(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034743
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】防水シートの破損補修部の検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20230306BHJP
E21D 11/38 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G01M3/26 N
E21D11/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141119
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 高司
【テーマコード(参考)】
2D155
2G067
【Fターム(参考)】
2D155HA01
2D155LA02
2D155LA16
2G067AA48
2G067BB03
2G067BB22
2G067BB34
2G067CC04
2G067DD02
2G067EE11
(57)【要約】
【課題】防水シートの破損補修部の良否状態を的確に検査する。
【解決手段】防水シート2の破損補修部7に閉止治具10を被せることによって、破損補修部7と閉止治具10との間に閉止空間19を画成する。負圧試験部20によって、閉止空間19に大気圧より低圧の試験圧を導入して、閉止空間19の内圧情報を取得してデジタル変換する。処理端末40によって、前記デジタル変換された内圧情報に基づいて、破損補修部7の良否検査情報を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートの破損補修部の良否状態を検査する装置であって、
前記破損補修部に被せられ、前記破損補修部と協働して閉止空間を画成する閉止治具と、
前記閉止治具の接続ポートに接続され、前記閉止空間に大気圧より低圧の試験圧を導入して、前記閉止空間の内圧情報を取得してデジタル変換する負圧試験部と、
前記デジタル変換された内圧情報に基づいて前記破損補修部の良否検査情報を生成する処理端末と
を備えたことを特徴とする防水シートの破損補修部の検査装置。
【請求項2】
前記閉止治具が、ドーム状の閉止治具本体と、前記閉止治具本体の縁部に設けられて前記破損補修部のまわりの防水シートに当てられる環状のシール部材と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
防水シートの破損補修部の良否状態を検査する方法であって、
前記破損補修部に閉止治具を被せることによって、前記破損補修部と前記閉止治具との間に閉止空間を画成し、
前記閉止空間に大気圧より低圧の試験圧を導入して、前記閉止空間の内圧情報を取得してデジタル変換し、
前記デジタル変換された内圧情報に基づいて、処理端末によって前記破損補修部の良否検査情報を生成することを特徴とする防水シートの破損補修部の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートの破損補修部の良否状態を検査する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM(New Austrian Tunneling Method)トンネルなどの山岳トンネルにおいては、吹付コンクリート等の一次覆工と二次覆工との間にEVAシートなどの防水シートが張設されている(特許文献1など参照)。防水シートによって、地山からの湧水が二次覆工コンクリートひいてはトンネル内空間へ流れ込むのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防水シートに破損があった時は補修する必要がある。その補修が不良であると、そこから水漏れが起きる。補修部の一般的な検査方法としては、アナログゲージを用いたり、石鹸水を塗布して泡の発生の有無を確認したりする方法がある。しかし、何れも目視で読み取ったり観察したりするものであるために、人為的なミスが起き得、正確性が低い。
本発明は、かかる事情に鑑み、防水シートの破損補修部の良否状態を的確に検査することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明装置は、
防水シートの破損補修部の良否状態を検査する装置であって、
前記破損補修部に被せられ、前記破損補修部と協働して閉止空間を画成する閉止治具と、
前記閉止治具の接続ポートに接続され、前記閉止空間に大気圧より低圧の試験圧を導入して、前記閉止空間の内圧情報を取得してデジタル変換する負圧試験部と、
