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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003493
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
A41D13/11 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104600
(22)【出願日】2021-06-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2021年4月13日「オンヨネ株式会社」の自社ウェブサイト(https://www.onyone.co.jp/other/hybrid-type-mesh-mask/)上において公開 (2)2021年4月20日「株式会社PR TIMES」のウェブサイト(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000070350.html)上において公開 (3)2021年(令和3年)6月16日「新潟日報」において公開
(71)【出願人】
【識別番号】391023758
【氏名又は名称】オンヨネ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】恩田 浩典
(57)【要約】
【課題】捕集性能と呼吸のし易さとを両立させたこれまでにないマスクを提供する。
【解決手段】口元を含む顔面に対向する内側メッシュ層1と、この内側メッシュ層1の外側に積層される外側メッシュ層2とを有する本体部と、この本体部の左右両端部に設けられた耳掛け部3とを有し、前記内側メッシュ層1と前記外側メッシュ層2とでメッシュ構造が異なるマスクであって、前記本体部は、口元を含む顔面に装着した際、前記本体部の外周部が前記顔面に当接し、且つ、前記内側メッシュ層1の少なくとも口唇と対向する中心部が顔面から適宜な空間を介して配される形状であり、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2は、所定の捕集効率及び通気抵抗を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口元を含む顔面に対向する内側メッシュ層と、この内側メッシュ層の外側に積層される外側メッシュ層とを有する本体部と、この本体部の左右両端部に設けられた耳掛け部とを有し、前記内側メッシュ層と前記外側メッシュ層とでメッシュ構造が異なるマスクであって、
前記本体部は、口元を含む顔面に装着した際、前記本体部の外周部が前記顔面に当接し、且つ、前記内側メッシュ層の少なくとも口唇と対向する中心部が顔面から適宜な空間を介して配される形状であり、
前記内側メッシュ層及び前記外側メッシュ層は、前記内側メッシュ層及び前記外側メッシュ層を積層した状態で、帯電時の0.1μm粒子の捕集効率が70%以上であり、且つ、表裏の通気抵抗が10Pa以下となる素材で構成されていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
請求項1記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層及び前記外側メッシュ層は、一方がナイロン素材、他方がポリエステル素材で構成されていることを特徴とするマスク。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層及び前記外側メッシュ層は、前記内側メッシュ層及び前記外側メッシュ層を積層した状態で、前記帯電時の0.1μm粒子の捕集効率が93%以上であり、且つ、表裏の通気抵抗が0Paとなる素材で構成されていることを特徴とするマスク。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層及び前記外側メッシュ層はメッシュ孔の粗密が異なる構造であることを特徴とするマスク。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層及び前記外側メッシュ層は編み方が異なることを特徴とするマスク。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層のメッシュ孔の面積が1個当たり0.040~0.060mm2、また、前記外側メッシュ層のメッシュ孔の面積が1個当たり0.140~0.160mm2であることを特徴とするマスク。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載のマスクにおいて、外側メッシュ層は左半体と右半体とで構成され、各半体の上側の中央側端点は鼻骨下に位置するように設定され、上側の外側端点は頬骨下に位置するように設定され、下側の中央側端点は顎先に位置するように設定されていることを特徴とするマスク。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層と前記外側メッシュ層との間には、インナーマスクを収納可能な収納部が設けられていることを特徴とするマスク。
