(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034876
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】コイルホルダ
(51)【国際特許分類】
B21C 47/28 20060101AFI20230306BHJP
B21C 47/20 20060101ALI20230306BHJP
B65H 75/36 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B21C47/28 A
B21C47/20
B65H75/36 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141327
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮下 敏
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓実
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆則
(72)【発明者】
【氏名】村田 真哉
【テーマコード(参考)】
3F068
4E026
【Fターム(参考)】
3F068AA11
3F068BA08
3F068CA10
3F068DA04
3F068DB03
3F068EA02
3F068HA02
4E026CC02
4E026FA08
(57)【要約】
【課題】コイル材を円滑に引き抜くことができるコイルホルダを提供する。
【解決手段】棒鋼で構成されたコイル材が巻回されてなるコイルを挿通支持するホルダ支柱18と、ホルダ支柱18に挿通支持されたコイルを下側から支持するホルダ支持部とを備えるコイルホルダであって、ホルダ支持部は、ホルダ支柱18からホルダ支柱18に対して垂直かつ径方向に延びるホルダ梁と、コイル材の内径がその上側に位置するコイル材の内径より大きくなるように、コイル材を支持する三角板24の斜辺24aおよび直棒27とを備え、斜辺24aおよび直棒27は、コイル材を、ホルダ梁との間に隙間を設けるように支持し、かつ、ホルダ梁17から上方に行くほどホルダ支柱18との距離が短くなるように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒鋼で構成されたコイル材が巻回されてなるコイルが挿通されるホルダ支柱と、前記ホルダ支柱に挿通された前記コイルを下側から支持するホルダ支持部とを備えるコイルホルダであって、
前記ホルダ支持部は、
前記ホルダ支柱から径方向に、かつ、前記ホルダ支柱に対して垂直に延びるホルダ梁と、
前記コイル材の内径がその上側に位置する前記コイル材の内径より大きくなるように、前記コイル材を支持する傾斜部とを備え、
前記傾斜部は、前記コイルと前記ホルダ梁との間に隙間を設けるように前記コイルを支持し、かつ、前記ホルダ梁から上方に行くほど前記ホルダ支柱との距離が短くなるように構成されている
コイルホルダ。
【請求項2】
前記傾斜部は、
前記ホルダ梁とのなす角が第1角度を有し、かつ、前記コイルから引き抜かれる前記コイル材がその上側に位置する前記コイル材と絡まることを抑制する第1傾斜部と、
前記ホルダ梁とのなす角が前記第1角度よりも小さい第2角度を有し、前記第1傾斜部の下側、かつ、径方向の外側において、最下層の前記コイル材の散開を促す第2傾斜部とを備える
請求項1に記載のコイルホルダ。
【請求項3】
前記コイルホルダは、さらに、
前記ホルダ支柱と前記ホルダ梁とを繋ぐ前記傾斜部を備えた治具を備える
請求項1または2に記載のコイルホルダ。
【請求項4】
前記治具は、前記第1傾斜部を構成するユニットと、前記第2傾斜部を構成するユニットとを別体として備える
請求項2を引用する請求項3に記載のコイルホルダ。
【請求項5】
前記棒鋼は、JIS G 3112:2020においてSD295として特定された鉄筋コンクリート用棒鋼である
請求項1ないし4のうち、何れか1項に記載のコイルホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒鋼で構成されたコイル材を巻回したコイルを保持するコイルホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
異形棒鋼などの棒鋼は、直棒の状態で保管されるものもあれば、棒鋼を巻回しコイルの状態で保管されるものもある。コイルの状態では、径方向に複数の層を構成するように棒鋼のコイル材が巻回されている。コイルの状態で保管された棒鋼は、棒鋼を直棒の状態で保管する場合と比べて、置き場効率を大幅に改善することができる(非特許文献1参照)。
