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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034860
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141308
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 健介
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA04
5H730AS01
5H730AS08
5H730BB27
5H730DD04
5H730DD16
5H730DD32
5H730DD41
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低出力動作時においても線形性を維持した出力電力特性を有するDC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】DC-DCコンバータ100において、スイッチング素子Sw1~Sw8を同時に所定期間オフにするデッドタイムを制御信号S1~S8に設定し、第3レグ121及び第4のレグ122のデッドタイムのタイミングを、第2のレグ112のデッドタイムと第1のレグ111のデッドタイムとの時系列における中心に設定することで、低出力動作時の線形性を維持した出力電力特性を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有するレグを構成単位として、第1の前記レグと第2の前記レグとを有する1次側ブリッジ回路と、
第3の前記レグと第4の前記レグとを有する2次側ブリッジ回路と、
前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、
前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を同時に所定期間オフにするデッドタイムを前記制御信号に設定し、
前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムのタイミングを、前記第2のレグの前記デッドタイムと前記第1のレグの前記デッドタイムとの時系列における中心に設定するDC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記デッドタイムのタイミング設定を、前記1次側ブリッジ回路および/または前記2次側ブリッジ回路内で電流が還流する還流電流印加時に行う請求項1に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記デッドタイムをTd、前記還流電流印加時の1次側ブリッジ回路のレグ間位相差をφL1としたとき、
前記還流電流印加時のブリッジ間位相差をφBは、
φB=Td+(π-φL1)/2
で表される請求項2に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記DC-DCコンバータの起動時には、前記第1ないし第4のレグの位相差は設定せずに前記デッドタイムのみを設定し、
その後の還流電流印加時において、前記第1のレグと前記第2のレグとのレグ間位相差を設定することにより、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムのタイミングを、前記第2のレグの前記デッドタイムと前記第1のレグの前記デッドタイムとの時系列における中心に設定する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項5】
複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有するレグを構成単位として、第1の前記レグと第2の前記レグとを有する1次側ブリッジ回路と、
第3の前記レグと第4の前記レグとを有する2次側ブリッジ回路と、
前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、
前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を同時に所定期間オフにするデッドタイムを前記制御信号に設定し、
前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムのタイミングを、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムの期間中に前記変換部に流れる電流が反転するよう設定するDC-DCコンバータ。
【請求項6】
前記制御部は、前記デッドタイムのタイミング設定を、前記1次側ブリッジ回路および/または前記2次側ブリッジ回路内で電流が還流する還流電流印加時に行う請求項5に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項7】
前記制御部は、前記デッドタイムをTd、前記還流電流印加時の1次側ブリッジ回路のレグ間位相差をφL1としたとき、
前記還流電流印加時のブリッジ間位相差をφBは、
φB=Td+(π-φL1)/2
で表される請求項6に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項8】
前記制御部は、
前記DC-DCコンバータの起動時には、前記第1ないし第4のレグの位相差は設定せずに前記デッドタイムのみを設定し、
