67は、カム軸66から上方に偏心する板カムであり、その偏心部分がシュート14の流下面14aとは反対側の背面14cに接触する。つまり、上述した回転軸14b(
図1(a)参照)回のシュート14の自重による回転がカム67によって支えられている。
【0055】
各ロール20a,20bの摩耗が生じると、軸16a周りの揺動アーム16の揺動(回転)によって可動ロール20bが固定ロール20aに近付けられる。この揺動アーム16の揺動により、揺動アーム16に固定されたボス金具61も固定ロール20aに近付く方向に回転する。
【0056】
ボス金具61の回転により、第1リンク63が第1軸62及び第2軸64回りに回転しつつ第2リンク65を押し込むことにより、第2リンク65に固定されたカム軸66が第2リンク65と一体的に回転する。カム軸66の回転に伴い、カム67がシュート14の背面14cから離隔する方向に回転するため、シュート14が自重によって回転軸14b(
図1(a)参照)回りに回転する。このシュート14の回転により、各ロール20a,20bの摩耗後の籾摺領域Bにシュート14の先端が向けられる。
【0057】
このように、本実施形態では、第1リンク63及び第2リンク65の変位に伴って回転するカム軸66と、そのカム軸66に取り付けられるカム67とによってシュート14の角度を調整する構成である。これにより、カム軸66に対するカム67の取り付け角度を調整したり、カム67の形状を調整したりすることにより、シュート14の角度を微調整できる。即ち、籾摺領域A,Bに籾が供給され易くなる角度にシュート14を微調整できるので、籾の脱ぷ率を向上できる。
【0058】
ここで、従来(例えば、特開2008-259924号公報)の籾摺装置は、リンクロッド29の一端が規制部材28の係入口281に単に挿入される構成である。このような構成の場合、可動軸23回りの可動ローラ24の回転による振動がリンクロッド29に伝達されると、係入口281内でのリンクロッド29のガタつきによって籾供給板27(シュート)が揺動する。このような揺動が生じると、籾供給板27から流下する籾は、籾摺領域からズレた位置で固定ローラ22や可動ローラ24上に落下する。その結果、回転状態のローラとの接触によって籾が暴れる(跳ねたりする)ため、籾の脱ぷ率が低下し易い。
【0059】
これに対して本実施形態では、第1リンク63の一端(
図4,5の左側の端部)が揺動アーム16(ボス金具61)に回転可能に連結されるので、回転軸21b回りの可動ロール20bの回転による振動が揺動アーム16を介して第1リンク63及び第2リンク65に伝達されても、揺動アーム16に対する第1リンク63及び第2リンク65の相対位置を不変にできる。つまり、上記の従来のようなリンクのガタつきを抑制できるので、シュート14が所望の角度(籾摺領域A,Bに先端を向ける角度)から変化するような揺動を抑制できる。よって、シュート14から流下する籾が籾摺領域A,Bに向けて直接供給され易くなるので、籾の脱ぷ率を向上できる。
【0060】
また、本実施形態では、各ロール20a,20bの各々の回転軸21a,21bの軸心を含む平面を仮想平面Vとした場合、その仮想平面Vが水平方向に対して20°以上40°以下になるように各ロール20a,20bが配置される。これは、水平方向に対して傾斜するシュート14の流下面14aと、仮想平面Vとを略直行させると共に、シュート14の流下面14aの延長線上に籾摺領域A,Bを位置させるためである。これにより、シュート14の流下面14a上で流下することによって整列した籾が、その整列状態を保ったまま籾摺領域A,Bに直接供給され易くなるので、籾の脱ぷ率を向上できる。
【0061】
また、固定ロール20aよりも可動ロール20bが上方側に配置され、カム軸66が可動ロール20bの上端よりも下方に位置するので、カム軸66と、可動ロール20bの回転軸21bを支持する揺動アーム16とを同程度の高さに配置できる。これにより、カム軸66と揺動アーム16とを繋ぐ第1リンク63及び第2リンク65の長さを比較的短くできるので、第1リンク63及び第2リンク65の配置スペースを低減できる。
【0062】
