(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034797
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】薪ストーブ用排ガス浄化装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20230306BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B01D53/86 280
B01J35/04 311C
B01D53/86 245
B01D53/86 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141213
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】冨松 恵太
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 涼
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA13
4D148AA14
4D148AB01
4D148BA03X
4D148BA08X
4D148BA31X
4D148BA34X
4D148BA42X
4D148BB02
4D148DA03
4D148DA11
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA05A
4G169BC32A
4G169BC72A
4G169CA02
4G169DA05
4G169EA22
4G169EE06
4G169FB13
4G169FB75
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】安価な金属を金属触媒として用いることにより製造コストを低下させることができるとともに、金属触媒の反応開始温度を低下させることができる薪ストーブ用排ガス浄化装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブWに取り付けられ、排ガスを浄化するための薪ストーブ用排ガス浄化装置であって、排ガスを流通可能な触媒構造体2と、触媒構造体2に担持され、当該触媒構造体2を流通する排ガスと反応して浄化し得る金属触媒3とを具備し、金属触媒3は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブに取り付けられ、前記排ガスを浄化するための薪ストーブ用排ガス浄化装置であって、
前記排ガスを流通可能な触媒構造体と、
前記触媒構造体に担持され、当該触媒構造体を流通する前記排ガスと反応して浄化し得る金属触媒と、
を具備し、前記金属触媒は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を有することを特徴とする薪ストーブ用排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記触媒構造体は、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)から成るとともに、前記触媒構造体に担持される金属触媒は、前記パラジウム(Pd)に対する前記銀(Ag)の重量比率が50~80%とされたことを特徴とする請求項1記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記触媒構造体は、前記ジルコニア(ZrO2)に対する前記アルミナ(Al2O3)の重量比率が60~90%とされたことを特徴とする請求項2記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記触媒構造体は、波型形状に折り曲げられた抄造シートが複数段に積層された積層体を有することを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記薪ストーブに形成された排ガス流路に取り付け可能な収容ケースを具備するとともに、前記触媒構造体は、当該収容ケースの内周面の形状に倣った角柱形状に形成されたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置。
【請求項6】
薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブに取り付けられ、前記排ガスを浄化するための薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法であって、
前記排ガスを流通可能な触媒構造体と、
前記触媒構造体に担持され、当該触媒構造体を流通する前記排ガスと反応して浄化し得る金属触媒と、
を具備し、前記触媒構造体に前記金属触媒としての銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を担持させることを特徴とする薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項7】
前記触媒構造体は、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)から成るとともに、前記触媒構造体に担持される金属触媒は、前記パラジウム(Pd)に対する前記銀(Ag)の重量比率が50~80%とされたことを特徴とする請求項6記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項8】
前記触媒構造体は、前記ジルコニア(ZrO2)に対する前記アルミナ(Al2O3)の重量比率が60~90%とされたことを特徴とする請求項7記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項9】
抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程と、
前記抄造シート生成工程で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体を得る積層体生成工程と、
前記積層体生成工程で得られた前記積層体を焼成して前記触媒構造体を得る触媒構造体生成工程と、
前記触媒構造体生成工程で得られた前記触媒構造体に前記金属触媒としての銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を担持させる担持工程と、
を有することを特徴とする請求項6~8の何れか1つに記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブに取り付けられ、排ガスを浄化するための薪ストーブ用排ガス浄化装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薪ストーブは、金属製の密閉された箱型の本体内で薪を燃焼させて放熱させることにより室内を暖めるための暖房器から成り、輻射熱と室内空気の対流との相乗効果により、穏やかな暖かさの室内空間を作り出すことができるとされている。この薪ストーブは、通常、屋外まで延設された煙突を具備するとともに、薪の燃焼空間と煙突との間の排ガス流路には、排ガス浄化装置が配設されている。
【0003】
従来の排ガス浄化装置は、薪の燃焼により発生する排ガスを浄化するもので、排ガスを流通可能な触媒構造体と、触媒構造体に担持され、例えば灰の微粒子であるPM(Particulate Matter)や不完全燃焼により生じるCO(一酸化炭素)と反応して浄化し得る金属触媒と、触媒構造体を収容するとともに、排ガスが流通する排ガス流路に取り付け可能な収容ケースとを有している。なお、特許文献1に薪ストーブの一般的構造について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の排ガス浄化装置においては、金属触媒として白金(Pt)やパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属をメタルハニカムに担持させて構成されているので、製造コストが高いという問題があった。一方、白金(Pt)やロジウム(Rh)等の高価な貴金属に代えて安価な金属を触媒として用いた場合、浄化性能を維持することが困難であるとともに、排ガスに対する反応開始温度が高くなってしまい、高い温度域に達するまで排ガスの良好な浄化ができないという問題もある。
【0006】
また 、従来の薪ストーブ用金属触媒として代表的に用いられるパラジウム(Pd)は、排ガスを効率的に浄化する反応開始温度となる約400℃以上に達するまで、排ガスは十分に浄化されないまま煙突を通じて大気中へ放出されるため、より効率的な排ガスの浄化をするには、400℃以下での低い温度域で反応を開始する必要がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、安価な金属を金属触媒として用いることにより製造コストを低下させることができるとともに、金属触媒の反応開始温度を低下させることができる薪ストーブ用排ガス浄化装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブに取り付けられ、前記排ガスを浄化するための薪ストーブ用排ガス浄化装置であって、前記排ガスを流通可能な触媒構造体と、前記触媒構造体に担持され、当該触媒構造体を流通する前記排ガスと反応して浄化し得る金属触媒とを具備し、前記金属触媒は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置において、前記触媒構造体は、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)から成るとともに、前記触媒構造体に担持される金属触媒は、前記パラジウム(Pd)に対する前記銀(Ag)の重量比率が50~80%とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置において、前記触媒構造体は、前記ジルコニア(ZrO2)に対する前記アルミナ(Al2O3)の重量比率が60~90%とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置において、前記触媒構造体は、波型形状に折り曲げられた抄造シートが複数段に積層された積層体を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置において、前記薪ストーブに形成された排ガス流路に取り付け可能な収容ケースを具備するとともに、前記触媒構造体は、当該収容ケースの内周面の形状に倣った角柱形状に形成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブに取り付けられ、前記排ガスを浄化するための薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法であって、前記排ガスを流通可能な触媒構造体と、前記触媒構造体に担持され、当該触媒構造体を流通する前記排ガスと反応して浄化し得る金属触媒とを具備し、前記触媒構造体に前記金属触媒としての銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を担持させることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法において、前記触媒構造体は、