その後の還流電流印加時において、前記第1のレグと前記第2のレグとのレグ間位相差を設定することにより、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムの期間中に前記変換部に流れる電流が反転するよう設定する請求項5ないし7のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
2つのレグを含む第1および第2のブリッジ回路と、トランスとインダクタを含む変換部とから構成される絶縁型DC-DCコンバータが知られている。特許文献1には、ブリッジ回路間に位相差を設けることで中央のインダクタに電圧を供給するDC-DCコンバータが開示されている。特許文献2には、ブリッジ回路間位相差に加えてどちらか片側のレグ間に位相差を設けて、電流をブリッジ回路内部で還流させるDC-DCコンバータが開示されている。特許文献3には、ブリッジ回路間位相差に加えて両側のレグ間に位相差を設けて、電流をブリッジ回路内部で還流させるDC-DCコンバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-129922号公報
【特許文献2】特開2016-152687号公報
【特許文献3】特開2020-5330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1ないし3に開示されたDC-DCコンバータにおいては、低出力動作時の出力電力特性において線形性が失われる区間が発生するという課題があった。
【0005】
本発明の一態様は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低出力動作時においても線形性を維持した出力電力特性を有するDC-DCコンバータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るDC-DCコンバータは、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有するレグを構成単位として、第1の前記レグと第2の前記レグとを有する1次側ブリッジ回路と、第3の前記レグと第4の前記レグとを有する2次側ブリッジ回路と、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を同時に所定期間オフにするデッドタイムを前記制御信号に設定し、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムのタイミングを、前記第2のレグの前記デッドタイムと前記第1のレグの前記デッドタイムとの時系列における中心に設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、低出力動作時においても線形性を維持した出力電力特性を有するDC-DCコンバータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係るDC-DCコンバータの回路図である。
図2】実施形態1に係るDC-DCコンバータの起動時における動作を示す図である。
図3】実施形態1の還流動作時のDC-DCコンバータの動作を説明する図である。
図4図3の区間Aにおける第1の電流経路を示す図である。
図5図3の区間Aにおける第2の電流経路を示す図である。
図6図3の区間Bにおける電流経路を示す図である。
図7図3の点線丸枠60を拡大して示した波形図である。
図8】比較例技術による還流電流動作時の出力電力特性のシミュレーションを示す図である。
図9】比較例技術におけるDC-DCコンバータ内での電流経路を示した図である。
図10】比較例技術におけるデッドタイム区間中のトランス1次側電圧、トランス一次側電流およびインダクタ電圧を示す図である。
図11】実施形態1のレグ間位相差の変化に対する出力電力特性を示す図である。
図12】実施形態1のブリッジ間位相差の変化に対する出力電力特性を示す図である。
図13】実施形態2の制御部を示すブロック図である。
図14】実施形態2の電流制御部の構成を示すブロック図である。
図15】実施形態2の電力制御部の構成を示すブロック図である。
図16】実施形態2の制御信号生成部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、実施形態1のDC-DCコンバータについて説明する。
【0010】
(DC-DCコンバータの全体構成)
図1は、DC-DCコンバータ100の回路図である。DC-DCコンバータ100は、1次側ブリッジ回路110と、2次側ブリッジ回路120と、変換部130と、制御部140とを備えている。DC-DCコンバータ100の入力端子対でもある、1次側ブリッジ回路110の入力端子117、118の間には、1次側直流電源Eが接続される。またDC-DCコンバータ100の出力端子対でもある、2次側ブリッジ回路110の出力端子127、128の間には、2次側直流電源Eが接続される。1次側直流電源E及び2次側直流電源Eの少なくともいずれかは、2次電池であり得る。
【0011】
ここで、「入力」、「出力」とは、1次側直流電源Eの側から2次側直流電源Eの側へ、すなわち、1次側ブリッジ回路110から2次側ブリッジ回路120へと電力が伝送されることを想定した表現である。しかし、これは便宜上の表現であって、以下でも同様である。実施形態1のDC-DCコンバータ100は、双方向DC-DCコンバータであり、2次側から1次側への電力の伝送も可能である。
【0012】
(変換部の構成)
1次側ブリッジ回路110は、変換部130の1次側131に接続されている。すなわち1次側ブリッジ回路110の出力端子は変換部130の入力端子に接続される。2次側ブリッジ回路120は、変換部130の2次側132に接続されている。すなわち変換部130の出力端子(変換部の2次側の端子)は2次側ブリッジ回路120の入力端子に接続される。
