(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034830
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】緑色系飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20230306BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20230306BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230306BHJP
A23F 3/06 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/00 B
A23L2/02 A
A23L2/38 C
A23L2/38 J
A23F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141270
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(74)【代理人】
【識別番号】230103089
【弁護士】
【氏名又は名称】遠山 友寛
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 純平
(72)【発明者】
【氏名】小野 伊織
(72)【発明者】
【氏名】森岡 歩
(72)【発明者】
【氏名】大関 菖平
(72)【発明者】
【氏名】呉藤 伊織
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB06
4B027FC02
4B027FK04
4B027FK08
4B027FK13
4B117LC03
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4B117LG24
4B117LK13
4B117LL04
4B117LP01
(57)【要約】
【課題】分散性が良好で、のど越しが良い緑色系飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】緑色植物を含み、アラビノキシランの含有量が、10mg/100g以上2000mg/100g以下であり、遠心沈殿量が、4.50g/100g以上14.5g/100g以下であり、50%粒子径が、5.0μm以上65μm以下である、緑色系飲料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色植物を含み、
アラビノキシランの含有量が、10mg/100g以上2000mg/100g以下であり、
遠心沈殿量が、4.50g/100g以上14.5g/100g以下であり、
50%粒子径が、5.0μm以上65μm以下である、
緑色系飲料。
【請求項2】
前記緑色植物が、大麦若葉、ケール、及び茶からなる群より選択される1種以上を含む、
請求項1に記載の緑色系飲料。
【請求項3】
前記大麦若葉の粉末の含有量が、前記緑色系飲料100gに対して、0.10g/100g以上2.90g/100g以下である、
請求項2に記載の緑色系飲料。
【請求項4】
飲料中における前記大麦若葉の粉末の50%粒子径が、1.0μm以上30μm以下である、
請求項2又は3に記載の緑色系飲料。
【請求項5】
前記アラビノキシランの含有量が、前記遠心沈殿量100質量部に対して、1.50質量部以上17.5質量部以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の緑色系飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色系飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりにより、野菜類をはじめとした緑色植物を手軽に摂取できる緑色系飲料の市場が発展している。
【0003】
