IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 森永乳業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-芳香族乳酸化合物生産促進用組成物 図1
  • 特開-芳香族乳酸化合物生産促進用組成物 図2
  • 特開-芳香族乳酸化合物生産促進用組成物 図3
  • 特開-芳香族乳酸化合物生産促進用組成物 図4
  • 特開-芳香族乳酸化合物生産促進用組成物 図5
  • 特開-芳香族乳酸化合物生産促進用組成物 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034914
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】芳香族乳酸化合物生産促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20230306BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230306BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20230306BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A23L33/135
A61K31/702
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P43/00 107
A61P37/04
A61P39/06
A61P29/00
A61P31/04
A61K35/745
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141401
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田巻 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】橋倉 那波
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD87
4B018ME07
4B065AA21X
4B065BD37
4B065CA10
4B065CA41
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZB09
4C086ZB11
4C086ZB22
4C086ZB35
4C086ZC37
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC59
4C087CA08
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZB09
4C087ZB11
4C087ZB22
4C087ZB35
4C087ZC37
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】芳香族乳酸化合物生産促進用または芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得るための組成物等の特定の用途に利用できる組成物を提供する。
【解決手段】ラクチュロース等の難消化性オリゴ糖とビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィドバクテリウム属細菌を含有する組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)および(B)を含有する、芳香族乳酸化合物生産促進用の組成物:
(A)難消化性オリゴ糖;
(B)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌。
【請求項2】
前記芳香族乳酸化合物が、インドール-3-乳酸または4-ヒドロキシフェニル乳酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記難消化性オリゴ糖が、ミルクオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、マンノオリゴ糖、セロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、およびラフィノース、からなる群より選択される1種以上のオリゴ糖である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記難消化性オリゴ糖が、ラクチュロースである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分(B)が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分(B)が、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP-11175である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、飲食品組成物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、医薬組成物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族乳酸化合物生産促進用または芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得るための組成物等の特定の用途に利用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族乳酸化合物の1種であるインドール-3-乳酸(ILA)は、例えば、ヒトの幼児の腸内から一般的に分離されるビフィズス菌種の菌株(例えば、Bifidobacterium longum
subsp. longum、Bifidobacterium longum subsp. infantis、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium bifidum)により産生され得る(非特許文献1)。ILAは、例えば、神経突起伸長を改善する機能を有し得る(非特許文献2)。また、ILAは、例えば、免疫バランスを調節する機能を有し得る(非特許文献3)。また、ILAは、例えば、腸管上皮細胞や神経細胞のアリール炭化水素受容体(AhR)のアゴニストとして作用し、以て抗炎症効果等を発揮し得る(非特許文献2および4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sakurai T. et al. Production of Indole-3-Lactic Acid by Bifidobacterium Strains Isolated from Human Infants. Microorganisms. 2019 Sep 11;7(9).
【非特許文献2】Chyn Boon Wong et al. Potential Effects of Indole-3-Lactic Acid, a Metabolite of Human Bifidobacteria, on NGF-Induced Neurite Outgrowth in PC12 Cells. Microorganisms. 2020 Mar; 8(3): 398.
【非特許文献3】Bethany M. Henrick et al. Bifidobacteria-mediated immune system imprinting early in life, Cell. 2021 July; 184: 1-15.
【非特許文献4】Ehrlich et al. Indole-3-lactic acid associated with Bifidobacterium-dominated microbiota significantly decreases inflammation in intestinal epithelial cells. BMC Microbiology. 2020 20:357.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、芳香族乳酸化合物生産促進用または芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得るための組成物等の特定の用途に利用できる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた。その結果、本発明者は、ラクチュロース等の難消化性オリゴ糖とビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィドバクテリウム属細菌の併用によりインドール-3-乳酸(ILA)や4-ヒドロキシフェニル乳酸(HPLA)等の芳香族乳酸化合物の生産が促進されることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の通り例示できる。
[1]
下記成分(A)および(B)を含有する、芳香族乳酸化合物生産促進用の組成物:
(A)難消化性オリゴ糖;
(B)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌。
[2]
前記芳香族乳酸化合物が、インドール-3-乳酸または4-ヒドロキシフェニル乳酸である、前記組成物。
[3]
前記難消化性オリゴ糖が、ミルクオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、マンノオリゴ糖、セロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、およびラフィノース、からなる群より選択される1種以上のオリゴ糖である、前記組成物。
[4]
前記難消化性オリゴ糖が、ラクチュロースである、前記組成物。
[5]
前記成分(B)が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)である、前記組成物。
[6]
前記成分(B)が、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP-11175である、前記組成物。
[7]
前記組成物が、飲食品組成物である、前記組成物。
[8]
前記組成物が、医薬組成物である、前記組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芳香族乳酸化合物生産促進用または芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得るための組成物等の特定の用途に利用できる組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】中和培養におけるラクチュロースとビフィドバクテリウム・ブレーベの併用による4-ヒドロキシフェニル乳酸(HPLA)の生産結果を示す図。
図2】中和培養におけるラクチュロースとビフィドバクテリウム・ブレーベの併用によるインドール-3-乳酸(ILA)の生産結果を示す図。
図3】中和培養におけるラクチュロースとビフィドバクテリウム・ブレーベの併用によるインドール-3-酢酸(IAA)の生産結果を示す図。
図4】単培養におけるラクチュロースとビフィドバクテリウム・ブレーベの併用による4-ヒドロキシフェニル乳酸(HPLA)の生産結果を示す図。
図5】単培養におけるラクチュロースとビフィドバクテリウム・ブレーベの併用によるインドール-3-乳酸(ILA)の生産結果を示す図。
図6】単培養におけるラクチュロースとビフィドバクテリウム・ブレーベの併用によるインドール-3-酢酸(IAA)の生産結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
<1>有効成分
本発明においては、下記成分(A)および(B)を有効成分として利用する:
(A)難消化性オリゴ糖;
(B)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌。
