(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034919
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20230306BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20230306BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20230306BHJP
G06F 111/10 20200101ALN20230306BHJP
G06F 113/12 20200101ALN20230306BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 200
A41H43/00 D
G06F111:10
G06F113:12
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141406
(22)【出願日】2021-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】517004001
【氏名又は名称】株式会社SYMBOL
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 未帆
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA11
5B146DG01
5B146DJ12
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】衣類の着心地を求めることができるようにする。
【解決手段】コンピュータ(10)に、衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップ(S102)と、前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップ(S103)と、前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップ(S105)と、前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップ(S106)と、前記変化の度合いに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップ(S107)と、前記第2指標を出力するステップ(S108)と、を実行させるプログラム。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記プログラムは、前記プロセッサに、
衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップと、
前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップと、
前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップと、
前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップと、
前記変化の度合いに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップと、
前記第2指標を出力するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記第1部分に相当する人体の部位の伸縮のしやすさを示す第1指標を取得するステップ、
を実行させ、
前記第2指標を算出するステップにおいて、前記変化の度合いと、前記第1指標とに基づいて、前記第2指標を算出する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記衣類に用いられる生地の特性に関する第2情報を取得するステップ、
を実行させ、
前記第2指標を算出するステップにおいて、前記変化の度合いと、前記第1指標と、前記第2情報とに基づいて、前記第2指標を求める、
請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記指定を受け付けるステップにおいて、前記第1部分として、前記パターン上の任意の面で表される部分の指定を受け付ける、
を実行させる請求項1~請求項3の何れかに記載のプログラム。
【請求項5】
前記指定を受け付けるステップにおいて、前記パターン上の同一の部位に含まれる複数の前記第1部分の指定を受け付け、
前記変化の度合いを求めるステップにおいて、前記複数の前記第1部分の各々についての前記変化の度合いを求め、求めた複数の前記変化の度合いの平均を算出し、
前記第2指標を算出するステップにおいて、前記複数の前記変化の度合いの各々の平均と、前記第1指標とに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出する、
請求項1~請求項3の何れかに記載のプログラム。
【請求項6】
前記変化の度合いを求めるステップにおいて、前記第1部分を含む複数の前記パターンのエリア毎の変化の度合いそれぞれ求め、求めた前記エリア毎の変化の度合いの平均を算出することにより、前記第1部分の変化の度合いを求める、
請求項1~請求項3の何れかに記載のプログラム。
【請求項7】
プロセッサを備える情報処理装置であって、前記プロセッサが、
衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップと、
前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップと、
前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップと、
