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特開2023-34815硬化性シリコーン組成物、封止材、及び光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034815
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物、封止材、及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20230306BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230306BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20230306BHJP
【FI】
C08L83/04
H01L23/30 F
H01L23/30 R
H01L33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141244
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】520070769
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 絢哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジ・カン
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 真弓
(72)【発明者】
【氏名】竹内 香須美
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
5F142
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DE136
4J002DJ016
4J002FA086
4J002FB096
4J002FB166
4J002FD336
4J002GQ01
4J002HA08
4M109AA01
4M109EA10
4M109EB04
4M109EB13
4M109EC11
5F142AA03
5F142CG05
5F142CG14
5F142CG16
(57)【要約】
【課題】優高いチクソ性を有し、優れた屈折率及び透明性を示す硬化物を形成できる硬化性シリコーン組成物を提供すること。
【解決手段】(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)組成物の総質量に対して3質量%以上の、シリカ-チタニア複合酸化物粒子、及び(D)硬化用触媒を含む、硬化性シリコーン組成物により、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)組成物の総質量に対して3質量%以上の、シリカ-チタニア複合酸化物粒子、及び
(D)硬化用触媒
を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(C)シリカ-チタニア複合酸化物粒子の比表面積が、50m/g以上である、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(C)シリカ-チタニア複合酸化物粒子の25℃、波長589nmでの屈折率が、1.40以上である、請求項1又は2に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
25℃、波長589nmでの屈折率が1.50以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が20モル%以上であるレジン状オルガノポリシロキサン、直鎖状オルガノポリシロキサン、又はその両方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
25℃での粘度が30Pa・s以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物を含む、封止材。
【請求項8】
請求項7に記載の封止材を備える、光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性シリコーン組成物に関し、より具体的には、光半導体の封止材に好適に用いられる硬化性シリコーン組成物に関する。また、本発明は、こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる封止材により封止された光半導体装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、援水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。特に、その硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、耐久性等の物理的物性の低下が小さいため、光学材料用、特に発光ダイオード(LED)等の光半導体装置に用いられるシリコーン封止材として広く用いられている。
【0003】
近年、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置に用いられるシリコーン封止材は、より高い光取り出し効率を達成するために、高い透明性及び高屈折率が要求されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(A)ジフェニルシロキサン単位が総シロキサン単位の5モル%以下であり、分子中の全ケイ素原子結合有機基の少なくとも20モル%がフェニル基であり、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するメチルフェニルアルケニルポリシロキサン、(B)ジフェニルシロキサン単位が総シロキサン単位の5モル%以下であり、分子中の全ケイ素原子結合有機基の少なくとも20モル%がフェニル基であり、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサンおよび(C)ヒドロシリル化反応触媒からなり、本組成物中のジフェニルシロキサン単位は総シロキサン単位の5モル%以下であることを特徴とする、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、発光ダイオードの光透過表面を被覆するシリコーン樹脂組成物であって、一般式(I)で表される直鎖状オルガノポリシロキサン成分と、下記平均組成式(2)H(RSiO(4-c-d)/2(2)(式中、R4はそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又はハロゲン原子もしくはシアノ基置換の一価炭化水素基であり、c及びdは、0.001≦c<2、0.7≦d≦2かつ0.8≦c+d≦3を満たす数である。)で表される1分子中にSiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン成分と、白金族金属系触媒を含む複数の液体成分を含有し、前記直鎖状オルガノポリシロキサン成分は分子量1,000以下であるオルガノシロキサンの割合が10%未満であり、分子量1,000以下であるオルガノシロキサンの含有量が10%未満で、Shore00硬度85以下の硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、(A)一分子中、少なくとも3個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン、(B)分子鎖両末端がジオルガノハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、アリール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5~2モルとなる量}、(C)一分子中、少なくとも3個のジオルガノハイドロジェンシロキシ基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン{前記(B)成分と本成分に含まれるジオルガノハイドロジェンシロキシ基の合計量に対して、本成分中のジオルガノハイドロジェンシロキシ基が1~20モル%となる量}、及び(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、(A)下記化学式1の平均組成式を有するオルガノポリシロキサンと;(B)アルケニル基、エポキシ基及びアリール基を含むオルガノポリシロキサンと;を含む硬化性組成物:[化学式1](R SiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO(上記化学式1で、Rは、炭素数2以上の1価炭化水素基であり、Rは、炭素数1~4のアルキル基であり、R及びRは、それぞれ、独立して炭素数1~20のアルキル基であり、炭素数2~20のアルケニル基または炭素数6~25のアリール基であり、Rは、炭素数1~20のアルキル基または炭素数6~25のアリール基であり、R、R及びRのうち少なくとも1つは、アルケニル基であり、aは、正の数であり、bは、0または正の数であり、cは、正の数であり、dは、0または正の数であり、b/aは、5以上であり、b/cは、5以上である)が記載されています。
【0008】
