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特開2023-34980制御システム、制御方法および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034980
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】制御システム、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230306BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141532
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】竹原 和生
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】グローバル座標系を参照せずに、平面の仮想壁によって作業機械の動作を制限する。
【解決手段】生成部は、旋回体の代表点を原点とする車体座標系上に平面で規定される仮想壁を生成する。回転変換部は、旋回体の旋回に伴って、仮想壁を車体座標系の原点回りに回転変換する。位置特定部は、車体座標系における作業機械の外殻の位置を特定する。介入制御部は、外殻が仮想壁と接触しないように、作業機械を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回可能な旋回体を備える作業機械を制御する制御システムであって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記旋回体の代表点を原点とする車体座標系上に平面で規定される仮想壁を生成し、
前記旋回体の旋回に伴って、前記仮想壁を前記車体座標系の原点回りに回転変換し、
前記車体座標系における前記作業機械の外殻の位置を特定し、
前記外殻が前記仮想壁と接触しないように、前記作業機械を制御する、
制御システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記旋回体の姿勢を計測する傾斜計測器から計測値を取得し、
前記計測値に基づいて前記旋回体の旋回によって生じた前記姿勢の変化量を計算し、
前記姿勢の変化量に基づいて、前記仮想壁を回転変換する
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記旋回体の姿勢を計測する傾斜計測器から計測値を取得し、
前記計測値に基づいて、鉛直方向または水平方向に伸びる前記仮想壁を生成する
請求項1または請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記作業機械は、前記旋回体に設けられた作業機を備え、
前記プロセッサは、
前記作業機の先端の位置を特定し、
仮想壁の生成指示を受け付けたときに、前記作業機の先端の位置に前記仮想壁を生成する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記作業機械の外殻上の複数の点の位置を特定し、
前記複数の点の位置に基づいて、前記複数の点の少なくとも1つが前記旋回体を旋回させたときに前記仮想壁と接触する最小旋回角を求め、
前記最小旋回角に基づいて前記旋回体の旋回を制御する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
旋回可能な旋回体を備える作業機械の制御方法であって、
前記旋回体の代表点を原点とする車体座標系上に平面で規定される仮想壁を生成するステップと、
前記旋回体の旋回に伴って、前記仮想壁を前記車体座標系の原点回りに回転変換するステップと、
前記車体座標系における前記作業機械の外殻の位置を特定するステップと、
前記外殻が前記仮想壁と接触しないように、前記作業機械を制御するステップと
を備える制御方法。
【請求項7】
旋回可能な旋回体を備える作業機械を制御するコンピュータに、
前記旋回体の代表点を原点とする車体座標系上に平面で規定される仮想壁を生成するステップと、
前記旋回体の旋回に伴って、前記仮想壁を前記車体座標系の原点回りに回転変換するステップと、
前記車体座標系における前記作業機械の外殻の位置を特定するステップと、
前記外殻が前記仮想壁と接触しないように、前記作業機械を制御するステップと
を実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の動作範囲を制限するために、空間に仮想壁を設定する技術が知られている。作業機械の制御装置は、仮想壁と作業機械との距離に応じて作業機械のアクチュエータの動作量を制限することで、作業機械が仮想壁を超えないよう制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/189030号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業現場に仮想壁を設定する場合、仮想壁の位置はグローバル座標系で表される。そのため、仮想壁に基づいて作業機械を制御したい場合、作業機械はグローバル座標系の位置を認識するためにGNSSなどの構成を有する必要がある。しかしながら、作業機械は必ずしもGNSSなどによる位置情報を取得する構成を備えない。
【0005】
一方で、旋回体を基準とする車体座標系に仮想壁を設定する場合、車体座標系に設定された仮想壁は旋回体の旋回に追従するため、作業機械を中心とする環状に構成される。そのため、車体座標系に、建築物などに沿った平面の仮想壁を設定することは困難である。
【0006】
本開示の目的は、グローバル座標系を参照せずに、平面の仮想壁によって作業機械の動作を制限することができる制御装置、制御方法および制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、制御システムは、旋回可能な旋回体を備える作業機械を制御する。制御システムは、プロセッサを備える。プロセッサは、旋回体の代表点を原点とする車体座標系上に平面で規定される仮想壁を生成する。プロセッサは、旋回体の旋回に伴って、仮想壁を車体座標系の原点回りに回転変換する。プロセッサは、車体座標系における作業機械の外殻の位置を特定する。プロセッサは、外殻が仮想壁と接触しないように、作業機械を制御する。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、旋回可能な旋回体を備える作業機械の制御方法であって、生成ステップと、変換ステップと、特定ステップと、制御ステップとを備える。生成ステップは、旋回体の代表点を原点とする車体座標系上に平面で規定される仮想壁を生成する。変換ステップは、旋回体の旋回に伴って、仮想壁を車体座標系の原点回りに回転変換する。特定ステップは、車体座標系における作業機械の外殻の位置を特定する。制御ステップは、外殻が仮想壁と接触しないように、作業機械を制御する。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、旋回可能な旋回体を備える作業機械を制御するコンピュータに実行される制御プログラムであって、生成ステップと、変換ステップと、特定ステップと、制御ステップとを備える。生成ステップは、旋回体の代表点を原点とする車体座標系上に平面で規定される仮想壁を生成する。変換ステップは、旋回体の旋回に伴って、仮想壁を車体座標系の原点回りに回転変換する。特定ステップは、車体座標系における作業機械の外殻の位置を特定する。制御ステップは、外殻が仮想壁と接触しないように、作業機械を制御する。