【0003】
棒鋼の加工時、コイルは、NC加工機に設置される。NC加工機は、コイルが設置されるコイルホルダと、棒鋼を直線状に伸線する加工部とを備えている。コイルホルダに設置されるコイルは、コイル材が順次牽引ローラによって引き抜かれ、加工部において、未伸線のコイル材が直線状に加工される。コイルにおけるコイル材の引き抜き位置は、コイルの上端から下端に向かって順次移動し、次いで、コイルの下端から上端に向かって順次移動し、これが2巻ごとに繰り返される。
【0004】
コイルホルダは、ホルダ支柱と、ホルダ支柱の下端に設けられるホルダ支持部とを備えている。コイルの内面は、ホルダ支柱に挿通される。コイルの下面は、ホルダ支持部に支持される。ホルダ支持部は、ホルダ支柱に対して垂直かつ径方向に延びるホルダ梁を備える。ホルダ支柱に挿通されたコイルの下面は、ホルダ梁の上面である梁面によって下側から支持される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】トピー工業株式会社、″日本初のコンパクトコイル″、[online]、トピー工業株式会社ホームページ、[令和3年8月27日検索]、インターネット<https://www.topy.co.jp/ja/dept/steel/coil.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなコイルホルダにおいて、コイル材の引き抜き位置がコイル下端からコイル上端に向かって移るように、コイル材が引き抜かれるとき、引き抜かれるコイル材、例えば最下段のコイル材は、その上側に位置する下から2段目のコイル材とホルダ梁とに挟まれてしまうことがある。また、引き抜かれるコイル材がその上側に位置するコイル材よりも内側に潜り込んでしまうことがある。なお、このように、引き抜かれるコイル材がその上側のコイル材に絡まる現象は、コイルのなかの最下段のコイル材を引き抜くときだけでなく、最下段のコイル材よりも上側に位置するコイル材を引き抜くときにも生じ得る。そして、コイル材が絡まる現象は、コイルホルダからのコイル材の円滑な引き抜きの妨げになり、生産性を低下させる一因となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのコイルホルダは、棒鋼で構成されたコイル材が巻回されてなるコイルが挿通されるホルダ支柱と、前記ホルダ支柱に挿通された前記コイルを下側から支持するホルダ支持部とを備えるコイルホルダであって、前記ホルダ支持部は、前記ホルダ支柱から径方向に、かつ、前記ホルダ支柱に対して垂直に延びるホルダ梁と、前記コイル材の内径がその上側に位置する前記コイル材の内径より大きくなるように、前記コイル材を支持する傾斜部とを備え、前記傾斜部は、前記コイルと前記ホルダ梁との間に隙間を設けるように前記コイルを支持し、かつ、前記ホルダ梁から上方に行くほど前記ホルダ支柱との距離が短くなるように構成されている。
【0008】
上記構成によれば、コイル材とホルダ梁との間に隙間を設けるように、傾斜部がコイル材を支持するため、傾斜部に支持されるコイル材のなかで、相対的に下側に位置するコイル材は、その上側に位置するコイル材とホルダ梁とに挟まれることを抑制できる。
【0009】
また、傾斜部が径方向の外側に向けてコイル材を支持するため、相対的に下側のコイル材がその上側のコイル材の内側に潜り込んでしまうことも抑制できる。
また、傾斜部に支持されるコイル材のなかで、相対的に上側に位置するコイル材の下向きの荷重は、その下側に位置するコイル材と傾斜部とに分散される。このため、相対的に上側に位置するコイル材がその下側のコイル材のみによって支持される場合と比べて、コイル材の位置が安定する。そして、コイル材の位置が安定する分だけ、相対的に下側に位置するコイル材は、その上側に位置するコイル材とホルダ梁とに挟まれること、および相対的に下側のコイル材がその上側のコイル材の内側に潜り込んでしまうことをさらに抑制できる。
【0010】
上記コイルホルダにおいて、前記傾斜部は、前記ホルダ梁とのなす角が第1角度を有し、かつ、前記コイルから引き抜かれる前記コイル材がその上側に位置する前記コイル材と絡まることを抑制する第1傾斜部と、前記ホルダ梁とのなす角が前記第1角度よりも小さい第2角度を有し、前記第1傾斜部の下側、かつ、径方向の外側において、最下層の前記コイル材の散開を促す第2傾斜部とを備えていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、第1傾斜部によって引き出されるコイル材の絡まりを抑制し、第2傾斜部によって最下段のコイル材を径方向の外側に向けて散開することができる。