【請求項9】
請求項8記載のマスクにおいて、前記収納部は上向きに開口され、この開口部を形成する前記内側メッシュ層と前記外側メッシュ層との一部を着脱自在に係止する係止部が設けられていることを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、抗ウイルス・制菌・抗菌作用を向上させたマスクが記載されている。具体的には、メッシュ構造を有するシート体を2枚積層し、一方のシート体のメッシュ構造を他方のシート体より粗くしたマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3226529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、ウイルス・菌等の捕集性能が高いマスクは、通気抵抗(圧力損失)が大きく呼吸し難いものであり、長時間連続的に着用すると息苦しさを感じる場合がある。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決したもので、捕集性能と呼吸のし易さとを両立させたこれまでにないマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
口元を含む顔面に対向する内側メッシュ層1と、この内側メッシュ層1の外側に積層される外側メッシュ層2とを有する本体部と、この本体部の左右両端部に設けられた耳掛け部3とを有し、前記内側メッシュ層1と前記外側メッシュ層2とでメッシュ構造が異なるマスクであって、
前記本体部は、口元を含む顔面に装着した際、前記本体部の外周部が前記顔面に当接し、且つ、前記内側メッシュ層1の少なくとも口唇と対向する中心部が顔面から適宜な空間を介して配される形状であり、
前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2は、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2を積層した状態で、帯電時の0.1μm粒子の捕集効率が70%以上であり、且つ、表裏の通気抵抗が10Pa以下となる素材で構成されていることを特徴とするマスクに係るものである。
【0008】
また、請求項1記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2は、一方がナイロン素材、他方がポリエステル素材で構成されていることを特徴とするマスクに係るものである。
【0009】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2は、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2を積層した状態で、前記帯電時の0.1μm粒子の捕集効率が93%以上であり、且つ、表裏の通気抵抗が0Paとなる素材で構成されていることを特徴とするマスクに係るものである。
【0010】
また、請求項1~3いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2はメッシュ孔の粗密が異なる構造であることを特徴とするマスクに係るものである。
【0011】
また、請求項1~4いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2は編み方が異なることを特徴とするマスクに係るものである。
【0012】
また、請求項1~5いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層1のメッシュ孔の面積が1個当たり0.040~0.060mm2、また、前記外側メッシュ層2のメッシュ孔の面積が1個当たり0.140~0.160mm2であることを特徴とするマスクに係るものである。
【0013】
また、請求項1~6いずれか1項に記載のマスクにおいて、外側メッシュ層2は左半体と右半体とで構成され、各半体の上側の中央側端点は鼻骨下に位置するように設定され、上側の外側端点は頬骨下に位置するように設定され、下側の中央側端点は顎先に位置するように設定されていることを特徴とするマスクに係るものである。
【0014】
また、請求項1~7いずれか1項に記載のマスクにおいて、前記内側メッシュ層1と前記外側メッシュ層2との間には、インナーマスク4を収納可能な収納部5が設けられていることを特徴とするマスクに係るものである。
【0015】
また、請求項8記載のマスクにおいて、前記収納部5は上向きに開口され、この開口部を形成する前記内側メッシュ層1と前記外側メッシュ層2との一部を着脱自在に係止する係止部が設けられていることを特徴とするマスクに係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、捕集性能と呼吸のし易さとを両立させたこれまでにないマスクとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例の概略説明斜視図である。