前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップと、
前記変化の度合いに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップと、
前記第2指標を出力するステップと、
を実行させる情報処理装置。
【請求項8】
プロセッサを備えるコンピュータが、
衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップと、
前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップと、
前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップと、
前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップと、
前記変化の度合いに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップと、
前記第2指標を出力するステップと、
を実行する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、情報処理装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着心地の良い衣服を設計する技術が求められている。特許文献1は、「生物の身体形状データを三次元座標として入力し、入力された身体形状データに基づいて、衣服の設計対象である身体形状を表す三次元ポリゴンデータを生成し、身体形状の動きを示す身体動作情報を時系列データとして入力してから、ポリゴンデータの変位を当該身体動作情報に基づいて算出し、算出されたポリゴンデータの変位に基づいて、設計支援情報の分布を算出して出力する」技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、衣服の着圧分布を用いて着心地の良い衣服の設計を行う。しかし、着圧分布は物理的には正しいが、必ずしも実際に人が感じる着心地を表すものとは言えない。すなわち、衣服の着心地を求めることができない、という問題があった。
【0005】
そこで、本開示において、衣類の着心地を求めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るプログラムは、プロセッサを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記プログラムは、前記プロセッサに、衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップと、前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップと、前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップと、前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップと、前記伸縮率に基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップと、前記第2指標を出力するステップと、変化の度合いを求めるステップを実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、衣類の着心地を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】情報処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図2】情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】着装シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図6】着装シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図8】情報処理装置10による着心地算出処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
<1.情報処理装置10の構成>
図1及び
図2を用いて、本開示に係る情報処理装置10について説明する。本開示に係る情報処理装置10は、着心地算出処理等を実行するための装置である。
【0011】
図1は、情報処理システム1の構成を示す図である。情報処理システム1は、情報処理装置10と、ユーザ端末20と、ネットワーク30とを備える。情報処理装置10は、例えば、ラップトップパソコン又はラックマウント型若しくはタワー型等のコンピュータ等である。情報処理装置10は、複数の情報処理装置10等により構成されてもよい。また、本実施形態の情報処理システム1において、各装置(例えば、ユーザ端末20等)の集合体を1つの「情報処理装置」として構成することもできる。情報処理システム1を実現することに要する複数の機能の配分の仕方は、各ハードウェアの処理能力、情報処理システム1に求められる仕様等に鑑みて適宜決定することができる。
【0012】
情報処理装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信IF14と、入出力IF15とを含んで構成される。
【0013】
プロセッサ11は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0014】
メモリ12は、プログラム、及び、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0015】
ストレージ13は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)である。