上記コイルホルダにおいて、前記コイルホルダは、さらに、前記ホルダ支柱と前記ホルダ梁とを繋ぐ前記傾斜部を備えた治具を備えるようにしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、傾斜部を有していないコイルホルダに対して、治具を後付けすることで、傾斜部を設けることができる。
上記コイルホルダにおいて、前記治具は、前記第1傾斜部を構成するユニットと、前記第2傾斜部を構成するユニットとを別体として備えてもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1傾斜部を構成するユニットおよび第2傾斜部を構成するユニットの何れか1つのユニットのみをコイル材の物性や寸法などの特性に応じて使用することもできる。
【0014】
上記コイルホルダにおいて、前記棒鋼は、一例として、JIS G 3112:2020においてSD295として特定された鉄筋コンクリート用棒鋼である。
上記構成によれば、コイルを構成するコイル材がSD500などの異形棒鋼よりも柔らかいSD295の棒鋼であっても、コイルホルダからコイル材を引き抜くときにコイル材が絡まることを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コイル材をコイルから円滑に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】コイルホルダが用いられるNC加工機の構成を示す図である。
【
図2】コイルが設置されていない状態のコイルホルダの斜視図である。
【
図4】治具を構成する絡まり抑制ユニットを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図5】治具を構成する散開補助ユニットを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【
図6】絡まり抑制ユニットと散開補助ユニットとを組み合わせた状態の側面図である。
【
図7】コイルが設置された状態のコイルホルダの斜視図である。
【
図8】(a)~(c)は、コイル材が引き抜かれるときのコイル材の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用されたコイルホルダについて図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明が適用されコイルホルダ2は、NC加工機1に設置されるものである。コイルホルダ2には、棒鋼で構成されたコイル材3aを巻回して構成されたコイル3が設置される。ここで使用される棒鋼は、表面に凹凸のある異形棒鋼であって、例えばJIS G 3112:2020においてSD295として特定された鉄筋コンクリート用棒鋼である。また、ここでの棒鋼は、SD500などの異形棒鋼と比べて降伏応力が低い、柔らかい材料である。
【0018】
コイル3は、棒鋼としてのコイル材3aを高密度に巻き取って構成され円筒形状を有している。一例として、コイル3は、内径900mm、外径1115mm、高さ800mmの大きさを有している。
【0019】
コイル3は、スプーラーラインにおいて巻回される。具体的に、コイル3は、コイル材3aを、スプールの軸を水平とする自動巻取機によって、スプールに対して左右何れかの端部から他端側に向かって順次巻き取り、他端側に達すると対処の端部に向かって順次巻き取り、これを繰り返すことによって構成されている。コイルホルダ2には、このように構成されたコイル3が設置される。
【0020】
NC加工機1は、コイルホルダ2と、加工部4とを備えている。コイルホルダ2に設置されたコイル3からは、コイル材3aが牽引ローラによって引き抜かれ、加工部4へと送られる。加工部4では、コイル3から引き抜かれた未伸線のコイル材3aが投入されると、伸線、曲げ、切断加工が自動的に行われる。
【0021】
<コイルホルダの構成>
図2に示すように、コイルホルダ2は、回転台12に設置される基部11と、コイル3が設置される設置部16とを備えている。基部11は、基部11の中心に、回転台12と接続される中心軸部12aを備え、中心軸部12aの下端から放射状に梁13が延び、円形の外周下フレーム14と接続されている。外周下フレーム14からは、外周下フレーム14の周方向に、縦フレーム15が等間隔に立設されている。
【0022】