【0011】
すなわち、成分(A)および(B)を総称して、「有効成分」ともいう。有効成分は、例えば、in vivoで使用できる。すなわち、有効成分は、例えば、対象に投与することで使用できる。
【0012】
有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、当該対象において芳香族乳酸化合物の生産が促進されてよく、すなわち、芳香族乳酸化合物の生産を促進する効果が得られてよい。同効果を、「芳香族乳酸化合物生産促進効果」と
もいう。具体的には、有効成分を利用することにより、有効成分を利用しない場合と比較して、芳香族乳酸化合物の生産を促進する効果が得られてよい。有効成分を利用しない場合としては、成分(A)および(B)のいずれも利用しない場合や、成分(A)および(B)の一方のみを利用する場合が挙げられる。有効成分を利用しない場合としては、特に、成分(A)および(B)のいずれも利用しない場合が挙げられる。芳香族乳酸化合物の生産は、例えば、対象の腸内において促進されてよい。腸としては、小腸や大腸が挙げられる。芳香族乳酸化合物は、例えば、投与されたビフィドバクテリウム属細菌により生産されてよい。すなわち、難消化性オリゴ糖との併用により、例えば、投与されたビフィドバクテリウム属細菌による芳香族乳酸化合物の生産が促進されてよい。芳香族乳酸化合物は、具体的には、例えば、投与されたビフィドバクテリウム属細菌により対象の腸内において生産されてよい。また、芳香族乳酸化合物は、例えば、対象の腸内に本来的に生息する細菌により生産されてもよい。すなわち、有効成分の投与により、例えば、対象の腸内に本来的に生息する細菌による芳香族乳酸化合物の生産が促進されてもよい。芳香族乳酸化合物生産促進効果は、例えば、有効成分の投与による対象における芳香族乳酸化合物の量の増大を確認することにより、確認できる。芳香族乳酸化合物生産促進効果は、具体的には、例えば、有効成分の投与後の対象から得られたサンプル中の芳香族乳酸化合物の量が有効成分の投与前の対象から得られたサンプル中の芳香族乳酸化合物の量よりも大きい場合に、確認できる。有効成分の投与前の対象は、好ましくは、有効成分が投与される対象と同一の個体であって有効成分の投与前のものであってよい。しかし、有効成分の投与前の対象は、例えば、有効成分が投与される対象とは別の個体であって有効成分が投与されていないものであってもよい。また、有効成分の投与前の対象は、例えば、有効成分が投与されていない対象のグループであってもよい。芳香族乳酸化合物生産促進効果の確認に用いられるサンプルは、芳香族乳酸化合物を含有する限り、特に制限されない。芳香族乳酸化合物生産促進効果の確認に用いられるサンプルとしては、全血や血漿等の血液サンプル、糞便等が挙げられる。
【0013】
「芳香族乳酸化合物」とは、環状不飽和炭化水素を含む乳酸化合物を意味する。「芳香族乳酸化合物」とは、より具体的には、ベンゼン環を有する乳酸化合物を意味してよい。芳香族乳酸化合物としては、例えば、インドール-3-乳酸(ILA)、4-ヒドロキシフェニル乳酸(HPLA)、3-フェニル乳酸(PLA)が挙げられる。芳香族乳酸化合物としては、好ましくは、インドール-3-乳酸(ILA)や4-ヒドロキシフェニル乳酸(HPLA)が挙げられる。芳香族乳酸化合物の量は、例えば、化合物の量を測定する公知の手法により測定できる。そのような手法としては、HPLC、UPLC、LC/MS、GC/MSが挙げられる。有効成分を利用することにより、1種の芳香族乳酸化合物の生産が促進されてもよく、2種またはそれ以上の芳香族乳酸化合物の生産が促進されてもよい。有効成分を利用することにより、例えば、ILA、HPLA、およびPLAから選択される1種以上の芳香族乳酸化合物の生産が促進されてよい。好ましくは、有効成分を利用することにより、ILAおよび/またはHPLAの生産が促進されてよい。
【0014】
また、有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果が得られてよい。芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果としては、芳香族乳酸化合物によって予防、改善、および/または治療され得る症状や疾患に対する効果が挙げられる。芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果として、具体的には、芳香族乳酸化合物によって予防、改善、および/または治療され得る症状や疾患を予防、改善、および/または治療する効果が挙げられる。
【0015】
ILAは、例えば、神経突起伸長(neurite outgrowth)を改善する機能を有し得る(非特許文献2:Chyn Boon Wong et al. Potential Effects of Indole-3-Lactic Acid, a Metabolite of Human Bifidobacteria, on NGF-Induced Neurite Outgrowth in PC12 Cells. Microorganisms. 2020 Mar; 8(3): 398.)。よって、芳香族乳酸化合物の生産促進により
、例えば、芳香族乳酸化合物の生産が促進された対象(すなわち有効成分が投与された対象)において神経突起伸長を改善する効果が得られてよい。同効果を、「神経突起伸長改善効果」ともいう。すなわち、芳香族乳酸化合物の生産の促進に基づく効果としては、神経突起伸長改善効果が挙げられる。
【0016】
神経突起伸長の改善は、神経細胞分化の指標であってよい。よって、有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、神経細胞分化が促進されてよく、すなわち、神経細胞分化を促進する効果が得られてよい。同効果を、「神経細胞分化促進効果」ともいう。すなわち、芳香族乳酸化合物の生産の促進に基づく効果としては、神経細胞分化促進効果が挙げられる。なお、言い換えると、神経突起伸長の改善は、神経細胞分化の促進により得られるものであってよい。すなわち、神経突起伸長改善効果は、神経細胞分化促進効果の一例であってよい。神経細胞分化促進効果は、例えば、神経突起伸長改善効果を確認することにより、確認できる。
【0017】
神経細胞分化促進効果は、例えば、対象におけるアセチルコリンエステラーゼ(Acetylcholinesterase;AchE)活性の増大を確認することによっても、確認できる。神経細胞分化促進効果は、具体的には、例えば、有効成分の投与後の対象から得られたサンプル中のAchE活性が有効成分の投与前の対象から得られたサンプル中のAchE活性よりも大きい場合に、確認できる。AchE活性は、例えば、Amplite Fluorimetric Acetylcholinesterase Assay Kit(AAT Bioquest, Sunnyvale, CA, USA)を用いて測定できる。神経細胞分化促進効果の確認に用いられるサンプルは、神経細胞を含有する限り、特に制限されない。サンプルは、例えば、対象からの生検により取得できる。
【0018】
また、有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果が得られてよい。神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善により、例えば、神経機能が保護および/または改善されてよい。すなわち、神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善により、例えば、神経障害(nerve disorder)に関連する症状が予防、改善、および/または治療されてよい。すなわち、芳香族乳酸化合物の生産の促進に基づく効果(具体的には神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果)としては、神経機能を保護する効果、神経機能を改善する効果、神経障害に関連する症状を予防、改善、および/または治療する効果が挙げられる。神経障害に関連する症状は、疾病であってもよく、そうでなくてもよい。言い換えると、神経障害に関連する症状は、疾病に起因するものであってもよく、そうでなくてもよい。神経障害に関連する症状としては、神経変性疾患(neurodegenerative disease)が挙げられ、言い換えると、神経変性疾患に起因する症状が挙げられる。神経変性疾患としては、神経細胞分化の障害または神経突起伸長の障害を伴う疾患が挙げられる。神経変性疾患として、具体的には、アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)、認知症(dementia)(レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)等)、前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration;FTLD)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy;PSP)、大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration;CBD)、ハンチントン病(Huntington's disease)、ジストニア(dystonia)、伝達性海綿状脳症(transmissible spongiform encephalopathy;TSE)、有棘赤血球舞踏病(chorea-acanthocytosis;ChAc)、副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy;ALD)、多系統萎縮症(multiple system atrophy;MSA)、脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration;SCD)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)、原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis;PLS)、球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy;SBMA)、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy;SMA)、シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease;CMT)、バッテン病(Batten disease)が挙げられる。
【0019】
トリプトファン代謝物であるキヌレニンが血液脳関門を通過できることが報告されている(Psychoneuroendocrinology. 2018;94:1-10.doi:10.1016/j.psyneuen.2018.04.019.)。よって、ILA等の芳香族乳酸化合物は血液脳関門を通過できると予想される。
【0020】
ILAは、例えば、免疫調節性ガレクチン-1の産生促進を介し、Th2およびTh17性サイトカインを減少させ、インターフェロンβ等のTh1サイトカインを誘導することで生後間もない乳児の免疫バランスを調節する機能を有し得る(Bethany M. Henrick et al. Bifidobacteria-mediated immune system imprinting early in life, Cell. 2021 July; 184: 1-15.)。よって、芳香族乳酸化合物の生産促進により、例えば、芳香族乳酸化合物の生産が促進された対象(すなわち有効成分が投与された対象)において免疫機能が改善されてよく、すなわち、免疫機能を改善する効果が得られてよい。同効果を、「免疫機能改善効果」ともいう。すなわち、芳香族乳酸化合物の生産の促進に基づく効果としては、免疫機能改善効果が挙げられる。免疫機能改善効果は、例えば、乳児において得られてよい。免疫機能の改善により、例えば、免疫の異常が関与する症状や疾患を予防、改善、および/または治療する効果が得られてよい。すなわち、芳香族乳酸化合物の生産の促進に基づく効果(具体的には、免疫機能改善効果)としては、免疫の異常が関与する症状や疾患を予防、改善、および/または治療する効果も挙げられる。免疫の異常が関与する症状や疾患としては、アレルギーや自己免疫疾患が挙げられる。アレルギーとしては、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹が挙げられる。自己免疫疾患としては、バセドウ病、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、血管炎が挙げられる。