しかしながら、従来の硬化性シリコーン組成物では、硬化性シリコーン組成物のチクソ性が不十分であるため、これを支持基板上の光半導体にディスペンサーを用いて直接に適量を適用し、硬化させようとしても、適用した硬化性シリコーン組成物が流れてしまい、目的の形状を有する硬化物が得られない場合があるという問題があった。また、チクソ性を改善するためにシリカ等の粒子を添加した場合、得られる硬化物の透明性が低下してしまう場合があるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2012-507582号公報
【特許文献2】特開2014-159586号公報
【特許文献3】特開2010-1336号公報
【特許文献4】特開2015-507025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高いチクソ性、屈折率、及び硬度を有し、優れた透明性を示す硬化物を形成できる硬化性シリコーン組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、本発明の硬化性シリコーン組成物を含む封止材を提供することにある。また、本発明のさらに別の目的は、本発明の封止材で封止された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、本件発明者は、鋭意検討した結果、驚くべきことに、フィラーとしてシリカ-チタニア複合酸化物粒子を特定量用いることにより、硬化性シリコーン組成物が、所望の形状形成に好適な優れたチクソ性を示し、且つ、優れた屈折率、硬度と透明性を有する硬化物を形成できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
したがって、本発明は、
(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)組成物の総質量に対して3質量%以上の、シリカ-チタニア複合酸化物粒子、及び
(D)硬化用触媒
を含む、硬化性シリコーン組成物に関する。
【0014】
(C)シリカ-チタニア複合酸化物粒子の比表面積が、50m/g以上であることが好ましい。
【0015】
(C)シリカ-チタニア複合酸化物粒子の25℃、波長589nmでの屈折率が、1.40以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、25℃、波長589nmでの屈折率が1.50以上であることが好ましい。
【0017】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が20モル%以上であるレジン状オルガノポリシロキサン、直鎖状オルガノポリシロキサン、又はその両方を含むことが好ましい。
【0018】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、25℃での粘度が30Pa・s以下であることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、本発明に係る硬化性シリコーン組成物からなる封止材にも関する。
【0020】
本発明はまた、本発明に係る封止材を備える光半導体装置にも関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物によれば、適用時に所望の形状形成に好適なチクソ性を維持しつつ、透明性及び硬度、屈折率に優れる硬化物を形成できる硬化性シリコーン組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、
(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)組成物の総質量に対して3質量%以上の、シリカ-チタニア複合酸化物粒子、及び
(D)硬化用触媒
を少なくとも含む。
【0023】
以下、本発明の硬化性シリコーン組成物の各成分について詳細に説明する。
【0024】
(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、本組成物の主成分であり、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する硬化性のオルガノポリシロキサンである。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上の(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
【0025】
(A)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、レジン状、環状、および三次元網状構造が例示される。(A)成分は、これらの分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサンであるか、あるいはこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物は、(A)成分として直鎖状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとレジン状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの両方を含む。本明細書において、レジン状とは、分子構造中に分岐状または三次元網状構造を有することを意味する。
【0026】
(A)成分に含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0027】
(A)成分に含まれるアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基から選択される。
【0028】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、(A-1)成分として、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含み得る。(A-1)レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、好ましくは、
平均単位式(I):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式(I)中、Rは同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<0.9、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、且つ、c+d>0である)で表され得る。
【0029】
上記式(I)中のRのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。Rは、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、特にビニル基、または炭素原子数6~20のアリール基、特にフェニル基から選択される。
【0030】
上記式(I)中のXは水素原子またはアルキル基である。Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、およびプロピル基が例示される。
【0031】
上記式(I)において、aは、好ましくは0.05≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.1≦a≦0.6の範囲であり、さらに好ましくは0.15≦a≦0.4の範囲である。上記式(I)において、bは、好ましくは0≦b≦0.6の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.4の範囲であり、特に0≦b≦0.2の範囲である。上記式(I)において、cは、好ましくは0.2≦c<0.9の範囲であり、より好ましくは0.3≦c≦0.85の範囲であり、特に0.4≦c≦0.8の範囲である。上記式(I)において、dは、好ましくは0≦d≦0.4の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.25の範囲であり、特に0≦d≦0.1の範囲である。上記式(I)において、eは、好ましくは0≦e≦0.15の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、特に0≦e≦0.05の範囲である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、上記式(I)において、cは0よりも大きく、すなわち、SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を含む。(A-1)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子末端にアルケニル基を含有する。(A-1)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)にアルケニル基を有し、分子鎖側鎖(すなわち、SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位))にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0034】
(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の3モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の40モル%以下、好ましくは30モル%、より好ましくは20モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または以下の滴定法によって求めることができる。