【0013】
変換部130は、トランスTrと、リアクトルLと、リアクトルLとを備える。図1の回路図におけるリアクトルLとリアクトルLとは、変換部130におけるインダクタンス成分を等価的に表している。リアクトルLおよびリアクトルLで表されるインダクタンス成分は、トランスTrの漏れインダクタンスを含む。
【0014】
また、リアクトルLおよびリアクトルLで表されるインダクタンス成分は、トランスTrの1次巻線または2次巻線の少なくともいずれかに接続された現実の回路素子としてのリアクトルによるインダクタンス成分を含んでいてもよい。図1の回路図では、リアクトルL、トランスTrの1次巻線およびリアクトルLがこの順に直列で接続されているように表した。
【0015】
(1次側ブリッジ回路の構成)
1次側ブリッジ回路110は、コンデンサCと、スイッチング素子Sw1~Sw4と、スナバコンデンサCsnub1~Csnub4(コンデンサ素子)と、電流計115と、電圧計116とを備える。なお、実施形態1においては、スイッチング素子をMOSトランジスタで構成しているが、これ以外のスイッチング素子で構成してもよい。
【0016】
スイッチング素子Sw1~Sw4は、還流ダイオード(以下単にダイオードという)D1~D4をそれぞれ備えている。また、スイッチング素子Sw1~Sw4には、スナバコンデンサCsnub1~Csnub4が並列にそれぞれ接続されている。すなわち、スイッチング素子Sw1~Sw4のドレインとソースとの間に、スナバコンデンサCsnub1~Csnub4がそれぞれ接続されている。
【0017】
1次側ブリッジ回路110の入力端子117、118の間には、コンデンサCと、第1のレグ111と、第2のレグ112とが並列に接続されている。第1のレグ111の高電位側の入力端子117から順に、スイッチング素子Sw1、スイッチング素子Sw2が直列接続されている。また、第2のレグ112の高電位側の入力端子117から順に、スイッチング素子Sw3、スイッチング素子Sw4が直列接続されている。
【0018】
第1のレグ111の中間点、即ち、スイッチング素子Sw1とスイッチング素子Sw2との接続点が、1次側ブリッジ回路110の一方の出力端子113となる。第2のレグ112の中間点、即ち、スイッチング素子Sw3とスイッチング素子Sw4との接続点が、1次側ブリッジ回路10のもう一方の出力端子114となる。変換部130のリアクトルLは、1次側ブリッジ回路110の一方の出力端子113に接続されており、リアクトルLは1次側ブリッジ回路110のもう一方の出力端子114に接続されている。
【0019】
なお、1次側ブリッジ回路110の入力端子117、118(1次側直流電源Eの両側)に流れる電流(以下1次側電流という)I1を測定するために電流測定部である電流計115が実施形態1の1次側ブリッジ回路110に設けられている。また、1次側ブリッジ回路110の入力端子117、118間の電圧(以下1次側電圧という)V1を測定するために電圧測定部である電圧計116が実施形態1の1次側ブリッジ回路110に設けられている。電流計115と電圧計116はこれらに限定されるものではなく、1次側ブリッジ回路110の1次側電流I1および1次側電圧V1が測定できるものであれば他の回路等であってもよい。
【0020】
(2次側ブリッジ回路の構成)
2次側ブリッジ回路120は、コンデンサCと、スイッチング素子Sw5~Sw8と、スナバコンデンサCsnub5~Csnub8(コンデンサ素子)と、電流計125と、電圧計126とを備える。スイッチング素子Sw5~Sw8は、ダイオードD5~D8をそれぞれ備えている。スイッチング素子Sw5~Sw8には、スナバコンデンサCsnub5~Csnub8が並列にそれぞれ接続されている。すなわち、スイッチング素子Sw5~Sw8のドレインとソースとの間に、スナバコンデンサCsnub5~Csnub8がそれぞれ接続されている。
【0021】
2次側ブリッジ回路120の出力端子127、128の間には、コンデンサCと、第3のレグ121と、第4のレグ122とが並列に接続されている。第3のレグ121の高電位側の入力端子である2次側ブリッジ回路120の出力端子127から順に、スイッチング素子Sw5、スイッチング素子Sw6が直列接続されている。また、第4のレグ122の高電位側の入力端子である2次側ブリッジ回路120の出力端子127から順に、スイッチング素子Sw7、スイッチング素子Sw8が直列接続されている。
【0022】
第3のレグの中間点、即ち、スイッチング素子Sw5とスイッチング素子Sw6との接続点が、2次側ブリッジ回路120の一方の入力端子123となる。第4のレグの中間点、即ち、スイッチング素子Sw7とスイッチング素子Sw8との接続点が、2次側ブリッジ回路120のもう一方の入力端子124となる。図1の回路図において、変換部130のトランスTrの2次巻線は、2次側ブリッジ回路120の一方の入力端子123ともう一方の入力端子124とに接続されている。
【0023】
2次側ブリッジ回路120の出力端子127、128に流れる電流(以下2次側電流という)Iを測定するために電流測定部である電流計125が実施形態1の2次側ブリッジ回路120に設けられている。また、2次側ブリッジ回路120の出力端子127、128間の電圧(以下2次側電圧という)V2を測定するための電圧測定部である電圧計126が実施形態1の2次側ブリッジ回路120に設けられている。電流計125と電圧計126はこれらに限定されるものではなく、2次側ブリッジ回路120の1次側電流I1および1次側電圧V1が測定できるものであれば他の回路等であってもよい。