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)から成るとともに、前記触媒構造体に担持される金属触媒は、前記パラジウム(Pd)に対する前記銀(Ag)の重量比率が50~80%とされたことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法において、前記触媒構造体は、前記ジルコニア(ZrO2)に対する前記アルミナ(Al2O3)の重量比率が60~90%とされたことを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項6~8の何れか1つに記載の薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造方法において、抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程と、前記抄造シート生成工程で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体を得る積層体生成工程と、前記積層体生成工程で得られた前記積層体を焼成して前記触媒構造体を得る触媒構造体生成工程と、前記触媒構造体生成工程で得られた前記触媒構造体に前記金属触媒としての銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を担持させる担持工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、6の発明によれば、金属触媒は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を有するので、白金(Pt)等の高価な貴金属に代えて安価な銀(Ag)とすることができ、安価な金属を金属触媒として用いることにより製造コストを低下させることができるとともに、金属触媒の反応開始温度を低下させることができる。
【0018】
請求項2、7の発明によれば、触媒構造体は、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)から成るとともに、触媒構造体に担持される金属触媒は、パラジウム(Pd)に対する銀(Ag)の重量比率が50~80%とされたので、金属触媒の反応開始温度をより低下させつつ浄化性能を向上させることができる。
【0019】
請求項3、8の発明によれば、触媒構造体は、ジルコニア(ZrO2)に対するアルミナ(Al2O3)の重量比率が60~90%とされたので、金属触媒の反応開始温度をより一層低下させつつ浄化性能を向上させることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、触媒構造体は、波型形状に折り曲げられた抄造シートが複数段に積層された積層体を有するので、触媒構造体の軽量化を図りつつ浄化性能を維持することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、薪ストーブの排ガス流路に合致させて排ガス浄化装置を取り付けることができ、排ガスの流通漏れを防止して効果的に排ガスの浄化を図ることができる。
【0022】
請求項9の発明によれば、抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程と、抄造シート生成工程で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体を得る積層体生成工程と、積層体生成工程で得られた積層体を焼成して触媒構造体を得る触媒構造体生成工程と、触媒構造体生成工程で得られた触媒構造体に金属触媒としての銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を担持させる担持工程とを有するので、製造コストの低下及び金属触媒の反応開始温度の低下を図りつつ軽量化された排ガス浄化装置を円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る薪ストーブ用排ガス浄化装置の外観を示す斜視図
【
図5】同薪ストーブ用排ガス浄化装置における触媒構造体を構成する抄造シートを示す斜視図
【
図7】同積層体の側面に補強部材を取り付けた状態の触媒構造体を示す斜視図
【
図8】同補強部材(積層方向側面に取り付けられる補強部材)を示す平面図及び側面図
【
図9】同補強部材(積層方向側面とは異なる側面に取り付けられる補強部材)を示す平面図及び側面図
【
図10】同積層体の側面に取り付けられた補強部材の周囲を抄造シートで巻いて取り付けた状態の触媒構造体を示す斜視図
【
図11】同触媒構造体の側面に保持部材を取り付けた状態を示す斜視図
【
図12】同保持部材(触媒構造体への取付前)を示す全体模式図
【
図13】同薪ストーブ用排ガス浄化装置における収容ケースを示す3面図
【
図14】本実施形態に適用される薪ストーブを示す模式図
【
図15】本実施形態に係る薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造工程を示すフローチャート
【
図16】本実施形態に係る薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造過程における補強部材(連結部材で連結された補強部材)を示す平面図及び側面図
【
図17】同補強部材における連結部を示す拡大断面図
【
図18】本実施形態に係る薪ストーブ用排ガス浄化装置の製造過程における補強部材(連結された補強部材)の内部に抄造シートを積層させた状態を示す断面模式図
【
図19】同抄造シートを積層させた後、補強部材で覆った状態を示す断面模式図
【
