(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034789
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20230306BHJP
F25D 17/08 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25D17/08 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141198
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】吉池 真史
(72)【発明者】
【氏名】青木 均史
(72)【発明者】
【氏名】大谷 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岡部 博行
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045HA01
3L045LA05
3L045LA12
3L045MA02
3L045MA05
3L045MA12
3L045MA15
3L045NA07
3L045NA15
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L345AA02
3L345AA16
3L345AA18
3L345AA24
3L345BB01
3L345BB02
3L345CC01
3L345DD08
3L345DD18
3L345DD21
3L345DD33
3L345EE04
3L345EE05
3L345EE13
3L345EE33
3L345EE45
3L345EE53
3L345FF12
3L345FF45
3L345KK01
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
3L345KK05
(57)【要約】
【課題】急速冷凍が実行される冷凍室における被冷凍物の有無を正確に判定できる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】演算制御部27は、開閉検知部25が扉の開閉動作を検知したら、小冷凍室温度計測部26からの出力に基づいて、開閉動作が行われた際に、被冷凍物16の温度である第1温度Tp1を計測し、開閉動作から第1時間Tm1が経過した際に、被冷凍物16の温度である第2温度Tp2を計測し、開閉動作から第2時間Tm2が経過した際に、被冷凍物16の温度である第3温度Tp3を計測する。更に、演算制御部27は、第2温度Tp2と第1温度Tp1との差が第1閾値TH1よりも大きく、且つ、第3温度Tp3と第2温度Tp2との差が第2閾値TH2よりも大きければ、小冷凍室131の内部において被冷凍物16を冷却する冷却能力を高める。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷凍物が貯蔵される小冷凍室が形成された冷凍室と、
前記冷凍室に送風される空気が冷却器により冷却される冷却室と、
前記空気を前記冷却室から前記冷凍室に送風する送風ファンと、
前記冷凍室を閉鎖する扉と、
前記扉の開閉を検知する開閉検知部と、
前記小冷凍室に配置された小冷凍室温度計測部と、
演算制御部と、を具備し、
前記演算制御部は、
前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記小冷凍室温度計測部からの出力に基づいて、前記開閉動作が行われた際に第1温度を計測し、前記開閉動作から第1時間が経過した際に第2温度を計測し、前記第2温度を計測してから第2時間が経過した際に第3温度を計測し、
前記第2温度と前記第1温度との差が第1閾値よりも大きく、且つ、前記第3温度と前記第2温度との差が第2閾値よりも大きければ、前記小冷凍室の内部において前記被冷凍物を冷却する冷却能力を高めることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
冷蔵室と、前記冷却室から前記冷蔵室に送風される冷蔵室送風路と、前記冷蔵室送風路に介装される冷蔵室ダンパと、を更に具備し、
前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記冷蔵室ダンパを閉状態にし、前記冷凍室に前記冷却室からの前記空気を循環させることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
外部の温度を計測する外気温度計測部を更に具備し、
前記演算制御部は、前記外気温度計測部で計測した前記外部の温度に基づいて、前記第1閾値または前記第2閾値を変更することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
冷蔵室と、
前記冷蔵室および前記冷凍室を、それぞれまたは同時に冷やすことが可能な冷却回路と、を更に具備し、
前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記冷蔵室の冷却を停止し、前記冷凍室のみを冷却する前記冷却回路に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記冷却器に供給される冷媒を圧縮する圧縮機を更に具備し、
前記演算制御部は、
前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知した際に、前記圧縮機が停止状態であれば、前記圧縮機を起動することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関し、特に、被冷凍物を素早く冷凍する機能を有する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されたような、急速冷凍機能を有する冷蔵庫が知られている。急速冷凍機能は、クイック冷凍とも称されることがある。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載された冷蔵庫では、冷凍室を仕切る縦仕切部の下面よりも所定距離だけ上方に凹んだ位置に、冷凍室の温度を測定するサーミスタが設けられている。また、このサーミスタからの出力に基づいて、急速冷凍機能を行っている。このようにすることで、冷凍室と冷蔵室等との間の断熱性能の低下を抑制しつつ、食品が収納されたら、自動的に急速冷凍を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された冷蔵庫では、急速冷凍機能を実行するべく、被冷凍物検知を簡便且つ確実に行う観点から改善の余地があった。