このように、本実施形態では、可動ロール20bの変位に追従してシュート14が回転するので、上述したロール間の初期間隔の設定や、籾摺中のロール間隔の調整が行われる際には、そのロール間の籾摺領域A,Bにシュート14の先端を向けるように回転させることができる。更に、上述したカム67の取り付け角や形状の調整によってシュート14の角度を微調整できる。よって、籾摺の開始時や籾摺中のロール間隔を常に適切に設定できると共に、ロール間の籾摺領域A,Bに向けて籾が直接供給され易くなるので、籾の脱ぷ率を向上できる。
【0063】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0064】
上記実施形態では、籾の処理量から各ロール20a,20bの摩耗量を推定する場合を説明したが、例えば、各ロール20a,20bの回転数(回転の積算時間)から摩耗量を推定しても良い。この場合には、例えば送り出しローラ30が回転している期間、又は、静電容量センサSがONになっている期間中の各ロール20a,20bの回転数に基づいて摩耗量を推定すれば良い。
【0065】
上記実施形態では、送り出しローラ30が回転し、且つ静電容量センサSで籾の流下が検出されている期間に基づき、その期間中の送り出しローラ30の回転数から籾の処理量を推定する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、送り出しローラ30の回転数を算出することなく、静電容量センサSのON時間のみから籾の処理量を推定しても良いし、静電容量センサSを省略し、送り出しローラ30の回転数のみから籾の処理量を推定しても良い。また、例えば、シュート14に供給される籾(又はシュート14を流下する籾)によって従動回転する回転体を送り出しローラ30に加えて別途設け、その回転体の回転量から籾の処理量を推定しても良い。
【0066】
上記実施形態では、シュート14を流下する籾の有無を検出する検出手段の一例として、静電容量センサSを例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、検出手段は、レーザセンサ、赤外線センサ等、公知の構成を採用できる。
【0067】
上記実施形態では、ロール20a,20bの各々の回転軸21a,21bの軸心を含む仮想平面Vが水平方向に対して20°以上40°以下になる場合を説明したが、例えば、仮想平面Vが水平方向に沿う構成でも良いし、仮想平面Vの角度が水平方向に対して20°未満または40°を超える構成でも良い。
【0068】
上記実施形態では、固定ロール20aよりも可動ロール20bが上方側に配置され、カム軸66が可動ロール20bの上端よりも下方に位置する場合を説明したが、例えば、固定ロール20aが可動ロール20bよりも上方側に配置される構成でも良いし、カム軸66が可動ロール20bよりも上方側に配置される構成でも良い。
【0069】
上記実施形態では、カム軸66に対するカム67の取り付け角度を調整したり、カム67の形状を調整したりすることによってシュート14の角度を微調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ボールねじなどの公知の伸縮可能な部材から第1リンク63を構成し、第1リンク63の伸長または短縮によってシュート14の角度を微調整しても良い。
【0070】
上記実施形態では、カム軸66に対するカム67の固定方法の説明を省略したが、当該固定方法の一例としては、カム67に形成した貫通孔にカム軸66を挿入し、カム67の外面からカム軸66に向けて止めねじをねじ込む構成が例示される。但し、カム軸66にカム67を着脱自在に取り付けることができる構成であれば、他の固定方法でも良い。
【符号の説明】
【0071】
1 籾摺装置
14 シュート
20a 固定ロール
20b 可動ロール
30 送り出しローラ(回転体)
31 回転軸
32 羽根
51 変位用モータ
S 静電容量センサ(検出手段)
S1 変位手段
S2 判定手段
S3~S5 設定手段
S11~S13 処理量推定手段
S14 摩耗量推定手段
S15 調整手段