【0021】
ILAは、例えば、腸管上皮細胞や神経細胞のアリール炭化水素受容体(AhR)のアゴニストとして作用し、以て抗炎症効果等を発揮し得ることが知られている(Ehrlich et al. Indole-3-lactic acid associated with Bifidobacterium -dominated microbiota significantly decreases inflammation in intestinal epithelial cells. BMC Microbiology. 2020 20:357. およびWong et al. Potential Effects of Indole-3-Lactic Acid, a Metabolite of Human Bifidobacteria, on NGF-Induced Neurite Outgrowth in PC12 Cells. Microorganisms. 2020 Mar; 8(3): 398.)よって、芳香族乳酸化合物の生産促進により、例えば、芳香族乳酸化合物の生産が促進された対象(すなわち有効成分が投与された対象)において抗炎症効果、抗酸化効果、および/または抗菌効果が得られてよい。すなわち、芳香族乳酸化合物の生産の促進に基づく効果としては、抗炎症効果、抗酸化効果、抗菌効果が挙げられる。抗炎症、抗酸化、および/または抗菌により、例えば、炎症や炎症疾患を予防、改善、および/または治療する効果が得られてよい。すなわち、芳香族乳酸化合物の生産の促進に基づく効果(具体的には、抗炎症効果、抗酸化効果、または抗菌効果)としては、炎症や炎症疾患を予防、改善、および/または治療する効果も挙げられる。炎症や炎症疾患としては、脳炎、骨髄炎、髄膜炎、神経炎、皮膚炎、筋炎、肝炎、膵炎、血管の炎症(動脈炎、静脈炎、毛細血管炎等)、心臓の炎症(心内膜炎、心筋炎、心膜炎等)、眼の炎症(涙腺炎、角膜炎、網膜炎、結膜炎等)、耳の炎症(外耳炎、中耳炎、内耳炎等)、呼吸器の炎症(副鼻腔炎、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎等)、口腔の炎症(口内炎、舌炎、扁桃炎等)、消化器の炎症(食道炎、胃炎、腸炎、虫垂炎等)、泌尿器の炎症(腎炎、膀胱炎、前立腺炎等)が挙げられる。
【0022】
本発明は、上記例示した効果を得るための有効成分の使用を提供してよい。すなわち、本発明は、芳香族乳酸化合物の生産促進、神経細胞分化の促進、神経突起伸長の改善、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療、免疫機能の改善、抗炎症、抗酸化、ならびに/または抗菌のための有効成分の使用を提供してよい。また、本発明は、芳香族乳酸化合物生産促進用、神経細胞分化促進用、神経突起伸長改善用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療用、免疫機能改善用、抗炎症用、抗酸化用、ならびに/または抗菌用の組成物の製造のための有効成分の使用を提供してよい。
【0023】
本発明は、上記例示した効果を得るために使用される有効成分を提供してよい。すなわち、本発明は、芳香族乳酸化合物の生産促進、神経細胞分化の促進、神経突起伸長の改善、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療、免疫機能の改善、抗炎症、抗酸化、ならびに/または抗菌のために使用される有効成分を提供してよい。また、本発明は、芳香族乳酸化合物生産促進用、神経細胞分化促進用、神経突起伸長改善用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療用、免疫機能改善用、抗炎症用、抗酸化用、ならびに/または抗菌用の組成物の製造のために使用される有効成分を提供してよい。
【0024】
有効成分は、治療目的で利用されてもよく、非治療目的で利用されてもよい。すなわち、上記例示した効果は、特記しない限り、治療目的で得られてもよく、非治療目的で得られてもよい。
【0025】
「治療目的」とは、例えば、医療行為を含む概念を意味してよく、具体的には、治療による人体への処置行為を含む概念を意味してよい。
【0026】
「非治療目的」とは、例えば、医療行為を含まない概念を意味してよく、具体的には、治療による人体への処置行為を含まない概念を意味してよい。非治療目的としては、健康増進目的や美容目的が挙げられる。
【0027】
「症状または疾病の予防」とは、例えば、症状もしくは疾病の発症の防止および/もしくは遅延、または症状もしくは疾病の発症の可能性の低下を意味してよい。「症状または疾病の改善」または「症状または疾病の治療」とは、例えば、症状もしくは疾病の好転、症状もしくは疾病の悪化の防止もしくは遅延、または症状もしくは疾病の進行の防止もしくは遅延を意味してよい。「症状または疾病の改善」とは、特に、これらの事象であって、且つ非治療目的で得られるものを意味してよい。「症状または疾病の治療」とは、特に、これらの事象であって、且つ治療目的で得られるものを意味してよい。
【0028】
難消化性オリゴ糖としては、ミルクオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)、ラフィノースが挙げられる。一態様において、難消化性オリゴ糖としては、ミルクオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)、ラフィノースが挙げられる。難消化性オリゴ糖の重合度は、例えば、2~10残基、2~7残基、または2~5残基であってよい。難消化性オリゴ糖の重合度は、特に、例えば、2残基、3残基、または4残基であってもよい。ミルクオリゴ糖としては、乳を原料として生成し得るオリゴ糖が挙げられる。ミルクオリゴ糖として、具体的には、ラクトースを原料として生成し得るオリゴ糖が挙げられる。ミルクオリゴ糖として、より具体的には、ラクチュロースが挙げられる。フラクトオリゴ糖としては、スクロースのフルクトース残基に1つまたはそれ以上のフルクトース残基が結合したものが挙げられる。フラクトオリゴ糖として、具体的には、1-ケストース(1-kestose;「GF2」ともいう)、ニストース(nystose;「GF3」ともいう)、1-β-フラクトフラノシルニストース(1F-beta-fructofuranosylnystose;「GF4」ともいう)が挙げられる。ガラクトオリゴ糖としては、ラクトースのガラクトース残基に1つまたはそれ以上のガラクトース残基が結合したものが挙げられる。ガラクトオリゴ糖として、具体的には、4’-ガラクトシルラクトースが挙げられる。マンノオリゴ糖としては、マンナンの分解により生成し得るオリゴ糖が挙げられる。マンノオリゴ糖として、具体的には、マンノビオース、マンノトリオース、マンノテトラオース、マンノペンタオース、マンノヘキサオース、マンノヘプタオース、マンノオクタオース、マンノノナオース、マンノデカオースが挙げられる。セロオリゴ糖としては、セルロースの分解により生成し得るオリゴ糖が挙げられる。セロオリゴ糖として、具体的には、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオースが挙げられる。セロオリゴ糖としては、特に、セロビオースが挙げられる。キシロオリゴ糖としては、キシランの分解により生成し得るオリゴ糖が挙げられる。キシロオリゴ糖として、具体的には、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオースが挙げられる。キシロオリゴ糖としては、特に、キシロビオースが挙げられる。難消化性オリゴ糖としては、1種のオリゴ糖を用いてもよく、2種またはそれ以上のオリゴ糖を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
難消化性オリゴ糖としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。例えば、ラクチュロースの市販品としては、ミルクオリゴ糖MLS(登録商標)-50やミルクオリゴ糖MLC(登録商標)-97(いずれも森永乳業株式会社製)が挙げられる。難消化性オリゴ糖の製造方法は、特に制限されない。難消化性オリゴ糖は、例えば、公知の方法により製造できる。難消化性オリゴ糖は、具体的には、例えば、化学合成、酵素反応、または抽出法により製造できる。例えば、ラクチュロースは、ラクトースを原料として特開平3-169888号公報または特開平6-228179号公報に記載の方法により製造できる。難消化性オリゴ糖は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、難消化性オリゴ糖としては、精製品を用いてもよく、難消化性オリゴ糖を含有する素材を用いてもよい。素材中の難消化性オリゴ糖の含有量は、例えば、素材の乾燥重量に対する含有量として、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、または90重量%以上であってよい。
【0030】
難消化性オリゴ糖を含有する素材を使用する場合、難消化性オリゴ糖の量(例えば、本発明の組成物における含有量や本発明の方法における投与量)は、当該素材に含有される難消化性オリゴ糖そのものの量に基づいて算出されるものとする。
【0031】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(Bifidobacterium thermophilum)が挙げられる。ビフィドバクテリウム属細菌としては、特に、ビフィドバクテリウム・ブレーベが挙げられる。ビフィドバクテリウム属細菌としては、1種の細菌を用いてもよく、2種またはそれ以上の細菌を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
「ビフィドバクテリウム・ロンガム」には、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム(B. longum subsp. longum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(B. longum subsp. infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・スイス(B. longum subsp. suis)等の、ビフィドバクテリウム・ロンガムのいずれの亜種に分類される株も包含される。「ビフィドバクテリウム・アニマリス」には、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス(B. animalis subsp. lactis)等の、ビフィドバクテリウム・アニマリスのいずれの亜種に分類される株も包含される。「ビフィドバクテリウム・シュードロンガム」には、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・グロボッサム(B. pseudolongum subsp. globosum)やビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・シュードロンガム(B. pseudolongum subsp. pseudolongum)等の、ビフィドバクテリウム・シュードロンガムのいずれの亜種に分類される株も包含される。
【0033】