緑色系飲料は、含有される種々の植物成分の不溶性繊維分等が液中で凝集等を起こすことにより、均一な状態を維持することが難しく、のど越しが良好でないという問題点がある。そのような問題点を解決すべく、様々な検討がなされてきた。例えば、特許文献1には、凝集・沈殿を防止する効果のある食品素材の添加や、均質化処理を含まない、湯分散性の良い青汁粉末の製造方法を提供することを目的として、搾汁青汁を乾燥後溶解し、噴霧乾燥処理や、加熱処理と凍結乾燥処理とを組み合わせた処理をすることにより分散性が向上した青汁粉末を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記青汁粉末の製造方法は多数の工程を必要とし、製造設備や製造時間、製造コストなどの観点から実用性に問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、分散性が良好で、のど越しが良い緑色系飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、緑色植物を含む緑色系飲料において、アラビノキシランの含有量、遠心沈殿量、及び50%粒子径を調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]
緑色植物を含み、
アラビノキシランの含有量が、10mg/100g以上2000mg/100g以下であり、
遠心沈殿量が、4.50g/100g以上14.5g/100g以下であり、
50%粒子径が、5.0μm以上65μm以下である、
緑色系飲料。
[2]
前記緑色植物が、大麦若葉、ケール、及び茶からなる群より選択される1種以上を含む、
[1]に記載の緑色系飲料。
[3]
前記大麦若葉の粉末の含有量が、前記緑色系飲料100gに対して、0.10g/100g以上2.90g/100g以下である、
[2]に記載の緑色系飲料。
[4]
飲料中における前記大麦若葉の粉末の50%粒子径が、1.0μm以上30μm以下である、
[2]又は[3]に記載の緑色系飲料。
[5]
前記アラビノキシランの含有量が、前記遠心沈殿量100質量部に対して、1.50質量部以上17.5質量部以下である、
[1]~[4]のいずれかに記載の緑色系飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散性が良好で、のど越しが良い緑色系飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、以下、「g/100g」又は「mg/100g」と記載するときは緑色系飲料全体を100gとしたときの各成分の含有量を示すものとする。
【0011】
1.緑色系飲料
本実施形態の緑色系飲料(以下、「青汁飲料」ともいう。)は、緑色植物を含み、アラビノキシランの含有量が、10mg/100g以上2000mg/100g以下であり、遠心沈殿量が、4.50g/100g以上14.5g/100g以下であり、50%粒子径が、5.0μm以上65μm以下である。
【0012】
一般的に、青汁飲料などの緑色系飲料は、緑色植物に由来する独特の風味を有し、嗜好性や栄養価という点から好んで飲まれる。このような緑色系飲料の特徴が強い飲料では、飲料中の不溶性成分の量や大きさから、成分の分散性に課題があり、のど越しが優れているとはいいにくい。これに対して、本実施形態の緑色系飲料は、上記構成を有することにより、青汁飲料の特徴を維持しつつ、分散性が良好で、のど越しが向上したものとなる。
【0013】
本実施形態における緑色植物を含む緑色系飲料は、緑色植物と、水と、その他必要に応じて任意の添加成分を含むものである。以下、詳説する。
【0014】
1.1.緑色植物
本実施形態において、緑色植物とは、主に青汁飲料の原料として一般的に使用される緑色野菜をいう。本実施形態の緑色植物の態様として、例えば、緑色植物を乾燥した後粉砕した乾燥粉末状、緑色植物の組織から抽出した搾汁液、緑色植物をそのまま粉砕した液状又はペースト状のもの等を用いることができる。
【0015】
緑色植物としては、特に限定されないが、例えば、大麦若葉、ほうれん草、茶、スピルリナ、ケール、小松菜、パセリ、小麦若葉、明日葉、クワ若葉、モロヘイヤ、メキャベツ、ボタンボウフウ、ブロッコリー、大根葉、シソなどのクロロフィルを含む葉物類が挙げられる。緑色植物は一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0016】