【0016】
通信IF14は、情報処理装置10が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。通信IF14は、インターネット、広域イーサネット等のネットワーク30に有線又は無線により接続する。
【0017】
入出力IF15は、入力操作を受け付けるための入力装置(例えば、マウス等のポインティングデバイス、キーボード)、及び、情報を提示するための出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)とのインタフェースとして機能する。
【0018】
ユーザ端末20は、ユーザにより操作される端末である。ここで、ユーザは、例えば、デザイナー、パタンナー、テーラー、衣類メーカー、その他の衣類に関する法人又は自然人等である。ユーザ端末20は、例えば、スマートフォン、パソコン等である。
【0019】
情報処理装置10、ユーザ端末20は、ネットワーク30を介して相互に通信可能に構成される。
【0020】
図2は、情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、情報処理装置10は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを含む。
【0021】
通信部110は、情報処理装置10が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0022】
記憶部120は、情報処理装置10が使用するデータ及びプログラムを記憶する。記憶部120は、第1データDB121、第2データDB122、第3データDB123等を記憶する。
【0023】
第1データDB121は、パターンの情報を保持するデータベースである。パターンは、衣類を作成するための型紙、設計図などである。衣類は、衣服のみならず、靴、帽子等の人が身に付けるものを含む。パターンは、1つの衣服を完成させるための全てであっても、衣服の一部を示すものであってもよい。パターンは、まったく伸びていない状態である。パターンの情報は、パターンのサイズ、部位などの情報を含む。
【0024】
第2データDB122は、人体の3Dモデルに関する情報を保持するデータベースである。3Dモデルは、人体のサイズに応じたものを予め取得しておく。人体のサイズは、実際に人体を採寸した情報、人体を3Dスキャンした情報により定まる。また、人体のサイズは、身長、体重、性別などにより定まる既定のものを用いてもよい。既定の人体のサイズは、例えば、男性のM、女性のXSなどである。なお、衣類が靴下、靴などの場合、足のサイズ、手袋であれば手のサイズなど、衣類に応じて人体のサイズは異なる。
【0025】
第3データDB123は、シミュレーションに関するデータを保持するデータベースである。シミュレーションに関するデータは、例えば、パターンから人体の3Dモデルへの着装シミュレーションを行うために必要なパラメータ等である。
【0026】
制御部130は、情報処理装置10のプロセッサ11がプログラムに従って処理を行うことにより、受信制御部131、送信制御部132、表示部133、受付部134、取得部135、シミュレーション部136、算出部137に示す機能を発揮する。
【0027】
受信制御部131は、情報処理装置10が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。
【0028】
送信制御部132は、情報処理装置10が外部の装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0029】
表示部133は、種々の画面を表示する機能を有する。
【0030】
(入力画面)
具体的には、表示部133は、衣類のパターンに関する第1情報と、衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるための入力画面(図示しない)を、ユーザ端末20に表示させる。
【0031】
例えば、表示部133は、第1データDB121に保持されたパターンをプルダウンメニューなどにより選択することが可能な入力画面を表示する。また、例えば、表示部133は、第1情報を、アップロード可能な入力画面を表示する。
【0032】
また、表示部133は、人体のサイズを、プルダウンメニューにより選択可能な入力画面、テキストボックスにより入力可能な入力画面等を表示する。
【0033】
(指定受付画面)
また、表示部133は、パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるための、指定受付画面を表示する。具体的には、表示部133は、受付部134が受け付けたパターンを表示し、パターン上の2点を指定、又はパターン上をなぞることにより線を指定することが可能な指定受付画面を、ユーザ端末20に表示させる。
【0034】
図3及び
図4は、指定受付画面の一例を示す図である。
図3に示すように、画面140は、受け付けたパターンを含む。画面140の丸付き数字1~丸付き数字3は、それぞれ指定された第1部分である。点141と点142とが、ユーザ端末20の操作(例えば、クリック、タッチ操作等)により順に指定されると、点141と点142とを結んだ線(丸付き数字1)が指定される。同様に、点143と点144とが、ユーザ端末20の操作により順に指定されると、点143と点144とを結んだ線(丸付き数字2)が指定される。
【0035】
図4は、パターンが襟元を示す場合である。
図4に示すように、画面150は、受け付けた襟元を示すパターンを含む。本開示では、第1部分は線で結ばれるため、襟元のような曲線を表現する場合、点151~点157のように指定を受け付けて、細かい線として表現する。
【0036】
また、受け付ける線は、直線でなくともよい。例えば、
図4において、点151~点157を含む曲線の指定を受け付けることができる。この場合、点151~点157の座標と、曲線の曲率とを求める。