【0006】
具体的には、特許文献1に記載された冷蔵庫では、被冷凍物が冷凍室に収納されてから、サーミスタにより最低でも三回の温度検知を行い、被冷凍物の有無を判定している。よって、被冷凍物の有無を判定するために長時間を要する課題があった。
【0007】
更に、特許文献1に記載された冷蔵庫では、サーミスタによる検知を行う際に、冷蔵室ダンパを閉鎖していない。よって、サーミスタによる検知を行う際に、冷凍室の温度が変化しやすく、被冷凍物の有無を誤判定してしまう恐れがある。例えば、クイック冷凍コーナーに対する食品の出し入れは行わず、断熱扉の開閉のみを行った場合でも、誤作動によりクイック冷凍動作が実行されてしまう恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被冷凍物の有無を正確に判定してクイック冷凍機能を実行できる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷蔵庫は、被冷凍物が貯蔵される小冷凍室が形成された冷凍室と、前記冷凍室に送風される空気が冷却器により冷却される冷却室と、前記空気を前記冷却室から前記冷凍室に送風する送風ファンと、前記冷凍室を閉鎖する扉と、前記扉の開閉を検知する開閉検知部と、前記小冷凍室に配置された小冷凍室温度計測部と、演算制御部と、を具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記小冷凍室温度計測部からの出力に基づいて、前記開閉動作が行われた際に第1温度を計測し、前記開閉動作から第1時間が経過した際に第2温度を計測し、前記第2温度を計測してから第2時間が経過した際に第3温度を計測し、前記第2温度と前記第1温度との差が第1閾値よりも大きく、且つ、前記第3温度と前記第2温度との差が第2閾値よりも大きければ、前記小冷凍室の内部において前記被冷凍物を冷却する冷却能力を高めることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の冷蔵庫では、冷蔵室と、前記冷却室から前記冷蔵室に送風される冷蔵室送風路と、前記冷蔵室送風路に介装される冷蔵室ダンパと、を更に具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記冷蔵室ダンパを閉状態にし、前記冷凍室に前記冷却室からの前記空気を循環させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の冷蔵庫では、外部の温度を計測する外気温度計測部を更に具備し、前記演算制御部は、前記外気温度計測部で計測した前記外部の温度に基づいて、前記第1閾値または前記第2閾値を変更することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の冷蔵庫では、冷蔵室と、前記冷蔵室および前記冷凍室を、それぞれまたは同時に冷やすことが可能な冷却回路と、を更に具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記冷蔵室の冷却を停止し、前記冷凍室のみを冷却する前記冷却回路に切り替えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の冷蔵庫では、前記冷却器に供給される冷媒を圧縮する圧縮機を更に具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知した際に、前記圧縮機が停止状態であれば、前記圧縮機を起動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷蔵庫は、被冷凍物が貯蔵される小冷凍室が形成された冷凍室と、前記冷凍室に送風される空気が冷却器により冷却される冷却室と、前記空気を前記冷却室から前記冷凍室に送風する送風ファンと、前記冷凍室を閉鎖する扉と、前記扉の開閉を検知する開閉検知部と、前記小冷凍室に配置された小冷凍室温度計測部と、演算制御部と、を具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記小冷凍室温度計測部からの出力に基づいて、前記開閉動作が行われた際に第1温度を計測し、前記開閉動作から第1時間が経過した際に第2温度を計測し、前記第2温度を計測してから第2時間が経過した際に第3温度を計測し、前記第2温度と前記第1温度との差が第1閾値よりも大きく、且つ、前記第3温度と前記第2温度との差が第2閾値よりも大きければ、前記小冷凍室の内部において前記被冷凍物を冷却する冷却能力を高めることを特徴とする。従って、本発明の冷蔵庫によれば、被冷凍物の有無を正確に判定してクイック冷凍機能を実行できる冷蔵庫を提供することが出来る。具体的には、第1温度、第2温度および第3温度の温度差が所定の条件を満たす場合に、小冷凍室の冷却能力を高めることで、小冷凍室に被冷凍物が貯蔵されたことを良好に検知でき、被冷凍物を効果的に凍結することができる。
【0015】
また、本発明の冷蔵庫では、冷蔵室と、前記冷却室から前記冷蔵室に送風される冷蔵室送風路と、前記冷蔵室送風路に介装される冷蔵室ダンパと、を更に具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記冷蔵室ダンパを閉状態にし、前記冷凍室に前記冷却室からの前記空気を循環させることを特徴とする。従って、本発明の冷蔵庫によれば、扉の開閉動作が行われた後に、冷凍パターンを統一化することで、小冷凍室温度計測部からの出力に基づいて、冷凍室の内部に被冷凍物が存在するか否かを正確に判断し、冷凍室の内部に被冷凍物が存在する場合のみクイック冷凍機能を実行することができる。
【0016】
また、本発明の冷蔵庫では、外部の温度を計測する外気温度計測部を更に具備し、前記演算制御部は、前記外気温度計測部で計測した前記外部の温度に基づいて、前記第1閾値または前記第2閾値を変更することを特徴とする。従って、本発明の冷蔵庫によれば、外部温度に基づいて、第1閾値および第2閾値を変更することで、外部温度の変化によりコンプレッサの回転数が変更した場合でも、同一のタイミングで第1閾値および第2閾値を用いて、冷凍室に被冷凍物が貯蔵されたことを良好に検知できる。