【0035】
滴定法により各成分中のアルケニル基量を定量する方法について説明する。オルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基含有量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を下記に述べる。まずオルガノポリシロキサン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。次に式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。次に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
式(1)CH=CH- + 2ICl → CHI-CHCl- + ICl(過剰)
式(2)ICl+KI → I + KCl
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基量を定量することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合有機基にアリール基を含む。すなわち、上記式(I)において、少なくとも1つのRは、アリール基であり得る。本発明の好ましい実施形態において、(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子鎖側鎖、すなわち、D単位及び/又はT単位にケイ素原子結合アリール基を含有し、特に好ましくはT単位のみにケイ素原子結合アリール基を含有する。(A-1)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子末端、すなわちM単位にアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。なお、アリール基としては、炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が挙げられる。
【0037】
(A-1)成分のレジン状オルガノポリシロキサンがアリール基を含有する場合、その含有量(レジン状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基のモル%)は、所望により設計可能であるが、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、特に好ましくは25モル%以上であり、また、通常70モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下であり得る。なお、アリール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0038】
(A-1)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃で固体または半固体であることが好ましい。(A-1)成分のオルガノポリシロキサンの平均数分子量は、特に限定されないが、500~10,000の範囲内であり得る。
【0039】
(A)成分が1種類以上の(A-1)レジン状オルガノポリシロキサンを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。また、好ましくは、(A-1)成分の含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以下であり、特に好ましくは70質量%以下である。
【0040】
本発明の一実施形態において、2種類の(A-1)レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含む場合、第2の(A-1)成分として、T単位が1つのみからなるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン単量体を含んでもよい。こうした第2の(A-1)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり得る。
【0041】
(A)成分は、(A-2)成分として、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよい。(A-2)成分の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、好ましくは、
平均構造式(II):R SiO(R SiO2/2SiR
(式(II)中、Rは同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、mは1~500である)で表され得る。
【0042】
上記式(II)において、Rのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基は、上記式(I)と同じものが適用できる。
【0043】
上記式(II)において、mは、好ましくは2~300であり、より好ましくは5~200であり、さらに好ましくは10~100であり、特に好ましくは15~50である。
【0044】
このような(A-2)成分としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、および分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体が例示される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、(A-2)成分の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端にアルケニル基を含有する、分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサンであり得る。(A-2)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖側鎖(すなわち、D単位)にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0046】
(A-2)成分の直鎖状オルガノポリシロキサン中に含まれるアルケニル基の含有量(直鎖状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基のモル%)は、所望により設計可能であるが、通常1モル%以上、好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは3モル%以上であってよく、また、20モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下、優先的には7モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)、及び上記滴定法等の分析によって求めることができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、(A-2)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合有機基にアリール基を含む。すなわち、上記式(II)において、少なくとも1つのRは、アリール基であり得る。本発明の好ましい実施形態において、(A-2)成分の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子鎖側鎖にケイ素原子結合アリール基を含有する。(A-2)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端(すなわち、M単位)にアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0048】
(A-2)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンがアリール基を含有する場合、その含有量(直鎖状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基のモル%)は、所望により設計可能であるが、通常15モル%以上、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上であり、また、75モル%以下、好ましくは65モル%以下、より好ましくは60モル%以下、優先的には55モル%以下、特に好ましくは50モル%以下であり得る。なお、アリール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0049】
(A)成分が(A-2)直鎖状オルガノポリシロキサンを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。また、好ましくは、(A-2)成分の含有量は、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
【0050】
好ましい一実施形態において、(A)成分は、ケイ素原子結合官能基にアリール基を多く含むアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含み、具体的には、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量が20モル%以上、好ましくは25モル%以上の(A-1)レジン状オルガノポリシロキサン、(A-2)直鎖状オルガノポリシロキサン、又はその両方を含む。