【0024】
(制御部の動作説明)
制御部140は、1次側電圧V1、1次側電流I1、2次側電圧V2および2次側電流I2を参照して、スイッチング素子Sw1~Sw8のスイッチングを制御する制御信号S1~S8をスイッチング素子Sw1~Sw8のゲートに供給する。
【0025】
(DC-DCコンバータの動作:起動時)
図2に基づき、実施形態1に係るDC-DCコンバータ100の起動時の動作を説明する。図2は、実施形態1に係るDC-DCコンバータ100の起動時における動作を示す図である。図2においては、制御信号S1ないしS8、トランス1次側電圧Vtr1、トランス2次側電圧Vtr2およびインダクタ電流iLを示している。ここで、トランス1次側電圧Vtr1は1次側ブリッジ回路110の出力電圧、トランス2次側電圧Vtr2は2次側ブリッジ回路120の入力電圧と一般的には称されている。
【0026】
起動時においては、1次側ブリッジ回路110における第1のレグ111と第2のレグ112との間のレグ間位相差がπであり、2次側ブリッジ回路120における第3のレグ121と第4のレグ122との間のレグ間位相差もπである。また、1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2も同じである。
【0027】
ただし、各レグにおいて2つのスイッチング素子(例えば、第1のレグ111におけるスイッチング素子Sw1とSw2)が同時に導通するときに流れる貫通電流を防ぐために、オンオフの切替えの際には、これら2つのスイッチング素子を双方ともオフとする制御信号(例えば制御信号S1とS2)を生成する。一般的に知られているように、2つのスイッチング素子を双方ともオフとする制御信号のタイミング差をデッドタイムTdと称している。即ち、制御信号S1~S8はデッドタイムTdを有している。
【0028】
第1~第4のレグ111~122を制御する制御信号(S1、S3、S5、S7およびS2、S4、S6、S8)はすべて同じタイミングになっているため、DC-DCコンバータ100には電流が全く流れない。即ち、トランス1次側電圧Vtr1、トランス2次側電圧Vtr2ともにゼロになり、インダクタ電流iLも流れずゼロとなる。
【0029】
(DC-DCコンバータの動作:比較例の還流電流動作時)
図3を用いて比較例の還流動作時のDC-DCコンバータ100の動作を説明する。比較例の還流動作においては、力行・回生動作に応じてどちらか片側のレグ間位相差を小さくすることでDC-DCコンバータ100の回路内に所望の還流電流を流していた。例えば、図2に示したように第1~第4のレグ111~122を制御する制御信号(S1、S3、S5、S7およびS2、S4、S6、S8)はすべて同じタイミングになっている状態から、第2のレグ112の制御信号S3、S4のタイミングのみを変更することによって、所望の還流電流を流す。このような制御信号S1~S8によって、DC-DCコンバータ100の電流経路は図4図6に示す経路となる。
【0030】
図4は、図3の区間Aにおける第1の電流経路を示す図である。また図5は、図3の区間Aにおける第2の電流経路を示す図である。なお、図3においては、第3および第4のレグ121、122のタイミングが起動時の状態から変更されているが、比較例の還流電流動作においては、この変更がないものとして扱っている。即ち、比較例の還流電流動作においては、図3において制御信号S5、S6およびS7、S8のタイミングが制御信号S1、S2と同じタイミングであるとの前提で説明している。また、図4図6および図9においては、図1に示したDC-DCコンバータ100の回路の一部を省略、簡易化した図としている。
【0031】
区間Aでは制御信号S2、S3、S6およびS8が高電位(H)となるため、スイッチング素子Sw2、Sw3、Sw6およびSw8がオン状態になる。このため、図4に示した矢印のような電流経路で電流が流れる。この後、途中で電流の向きが反転するため図5に示したように図4と同じ電流経路を逆向きに電流が流れることになる。
【0032】
力行時においては、1次側ブリッジ回路110のレグ間位相差φL1を小さくするため、1次側ブリッジ回路110内においては還流しない区間が生じるが、2次側ブリッジ回路120のレグ間位相差φL2=πであるため、2次側ブリッジ回路120において電流が還流して常に電力を出力しない。1次側ブリッジ回路110の直流電圧とインダクタが導通するため、この区間Aの長さを制御するによってインダクタ電流の大きさを決めることができる。したがって、定格電力やスナバコンデンサCsnub1~Csnub8の値を考慮して区間Aの長さを決めるのが良い。
【0033】
図6は、図3の区間Bにおける電流経路を示す図である。区間Bでは制御信号S1、S3、S5およびS7が高電位(H)となるため、スイッチング素子Sw1、Sw3、Sw5およびSw7がオン状態になる。このため、図6に示した矢印のような電流経路で電流が流れる。即ち、1次側ブリッジ回路110内および2次側ブリッジ回路120内において電流が還流し、電力は全く出力されない。
【0034】
(DC-DCコンバータの動作:実施形態1の還流電流動作時)
図3は、実施形態1の還流動作時のDC-DCコンバータ100の動作を説明する図である。実施形態1の還流動作は、比較例の還流動作と異なり、2次側ブリッジ回路120の第3および第4のレグ121、122の制御信号S5、S6およびS7、S8のタイミングが変更されている。具体的には、制御信号S5、S6およびS7、S8のデッドタイムTdが、制御信号S1、S2のデッドタイムTdと制御信号S3、S4のデッドタイムTdとの時系列における中心になるようタイミングが制御されている。この点について以下詳述する。
