(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003482
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】栄養組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/21 20160101AFI20230110BHJP
A23L 33/22 20160101ALI20230110BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230110BHJP
A23L 33/26 20160101ALI20230110BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20230110BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20230110BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20230110BHJP
【FI】
A23L33/21
A23L33/22 ZNA
A23L33/135
A23L33/26
A23L29/244
A23L29/30
A23L33/125
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104584
(22)【出願日】2021-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和馬
(72)【発明者】
【氏名】小久保 英利
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
【Fターム(参考)】
4B018MD29
4B018MD33
4B018MD34
4B018ME11
4B018ME14
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH04
4B041LH08
4B041LK11
(57)【要約】
【課題】
本技術は、腸内環境を改善するための栄養組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本技術は、難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の100倍以下である栄養組成物を提供する。好ましくは、前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、
プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の100倍以下である、
栄養組成物。
【請求項2】
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である、
腸内細菌からのガス産生を抑制するために用いられる、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2倍以上且つ100倍以下である、請求項1又は2に記載の栄養組成物。
【請求項4】
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2.5倍以上且つ100倍以下である、請求項1又は2に記載の栄養組成物。
【請求項5】
ビフィドバクテリウム属細菌を増加させるために用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項6】
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量割合の合計が50質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項7】
前記栄養組成物は、前記プレバイオティクス成分としてラクチュロースをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項8】
前記プレバイオティクス成分に占める前記ラクチュロースの質量割合が5質量%以上である、請求項7に記載の栄養組成物。
【請求項9】
前記プレバイオティクス成分の1日当たり摂取量が2g~26gとなるように摂取されるものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項10】
脂質、糖質、又はこれらの両方をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【請求項11】
難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、
プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である、
腸内細菌からのガス産生を抑制するために用いられる栄養組成物。
【請求項12】
難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、
プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である、
栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、栄養組成物に関し、特にはプレバイオティクス成分を含む栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や病者では、ビフィズス菌数の低下などの腸内環境の悪化が生じることが知られている。腸内環境の悪化は、生体に様々な悪影響を及ぼすことが明らかになっている。腸内環境を整えるための方法の一つとして、食物繊維やオリゴ糖といったプレバイオティクスの摂取がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、「アルギン酸及び/又はその塩を含有する、酪酸菌用プレバイオティクス組成物。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腸内細菌、特には腸内有用細菌を効果的に増やすことができれば、腸内環境の改善のために有用である。腸内細菌を増加させるためにプレバイオティクスを用いることが考えられるが、プレバイオティクスにより腸内でガスの産生が多くなることがあり、ガスが過剰に産生されると腹部の不快感等の問題が生じる。そのため、プレバイオティクス摂取に伴うガス産生を抑制することができれば、さらに有用である。本技術はこれらの課題の少なくとも一つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の栄養組成物によって、腸内細菌の増殖を促進することができること見出した。また、本発明者らは、特定の栄養組成物によって、ガス産生を効果的に抑制することができることも見出した。また、本発明者らは、特定の栄養組成物によって、腸内細菌の増殖を促進し且つガス産生を効果的に抑制することができることも見出した。
【0007】
すなわち、本技術は以下を提供する。
[1]難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、
プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の100倍以下である、
栄養組成物。
[2]前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である、
腸内細菌からのガス産生を抑制するために用いられる、[1]に記載の栄養組成物。
[3]前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2倍以上且つ100倍以下である、[1]又は[2]に記載の栄養組成物。
[4]前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2.5倍以上且つ100倍以下である、[1]又は[2]に記載の栄養組成物。
[5]ビフィドバクテリウム属細菌を増加させるために用いられる、[1]~[4]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[6]前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量割合の合計が50質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[7]前記栄養組成物は、前記プレバイオティクス成分としてラクチュロースをさらに含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[8]前記プレバイオティクス成分に占める前記ラクチュロースの質量割合が5質量%以上である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[9]前記プレバイオティクス成分の1日当たり摂取量が3g~25gとなるように摂取されるものである、[1]~[8]のいずれか一項に記載の栄養組成物。
[10]脂質、糖質、又はこれらの両方をさらに含む、[1]~[9]のいずれか一つに記載の栄養組成物。
[11]難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、
プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である、