ビフィドバクテリウム属細菌は、例えば、ILA等の芳香族乳酸化合物を生産できる細菌であってよい。ビフィドバクテリウム属細菌は、例えば、炭素源および/またはトリプトファンから芳香族乳酸化合物を生産してよい。ビフィドバクテリウム属細菌は、具体的には、対象に投与された場合に当該対象において芳香族乳酸化合物を生産できる細菌であってよい。ビフィドバクテリウム属細菌は、より具体的には、対象に投与された場合に当該対象の腸内で芳香族乳酸化合物を生産できる細菌であってよい。例えば、幼児型(infant-type)ヒト常在性ビフィズス菌(human-residential bifidobacteria;HRB)は、成人型(adult-type)HRBおよび非HRB(non-HRB)と比較して顕著に高濃度のILAを生産することが報告されている(Sakurai et al, Production of Indole-3-Lactic Acid by Bifidobacterium Strains Isolated from Human Infants. Microorganisms. 2019 Sep 11;7(9).)。よって、ビフィドバクテリウム属細菌としては、特に、幼児型HRBが挙げられる。幼児型HRBとしては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムやビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス等)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダムが挙げられる。
【0034】
ビフィドバクテリウム・ロンガムとして、具体的には、BB536(NITE BP-02621)、ATCC
15697、ATCC 15707、ATCC 25962、ATCC 15702、ATCC 27533、M-63(NITE BP-02623)、BG7、DSM 24736、SBT 2928、NCC 490(CNCM I-2170)、NCC 2705(CNCM I-2618)が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ロンガムとしては、1種の株を用いてもよく、2種またはそれ以上の株を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ビフィドバクテリウム・ブレーベとして、具体的には、M-16V(NITE BP-02622)、MCC1274(FERM BP-11175)、ATCC 15700、B632(DSM 24706)、Bb99(DSM 13692)、ATCC 15698、DSM 24732、UCC2003、YIT4010、YIT4064、BBG-001、BR-03、C50、R0070が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、特に、MCC1274(FERM BP-11175)が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、1種の株を用いてもよく、2種またはそれ以上の株を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムとして、具体的には、ATCC 29521、NITE BP-02429、NITE BP-02431、OLB6378、BF-1が挙げられる。ビフィドバクテリウム・アドレセンティスとして、具体的には、ATCC 15703が挙げられる。ビフィドバクテリウム・デンティウムとして、具体的には、DSM 20436が挙げられる。ビフィドバクテリウム・アニマリスとして、具体的には、DSM 10140、Bb-12、DN-173 010、GCL2505、CNCM I-3446が挙げられる。ビフィドバクテリウム・シュードロンガムとして、具体的には、JCM 5820やATCC 25526が挙げられる。ビフィドバクテリウム・サーモフィラムとして、具体的には、ATCC 25525が挙げられる。
【0037】
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)は、2009年8月25日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現 独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(IPOD)、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)にブダペスト条約に基づく国際寄託がなされ、FERM BP-11175の受託番号が付与されている。
【0038】
これらの菌株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC, Address: 10801
University Boulevard Manassas, VA 20110, United States of America)、Belgian Coordinated Collections of Microorganisms(BCCM, Address: Rue de la Science 8, 1000 Brussels, Belgium)、Belgian Coordinated Collections of Microorganisms(BCCM, Address: Rue de la Science 8, 1000 Brussels, Belgium)、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ, Address: Inhoffenstr.7B, D38124 Braunschweig, Germany)、Japan Collection of Microorganisms(JCM, 郵便番号:305-0074、住所:日本国茨城県つくば市高野台3-1-1 理化学研究所バイオリソース研究センター微生物材料開発室)、または各菌株が寄託された寄託機関から入手できる。
【0039】
上記例示した菌株名で特定される菌株には、当該菌株名で所定の機関に寄託または登録されている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、当該寄託株と実質的に同等な株(以下、「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、例えば、「ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)」には、FERM BP-11175の寄託番号で上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、当該寄託株と実質的に同等な株も包含される「寄託株と実質的に同等の株」とは、当該寄託株と同一の種に属し、有効成分としての機能(すなわち、難消化性オリゴ糖との併用により芳香族乳酸化合物の生産を促進する機能)を有し、その16SrRNA遺伝子の塩基配列が、当該寄託株の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは99.86%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは100%の同一性を有し、且つ、好ましくは当該寄託株と同一の生物学的性質を有する株を意味する。寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株として得られた派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。育種方法としては、遺伝子工学的手法による改変や、突然変異処理による改変が挙げられる。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、変異剤(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等)による処理が挙げられる。寄託株から自然に生じた株としては、寄託株の使用の際に自然に生じた株が挙げられる。寄託株の使用としては、寄託株の培養(例えば継代培養)が挙げられる。派生株は、1種の改変により構築されてもよく、2種またはそれ以上の改変により構築されてもよい。
【0040】
ビフィドバクテリウム属細菌としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。ビフィドバクテリウム属細菌の市販品としては、森永乳業社製のビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムBB536、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63が挙げられる。
【0041】
有効成分としての「ビフィドバクテリウム属細菌」とは、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体を意味してよい。ビフィドバクテリウム属細菌の菌体は、ビフィドバクテリウム属細菌を培養することにより容易に取得することができる。培養方法は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培養方法としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる方法を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。培養温度は、例えば、25~50℃であってよく、好ましくは35~42℃であってよい。培養は、好ましくは嫌気条件下で実施することができ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら実施することができる。あるいは、培養は、液体静置培養等の微好気条件下で実施することもできる。培養は、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌が所望の程度に増殖するまで実施することができる。
【0042】
培養に用いる培地は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培地としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。培地は、例えば、炭素源、窒素源、無機塩、有機成分、乳成分、またはそれらの組み合わせを含有していてよい。炭素源としては、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類が挙げられ、これらの糖類はいずれもビフィドバクテリウム属細菌の資化性に応じて用いることができる。窒素源としては、アンモニアや、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩が挙げられる。無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄が挙げられる。有機成分としては、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキスが挙げられる。乳成分としては、乳タンパク質が挙げられる。乳タンパク質としては、カゼイン、ホエイ、それらの分解物が挙げられる。これらの成分は、単独で、あるいは適宜組み合わせて利用してよい。ビフィドバクテリウム属細菌の培養に使用できる培地として、具体的には、強化クロストリジア培地(Reinforced Clostridial medium)、MRS培地(de Man, Rogosa, and Sharpe medium)、mMRS培地(modified MRS medium)、TOSP培地(TOS propionate medium)、TOSP Mup培地(TOS propionate mupirocin medium)が挙げられる。
【0043】