【0017】
また、本発明の冷蔵庫では、冷蔵室と、前記冷蔵室および前記冷凍室を、それぞれまたは同時に冷やすことが可能な冷却回路と、を更に具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知したら、前記冷蔵室の冷却を停止し、前記冷凍室のみを冷却する前記冷却回路に切り替えることを特徴とする。従って、本発明によれば、冷蔵室と冷凍室とを冷却回路により個別に冷却する冷蔵庫であっても、小冷凍室に被冷凍物が貯蔵されたことを良好に検知でき、被冷凍物を効果的に凍結することができる。
【0018】
また、本発明の冷蔵庫では、前記冷却器に供給される冷媒を圧縮する圧縮機を更に具備し、前記演算制御部は、前記開閉検知部が前記扉の開閉動作を検知した際に、前記圧縮機が停止状態であれば、前記圧縮機を起動することを特徴とする。従って、本発明の冷蔵庫によれば、扉開閉時に圧縮機を強制的に起動することで、扉を閉じた後の冷却パターンを統一化でき、冷凍室における被冷凍物の有無を更に正確に検知出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の、断熱扉を開けた状態の外観を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の内部構成を示す側方断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の接続構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の動作を示すフローチャートであり、扉が開閉された際に圧縮機がONであった場合を示している。
【
図6】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の動作を示すグラフであり、被冷凍物が収納された後の小冷凍室の温度変化を示している。
【
図7】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の動作を示す表であり、小冷凍室に収納された被冷凍物を検知する際に用いられる閾値の変化を示している。
【
図8】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の動作を示すフローチャートであり、扉が開閉された際に圧縮機がOFFであった場合を示している。
【
図9】本発明の実施形態に係る冷蔵庫において、小冷凍室に収納された被冷凍物を検知する性能を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫10を図面に基づき詳細に説明する。本実施形態の説明では、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では、上下前後左右の各方向を用いて説明するが、左右とは冷蔵庫10を前方から見た場合の左右である。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫10を、前方左側から見た斜視図である。冷蔵庫10は、断熱箱体11と、断熱箱体11の内部に形成された貯蔵室とを有している。冷蔵庫10は、後述するように、クイック冷凍機能を備えている。
【0022】
冷蔵庫10は、貯蔵室として、上方側から、冷蔵室12および冷凍室13を有している。冷蔵室12の前方開口は、回転式の断熱扉18および断熱扉19で閉鎖されている。冷凍室13の前面開口は、断熱扉20および断熱扉21で閉鎖されている。断熱扉18、断熱扉19、断熱扉20および断熱扉21は、回転式の扉であり、左右方向外側端部を回転中心として回転することができる。
【0023】
図2は、断熱扉18、断熱扉19、断熱扉20および断熱扉21が開放状態となっている冷蔵庫10を示す正面図である。
【0024】
前述したように、断熱箱体11の内部には貯蔵室として、冷蔵室12および冷凍室13が形成されている。
【0025】
冷蔵室12は、収納された被冷蔵物を冷蔵温度帯域に冷却する貯蔵室であり、その庫内温度は、例えば、2℃以上5度以下の温度帯域に冷却されている。また、冷蔵室12を閉鎖する断熱扉18および断熱扉19の内側面には、収納ポケット17が配設されている。
【0026】
冷凍室13は、収納された被冷凍物を冷凍温度帯域に冷却する貯蔵室であり、その庫内温度は、例えば、-20℃以上-18度以下の温度帯域に冷却されている。冷凍室13には、複数の収納容器31が収納されている。ここでは、行列状に6個の収納容器31が配置されている。個々の収納容器31は、上面が開口する略箱状の樹脂から成る容器であり、前後方向に沿って引出自在とされている。
【0027】
冷凍室13の内部において、右方上端に配置された収納容器31の上端部近傍に、小冷凍室131が形成されている。小冷凍室131は、肉や魚などの生鮮食品等を早期に冷凍させるクイック冷凍室である。小冷凍室131の詳細は、
図3を参照して後述する。小冷凍室131は、クイック冷凍コーナーとも称される。
【0028】
図3は、冷蔵庫10の側方断面図である。
図3では、冷蔵庫10の内部における冷気の流れを点線の矢印で示している。
【0029】
断熱箱体11は、所定形状に曲折加工された鋼板からなる外箱111と、外箱111と離間した内側に配置された合成樹脂板から成る内箱112と、外箱111と内箱112との間に充填された断熱材113とから構成されている。
【0030】
断熱箱体11の内部の貯蔵室は、上記したように、上方から冷蔵室12および冷凍室13に区画されている。冷蔵室12と冷凍室13とは断熱壁36で区画されている。断熱壁36は、断熱箱体11と同様の断熱構造を有している。
【0031】
冷蔵室12の内部は、複数の収納棚15により上下方向に区画されている。
【0032】
冷凍室13の奥側には、冷却室115が形成されている。冷却室115の内部には、冷却器である蒸発器116が配設されている。冷蔵庫10の下端側後方には機械室14が区画形成され、機械室14には圧縮機22が配置されている。蒸発器116および圧縮機22は、ここでは図示しない凝縮器および膨張手段と共に、蒸気圧縮冷凍サイクルを形成している。蒸気圧縮冷凍サイクルを運転することで、蒸発器116により冷却室115の内部の冷気を冷却し、この冷気を各貯蔵室に送風することで、各貯蔵室の庫内温度が所定の冷却温度帯域とされる。