図20】本実施形態に係る薪ストーブ用排ガス浄化装置の触媒構造体に担持された金属触媒による技術的効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る排ガス浄化装置は、薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブに取り付けられ、排ガスを浄化するための薪ストーブ用排ガス浄化装置に適用されたものである。
【0025】
本実施形態に適用される薪ストーブWは、
図14に示すように、薪Mを燃焼させて放熱可能な燃焼室W2が形成された箱型の金属製本体W1と、薪Mの燃焼により発生した排ガスを外部に排出可能な煙突W3とを有して構成されており、金属製本体W1の前面には、燃焼室W2に薪Mを投入又は燃焼室W2内の灰を回収する際に開閉可能なガラス製の前扉Dが取り付けられている。
【0026】
また、燃焼室W2と煙突W3との間には、燃焼室W2で発生した排ガスを流通させ得る2つの排ガス流路N1、N2が形成されている。一方の排ガス流路N1は、本排ガス浄化装置1が取り付けられるとともに、他方の排ガス流路N2は、流路を開閉可能なダンパBが取り付けられている。ダンパBは、操作者が任意に操作可能とされており、排ガス流路N2を任意タイミングで開閉可能とされている。
【0027】
そして、薪Mを燃焼させて排ガスの温度が低いとき、ダンパBを閉状態とすることにより、排ガスaが他方の排ガス流路N2を流通して煙突W3から外部に排出されるとともに、排ガスの温度が高くなると、ダンパBを閉状態とすることにより、排ガスbが一方の排ガス流路N1を流通する過程で排ガス浄化装置1にて浄化され、煙突W3から外部に排出されることとなる。
【0028】
排ガス浄化装置1は、薪ストーブWの排ガス流路N1に取り付け可能とされたもので、
図1~3に示すように、排ガスを流通可能な触媒構造体2と、触媒構造体2に担持され、当該触媒構造体2を流通する排ガスと反応して浄化し得る金属触媒3と、触媒構造体2を収容するとともに、排ガスが流通する排ガス流路N1に取り付け可能な収容ケース4と、触媒構造体2と収容ケース4との間に介装されて収容ケース4に触媒構造体2を保持させる保持部材5とを有して構成されている。
【0029】
本実施形態に係る触媒構造体2は、
図5、6に示すように、波型形状に折り曲げられた抄造シートE1及び抄造シートE2が複数段に積層された積層体Eを有するものである。抄造シートE1及び抄造シートE2は、湿式抄造法(抄紙法)により得られた無機質材料を主材とするシート状部材(可撓性ペーパー状部材)から成り、
図5に示すように、抄造シートE1は、折り曲げ加工により波型形状に折り曲げられるとともに、抄造シートE2は、両端部が屈曲形成されている。
【0030】
そして、抄造シートE2の表面に抄造シートE1を重ね合わせることにより、
図5で示す抄造シート対を得るとともに、この抄造シート対を複数段に積層することにより、
図6に示す積層体Eが構成されている。これにより、波型形状に折り曲げられた抄造シートE1とシート状の抄造シートE2との間が所謂ハニカム形状となり、排ガスを流通し得るようになっている。
【0031】
また、本実施形態に係る触媒構造体2は、
図7~9に示すように、積層体Eの外周面に補強部材F1、F2が取り付けられている。かかる補強部材F1、F2は、収容ケース4の内周面に沿って延設されたシート状の部材から成り、積層体Eを構成する抄造シート(E1、E2)と同一材質から成るとともに、少なくとも積層体Eを構成する抄造シート(E1、E2)より大きい厚さ寸法のシート状部材から成る。
【0032】
より具体的には、補強部材F1、F2は、積層体Eを構成する抄造シート(E1、E2)より大きい厚さ寸法の抄造シートから成り、コート材を含侵させた後、乾燥及び焼成することにより硬化された剛性の高い部材とされている。コート材は、積層体Eを焼成する前に塗布される液体状塗布剤から成り、乾燥及び焼成により硬化する性質を有するものとされている。
【0033】
このように、本実施形態に係る触媒構造体2は、積層体E及び補強部材F1、F2にて構成されており、全体形状が収容ケース4の内周面の形状に倣った角柱形状(断面矩形のブロック形状)に形成されている。このように、補強部材F1、F2は、触媒構造体2における角柱形状の側面に沿った複数のシート状部材で構成されており、それぞれの表面が角柱形状の側面(α、β)を成している。
【0034】
すなわち、本実施形態に係る触媒構造体2は、
図7に示すように、積層体Eの外周面に複数の補強部材F1、F2が取り付けられることによって、抄造シート(積層体Eを構成する抄造シートE1、E2)の積層方向Gに位置する積層方向側面α(
図7の上下の面)と、その他の側面β(
図7の左右の面)とを有した角柱形状(ブロック形状)とされている。また、本実施形態に係る触媒構造体2の角柱形状は、断面が長辺及び短辺を有した長方形とされており、積層方向側面αが長方形の長辺に位置するとともに、その他の側面βが長方形の短辺に位置するようになっている。
【0035】
さらに、本実施形態に係る触媒構造体2は、
図7に示すように、積層方向側面αに切り欠きAが形成されている。かかる切り欠きAは、触媒構造体2の断面形状(長方形)のうち長辺の中央の位置に形成されており、本実施形態においては、隣接する補強部材F1の間に形成された隙間から成る。なお、切り欠きAの寸法は、触媒構造体2の形状及び大きさによって種々設定されるものであり、所謂スリットと称されるものも含む。
【0036】
またさらに、触媒構造体2は、
図10に示すように、補強部材F1、F2の外周面に抄造シートE3が巻き付けられている。この抄造シートE3は、積層体Eを構成する抄造シートE1,E2と同一材質から成るとともに、積層体Eを構成する抄造シートE1,E2より小さい厚さ寸法のシート状部材とされており、補強部材F1、F2の外周に巻き付けられて、製造過程において、これら補強部材F1、F2を積層体Eに固定可能とされている。