ビフィドバクテリウム属細菌としては、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体そのものまたはそれを含有する画分を用いることができる。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養液をそのまま用いてもよく、培養液から回収した菌体を用いてもよい。また、菌体またはそれを含有する画分は、処理に供してから用いてもよい。処理は、芳香族乳酸化合物生産促進効果等の所望の効果を損なわない限り、特に制限されない。処理は、好ましくは、菌体の生残性をそれほど低下させないものであってよい。処理としては、希釈、濃縮、凍結、乾燥が挙げられる。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌(具体的にはビフィドバクテリウム属細菌の菌体)としては、ビフィドバクテリウム属細菌の培養液、同培養液から回収した菌体、それらの処理物(希釈物、濃縮物、凍結物、乾燥物等)が挙げられる。処理として、具体的には、培養液の凍結、噴霧乾燥、凍結乾燥、オイルドロップ法が挙げられる。菌体は、生菌体を含有する。菌体は、死菌体を含有していてもよく、いなくてもよい。
【0044】
<2>本発明の組成物
本発明の組成物は、有効成分を含有する組成物である。
【0045】
すなわち、本発明の組成物は、下記成分(A)および(B)を含有する組成物である:(A)難消化性オリゴ糖;
(B)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌。
【0046】
本発明の組成物は、対象に投与して利用できる。本発明の組成物は、具体的には、本発明の方法に記載するように対象に投与することができる。本発明の組成物は、例えば、上記例示した効果を得るために利用することができる。
【0047】
本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、当該対象において芳香族乳酸化合物の生産が促進されてよく、すなわち、芳香族乳酸化合物生産促進効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、芳香族乳酸化合物生産促進用組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進における使用のための組成物であってよい。
【0048】
また、本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得るための組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果の達成における使用のための組成物であってよい。芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得るための組成物は、芳香族乳酸化合物生産促進用組成物の一例であってよい。
【0049】
本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、例えば、当該対象において神経突起伸長が改善されてよく、すなわち、神経突起伸長改善効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、神経突起伸長改善用組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、神経突起伸長の改善における使用のための組成物であってよい。神経突起伸長改善用組成物は、芳香族乳酸化合物生産促進用組成物の一例であってよい。
【0050】
本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、例えば、神経細胞分化が促進されてよく、すなわち、神経細胞分化促進効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、神経細胞分化促進用組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、神経細胞分化の促進における使用のための組成物であってよい。神経突起伸長改善用組成物は、神経細胞分化促進用組成物の一例であってよい。神経突起伸長改善用組成物は、芳香族乳酸化合物生産促進用組成物の一例であってよい。
【0051】
本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、例えば、神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果を得るための組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果の達成における使用のための組成物であってよい。本発明の組成物は、具体的には、例えば、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/または治療用の組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、具体的には、例えば、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/または治療における使用のための組成物であってよい。神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果を得るための組成物(神経障害に関連する症状の予防、改善、および/または治療用の組成物等)は、神経細胞分化促進用組成物および/または神経突起伸長改善用組成物の一例であってよい。神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果を得るための組成物(神経障害に関連する症状の予防、改善、および/または治療用の組成物等)は、芳香族乳酸化合物生産促進用組成物の一例であってよい。
【0052】
本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、例えば、免疫機能が改善されてよく、すなわち、免疫機能改善効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、免疫機能改善用組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、免疫機能の改善における使用のための組成物であってよい。免疫機能改善用組成物は、芳香族乳酸化合物生産促進用組成物の一例であってよい。
【0053】
本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、例えば、抗炎症効果、抗酸化効果、および/または抗菌効果が得られてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、抗炎症用、抗酸化用、および/または抗菌用組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、抗炎症、抗酸化、および/または抗菌における使用のための組成物であってよい。抗炎症用、抗酸化用、および/または抗菌用組成物は、芳香族乳酸化合物生産促進用組成物の一例であってよい。
【0054】
本発明の組成物が投与される対象については、本発明の方法における有効成分が投与される対象についての記載を準用できる。
【0055】
本発明の組成物は、例えば、飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物であってよい。本発明の組成物は、特に、飲食品組成物または医薬組成物であってよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、上記例示した効果を得るための(例えば、芳香族乳酸化合物
生産促進用、神経細胞分化促進用、神経突起伸長改善用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療用、免疫機能改善用、抗炎症用、抗酸化用、ならびに/または抗菌用の)飲食品組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、上記例示した効果の達成における使用(例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進における使用、神経細胞分化の促進における使用、神経突起伸長の改善における使用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療における使用、免疫機能の改善における使用、抗炎症における使用、抗酸化における使用、ならびに/または抗菌における使用)のための飲食品組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、上記例示した効果を得るための(例えば、芳香族乳酸化合物生産促進用、神経細胞分化促進用、神経突起伸長改善用、神経障害に関連する症状の予防、改善、または治療用、免疫機能改善用、抗炎症用、抗酸化用、ならびに/または抗菌用の)医薬組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、上記例示した効果の達成における使用(例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進における使用、神経細胞分化の促進における使用、神経突起伸長の改善における使用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療における使用、免疫機能の改善における使用、抗炎症における使用、抗酸化における使用、ならびに/または抗菌における使用)のための医薬組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、上記例示した効果を得るための(例えば、芳香族乳酸化合物生産促進用、神経細胞分化促進用、神経突起伸長改善用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/または治療用、免疫機能改善用、抗炎症用、抗酸化用、ならびに/または抗菌用の)飼料組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、上記例示した効果の達成における使用(例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進における使用、神経細胞分化の促進における使用、神経突起伸長の改善における使用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療における使用、免疫機能の改善における使用、抗炎症における使用、抗酸化における使用、ならびに/または抗菌における使用)のための飼料組成物であってよい。飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物である本発明の組成物を、それぞれ、「本発明の飲食品組成物」、「本発明の医薬組成物」、または「本発明の飼料組成物」ともいう。
【0056】
本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分に加えて追加の成分を含有していてもよい。
【0057】
追加の成分は、芳香族乳酸化合物生産促進効果等の所望の効果を損なわない限り、特に制限されない。追加の成分としては、本発明の組成物の利用態様に応じて許容可能なものを利用できる。追加の成分としては、飲食品、医薬品、または飼料に配合して利用され得る成分が挙げられる。追加の成分として、具体的には、後述する飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物について例示する成分が挙げられる。追加の成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明の組成物における成分(すなわち、有効成分および任意で(optionally)追加の成分)の含有量およびその比率は、芳香族乳酸化合物生産促進効果等の所望の効果が達成される限り、特に制限されない。本発明の組成物における成分の含有量およびその比率は、有効成分の種類、追加の成分の種類、本発明の組成物の種類、剤形、および用法、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0059】