設置部16は、基部11の上側に位置する。設置部16は、中心軸部12aから複数本のホルダ梁17が放射状に延びている。ホルダ梁17は、設置されたコイル3を支持するホルダ支持部である。ホルダ梁17は、中心軸部12aを中心に放射状に、かつ、中心軸部12aの延在方向に対して垂直に延びている。中心軸部12aから径方向に延びるホルダ梁17の途中からは、ホルダ梁17の延在方向に対して垂直に、複数本のホルダ支柱18が立設されている。複数本のホルダ支柱18は、コイル3の中央開口に挿入可能に、かつ、中心軸部12aの周方向に等間隔を空けて立設されている。一例として、複数本のホルダ支柱18は、複数本のホルダ支柱18を通る円の内径がコイル3の内径よりも若干小さいように、コイル3の内径に合わせて立設されている。ホルダ梁17に対してホルダ支柱18は、一例としてボルトおよびナットによりボルト締結される。ホルダ梁17には、ホルダ支柱18を通る円の内径を調整できるように、複数の固定孔30aがホルダ梁17の延在方向に沿って一列に並んでいる。
【0023】
各ホルダ梁17は、ホルダ支柱18の基端から、さらに径方向の外側に延びている。ホルダ梁17における径方向の外側の先端部は、縦フレーム15の高さ方向における中途部に接続されている。縦フレーム15の上端は、円形の外周上フレーム19に接続されている。外周上フレーム19は、設置されるコイル3の外径よりも若干大きい内径を有している。
【0024】
外周上フレーム19の位置がホルダ支柱18の先端位置よりも低くなるように、外周上フレーム19の高さは構成されている。上下方向においてホルダ梁17よりも上側に位置する縦フレーム15の部分、および外周上フレーム19は、コイル3の脱落を防ぎつつ、コイル3の設置作業や設置部16に設置されたコイル3からコイル材3aを引き抜く際の妨げとならないように構成されている。
【0025】
<治具の構成>
設置部16には、さらに、設置されたコイル3から円滑にコイル材3aが引き抜かれるようにするための治具21が取り付けられる。この治具21は、設置部16に対して後付けで取り付け可能であり、さらに、着脱可能である。
【0026】
図3に示すように、治具21は、絡まり抑制ユニット22と散開補助ユニット23とを備える。絡まり抑制ユニット22は、コイル3から引き抜かれるコイル材3aの絡まりを抑制する。散開補助ユニット23は、最下層のコイル材3aの散開を促す。
【0027】
図4(a)および(b)に示すように、絡まり抑制ユニット22は、2枚の三角板24と、2枚の三角板24を連結する第1連結片25および第2連結片26とを備えている。各三角板24は、直角三角形状を有する金属平板である。第1連結片25および第2連結片26は、矩形金属平板である。第1連結片25は、各三角板24のなかの縦辺24bの延在方向と第1連結片25の面方向とが平行となるように、溶接などによって各三角板24に固定されている。第2連結片26は、第1連結片25の下側に位置し、かつ、各三角板24のなかの底辺24cの延在方向と第2連結片26の面方向とが平行となるように、溶接などによって各三角板24に固定されている。
【0028】
2枚の三角板24は、三角板24の面方向が相互に平行となるように、ホルダ支柱18の幅に対応した間隔を空けている。各三角板24には、底辺24cの近くに貫通孔29が穿設されている。斜辺24aは、コイル3の内周面を支持する第1傾斜部を構成し、コイル材3aの絡まりを抑制する絡まり抑制部として機能する。
【0029】
絡まり抑制ユニット22が設置部16に設置された状態において、三角板24の斜辺24aと縦辺24bととの交点である頂点の位置は、ホルダ支柱18の先端よりも低く、さらに好ましくは、コイルホルダ2に設置された未使用のコイル3の上端よりも低い。なお、三角板24の斜辺24aと縦辺24bとの交点である頂点の位置は、ホルダ支柱18の先端と同じ高さでも、先端よりも高くても、低くてもよい。
【0030】
図5(a)および(b)に示すように、散開補助ユニット23は、直棒27と、支持部材28とを備えている。直棒27は、一例として異形棒鋼であるが、平鋼、丸棒であってもよい。直棒27は、直棒27の延在方向に長さL2を有している。直棒27の長さL2は、ホルダ梁17の延在方向におけるホルダ支柱18と縦フレーム15との間の長さL1よりも若干長い(
図6参照)。支持部材28は、直方体のブロックであって、直棒27の一端に溶接などによって固定されている。直棒27は、第2傾斜部として機能し、コイル材3aの最下段のコイル材3aを支持し、さらにコイル材3aの散開を補助または促す散開補助部として機能する。
【0031】