【0037】
上記の如く抄造シートE3が外周面に巻き付けられた触媒構造体2は、
図11に示すように、当該抄造シートE3のさらに外周面に対して保持部材5が巻き付けられている。この保持部材5は、アルミナ繊維から成るシート状部材から成り、
図2~4に示すように、触媒構造体2と収容ケース4との間に介装されて収容ケース4に触媒構造体2を保持させるものである。
【0038】
より具体的には、保持部材5は、Al
2O
3:SiO
2が重量比で72:28とされた結晶質アルミナ繊維から成り、熱膨張し難くい材質とされている。また、本実施形態に係る保持部材5は、
図12で示すように、一端が端面5a、5bを有した段形状とされるとともに他端が端面5c、5dを有した段形状とされており、端面5aと端面5c、及び端面5bと端面5dをそれぞれ合致させて触媒構造体2の外周面に巻き付けられるようになっている。
【0039】
収容ケース4は、触媒構造体2を収容するとともに、薪ストーブWに形成された排ガス流路N1(
図14参照)に取り付け可能な金属製プレス加工部品から成り、
図13に示すように、触媒構造体2を収容する収容空間4aと、補強のため開口縁部に形成された折り返し部4bとを有して構成されている。すなわち、触媒構造体2は、収容ケース4の内周面の形状に倣った角柱形状に形成されており、本実施形態においては、収容ケース4内に複数(2つ)隣接して収容されるとともに、それぞれの触媒構造体2の外周面に保持部材5が形成されている。
【0040】
しかるに、本実施形態に係る収容ケース4は、既述の如く開口縁部に補強のための折り返し部4bが形成されており、当該折り返し部4bにて保持部材5を抜け止め可能とされている。具体的には、触媒構造体2を収容ケース4に収容した状態において、
図3に示すように、保持部材5は、触媒構造体2と収容ケース4の内周面との間に介装するとともに、側面が折り返し部4bと対峙して抜け止めされているのである。
【0041】
金属触媒3は、触媒構造体2の積層体Eに担持された金属(
図6の符号3にて模式的に示す金属)から成り、本実施形態においては、金属触媒3として、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を有している。一方、触媒構造体2(抄造シートE1、E2の材質)は、アルミナ(Al
2O
3)及びジルコニア(ZrO
2)から成るとともに、ジルコニア(ZrO
2)に対する前記アルミナ(Al
2O
3)の重量比率が60~90%とされている。
【0042】
ここで、本実施形態に係る金属触媒3は、パラジウム(Pd)に対する銀(Ag)の重量比率が50~80%とされている。以下に、パラジウム(Pd)に対する銀(Ag)の重量比率(Ag比(%))が50~80%であることによる技術的優位性について、表1及び
図20のグラフに基づいて説明する。
【0043】
セリウム(Ce)及びジルコニア(ZrO2)が5:5及び8:2の重量比率で構成される触媒構造体2、及びアルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)が5:5、6:4、7:3、8:2、9:1の重量比率で構成される触媒構造体2の2種類を用意した。そして、セリウム(Ce)及びジルコニア(ZrO2)が5:5及び8:2の重量比率で構成される触媒構造体2においては、金属触媒3としてパラジウム(Pd)に対する銀(Ag)の重量比率(Ag比)が100%(銀のみ)、80%、70%、60%、50%、20%、0%(パラジウムのみ)で担持されたものを用意した。
【0044】
同様に、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)が8:2の重量比率で構成される触媒構造体2において、金属触媒3としてパラジウム(Pd)に対する銀(Ag)の重量比率(Ag比)が100%(銀のみ)、80%、70%、60%、50%、20%、0%(パラジウムのみ)で担持されものを複数用意した。これら触媒構造体2をそれぞれ加熱して反応開始温度(℃)(金属触媒3が反応して排ガスを浄化可能な温度)を計測したところ、表1で示すような結果となった。
【0045】
【0046】
しかるに、表1で示される結果について、
図20に示すように、横軸をAg比(%)、縦軸を反応開始温度(℃)としたグラフにプロットしたところ、同図中符号Hで示す範囲のものについて、反応開始温度(℃)が低く、浄化性能が高いことが分かった。すなわち、触媒構造体2がアルミナ(Al
2O
3)及びジルコニア(ZrO
2)から成るとともに、触媒構造体2に担持される金属触媒がパラジウム(Pd)に対する銀(Ag)の重量比率が50~80%とされたものは浄化性能が高く、そのうち、ジルコニア(ZrO
2)に対するアルミナ(Al
2O
3)の重量比率が60~90%とされた触媒構造体2とすれば、浄化性能が特に高く好ましい。
【0047】
次に、本実施形態に係る薪ストーブ用排ガス浄化装置1の製造方法について、
図15のフローチャートを用いて説明する。
本実施形態に係る薪ストーブ用排ガス浄化装置1は、抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程S1と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体Eを得る積層体生成工程S2と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートにコート材を塗布して焼成することにより補強部材F1、F2を得る補強部材生成工程S3と、積層体生成工程S2で得られた積層体Eの外周面に補強部材生成工程S3で得られた補強部材F1、F2を取り付けた状態として焼成することにより触媒構造体2を得る触媒構造体生成工程(S4~S7)と、触媒構造体生成工程(S4~S7)で得られた触媒構造体2に金属触媒3を担持させる担持工程S8とを経ることにより製造される。