図2】インナーマスク4の概略説明斜視図である。
図3】本実施例の裏面側から見た概略説明図である。
図4】本実施例の装着時の概略説明図である。
図5】(a)内側メッシュ層1と(b)外側メッシュ層2の電子顕微鏡写真である。
図6】実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
耳掛け部3を夫々耳に係止すると共に本体部で口元を覆うように顔面に装着する。
【0020】
この際、本体部は口唇と内側メッシュ層1との間に所定の空間を介して配され、当該空間により、本体部(フィルター)によるろ過が局所的でなく本体部の広い範囲で行われることになり、効率的にウイルス・菌等を捕集できる。
【0021】
また、内側メッシュ層1と外側メッシュ層2とでメッシュ構造が異なり、且つ、前記空間が存在することで、呼吸時に乱気流が生じ易くなり、ウイルス・菌等のブラウン運動が促進されてメッシュ層で捕捉され易くなり、この点からも捕集が効率的に行われる。
【0022】
さらに、本体部が所定の捕集効率と通気抵抗を有する素材で構成されているため、良好な捕集性能を発揮するのは勿論、呼吸し易く、また、ムレ感も少なく、よって、長時間快適に着用できることになる。
【実施例0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、口元を含む顔面に対向する内側メッシュ層1と、この内側メッシュ層1の外側に積層される外側メッシュ層2とを有する本体部と、この本体部の左右両端部に設けられた耳掛け部3とを有し、前記内側メッシュ層1と前記外側メッシュ層2とでメッシュ構造が異なるマスクである。
【0025】
具体的には、前記本体部は、口元を含む顔面に装着した際、前記本体部の外周部が前記顔面に当接し、且つ、前記内側メッシュ層1の少なくとも口唇と対向する中心部が顔面から適宜な空間を介して配される形状であり、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2は、前記内側メッシュ層1及び前記外側メッシュ層2を積層した状態で、帯電時の0.1μm粒子の捕集効率が70%以上であり、且つ、表裏の通気抵抗が10Pa以下となる素材で構成されているものである。
【0026】
各部を具体的に説明する。
【0027】
本体部は、外側メッシュ層2と内側メッシュ層1との二層構造であり、少なくとも着用者の鼻孔と口元とを覆うことができる大きさである。
【0028】
外側メッシュ層2及び内側メッシュ層1は夫々、左右2つの半体から構成されており、2つの半体を中心側で縫合して一体化することで、立体的形状としている(図1参照)。
【0029】
内側メッシュ層1は、外側メッシュ層2の裏側に、上縁部を除く外周部(左右縁部及び下縁部)が縫合されて一体化されている。
【0030】
従って、内側メッシュ層1と外側メッシュ層2との間にはインナーマスク4を収納可能な収納部5(ポケット)が形成される(図2,3参照)。前述のとおり、内側メッシュ層1の上縁部は縫合されていないため、収納部5は上向きに開口されている。
【0031】
なお、収納部5の上向きの開口部を形成する前記内側メッシュ層1と前記外側メッシュ層2との一部を着脱自在に係止する面ファスナー等の係止部を設ける構成としても良い。この場合、内側メッシュ層1と外側メッシュ層2との密着性が良好となる。
【0032】
インナーマスク4を収納部5に収納して三層(以上の)構造とすることで、さらにウイルス・菌等の捕集効率を高めることができる。インナーマスク4は、例えば半導体繊維素材若しくは制菌性繊維素材またはこれら双方を組み合わせて構成される。半導体繊維としては、カーボン繊維、貴金属が練り込まれた繊維等が、制菌性繊維としては溶剤を架橋加工で定着させた繊維等が用いられる。インナーマスク4もメッシュ層と同様に、左右2つの半体を縫合して一体化されている。
【0033】
また、外側メッシュ層2の上縁部内には、ワイヤー状の形状記憶樹脂(図示省略)が設けられ、鼻の周面に沿って湾曲して上縁部が顔面に密着し得る形状を維持できるように構成されている。
【0034】
耳掛け部3は本体部の左右両端部に設けられるループ状の帯状体であり、あらゆる方向に伸縮性を有する。耳掛け部3は例えば全方向伸縮繊維素材(ポリウレタン繊維やポリエステル繊維などの伸縮性を有する繊維、またはこれらと他の繊維との複合糸からなる編み組織を有する素材)で構成される。
【0035】
本実施例では耳掛け部3の上側端部が外側メッシュ層2の左右端部の外面側に縫合され、下側端部が外側メッシュ層2の左右端部の内面側に縫合されている。また、耳掛け部3は中央部分(耳に引っ掛かるループ部分)より端部側が幅広に構成されている(端部が本体側に向かって徐々に幅広となるように構成されている。)。また、耳掛け部3の上側端部の下端部は、耳掛け部3の下側端部の上端部の外側に位置するように(重なるように)設けられている。
【0036】