【0035】
図3の点線丸枠60で示したように、制御信号S5、S6およびS7、S8のデッドタイムTdの区間中に2次側ブリッジ回路120のスナバコンデンサCsnub5~Csnub8が充放電されることによってインダクタ(リアクトルLおよびリアクトルL)に2次側ブリッジ回路120の電圧がわずかに印加される。そのため、比較例の還流電流動作時で説明した方法だけではインダクタ電流iLを所望の値に調整することができない。
【0036】
そこで、ブリッジ間の位相差を制御して、制御信号S5、S6およびS7、S8のデッドタイムTdが制御信号S1、S2のデッドタイムTdと制御信号S3、S4のデッドタイムTdとの時系列における中心になるよう制御する。これにより、2次側ブリッジ回路120のスナバコンデンサCsnub5~Csnub8の充放電のタイミングが、区間Aの中心となるように制御できる。具体的には図3に示すブリッジ間位相差φBを式(1)となるように調整する。
【0037】
φB=Td+(π-φL1)/2・・・・(1)
図7は、図3の点線丸枠60を拡大して示した波形図である。図7で示した制御信号S5、S6およびS7、S8のデッドタイムTdの区間中に2次側ブリッジ回路120のスナバコンデンサCsnub5~Csnub8が充放電される。図7で示されるように、このデッドタイムTdの区間中に、インダクタ電流iLが正から負に反転している。即ち、スナバコンデンサCsnub5~Csnub8に流れる電流の向きが反転するため、図7に示すように、トランス2次側電圧Vtr2は一度電圧が上がった後に下がる波形となる。
【0038】
この時、インダクタにはトランス1次側電圧Vtr1とトランス2次側電圧Vtr2の差であるVtr1-Vtr2の電圧が印加される。このような変動の大きい電圧が印加されると、DC-DCコンバータ100の出力電力特性の線形性が損なわれる原因となる。実施形態1においても、変動の大きい電圧の印加自体は避けられないが、線形性が失われる出力範囲を大幅に短縮できる。
【0039】
(DC-DCコンバータの出力電力特性シミュレーション)
実施形態1の還流電流動作時におけるDC-DCコンバータの出力電力特性を、比較例技術における還流電流動作時におけるDC-DCコンバータの出力電力特性と比較するため、シミュレーションを実施した。このシミュレーションにおいては、図1に示したDC-DCコンバータにおいて、以下の表1に示す数値を用いた。
【0040】
【表1】
なお、このシミュレーションで用いた数値は、一般的なDC-DCコンバータにおける数値を用いており、特殊な数値は使っていない。
(比較例技術における出力電力特性シミュレーション)
図8は比較例技術による還流電流動作時のDC-DCコンバータの出力電力特性をシミュレーションした結果のそれぞれの出力電力特性を示す図である。図8において、縦軸は出力電力(kW)を示し、横軸はブリッジ間位相差および/またはレグ間位相差を示している。また、図8においては、位相シフト制御を実施した出力電力特性80、片側パルス幅制御を実施した出力電力特性81および両側パルス幅制御を実施した出力電力特性82を示している。
【0041】
ここで、位相シフト制御とは、ブリッジ間位相差φBのみを制御している比較例の技術である。図8のシミュレーションにおいては、例えば出力電力―100.2(kW)に対してブリッジ間位相差φBが-22.9度に算出されている。このように、図8の出力電圧特性80において、縦軸は出力電力(kW)、横軸はブリッジ間位相差を示したものである。
【0042】
片側パルス幅制御とは、ブリッジ間位相差φBに加えて、1次側ブリッジ回路110または2次側ブリッジ回路120のいずれか一方、即ち、片側のレグ間位相差φLを制御している比較例の技術である。図8のシミュレーションにおいては、ブリッジ間位相差φBと片側のレグ間位相差φLとが同じ値をとるよう設定している。そのため、例えば出力電力-102(kW)に対してブリッジ間位相差φBは負の値である-15.8度、レグ間位相差φLは絶対値が同じで正の値である15.8度が算出されている。このように、片側パルス幅制御の場合、ブリッジ間位相差φBとレグ間位相差φLの絶対値が等しい値をとる。また、図8の出力電力特性81においては、縦軸は出力電力(kW)、横軸はブリッジ間位相差またはレグ間位相差を示したものである。
【0043】
両側パルス幅制御とは、ブリッジ間位相差φBに加えて、1次側ブリッジ回路110および2次側ブリッジ回路120の両側のレグ間位相差である1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2とを制御している比較例の技術である。図8のシミュレーションにおいては、1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2とは同じ値をとるよう設定している。この結果、一例として出力電力―102.6(kW)に対してブリッジ間位相差φBは-23.8度、1次側レグ間位相差φL1(またはレグ間位相差φL2)は7.9度が算出される。
【0044】
この算出例のように、ブリッジ間位相差φBと1次側レグ間位相差φL1(またはレグ間位相差φL2)は異なる値が算出されるため、図8において両者を示すことはできない。そこで、図8においては、ブリッジ間位相差φBと出力電力(kW)との関係を示した。したがって、図8の出力電力特性82において、縦軸は出力電力(kW)、横軸はブリッジ間位相差を示したものである。
【0045】