【0051】
その他のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン成分
本発明に係る硬化性シリコ-ン組成物成分は、その他のオルガノポリシロキサン成分として、(A-3)エポキシ基含有オルガノポリシロキサン及び/又は(A-4)環状オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
【0052】
(A-3)エポキシ基含有オルガノポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、レジン状、環状、および三次元網状構造が例示され、好ましくは
エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンである。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種以上のエポキシ基オルガノポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0053】
エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、以下の平均単位式(IV):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
{式(IV)中、Rは各々独立に、ハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基であり、ただし、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、Rは各々独立に、ハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基又はエポキシ基含有有機基であり、ただし、少なくとも1個のRはエポキシ基含有有機基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦f<1、0<g<1、0≦h<0.9、0≦i<0.5、及び0<j<0.5であり、f+g+h+i+j=1.0、h+i>0であり、かつ、j/(f+g+h+i+j)>0.05である}。
【0054】
上記(IV)において、R及びRのハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基から選択される。Rは、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、特にビニル基、炭素原子数6~20のアリール基、特にフェニル基から選択される。
【0055】
上記(IV)において、Rのエポキシ基含有有機基としては、例えば、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-プロピル基等のエポキシシクロアルキルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基が例示され、好ましくは、グリシドキシアルキル基であり、特に好ましくは、3-グリシドキシプロピル基である。Rは、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、特にビニル基、炭素原子数6~20のアリール基、特にフェニル基、及び、3-グリシドキシプロピル基から選択される。Rは、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、及び、3-グリシドキシプロピル基から選択される。
【0056】
上記式(IV)中のXは水素原子またはアルキル基である。Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、およびプロピル基が例示される。
【0057】
上記式(IV)において、f+g+h+i+j=1.0であることを基準にして、fは、好ましくは0.03≦f≦0.7の範囲であり、より好ましくは0.06≦f≦0.5の範囲であり、さらに好ましくは0.09≦f≦0.3の範囲である。上記式(IV)において、gは、好ましくは0.05≦g≦0.6の範囲であり、より好ましくは0.1≦g≦0.4の範囲であり、特に0.2≦g≦0.3の範囲である。上記式(IV)において、hは、好ましくは0.1≦h≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.25≦h≦0.7の範囲であり、特に0.4≦h≦0.6の範囲である。上記式(IV)において、iは、好ましくは0≦i≦0.4の範囲であり、より好ましくは0≦i≦0.25の範囲であり、特に0≦i≦0.1の範囲である。上記式(IV)において、jは、好ましくは0.05≦j≦0.4の範囲であり、より好ましくは0.1≦j≦0.3の範囲であり、特に0.15≦j≦0.25の範囲である。
【0058】
一実施形態において、上記式(IV)において、j/(f+g+h+i+j)は0.05よりも大きい。好ましくは、j/(f+g+h+i+j)は0.08よりも大きく、より好ましくは0.11よりも大きく、さらに好ましくは0.14よりも大きい。また、j/(f+g+h+i+j)は、通常、0.5よりも小さく、好ましくは0.4よりも小さく、さらに好ましくは0.3よりも小さく、特に好ましくは0.25よりも小さい。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、上記式(IV)において、hは0よりも大きく、すなわち、SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を含む。(C)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、分子末端にアルケニル基を含有する。エポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、好ましくは、SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)にアルケニル基を有し、分子側鎖(すなわち、SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位))にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0061】
好ましい実施形態において、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、より好ましくは3モル%以上であり、さらに好ましくは5モル%以上であり、特に好ましくは7モル%以上であり、また、例えば30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは15モル%以下であり得る。
【0062】
本発明の好ましい実施形態において、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合有機基にアリール基を含む。すなわち、上記式(IV)において、R及びRの少なくとも1つはアリール基であり得る。本発明の好ましい実施形態において、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、分子側鎖、すなわち、D単位又はT単位、好ましくはT単位にケイ素原子結合アリール基を含有する。エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、分子末端、すなわちM単位にアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。なお、アリール基としては、炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が挙げられる。
【0063】
エポキシ基含有オルガノポリシロキサンがアリール基を含有する場合、その含有量(エポキシ基含有オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基のモル%)は、所望により設計可能であるが、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上、特に好ましくは30モル%以上であり、また、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、特に好ましくは40モル%以下であり得る。
【0064】
エポキシ基含有オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基全体に占めるエポキシ基含有有機基の量は、特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、より好ましくは5モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上であり、特に好ましくは15モル%以上であり、また、例えば40モル%以下であり、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは25モル%以下である。なお、エポキシ基含有有機基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0065】