本発明の組成物における有効成分の総含有量は、0重量%より多く、且つ、100重量%以下である。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、または90重量%以上であってもよく、100重量%以下、99.99重量%以下、99重量%以下、90重量%以下、70重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または1重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。
【0060】
本発明の組成物における成分(A)の含有量は、例えば、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、または90重量%以上であってもよく、99.99重量%以下、99重量%以下、90重量%以下、70重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または1重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。本発明の組成物における成分(A)の含有量は、具体的には、例えば、0.1~50重量%、好ましくは0.3~20重量%、より好ましくは0.5~10重量%であってもよい。
【0061】
本発明の組成物における成分(B)の含有量は、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数に換算して、1×104 cells/g以上、1×105cells/g以上、1×106 cells/g以上、1×107 cells/g以上、または1×108cells/g以上であってもよく、1×1013 cells/g以下、1×1012 cells/g以下、または1×1011cells/g以下であってもよく、それらの組み合わせの範囲であってもよい。本発明の組成物における成分(B)の含有量は、具体的には、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数に換算して、1×104~1×1013 cells/g、1×105~1×1013 cells/g、1×106~1×1012 cells/g、好ましくは1×107~1×1011 cells/g、より好ましくは1×108~1×1010 cells/gであってもよい。上記例示した投与量の範囲における「cells」は、「cfu」と読み替えてもよい。「cfu」は、colony forming unit(コロニー形成単位)を表す。
【0062】
本発明の組成物における有効成分の含有量は、例えば、本発明の方法において言及する有効成分の投与量が達成されるように設定してもよい。
【0063】
本発明の組成物の形状は、特に制限されない。本発明の組成物の形状としては、本発明の組成物の利用態様に応じて許容可能なものを採用できる。本発明の組成物の形状として、具体的には、後述する飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物について例示する形状が挙げられる。
【0064】
<飲食品組成物>
本発明の飲食品組成物は、有効成分を含有する限り、特に制限されない。飲食品組成物は、液体、ペースト、固体、粉末等の任意の形状で提供されてよい。
【0065】
飲食品組成物は、例えば、飲食品そのものであってもよく、飲食品の製造に利用される素材であってもよい。そのような素材としては、調味料、食品添加物、その他の食品原料が挙げられる。飲食品組成物として、具体的には、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳製品(発酵乳、チーズ、育児用調製粉乳、等)、油脂、基礎調味料、複合調味料、冷凍食品、菓子、飲料、その他の市販の飲食品が挙げられる。飲食品組成物としては、特に、発酵乳等の乳製品が挙げられる。飲食品組成物として、具体的には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、等)、栄養補助食品、医薬部外品も挙げられる。飲食品組成物は、例えば、タブレット状のサプリメント等のサプリメントであってもよい。
【0066】
本発明の飲食品組成物は、例えば、有効成分と追加の成分を組み合わせることにより製造できる。有効成分と追加の成分を組み合わせる操作を、「有効成分の添加」ともいう。本発明の飲食品組成物の製造方法は、特に制限されない。本発明の飲食品組成物は、有効成分を添加すること以外は、例えば、通常の飲食品と同様の原料を用いて通常の飲食品と同様の方法により製造することができる。本発明の飲食品組成物が飲食品の製造に利用される素材として製造される場合も同様である。有効成分の添加は、飲食品組成物の製造工
程のいずれの段階で実施してもよい。有効成分の添加は、例えば、飲食品組成物の製造途中または製造後に実施してよい。すなわち、例えば、予め調製された飲食品に有効成分を添加して本発明の飲食品組成物を製造してもよい。また、本発明の飲食品組成物は、有効成分による発酵工程(具体的には成分(B)による発酵工程)による発酵工程を経て、製造されてもよい。発酵工程を経て製造される飲食品組成物としては、発酵乳やプロバイオティクス飲料等の発酵製品が挙げられる。すなわち、有効成分(具体的には成分(B))は、例えば、発酵製品の製造用のスターターとして使用してよい。当然、有効成分は、予め調製された発酵製品に添加することもできる。
【0067】
また、本発明の飲食品組成物を用いて、別の飲食品組成物を製造することもできる。すなわち、例えば、本発明の飲食品組成物が飲食品の製造に利用される素材(調味料、食品添加物、その他の飲食品原料、等)として提供される場合、本発明の飲食品組成物の添加により別の飲食品組成物が製造されてよい。そのような別の飲食品組成物も、本発明の飲食品組成物の一例である。飲食品組成物の製造における本発明の飲食品組成物の添加については、飲食品組成物の製造における有効成分の添加についての記載を準用できる。
【0068】
本発明の飲食品組成物は、芳香族乳酸化合物生産促進用、神経細胞分化促進用、神経突起伸長改善用、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/もしくは治療用、免疫機能改善用、抗炎症用、抗酸化用、ならびに/または抗菌用等の想定する用途(保健用途を含む)が表示された飲食品として提供および販売されてよい。本発明の飲食品組成物は、想定する対象が表示された飲食品として提供および販売されてよい。
【0069】
「表示」には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起または類推させうるような表現であれば、表示の目的、内容、対象物、および媒体によらず、全て「表示」に該当する。表示は、特に、需要者が前記用途を直接的に認識できるような表現により実施されてよい。
【0070】
表示として、具体的には、本発明の飲食品組成物に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為や、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為が挙げられる。表示としては、特に、包装、容器、カタログ、パンフレット、販売現場における宣伝材(POP等)、またはその他の書類への表示が挙げられる。
【0071】
表示としては、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、等)、栄養補助食品、および医薬部外品としての表示が挙げられる。表示は、好ましくは、行政等によって認可される表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であってよい。行政等によって認可される表示としては、消費者庁によって認可される表示が挙げられる。行政等(例えば消費者庁)によって認可される表示としては、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、等)の制度およびそれに類似する制度にて認可される表示が挙げられる。消費者庁によって認可される表示として、具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示が挙げられる。消費者庁によって認可される表示として、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)およびそれに類似する表示が挙げられる。表示として、具体的には、「ビフィズス菌と難消化性オリゴ糖の組み合わせが、腸でILAの産生を促進します。」や「免疫バランスを調節することが知られているILAの産生を促進します。」等が挙げられる。
【0072】
本発明の飲食品組成物における有効成分の含有量は、例えば、上述の範囲であってよい。本発明の飲食品組成物における成分(B)の含有量は、特に、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数に換算して、1×104~1×1013 cells/g、1×105~1×1013 cells/g、1×106~1×1012 cells/g、好ましくは1×107~1×1011 cells/g、より好ましくは1×108~1×1010 cells/gであってよい。
【0073】
<医薬組成物>
本発明の医薬組成物は、有効成分を含有する限り、特に制限されない。
【0074】
本発明の医薬組成物は、所望の剤形に適宜製剤化されてよい。本発明の医薬組成物の剤形は、特に制限されない。本発明の医薬組成物の剤形は、投与方法等の諸条件に応じて適宜選択することができる。本発明の医薬組成物は、経口投与用であってもよく、非経口投与用であってもよい。本発明の医薬組成物は、特に、経口投与用であってよい。経口投与の場合、剤形としては、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形剤や、溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤が挙げられる。非経口投与の場合、剤形としては、座剤や軟膏剤が挙げられる。
【0075】
製剤化の方法は、特に制限されない。製剤化は、例えば、剤形に応じた公知の方法により実施できる。製剤化にあたっては、生理的に許容される添加剤を使用することができる。添加剤としては、各種の有機成分および無機成分が挙げられる。添加剤として、具体的には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、pH調整剤、着色剤、希釈剤、界面活性剤、溶剤が挙げられる。これら添加剤は、例えば、剤形等の諸条件に応じて適宜選択することができる。
【0076】
賦形剤としては、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体が挙げられる。
【0077】
結合剤としては、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等挙げられる。
【0078】
崩壊剤としては、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプンまたはセルロース誘導体が挙げられる。
【0079】
滑沢剤としては、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーカムやゲイロウ等のワックス;硼酸;グリコール;フマル酸やアジピン酸等のカルボン酸;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸や珪酸水和物等の珪酸;デンプン誘導体が挙げられる。
【0080】
安定剤としては、メチルパラベンやプロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル
;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸が挙げられる。
【0081】
矯味矯臭剤としては、甘味料、酸味料、香料が挙げられる。
【0082】
本発明の医薬組成物における有効成分の含有量は、例えば、上述の範囲であってよい。本発明の医薬組成物における成分(B)の含有量は、特に、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数に換算して、1×104~1×1013 cells/g、1×105~1×1013 cells/g、1×106~1×1012 cells/g、好ましくは1×107~1×1011 cells/g、より好ましくは1×108~1×1010 cells/gであってよい。