腸内細菌からのガス産生を抑制するために用いられる栄養組成物。
[12]難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、
プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である、
栄養組成物。
【発明の効果】
【0008】
本技術の栄養組成物は、腸内細菌の増殖を促進することができる。また、本技術の栄養組成物は、腸内細菌の増殖を促進し且つガス産生を効果的に抑制することができる。本技術の栄養組成物は、このような効果を有するので、腸内環境の改善のために非常に有用である。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ビフィドバクテリウム属細菌数の測定結果を示すグラフである。
【
図2】ビフィドバクテリウム属細菌数の測定結果を示すグラフである。
【
図4】ビフィドバクテリウム属細菌数の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
【0011】
本技術の栄養組成物は、プレバイオティクス成分を含み、前記プレバイオティクス成分は、難消化性デキストリンとイヌリンとを少なくとも含む。
【0012】
本技術の一実施態様において、前記栄養組成物は、難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、且つ、前記栄養組成物において、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の100倍以下である。これにより、腸内細菌の増殖を促進することができる。
本明細書内において「腸内細菌」は、好ましくは腸内有用細菌である。前記腸内有用細菌は、大腸に共生する有益な細菌であってよく、例えば善玉菌とも呼ばれる細菌であってよい。腸内有用細菌は、特にはビフィドバクテリウム属細菌であってよい。本技術の栄養組成物は、このような腸内細菌の増殖を促進するために用いられてよい。
【0013】
また、本技術の一実施態様において、前記栄養組成物は、腸内細菌からのガス産生を抑制するために用いられる。この実施態様において、好ましくは、前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である。この組成によって、腸内細菌を効果的に増殖させつつ且つガス産生を効果的に抑制することができる。
【0014】
特に好ましい実施態様において、前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2倍以上且つ100倍以下である。前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2倍以上であることにより、より好ましくは2.5倍以上であることにより、特に優れたガス産生抑制効果が発揮される。
【0015】
以下で、本技術の組成物について、より詳細に説明する。
【0016】
(1)プレバイオティクス成分
本技術の栄養組成物は、プレバイオティクス成分を含む。「プレバイオティクス」は、消化管上部で分解・吸収されず、大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となりそれらの増殖を促進し、大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持し、ヒトの健康の増進維持に役立つものを一般に意味する。前記プレバイオティクス成分によって、腸内環境を改善することができる。本技術の栄養組成物は、前記プレバイオティクス成分の1日当たり摂取量が例えば2~26g、好ましくは3g~25g、より好ましくは4g~24g、さらにより好ましくは5g~23gとなるように摂取されるものであってよい。このような1日当たりのプレバイオティクス成分摂取量によって、腸内環境が効果的に改善される。前記栄養組成物は、前記プレバイオティクス成分の体重1kg当たりの摂取量が、例えば0.03g~0.65g、好ましくは0.04g~0.63g、より好ましくは0.05g~0.60g、さらにより好ましくは0.06g~0.58gとなるように摂取されるものであってよい。
【0017】
本技術の栄養組成物は、前記プレバイオティクス成分として、難消化性デキストリン及びイヌリンを少なくとも含む。これら2成分の組合せは、腸内細菌、特には腸内有用細菌、より特にはビフィドバクテリウム属細菌を増加させるために好ましい。例えば、本技術の栄養組成物は、ビフィドバクテリウム属細菌を増加させるために用いられてよい。当該腸内細菌の増加は、腸内環境の改善のために非常に有用である。また、これら2成分の組合せは、プレバイオティクスによる腸内細菌のガス産生抑制のためにも有用である。以下(1-1)及び(1-2)において、これらの成分について説明する。
【0018】
好ましい実施態様において、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の100倍以下、好ましくは90倍以下であり、より好ましくは80倍以下、75倍以下、70倍以下、65倍以下、60倍以下、55倍以下、50倍以下、45倍以下、40倍以下、35倍以下、30倍以下、25倍以下、20倍以下、15倍以下、又は10倍以下であってよい。
より好ましい実施態様において、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、8倍以下、7倍以下、6倍以下、5倍以下、又は4倍以下であってよい。
このような比率で前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンが栄養組成物に含まれることは、腸内細菌、特にはビフィドバクテリウム属細菌を増加させるために特に好ましい
【0019】
好ましい実施態様において、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.1倍以上であり、好ましくは0.2倍以上、0.22倍以上、0.24倍以上、0.26倍以上、0.28倍以上、0.3倍以上、0.31倍以上、0.32倍以上、0.33倍以上、0.34倍以上、0.35倍以上、0.36倍以上、0.37倍以上、0.38倍以上、又は0.39倍以上であり、例えば0.4倍以上、0.5倍以上、0.6倍以上、0.7倍以上、0.8倍以上、0.9倍以上、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、又は2.0倍以上であってもよい。
より好ましい実施態様において、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、例えば1.2倍以上又は1.4倍以上であってよく、特に好ましくは2倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上、2.5倍以上、2.6倍以上、2.7倍以上、又は2.8倍以上であってよい。
このような比率で前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンが栄養組成物に含まれることによって、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を特に効果的に抑制することができる。
【0020】
プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合及び前記イヌリンの質量割合の比率の数値範囲は、上記で挙げられた上限値のいずれか及び下限値のいずれかの組合せにより構成されてよく、例えば0.2倍以上100倍以下、好ましくは0.3倍以上100倍以下、0.4倍以上100倍以下、0.5倍以上100倍以下、0.6倍以上100倍以下、0.7倍以上100倍以下、0.8倍以上100倍以下、0.9倍以上100倍以下、1.0倍以上100倍以下、より好ましくは1.4倍以上100倍以下、特に好ましくは2倍以上100倍以下、さらに特に好ましくは2.5倍以上100倍以下、2.5倍以上50倍以下、2.5倍以上20倍以下、2.5倍以上10倍以下であってよい。このような数値範囲によって、腸内細菌を増加させつつ、腸内細菌からのガス産生を抑制することができる。腸内細菌増加は、一般的にはガス産生増加をもたらすと考えられるところ、前記2つの成分をこのような数値範囲で含むことによって、腸内細菌は増加するものの、ガス産生が抑制されるという効果が奏される。
【0021】
本技術の栄養組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量割合の合計が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、61質量%以上、62質量%以上、63質量%以上、64質量%以上、65質量%以上、66質量%以上、67質量%以上、68質量%以上、69質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、71質量%以上、72質量%以上、73質量%以上、74質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上であってよい。前記割合がこのような数値範囲内にあることによって、腸内細菌の増殖をより確実に促進し且つプレバイオティクスによる腸内細菌のガス産生をより確実に抑制することができる。
本技術の栄養組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量割合の合計は、例えば100質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下であってよい。