このなかでも、大麦若葉、ケール、及び茶からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、大麦若葉及び茶を含むことがより好ましい。このような緑色植物を用いることにより、のど越しや分散性がより向上したり、鮮やかな緑色が維持されたりする傾向にある。
【0017】
また、これら緑色植物の形態は特に限定されないが、例えば、大麦若葉は粉末や搾汁液の状態で用いることができ、遠心沈殿量と50%粒子径を調整する観点から粉末と搾汁液の一方を用いたり両方を併用したりしてもよい。また、大麦若葉は、加水や破砕により得られるピューレの状態で用いることもできる。ケールは搾汁液やピューレなどの液体の状態で用いてもよく、茶は、粉末の状態で用いてもよい。
【0018】
1.1.1.緑色植物の粉末
本実施形態に用いる緑色系飲料には、緑色植物の粉末が含まれる。緑色植物の粉末は、緑色植物の植物体全部又はその一部、例えば、茎や葉などの可食部を乾燥し、それをミル及び臼等の機械的手法によって粉砕するか、あるいは植物体全部又はその一部を粉砕してから得られた粉砕物を乾燥することにより得ることができる。また、植物体全部又はその一部の搾汁液を乾燥することなどにより乾燥粉末を得てもよい。
【0019】
本実施形態において、粉末として緑色系飲料に含まれる緑色植物の種類は、特に限定されないが、例えば、大麦若葉、ケール、小松菜、パセリ、ほうれん草、茶等が挙げられる。その中でも、取り扱い性の観点から、大麦若葉、茶が好ましい。
【0020】
原料とする緑色植物として、例えば大麦若葉の粉末を用いる場合、緑色系飲料中に分散した大麦若葉の粉末50%粒子径は、好ましくは1.0μm以上30μm以下であり、より好ましくは5.0μm以上20μm以下であり、さらに好ましくは7.0μm以上18μm以下である。特に、大麦若葉の粉末と搾汁液を併用する場合には、その粉末の50%粒子径は、好ましくは1.0μm以上30μm以下であり、より好ましくは7.5μm以上20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上18μm以下である。また、大麦若葉を粉末の状態のみで用いる場合には、その粉末の50%粒子径は、好ましくは1.0μm以上30μm以下であり、より好ましくは3.0μm以上15μm以下であり、さらに好ましくは5.0μm以上10μm以下である。大麦若葉の粉末の50%粒子径が上記範囲内であることにより、遠心沈殿量と50%粒子径が所定の範囲に調整されやすくなり、のど越しや分散性がより向上する傾向にある。
【0021】
「50%粒子径」とは、体積基準の粒子径の積算分布曲線の50%に相当する粒子径であり、レーザ回折式の粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0022】
緑色系飲料に含まれる緑色植物の粉末の合計含有量は、緑色系飲料100gに対して、好ましくは0.05g/100g以上4.00g/100g以下であり、より好ましくは0.10g/100g以上3.50g/100g以下であり、さらに好ましくは0.20g/100g以上3.00g/100g以下である。緑色植物の粉末の合計含有量が上記範囲内であることにより、緑色系飲料の本来の味わい及び香味を残しながらも、分散性やのど越しがより向上する傾向にある。
【0023】
大麦若葉の粉末の含有量は、緑色系飲料100gに対して、好ましくは0.10g/100g以上2.90g/100g以下であり、より好ましくは0.15g/100g以上2.80g/100g以下であり、さらに好ましくは0.20g/100g以上2.60g/100g以下である。大麦若葉の粉末の含有量が上記範囲内であることにより、緑色系飲料の本来の味わい及び香味を残しながらも、分散性やのど越しがより向上する傾向にある。
【0024】
茶の粉末の含有量は、緑色系飲料100gに対して、好ましくは0.05g/100g以上1.00g/100g以下であり、より好ましくは0.05g/100g以上0.75g/100g以下であり、さらに好ましくは0.05g/100g以上0.50g/100g以下である。茶の粉末の含有量が上記範囲内であることにより、緑色系飲料の本来の味わい及び香味を残しながらも、分散性やのど越しがより向上する傾向にある。
【0025】
1.1.2.緑色植物の搾汁液
本実施形態の緑色系飲料には、緑色植物の搾汁液が含まれる。緑色植物の搾汁液は、例えば、緑色植物を直接搾汁したもののほか、緑色植物に加水した後、植物内の栄養成分を抽出しつつ搾汁したもの等が含まれる。