【0033】
冷却室115の内部において、蒸発器116の上方側には送風ファン24が配置されている。送風ファン24は、軸流送風機または遠心送風機であり、蒸発器116が冷却した蒸発器116の内部の冷気を、冷蔵室12および冷凍室13に向けて送風する。
【0034】
冷却室115の内部であって、蒸発器116の下方には、除霜ヒータ117が配置される。蒸気圧縮冷凍サイクルの運転に伴い、蒸発器116の表面に厚い着霜が生じる。このようになると、後述する演算制御部27は、圧縮機22を停止して冷却室115を閉鎖し、除霜ヒータ117を通電して加熱することで、霜を溶融除去する除霜運転を行う。
【0035】
冷却室115の前側には主送風路114が形成されている。また、主送風路114から上方に向かって冷蔵室送風路28が形成されている。冷蔵室送風路28には、冷蔵室ダンパ29が取り付けてある。冷蔵室送風路28には、冷気を冷蔵室12に吹き出すための開口である吹出口23が形成されている。
【0036】
蒸発器116により冷却された冷却室115の内部の空気は、送風ファン24により主送風路114に向かって送風された後に、冷凍室13に送風され、冷凍室13を所定の冷凍温度帯域に冷却する。冷凍室13を冷却した空気は、ここでは図示しない帰還風路を経由して冷却室115に帰還する。また、送風ファン24が送風した空気の一部は、冷蔵室ダンパ29、冷蔵室送風路28および吹出口23を経由して冷蔵室12に送風され、冷蔵室12を所定の冷蔵温度帯域に冷却する。冷蔵室12を冷却した空気は、ここでは図示しない帰還風路を経由して冷却室115に帰還する。
【0037】
小冷凍室131は、冷凍室13の最上部に形成されている。小冷凍室131は、小収納容器32により囲まれる部位である。小収納容器32は、上部が開口する樹脂製容器であり、前後方向に引き出し自在に配置されている。また、小収納容器32は、最上段に配置された収納容器31の内部に配置される。即ち、小冷凍室131は、下面および側面が小収納容器32により構成され、上面が断熱壁36の下面から構成される空間である。
【0038】
小冷凍室131には、例えば、肉や魚である被冷凍物16が収納される。小冷凍室131においてクイック冷凍を行うことで、被冷凍物16を早期に凍結させ、これより被冷凍物16の鮮度を保持することができる。小冷凍室131に対して食品等の出し入れを行う際には、断熱扉21を回動させることで開き、最上段の収納容器31を前方に引出し、更に、小収納容器32を前方に引き出す。
【0039】
また、小冷凍室131には、送風ファン24から送風された空気が、吹出口33から直に送り込まれる。また、小収納容器32に面する、断熱壁36の下面には、小冷凍室温度計測部26が配設される。小冷凍室温度計測部26は、例えばサーミスタから成り、断熱壁36の下面から下方に向かって突出しないように配置されている。また、ここでは図示しないが、左右方向において、最上段の吹出口33と小冷凍室温度計測部26は、ずらされている。このようにすることで、吹出口33から吹き出された低温の空気が、小冷凍室温度計測部26に直に吹き付けられることがなく、小冷凍室温度計測部26により小冷凍室131の温度を正確に検知できる。
【0040】
冷蔵庫10は、クイック冷凍機能を有する。クイック冷凍機能とは、ユーザが小冷凍室131に被冷凍物16を収納した際に、被冷凍物16を急速に冷凍させる機能である。クイック冷凍機能は、ユーザがコントロールパネルを操作することによって実行することができる。更に、クイック冷凍機能は、ユーザが特段の指示を行わずとも、小冷凍室温度計測部26の検知温度に基づいて、演算制御部27が実行する自動クイック冷凍機能として実行することができる。なお、クイック冷凍機能は、急速冷凍機能とも称されることもある。
【0041】
図4は、冷蔵庫10の接続構成を示すブロック図である。
【0042】
演算制御部27は、CPU、RAM、ROM等を有し、冷蔵庫10の冷蔵機能を実現するべく、入力された情報に基づいて所定の演算処理を実行し、各構成機器を制御する。演算制御部27の入力側端子には、開閉検知部25、小冷凍室温度計測部26、外気温度計測部30およびタイマ35等が接続されている。また、演算制御部27の出力側端子には、除霜ヒータ117、圧縮機22、送風ファン24および冷蔵室ダンパ29等が接続される。
【0043】
開閉検知部25は、
図2に示した小冷凍室131を閉鎖する断熱扉21の開閉を検知する。開閉検知部25は、ユーザが断熱扉21を開閉したら、その旨を示す情報を演算制御部27に入力する。
【0044】
小冷凍室温度計測部26は、例えば、サーミスタであり、
図3に示した小冷凍室131の内部の温度を示す情報を、演算制御部27に入力する。
【0045】
外気温度計測部30は、断熱箱体11の外面近傍に配置され、冷蔵庫10の外部雰囲気の温度を示す情報を、演算制御部27に入力する。
【0046】
タイマ35は、時刻または時間を示す情報を、演算制御部27に入力する。
【0047】
除霜ヒータ117は、演算制御部27から出力される指示に基づいて、除霜のために発熱する。
【0048】
圧縮機22は、演算制御部27から出力される指示に基づいて、蒸気圧縮型冷凍サイクルで用いられる冷媒を圧縮する。
【0049】
送風ファン24は、演算制御部27から出力される指示に基づいて、冷却室115の内部で冷却された空気を、冷蔵室12および冷凍室13に空気を送るために回転して送風する。
【0050】
冷蔵室ダンパ29は、演算制御部27から出力される指示に基づいて、
図3に示す冷蔵室送風路28を開閉する。または、冷蔵室送風路28を流通する空気の風量を調節する。
【0051】
図5ないし
図8を参照して、前述した構成を有する冷蔵庫10において、断熱扉21が開閉された際におけるクイック冷凍機能の動作を説明する。
図5は、被冷凍物16が収納された際に圧縮機22がON動作であった場合の動作を示すフローチャートである。
図6は、断熱扉21の開閉を行った後の、小冷凍室温度計測部26の検知温度および圧縮機22の回転数の経時変化を示すグラフである。
図7は、第1閾値TH1および第2閾値TH2の変化を示す表である。