【0022】
好ましい実施態様において、本技術の栄養組成物は、前記プレバイオティクス成分として、さらにラクチュロースを含む。本技術の栄養組成物がラクチュロースを含むことは、腸内細菌、特にはビフィドバクテリウム属細菌をより確実に増加させるために好ましい。すなわち、好ましい実施態様において、本技術の栄養組成物は、難消化性デキストリン、イヌリン、及びラクチュロースを含んでよい。ラクチュロースについて、以下(1-3)において説明する。
【0023】
本技術の栄養組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記ラクチュロース及び前記イヌリンの合計質量が占める割合は、好ましくは10質量%以上、12質量%以上、又は14質量%以上、より好ましくは16質量%以上、18質量%以上、又は20質量%以上、さらにより好ましくは25質量%以上、28質量%以上、又は30質量%以上であってよい。前記割合がこのような数値範囲内にあることによって、腸内細菌をより確実に増加させることができる。
前記プレバイオティクス成分のうち、前記ラクチュロース及び前記イヌリンの合計質量が占める割合は、好ましくは90質量%以下、89質量%以下、88質量%以下、87質量%以下、86質量%以下、85質量%以下、84質量%以下、83質量%以下、82質量%以下、81質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下又は50質量%以下であり、さらにより好ましくは45質量%以下又は40質量%以下であってよい。前記割合がこのような数値範囲内にあることによって、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生をより確実に抑制することができる。
【0024】
(1-1)難消化性デキストリン
本技術の栄養組成物は難消化性デキストリンを含む。前記難消化性デキストリンは、本技術の栄養組成物に含まれるプレバイオティクス成分の一つである。
【0025】
難消化性デキストリンは、澱粉から得られる水溶性の食物繊維の一種である。本明細書内において、難消化性デキストリンの「難消化性」とは、ヒトの消化酵素で消化されにくいことをいう。難消化性デキストリンは、例えば、植物由来の澱粉を加酸(鉱酸を添加)及び/又は加熱して得た焙焼デキストリンを、必要に応じてαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼで酵素処理した後、必要に応じて脱塩及び/又は脱色して得られた水溶性食物繊維であってよい。前記植物由来の澱粉は、例えばとうもろこし、小麦、大麦、米、豆類、イモ類(馬鈴薯、甘藷)、又はタピオカに由来する澱粉であってよい。
【0026】
前記難消化性デキストリンには、平成11年4月26日付衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)で測定される難消化性成分を含むデキストリンが包含されてよく、好ましくは85~95重量%の難消化性成分を含むデキストリンが包含されてよい。前記難消化性デキストリンには、難消化性デキストリンに水素添加することによって製造される還元難消化性デキストリンも包含される。前記難消化性デキストリンは、粉末、細粒、顆粒などの形態で市販されており、いずれの形態のものでも本技術において使用することができる。
【0027】
また、難消化性デキストリンは、高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法(AOAC2001.03))にて定量することができる。定量方法については、例えば特開2001-252064号公報を参照されたい。
【0028】
前記難消化性デキストリンとして、商品名「パインファイバー」、「ファイバーソル2」(松谷化学工業(株)製)、「オクノス食物繊維」(ホリカフーズ(株)製)、「ニュートリオースFB06」(ロケットジャパン(株)製)などの、澱粉又は小麦粉を加熱及び酵素処理して得られる難消化性の食物繊維が用いられてよい。
【0029】
前記難消化性デキストリンの数平均分子量は、好ましくは500~10000、より好ましくは500~5000、さらにより好ましくは1000~4000、最も好ましくは1000~3000である。例えば、数平均分子量が約2000である難消化性デキストリンが本技術の栄養組成物に含まれてよい。
【0030】
本技術の栄養組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記難消化性デキストリンの質量が占める割合は、好ましくは90質量%以下、89質量%以下、88質量%以下、87質量%以下、86質量%以下、85質量%以下、84質量%以下、83質量%以下、82質量%以下、又は81質量%以下、より好ましくは80質量%以下、79質量%以下、78質量%以下、77質量%以下、又は76質量%以下、さらにより好ましくは75質量%以下、74質量%以下、73質量%以下、72質量%以下、71質量%以下、70質量%以下、69質量%以下、68質量%以下、67質量%以下、66質量%以下、又は65質量%以下であってよい。前記割合がこのような数値範囲内にあることは、腸内細菌を増加させることに貢献する。
前記プレバイオティクス成分のうち前記難消化性デキストリンが占める質量割合は、好ましくは5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、又は14質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、19質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってよく、より好ましくは45質量%以上、46質量%以上、47質量%以上、48質量%以上、49質量%以上、50質量%以上、51質量%以上、52質量%以上、53質量%以上、54質量%以上、55質量%以上、56質量%以上、57質量%以上、58質量%以上、59質量%以上、又は60質量%以上であってよい。前記割合がこのような数値範囲内にあることは、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を抑制するために特に貢献する。
【0031】
(1-2)イヌリン
本技術の栄養組成物はイヌリンを含む。前記イヌリンは、本技術の栄養組成物に含まれるプレバイオティクス成分の一つである。
【0032】
前記イヌリンは、例えばスクロースのフルクトース残基にフルクトース分子がβ(2-1)結合で直鎖状に結合した多糖類である。前記イヌリンの重合度は、好ましくは5~40、より好ましくは7~20であってよい。
前記イヌリンとしては、市販のイヌリンが用いられてよい。前記イヌリンの例として、例えばFujiFF(フジ日本精糖株式会社製)及びイヌリア(帝人株式会社製)などが挙げられる。
【0033】
本技術の栄養組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記イヌリンの質量が占める割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上、12質量%以上、又は15質量%以上である。前記割合がこのような数値範囲内にあることは、腸内細菌を増加させることに貢献する。
前記割合は、好ましくは95質量%以下、90質量%以下、さらにより好ましくは85質量%以下、80質量%以下、79質量%以下、78質量%以下、77質量%以下、76質量%以下、75質量%以下、74質量%以下、73質量%以下、72質量%以下、71質量%以下、70質量%以下、69質量%以下、68質量%以下、67質量%以下、66質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってよく、より好ましくは55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってよく、特に好ましくは30質量%以下である。前記割合がこのような数値範囲内にあることは、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を抑制するために特に貢献する。
【0034】
(1-3)ラクチュロース
本技術の栄養組成物は、さらにラクチュロースを含んでもよい。ラクチュロースは、フラクトースとガラクトースからなる二糖類である。ラクチュロースは、無水物であってもよく又は水和物であってもよい。
【0035】
ラクチュロースは、公知の方法により製造することができる。例えば、市販乳糖の10%水溶液に、水酸化ナトリウムを添加し、該混合液を70℃の温度で30分間加熱し、冷却し、のち冷却した溶液をイオン交換樹脂により精製し、濃縮し、冷却し、結晶化し、未反応の乳糖を除去し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロースを約79%含有する。)のラクチュロース水溶液を得る。この水溶液をイオン交換樹脂カラムに通液し、ラクチュロースを含む画分を採取し、濃縮し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロース約86%を含有する。)の精製ラクチュロース水溶液を得る(特開平3-169888号公報に記載の方法)。