【0037】
(出力画面)
また、表示部133は、着装シミュレーションの結果と、衣類の着心地の良さを示す第2指標とを表示するための、出力画面を表示する。具体的には、表示部133は、シミュレーション部136により実行された着装シミュレーションの結果を、ユーザ端末20に表示させる。
【0038】
図5及び
図6は、着装シミュレーション結果の一例を示す図である。
図5は、着装シミュレーション結果における前面を示す。また、
図6は、着装シミュレーション結果における背面を示す。
図5に示すように、画面160は、パターンを人体の3Dモデルに着装したシミュレーションの結果を含む。
図5において、点161~点164が、
図3の点141~点144にそれぞれ対応する。また、
図6に示すように、画面170は、パターンを人体の3Dモデルに着装したシミュレーションの結果を含む。
図6において、点165、点166が、
図3の点145、点146にそれぞれ対応する。
【0039】
また、表示部133は、算出部137により算出された着心地の良さを示す第2指標を、ユーザ端末20に表示させる。
【0040】
図7は、第2指標の出力例を示す図である。
図7に示すように、画面180は、第2指標を、ユーザ端末20に表示させる。第2指標は、着心地の良さとして、数値や、「〇」、「△」、「×」等の段階的な表現を用いることができる。
【0041】
受付部134は、衣類のパターンに関する第1情報と、衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付ける。具体的には、受付部134は、表示部133が表示した入力画面に入力された第1情報と、人体のサイズとの入力を受け付ける。
【0042】
また、受付部134は、受け付けたパターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付ける。具体的には、受付部134は、指定受付画面により指定された線を第1部分として受け付ける。第1部分は、例えば、パターン上の始点の座標と終点の座標とで定義される。
【0043】
取得部135は、第1部分に相当する人体の部位の伸縮のしやすさを示す第1指標を取得する。具体的には、取得部135は、第1部分が、人体のどの部位に着装されるかを示す情報を取得する。例えば、取得部135は、パターンが1つの部位を示すものであれば、その部位を第1情報から取得する。また、取得部135は、パターンが2つ以上の部位にかかるものであれば、第1部分の座標と、第1情報とから、第1部分がどの部位に該当するかを求める。そして、取得部135は、求めた部位の伸縮のしやすさを、第1指標とする。着心地に影響を与える度合いは、部位により異なる。このため、取得部135は、第1部分に相当する部位に応じて、伸縮のしやすさを第1指標とする。取得部135は、部位毎の伸縮のしやすさを、予め記憶した記憶部120等から取得する、外部サーバから取得する等の種々の方法により、取得すればよい。
【0044】
シミュレーション部136は、第1情報を用いて、衣類を、受け付けたサイズに応じた人体の3Dモデルに着装するシミュレーションを実行する。着装シミュレーションは、任意の手法を用いることができる。また、物理シミュレーションの手法として、三角メッシュ自体が変形する手法を採用することで、より精度を高めることができる。
【0045】
当該シミュレーションにおいて、シミュレーションの前後の頂点の関係性を保つことにより、指定した第1部分がシミュレーション後にどこに移動するか、どの程度伸びているかを知ることができる。
【0046】
算出部137は、シミュレーションによりパターンが人体の3Dモデルに着装されたときの、第1部分の変化の度合いを求める。
【0047】
具体的には、算出部137は、シミュレーション前の第1部分の長さを算出する。例えば、
図3の例で、点141と点142とのパターン上での長さを算出する。
【0048】
また、算出部137は、シミュレーション後において、パターンが人体の3Dモデルに着装されたときの、第1部分の長さを算出する。例えば、算出部137は、シミュレーション後の第1部分の長さである、点161と点162とのパターン上での長さを算出する。
【0049】
次に、算出部137は、第1部分のシミュレーション前後の変化の度合いを求める。変化の度合いは、例えば、第1部分の伸縮率、変化量などである。本開示では、変化の度合いが伸縮率である場合を例に説明する。伸縮率は、例えば、シミュレーション後の第1部分の長さを、シミュレーション前の第1部分の長さで割ることにより求める。
【0050】
また、算出部137は、第1部分が複数ある場合、複数の伸縮率の平均値、中央値、最尤値等の統計値を採用する。第1部分の各々が平行であるときは、複数の第1部分が全体として1つの帯状であるものと考えることができる。この場合、複数の伸縮率の平均を採用すると、全体としての伸縮率として適切であるものと考えることができる。
【0051】
また、算出部137は、伸縮率と、第1指標と、衣類に用いられる生地の特性に関する第2情報とに基づいて、衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出する。
【0052】
具体的には、算出部137は、まず、衣類に用いられる生地の特性に関する第2情報を取得する。生地の特性は、例えば、生地に用いる素材に応じた伸びやすさを示す情報である。
【0053】
次に、算出部137は、伸縮率と、第1指標と、第2情報とに基づいて、衣類の着心地の良さを示す第2指標を求める、具体的には、算出部137は、伸縮率と、第1指標と、第2情報との関係から、第2指標を算出する。当該関係は、例えば、回帰分析などにより表される。第1指標は、部位により稼働の大小、変形の有無が分かる。当該部位の稼働が少ない場合、人はきつさを許容できる。例えば、胴体部は、稼働が少なく、変形もあまりないため、伸縮率が少なくても、人はきつさを許容できる。当該部位の稼働が大きく、変形がある場合、伸縮率が大きくても、人はきついと感じることがある。例えば、肩回りや首周径は、稼働が大きく、変形することが想定されるため、衣服の伸縮率が大きくても、人はきついと感じることがある。