図8は、被冷凍物16が収納された際に圧縮機22がOFF動作であった場合を示すフローチャートである。
【0052】
図5は、冷蔵庫10の動作を示すフローチャートであり、断熱扉21が開閉された際に圧縮機22がON動作であった場合を示している。
図6は、断熱扉21が開閉された際における小冷凍室温度計測部26の検知温度、および、圧縮機22の出力値の経時変化を示している。
【0053】
概略的には、演算制御部27は、断熱扉21が開閉された後に、判定1および判定2を行うことにより、ユーザがコントロールパネルを操作せずとも、クイック冷凍機能を自動的に実行する。具体的には、判定1では、演算制御部27は、小冷凍室131に被冷凍物16が収納されたか否かを主に判断する。判定2では、演算制御部27は、クイック冷凍機能を実行するか否かを判断する。そして、判定1により被冷凍物16が小冷凍室131に収納されたと判断され、且つ、判定2により被冷凍物16がクイック冷凍機能を必要とすると判断されれば、演算制御部27はクイック冷凍機能を実行する。
【0054】
以下に、クイック冷凍機能を実行する各ステップを説明する。
【0055】
ステップS10では、演算制御部27は、冷蔵庫10を運転するための通常冷却を実行する。具体的には、演算制御部27は、冷蔵室12の庫内温度を3℃以上5度以下の冷蔵温度帯域とし、冷凍室13の庫内温度を-20℃以上-18℃以下の冷凍温度帯域とする。小冷凍室131の庫内温度も、冷凍室13と同様の冷凍温度帯域とされる。
【0056】
演算制御部27は、冷凍室13を、ON点およびOFF点を基準とした冷却サイクルにより冷却する。具体的には、演算制御部27は、温度センサで計測した冷凍室13の庫内温度が、ON点以上となった場合は、圧縮機22および送風ファン24を運転し、冷却室115で冷却された空気を冷凍室13に送風する。これにより、冷凍室13の庫内温度は低下する。その後、温度センサで計測した冷凍室13の庫内温度が、OFF点以下となった場合は、圧縮機22および送風ファン24を停止し、冷凍室13に送風しない。一例として、ON点は-18℃程度であり、OFF点は-20℃程度である。
【0057】
また、演算制御部27は、冷蔵室12についても、同様に、ON点およびOFF点を基準とした冷却サイクルにより冷却する。具体的には、演算制御部27は、温度センサで計測した冷蔵室12の庫内温度が、ON点以上となった場合は、圧縮機22および送風ファン24を運転し、冷蔵室ダンパ29を開状態とし、冷却室115で冷却された空気を冷蔵室12に送風する。これにより、冷蔵室12の庫内温度は低下する。その後、温度センサで計測した冷蔵室12の庫内温度が、OFF点以下となった場合は、圧縮機22および送風ファン24を停止し、冷蔵室ダンパ29を閉状態とし、冷蔵室12に送風しない。一例として、ON点は5℃程度であり、OFF点は2℃程度である。
【0058】
ステップS11では、演算制御部27は、小冷凍室131を閉鎖する断熱扉21が開いたか否かを判断する。具体的には、演算制御部27は、開閉検知部25の入力に基づいて、
図2を参照して、小冷凍室131を閉鎖する断熱扉21が開いたか否かを判断する。
【0059】
ステップS11でYESの場合、演算制御部27は、ステップS12に移行する。
【0060】
ステップS11でNOの場合、演算制御部27は、ステップS10に戻り、冷凍室13の通常冷却を続行する。
【0061】
ステップS12では、演算制御部27は、開閉検知部25からの入力に基づいて、断熱扉21が閉じられたか否かを判断する。
【0062】
ステップS12でYESの場合、演算制御部27は、ステップS13に移行する。
【0063】
ステップS12でNOの場合、演算制御部27は、ステップS12に留まったまま、断熱扉21が閉鎖されるのを待つ。
【0064】
ステップS13では、演算制御部27は、小冷凍室131の近傍やコントロールパネルに配置されたLED等から成る表示装置を点灯させる。演算制御部27は、例えば、当該表示装置をゆっくりと2回ほど点灯させる。このようにすることで、ユーザは、小冷凍室131に被冷凍物16を挿入したことで、クイック冷凍機能が実行される可能性があることを認知することができる。
【0065】
ステップS14では、演算制御部27は、第1温度Tp1を取得し、且つOFF点を下げる。具体的には、演算制御部27は、断熱扉21が閉鎖された時点の、小冷凍室温度計測部26が検知した温度である第1温度Tp1を取得する。また、冷凍室13のOFF点を、例えば3℃下げる。このようにすることで、断熱材113の内部において被冷凍物16の有無を判断する間、圧縮機22および送風ファン24を運転させ、蒸発器116で冷却された空気を、断熱材113に循環させることができる。即ち、被冷凍物16の有無を判断するに際して、小冷凍室131を冷却するための冷却条件を統一し、被冷凍物16の有無等を正確に検知できる。
【0066】
ステップS15では、演算制御部27は、冷蔵室ダンパ29を閉じ、圧縮機22と送風ファン24の運転を継続する。具体的には、演算制御部27は、冷蔵室ダンパ29が開状態であったら、冷蔵室ダンパ29を直ちに閉状態とする。また、演算制御部27は、冷蔵室ダンパ29が閉状態であれば、閉状態を維持する。更に、演算制御部27は、圧縮機22と送風ファン24を継続して運転する。
【0067】
このようにすることで、冷却室115で冷却された空気を、冷蔵室12には送風せず、吹出口33から小冷凍室131を含む冷凍室13のみに送風する。よって、冷却室115から小冷凍室131に循環される空気の流量を統一し、小冷凍室131の内部において被冷凍物16が冷却される条件も統一できる。更に、冷蔵室ダンパ29を閉じることで、冷蔵室12からの暖かい空気が小冷凍室131の近傍に流れ込むことを抑制し、これにより被冷凍物16の有無を誤判定することを抑止出来る。
【0068】
ステップS16では、演算制御部27は、タイマ35からの入力に基づいて、断熱扉21が閉じられてから第1時間Tm1が経過したか否かを判断する。ここで、第1時間Tm1は、例えば、2分間である。第1時間Tm1をこのように設定することで、冷媒の挙動が安定してから、小冷凍室131の庫内温度を計測でき、小冷凍室131に被冷凍物16が収納されたか否かを効果的に判断出来る。
【0069】
ステップS16でYESの場合、即ち、第1時間Tm1が経過したら、演算制御部27は、ステップS17に移行する。