本発明の好ましい一実施形態において、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合有機基として、水酸基及び/又はアルコキシ基を含む。エポキシ基含有オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基全体に占める水酸基及び/又はアルコキシ基の量は、特に限定されないが、2モル%以上が好ましく、より好ましくは5モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上であり、また、例えば30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは15モル%以下である。なお、水酸基及び/又はアルコキシ基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0066】
エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンの粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃で50mPa・s~20000mPa・sの範囲内、好ましくは50mPa・s~3000mPa・sの範囲内である。本明細書において、オルガノポリシロキサン成分の粘度は、25℃において、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。
【0067】
エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、特にエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上で含まれ、また、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下の量で含まれ得る。
【0068】
(A-4)成分の環状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、
平均構造式(V):(R SiO)
(式(V)中、Rは同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、nは25℃の粘度が1000mPa・s以下となる数である。)で表され得る。
【0069】
上記式(V)において、Rのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基は、上記式(I)のRと同じものが適用できる。
【0070】
上記式(V)において、nは25℃の粘度が1000mPa・s以下となる数であり、例えば4~15であり、好ましくは4~10であり、さらに好ましくは4~8である。なお、本明細書において、オルガノポリシロキサン成分の粘度は、25℃において、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。
【0071】
一実施形態において、(A-4)成分の環状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基の含有量(環状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基のモル%)は、所望により設計可能であるが、通常10モル%以上、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、優先的には45モル%以上であってよく、80モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、優先的には55モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)、及び上記滴定法等の分析によって求めることができる。
【0072】
環状オルガノポリシロキサンの含有量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.15質量%以上である。また、好ましくは、環状オルガノポリシロキサンの含有量は、発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。
【0073】
(A)成分全体の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、40質量%以上で含まれ、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上で含まれ得る。好適な実施形態において、(A)成分は、硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、90質量%以下で含まれ、好ましくは80質量%以下で含まれ、より好ましくは70質量%以下で含まれ得る。
【0074】
(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分は、ヒドロシリル化硬化反応により、硬化性シリコーン組成物の架橋剤として作用するものであり、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上の(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでもよい。
【0075】
(B)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、レジン状、環状、および三次元網状構造が例示される。(B)成分は、これらの分子構造を有する1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであるか、あるいはこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物であってもよい。好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物は、(B)成分として直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとレジン状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの両方を含む。
【0076】
(B)成分に含まれるケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(B)成分のケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、及び、炭素原子数6~20のアリール基、特にフェニル基から選択される。
【0077】
本発明の一実施形態において、(B)成分は、(B-1)成分として、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでもよい。(B-1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、
平均構造式(III):R SiO(R SiO2/2SiR
(式(III)中、Rは水素原子または同じか若しくは異なるアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRは水素原子であり、nは1~100である)で表され得る。
【0078】
上記式(III)において、Rのアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。Rは、好ましくは、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、または炭素原子数6~20のアリール基、特にフェニル基から選択される。
【0079】
上記式(III)において、mは、好ましくは1~50であり、より好ましくは1~20であり、さらに好ましくは1~10であり、特に好ましくは1~5である。
【0080】
本発明の好ましい実施形態において、(B-1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を含有する。(B-1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、M単位にケイ素原子結合水素原子を有し、D単位にはケイ素原子結合水素原子を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0081】
(B-1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、分子鎖側鎖にケイ素原子結合アリール基を含有する。(B-1)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端にアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。好ましい一実施形態において、(B-1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ArSiO2/2(ここで、Arはアリール基を表す)で表される、1つのケイ素原子に2つのアリール基が置換した構造単位を含む。
【0082】
本発明の一実施形態において、(B-1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンがアリール基を含む場合、ケイ素原子結合有機基全体に占めるアリール基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の10モル%以上、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の50モル%以下、好ましくは40モル%、より好ましくは30モル%以下であり得る。なお、アリール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0083】