【0026】
本実施形態において、搾汁液として緑色系飲料に含まれる緑色植物の種類は、特に限定されないが、例えば、大麦若葉、ケール、小松菜、ほうれん草等が挙げられる。その中でも、取り扱い性及び味わい向上の観点から、緑色系飲料は、大麦若葉、ケールの搾汁液を含むことが好ましい。
【0027】
緑色系飲料に含まれる緑色植物の搾汁液の合計含有量は、緑色系飲料100gに対し、好ましくは0.10g/100g以上10.00g/100g以下であり、より好ましくは0.20g/100g以上7.50g/100g以下であり、さらに好ましくは0.30g/100g以上6.00g/100g以下である。緑色植物の搾汁液の含有量が上記範囲内であることにより、緑色系飲料の本来の味わい及び香味を残しながらも、分散性やのど越しがより向上する傾向にある。
【0028】
大麦若葉の搾汁液の含有量は、緑色系飲料100gに対して、好ましくは0.10g/100g以上6.00g/100g以下であり、より好ましくは0.20g/100g以上5.50g/100g以下であり、さらに好ましくは0.30g/100g以上5.00g/100g以下である。大麦若葉の搾汁液の含有量が上記範囲内であることにより、緑色系飲料の本来の味わい及び香味を残しながらも、分散性やのど越しがより向上する傾向にある。
【0029】
ケールの搾汁液の含有量は、緑色系飲料100gに対して、好ましくは0.01g/100g以上6.00g/100g以下であり、より好ましくは0.05g/100g以上5.50g/100g以下であり、さらに好ましくは0.10g/100g以上5.00g/100g以下である。ケールの搾汁液の含有量が上記範囲内であることにより、緑色系飲料の本来の味わい及び香味を残しながらも、分散性やのど越しがより向上する傾向にある。
【0030】
1.2.アラビノキシラン
本実施形態の緑色系飲料は、アラビノキシランを含有する。アラビノキシラン(以下、「Ax」ともいう。)は、アラビノースとキシロースをその構成糖とする多糖類であり、本実施形態において「アラビノキシラン」というときは水不溶性のアラビノキシランを意味するものとする。本実施形態においてアラビノキシランは、緑色植物に由来して緑色系飲料中に存在し得る。アラビノキシランが含まれている緑色植物としては、例えば、大麦若葉、ケール、茶等が挙げられる。
【0031】
アラビノキシランの含有量は、緑色系飲料100gに対して、10mg/100g以上2000mg/100g以下であり、好ましくは50mg/100g以上2000mg/100g以下であり、より好ましくは75mg/100g以上2000mg/100g以下である。アラビノキシランの含有量が2000mg/100g以下であることにより、不溶性繊維分が凝集することが抑制されるため、分散性が良好となり、また口当たりがすっきりとしてのど越しがより向上する。これにより、いわゆる「ごくごく飲める」緑色系飲料を得ることができる。また、アラビノキシランの含有量が10mg/100g以上であることにより、緑色植物に由来する独特の風味や、それに関する嗜好性や栄養価を過度に損なうことを抑制できる。
【0032】
アラビノキシランの含有量の測定は、特に限定されるものではないが、例えば、アラビノースAlaとガラクトースGalとキシロースXylの含有量から、以下の計算式により、算出することができる。アラビノキシランの含有量の測定には、測定対象とするサンプルに酸等を加えてサンプル中に含まれる多糖を加水分解した後、その液に含まれるアラビノースの量などに基づいてアラビノキシラン量を算出する方法も考えられる。しかし、青汁にはアラビノースとガラクトースから構成されるアラビノガラクタンも含まれていることから、多糖を加水分解する方法ではアラビノガラクタン由来のアラビノースも検出されるため、アラビノキシランについての定量の正確性が損なわれる恐れがある。そこで、本実施形態においては、ガラクトースの定量結果で補正を行うことで、アラビノキシラン由来のアラビノース及びキシロースの含量を算出する。なお、同手法については、公知の文献(Li, M.; Du, J.; Zheng, Y. Non-Starch Polysaccharides in Wheat Beers and Barley Malt beers: A Comparative Study. Foods 2020,9, 131. 及びC. M. Courtin and J. A. Delcour Journal of Agricultural and Food Chemistry 1998 46 (10), 4066-4073 DOI: 10.1021/jf980339t等)を参照してもよい。