【0083】
<飼料組成物>
本発明の飼料組成物は、有効成分を含有する限り、特に制限されない。飼料組成物としては、ペットフードや家畜飼料が挙げられる。飼料組成物は、粉末、顆粒、クランブル、ペレット、キューブ、ペースト、液体等の任意の形状で提供されてよい。
【0084】
本発明の飼料組成物は、例えば、有効成分と追加の成分を組み合わせることにより製造できる。有効成分と追加の成分を組み合わせる操作を、「有効成分の添加」ともいう。本発明の飼料組成物の製造方法は、特に制限されない。本発明の飼料組成物は、有効成分を添加すること以外は、例えば、通常の飼料と同様の原料を用いて通常の飼料と同様の方法により製造することができる。有効成分の添加は、飼料組成物の製造工程のいずれの段階で実施してもよい。有効成分の添加は、例えば、飼料組成物の製造途中または製造後に実施してよい。すなわち、例えば、予め調製された飼料に有効成分を添加して本発明の飼料組成物を製造してもよい。また、本発明の飼料組成物は、有効成分による発酵工程(具体的には成分(B)による発酵工程)による発酵工程を経て、製造されてもよい。発酵工程を経て製造される飼料組成物としては、サイレージが挙げられる。
【0085】
<3>本発明の方法
本発明の方法は、有効成分を対象に投与することを含む方法である。同工程を、「投与工程」ともいう。有効成分が投与される対象を、「投与対象」ともいう。
【0086】
すなわち、本発明の方法は、下記成分(A)および(B)を対象に投与することを含む方法である:
(A)難消化性オリゴ糖;
(B)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌。
【0087】
本発明の方法は、例えば、上記例示した効果を得るために実施できる。
【0088】
本発明の方法を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、当該対象において芳香族乳酸化合物の生産が促進されてよく、すなわち、芳香族乳酸化合物生産促進効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、芳香族乳酸化合物の生産を促進する方法であってよい。
【0089】
また、本発明の方法を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得る方法であってよい。芳香族乳酸化合物の生産促進に基づく効果を得る方法は、芳香族乳酸化合物の生産を促進する方法の一例であってよい。
【0090】
本発明の方法を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより
、例えば、当該対象において神経突起伸長が改善されてよく、すなわち、神経突起伸長改善効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、神経突起伸長を改善する方法であってよい。神経突起伸長を改善する方法は、芳香族乳酸化合物の生産を促進する方法の一例であってよい。
【0091】
本発明の方法を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、例えば、神経細胞分化が促進されてよく、すなわち、神経細胞分化促進効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、神経細胞分化を促進する方法であってよい。神経突起伸長を改善する方法は、神経細胞分化を促進する方法の一例であってよい。神経細胞分化を促進する方法は、芳香族乳酸化合物の生産を促進する方法の一例であってよい。
【0092】
本発明の方法を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、例えば、神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果を得る方法であってよい。本発明の方法は、具体的には、例えば、神経障害に関連する症状を予防、改善、および/または治療する方法であってもよい。神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果を得る方法(神経障害に関連する症状を予防、改善、および/または治療する方法等)は、神経細胞分化を促進する方法または神経突起伸長を改善する方法の一例であってよい。神経細胞分化の促進および/または神経突起伸長の改善に基づく効果を得る方法(神経障害に関連する症状を予防、改善、および/または治療する方法等)は、芳香族乳酸化合物の生産を促進する方法の一例であってよい。
【0093】
本発明の方法を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、例えば、免疫機能が改善されてよく、すなわち、免疫機能改善効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、免疫機能を改善する方法であってよい。免疫機能を改善する方法は、芳香族乳酸化合物の生産を促進する方法の一例であってよい。
【0094】
本発明の方法を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、例えば、抗炎症効果、抗酸化効果、および/または抗菌効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、抗炎症、抗酸化、および/または抗菌のための方法であってよい。抗炎症、抗酸化、および/または抗菌のための方法は、芳香族乳酸化合物の生産を促進する方法の一例であってよい。
【0095】
なお、「有効成分を対象に投与する」ことは、「対象に有効成分を摂取させる」ことと代替可能または等価に使用され得る。摂取は、自発的なもの(すなわち自由摂取)であってもよく、強制的なもの(すなわち強制摂取)であってもよい。すなわち、投与工程は、例えば、有効成分(これは飲食品または飼料に配合されていてよい)を対象に供給し、以て対象に有効成分を自由摂取させる工程であってよい。投与は、経口投与であってもよく、非経口投与であってもよい。投与は、典型的には経口投与であってよい。非経口投与としては、経管投与、直腸内投与、鼻腔内投与が挙げられる。
【0096】
有効成分の投与条件(例えば、投与対象、投与期間、投与回数、投与量、その他投与に係る条件)は、芳香族乳酸化合物生産促進効果等の所望の効果が達成される限り、特に制限されない。有効成分の投与条件は、有効成分の種類や、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0097】
投与対象は、芳香族乳酸化合物生産促進効果等の所望の効果が達成される限り、特に制限されない。投与対象としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としては、ヒト、サル
、チンパンジー等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の齧歯類、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ等の他の各種哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としては、特に、ヒトが挙げられる。投与対象(例えば哺乳動物)は、例えば、ペット動物、家畜、または実験動物であってよい。投与対象は、オスの被験体であってもよく、メスの被験体であってもよい。投与対象は、例えば、幼児、小児、大人、中高年、高齢者等のいずれの年代の被験体であってもよい。投与対象は、例えば、健常被験体であってもよく、非健常被験体であってもよい。非健常被験体としては、神経障害に関連する症状を呈する被験体が挙げられる。投与対象としては、例えば、神経障害に関連する症状の予防、改善、および/または治療を必要とする対象を選択してもよい。
【0098】
成分(A)の投与量は、例えば、0.1 mg/kg体重/日以上、0.5 mg/kg体重/日以上、1 mg/kg体重/日以上、5 mg/kg体重/日以上、10 mg/kg体重/日以上、50 mg/kg体重/日以上、100 mg/kg体重/日以上、200 mg/kg体重/日以上であってもよく、300 mg/kg体重/日以下、200 mg/kg体重/日以下、100 mg/kg体重/日以下、50 mg/kg体重/日以下、10 mg/kg体重/日以下、5 mg/kg体重/日以下、または1 mg/kg体重/日以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。有効成分の投与量は、具体的には、例えば、0.1~300 mg/kg体重/日、好ましくは1~300 mg/kg体重/日、より好ましくは10~100 mg/kg体重/日であってもよい。
【0099】
成分(B)の投与量は、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数に換算して、1×106 cells/kg体重/日以上、1×107 cells/kg体重/日以上、または1×108 cells/kg体重/日以上であってもよく、1×1012 cells/kg体重/日以下、1×1011 cells/kg体重/日以下、または1×1011 cells/kg体重/日以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。成分(B)の投与量は、具体的には、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数に換算して、1×106~1×1012 cells/kg体重/日、好ましくは1×107~1×1011 cells/kg体重/日、より好ましくは1×108~1×1010 cells/kg体重/日であってもよい。上記例示した投与量の範囲における「cells」は、「cfu」と読み替えてもよい。
【0100】
有効成分の投与期間は、例えば、1日以上、3日以上、1週以上、2週以上、4週以上、2月以上、3月以上、4月以上、6月以上、9月以上、または12月以上であってもよく、10年以下、5年以下、1年以下、または6月以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。有効成分は、例えば、対象の生涯を通じて投与されてもよく、対象の生涯の一部の期間に投与されてもよい。有効成分は、例えば、少なくとも、芳香族乳酸化合物生産促進効果等の所望の効果が達成されるまで投与してよい。有効成分は、例えば、毎日投与してもよく、数日に1回投与してもよい。有効成分は、特に、毎日投与してよい。各投与時の有効成分の投与量は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。有効成分である成分(A)および(B)は、同時に投与してもよく、そうでなくてもよい。有効成分である成分(A)および(B)は、特に、同時に投与してよい。
【0101】
有効成分は、例えば、そのまま対象に投与されてもよく、有効成分を含有する、飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物等の組成物として調製され、対象に投与されてもよい。有効成分を含有する組成物については、本発明の組成物の記載を準用できる。有効成分は、単独で投与されてもよく、追加の成分と組み合わせて投与されてもよい。追加の成分としては、飲食品、医薬品、飼料、およびそれらに含有される成分が挙げられる。また、本発明の方法で使用される追加の成分については、本発明の組成物に含有される追加の成分の記載を準用できる。
【0102】
有効成分は、例えば、本発明の組成物を利用して(具体的には、本発明の組成物を対象に投与することにより)、対象に投与することもできる。すなわち、本発明の方法の一態様は、本発明の組成物を対象に投与することを含む方法であってよい。すなわち、「有効