【0048】
より具体的には、先ず、抄造シートを抄造法により生成する(抄造シート生成工程S1)。本実施形態に適用される抄造法は、湿式抄造法とされており、例えば所定量の水に対してアルミナ(Al2O3)やジルコニア(ZrO2)等を含む所定量の繊維及び無機バインダ等を投入して水溶液を作製し、これら含有物を均一に分散させたスラリーの作製、及びそのスラリーに凝集剤を添加したフロックの生成を経た後、当該フロックを抄紙してペーパー状の抄造シートE1、E2を得る。
【0049】
また、抄造シート生成工程S1においては、抄造シートE1、E2に加え、これら抄造シートE1、E2より大きい厚さ寸法の抄造シート(補強部材F1、F2)、及び抄造シートE1、E2より小さい厚さ寸法の抄造シートE3を生成する。そして、抄造シートE1を折り曲げ加工した後、抄造シートE2を組み合わせ、
図5で示す波型形状に折り曲げられた抄造シートを形成するとともに、これら波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層し、
図6に示す積層体Eを生成する(積層体生成工程S2)。
【0050】
一方、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートE1、E2より大きい厚さ寸法の抄造シートは、液体状塗布剤から成るコート材が含侵された後、乾燥及び焼成することにより硬化された剛性の高い補強部材F1、F2とされる(補強部材生成工程S3)。かかる補強部材生成工程S3においては、例えばコート材に抄造シートを浸漬させつつ減圧することにより、抄造シートの表面に加え内部にまでコート材を含侵させることができる。なお、コート材は、粘着性を有するとともに、焼成により硬化する材質とされている。
【0051】
ここで、本実施形態において、補強部材生成工程S3で得られる補強部材F1は、
図16、17に示すように、焼成工程S7の焼成により消滅する連結部材6により連結されて成り、触媒構造体生成工程(S4~S7)における焼成(焼成工程S7の焼成)により連結部材6が消滅して切り欠きA(
図7参照)が形成されるようになっている。かかる連結部材6は、
図17に示すように、隣接する補強部材F1の対向する端面間に介在する切り欠き形成シール6aと、この切り欠き形成シール6aを含む範囲に貼着されて隣接する2枚の補強部材F1を連結する連結シール6bとを有して構成されており、焼成により、これら切り欠き形成シール6a及び連結シール6bが消失するとともに、切り欠き形成シール6aの消失により、切り欠きAが形成されるのである。
【0052】
その後、
図7に示すように、積層体Eの外周面に補強部材F1、F2を取り付けるとともに、
図10に示すように、抄造シートE3を外周面に巻き付けて固定することにより組付けた後、その組付けた全体をS3で用いたものと同様のコート材に浸漬することにより当該コート材を含侵させる(組付・全体コート工程S4)。具体的には、
図18に示すように、連結部材6で連結された補強部材F1を底面に設置するとともに、その両端に補強部材F2をそれぞれ設置した状態とし、これら補強部材F1、F2の内部空間に波型形状に折り曲げられた抄造シートE1、E2を所定段に積層して積層体Eを構成する。
【0053】
こうして積層体Eが構成された後、上面に連結部材6で連結された補強部材F1を取り付けることにより、
図7に示すように、補強部材F1、F2が取り付けられた積層体Eを得ることができる。そして、抄造シートE3を外周面に巻き付けて固定した状態の積層体Eをコート材に浸漬して含侵させることにより、組付・全体コート工程S4が行われることとなる。
【0054】
そして、コート材が含侵された積層体Eに対して、乾燥工程S5及び脱脂工程S6(低温加熱工程)を施した後、所定温度で焼成(高温加熱による焼成)することにより硬化した触媒構造体2を得ることができる。なお、組付・全体コート工程S4、乾燥工程S5、脱脂工程S6及び焼成工程S7は、本発明の触媒構造体生成工程を構成する各工程とされている。
【0055】
その後、上記焼成工程S7を経て得られた触媒構造体2に金属触媒3としての銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を担持させた後、再びコート材を含侵させ、乾燥工程S5と同様の乾燥、脱脂工程S6と同様の脱脂、及び焼成工程S7と同様の焼成を施すことにより、金属触媒3を担持した触媒構造体2を得ることができる(担持工程S8)。次に、このようにして得られた触媒構造体2の外周面に保持部材5を巻き付けて取り付ける(保持部材取付工程S9)とともに、保持部材5が巻き付けられた触媒構造体2を収容ケース4内に収容して組み立てることにより、薪ストーブ用排ガス浄化装置1を得ることができる(組立て工程S10)。組立て工程S10においては、触媒構造体2と収容ケース4との間に保持部材5を介装して組付け、収容ケース4に触媒構造体2を保持させるようになっている。
【0056】