【0054】
また、生地の特性が、革、布綿などの伸びづらい素材である場合、伸縮率が小さくても、人は着心地が悪いと感じる。また、生地の特性が、ストレッチ素材などの伸びやすい素材である場合、伸縮率が小さくても、人は着心地が悪いと感じない。
【0055】
算出部137は、このような、伸縮率と、第1指標と、第2情報との間の関係から、第2指標を算出する。
【0056】
なお、このような関係を予め定めておき、算出部137が閾値を決定する構成としてもよい。この場合、算出部137は、伸縮率が決定した閾値を超えるか否かで、第2指標を求めることができる。
【0057】
例えば、算出部137は、第1指標で稼働が少ない部位であり、かつ、第2情報で、生地の特性が革である場合、第1閾値を3%、第2閾値を5%とする。このとき、算出部137は、伸縮率が第1閾値以下(3%以下)であれば、第2指標を、着心地が悪い、又は「×」とする。また、算出部137は、伸縮率が第1閾値より上から第2閾値以下(3%~5%)であれば、第2指標を、普通、又は「△」とする。また、算出部137は、伸縮率が第2閾値を超える場合(5%~)であれば、第2指標を、着心地が良い、又は「〇」とする。このように、第1指標と第2情報との関係から、第2指標を導く閾値を決定する方法を採用することもできる。
【0058】
<2.動作>
以下では、情報処理装置10における処理について図面を参照しながら説明する。
【0059】
<2.1.着心地算出処理>
図15は、情報処理装置10による着心地算出処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、当該処理を、ユーザがログインしたタイミング等に実行する。
【0060】
ステップS101において、表示部133は、衣類のパターンに関する第1情報と、衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるための入力画面を、ユーザ端末20に表示させる。
【0061】
ステップS102において、受付部134は、衣類のパターンに関する第1情報と、衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付ける。
【0062】
ステップS103において、受付部134は、受け付けたパターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付ける。
【0063】
ステップS104において、取得部135は、第1部分の伸縮のしやすさを示す第1指標を取得する。
【0064】
ステップS105において、シミュレーション部136は、第1情報を用いて、衣類を、受け付けたサイズに応じた人体の3Dモデルに着装するシミュレーションを実行する。
【0065】
ステップS106において、算出部137は、シミュレーションによりパターンが人体の3Dモデルに着装されたときの、第1部分の伸縮率を求める。
【0066】
ステップS107において、算出部137は、伸縮率と、第1指標と、衣類に用いられる生地の特性に関する第2情報とに基づいて、衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出する。
【0067】
ステップS108において、表示部133は、着装シミュレーションの結果と、衣類の着心地の良さを示す第2指標とを表示するための、出力画面を表示し、処理を終了する。
【0068】
<3.小括>
服を着たときの着心地を、しめつけ、張りとして推測する技術は存在していた。しかし、布のひずみ(本来の長さからの変化量)や皮膚までの距離は物理的には正しいが解釈が難しく、また、必ずしも直感・実際の着心地と連動しないことが多い。例えば、ある領域が局所的に歪んでいても、それは重力方向にかかる力によって歪んでいるだけであり、人体側に力を与える要素にはなっていなかったりすることが発生する。また、逆にすぐ隣の部分に実は余裕があり、実際にその服を着て少し偏りを直すときつさを感じるレベルではなかったりすることがよく発生する。
【0069】
また、人体までの距離、という観点だと、例えばシャツを着たとき、肩の部分は必ず人体に接することになるが、それだけできつさを感じる人はいない(慣れの要素と、開放系であることの両方が寄与していると考えられる)。そこで、よりシンプルに、衣服においてテンションがかかりやすい部位を線で指定し、その線が実際に物理シミュレーションを用いて着装を行った後にどのくらい伸びているかを計測することで着心地を予測できないかと考えた。
【0070】
従来の技術は、衣服の着圧分布を用いて着心地の良い衣服の設計を行う。しかし、着圧分布は物理的には正しいもが、必ずしも実際に人が感じる着心地を表すものとは言えない。
【0071】
例えば、ある領域が局所的に歪んでいても、それは重力方向にかかる力によって歪んでいるだけの場合がある。このとき、着圧は、人体側に力を与える要素にはなっていなかったり、逆にすぐ隣の部分に実は余裕があったりする。このため、実際にその服を着て少し偏りを直すときつさを感じるレベルではなかったりすることがよく発生する。
【0072】
また、人体までの距離、という観点では、例えばシャツを着たとき肩の部分は必ず人体に接することになるが、それだけできつい等の着心地の悪さを感じる人はいない。このため、従来技術では、実際の着心地を求めることができなかった。
【0073】