さらに、前記の方法により得たラクチュロース水溶液(シロップ)を固形分含量約72%に濃縮し、この濃縮液を15℃に冷却し、ラクチュロース三水和物結晶を種晶として添加し、攪拌しながら7日間を要して5℃まで徐々に冷却し、結晶を生成させ、10日後に上澄み液の固形分含量が約61%に低下した結晶を含む液から濾布式遠心分離器により結晶を分離し、5℃の冷水で洗浄し、乾燥させ、純度95%以上のラクチュロースの結晶を得ることができる(特開平6-228179号公報に記載の方法)。
また、ラクチュロースは、市販されているものを使用することもできる。
【0036】
本技術の栄養組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記ラクチュロースの質量が占める割合は、好ましくは1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、より好ましくは5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、又は13質量%以上であってよい。
前記プレバイオティクス成分のうち前記ラクチュロースが占める質量割合は、好ましくは40質量%以下、35質量%以下、34質量%以下、33質量%以下、32質量%以下、31質量%以下、30質量%以下、29質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、又は26質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらにより好ましくは24質量%以下、23質量%以下、22質量%以下、21質量%以下、20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、又は16質量%以下であってよい。
前記割合がこのような数値範囲内にあることによって、腸内細菌をより確実に増加させることができ、且つ/又は、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生をより確実に抑制することができる。
【0037】
(1-4)他のプレバイオティクス成分
【0038】
本技術の一実施態様において、前記栄養組成物は、プレバイオティクス成分として、難消化性デキストリン、イヌリン、及びラクチュロース以外の他のプレバイオティクス成分をさらに含んでもよい。前記他のプレバイオティクス成分として、例えばガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸、ポリデキストロース、グアーガム分解物、アルギン酸塩、ペクチン、イソマルトデキストリン、及び大麦-βグルカンを挙げることができ、これらのうち1つ又は2以上の組合せが、本技術の栄養組成物に含まれてよい。
本技術の他の実施態様において、前記栄養組成物は、プレバイオティクス成分として、難消化性デキストリン及びイヌリンのみを含んでよく、又は、難消化性デキストリン、イヌリン、及びラクチュロースのみを含んでもよい。すなわち、この実施態様において、他のプレバイオティクス成分は、前記栄養組成物に含まれない。
【0039】
(2)他の成分
本技術の栄養組成物は、プレバイオティクス成分以外の他の成分を含んでよい。前記他の成分は、例えば、たんぱく質、脂質、糖質、アミノ酸類、ペプチド、ビタミン類、およびミネラルを挙げることができる。例えば、前記栄養組成物は、脂質、糖質、又はこれらの両方をさらに含んでよい。前記他の成分は、腸内有用細菌であってよく、例えばビフィズス菌、乳酸菌、又はこれらの組合せであってもよい。本技術の栄養組成物は、これらの成分のうちの1つ又は2以上の組合せを含んでよく、例えばこれらすべてを含んでもよい。これらの成分について以下で説明する。
【0040】
(たんぱく質)
本技術の栄養組成物は、たんぱく質をさらに含んでよい。当該たんぱく質は、乳たんぱく質、卵たんぱく質、コラーゲン等の動物性たんぱく質、大豆たんぱく質、米たんぱく質、小麦たんぱく質等の植物性たんぱく質等、食品に用いられるものであれば特に制限されない。前記たんぱく質は、特に好ましくは乳たんぱく質である。乳たんぱく質として、カゼイン分解物、カゼインナトリウムやカゼインカルシウム等のカゼイネート、乳たんぱく質濃縮物(MPC)、ホエイたんぱく質濃縮物(WPC)、ホエイたんぱく質分解物等を用いることができる。また、上記分解物に含まれるペプチドが、本技術の栄養組成物に含まれてもよい。当該ペプチドとして、例えばトリペプチドMKPを挙げることができる。トリペプチドMKPは、メチオニン(M)、リジン(K)、及びプロリン(P)の三つのアミノ酸が結合したペプチドである。
【0041】
本技術の栄養組成物は、前記たんぱく質の1日当たり投与量が10g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が15g以上、又は20g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば80g以下、70g以下、又は60g以下であってよい。
また、本技術の栄養組成物は、前記乳たんぱく質の1日当たり投与量が10g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が15g以上、又は20g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば80g以下、70g以下、又は60g以下であってよい。
【0042】
前記たんぱく質の含有量は、本技術の栄養組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1g以上、1.5g以上、又は2g以上であってよい。また、前記たんぱく質の含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば8g以下、7g以下、又は6g以下であってよい。
【0043】
(脂質)
本技術の栄養組成物は、脂質をさらに含んでよい。当該脂質は、大豆油、菜種油、コーン油等の植物油、魚油等の動物油等、食品に用いられる油脂を特に制限なく用いることができる。好ましくは、前記脂質は、植物油を含む。
本技術の好ましい一実施態様において、前記脂質は中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下MCTともいう)を含む。MCTは、長鎖脂肪酸トリグリセリドと比較して消化吸収が良く、エネルギー源になりやすい。そのため、MCTは、疾病によりグルコースを利用しにくい人又は食事摂取量が少ない人のエネルギー源となり、エネルギー効率改善の観点から有用である。
また、本技術の他の好ましい実施態様において、前記栄養組成物は脂質を含まなくてもよい。
【0044】
本技術の栄養組成物は、前記脂質の1日当たり投与量が10g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が12g以上、又14g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば50g以下、45g以下、又は40g以下であってよい。
また、本技術の栄養組成物は、前記MCTの1日当たり投与量が1g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が3g以上、又は5g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば30g以下、25g以下、又は20g以下であってよい。
【0045】
前記脂質の含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1g以上、1.2g以上、又1.4g以上であってよい。また、前記脂質の含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば5g以下、4.5g以下、又は4g以下であってよい。
【0046】
(糖質)
本技術の栄養組成物は、糖質をさらに含んでよい。なお、本明細書内において、前記糖質は、プレバイオティクス成分以外でない糖質を意味する。前記糖質としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類等、食品に用いられる糖質を特に制限なく用いることができる。前記糖質は、好ましくは多糖類を含み、特に好ましくはデキストリンを含む。
【0047】
本技術の組成物は、前記糖質の1日当たり投与量が30g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が30g以上、又は50g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば150g以下、120g以下、又は100g以下であってよい。
【0048】
前記糖質の合計含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば8g以上、10g以上、又12g以上であってよい。また、前記糖質の合計含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば25g以下、20g以下、又は15g以下であってよい。
【0049】
(アミノ酸類)
本技術の栄養組成物は、アミノ酸類をさらに含んでよい。前記アミノ酸類は、例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、アラニン、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、及びトリプトファンから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。