【0070】
ステップS16でNOの場合、即ち、第1時間Tm1が経過していなければ、演算制御部27は、ステップS16に留まり、第1時間Tm1が経過するのを待つ。
【0071】
ステップS17では、演算制御部27は、第1時間Tm1経過後の温度差を取得する。具体的には、演算制御部27は、断熱扉21が閉鎖されてから第1時間Tm1が経過した際に、小冷凍室温度計測部26が検知した温度である第2温度Tp2を取得する。更に、演算制御部27は、第2温度Tp2から第1温度Tp1を減算した温度差を算出する。
【0072】
ステップS18では、演算制御部27は、第1時間Tm1経過後の温度差と第1閾値TH1とを比較する。具体的には、第2温度Tp2から第1温度Tp1を減算した値が、第1閾値TH1以上であるか否かを確認する。即ち、演算制御部27は、第1時間Tm1経過後に、被冷凍物16が、第1閾値TH1より冷えていないか否かを確認する。
【0073】
ここで、一例を挙げると、第1温度Tp1は-17.4℃であり、第2温度Tp2は-16.1℃であり、第1閾値TH1は0℃である。この場合、第2温度Tp2から第1温度Tp1を減算した減算値は+1.3℃となる。よって、減算値が、第1閾値TH1である0℃よりも大きくなり、演算制御部27は、ステップS18でYESと判断する。
【0074】
ステップS18でYESの場合、即ち、第2温度Tp2から第1温度Tp1を減算した値が、第1閾値TH1以上であれば、演算制御部27は、ステップS19に移行する。この理由は、小冷凍室131が第1閾値TH1よりも冷却されておらず、被冷凍物16が小冷凍室131に収納されたと判断出来るからである。
【0075】
ステップS18でNOの場合、即ち、第2温度Tp2から第1温度Tp1を減算した値が、第1閾値TH1未満であれば、演算制御部27は、ステップS24に移行し、OFF点を通常に戻し、ステップS10で冷凍室13を通常冷却する。この理由は、小冷凍室131が第1閾値TH1よりも冷却されており、被冷凍物16が小冷凍室131に収納されていないと判断出来るからである。
【0076】
ステップS19では、演算制御部27は、タイマ35からの入力に基づいて、第2時間Tm2が経過したか否かを確認する。ここで、第2時間Tm2は、例えば、第2温度Tp2が計測されてから18分が経過する時間である。
【0077】
ステップS19でYESの場合、即ち、第2時間Tm2が経過したら、演算制御部27は、ステップS20に移行する。
【0078】
ステップS19でNOの場合、演算制御部27は、ステップS16に留まり、第2時間Tm2が経過するのを待つ。
【0079】
ステップS20では、演算制御部27は、第2時間Tm2経過後の温度差を取得する。具体的には、演算制御部27は、第2温度Tp2が計測されてから第2時間Tm2、例えば18分が経過した際に、小冷凍室温度計測部26が検知した温度である第3温度Tp3を取得する。更に、演算制御部27は、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算する。
【0080】
ステップS21では、演算制御部27は、第2時間Tm2経過後の温度差と第2閾値TH2とを比較する。具体的には、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した減算値が、第2閾値TH2以上であるか否かを確認する。即ち、演算制御部27は、第2時間Tm2経過後において、被冷凍物16が第2閾値TH2より冷えていないか否かを確認する。
【0081】
一例を挙げると、第2温度Tp2は-16.1℃であり、第3温度Tp3は-16.4℃であり、第2閾値TH2は-1.0℃である。この場合、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した値は-0.3℃となる。よって、減算値は、第2閾値TH2である-1.0℃よりも大きくなり、演算制御部27は、ステップS21でYESと判断する。
【0082】
ステップS21でYESの場合、即ち、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した値が、第3閾値TH3以上であれば、演算制御部27は、ステップS22に移行する。この理由は、小冷凍室131の温度低下が小さいことで、被冷凍物16が食品等であり、クイック冷凍機能が必要であると判断出来るからである。
【0083】
ステップS21でNOの場合、即ち、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した値が、第2閾値TH2未満であれば、演算制御部27は、ステップS24に移行し、OFF点を通常に戻し、ステップS10で冷凍室13を通常冷却する。この理由は、小冷凍室131の温度低下が大きいことで、クイック冷凍機能が不要であると判断出来るからである。
【0084】
ステップS22では、演算制御部27は、ここでは図示しないコントロールパネルで、クイック冷凍機能を実行している旨を示す点灯を行う。更に、演算制御部27は、クイック冷凍機能をスタートする。即ち、
図3を参照して、演算制御部27は、小冷凍室131において被冷凍物16を冷却する冷却能力を高める。例えば、演算制御部27は、圧縮機22の回転数を高めることで蒸発器116の冷却能力を大きくし、更に冷却された空気を吹出口33から小冷凍室131に向けて送風する。更に、演算制御部27は、送風ファン24の回転数を高め、吹出口33から小冷凍室131に送風される空気の量を増大する。更に、演算制御部27は、冷蔵室ダンパ29を閉じることで、冷却室115からの空気を冷凍室13のみに供給する。ここで、演算制御部27は、冷却能力を高めるために、これらの方法の2以上を組み合わせて実行することができる。
【0085】
ステップS23では、演算制御部27は、タイマ35の出力に基づいて、クイック冷凍がスタートしてから所定時間、例えば150分が経過したか否かを判断する。
【0086】
ステップS23でYESの場合、即ち、一定時間が経過したら、演算制御部27は、クイック冷凍機能を終了させる。一定時間が経過することにより、小冷凍室131の内部において被冷凍物16はクイック冷凍される。また、演算制御部27は、ステップS24に移行することでOFF点を元に戻し、ステップS10の通常冷却に移行する。
【0087】