本実施形態によれば、金属触媒3は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を有するので、白金(Pt)等の高価な貴金属に代えて安価な銀(Ag)とすることができ、安価な金属を金属触媒として用いることにより製造コストを低下させることができるとともに、金属触媒3の反応開始温度を低下させることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る触媒構造体2は、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)から成るとともに、触媒構造体2に担持される金属触媒3は、パラジウム(Pd)に対する銀(Ag)の重量比率が50~80%とされたので、金属触媒3の反応開始温度をより低下させつつ浄化性能を向上させることができる。特に、ジルコニア(ZrO2)に対するアルミナ(Al2O3)の重量比率が60~90%の触媒構造体2を用いることにより、金属触媒3の反応開始温度をより一層低下させつつ浄化性能を向上させることができる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る触媒構造体2は、波型形状に折り曲げられた抄造シートE1、E2が複数段に積層された積層体Eを有するので、触媒構造体2の軽量化を図りつつ浄化性能を維持することができる。しかるに、本実施形態によれば、薪ストーブWの排ガス流路N1に合致させて排ガス浄化装置1を取り付けることができ、排ガスの流通漏れを防止して効果的に排ガスの浄化を図ることができる。
【0059】
またさらに、抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程S1と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体Eを得る積層体生成工程S2と、積層体生成工程S2で得られた積層体Eを焼成して触媒構造体2を得る触媒構造体生成工程(S4~S7)と、触媒構造体生成工程(S4~S7)で得られた触媒構造体2に金属触媒3としての銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を担持させる担持工程S8とを有するので、製造コストの低下及び金属触媒3の反応開始温度の低下を図りつつ軽量化された排ガス浄化装置を円滑に製造することができる。
【0060】
加えて、本実施形態によれば、触媒構造体2は、波型形状に折り曲げられた抄造シートE1、E2が複数段に積層された積層体Eを有するとともに、積層体Eの外周面には、収容ケース4の内周面に沿って延設された補強部材F1、F2が形成されたので、触媒構造体2の軽量化を図ることができるとともに、製造過程における積層体2の変形を防止して触媒構造体2と収容ケース4との間に隙間が生じてしまうのを抑制することができる。
【0061】
また、触媒構造体2は、収容ケース4の内周面の形状に倣った角柱形状に形成され、且つ、補強部材F1、F2は、触媒構造体2における角柱形状の側面に沿った複数のシート状部材で構成されたので、収容ケース4が排ガス流路N1の形状に倣った矩形形状(長方形等)であっても、触媒構造体2を収容ケース4の内周面に合致させて収容することができる。
【0062】
さらに、補強部材F1、F2は、積層体Eを構成する抄造シートE1、E2と同一材質から成るとともに、少なくとも積層体Eを構成する抄造シートE1、E2より大きい厚さ寸法のシート状部材から成るので、厚さ寸法が異なる抄造シートを積層体E及び補強部材F1、F2のそれぞれに流用することができるとともに、厚さ寸法が大きく剛性が高い補強部材F1、F2によって、製造過程における積層体Eの変形を確実に防止することができる。
【0063】
しかるに、薪を燃焼させて放熱可能とされるとともに当該薪の燃焼により発生する排ガスを外部に排出可能な薪ストーブWに取り付けられるので、薪ストーブWから排出される排ガスを確実に浄化することができる。
【0064】
またさらに、抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程S1と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体Eを得る積層体生成工程S2と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートにコート材を塗布して焼成することにより補強部材F1,F2を得る補強部材生成工程S3と、積層体生成工程S2で得られた積層体Eの外周面に補強部材生成工程S3で得られた補強部材F1、F2を取り付けた状態として焼成することにより触媒構造体Eを得る触媒構造体生成工程(S4~S7)と、触媒構造体生成工程(S4~S7)で得られた触媒構造体2に金属触媒3を担持させる担持工程S8とを有するので、製造過程における積層体Eの変形を確実に防止しつつ軽量化された排ガス浄化装置1を円滑に製造することができる。
【0065】
加えて、触媒構造体2は、波型形状に折り曲げられた抄造シートE1、E2が複数段に積層された積層体Eを有するとともに、収容ケース4の内周面の形状に倣った角柱形状に形成され、且つ、角柱形状の側面のうち少なくとも抄造シートE1、E2の積層方向Gに位置する積層方向側面αに切り欠きAが形成されたので、触媒構造体2の軽量化を図ることができるとともに、角柱形状の触媒構造体2であってもクラックの発生を抑制することができる。
【0066】
また、触媒構造体2は、断面が長辺及び短辺を有した長方形とされるとともに、積層方向側面αは当該長方形の長辺に位置するので、積層体Eにおける抄造シートE1、E2の積層段数を低減させることができ、製造過程の作業性を向上させることができる。特に、切り欠きAは、長辺の中央の位置に形成されたので、断面が長辺及び短辺を有した長方形の積層体Eにおけるクラックの発生をより効果的に抑制することができる。
【0067】
さらに、積層体Eの外周面には、収容ケース4の内周面に沿って延設された補強部材F1、F2が形成されるとともに、当該補強部材F1に切り欠きが形成されたので、補強部材F1、F2により製造過程における積層体Eの変形を防止することができるとともに、その補強部材F1に形成された切り欠きAによりクラックの発生を抑制することができる。
【0068】