【0050】
本技術の栄養組成物は、前記アミノ酸類の1日当たり合計投与量が5g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり合計投与量が7g以上、又9g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり合計投与量の上限値については、例えば40g以下、35g以下、又は30g以下であってよい。
【0051】
前記アミノ酸類の合計含有量は、本技術の栄養組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1g以上、1.2g以上、又1.4g以上であってよい。また、前記アミノ酸類の合計含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば4g以下、3.5g以下、又は3g以下であってよい。
【0052】
(ビタミン類)
【0053】
本技術の栄養組成物は、ビタミン類をさらに含んでよい。当該ビタミン類は、例えばビタミンA、ビタミンB(例えばビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸など)、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEのうちのいずれか1つ以上を含んでよい。一つの実施態様において、本技術の栄養組成物は、ビタミンA、B、C、D、及びEを含んでよい。
【0054】
本技術の栄養組成物は、前記ビタミンBの1日当たり投与量が1mg以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が2mg以上、又は3mg以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば10mg以下、9mg以下、又は8mg以下であってよい。
本技術の栄養組成物は、前記ビタミンCの1日当たり投与量が50mg以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が100mg以上、又は300mg以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば2000mg以下、1900mg以下、又は1800mg以下であってよい。
本技術の栄養組成物は、前記ビタミンEの1日当たり投与量が8mg以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が20mg以上、又は30mg以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば200mg以下、190mg以下、又は180mg以下であってよい。
【0055】
前記ビタミンBの含有量は、本技術の栄養組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば0.1mg以上、0.2mg以上、又は0.3mg以上であってよい。また、前記ビタミンB1の含有量は、当該栄養組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1mg以下、0.9mg以下、又は0.8mg以下であってよい。
前記ビタミンCの含有量は、本技術の栄養組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば5mg以上、10mg以上、又は30mg以上であってよい。また、前記ビタミンCの含有量は、当該栄養組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば200mg以下、190mg以下、又は180mg以下であってよい。
前記ビタミンEの含有量は、本技術の栄養組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1mg以上、2mg以上、又は3mg以上であってよい。また、前記ビタミンEの含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば20mg以下、19mg以下、又は18mg以下であってよい。
【0056】
(ミネラル)
本技術の栄養組成物は、ミネラルをさらに含んでよい。ミネラルの例として、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、及びモリブデンを挙げることができる。本技術の栄養組成物は、これらミネラルのうちの1つ以上を含んでよい。
【0057】
本技術の栄養組成物は、例えば水、甘味料、果汁、野菜汁、香料、着色料、及び酸味料などの成分を含みうる。これらの成分の種類及び含有割合は、所望の物性、形状、味、又は外観に応じて当業者により適宜選択されてよい。
なお、本技術の栄養組成物は、サラシアエキスを含まないものであってよい。
【0058】
(3)栄養組成物の物性
本技術の栄養組成物は、液状、ペースト状、ゲル状(ゼリー状)、粉末状又は固形状であってよく、好ましくは液状又はゲル状である。
【0059】
本技術の栄養組成物は、好ましくは流動性を有する。例えば、流動性を有する液状又はゲル状の組成物であってよい。例えば、本技術の栄養組成物は流動食であってよい。
【0060】
本技術の栄養組成物は、液状であることによって、例えば高齢者が摂取しやすくなり、さらに、経口的に又は経管的に対象に投与することができる。本技術の栄養組成物が液状である場合における当該組成物の各種物性は例えば以下のとおりに設定されてよい。
【0061】
本技術の栄養組成物の浸透圧は、例えば100mOsm/L~1000mOsm/L、好ましくは200mOsm/L~800mOsm/L、より好ましくは300mOsm/L~700mOsm/Lであってよい。当該浸透圧は、浸透圧計により測定される。当該浸透圧系は、アドバンスド・インストルメンツ社のオズモメーター モデル3250である。
【0062】
本技術の栄養組成物の20℃におけるpHは、例えば3.0~8.0、好ましくは3.5~7.5、より好ましくは3.5~7.0であってよい。
【0063】
本技術の栄養組成物の20℃における比重は、例えば0.8~1.5、好ましくは0.9~1.4、より好ましくは1.0~1.2であってよい。当該比重は、ガラス製の標準比重計を用いて測定される。
【0064】
本技術の栄養組成物の20℃における粘度は、例えば1mPa・s~30000mPa・s、好ましくは5mPa・s~1800mPa・sであってよい。本技術の栄養組成物が液状である場合、前記粘度は、例えば10mPa・s~100mPa・sであってよい。本技術の栄養組成物がゲル状である場合、前記粘度は、例えば1000mPa・s~3000mPa・sであってよい。当該粘度は、粘度計を用いて測定される。当該粘度計は、VISCOMETER TVB-10である。
【0065】
本技術の一つの実施態様において、本技術の栄養組成物1ml当たりのエネルギー量は0.5kcal以上、0.6kcal以上、0.7kcal以上、0.8kcal以上、又は0.9kcal以上であってよい。このように、組成物1ml当たりのエネルギー量が高いことによって、効率的なエネルギー摂取が可能となる。この実施態様において、本技術の組成物1ml当たりのエネルギー量は、例えば5kcal以下、4kcal以下、3kcal以下、又は2kcal以下であってよい。例えば、本技術の組成物は、1ml当たりのエネルギー量が1.3kcal~1.7kcalであってよい。
【0066】
(4)栄養組成物の使用方法
本技術の栄養組成物は、ヒトに栄養を補給するために用いられてよい。本技術の栄養組成物は、ヒトに栄養を補給するため及び当該ヒトの腸内環境を改善するために用いられてよい。より具体的には、本技術の栄養組成物は、ヒトに栄養を補給するため及び当該ヒトの腸内細菌(特にはビフィドバクテリウム属細菌)を増加させるため(且つプレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を抑制する)ために用いられてよい。
【0067】
本技術の栄養組成物は、例えば経口的に又は経管的に摂取されてよい。後者の場合、例えば胃ろうを介して、本技術の栄養組成物はヒトに投与される。
【0068】
本技術の一つの実施態様において、前記栄養組成物は、当該栄養組成物によって1日当たり例えば100kcal~1000kcal、好ましくは150kcal~800kcal、好ましくは200kcal~600kcalのエネルギー量が投与対象に与えられるように投与されてよい。当該栄養組成物によって1回当たり100~300kcalがヒトに投与されてよく、当該投与が1日当たり1回~5回、特には1回~3回行われてよい。
【0069】
(5)栄養組成物の製造方法
本技術の栄養組成物の製造方法は、難消化性デキストリン及びイヌリン(並びにラクチュロース)を混合する混合工程を含む。当該混合工程において、これらの成分は、任意の媒体、例えば液体媒体中で行われてよい。当該混合工程において、本技術の栄養組成物に含まれる前記他の成分がさらに混合されてよい。当該混合工程において、最終製品としての組成を有する栄養組成物が形成されてよい。
【0070】
前記製造方法は、得られた栄養組成物を殺菌する殺菌工程を含んでよい。当該殺菌は、高温短時間殺菌(HTST)、UHT(超高温殺菌)、加圧加熱殺菌など当技術で既知のいずれかの手法により行われてよい。
【0071】