ステップS23でNOの場合、即ち、一定時間が経過していなければ、演算制御部27は、ステップS23に留まり、クイック冷凍機能を続行する。
【0088】
以上が、断熱扉21の開閉が行われた際に、圧縮機22がON動作であった場合の、冷蔵庫10の動作に関する説明である。
【0089】
図6は、小冷凍室温度計測部26の検知温度および圧縮機22の回転速度の経時変化を示すグラフである。
図6では、小冷凍室温度計測部26の検知温度を点線で示し、圧縮機22の回転数を一点鎖線で示している。
【0090】
ユーザが小冷凍室131に被冷凍物16を投入するべく断熱扉21を開閉すると、小冷凍室131の内部に外気が流入する。よって、第1時間Tm1の間は、小冷凍室温度計測部26の検知温度は一時的に急上昇する。この際、小冷凍室131の内部に、常温の被冷凍物16が投入されると、第1時間Tm1における温度上昇は小さくなる。
【0091】
その後、第2時間Tm2では、小冷凍室温度計測部26の検知温度は徐々に低下する。更にその後の期間では、小冷凍室131の内部における被冷凍物16の有無により、小冷凍室温度計測部26の検知温度の低下に差が生じる。即ち、小冷凍室131の内部に被冷凍物16が存在する場合、第2時間Tm2における温度低下は、小冷凍室131の内部に被冷凍物16が存在しない場合と比較して、小さくなる。
【0092】
本実施形態では、前述したように、断熱扉21の開閉後における温度変化に基づいて、小冷凍室131の内部における被冷凍物16の有無を判断し、被冷凍物16が存在すると判断したら、演算制御部27は、自動クイック冷凍機能を実行する。即ち、小冷凍室131に収納された被冷凍物16を急速に凍結させている。このようにすることで、被冷凍物16が最大氷結晶温度帯を早急に脱することになり、被冷凍物16を解凍した際に発生するドリップの量を低減し、被冷凍物16の鮮度を維持することができる。
【0093】
図7は、小冷凍室131に収納された被冷凍物16を検知する際に用いられる閾値を示している。
【0094】
図7に示すように、前述した第1閾値TH1または第2閾値TH2は、外気温に応じて変化させることができる。
【0095】
演算制御部27は、外気温度計測部30で計測した外気温ATが低ければ、第1閾値TH1を小さくすることができる。具体的には、外気温ATが18℃未満であれば、第1閾値TH1を-0.5℃とする。一方、外気温ATが18℃以上28℃未満であれば、第1閾値TH1を0℃とする。また、外気温ATが28℃以上35℃未満であれば、第1閾値TH1を0℃とする。更に、外気温ATが35℃以上であれば、第1閾値TH1を0℃とする。
【0096】
演算制御部27は、外気温度計測部30で計測した外気温ATが高ければ、第2閾値TH2を小さくすることができる。具体的には、外気温ATが18℃未満であれば、第2閾値TH2を0℃とする。一方、外気温ATが18℃以上28℃未満であれば、第2閾値TH2を-0.5℃とする。また、外気温ATが28℃以上35℃未満であれば、第2閾値TH2を-1.0℃とする。更に、外気温ATが35℃以上であれば、第2閾値TH2を-1.5℃とする。
【0097】
圧縮機22の回転数は、外気温に応じて変化する。よって、前述のように圧縮機22の回転数変化に即して第1閾値TH1および第2閾値TH2を変化させることで、同一のタイミングでクイック冷凍機能の要否を正確に判定することができる。
【0098】
図8は、冷蔵庫10の動作を示すフローチャートであり、断熱扉21が開閉された際に圧縮機22がOFFであった場合を示している。
図8に示すフローチャートの詳細は、
図5に示したフローチャートの詳細と共通する部分もあるので、相違する部分を中心に説明する。
【0099】
ステップS30、ステップS31、ステップS32、ステップS33およびステップS34の詳細な動作は、
図5に示したステップS10、ステップS11、ステップS12、ステップS13およびステップS14と同様である。ここで、ステップS30では、前述したように、冷蔵室12の庫内温度がOFF点以下であれば、圧縮機22を停止し、冷蔵室ダンパ29を閉状態としている。
【0100】
ステップS35では、演算制御部27は、冷蔵室ダンパ29の閉状態を継続し、送風ファン24を運転する。更に、演算制御部27は、圧縮機22の故障を防止するために、圧縮機22が停止してから5分以上が経過しているか否か確認する。
【0101】
ステップS35でYESの場合、演算制御部27は、ステップS36に移行する。
【0102】
ステップS35でNOの場合、演算制御部27は、ステップS35に留まり、圧縮機22が停止してから5分が経過するのを待つ。
【0103】
ステップS36では、演算制御部27は、圧縮機22を起動する。圧縮機22を起動させることで、後述するように、被冷凍物16の有無等を判断する際に、小冷凍室131を冷却する条件を統一することができる。よって、演算制御部27は、被冷凍物16の有無等を正確に判断してクイック冷凍を実行することができる。
【0104】
ステップS37からステップS41までの各ステップは、
図5に示したステップS16ないしステップS20までの各ステップにおける動作と同様である。即ち、ステップS37、ステップS38、ステップS39、ステップS40およびステップS41における動作は、
図5に示したステップS16、ステップS17、ステップS18、ステップS19およびステップS20における動作と同様である。
【0105】
ステップS42では、演算制御部27は、第2時間Tm2経過後の温度差と第2閾値TH2とを比較する。具体的には、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した値が、第2閾値TH2以上であるか否かを確認する。即ち、演算制御部27は、第2時間Tm2経過後において、被冷凍物16が第2閾値TH2より冷えていないか否かを確認する。
【0106】
一例を挙げると、第2温度Tp2は-15.8℃であり、第3温度Tp3は-15.7℃であり、第2閾値TH2は-0.5℃である。この場合、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した値は+0.1℃となる。よって、減算値は、第2閾値TH2である-0.5℃よりも大きくなり、演算制御部27は、ステップS21でYESと判断する。
【0107】