アラビノキシラン(Ax)=0.88[(アラビノースAla-0.7×ガラクトースGal)+キシロースXyl]
【0033】
アラビノキシランの含有量を調整するには、特に限定されるものではないが、例えば、原料である大麦を適宜選択することが挙げられる。大麦におけるアラビノキシラン含有量は、品種、収穫時期、給水量、等の栽培条件や、加工処理条件によって左右されることが知られている。例えば、栽培条件に関しては、アラビノキシランの含有量は、栽培初期の段階では少なく、栽培中期以降に増加する傾向がある。また、例えば、栽培期間中の給水量を増加させるとアラビノキシランの含有量が増加する傾向がある。加工処理条件に関しては、大麦若葉の場合、搾汁液の形態よりも粉末の形態で増加する傾向がある。
【0034】
アラビノキシランの含有量は、後述する遠心沈殿量100質量部に対して、好ましくは1.50質量部以上17.5質量部以下であり、より好ましくは1.75質量部以上15.5質量部以下であり、さらに好ましくは1.80質量部以上15.0質量部以下である。遠心沈殿量100質量部に対するアラビノキシランの含有量が1.50質量部以上であることにより、のど越しがより向上する傾向にある。また、遠心沈殿量100質量部に対するアラビノキシランの含有量が17.5質量部以下であることにより、分散性がより向上する傾向にある。
【0035】
1.3.遠心沈殿量
本実施形態において「遠心沈殿量」とは、緑色系飲料100gを100ml容の遠沈管に採取し、これを遠心機にて3000rpm、10分間処理した後、上清液を除去して得られる沈殿量(g)の割合(g/100g)の百分率表示(%)を意味する。その詳細な測定方法は、後述する実施例における記載に従うものとする。
【0036】
緑色系飲料の遠心沈殿量は、緑色系飲料100gに対して、4.50g/100g以上14.5g/100g以下であり、好ましくは5.00g/100g以上13.5g/100g以下であり、より好ましくは5.50g/100g以上12.5g/100g以下である。遠心沈殿量が14.5g/100g以下であることにより、分散性が向上し、口当たりがすっきりとして飲みやすくなる傾向にある。また、遠心沈殿量が4.50g/100g以上であることにより、緑色植物に由来する独特の風味や、それに関する嗜好性や栄養価を過度に損なうことを抑制できる。
【0037】
1.4.50%粒子径
本実施形態において「緑色系飲料の50%粒子径」、「50%粒子径が・・・である緑色系飲料」、あるいは単に「50%粒子径」と記載する場合、緑色系飲料中に分散した成分の50%粒子径を意味するものとし、例えば、上記の大麦若葉等の特定の成分における50%粒子径とは区別する。また、本明細書において使用する場合、50%粒子径とは、体積基準の50%粒子径を意味する。
【0038】
緑色系飲料の50%粒子径は、5.0μm以上65μm以下であり、好ましくは7.0μm以上60μm以下であり、より好ましくは10μm以上55μm以下である。緑色系飲料の50%粒子径が5.0μm以上であることにより、分散性が向上し飲みやすさもより向上する。緑色系飲料の50%粒子径が65μm以下であることにより、分散性が向上し緑色系飲料の外観もより向上する傾向にある。
【0039】
緑色系飲料の50%粒子径は、特に限定されないが、例えば、レーザ回析式粒度分布測定装置(SHIMADZU SALD-2300、島津製作所社製、WingSALDII,Version3.1.1)により測定することができる(体積基準)。
【0040】
1.5.その他の成分
本実施形態の緑色系飲料は、必要に応じて、緑色植物の粉末又は搾汁液以外の他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、増粘剤、有機酸類、糖、アミノ酸、香気成分、pH調整剤、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、及び無機塩類等の飲料に使用できる公知の添加成分が挙げられる。