前記製造方法は、前記混合工程において得られた栄養組成物を前記殺菌工程の前又は後に容器に充填する充填工程をさらに含んでよい。殺菌工程の後に行う場合、当該充填工程は、無菌的に行われてよい。当該容器は、例えば紙パック、プラスチックバッグ、プラスチックボトル、プラスチックカップ、アルミパウチ、金属缶、又はガラス容器であってよい。
【0072】
(6)飲食品組成物
本技術の栄養組成物は、飲食品組成物として用いられてよい。本技術における飲食品組成物は、例えば液状又はゲル状の形態を有していてよい。
【0073】
本技術の飲食品組成物は、腸内環境改善用などの用途が表示された飲食品として提供又は販売されることが可能である。また、本技術の飲食品組成物は、摂取対象として例えば「腸内環境を良好にしたい方」、「ビフィズス菌を増やしたい方」、「お腹の張りが気になる方」、「腸の調子を整えたい方」、「便通改善したい方」、又は「腸内のガス発生を抑制したい方」などと表示して提供及び/又は販売されることが可能である。「表示」行為には、需要者に対して本技術の組成物の用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起及び/又は類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び/又は媒体の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0074】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0075】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0076】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。
【0077】
(7)医薬組成物
本技術の栄養組成物は、医薬組成物として用いられてもよい。本技術における医薬組成物は、例えば液状又はゲル状の形態を有していてよい。
【0078】
本技術に係る栄養組成物を医薬組成物として利用する場合、当該医薬組成物は、経口投与及び非経口投与のいずれで投与されてもよく、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、所望の剤形(液剤又はペースト)に製剤化されてよい。また、非経口投与の場合、例えば胃ろうを介して本技術の栄養組成物を投与することができ、例えば経腸的に投与されてよい。
【0079】
また、製剤化に際しては、本技術に係る医薬組成物には、通常製剤化に用いられている添加剤(例えばpH調整剤、着色剤、矯味剤等)の成分が含まれてよい。また、本技術の効果を損なわない限り、本技術に係る医薬組成物には、公知の又は将来的に見出される急性期患者向けの状態を改善するための成分が含まれてもよい。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
【0080】
(8)栄養組成物の栄養組成の例
本技術の栄養組成物が有する、100kcal当たりの栄養組成の例を以下に記載する。
【0081】
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、たんぱく質を1g~8g、好ましくは2g~5g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、脂質を1g~10g、好ましくは3g~6g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、炭水化物を8g~20g、好ましくは10g~18g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、糖質を5g~16g、好ましくは8g~13g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、食物繊維を0.5g~8g、好ましくは1g~5g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、灰分を0.1g~1.0g、好ましくは0.3g~0.7g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、水分を10g~80g、好ましくは30g~60g含んでよい。
【0082】
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ナトリウムを例えば30mg~80mg含み、好ましくは40mg~70mg含んでよい。
本技術の栄養組成物の食塩相当量は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、例えば0.05g~0.4gであってよく、好ましくは0.1g~0.2gであってよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、カリウムを例えば50mg~130mg含み、好ましくは80mg~100mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、塩素を例えば30mg~90mg含み、好ましくは50mg~70mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、カルシウムを例えば20mg~120mg含み、好ましくは60mg~100mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、マグネシウムを例えば5mg~30mg含み、好ましくは10mg~20mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、リンを例えば10mg~90mg含み、好ましくは30mg~70mg含んでよい。
【0083】
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、鉄を例えば0.1mg~1.2mg含み、好ましくは0.3mg~0.9mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、亜鉛を例えば0.5mg~4.0mg含み、好ましくは0.7mg~3.5mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、銅を例えば0.03mg~0.15mg含み、好ましくは0.05mg~0.10mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、マンガンを例えば0.05mg~0.20mg含み、好ましくは0.10mg~0.13mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ヨウ素を例えば2μg~20μg含み、好ましくは5μg~15μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、セレンを例えば0.5μg~10μg含み、好ましくは1μg~4μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、クロムを例えば0.5μg~10μg含み、好ましくは1μg~4μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、モリブデンを例えば0.5μg~8μg含み、好ましくは1μg~3μg含んでよい。
【0084】
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンAを例えば30μgRAE~130μgRAE含み、好ましくは60μgRAE~100μgRAE含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンDを例えば0.1μg~10μg含み、好ましくは0.5μg~6μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンEを例えば1mg~10mg含み、好ましくは3mg~7mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンKを例えば2μg~20μg含み、好ましくは4μg~8μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB1を例えば0.1mg~1.0mg含み、好ましくは0.2mg~0.8mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB2を例えば0.05mg~0.5mg含み、好ましくは0.1mg~0.4mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ナイアシンを例えば1mgNE~8mgNE含み、好ましくは2.5mgNE~4.5mgNE含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB6を例えば0.1mg~0.8mg含み、好ましくは0.2mg~0.5mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB12を例えば0.5μg~2.0μg含み、好ましくは1.0μg~1.5μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、葉酸を例えば10μg~100μg含み、好ましくは50μg~80μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、パントテン酸を例えば0.5mg~3mg含み、好ましくは1mg~2mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビオチンを例えば1μg~10μg含み、好ましくは3μg~7μg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンCを例えば10mg~100mg含み、好ましくは30mg~70mg含んでよい。