以上説明したように、本開示によれば、衣類のパターンに関する第1情報と、当該衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付け、パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付け、第1部分の伸縮のしやすさを示す第1指標を取得し、第1情報から、当該衣類を、当該サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行し、シミュレーションにより当該パターンが人体モデルに着装されたときの、第1部分の伸縮率を求め、当該伸縮率と、第1指標とに基づいて、当該衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出し、当該第2指標を出力することにより、衣類の着心地を求めることができる。
【0074】
また、生地の特性に関する第2情報を用いて第2指標を求めることにより、より精度よく着心地を求めることができる。
【0075】
<変形例>
上記では、予め重要度の算出等のデータ分析をしておき、これを元に分析結果を表示する構成とした。変形例1では、データ分析を、ユーザから分析の要求を受け付けた際に行う場合を説明する。なお、上記と同一の機能及び構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0076】
また、上記実施形態では、第1部分を線で表されるものである場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1部分として、パターン上の任意の面で表される部分を用いることもできる。この場合、第1部分の指定には、パターンに応じて予め定めておく、ユーザが面をなぞることで指定する、などを採用することができる。
【0077】
また、この場合、算出部137は、長さの代わりに、面積を求める。算出部137は、伸縮率として、シミュレーション前後の面積比を求める。
【0078】
変形例によれば、線で表しにくい部位についても、面で捉えることにより、着心地を求めることができる、という効果を奏する。
【0079】
<変形例2>
また、上記実施形態では、算出部137は、第1部分である線の伸縮率を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、算出部137は、第1部分を含む複数のパターンのエリア毎の変化の度合いそれぞれ求め、求めた当該エリア毎の変化の度合いの平均を算出することにより、第1部分の変化の度合いを求める構成とすることができる。
【0080】
具体的には、算出部137は、指定された線を所定量だけ太くする(幅を持たせる)。次に、算出部137は、太くなった線を含む複数のエリア全体の伸縮率をそれぞれ求める。エリアは、例えば、メッシュ、予め定められた伸縮に影響のある領域である。そして、算出部137は、求めた複数のエリア全体の伸縮率の平均を求め、これを当該線(第1部分)の伸縮率とする。
【0081】
変形例2によれば、線が通るエリア毎の伸縮率の平均を、第1部分の伸縮率とする。これにより、指定された第1部分が着装されることにより影響するエリアも加味した伸縮率が求められるため、精度よく着心地を求めることができる。
【0082】
<その他の変形例>
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換及び変更を行なって実施することができる。これらの実施形態及び変形例ならびに省略、置換及び変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
上記実施形態では、パターン及びサイズを人手で入力する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1データDB121等から自動的にパターン及びサイズを取得することも可能である。この場合、データベースにある1番目、2番目、と順にパターンを選択するループと、人体のサイズを順に選択するループとを組み合わせて実行すればよい。また、対象者の個人情報を読み込む、対象者を計測することにより、サイズを自動入力する構成としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、第1部分の指定を受け付ける場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、第1部分が、パターンにおいて予め指定されていてもよい。この場合、第1情報に第1部分の指定が含まれる構成としてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、着心地の良さを示す指標を表示する方法により出力したが、これに限定されるものではない。例えば、当該サイズを持つ人にとって、着心地のよい別商品の提案する構成としてもよい。この場合、第1情報に類似するパターンの第1情報について、上記と同様の処理を行い、第2指標が良くなれば、当該類似するパターンの衣服を提案すればよい。
【0086】
また、着心地の良さが一定よりも悪い場合、パターンを他のサイズに変更すること、生地を変更することなどを、デザイナー、テーラー等に提案する構成としてもよい。他のサイズは、SML等のサイズの他に、パターンのグレーディングを提案する構成としてもよい。この場合、他のサイズについても上記実施形態と同様の処理を行い、最も第2指標の良い値を示すサイズについて提案すればよい。また、生地についても同様である。
【0087】
また、第2指標の算出において、フィット感に関する装着者の嗜好に関する情報を更に用いる構成としてもよい。当該嗜好に関する情報は、例えば、ゆったり、タイト等である。例えば、嗜好に関する情報がゆったりの場合、装着者は、同じ伸縮率であっても、着心地の良さが悪く感じる。この関係を、上記回帰分析に用いることにより、より精度良く着心地の良さを求めることができる。
【0088】
また、算出部137は、上記嗜好に関する情報に応じて伸縮率を補正する構成としてもよい。例えば、嗜好に関する情報がゆったりの場合、小さくする補正をする(例えば、0.9を乗じる)。また、タイトの場合、算出部137は、伸縮率を大きくする補正(例えば、1.1を乗じる)。このような構成により、計算量を少なくすることで、高速に精度よく着心地の良さを求めることができる。