なお、散開補助ユニット23が設置部16に設置された状態において、直棒27の他端は、最下段のコイル材3aを散開できるのであれば、縦フレーム15まで延びていても、延びていなくてもよい。また、未使用のコイル3の外周面まで延びていてもよいし、延びていなくてもよい。直棒27の他端が縦フレーム15まで延びている構成であれば、ホルダ支柱18と縦フレーム15との間で、直棒27の径方向における位置決めが容易となる。
【0032】
絡まり抑制ユニット22と散開補助ユニット23とは、別体である。絡まり抑制ユニット22と散開補助ユニット23とは、例えば、絡まり抑制ユニット22がホルダ梁17の所定位置およびホルダ支柱18の所定位置に固定された後、散開補助ユニット23が取り付けられる。
【0033】
<実施形態の作用>
以上のように構成されたコイルホルダ2は、次のような作用を有する。
コイルホルダ2には、コイル3の設置に先立って、治具21が取り付けられる。具体的には、
図6に示すように、絡まり抑制ユニット22は、2枚の三角板24の間にホルダ支柱18が位置するように、コイルホルダ2に設置される。そして、第2連結片26の下面がホルダ梁17の梁面17aに載置されるとともに、第1連結片25がホルダ支柱18の外面に突き当てられる。これにより、絡まり抑制ユニット22は、ホルダ支柱18およびホルダ梁17に対する位置を定められる。
【0034】
この際、ホルダ梁17とホルダ支柱18とがなす角部分には、三角板24に穿設された貫通孔29が配置される。貫通孔29には、治具21を固定するための固定具30が配置される。固定具30は、三角板24をボルトおよびナットによって、ホルダ梁17に対して固定する。これにより、絡まり抑制ユニット22は、ホルダ梁17およびホルダ支柱18に対して固定される。絡まり抑制ユニット22において、2枚の三角板24の斜辺24aは、第1傾斜部として機能し、ホルダ梁17の梁面17aに対して第1角度θ1を有する。
【0035】
次いで、絡まり抑制ユニット22には、散開補助ユニット23が取り付けられる。具体的に、直棒27の一端は、支持部材28が第2連結片26の上面に載置されることによって支持される。直棒27の他端は、ホルダ梁17の梁面17a上であって、縦フレーム15の近傍に位置する。直棒27は、ホルダ梁17上において、一端から他端に向かって下る第2傾斜部として機能し、ホルダ梁17に対して第1角度θ1よりも小さい第2角度θ2を有する。第2角度θ2は、支持部材28の高さによって調整されるものであり、支持部材28を高くすれば、第2角度θ2は、大きくなり、支持部材28を低くすれば、第2角度θ2は、小さくなる。支持部材28は、第2連結片26またはホルダ支柱18と固定具を使って固定するようにしてもよい。また、直棒27の他端も固定具を使って固定するようにしてもよい。
【0036】
図7に示すように、コイルホルダ2に対する治具21の取付が完了すると、コイルホルダ2には、未使用のコイル3が設置される。未使用のコイル3のなかで巻回されている部分は、絡まり抑制部として機能する第1傾斜部である斜辺24aによって支持される。これにより、コイル3のなかで巻回されている部分と、ホルダ梁17の梁面17aとコイル3の下面との間に隙間が設けられる。また、未使用のコイル3のなかでコイルホルダ2から出る直前の部分は、散開補助部として機能する第2傾斜部である直棒27によって支持される。
【0037】
コイル材3aが牽引ローラによって牽引されることで、コイルホルダ2は、中心軸部12aの位置を回転中心としてコイル3とともに回転する。これにより、コイル材3aは、コイル3から順次、加工部4へと引き抜かれて行く。コイル材3aの引き抜き位置は、コイル3の上端から下端に向かって順次移動し、次いで、コイル3の下端から上端に向かって順次移動し、これが2巻ごとに繰り返される。
【0038】
コイル材3aが順次コイル3から引き抜かれるとき、コイル材3aは、コイル内径がその上側に位置するコイル材3aのコイル内径より大きくなるように、斜辺24aおよび直棒27に支持される。斜辺24aによって構成される第1傾斜部、および直棒27によって構成される第2傾斜部は、梁面17aから上方に行くほどホルダ支柱18との距離が短くなるように構成される。したがって、斜辺24aに支持されているコイル材3aの直下、および直棒27に支持されているコイル材3aの直下では、下側のコイル材3aがその上側のコイル材3aよりも径方向の外側にずれる。すなわち、相対的に下側に位置しているコイル材3aの内径がその上側に位置するコイル材3aのコイル内径より大きくなるように支持される。そして、斜辺24aよりも下側、かつ径方向の外側に位置する直棒27の部分では、コイル材3aがコイルホルダ2の出口に近づくほど、コイル材3aが径方向の外側に散開する。