【0085】
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、MCTを例えば0.5g~5g含み、好ましくは1g~3g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、EPAを例えば10mg~100mg含み、好ましくは20mg~50mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、DHAを例えば5mg~50mg含み、好ましくは10mg~40mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ラクチュロースを例えば0.1g~1.0g含み、好ましくは0.3g~0.7g含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、カルニチンを例えば5mg~50mg含み、好ましくは10mg~20mg含んでよい。
本技術の栄養組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、乳酸菌を例えば5億個~200億個含み、好ましくは10億個~100億個含んでよい。
【0086】
なお、本技術は、以下の方法及び物も提供する。
[1]
難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)の、プレバイオティクスによる腸内細菌からのガス産生の抑制のための使用。
難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)の、腸内細菌を増加させるための使用。
難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)の、プレバイオティクスによる腸内細菌からのガス産生の抑制のため及び腸内細菌を増加させるための使用。
[2]
プレバイオティクスによる腸内細菌からのガス産生の抑制のための、難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)の組合せ。
腸内細菌を増加させるための、難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)の組合せ。
プレバイオティクスによる腸内細菌からのガス産生の抑制のため及び腸内細菌を増加させるための、難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)の組合せ。
[3]
難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)を投与することを含む、プレバイオティクスによる腸内細菌からのガス産生を抑制する方法。
難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)を投与することを含む、腸内細菌を増加させる方法。
難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)を投与することを含む、プレバイオティクスによる腸内細菌からのガス産生を抑制し且つ腸内細菌を増加させる方法。
【0087】
また、本技術は、難消化性デキストリン及びイヌリン(並びに任意的にラクチュロース)を含む、摂取によるガス産生を抑制しながらも、腸内細菌(特には腸内有用細菌)を増加させるために用いられるプレバイオティクス材料も提供する。前記プレバイオティクス材料の組成は、上記(1)において説明したとおりであってよい。当該プレバイオティクス材料は、例えば栄養組成物、飲食品組成物、又は医薬組成物に添加されてよい。添加される組成物を摂取したヒトの腸内細菌の増加を促進するため、及び/又は、当該プレバイオティクスによる腸内細菌のガス産生を抑制するために用いられてよい。
【0088】
また、本技術は、腸内有用細菌増加方法も提供し、特にはガス産生の少ない腸内有用細菌増加の方法も提供する。前記方法は、プレバイオティクス成分を腸内有用細菌に供給することを含む。前記プレバイオティクス成分は、上記で述べたとおり、難消化性デキストリンとイヌリンとを少なくとも含む。前記プレバイオティクス成分の組成は、上記(1)において説明したとおりであってよく、例えば前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の100倍以下であり、好ましくは前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である。
【0089】
前記プレバイオティクス成分は、例えば上記で述べた栄養組成物に含まれた状態で、前記腸内有用細菌に供給されてよい。また、前記腸内有用細菌は、例えばビフィドバクテリウム属細菌である。前記腸内有用細菌は、ヒトの腸内に存在するものであってよく、この場合において、前記プレバイオティクス成分は、当該ヒトに摂取されることによって、前記腸内有用細菌に供給される。
【0090】
以下で実施例を参照して本技術をより詳しく説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例0091】
(9)実施例
【0092】
(9-1)培養実験1
以下表1に示される組成を有する複数種のプレバイオティクス試料(試料1~7)及び水のみからなる試料(試料8)を用意した。試料1~7それぞれを、プレバイオティクス濃度が10%(w/v)になるように脱イオン水に溶解して、各試料の10%溶解液を調製した。糖を含有しないYCFA培地を作成し、pHコントロール可能な培養装置Bio Jr.8(株式会社バイオット社製BJR-25NA1S-8M)の8つのベッセルそれぞれに、当該YCFA培地を90mLずつ入れ、115℃20分間のオートクレーブ処理にかけた。その後、各ベッセル中のYCFA培地に、フィルター滅菌処理したビタミン液とシステイン液を、無菌的に添加した。その後、各試料の10%溶解液10mL又は試料8(水のみ)10mLを各ベッセル中のYCFA培地に添加し、被験試料の終濃度が1%(w/v)となる培養液を調製した。その後、各ベッセル中の培養液を、窒素置換を一晩行うことで嫌気状態とし、生理食塩水で10%(w/v)に予め調整しておいた糞便溶液100μLを添加し、pHが6以下にならないよう1MのNa2CO3液でコントロールしながら24時間37℃で嫌気培養を行った。なお、当該培養に用いられた培地は、Murakami R et al., Food Res Int., Volume 144, June 2021、に記載されたとおりに作製された。
なお、前記糞便溶液中の糞便は、通常の食餌を継続している健康なヒト(60歳代男性1名、70歳代男性1名、70歳代女性1名)から提供されたものである。この3つの糞便それぞれを用いて、上記嫌気培養が行われた。
【0093】
なお、上記嫌気培養における被験試料(プレバイオティクス成分)の終濃度は1%(w/v)である。ここで、「令和元年 国民健康・栄養調査 食品群別摂取量」から、20歳以上の食事量は1日あたり2040gであり、1日3食とすると、1食当たり680gである。680gの1%は、6.8gである。そのため、上記終濃度は、食物繊維(プレバイオティクス成分)約7gの摂取に相当すると考えられる。1日当たり1回~3回前記プレバイオティクス成分を摂取すると考えると、上記終濃度は、例えば、プレバイオティクス成分の1日当たり摂取量2g~26g程度に相当する。
なお、1日当たりの食物繊維摂取量は約18.8gとも言われており、この1/3の値は6.3gであり、この値は、上記で述べた6.8gに近い。また、In vitro および vivoの試験から、プレバイオティクス成分1%添加濃度が5gの素材摂取に匹敵するとも言われている(2019,_Xuedan Wang et al,)。
【0094】
【0095】
(9-2)細菌数の測定1
前記培養後に、各培養液中のビフィドバクテリウム属細菌の数を測定した。上記「(9-1)培養実験1」における24時間培養後の培養液を1mL採取し、8,000gで3分間遠心して沈殿を得た。前記沈殿から、DNA自動分離装置GENEPREPSTAR PI-480(倉敷紡績株式会社)を用いて、DNAを抽出した。具体的には、前記沈殿に約300mgのガラスビーズBZ-01(アズワン株式会社)を加え、500μLの組織懸濁液(倉敷紡績株式会社)に懸濁した後、FastPrep24-5G(フナコシ株式会社)にて5.0m/sec、45秒の破砕処理を6回行った。次いで、12,000gで5分間遠心後200μLの上清を取り、150μLの組織懸濁液およびプロテアーゼ溶解試薬(倉敷紡績)に0.4mg/mlの濃度で溶解したプロティナーゼK(富士フィルム和光)溶液150μLを加えて混合し、前記GENEPREPSTARを用いてDNA抽出液を回収した。回収されたDNA抽出液は1×TE溶液で500倍希釈した。続いて、希釈されたDNA抽出液を用いて、定量PCR法により、ビフィドバクテリウム属細菌数を測定した。培地1ml中の菌数を算出し、対数変換して評価した。ビフィドバクテリウム属を検出するプライマーセットとして、配列番号1で表される塩基配列(CTCCTGGAAACGGGTGG)を有するプライマーと及び配列番号2で表される塩基配列(GGTGTTCTTCCCGATATCTACA)を有するプライマーとのセットを用いた。定量PCRの条件は次のとおりである。定量PCR溶液組成(全量12.5μL):TB Green Premix Ex Taq (Tli RNaseH Plus)(タカラバイオ株式会社) 6.25μL, ROX Reference DyeII(タカラバイオ株式会社)0.25 μL,各プライマー 0.125μL, 鋳型DNA500倍希釈溶液 2.5μL, 滅菌水 3.25 μL。定量PCRは、Applied Biosystems 7500 Fast Real-Time PCR System(Thermo Fisher Scientific社)を用いて行った。増幅サイクルは、「95℃で10秒間」を1サイクル、「95℃で10秒間、95℃で3秒間、55℃で20秒間、72℃で30秒間」を40サイクルとした。当該測定結果が、