(B)成分が(B-1)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上で含まれ、また、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下の量で含まれ得る。
【0084】
本発明の一実施形態において、(B)成分は、(B-2)成分として、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでもよい。(B-2)成分のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、以下の平均単位式(VI)で表され得る:
平均単位式(VI):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
式(VI)中、Rは各々独立に水素原子または同じか若しくは異なるアルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRは水素原子であり、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<0.9、0≦d<0.7、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、且つ、c+d>0である。
【0085】
上記式(VI)中のRのハロゲン置換または非置換のアルケニル基以外の一価炭化水素基及びXとしては、上記式(III)のR及びXと同じものが適用できる。
【0086】
上記式(VI)において、aは、好ましくは0.1≦a≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.3≦a≦0.8の範囲であり、さらに好ましくは0.5≦a≦0.7の範囲である。上記式(VI)において、bは、好ましくは0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、特に0≦b≦0.1の範囲である。上記式(VI)において、cは、好ましくは0.1≦c≦0.7の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.6の範囲であり、特に0.3≦c≦0.5の範囲である。上記式(VI)において、dは、好ましくは0≦d≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.3の範囲であり、特に0≦d≦0.1範囲である。上記式(VI)において、eは、好ましくは0≦e≦0.15の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、特に0≦e≦0.05の範囲である。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、(B-2)成分のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記式(VI)において、cは0よりも大きく、すなわち、T単位を含む。(B)成分のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、Q単位を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0088】
本発明の好ましい実施形態において、(B-2)成分のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子末端にケイ素原子結合水素原子を含有する。(B-2)成分のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、M単位にケイ素原子結合水素原子を有し、分子鎖側鎖(すなわち、D単位及びT単位)にケイ素原子結合水素原子を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0089】
(B-2)成分のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンがアリール基を含有する場合、その含有量(レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基のモル%)は、所望により設計可能であるが、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは13モル%以上、特に好ましくは16モル%以上であり、また、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、優先的には30モル%以下、特に好ましくは25モル%以下であり得る。
【0090】
また、本発明の一実施形態において、(B-2)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは固体から液体の状態でありうる。好ましくは液体であり、その粘度は、特に限定されないが、25℃、20/sにおいて、好ましくは1~100000mPa・sの範囲内であり、より好ましくは2~50000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは3~10000mPa・sの範囲内である。
【0091】
本発明の硬化性シリコーン組成物がレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上で含まれ、また、15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下の量で含まれ得る。
【0092】
(B)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、5質量%以上で含まれ、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上で含まれ得る。好適な実施形態において、(B)成分は、硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、40質量%以下で含まれ、好ましくは30質量%以下で含まれ、より好ましくは25質量%以下で含まれ得る。
【0093】
また、本発明の一実施形態において、(B)成分は、オルガノポリシロキサン成分中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合水素原子の比率が、硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が0.3モル以上、好ましくは0.5モル以上、より好ましくは0.7モル以上となる量で含まれ、また、例えば、硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が5モル以下、好ましくは3モル以下、より好ましくは2モル以下、さらに好ましくは1.5モル以下、優先的には1.2モル以下、特に好ましくは1.0モル以下となる量で含まれ得る。
【0094】
(C)シリカ-チタニア複合酸化物粒子
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、シリカ(SiO)成分と酸化チタン(TiO)成分から成る複合粒子であり、本発明の硬化性シリコーン組成物が所望の形状、特にドーム形状を形成するのに好適なチクソ性を付与し得る。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(C)シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含んでもよいし、2種類以上の(C)シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含んでもよい。
【0095】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の1次粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、10~500nmの範囲内であり、好ましくは10~200nmの範囲内である。本明細書において、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の平均粒子径は、例えば、SEM又はTEM等の画像解析法による体積換算粒子径分布により求めることができる。
【0096】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の比表面積は、特に限定されないが、好ましくは25m/g以上であり、より好ましくは50m/g以上であり、さらに好ましくは75m/g以上であり、また、通常、300m/g以下であり、好ましくは200m/g以下である。本明細書において、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の比表面積は、例えば、窒素吸着BET1点法により計測することができる。
【0097】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率は、特に限定されないが、例えば、25℃、波長589nm(ナトリウムのD線)での屈折率が1.40以上であり、好ましくは1.43以上であり、より好ましくは1.46以上である。また、通常1.61以下であり、好ましくは1.58以下であり、より好ましくは1.55以下である。なお、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率は、屈折率の異なる液体にシリカ-チタニア複合酸化物粒子を分散させ、589nmでの透過率が最も高い液体の屈折率と等しいものとして把握できる。