図8からわかるように、位相シフト制御の出力電力特性80、片側パルス幅制御の出力電力特性81および両側パルス幅制御の出力電力特性82のすべてにおいて、低出力領域である縦軸および横軸の交点付近において各出力電力特性の線形性が失われている区間があることがわかる。これはデッドタイムTdよりブリッジ間位相差φBまたはレグ間位相差φLが小さい場合に発生する現象である。
【0046】
図9は、比較例技術におけるDC-DCコンバータ内での電流経路を示した図である。上述した比較例技術の制御においては、デッドタイムTdの区間中においてLC直列回路が形成される。これにより、図9における実線および点線の矢印が示すように、1次側ブリッジ回路110においては電流が双方向に流れて振動する。具体的には、インダクタLとスナバコンデンサCsnubが直列に接続されたLC直列回路が形成されるため、デッドタイム区間中のトランス電圧とトランス電流の振動の周波数は次の数式で表される値となる。
【0047】
【数1】

図10は比較例技術におけるデッドタイム区間中のトランス1次側電圧、トランス一次側電流およびインダクタ電圧を示す図である。
【0048】
図9でも説明したように、デッドタイムTdの区間中において、トランス一次側電圧は変動する。したがって、図10に示すように、トランス一次側電流の向きがデッドタイムTd区間中に反転することでスナバコンデンサにおいて充電されていたものは放電し、放電していたものは充電状態に転じることになる。これによってインダクタ電圧が図10の点線枠90に示すように、正負の逆転が起こるようになる。図10において示されているように、インダクタ電圧が不安定になり、デッドタイムTdの区間中において正負の逆転も複数回起きる。このようにインダクタに印加される電圧を制御できなくなる結果、DC-DCコンバータの出力電力特性の線形性が失われる。図10において示した現象は少しの位相差でも出力が可能な、インダクタンスが小さい構成のDC-DCコンバータにおいて低出力領域で発生する。
【0049】
図8に戻って、比較例技術による還流電流動作時のDC-DCコンバータの出力電力特性をシミュレーションした結果について説明する。比較例の技術によるDC-DCコンバータの出力電力特性80、81および82のいずれの出力電力特性も、特に縦軸と横軸が交差する付近、即ち、出力電力が0~20kWの低出力領域において線形性が大きく損なわれている。このことから、比較例の技術によるDC-DCコンバータにおいて、低出力領域における動作は実用性に問題があるということが、今回のシミュレーションによって確認できた。
【0050】
(実施形態1における出力電力特性シミュレーション)
実施形態1の制御方法によれば、ブリッジ間位相差φBに加えて、1次側ブリッジ回路110および2次側ブリッジ回路120の両側のレグ間位相差である1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2とを異なる値で制御する。実施形態1における出力電力特性シミュレーションにおいては、ブリッジ間位相差φBを-7.2度に設定している。また、1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2とは連動する値に設定される。実施形態1における出力電力特性シミュレーションにおいては、片側パルス幅制御に切り替わる瞬間に100kW出力となるように1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2とに72度差を付けて制御した。
【0051】
図11は実施形態1のレグ間位相差の変化に対する出力電力特性を示す図である。図11において、縦軸は出力電力(kW)を示し、横軸はレグ間位相差を示している。
【0052】
図11に示した実施形態1の出力電力特性は、レグ間位相差のみを制御したものである。この出力電力特性11は、縦軸と横軸が交差する付近の領域12において線形性が若干損なわれているものの、それ以外の領域では線形性が保たれている。即ち、実施形態1のDC-DCコンバータは、低出力領域においても線形性を保った動作を実現できる。
【0053】
図12は実施形態1のブリッジ間位相差の変化に対する出力電力特性を示す図である。図11において、縦軸は出力電力(kW)を示し、横軸はブリッジ間位相差を示している。
【0054】
図12に示した実施形態1の出力電力特性は、DC-DCコンバータの出力を小さくして、1次側ブリッジ回路または2次側ブリッジ回路のいずれかのレグ間位相差がπになった後、ブリッジ間位相差を制御したときの出力電力特性を示したものである。
【0055】
図12に示した出力電力特性からわかるように、出力電力が0~1kW付近の区間では線形性が若干損なわれているものの、それ以外の領域では線形性が保たれている。このことから、実施形態1のDC-DCコンバータは、低出力領域においても出力電圧特性の線形性を保った動作を実現できることが確認できた。このような線形性を保持した出力電圧特性を有するDC-DCコンバータにおいては、制御するパラメータ、例えばブリッジ間位相差φBと出力電圧との関係が所定の比率を有するため、目標とした出力を正しく制御して出力させることが可能になる。
【0056】
なお、実施形態1の出力電力特性シミュレーションは比較例技術の出力電力特性シミュレーションと制御する対象が異なっているため、シミュレーション結果が同じスケールの図で示すことができない。しかしながら、スケールは異なっていても図における線形性の明確であるため、シミュレーション結果は出力されたそのままの値を示した。
【0057】
(実施形態1の効果)
上述したように、実施形態1のDC-DCコンバータによれば、低出力動作時においても線形性を維持した出力電力特性を有するDC-DCコンバータを実現できる。
【0058】
〔実施形態2〕
(制御部)