【0041】
有機酸類としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸塩、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩類が挙げられる。
【0042】
糖としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、果糖、及び麦芽糖等の糖類、キシリトール、及びD-ソルビトール等の低甘味度甘味料が挙げられる。
【0043】
アミノ酸としては、特に限定されないが、例えば、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、アラニン、アルギニン、メチオニン、トリプトファン及びGABAなどが挙げられる。
【0044】
無機塩類としては、例えば、グルコン酸塩、硫酸塩等の銅塩類が挙げられる。無機塩類の代わりに、飲食品に配合可能な微生物、乳酸菌や酵母等の中から、銅や亜鉛を豊富に含むものを選択して用いてもよい。
【0045】
1.5.1.増粘剤
本実施形態の緑色系飲料は、好ましくは増粘剤を含む。緑色系飲料が増粘剤を含むことにより、緑色系飲料の粘性を調整することができる。増粘剤としては、例えば、発酵セルロース、キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、ペクチン、カラギナン、カルボキシメチルセルロース等の増粘多糖類、シトラスファイバー等の不溶性食物繊維、寒天等の可用性食物繊維が挙げられる。増粘剤は一種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
増粘剤の含有量は、緑色系飲料100gに対して、好ましくは0.01g/100g以上0.50g/100g以下であり、より好ましくは0.03g/100g以上0.40g/100g以下であり、さらに好ましくは0.04g/100g以上0.30g/100g以下である。
【0047】
2.緑色系飲料の製造方法
本実施形態の緑色系飲料は、特に限定されないが、例えば、緑色植物と、水と、必要に応じて増粘剤などのその他添加剤を混合する方法により調製することができる。
【実施例0048】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0049】
(大麦若葉の粉末A)
採取した大麦若葉を、2~8cm程度になるようカット後、90℃の温水で60秒加熱した。水で冷却後、水を切って、乾燥した熱風を送り込みながら打圧を加える粗揉工程を経て水分率を下げていった。最終的に熱風を送り込むことで乾燥を促す棚乾燥機で水分率を5%まで下げた後、ボールミルで粉砕粒度が50%粒子径12μm程度になるように粉砕して、大麦若葉粉末を得た。
【0050】
(大麦若葉の粉末B)
採取した大麦若葉を、2~8cm程度になるようカット後、90℃の温水で60秒加熱した。水で冷却後、水を切って、乾燥した熱風を送り込みながら打圧を加える粗揉工程を経て水分率を下げていった。最終的に熱風を送り込むことで乾燥を促す棚乾燥機で水分率を5%まで下げた後、ボールミルで粉砕粒度が50%粒子径18μm程度になるように粉砕して、大麦若葉粉末を得た。
【0051】
(大麦若葉の搾汁液)
採取した大麦若葉を、1cm前後に切断後洗浄し、95℃の温水で3分間加熱後、水で冷却した。コミトロールプロセッサ(アーシェルジャパン社製)を用いて平均長さが2.0mm程度に微細化した後、ピューレ状になった大麦若葉の液を、デカンタ型遠心分離器により搾汁し、大麦若葉の搾汁液を得た。
【0052】
(ケールの搾汁液)
採取したケールを、1cm前後に切断後洗浄し、95℃の温水で3分間加熱後、水で冷却した。コミトロールプロセッサ(アーシェルジャパン社製)を用いて平均長さが2.0mm程度に微細化した後、ピューレ状になったケールの液を、デカンタ型遠心分離器により搾汁し、ケールの搾汁液を得た。
【0053】
(緑茶の粉末)
茶葉を収穫後、一般的な荒茶加工処理して製造した荒茶を、最終的に熱風を送り込むことで乾燥を促す棚乾燥機で水分率を5%まで下げた後、ボールミルで粉砕粒度が50%粒子径15μm程度になるように粉砕して、粉末緑茶を得た。
【0054】
[実施例1~9及び比較例1~3]
(緑色系飲料の調製)