【0039】
図8(a)は、コイル3から引き抜かれるコイル材3aの位置が図中上から下に向かって遷移する状態を説明する模式図である。
図8(b)、(c)は、コイル3から引き抜かれるコイル材3aの位置がコイル3のなかの最下段であるときの状態を説明する模式図である。
【0040】
なお、
図8(a)、(b)において、「A」は、コイル3のなかで「B」よりもNC加工機1側に位置するコイル材3aである。
図8(a)、(b)において、「B」は、コイル3のなかで「A」よりもNC加工機1とは反対側の反引き抜き側に位置するコイル材3aである。
図8(c)において、コイルホルダ2は、
図8(a)、(b)の状態から1/2回転だけ回り、「B」は、コイル3のなかで「A」よりもNC加工機1側に位置する。
【0041】
図8(a)の中段一点鎖線に示すように、コイル3から引き抜かれるコイル材3aの位置がコイル3のなかの上下方向の中間であるとき、コイルホルダ2からNC加工機1に向けた張力は、まず、引き抜き位置のコイル材3a(図中の中段「A」)に作用する。次いで、引き抜き位置とは反対側の反引き抜き位置(図中の中段「B」)に張力が伝わり、反引き抜き位置のコイル材3aがNC加工機1に向けて引っ張られる。これにより、引き抜き位置のコイル材3aが矢印D1に沿って引き抜かれると共に、コイルホルダ2が1/2回転だけ回る。
【0042】
図8(a)の下段破線に示すように、コイル3から引き抜かれるコイル材3aの位置がコイル3のなかの下端であるとき、引き抜かれるコイル材3a(
図8(a)中の最下段「A」)が三角板24の斜辺24aに支持されている。引き抜き位置が三角板24の斜辺24aに位置する場合も、コイルホルダ2からNC加工機1に向けた張力が引き抜き位置に作用する。次いで、引き抜き位置とは反対側の反引き抜き位置にも張力が伝わり、反引き抜き位置のコイル材3a(
図8(a)中の最下段「B」)がNC加工機1に向けて引っ張られる。そして、引き抜き位置のコイル材3aが矢印D2に沿って引き抜かれはじめる。
【0043】
この際、反引き抜き位置のコイル材3a(
図8(a)中の最下段「B」)は、斜辺24aによって、径方向の外側に向けて支持されている。そのため、反引き抜き位置のコイル材3a(
図8(a)中の最下段「B」)は、NC加工機1に向けた張力を受けながらも、その上側のコイル材3aよりも径方向の内側に潜り込むことを抑制される。
【0044】
図8(b)に示すように、最下段のコイル材3aが引き抜かれはじめると、引き抜き位置のコイル材3a(
図8(b)中の最下段「A」)は、矢印D3に沿って径方向の外側に引き抜かれながら、第2傾斜部である直棒27に散開を案内される。また、反引き抜き位置のコイル材3a(
図8(b)中の最下段「B」)は、引き抜き位置のコイル材3aに追従するように、直棒27に散開を案内されはじめる。
【0045】
この際、最下段よりも上側に位置するコイル材3aが最下段のコイル材3aに作用させる下向き荷重Lは、最下段のコイル材3aと斜辺24aとに分散する。このため、最下段よりも上側のコイル材3aが下側のコイル材3aにのみに支持される場合と比べて、最下段よりも上側のコイル材3aの位置が安定する。
【0046】
図8(c)に示すように、
図8(b)における引き抜き位置(
図8(b)中の最下段「A」)のコイル材3aが矢印D3に沿って引き抜かれると、コイルホルダ2が1/2回転だけ回る。そして、引き抜き位置に変位したコイル材3a(
図8(c)中の最下段「B」)が引き抜かれはじめる。
【0047】
この際、反引き抜き位置のコイル材3a(
図8(c)中の最下段「A」)は、その上側のコイル材3aと直棒27とによって、径方向の外側に向けて支持されている。そのため、反引き抜き位置のコイル材3a(
図8(c)中の最下段「B」)は、NC加工機1に向けた張力を受けながらも、その上側のコイル材3aよりも径方向の内側に潜り込むことが抑制される。
【0048】
なお、
図8(b)、(c)に示す引き抜きは、複数段のコイル材3aにわたり繰り返される。すなわち、最下段のコイル材3aが引き抜かれた分だけ、その上側のコイル材3aが下方にずれるような引き抜きは、複数段のコイル材3aにわたり繰り返される。一方、巻形状や巻回位置を保持しやすい棒鋼であるコイル材3aは、
図8(b)、(c)に示す引き抜きを複数段にわたり繰り返した後、コイル材3aの引き抜き位置を斜辺24aからコイル3の上端に向けて徐々に変位させる。
【0049】
<実施形態の効果>