前記デジタル変換された内圧情報に基づいて前記破損補修部の良否検査情報を生成する処理端末と
を備えたことを特徴とする。
【0006】
前記閉止治具が、ドーム状の閉止治具本体と、前記閉止治具本体の縁部に設けられて前記破損補修部のまわりの防水シートに当てられる環状のシール部材と、を含むことが好ましい。
【0007】
本発明方法は、防水シートの破損補修部の良否状態を検査する方法であって、
前記破損補修部に閉止治具を被せることによって、前記破損補修部と前記閉止治具との間に閉止空間を画成し、
前記閉止空間に大気圧より低圧の試験圧を導入して、前記閉止空間の内圧情報を取得してデジタル変換し、
前記デジタル変換された内圧情報に基づいて、処理端末によって前記破損補修部の良否検査情報を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防水シートの破損補修部の良否状態を的確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る破損補修部検査装置によってトンネル用防水シートの破損補修部を検査する様子を示す解説図である。
【
図2】
図2は、前記破損補修部検査装置によって作成される帳票の一例を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る破損補修部検査装置によってトンネル用防水シートの破損補修部を検査する様子を示す解説図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図2)>
図1に示すように、本実施形態の検査対象は、NATMトンネル1の防水シート2である。防水シート2は、吹付コンクリート3のトンネル内側を向く内面(
図1において下面)に張設されている。防水シート2は、EVA樹脂等からなる不透水シート4と、不織布等からなる透水シート5との積層構造になっている。透水シート5が吹付コンクリート3に面している。不透水シート4は、図示しない二次覆工に面する。なお、二次覆工は、防水シート2のトンネル内側(
図1において下側)に構築される。不透水シート4によって、地山8からの湧水が二次覆工ひいてはトンネル内空間へ流れ込むのが防止される。湧水は、透水シート5の内部を通り道にして排出される。
【0011】
防水シート2の不透水シート4に破損部4dがあったときは、該破損部4dを補修する。
例えば、不透水シート4と同じ材質のパッド6を破損部4dに被せ、パッド6の周縁部を破損部4dのまわりの不透水シート4に溶着する。これによって、パッド6及び破損部4dのまわりの不透水シート4からなる破損補修部7が形成される。
【0012】
図1に示すように、補修後、破損補修部検査装置9によって、破損補修部7の良否状態が検査される。破損補修部検査装置9は、閉止治具10と、負圧試験部20と、処理端末40,50を備えている。
【0013】
閉止治具10は、閉止治具本体11と、シール部材12を含む。閉止治具本体11は、パッド6より大きな半球状(ドーム状)に形成されている。閉止治具本体11の材質は、樹脂でもよく、金属でもよい。閉止治具本体11は非透明であってもよい。閉止治具10は内部を透視できる必要はない。好ましくは、閉止治具本体11は、内外圧力差に耐え得る保形性を有している。閉止治具本体11に接続ポート13が設けられている。
【0014】
閉止治具本体11の縁部に環状のシール部材12が設けられている。シール部材12は、ゴムによって構成されている。好ましくは、シール部材12は、防水シート2の凸凹に対応して変形可能な厚みを有している。
【0015】
負圧試験部20は、試験圧回路21と、検査ユニット30を含む。試験圧回路21は、検査路25と、真空ポンプ26を有している。検査路25は、フレキシブルな耐圧チューブによって構成され、その先端プローブが接続ポート13に接続されている。検査路25の手元端部には、試験圧源である真空ポンプ26が接続されている。検査路25の中間部には、真空ポンプ26側から順次、圧力調整バルブ27、開閉バルブ28、及び検圧分岐部29が設けられている。圧力調整バルブ27の二次圧は、大気圧より低圧の所定の試験圧になるよう調整されている。
真空ポンプ26に代えて、コンプレッサー(空気圧縮機)に逆出力治具を取り付けて用いてもよい。
【0016】