ここで、ステップS42における第2閾値TH2は、
図5に示したステップS21における第2閾値TH2と同じである。圧縮機22が停止している間は、冷凍室13の庫内温度は上昇するが、この温度上昇を加味してクイック冷凍機能の要否を判断するため、圧縮機22のON時、OFF時共に同じ第2閾値TH2を用いることができる。
【0108】
ステップS42でYESの場合、即ち、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した値が、第2閾値TH2以上であれば、演算制御部27は、ステップS43に移行する。この理由は、小冷凍室131の温度低下が小さいことで、被冷凍物16が食品等であり、クイック冷凍機能が必要であると判断出来るからである。
【0109】
ステップS42でNOの場合、即ち、第3温度Tp3から第2温度Tp2を減算した値が、第2閾値TH2未満であれば、演算制御部27は、ステップS45に移行し、OFF点を通常に戻し、ステップS30で冷凍室13を通常冷却する。この理由は、小冷凍室131の温度低下が大きいことで、クイック冷凍機能が不要であると判断出来るからである。
【0110】
ステップS43およびステップS44における動作は、
図5に示したステップS22およびステップS23と同様である。
【0111】
以上が、断熱扉21の開閉が行われた際に、圧縮機22がOFF動作であった場合の、冷蔵庫10の動作に関する説明である。上記各ステップを実行することにより、ユーザが断熱扉21を開閉し、被冷凍物16を小冷凍室131に収納した場合、演算制御部27により被冷凍物16の有無を検知し、クイック冷凍機能を自動的に実行することができる。
【0112】
図9は、小冷凍室131に収納された被冷凍物16を検知する性能を示す表である。
図9に示す表では、左側から、実験の目的、操作、扉開閉条件、自動クイック制御結果を示している。
【0113】
先ず、自動クイック冷凍が正常に行われることを目的とする検証する実験を行った。具体的には、断熱扉21を15秒程度開閉し、その間に小冷凍室131に被冷凍物16を収納する。この結果、正常に自動クイック冷凍が行われた。また、断熱扉21の開閉および小冷凍室131への被冷凍物16の収納が行われた際に、圧縮機22がON状態であっても、圧縮機22がOFF状態であっても、除霜運転中であっても、正常に自動クイック制御が行われた。よって、本実施形態の冷蔵庫10によれば、圧縮機22の状態等にかかわらず、断熱扉21の開閉時に、小冷凍室131に被冷凍物16が収納されたら、ユーザが特段の操作を行わなくても、自動的にクイック冷凍機能が実行されることが明らかになった。
【0114】
次に、不必要に自動クイック冷凍が行われないことを確認するための実験も行った。具体的には、断熱扉21を開閉し、そのあいだに小冷凍室131から被冷凍物16を取り出した場合、圧縮機22がON状態であってもOFF状態であっても、クイック冷凍機能は実行されなかった。
【0115】
更に、断熱扉21の開閉のみ行い、被冷凍物16の出し入れを行わなかった場合、断熱扉21を開状態としている時間の長さに関わらず、また、圧縮機22がON状態であってもOFF状態であっても、クイック冷凍機能は実行されなかった。
【0116】
更にまた、被冷凍物16の出し入れを行わず、断熱扉21の開閉を行い、更に小収納容器32の引出動作を行った場合、断熱扉21を開状態としている時間の長さに関わらず、また、圧縮機22がON状態であってもOFF状態であっても、クイック冷凍機能は実行されなかった。
【0117】
よって、本実施形態の冷蔵庫10によれば、前述の何れの場合であっても不必要なタイミングでクイック冷凍機能が自動実行されないことが明らかになった。
【0118】
前述した本実施形態により、以下のような主要な効果を奏することができる。
【0119】
即ち、
図5を参照して、第1温度Tp1、第2温度Tp2および第3温度Tp3の温度差が所定の条件を満たす場合に、冷却能力を高めることで、冷凍室13に被冷凍物16が貯蔵されたことを良好に検知できる。よって、断熱材113に収納された被冷凍物16を、自動クイック冷凍機能により効果的に凍結することができる。
【0120】
更に、断熱扉21の開閉動作が行われた後に、冷凍パターンを統一化することで、小冷凍室温度計測部26からの出力に基づいて、冷凍室13の内部に被冷凍物16が存在するか否かを正確に判断出来る。
【0121】
更に、
図7を参照して、外部温度に基づいて、第1閾値TH1および第2閾値TH2を変更することで、外部温度の変化により圧縮機22の回転数が変更した場合でも、同一のタイミングで第1閾値TH1および第2閾値TH2を用いて、冷凍室13に被冷凍物16が貯蔵されたことを良好に検知できる。
【0122】
更に、
図8を参照して、断熱扉21の開閉が行われた際に、圧縮機22を強制的に起動することで、扉を閉じた後の冷却パターンを統一化でき、冷凍室13における被冷凍物16の有無を更に正確に検知出来る。
【0123】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【0124】
例えば、
図3を参照して、冷蔵室12と冷凍室13とを、それぞれまたは同時に冷やすことが可能な冷却回路を有することができる。具体的には、冷蔵室12を冷却する冷蔵室用冷却器を、蒸発器116とは別途に設け、冷蔵室用冷却器により冷蔵室12を冷却し、蒸発器116により冷凍室13を冷却する。係る構成の場合、演算制御部27は、開閉検知部25が、断熱扉21の開閉動作を検知したら、冷凍室13のみを冷却する冷却回路に切り替える。具体的には、演算制御部27は、冷蔵室用冷却器による冷蔵室12の冷却を停止し、蒸発器116による冷凍室13の冷却を続行する。
【符号の説明】
【0125】
10 冷蔵庫
11 断熱箱体
111 外箱
112 内箱
113 断熱材
115 冷却室
116 蒸発器
117 除霜ヒータ
12 冷蔵室
13 冷凍室
131 小冷凍室
14 機械室
15 収納棚
16 被冷凍物
17 収納ポケット
18 断熱扉
19 断熱扉
20 断熱扉
21 断熱扉
22 圧縮機
23 吹出口
24 送風ファン
25 開閉検知部
26 小冷凍室温度計測部
27 演算制御部
28 冷蔵室送風路
29 冷蔵室ダンパ
30 外気温度計測部
31 収納容器
32 小収納容器
33 吹出口
35 タイマ
36 断熱壁