【0089】
上記開示では、入力方法として入力画面から受け付ける構成としたが、例えば、テキストボックス、プルダウン、チェックボックス等を用いることができる。また、各種情報の入力は、他の手法により実現してもよい。また、入力方法に、音声入力を用いる構成としてもよい。また、入力せずに、予め用意されたサイズ、生地の特性について、順次第2指標を算出する構成としてもよい。
【0090】
また、情報処理装置10の各機能を、他の装置に構成してもよい。例えば、記憶部120の各DBは、外部のデータベースとして構築してもよい。
【0091】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
(付記1)プロセッサ(11)を備えるコンピュータ(例えば、情報処理装置10)に、衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップ(S102)と、前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップ(S103)と、前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップ(S105)と、前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップ(S106)と、前記変化の度合いに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップ(S107)と、前記第2指標を出力するステップ(S108)と、を実行させる変化の度合いを求めるステッププログラム。
【0092】
(付記2)前記第1部分に相当する人体の部位の伸縮のしやすさを示す第1指標を取得するステップ(S104)、を実行させ、前記第2指標を算出するステップにおいて、前記変化の度合いと、前記第1指標とに基づいて、前記第2指標を算出する、(付記1)に記載のプログラム。
【0093】
(付記3)前記衣類に用いられる生地の特性に関する第2情報を取得するステップ、を実行させ、前記第2指標を算出するステップにおいて、前記変化の度合いと、前記第1指標と、前記第2情報とに基づいて、前記第2指標を求める、(付記1)又は(付記2)に記載のプログラム。
【0094】
(付記4)前記指定を受け付けるステップにおいて、前記第1部分として、前記パターン上の任意の面で表される部分の指定を受け付ける、(付記1)~(付記3)の何れかに記載のプログラム。
【0095】
(付記5)前記指定を受け付けるステップにおいて、前記パターン上の同一の部位に含まれる複数の前記第1部分の指定を受け付け、前記変化の度合いを求めるステップにおいて、前記複数の前記第1部分の各々についての前記変化の度合いを求め、求めた複数の前記変化の度合いの平均を算出し、前記第2指標を算出するステップにおいて、前記複数の前記変化の度合いの各々の平均と、前記第1指標とに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出する、(付記1)~(付記3)の何れかに記載のプログラム。
【0096】
(付記6)前記変化の度合いを求めるステップにおいて、前記第1部分を含む複数の前記パターンのエリア毎の変化の度合いそれぞれ求め、求めた前記エリア毎の変化の度合いの平均を算出することにより、前記第1部分の変化の度合いを求める、(付記1)~(付記3)の何れかに記載のプログラム。
【0097】
(付記7)プロセッサ(11)を備えるコンピュータ(例えば、情報処理装置10)が、衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップ(S102)と、前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップ(S103)と、前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップ(S105)と、前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップ(S106)と、前記変化の度合いに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップ(S107)と、前記第2指標を出力するステップ(S108)と、変化の度合いを求めるステップを実行する方法。
【0098】
(付記8)プロセッサ(11)を備える情報処理装置(10)であって、前記プロセッサが、衣類のパターンに関する第1情報と、前記衣類の着装先の人体のサイズとの入力を受け付けるステップ(S102)と、前記パターン上の任意の線で表される第1部分の指定を受け付けるステップ(S103)と、前記第1情報から、前記衣類を、前記サイズに応じた人体モデルに着装するシミュレーションを実行するステップ(S105)と、前記シミュレーションにより前記パターンが前記人体モデルに着装されたときの、前記第1部分の変化の度合いを求めるステップ(S106)と、前記変化の度合いに基づいて、前記衣類の着心地の良さを示す第2指標を算出するステップ(S107)と、前記第2指標を出力するステップ(S108)と、変化の度合いを求めるステップを実行する情報処理装置。
【符号の説明】
【0099】
1 情報処理システム、10 情報処理装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 通信IF、15 入出力IF、20 ユーザ端末、30 ネットワーク、110 通信部、120 記憶部、121 第1データDB、122 第2データDB、123 第3データDB、130 制御部、131 受信制御部、132 送信制御部、133 表示部、134 受付部、135 取得部、136 シミュレーション部、137 算出部。