【0098】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、シリカ成分と酸化チタン成分の組成比は、特に限定されないが、例えば、チタン成分の含有量がチタニア(酸化チタン)換算で0.01モル%以上であることが好ましく、また、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。チタン成分の含有量は、例えば、蛍光X線分析で測定できる。
【0099】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の平均円形度は、特に限定されないが、通常0.80以上であり、0.85以上であることが好ましい。平均円形度は、例えばSEM又はTEM等の画像解析法により求めることができる。
【0100】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の結晶型は、特に限定されないが、非晶質であることが好ましい。また、一実施形態において、(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、結晶相の割合が5質量%以下であることが好ましい。シリカ-チタニア複合酸化物粒子の結晶相の割合は、例えばXRD測定より求めることができる。
【0101】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法は特に制限されず、当該技術分野において公知の方法により製造できる。例えば、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法としては、ゾル-ゲル法、火炎法等が挙げられる。ゾル-ゲル法においては、ケイ素及びチタンのアルコキサイド、水溶性高分子、酸及びチタンに対して40~200モル%の割合でアセチルアセトンを含有するpH2以下のゾル液を用意し、このゾル液に対してスピノーダル分解を伴う相分離を行い、球状のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の集合体から成るゲル体を生成し、当該該ゲル体を解砕し、乾燥することによってシリカ-チタニア複合酸化物粒子を製造できる。また、火炎法においては、ケイ素化合物とチタン化合物から成る原料をガス状で混合した状態で火炎中に供給して燃焼することによりシリカ-チタニア複合酸化物粒子を製造できる。
【0102】
本発明の(C)成分として用いられるシリカ-チタニア複合酸化物粒子の市販品の例としては、例えば、株式会社トクヤマ社製の製品名シルフィル(比表面積:100~200g/m、屈折率1.48、1.51、又は1.53)が挙げられる。
【0103】
(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、本発明の含有量は、硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、3質量%以上で含まれる。(C)成分のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、好ましくは、硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、4.5質量%以上で含まれ、より好ましくは6質量%以上で含まれ得る。また、好適な実施形態において、(C)成分は、硬化性シリコーン組成物の総質量に基づいて、30質量%以下で含まれ、好ましくは25質量%以下で含まれ、より好ましくは20質量%以下で含まれ得る。
【0104】
(D)硬化用触媒
(D)成分の硬化用触媒は、ヒドロシリル化反応用硬化触媒であり、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化を促進するための触媒である。このような(D)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒;さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、特に、白金系触媒であることが好ましい。
【0105】
(D)成分の配合量は、触媒量であり、より具体的には、(D)成分として白金系触媒を用いた場合、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、白金原子の量が好ましくは0.01ppm以上であり、より好ましくは0.1ppm以上であり、さらに好ましくは1ppm以上であり、また、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、白金原子の量が好ましくは20ppm以下であり、より好ましくは15ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下あり、特に好ましくは5ppm以下での量であり得る。
【0106】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、アセチレン化合物、有機リン化合物、ビニル基含有シロキサン化合物、(C)成分以外の無機充填材、例えば、粉砕石英、シリカ、酸化チタン、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、ケイ藻土等の無機充填材、こうした無機充填材の表面を有機ケイ素化合物により疎水処理してなる無機充填材、ヒドロシリル化反応抑制剤、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、(E-1)成分とは異なる粘着性付与剤、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、熱伝導性充填剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、蛍光体、溶剤等が挙げられる。こうした任意成分の添加量は、通常、本組成物全体の0.001~20質量%である。
【0107】
無機充填材のうち、シリカとしては、例えば、フュームドシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。また、シリカは、オルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物若しくはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等で表面疎水化処理されていてもよい。
【0108】
ヒドロシリル化反応抑制剤は、硬化性シリコーン組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分である。こうした硬化反応抑制剤としては、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。好ましくは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、アルキンアルコール時から選択され、特に好ましくは1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。反応抑制剤の添加量は、通常、本組成物全体の0.001~5質量%である。
【0109】
蛍光体としては、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示される。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色~黄色発光蛍光体、セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体、および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色~黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色~緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するYS系赤色発光蛍光体が例示される。フッ化物系蛍光体としては、KSF蛍光体(KSiF:Mn4+)などが挙げられる。
【0110】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、粘弾性測定装置を用いて、測定温度25℃、コーン直径40mm、コーン角度2°のコーンプレートにてシェア速度10/sで粘度測定を行った場合、好ましくは35Pa・s以下であり、より好ま
しくは30Pa・s以下である。
【0111】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、所定の形状、特にドーム状形状の形成に優れた好適なチクソ性を有する。例えば、硬化性シリコーン組成物を、粘弾性測定装置を用いて、測定温度25℃、コーン直径40mm、コーン角度2°のコーンプレートにてシェア速度を1/sおよび10/sで同方向に回転させ、粘度測定を行い、(1/s)/(10/s)での粘度比をチクソ指数とした場合、このチクソ指数の値は好ましくは3.0よりも大きく、より好ましくは3.2よりも大きく、さらに好ましくは3.3よりも大きく、特に好ましくは3.4よりも大きい。