実施形態2の制御部30について、図13図16を参照しながら説明する。実施形態2では、制御部の内部構成がより具体化して示されている。実施形態2の制御部30は、実施形態1の制御部140に適用できる。
【0059】
図13は制御部30を示すブロック図である。図13に示すように、制御部30は電流制御部31と、電力制御部32と、制御信号生成部33とを備えている。電流制御部31、電力制御部32および制御信号生成部33については、以下詳細に図面を用いて説明する。
【0060】
(電流制御部)
図14は、電流制御部31の構成を示すブロック図である。電流制御部31は、偏差演算部41、電力演算部42およびPI(Proportional Integral)制御部43とを備えている。
【0061】
偏差演算部41の一方の入力には、ZVS可能な最小電流Izvs_minが入力され、他方の入力にはDC-DCコンバータ100の出力電流のピーク値I2peakが入力される。なお、ここではDC-DCコンバータ100において1次側ブリッジ回路110から2次側ブリッジ回路120へと電力が伝送される場合を想定し、2次側ブリッジ回路120から出力される出力電流のピーク値I2peakが偏差演算部41に入力されている。しかしながら、2次側ブリッジ回路120から1次側ブリッジ回路110へと電力が伝送される場合は、1次側ブリッジ回路110から出力される出力電流のピーク値偏差I1peakが偏差演算部411に入力される。偏差演算部41は両方の入力を比較して電力偏差を出力する。
【0062】
電力演算部42では、偏差演算部41から出力された電力偏差を1次側電圧V1、起動時のレグ間位相差π、スイッチング周波数f、インダクタンスLなどと演算を行い、位相偏差a(e)が出力される。
【0063】
この位相偏差a(e)はPI制御部43で増幅され、位相差異a(第1のレグ111と第2のレグ112との位相差φL1と第3のレグ121と第4のレグ122との位相差φL2との差異:a=φL1-φL2)が出力される。
【0064】
(電力制御部)
図15は、電力制御部32の構成を示すブロック図である。電力制御部32は、電力演算部51、偏差演算部52、位相偏差演算部53およびPI制御部54とを備えている。
【0065】
電力演算部51は、1次側ブリッジ回路110の電流計115及び電圧計116または2次側ブリッジ回路120の電流計125及び電圧計126から1次側電圧V1および1次側電流I1または2次側電圧V2、2次側電流I2のいずれかを取得する。ここで取得する電流と電圧は、DC-DCコンバータ100の動作状況に依存する。即ち、DC-DCコンバータ100において1次側ブリッジ回路110から2次側ブリッジ回路120へと電力が伝送される場合、電力演算部51は2次側電圧V2、2次側電流I2を取得する。また、2次側ブリッジ回路120から1次側ブリッジ回路110へと電力が伝送される場合、電力演算部51は1次側電圧V1および1次側電流I1を取得する。
【0066】
電力演算部51は、演算結果を偏差演算部52の他方の入力に出力する。偏差演算部52の一方の入力には、DC-DCコンバータ100の出力電力Poutが入力され、比較結果として電力偏差ΔPoutを導出する。
【0067】
位相偏差演算部53は、偏差演算部52から電力偏差ΔPoutを受け取るとともに、1次側電圧V1、2次側電圧V2、トランスの巻き線比n、スイッチング周波数fsw、インダクタンスLを数式に従って位相偏差φL2(e) を生成する。
【0068】
位相偏差φL2(e) はPI制御部54で増幅され、第3のレグ121と第4のレグ122の位相差φL2として出力される。
(制御信号生成部)
図16は、制御信号生成部33の構成を示すブロック図である。制御信号生成部33は、パルス幅調整(PWM)部61、デッドタイム調整部62、第1位相差付加部63、第2位相差付加部64およびインバータ65~68とを備えている。
【0069】
パルス幅調整部61は、所定のパルス幅を持つパルスを出力する。実施形態2のパルス幅調整部61は、スイッチング素子Sw5の制御に用いられる制御信号S5を出力している。制御信号S5はインバータ67によって反転されてスイッチング素子Sw6の制御に用いられる制御信号S6として出力される。ここで、インバータ67は信号を反転させるとともにデッドタイムTdだけ時間を遅延させる機能を持っている。
【0070】
図16においてインバータ67は1段のインバータで表現されているが、複数段のインバータもしくは他の回路を付加した構成により、遅延時間を調整している。なお、インバータ65、66および68においても同様の遅延時間調整機能を有しているため、以下の説明においては遅延時間調整機能の説明は省略する。
【0071】
制御信号S5はデッドタイム調整部62によって遅延時間が調整されて、スイッチング素子Sw1の制御に用いられる制御信号S1として制御信号生成部33から出力される。ここで、デッドタイム調整部62は、制御信号S5に対して所定時間だけタイミングを遅くする機能を有している。このデッドタイム調整部62によるタイミング調整によって、1次側ブリッジ回路110における制御信号S1~S4は、2次側ブリッジ回路120における制御信号S5~S8に対して所定時間だけ遅いタイミングとなる。このタイミング調整によって、第3および第4のレグのデッドタイムのタイミングが、第2のレグのデッドタイムと第1のレグのデッドタイムとの時系列における中心に設定される。
【0072】
第1位相差付加部63は、制御信号S1に対して所定時間である位相差φL2から位相差異aを引いた時間遅延させる。したがって制御信号S4は制御信号S1から所定時間遅延した信号となる。制御信号S4はインバータ66によって信号が反転され制御信号S3として出力される。