以上のようなコイルホルダ2は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)斜辺24aおよび直棒27は、コイル材3aと梁面17aとの間に隙間を形成するように、コイル3を支持する。そのため、引き抜かれるコイル材3aがその上側に位置するコイル材3aと梁面17aとに挟まれることを抑制できる。これにより、コイル材3aは、円滑に、すなわち連続的してコイル3から引き抜かるようになり、棒鋼加工における生産性の低下を抑制できる。
【0050】
(2)また、反引き抜き位置のコイル材3aが径方向の外側に向けて支持されるため、反引き抜き位置のコイル材3aがその上側のコイル材3aの内側に潜り込んでしまうことも抑制できる。
【0051】
(3)また、最下段の上側に位置するコイル材3aの下向きの荷重Lは、最下段のコイル材3aと斜辺24aとに分散される。このため、最下段の上側に位置するコイル材3aが最下段のコイル材3aのみによって支持される場合と比べて、コイル材3aの位置が安定する。そして、コイル材3aの位置が安定する分だけ、上記(1)および(2)に準じた効果をさらに高められる。
【0052】
(4)第1傾斜部としての斜辺24aは、下側のコイル材3aがその上側のコイル材3aとホルダ梁17とに挟まれたり、上側のコイル材3aの内側に潜り込んでしまうことを抑制できる。これにより、下側のコイル材3aは、その上側のコイル材3aと絡まることを抑制できる。
【0053】
(5)第2傾斜部としての直棒27は、最下段のコイル材3aを径方向の外側に散開しやすい。この点からも、引き抜かれるコイル材3aがその上側のコイル材3aと絡まることを抑制できる。
【0054】
(6)傾斜部を有していないコイルホルダ2に治具21を後付けすることで、傾斜部を設けることができる。これにより、既存の設備を利用し、上記(1)から(5)に準じた効果を得ることが可能ともなる。
【0055】
(7)治具21において、絡まり抑制ユニット22と散開補助ユニット23とが別体である。したがって、治具21は、コイル材3aの物性や寸法などの特性に応じて、散開補助ユニット23を省略し、絡まり抑制ユニット22だけをコイルホルダ2に取り付けることもできる。
【0056】
(8)SD500などの異形棒鋼よりも柔らかいSD295の棒鋼であっても、コイルホルダ2から引き抜くときにコイル材3aが絡まることを抑制できる。
なお、コイルホルダ2は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
【0057】
・棒鋼としては、相対的にマイルド材に分類されるものであれば、SD295の棒鋼に限定されず、SD295の棒鋼と同様に、SD500などの異形棒鋼よりも顕著な効果を得ることが可能となる。
【0058】
・治具21は、コイル材3aの物性や寸法などの特性に応じて、散開補助ユニット23を省略し、絡まり抑制ユニット22のみから構成されてもよい。また、治具21は、絡まり抑制ユニット22を省略し、散開補助ユニット23のみから構成されてもよい。
【0059】
・第1傾斜部および第2傾斜部は、治具21によって後付けされるものではなく、ホルダ梁17またはホルダ支柱18と一体的に設けられていてもよい。すなわち、第1傾斜部を構成する三角板24は、ホルダ梁17またはホルダ支柱18を構成する鋼材の一部として構成されてもよい。直棒27もまた、ホルダ梁17またはホルダ支柱18を構成する鋼材の一部として構成されてもよい。
【0060】
・傾斜部は、治具21として後付けされる場合であれ、コイルホルダ2に一体的に設けられている場合であれ、斜辺24aで構成される第1傾斜部のみから構成されてもよいし、直棒27で構成される第2傾斜部のみから構成されてもよい。支持部材28を備える直棒27は、直接、ホルダ梁17の梁面17aに載置されてもよい。
【0061】
・コイルホルダ2は、NC加工機1に設置されるものに限定されず、コイル材3aの加工に用いるものであればよい。
・コイル材3aは、異形棒鋼ではなく、表面に凹凸のない丸鋼であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
2…コイルホルダ
3…コイル
3a…コイル材
11…基部
12…回転台
12a…中心軸部
13…梁
15…縦フレーム
16…設置部
17…ホルダ梁
17a…梁面
18…ホルダ支柱
21…治具
22…絡まり抑制ユニット
23…散開補助ユニット
24…三角板
24a…斜辺
24b…縦辺
24c…底辺
25…第1連結片
26…第2連結片
27…直棒
28…支持部材
29…貫通孔
30…固定具