【0112】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、硬化して良好な透明性を有する硬化物を形成できる。具体的には、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物は、波長400nm~波長700nmにおける光透過率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。なお、硬化性シリコーン組成物の硬化物の光透過率は、例えば、光路長1の硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。
【0113】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、高い屈折率を有する。例えば、本発明の硬化性シリコーン組成物の25℃、589nmにおける屈折率は、アッベ式屈折率計により測定して、好ましくは1.48より大きく、さらに好ましくは1.50以上である。
【0114】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、硬化して高硬度の硬化物を形成できる。好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物は、25℃におけるタイプDデュロメータ硬さがD50以上であることが好ましい。なお、このタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 6253-1997「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプDデュロメータによって求められる。
【0115】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機充填材等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0116】
[封止材、フィルム]
本発明は、本発明の硬化性シリコーン組成物を用いる半導体用の封止材にも関する。本発明の封止材の形状は、特に限定されないが、好ましくはドーム状またはシート状である。本発明の封止材またはフィルムにより封止される半導体は特に限定されず、例えば、SiC、GaN等の半導体、特にパワー半導体または発光ダイオードなどの光半導体が挙げられる。
【0117】
本発明の封止材によれば、優れたチクソ性を示す本発明の硬化性シリコーン組成物を用いているので、所望の形状、特にドーム状の封止材を形成可能であり、また、硬度、屈折率及び透明性に優れた封止材を提供できる。
【0118】
[光半導体素子]
本発明はまた、本発明の封止材を備える光半導体素子にも関する。光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0119】
発光ダイオード(LED)は、光半導体素子の上下左右から発光が起きるので、発光ダイオード(LED)を構成する部品は、光を吸収するものは好ましくなく、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。そのため、光半導体素子が搭載される基板も、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。こうした光半導体素子が搭載される基板としては、例えば、銀、金、及び銅等の導電性金属;アルミニウム、及びニッケル等の非導電性の金属;PPA、及びLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、及びシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、及び窒化アルミナ等のセラミックスが例示される。
【0120】
本発明の光半導体素子は、本発明の封止材により封止されているので、信頼性及び光取り出し効率に優れる。
【実施例0121】
本発明の硬化性シリコーン組成物を以下の実施例および比較例により詳細に説明する。
【0122】
各成分を表に示す組成(質量部)で混合し、硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、以下でMeはメチル基を表し、Viはビニル基を表し、Phはフェニル基を表し、Epは3-グリシドキシプロピル基を表す。また、表中にはオルガノポリシロキサン成分の構造を簡略化して示しており、括弧内はM、D、又はT単位中のMe以外の官能基を示している。また、H/Viは、オルガノポリシロキサン成分中のケイ素原子結合水素原子(H)とビニル基(Vi)とのモル比を示している。硬化用触媒のd成分の量は、白金原子の量(ppm)で示している。
【0123】
(成分a:アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)
成分a-1:平均単位式 (MeSiO1/2(ViMeSiO1/217(MeSiO3/239(PhSiO3/239で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-2:平均単位式 (MeSiO1/214(ViMeSiO1/211(MeSiO3/253(PhSiO3/222で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-3:平均構造式 (ViMeSiO1/2(PhSiO3/2)で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-4:平均構造式 ViMeSiO(PhSiO)20SiMeViで表される、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-5:平均構造式 ViMeSiO(MeSiO)60(PhSiO)30SiMeViで表される、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-6:平均構造式 (ViMeSiO1/225(PhSiO3/275で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-7:平均単位式 (ViMeSiO2/2で表される環状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-8:平均単位式 (ViMeSiO1/213(EpMeSiO2/224(PhSiO3/246(OMe)17で表される、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン
(成分b:オルガノハイドロジェンポリシロキサン)
成分b-1:平均構造式 HMeSiO(PhSiO)SiMeHで表される、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分b-2:平均単位式 (HMeSiO1/260(PhSiO3/240で表される、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(成分c:無機充填材)
成分c-1:シリカ-チタニア複合酸化物粒子(株式会社トクヤマ社製、製品名:シルフィル、比表面積:101g/m、屈折率1.51)
成分c-2:シリカ-チタニア複合酸化物粒子(株式会社トクヤマ社製、製品名:シルフィル、比表面積:101g/m、屈折率1.53)
成分c-3:シリカ-チタニア複合酸化物粒子(株式会社トクヤマ社製、製品名:シルフィル、比表面積:154g/m、屈折率1.53)
成分c’-1:フュームドシリカ
成分d:白金濃度が4.0質量%である白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体
成分e:1‐エチニル‐2‐シクロヘキサノール
【0124】
以下の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0125】
[粘度およびチクソ指数]
硬化性シリコーン組成物を、粘弾性測定装置(アントンパール社製MCR302)を用いて、コーン直径40mm、コーン角度2°のコーンプレートにてシェア速度を1/sおよび10/sで同方向に回転させ、粘度測定を行った。測定温度は25℃に統一した。チクソ指数を(1/s)/(10/s)での粘度比として算出した。粘度は10/sのシェア速度で測定した値である。
【0126】
[屈折率]
硬化性シリコーン組成物の硬化前の25℃における屈折率をアッベ式屈折率計により測定した。なお、測定には589nmの光源を用いた。
【0127】
[硬化物の硬度]
得られた硬化性シリコーン組成物を150℃で1時間硬化し、10mm厚の試験体を作成し、25℃における硬度をデュロメータD硬度計により測定した。
【0128】
[硬化物の光透過率]
得られた硬化性シリコーン組成物を2枚の透明なガラス板の間に入れ、150℃で1時間加熱して硬化させ、光路長1mmの試験体を作製した。この試験体の光透過率を、可視光(波長400nm~700nm)の範囲において任意の波長で測定できる自記分光光度計を用いて25℃で測定した。なお、表3中には、波長450nmにおける光透過率の値を記載した。
【0129】
【表1】
【0130】
以上の表1の結果から分かるとおり、本発明の硬化性シリコーン組成物は、優れたチクソ性を示すとともに、高い屈折率、硬度及び透明性を有する硬化物を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、優れたチクソ性を有し、所望の形状の硬化物を形成でき、また、得られた硬化物は、優れた屈折率、硬度と透明性を有するので、例えば、半導体パッケージを製造する際のドーム状またはシート状封止材用途に非常に有用である。