検圧分岐部29に検査ユニット30が接続されている。検査ユニット30は、防水構造の防水筐体31と、リリース弁36(安全弁)と、圧力検知部32と、信号変換部33と、通信部34を有している。防水筐体31の内部にリリース弁36、圧力検知部32及び信号変換部33が収容されている。検圧分岐部29から分岐された検圧路35が、防水筐体31の内部において、リリース弁36を介して、アナログ式の圧力検知部32と接続されている。リリース弁36によって、圧力検知部32に過度な圧力が加わらないように保護できる。圧力検知部32は、検圧路35の圧力に応じた大きさのアナログ電気信号(電圧又は電流)からなる圧力検知信号を出力する。圧力検知部32にA/D変換器からなる信号変換部33が接続されている。信号変換部33は、圧力検知部32からのアナログの圧力検知信号をデジタル変換する。信号変換部33に通信部34が接続されている。
【0017】
処理端末は、例えばスマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の携帯可能な携帯PC40と、デスクトップパソコン等の管理PC50を含む。各処理端末40,50は、CPU、通信部と、メモリー(記憶部)、ディスプレイ(表示部)を含む。処理端末40,50のメモリーには、破損補修部7の良否検査を実行して検査結果を所定フォーマットで表示するためのプログラム及びデータが格納されている。携帯PC40と負圧試験部20とは、互いの通信部を介してデータ通信可能である。負圧試験部20によって取得した閉止空間19の内圧情報が、携帯PC40を経由で、又は直接に管理PC50へ転送されて、管理PCのメモリーに蓄積されるとともに、その内圧情報に基づいて破損補修部19の良否検査情報を生成する。
【0018】
防水シート2の破損補修部7は、次のようにして良否判定される。
図1に示すように、破損補修部7に閉止治具10を被せ、シール部材12を破損補修部7のまわりの防水シート2に宛がう。これによって、閉止治具10の内面と破損補修部7との間に閉止空間19が画成される。
接続ポート13には検査路25の先端プローブを接続する。
【0019】
続いて、真空ポンプ26を駆動して、開閉バルブ28を開く。これによって、検査路25ひいては閉止空間19の内圧が、圧力調整バルブ13によって設定された大気圧より低圧(負圧)の試験圧になる。
閉止空間19の内圧が負圧になることによって、環状のシール部材12が全周にわたって防水シート2の表面に密着される。防水シート2が凸凹になっていても、ゴム製のシール部材12が前記凸凹に倣うように弾性的に変形して防水シート2の表面に密着可能である。
その後、開閉バルブ28を閉じる。
【0020】
破損補修部7の補修状態が良好であれば、外気が破損補修部7から負圧の閉止空間19内へ侵入することが無く、閉止空間19の内圧は前記試験圧に保持される。
破損補修部7の補修状態が不良であれば、外気が破損補修部7から負圧の閉止空間19内へ侵入して、閉止空間19の内圧が前記試験圧(負圧)よりも大気圧に近づく。
閉止空間19の内圧は、開閉バルブ28から接続ポート13までの検査路25及び検圧路35の内圧と等しい。
【0021】
該検圧路35の内圧、ひいては閉止空間19の内圧が、圧力検知部32によって検知される。圧力検知部32から前記内圧に応じた大きさの電圧値などの圧力検知信号が連続的に出力される。前記圧力検知信号は、信号変換部33によってデジタル変換され、かつ通信部34から好ましくは1秒以下~数秒の間隔で送信される。
圧力検知部32、信号変換部33及び通信部34は、防水筐体31に収容されているから、トンネル内の水に濡れて故障するのを防止できる。
【0022】
前記送信された圧力検知信号は、携帯PC40によって受信される。携帯PC40のCPUは、プログラムの働きによって、前記受信した圧力検知信号をメモリーの検査情報記憶領域37に記憶する。これによって、閉止空間19の内圧の経時変化データ(良否判定情報)が蓄積される。閉止空間19の内圧の検知時間(試験時間)は、例えば数十秒~数分間程度である。
【0023】
携帯PC40は、前記経時変化データによって、破損補修部7の良否判定を行う。すなわち、検査期間中、閉止空間19の検知負圧度が閾値を下回ることが無ければ「良好」と判定し、閾値を下回ったら「不良」と判定する。要するに、携帯PC40は、取得した閉止空間19の内圧情報に基づいて破損補修部19の良否検査情報を生成する。
良否検査情報は、携帯PC40のメモリーに記憶されるとともにディスプレイに表示される。これによって、検査作業者は、破損補修部7の良否を知ることができる。すなわち、補修が良好であれば、閉止空間19の内圧(負圧)は導入試験圧にほぼ維持され、負圧度が閾値を下回ることはない。補修不良があればそこから空気が閉止空間19に侵入して閉止空間19内の負圧度が下がり(内圧が大気圧に近づき)、閾値を下回る。「不良」と判定された場合、破損部4dの補修をやり直す。これによって、破損部4dひいては破損補修部7からの水漏れを確実に防止できる。