内側メッシュ層1はナイロン素材から成るメッシュ生地(ナイロン繊維を用いて編成若しくは織成されたクロス)で構成されている。また、外側メッシュ層2はポリエステル素材から成るメッシュ生地(ポリエステル繊維を用いて編成若しくは織成されたクロス)で構成されている。なお、本実施例では外側メッシュ層2をポリエステル素材、内側メッシュ層1をナイロン素材としているが、外側メッシュ層2をナイロン素材から成るメッシュ生地、内側メッシュ層1をポリエステル素材から成るメッシュ生地で構成しても良い。
【0037】
内側と外側とで異種素材とすること、特にナイロン素材とポリエステル素材とすることで、帯電し易くなり、それだけ菌・ウイルス等の捕集性能が向上する(特殊な作業を必要とせず自然に帯電する。)。また、メッシュ層として耐久性に優れた前記の素材を採用することで、洗濯耐久性を高めることができ、繰り返しの使用にも耐え得る構成とすることができる。なお、前記素材に限らず種々の素材(化学繊維クロス)を採用できる。
【0038】
内側メッシュ層1としては、メッシュ孔(貫通孔)の面積が1個当たり0.040~0.060mm2程度のものを採用でき、外側メッシュ層2としては、メッシュ孔の面積が1個当たり0.140~0.160mm2程度のものを採用できる。
【0039】
本実施例においては、内側メッシュ層1のメッシュ孔の面積が1個当たり0.056mm2程度のものを採用し、外側メッシュ層2のメッシュ孔の面積が1個当たり0.149mm2程度のものを採用している。なお、当該メッシュ孔の1個当たりの面積は、各メッシュ生地の10か所において電子顕微鏡で撮影したメッシュ構造画像から、各画像における最大のメッシュ孔の面積を求め、この面積を平均して求めた(図5参照)。
【0040】
そして、内側メッシュ層1と外側メッシュ層2とを積層した状態で、前記捕集効率及び通気抵抗を達成するように構成されている。好ましくは、帯電時の捕集効率は89%以上、さらに好ましくは93%以上とする。また、好ましくは、通気抵抗は5Pa以下、さらに好ましくは0Paとする。
【0041】
なお、本実施例では外側メッシュ層2の方が内側メッシュ層1よりメッシュ構造が粗い構成としているが、逆の構成としても良い。内側メッシュ層1と外側メッシュ層2との前記孔の面積(粗密)を異ならせることで、呼吸時の通気が乱れ乱気流が生じ易くなる。
【0042】
また、本実施例のナイロンメッシュ生地とポリエステルメッシュ生地とでは編み方(織り方)を変えることで、隙間形状(メッシュ孔形状)が異なる構成としている(ナイロンメッシュ生地は四角形状、ポリエステルメッシュ生地は三角形状。)。これによっても乱気流が生じ易くなる。本実施例の内側メッシュ層1(ナイロンメッシュ生地)及び外側メッシュ層2(ポリエステルメッシュ生地)はトリコット編みである。
【0043】
また、本体部は、顔面に装着した際、上側中央部が鼻背部分に当接し、上側左端部及び上側右端部が頬骨部分に夫々当接し、下側中央部が顎部分に当接して、鼻孔から顎にかけて本体部が前方にアーチ状に膨出して口元近傍部と本体部(内側メッシュ部)との間に適宜な空間(バッファスペース)が形成される形状である。前記適宜な空間は、15cm3以上、好ましくは20cm3以上の容積となるように設定すると良い。
【0044】
前記適宜な空間が鼻孔及び口元の周囲に形成されることで、吸気及び呼気時に本体部の広い領域に可及的に均一に圧力がかかり、本体部(フィルター)全体で捕集効率を高めることができる。また、マスクと顔面との間に乱気流を生じさせ易くして、ウイルス等のブラウン運動を促進することができ、それだけ捕集性能が向上する。前記適宜な空間を広めに形成した場合でも、本体部の通気抵抗が極めて小さいため、本体部周囲からの漏出は極めて少ない。
【0045】
前記適宜な空間を形成するため、本実施例では以下のようにマスク形状を設計している。
【0046】
図4に図示したように、前記上側中央部に含まれる、外側メッシュ層2の右半体の上側右端の点Aは、鼻骨下に位置するように設定する。また、前記上側左端部に含まれる、外側メッシュ層2の右半体の上側左端の点Bは、頬骨下に位置するように設定する。また、前記下側中央部に含まれる、下側中央端の点Cは、顎先に位置するように設定する。鼻骨下位置と頬骨下位置は、着用時に口や顎の動きに連動し難く、顎先位置は口や顎の動きに対して影響が最小限であるからである。
【0047】
なお、左半体についても同様である。即ち、各半体の上側の中央側端点は鼻骨下に位置するように設定され、上側の外側端点は頬骨下に位置するように設定され、下側の中央側端点は顎先に位置するように設定されている。また、図中、符号6はバッファスペースである。
【0048】
前記3点を結ぶベース角度を設定し、各サイズに落とし込む。例えば、角BACの大きさは64°±4°、角ABCの大きさは74°±4°、角BCAの大きさは42°±4°とする。
【0049】
また、上縁ABは、視界に影響しないように下に凹湾曲する曲線とする。また、右縁ACは、バッファスペース確保のため右に凸湾曲する曲線とする。また、左縁BCは、口の動きを妨げないように左に凸湾曲する曲線とする。左縁BCの両端直線部の仮想延長線同士が交わる角(アーチ角α)は142°±4°とする。このようにすることで、横方向にも広いバッファスペースを作ることができる。