【0073】
第2位相差付加部64は、制御信号S5に対して所定時間である位相差φL2だけ時間遅延させる。したがって制御信号S8は制御信号S5から所定時間遅延した信号となる。なお、なお、制御信号S8はインバータ68によって信号が反転され制御信号S7として出力される。
【0074】
(実施形態2の効果)
実施形態2のDC-DCコンバータによれば、実施形態1の効果に加え、制御に用いる入力をDC-DCコンバータから取得しているため、制御部を容易に設計することが可能になる。
【0075】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るDC-DCコンバータは、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有するレグを構成単位として、第1の前記レグと第2の前記レグとを有する1次側ブリッジ回路と、第3の前記レグと第4の前記レグとを有する2次側ブリッジ回路と、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を同時に所定期間オフにするデッドタイムを前記制御信号に設定し、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムのタイミングを、前記第2のレグの前記デッドタイムと前記第1のレグの前記デッドタイムとの時系列における中心に設定することを特徴とする。
【0076】
本発明の態様2に係るDC-DCコンバータは、態様1において、さらに、前記制御部は、前記デッドタイムのタイミング設定を、前記1次側ブリッジ回路および/または前記2次側ブリッジ回路内で電流が還流する還流電流印加時に行うことを特徴とする。
【0077】
本発明の態様3に係るDC-DCコンバータは、態様2において、前記制御部は、前記デッドタイムをTd、前記還流電流印加時の1次側ブリッジ回路のレグ間位相差をφL1としたとき、前記還流電流印加時のブリッジ間位相差をφBは、φB=Td+(π-φL1)/2で表されることを特徴とする。
【0078】
本発明の態様4に係るDC-DCコンバータは、態様1ないし3のいずれかにおいて、前記制御部は、前記DC-DCコンバータの起動時には、前記第1ないし第4のレグの位相差は設定せずに前記デッドタイムのみを設定し、その後の還流電流印加時において、前記第1のレグと前記第2のレグとのレグ間位相差を設定することにより、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムのタイミングを、前記第2のレグの前記デッドタイムと前記第1のレグの前記デッドタイムとの時系列における中心に設定することを特徴とする。
【0079】
本発明の態様5に係るDC-DCコンバータは、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有するレグを構成単位として、第1の前記レグと第2の前記レグとを有する1次側ブリッジ回路と、第3の前記レグと第4の前記レグとを有する2次側ブリッジ回路と、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1ないし第4のレグにおけるそれぞれの前記スイッチング素子を同時に所定期間オフにするデッドタイムを前記制御信号に設定し、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムのタイミングを、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムの期間中に前記変換部に流れる電流が反転するよう設定することを特徴とする。
【0080】
本発明の態様6に係るDC-DCコンバータは、態様5において、さらに、前記制御部は、前記デッドタイムのタイミング設定を、前記1次側ブリッジ回路および/または前記2次側ブリッジ回路内で電流が還流する還流電流印加時に行うことを特徴とする。
【0081】
本発明の態様7に係るDC-DCコンバータは、態様5において、前記制御部は、前記デッドタイムをTd、前記還流電流印加時の1次側ブリッジ回路のレグ間位相差をφL1としたとき、前記還流電流印加時のブリッジ間位相差をφBは、φB=Td+(π-φL1)/2で表されることを特徴とする。
【0082】
本発明の態様8に係るDC-DCコンバータは、態様5ないし7のいずれかにおいて、 前記制御部は、前記DC-DCコンバータの起動時には、前記第1ないし第4のレグの位相差は設定せずに前記デッドタイムのみを設定し、その後の還流電流印加時において、前記第1のレグと前記第2のレグとのレグ間位相差を設定することにより、前記第3および前記第4のレグの前記デッドタイムの期間中に前記変換部に流れる電流が反転するよう設定することを特徴とする。
【0083】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
100 DC-DCコンバータ
110 1次側ブリッジ回路
120 2次側ブリッジ回路
130 変換部
111 第1のレグ
112 第2のレグ
121 第3のレグ
122 第4のレグ
Sw1~Sw8 スイッチング素子
D1~D8 ダイオード
snub、Csnub1~Csnub8 スナバコンデンサ(コンデンサ素子)
L、L1、L2 リアクトル(インダクタ)
Tr トランス
2 1次側電流
2 2次側電流
1 1次側電源
2 2次側電源
1 1次側電圧
2 2次側電圧
S1~S8 制御信号
tr1 トランス1次側電圧
tr2 トランス2次側電圧
L インダクタ電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16