大麦若葉の粉末、大麦若葉の搾汁液、ケールの搾汁液、茶の粉末、及び増粘剤(サンアーティストPN、三栄源エフ・エフ・アイ社)等の各原料を下記表の配合で添加した後、全体の質量が100gとなるようにメスアップし、サンプルを作製した。
【0055】
(アラビノキシランの含有量の測定)
アラビノキシラン含有量は、塩酸による酸加水分解操作の後、HPLC糖分析装置を用いて定量し、得られた値をもとに算出した。各実施例及び比較例の各液200μlを2mlエッペンドルフチューブに入れ、1.5MのHClを200μl添加した。これを加熱ブロック(90℃)で90分間インキュベートし加水分解した。この後、NaOH水溶液(5%水溶液)用いて中和し、さらに純水で希釈し総量を2000μlとして定量に供した(反応液)。更に反応液、又は検量線用の糖類標準品水溶液100μLに、内部標準液(2-Deoxyglucose 100ppm)100μL及び超純水800μLを加えた混合溶液を、Bond Elute SAX(アジレント・テクノロジー社製)に通液して前処理し、分析用サンプルとした。
【0056】
続いて、分析用サンプルを以下の装置及び条件にて糖定量分析(内部標準法)に付し、得られたアラビノースとキシロースとガラクトースの含有量を得て、下記式に基づいてアラビノキシラン含有量を算出した。なお、その際には適宜サンプルの希釈率等を考慮し算出した値を以ってアラビノキシラン含有量とした。このようにして得られたアラビノキシランの含有量を表1に表す。
アラビノキシラン(Ax)=0.88[(アラビノースAla-0.7×ガラクトースGal)+キシロースXyl]
【0057】
装置 :Thermo Scientific社製 ICS-5000
カラム:Thermo Scientific社製 Carbopack PA1 φ4×250mm(+ガードカラム φ4×50mm)
カラム温度:30℃
移動相:(A相) 200mM NaOH水溶液
(B相) 1000mM 酢酸ナトリウム水溶液
(C相) 超純水
流速 : 1.0mL/分
注入量: 25μL
検出 :パルスドアンペロメトリー法
プログラム:グラジエントプログラム
【0058】
(遠心沈殿量の測定)
調製した緑色系飲料100gを100ml容の遠沈管に採取し、これを遠心機にて3000rpm、10分間の条件で処理した後、上清液を除去し、沈殿量(g)を秤量した。
【0059】
(緑色系飲料の50%粒子径の測定)
調製した緑色系飲料をサンプルとして、レーザ回析式粒度分布測定装置(SHIMADZU SALD-2300、島津製作所社製、WingSALDII,Version3.1.1)により体積基準の粒子径の積算分布曲線の50%に相当する粒子径を緑色系飲料の50%粒子径として測定した。
【0060】
<評価:のど越しの良さ>
飲料中の成分が部分的にダマになったりすることなどにより、飲んだ際に飲みにくさを感じることなく、おいしく飲めることを「のど越しの良さ」として、調製した各緑色系飲料ののど越しの良さの程度を5人の専門パネラーが判断し、5点:「かなりある」、4点「ある」、3点「普通」、2点「あまりない」、1点「ない」で評価し、評価点の平均を算出した。平均点に応じて、以下の基準により評価した。
×:平均点が1以上2未満
△:平均点が2以上3未満
〇:平均点が3以上4未満
◎:平均点が4以上5以下
【0061】
<評価:分散性>
調製した緑色系飲料を30分間静置した後に飲料成分が沈殿する程度が低いものを「分散性が良好」として、調製した各緑色系飲料の分散性の程度を5人の専門パネラーが判断し、5点:「かなりある」、4点「ある」、3点「普通」、2点「あまりない」、1点「ない」で評価し、評価点の平均を算出した。平均点に応じて、以下の基準により評価した。
×:平均点が1以上2未満
△:平均点が2以上3未満
〇:平均点が3以上4未満
◎:平均点が4以上5以下
【0062】
<総合評価>
上記の各評価の平均値の和に基づいて、下記基準によりのど越しの良さや分散性を有する緑色系飲料としての総合評価を以下の基準により行った。
×:平均点の和が2以上4未満
△:平均点の和が4以上6未満
〇:平均点の和が6以上8未満
◎:平均点の和が8以上10以下
【0063】
【0064】
表1の実施例1~9は、比較例1~3に比べ、総合評価が高く、分散性が良好で、のど越しが良い緑色系飲料になることがわかる。