【0050】
以上のようにして、前記本体部を、口元を含む顔面に装着した際、前記本体部の外周部が前記顔面に当接し、且つ、前記内側メッシュ層1の少なくとも口唇と対向する中心部が顔面から適宜な空間を介して配される形状とすることができる。
【0051】
本実施例は上述のように構成したから、耳掛け部3を夫々耳に係止すると共に本体部で口元を覆うように顔面に装着すると、本体部は口唇と内側メッシュ層1との間に所定の空間を介して配され、当該空間により、本体部(フィルター)によるろ過が局所的でなく本体部の広い範囲で行われることになり、効率的にウイルス・菌等を捕集できる。
【0052】
また、内側メッシュ層1と外側メッシュ層2とでメッシュ構造が異なり、且つ、前記空間が存在することで、呼吸時に乱気流が生じ易くなり、ウイルス・菌等のブラウン運動が促進されてメッシュ層で捕捉され易くなり、この点からも捕集が効率的に行われる。
【0053】
さらに、本体部が所定の捕集効率と通気抵抗を有する素材で構成されているため、良好な捕集性能を発揮するのは勿論、呼吸し易く、また、ムレ感も少なく、よって、長時間快適に着用できることになる。
【0054】
よって、本実施例は、捕集性能と呼吸のし易さとを両立させたこれまでにないマスクとなる。
【0055】
[実験例]
上述の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0056】
ASTM F 2299規格にならい、クリーンな環境に維持された試験チャンバー中に、試験粒子を連続安定供給し一定流量で吸引しながら、フィルター材の前後(上流側、下流側)の粒子数を計測し、捕集効率(%)及び通気抵抗値(Pa)を測定した。
【0057】
試験粒子の粒径は0.1μmとした。気流(流量)は0.095m/秒とした。
【0058】
試料であるフィルター材は、以下の3種のメッシュから選択した2種を積層したものである。
【0059】
ポリエステルハードメッシュ…糸使い:(F)ポリエステル20デニール×(M)ポリエステル20デニール×(B)ポリエステル150デニール、編機ゲージ:28G、編み方:トリコット、厚さ:0.39~0.41mm、空隙率:アローワンスを含めた設計値19~23%(実測値20.24%)。なお、(F)は生地表面部分、(M)は生地中層部分、(B)は生地裏面部分を表す。
【0060】
ポリエステルソフトメッシュ…糸使い:ポリエステル44テックス、編機ゲージ:28G、編み方:トリコット、厚さ:0.22~0.24mm、空隙率:アローワンスを含めた設計値19~23%(実測値20.75%)。
【0061】
ナイロンソフトメッシュ…糸使い:ナイロン33テックス、編機ゲージ:32G、編み方:トリコット、厚さ:0.28~0.30mm、空隙率:アローワンスを含めた設計値14~18%(実測値15.48%)。
【0062】
なお、厚さはデジタル厚さ測定器を用いて測定した。また、空隙率の実測値は、デジタルマイクロスコープで任意の対象視野(5276.84μm(H)×3956.55μm(V))3か所で撮影した画像から、夫々画像処理により空隙部分の面積割合を算出し、その平均値から求めた。
【0063】
具体的には、
試料1:ポリエステルハードメッシュ×ナイロンソフトメッシュ(洗濯なし)
試料2:ポリエステルハードメッシュ×ポリエステルソフトメッシュ(洗濯なし)
試料3:ポリエステルハードメッシュ×ナイロンソフトメッシュ(洗濯後)
試料4:ポリエステルハードメッシュ×ポリエステルソフトメッシュ(洗濯後)
とした。
【0064】
そして、各試料で、「意図的に静電気を発生させた状態(帯電状態)」と除電した状態とで実験を行った。また、「表裏(積層順)」も変えて実験を行った。また、除電も帯電もしていない「オリジナル」も標準値として計測した。
【0065】
なお、洗濯は、家庭用洗濯機標準モードの水洗い1回にてつり干し乾燥、洗剤は、無しで行った。静電気の発生(帯電)は、塩化ビニール製のパイプと試験片とを擦り、100kVになるまで帯電させることで行った。帯電は100KVに統一した。また、除電は、イオナイザーにより行った。
【0066】
試験回数は、5回測定であり、5回計測の平均値を「平均値 AV」で記載した。また、参考数値として、最大値、最小値を除外した平均値を「平均値 TR」として記載した。
【0067】
実験結果を図6に示す。
【0068】
図6から、全ての試料で通気抵抗が0paであり、0.1μmの粒子に対して帯電時に70%以上の捕集効率を有することが確認できた。特に、試料3(洗濯後のポリエステルハード×ナイロンソフト。本実施例の外側メッシュ層と内側メッシュ層との組み合わせ)の帯電後の捕集効率が高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
1 内側メッシュ層
2 外側メッシュ層
3 耳掛け部
4 インナーマスク
5 収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6