泡確認等のために閉止治具10の内部が見えなくてもよいから、閉止治具本体11が透明である必要が無い。したがって、閉止治具本体11の材質選択の自由度が高まる。
【0024】
破損補修部検査装置9によれば、閉止空間19の内圧値を示すデジタル信号が携帯PC30に入力され、該携帯PC40において破損補修部7の良否判定がなされる。したがって、人為的な読み取りミスや記録ミスが起きる心配が無く、検査の正確性を担保できる。また、アナログゲージを人の目で読み取るよりも、取得データ数を大幅に増やすことができ、正確性を高めることができる。
【0025】
さらに、携帯PC40は、帳票表示指令に応じて、メモリーの良否検査情報から破損補修部検査レポート60(
図2)を作成し、ディスプレイに表示する。これによって、検査作業者は、破損補修部検査レポート60中のグラフ61、表62、判定結果63等から閉止空間19の内圧の経時変化ひいては補修の良否を確認することができる。
【0026】
前記良否検査情報は、携帯PC40から管理PC50に自動転送されて、管理PC50にも記憶される。管理PC50は、作業管理者等による帳票表示指令に応じて、前記と同様の破損補修部検査レポート60(
図2)を作成し、ディスプレイに表示する。これによって、作業管理者は、破損補修部検査レポート60から閉止空間19の内圧の経時変化ひいては補修の良否を確認することができる。
【0027】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図3)>
図3に示すように、第2実施形態においては、閉止治具14の周壁14aが、軸線に沿って交互に並んだ大径部15と小径部16を有し、ベローズ(蛇腹)状に形成されている。閉止治具14における軸方向の先端(
図3において上端)の大径部15Aは、薄肉になっている。該先端の大径部15Aが防水シート2に密着される。中間大径部15Cは、先端の大径部15A及び小径部16よりも厚肉の環帯状に形成されている。閉止治具14の天板部17は、周壁部16より厚肉の板状に形成されている。天板部17の中央部に接続ポート13が設けられている。閉止治具14は、ゴム、エラストマーなどの弾性材料によって構成されている。
【0028】
第2実施形態によれば、防水シート2の表面が平坦ではなくても、閉止治具14の蛇腹状の周壁14aの周方向の各位置が、防水シート2の表面の形状に倣うように軸方向(
図3において上下)へ拡縮変形可能である。このため、閉止治具14を全周にわたって防水シート2に確実に密着させて、内部の閉止空間19を確実に封止することができる。先端大径部15Aが薄肉であることによって、該先端大径部15Aを防水シート2に一層確実に密着させることができる。この結果、破損補修部7の良否判定試験の正確性を高めることができる。
中間大径部15Cが厚肉の環帯状であることによって、負圧試験圧の導入により閉止治具14が軸線方向へ圧縮されたときでも閉止空間19の容積を確保できる。
天板部17が厚肉板状であることによって、負圧試験圧の導入時にも接続ポート13を安定的に保持できる。
【0029】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、防水シートは、トンネル用に限らず、ゴルフ場、産業廃棄物処理場などに敷設されるものであってもよい。
負圧試験部20の回路構成は適宜改変できる。
第2実施形態の閉止治具14(閉止治具本体)における先端の大径部15Aの周縁部には、第1実施形態と同様のシール部材12(
図1)が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えばトンネル等の防水シートの破損補修部の良否検査に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 NATMトンネル
2 防水シート
3 吹付コンクリート
4 不透水シート
4d 破損部
5 透水シート
6 パッド
7 破損補修部
8 地山
9 破損補修部検査装置
10 閉止治具
11 閉止治具本体
12 シール部材
13 接続ポート
14 閉止治具
14a 周壁
15 大径部
15A 先端大径部
15C 中間大径部
16 小径部
17 天板部
19 閉止空間
20 負圧試験部
21 試験圧回路
25 検査路
26 真空ポンプ
27 圧力調整バルブ
28 開閉バルブ
29 検圧分岐部
30 検査ユニット
31 防水筐体
32 圧力検知部
33 信号変換部
34 通信部
35 検圧路
36 リリース弁
40 処理端末
50 管理端末
60 破損補修部検査レポート
61 グラフ
62 表
63 判定結果表示