特に、補強部材F1、F2は、触媒構造体2における角柱形状の側面に沿った複数のシート状部材で構成され、当該シート状部材のうち積層方向側面αに位置するシート状部材に切り欠きAが形成されたので、収容ケース4が排ガス流路N1の形状に倣った矩形形状(長方形等)であっても、触媒構造体2を収容ケース4の内周面に合致させて収容することができるとともに、補強部材F1に形成された切り欠きAによりクラックの発生を抑制することができる。
【0069】
また、抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程S1と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体Eを得る積層体生成工程S2と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートにコート材を塗布して焼成することにより補強部材F1、F2を得る補強部材生成工程S3と、積層体生成工程S2で得られた積層体Eの外周面に補強部材生成工程S3で得られた補強部材F1、F2を取り付けた状態として焼成することにより触媒構造体2を得る触媒構造体生成工程(S4~S7)と、触媒構造体生成工程(S4~S7)で得られた触媒構造体2に金属触媒3を担持させる担持工程S8とを有するので、焼成工程S7時のクラックの発生を抑制し、且つ、積層体Eの変形を確実に防止しつつ軽量化された排ガス浄化装置1を円滑に製造することができる。
【0070】
さらに、補強部材生成工程S3で得られる補強部材F1は、焼成により消滅する連結部材6により連結されて成り、触媒構造体生成工程(焼成工程S7)における焼成により連結部材6が消滅して切り欠きAが形成されるので、補強部材F1が連結部材6で連結されて仮止めされることにより製造過程における作業性を向上することができるとともに、焼成により連結部材6が消滅することにより切り欠きAを容易且つ確実に形成することができる。
【0071】
またさらに、触媒構造体生成工程(S4~S7)は、積層体生成工程S2で得られた積層体Eの外周面に補強部材生成工程S3で得られた補強部材F1、F2を取り付けるとともに、当該補強部材F1、F2の外周面に抄造シート生成工程S1で得られた抄造シートE3を巻き付けて固定した状態で焼成されるので、焼成前の製造過程における作業性をより一層向上させることができる。
【0072】
加えて、本実施形態によれば、アルミナ繊維から成るシート状部材から成り、触媒構造体2と収容ケース4との間に介装されて収容ケース4に触媒構造体2を保持させる保持部材5を具備し、収容ケース4は、開口縁部に補強のための折り返し部4bが形成されるとともに、当該折り返し部4bにて保持部材5を抜け止め可能とされたので、保持部材5の熱膨張による折り返し部4bの変形を防止することができ、折り返し部4bによる収容ケース4の補強機能及び保持部材5の抜け止め機能を維持することができる。
【0073】
また、触媒構造体2は、収容ケース4内に複数(本実施形態においては2つ)隣接して収容されるとともに、それぞれの触媒構造体2の外周面に保持部材5が形成されたので、収容ケース4に隣接して収容された触媒構造体2の保持部材5がそれぞれ熱膨張して互いに押し合い、それぞれの触媒構造体2を変形又は破損させてしまうのを防止することができる。
【0074】
さらに、抄造法により抄造シートを生成する抄造シート生成工程S1と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートを波型形状に折り曲げるとともに、その波型形状に折り曲げられた抄造シートを複数段に積層して積層体Eを得る積層体生成工程S2と、抄造シート生成工程S1で生成された抄造シートにコート材を塗布して焼成することにより補強部材F1、F2を得る補強部材生成工程S3と、積層体生成工程S2で得られた積層体Eの外周面に補強部材生成工程S3で得られた補強部材F1、F2を取り付けた状態として焼成することにより触媒構造体2を得る触媒構造体生成工程(S4~S7))と、触媒構造体生成工程(S4~S7)で得られた触媒構造体2に金属触媒3を担持させる担持工程S8と、触媒構造体2と収容ケース4との間に保持部材5を介装して組付け、収容ケース4に触媒構造体2を保持させる組立て工程S10とを有するので、保持部材5の側面と収容ケース4の折り返し部4bとを確実に対峙させた状態とすることができ、保持部材5の熱膨張による折り返し部4bの変形を防止することができとともに、軽量化された排ガス浄化装置1を円滑に製造することができる。
【0075】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば積層体Eの外周面に補強部材F1、F2が取り付けられず、抄造シートE3による巻き付け固定がなされないもの、切り欠きAが形成されないもの、他の材料から成る保持部材5を具備したもの等であってもよい。なお、触媒構造体2は、断面矩形の角柱形状の他、円柱形状等、他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
金属触媒は、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を有する薪ストーブ用排ガス浄化装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 排ガス浄化装置
2 触媒構造体
3 金属触媒
4 収容ケース
4a 収容空間
4b 折り返し部
5 保持部材
6 連結部材
6a 切り欠き形成シール
6b 連結シール
W 薪ストーブ
W1 金属製本体
W2 燃焼室
W3 煙突
N1 排ガス流路
N2 バイパス流路
B ダンパ
M 薪
D 前扉
E 積層構造体
E1 抄造シート
E2 抄造シート
E3 抄造シート
F1 補強部材
F2 補強部材
A 切り欠き
α 積層方向側面
β その他の側面
G 積層方向