図1に示されている。なお、これらの測定結果は、3検体についての単純平均値である。
【0096】
当該測定結果のうち、試料1~7(難消化性デキストリン及び/又はイヌリン)を添加した場合と試料8(水のみ)を添加した場合の比較より、プレバイオティクス成分の添加によって、ビフィドバクテリウム属細菌が増加されることが分かる。ここで、試料7に関して、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の85倍である。そのため、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の例えば100倍以下、95倍以下、90倍以下、又は85倍以下であることは、腸内におけるビフィドバクテリウム属細菌を増加させるために適している。
【0097】
また、試料4~7を添加した場合の測定結果について、Tukey-Krammer検定による多重比較を実施したところ、
図2に示されるとおりの結果が得られた。同図において、同じ英文字が付された試料間では有意差が無いことを意味し、同じ英文字を付されていない試料間では有意差があったことを意味する。同図に示されるとおり、試料5を添加した場合は、資料7を添加した場合と比べて、菌数は有意に増加した。一方で、試料6を添加した場合と試料7を添加した場合との間で有意差はなかった。試料5及び試料6について、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合に対して、それぞれ9.75倍及び85倍である。そのため、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の例えば80倍以下、60倍以下、40倍以下、又は20倍以下であることは、腸内におけるビフィドバクテリウム属細菌の増加を促進するために特に適している。
【0098】
(9-3)ガス量の測定1
前記培養の期間にわたって各培養液から産生されたガスの量を測定した。上記「(9-1)培養実験1」における培養において、糞便溶液を添加して6時間後に、培養器への嫌気置換用の炭酸ガスの流入を止め、培養器の排気口にガス回収用のコレクションバッグ(株式会社呼気生化学栄養代謝研究所)をつなぎ、ガスの回収を行った。24時間後にコレクションバッグを取り外し、バッグ内にたまったガスの量を、シリンジを用いて測定した。当該測定結果が、以下表2及び
図3に示されている。
【0099】
【0100】
当該測定結果のうち、試料1を添加した場合と試料2~6を添加した場合との比較より、イヌリンと難消化性デキストリンとを組み合わせることによって、ガス産生量が、大幅に低減されることが分かる。そのため、イヌリンと難消化性デキストリンとの組合せは、プレバイオティクスによる腸内細菌のガス産生を抑制するために極めて有用である。
【0101】
以上のとおり、難消化性デキストリン及びイヌリンの比率を調整することによって、腸内細菌(特にはビフィドバクテリウム属細菌)の増殖を促進することができ且つプレバイオティクスによる腸内細菌のガス産生を抑制することができる。
【0102】
(9-4)培養実験2
【0103】
上記「(9-3)ガス量の測定1」より、試料1を添加した場合と比べて、試料2~8を添加した場合は、ガス産生量が大幅に低減された。ここで、試料1はイヌリンのみを含む一方で、試料2~8は難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、試料2ではこれらの比が46:40である。そこで、難消化性デキストリンをどの程度の量で含めることによってガス産生量低減効果が顕著に発揮されるかを調査するために、さらなる試験を実施した。
【0104】
以下表3に示される組成を有する複数種のプレバイオティクス試料を用意した。表3に示される試料1、3、7、及び8は、上記「(9-1)培養実験1」において述べたものと同じである。試料2-1~2-4は、難消化性デキストリンとイヌリンとを含み、これらの含有比率は同表に示されるとおりであり、試料3と比べてイヌリンの含有比率がより高い。これらの試料を用いて、上記「(9-1)培養実験1」において述べたとおりの培養実験を行った。
【0105】
【0106】
(9-5)細菌数の測定2
上記「(9-4)培養実験2」における培養後に、各培養液中のビフィドバクテリウム属細菌の数を測定した。当該測定は、上記「(9-2)細菌数の測定1」において述べたとおりに行われた。測定結果が、
図4に示されている。
【0107】
当該測定結果より、上記「(9-2)細菌数の測定1」と同様に、プレバイオティクス成分の添加によって、ビフィドバクテリウム属細菌が増加されることが確認された。
【0108】
(9-6)ガス量の測定2
上記「(9-4)培養実験2」における培養の期間にわたって各培養液から産生されたガスの量を、上記「(9-3)ガス量の測定1」に記載したとおりに測定した。測定結果が、以下の表4及び
図5に示されている。
【0109】
【0110】
図5に示されるとおり、試料1を添加した場合と比べて、試料2-2~試料2-4を添加した場合には、ガス量平均値が有意に低下した。ここで、試料2-1及び試料2-2に関して、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合のそれぞれ0.13倍及び0.30倍である。そのため、プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合を、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の例えば0.2倍以上、0.22倍以上、0.24倍以上、0.26倍以上、0.28倍以上、又は0.3倍以上とすることによって、プレバイオティクスによる腸内細菌のガス産生を抑制することができる。
【0111】
(10)製造例
以下の表5に示されるとおりの組成を有する栄養組成物を製造した。当該製造に関して、具体的には、パラチノース、高分岐デキストリン、乳たんぱく質、難消化性デキストリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、植物油、でんぷん分解物、ラクチュロース、イヌリン、精製魚油、酵母エキス、乾燥酵母、カルニチン、乳酸菌(殺菌)、カゼインNa、pH調整剤、乳化剤、塩化K、色素、及び香料を混合し、当該混合物に対してUHT殺菌を行い、そして、容器に充填した。このように、当該栄養組成物は、容器に充填された栄養組成物であった。1容器当たり、125mlの栄養組成物を含んでおり、125mlで200kcalを有した。なお、表5に示される数値は、125ml当たり(200kcal当たり)の数値であり、100kcal当たりの各成分の含有量は、同表に示される各値に0.5を乗じた値である。
【0112】
同表に示されるとおり、当該栄養組成物は食物繊維を含む。当該食物繊維は、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せであった。また、当該栄養組成物は糖質を含む。当該糖質はラクチュロースを含む。前記難消化性デキストリン、前記イヌリン、及び前記ラクチュロースが、前記栄養組成物に含まれるプレバイオティクス成分であった。
【0113】
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合は、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の3倍であった。また、前記プレバイオティクス成分に占める前記ラクチュロースの質量割合は14質量%であった。
【0114】
【0115】
前記栄養組成物は液状であり、その粘度は13mPa・s、20℃であった。また、当該栄養組成物の浸透圧は、700mOsm/kgH2Oであった。
本技術の栄養組成物は、以上の組成及び物性を有する液状組成物として構成されてよい。
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の0.2倍以上100倍以下である、
腸内細菌からのガス産生を抑制するために用いられる、請求項1に記載の栄養組成物。
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2倍以上且つ100倍以下である、請求項1又は2に記載の栄養組成物。
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリンの質量割合が、前記プレバイオティクス成分に占める前記イヌリンの質量割合の2.5倍以上且つ100倍以下である、請求項1又は2に記載の栄養組成物。