成分の投与」には、本発明の組成物の投与も包含される。本発明の組成物の投与条件(例えば、投与対象、投与期間、投与回数、投与量、その他投与に係る条件)は、芳香族乳酸化合物生産促進効果等の所望の効果が達成される限り、特に制限されない。本発明の組成物の投与条件は、有効成分の種類や含有量、追加の成分の種類や含有量、組成物の種類や剤形、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の組成物の投与条件については、有効成分の投与条件についての記載を準用できる。すなわち、本発明の組成物は、例えば、上記例示したような対象に投与してよい。また、本発明の組成物の投与量は、例えば、上記例示したような有効成分の投与量が得られるように設定することができる。また、本発明の組成物は、単独で投与されてもよく、追加の成分と組み合わせて投与されてもよい。
【0103】
<4>芳香族乳酸化合物の製造方法
有効成分は、in vitroでも使用できる。有効成分は、例えば、芳香族乳酸化合物の製造に使用できる。すなわち、本発明の方法の別の態様は、難消化性オリゴ糖を含有する培地でビフィドバクテリウム属細菌を培養することを含む、芳香族乳酸化合物の製造方法であってよい。難消化性オリゴ糖、ビフィドバクテリウム属細菌、および芳香族乳酸化合物については上述の通りである。ビフィドバクテリウム属細菌としては、ILA等の芳香族乳酸化合物を生産できる細菌を選択してよい。
【0104】
培養条件は、難消化性オリゴ糖を含有する培地を用い、且つ、芳香族乳酸化合物が生産される限り、特に制限されない。培養条件については、難消化性オリゴ糖を含有する培地を用いること以外は、上述したビフィドバクテリウム属細菌の菌体の取得のための培養条件を準用できる。培地は、難消化性オリゴ糖以外の炭素源を含有していてもよく、いなくてもよい。
【0105】
培地中の難消化性オリゴ糖濃度は、芳香族乳酸化合物が生産される限り、特に制限されない。培地中の難消化性オリゴ糖濃度は、例えば、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、0.7重量%以上、または1重量%以上であってもよく、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。培地中の難消化性オリゴ糖濃度は、具体的には、例えば、0.1~30重量%、好ましくは0.2~20重量%、より好ましくは0.5~10重量%であってもよい。難消化性オリゴ糖は、培養開始時に上記例示した濃度範囲で培地に含有されていてもよく、且つ/又は、上記例示した濃度範囲となるように培養中に流加されてもよい。
【0106】
難消化性オリゴ糖は、培養の全期間において培地に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。例えば、難消化性オリゴ糖は、培養の全期間において上記例示した濃度範囲等の所定の濃度範囲で培地に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、難消化性オリゴ糖は、例えば、一部の期間において上記例示した濃度範囲等の所定の濃度範囲以外の濃度で培地に含有されていてもよい。難消化性オリゴ糖は、例えば、一部の期間において不足していてもよい。「不足する」とは、要求量を満たさないことをいい、例えば、培地中の濃度がゼロであることであってよい。例えば、難消化性オリゴ糖は、培養開始時から培地に含有されていてもよく、いなくてもよい。難消化性オリゴ糖が培養開始時に培地に含有されていない場合は、培養開始後に培地に難消化性オリゴ糖が供給される。供給のタイミングは、培養時間等の諸条件に応じて適宜設定できる。難消化性オリゴ糖は、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌が十分に生育してから培地に供給されてもよい。また、例えば、難消化性オリゴ糖は、培養中に消費されて培地中の濃度がゼロとなってもよい。「一部の期間」とは、例えば、培養の全期間の内の、50%以下の期間、30%以下の期間、20%以下の期間、10%以下の期間、5%以下の期間、または1%以下の期間であってよい。このように、一部の期間、難消化性オリゴ糖が不足していても、難消化性オリゴ糖を含有する培地での培養期間が存在する限り、「難消化性オリゴ糖を含有する培地でビフィドバクテリウム属細菌を培養する」ことに含まれる。難消化性オリゴ糖は、通常、少なくとも、芳香族乳酸化合物の生産を希望する期間を通じて培地に含有されていてよい。
【0107】
このようにしてビフィドバクテリウム属細菌を培養することにより、芳香族乳酸化合物が生成し、以て芳香族乳酸化合物を含有する培養物が得られる。
【0108】
芳香族乳酸化合物が生成したことは、例えば、化合物の検出または同定に用いられる公知の手法により確認できる。そのような手法としては、HPLC、UPLC、LC/MS、GC/MS、NMRが挙げられる。
【0109】
芳香族乳酸化合物は、適宜、培養物から(具体的には培地から)回収することができる。すなわち、芳香族乳酸化合物の製造方法は、さらに、芳香族乳酸化合物を培養物から回収することを含んでいてよい。芳香族乳酸化合物の回収は、例えば、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により実施できる。そのような手法としては、イオン交換樹脂法、膜処理法、沈殿法、抽出法、蒸留法、および晶析法が挙げられる。芳香族乳酸化合物は、所望の純度に精製されてよい。
【実施例0110】
以下、非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0111】
試験例1:中和培養
表1に示すYCFA培地のA区分の混合液100 mlをpHコントロール可能な培養装置Bio Jr.8(株式会社バイオット社製BJR-25NA1S-8M)のベッセルに入れ、グルコース、セロビオース、およびマルトース(すべて富士フイルム和光純薬株式会社)各0.2 g、またはラクチュロース粉末(森永乳業社製)1 gを添加し、115℃20分間のオートクレーブ処理を行った。その後、無菌的にフィルター滅菌処理したVitamin soln. IおよびIIをそれぞれ0.1 mLとL-システイン水溶液を1 mL添加し、最終的に、炭素源としてグルコース、セロビオース、およびマルトースを各0.2%(w/v)で含有する培地、ならびに炭素源としてラクチュロースを1%(w/v)で含有する培地を得た。その後、二酸化炭素ガス置換を一晩行うことで培地を嫌気状態とし、生理食塩水で10%(w/v)に予め希釈しておいた糞便溶液100 μlと、MRS培地(Difco社製)にL-システインを0.05%添加した培地で前培養したビフィドバクテリウム・ブレーベMCC 1274(FERM BP-11175)を1 mL接種し、pHが6以下にならないよう1 MのNa2CO3水溶液でコントロールしながら24時間37℃で嫌気培養を行い、培養液を得た。比較対照として、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC 1274(FERM BP-11175)を接種せずに同一条件で嫌気培養を行い、培養液を得た。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
試験例2:培養上清のLC-MS分析用前処理
試験例1で得られた培養液を遠心分離(10,000g、4℃、3分)後、上清を回収した。超純水:メタノール:クロロホルム(すべて富士フイルム和光純薬株式会社)=1:2.5:1の混合液を抽出溶媒とし、これを上清100 μLと混合してVortexで攪拌した。その後、速度20 rpmで30分ローテーターにかけ、遠心分離(13,000g、4℃、10分)後、上清を1200 μL回収した。上清にHPLC用超純水500 μLを加え、Vortexで攪拌した。遠心分離(13,000g、4℃、10分)後、2 mL tubeの蓋に注射針にて1個穴をあけ、上清を1200 μL回収した。メタノール気化のため遠心エバポレーターで30分以上処理し、ディープフリーザー(-80℃)にて一晩凍結した後、凍結乾燥により乾固させた。乾固物にHPLC用超純水(内部標準0.1 mg/ml含有)を200~500 μL加えてVortexにて攪拌した。攪拌液を0.22μmフィルター(メルクミリポア社製)を通して分析用ガラスバイアルに入れ、サンプルとした。
【0116】
試験例3:培養上清のLC-MS分析
LC-MS分析は、XBridge BEH C18 カラム 130Å, 5 μm, 4.6 mm X 150 mm(Waters社製)をHPLCシステムVanquish(Thermo Fisher Scientific社製)に繋げ、TSQ Fortisトリプル四重極質量分析計(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて行った。移動相はA:超純水に酢酸アンモニウム(MERCK 社製)0.1%を溶解した溶液と、B:メタノールにギ酸アンモニウム(MERCK 社製)0.1%とギ酸(富士フイルム和光純薬株式会社)0.1%を溶解した溶液を用いて、B=2%で平衡化したカラムにサンプルを10 μLインジェクションし、その後45分後までにB=55%にする濃度勾配条件で溶出し、各サンプル中のHPLA、ILA、およびインドール-3-酢酸(IAA)量を分析した。分析条件を表4に示す。分析は、各サンプルについて3回実施した。分析結果(3回の分析の平均値)を図1~3に示す。図中、「GMC+1274」は炭素源がグルコース、セロビオース、およびマルトースの組み合わせでMCC 1274を接種した条件、「MLC+1274」は炭素源がラクチュロースでMCC 1274を接種した条件、「GMC」は炭素源がグルコース、セロビオース、およびマルトースの組み合わせでMCC 1274を接種しない条件、「MLC」は炭素源がラクチュロースでMCC 1274を接種しない条件をそれぞれ示す。MLC+1274(炭素源がラクチュロースでMCC 1274を接種した条件)では、他の条件と比較して飛躍的にHPLAおよびILAの産生量が増加した。一方、MLC+1274では、他の条件と比較してIAAの産生量は増加しなかった。以上より、ラクチュロース等の難消化性オリゴ糖とビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィドバクテリウム属細菌の併用によりILAやHPLA等の芳香族乳酸化合物の生産が促進されることが明らかとなった。
【0117】
【表4】
【0118】
試験例4:単培養試験
炭素源がグルコース、セロビオース、およびマルトースの組み合わせでビフィドバクテリウム・ブレーベMCC 1274(FERM BP-11175)を接種した条件(GMC+1274)ならびに炭素源がラクチュロースでビフィドバクテリウム・ブレーベMCC 1274(FERM BP-11175)を接種した条件(MLC+1274)について、単培養試験を行った。具体的には、糞便を接種しない以外は試験例1と同じ手順によりビフィドバクテリウム・ブレーベMCC 1274(FERM BP-11175)を培養した。その後、試験例2及び試験例3と同じ手順により培養上清のLC-MS分析用前処理及び培養上清のLC-MS分析を行った。分析結果(3回の分析の平均値)を図4~6に示す。図中、「GMC+1274」は炭素源がグルコース、セロビオース、およびマルトースの組み合わせでMCC 1274を接種した条件、「MLC+1274」は炭素源がラクチュロースでMCC 1274を接種した条件をそれぞれ示す。MLC+1274(炭素源がラクチュロースでMCC 1274を接種した条件)では、GMC+1274(炭素源がグルコース、セロビオース、およびマルトースの組み合わせでMCC 1274を接種した条件)と比較して飛躍的にHPLAおよびILAの産生量が増加した。一方、MLC+1274では、GMC+1274と比較してIAAの産生量は増加しなかった。以上より、ラクチュロース等の難消化性オリゴ糖とビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィドバクテリウム属細菌の併用によりILAやHPLA等の芳香族乳酸化合物の生産が促進されることが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6