【発明の効果】
【0010】
上記態様の少なくとも1つの態様によれば、グローバル座標系を参照せずに、平面の仮想壁によって作業機械の動作を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る作業機械の構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る作業機械の駆動系を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第1の実施形態における旋回体の旋回に伴う仮想壁の再設定の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る前壁の設定方法を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係る側壁の設定方法を示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態に係る上壁の設定方法を示すフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係る下壁の設定方法を示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態において設定された仮想壁の更新および介入制御を示すフローチャートである。
図10】第1の実施形態において設定された仮想壁の更新および介入制御を示すフローチャートである。
図11】他の実施形態に係る作業システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈第1の実施形態〉
《作業機械の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る作業機械100の構成を示す概略図である。第1の実施形態に係る作業機械100は、例えば油圧ショベルである。作業機械100は、走行体120、旋回体140、作業機160、運転室180、制御装置200を備える。第1の実施形態に係る作業機械100は、オペレータによる操作によって平面状の仮想壁を生成し、作業機械100が仮想壁に接触しないように制御される。これにより、オペレータは、進入禁止区域に侵入しないように作業機械100を操作することができる。
【0013】
走行体120は、作業機械100を走行可能に支持する。走行体120は、例えば左右1対の無限軌道である。
旋回体140は、走行体120に旋回中心回りに旋回可能に支持される。
作業機160は、旋回体140に動作可能に支持される。作業機160は、油圧により駆動する。作業機160は、ブーム161、アーム162、および作業器具であるバケット163を備える。ブーム161の基端部は、旋回体140に回動可能に取り付けられる。アーム162の基端部は、ブーム161の先端部に回動可能に取り付けられる。バケット163は、アーム162の先端部に回動可能に取り付けられる。ここで、旋回体140のうち作業機160が取り付けられる部分を前部という。また、旋回体140について、前部を基準に、反対側の部分を後部、左側の部分を左部、右側の部分を右部という。
【0014】
運転室180は、旋回体140の前部に設けられる。運転室180内には、オペレータが作業機械100を操作するための操作装置141、および制御装置200のマンマシンインタフェースであるモニタ装置142が設けられる。モニタ装置142は、例えばタッチパネルを備えるコンピュータによって実現される。
【0015】
制御装置200は、オペレータによる操作装置の操作に基づいて、走行体120、旋回体140、および作業機160を制御する。制御装置200は、例えば運転室180の内部に設けられる。
【0016】
《作業機械100の駆動系》
図2は、第1の実施形態に係る作業機械100の駆動系を示す図である。
作業機械100は、作業機械100を駆動するための複数のアクチュエータを備える。具体的には、作業機械100は、エンジン111、油圧ポンプ112、コントロールバルブ113、一対の走行モータ114、旋回モータ115、ブームシリンダ116、アームシリンダ117、バケットシリンダ118を備える。
【0017】
エンジン111は、油圧ポンプ112を駆動する原動機である。
油圧ポンプ112は、エンジン111により駆動され、コントロールバルブ113を介して走行モータ114、旋回モータ115、ブームシリンダ116、アームシリンダ117およびバケットシリンダ118に作動油を供給する。
コントロールバルブ113は、油圧ポンプ112から走行モータ114、旋回モータ115、ブームシリンダ116、アームシリンダ117およびバケットシリンダ118へ供給される作動油の流量を制御する。
走行モータ114は、油圧ポンプ112から供給される作動油によって駆動され、走行体120を駆動する。
旋回モータ115は、油圧ポンプ112から供給される作動油によって駆動され、走行体120に対して旋回体140を旋回させる。
【0018】
ブームシリンダ116は、ブーム161を駆動するための油圧シリンダである。ブームシリンダ116の基端部は、旋回体140に取り付けられる。ブームシリンダ116の先端部は、ブーム161に取り付けられる。
アームシリンダ117は、アーム162を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ117の基端部は、ブーム161に取り付けられる。アームシリンダ117の先端部は、アーム162に取り付けられる。
バケットシリンダ118は、バケット163を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ118の基端部は、アーム162に取り付けられる。バケットシリンダ118の先端部は、バケット163に取り付けられる。
【0019】
《作業機械100の計測系》
作業機械100は、作業機械100の姿勢および位置を計測するための複数のセンサを備える。具体的には、作業機械100は、傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105、ペイロードメータ106を備える。
【0020】
傾斜計測器101は、旋回体140の姿勢を計測する。傾斜計測器101は、水平面に対する旋回体140の傾き(例えば、ロール角、ピッチ角およびヨー角)を計測する。傾斜計測器101の例としては、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)が挙げられる。この場合、傾斜計測器101は、旋回体140の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて水平面に対する旋回体140の傾きを算出する。傾斜計測器101は、例えば運転室180の下方に設置される。傾斜計測器101は、計測値である旋回体140の姿勢データを制御装置200へ出力する。
【0021】
旋回角センサ102は、走行体120に対する旋回体140の旋回角度を計測する。旋回角センサ102の計測値は、例えば、走行体120と旋回体140の方向が一致しているときにゼロを示す。旋回角センサ102は、例えば旋回体140の旋回中心に設置される。旋回角センサ102は、計測値である旋回角度データを制御装置200へ出力する。
【0022】
ブーム角センサ103は、旋回体140に対するブーム161の回転角であるブーム角を計測する。ブーム角センサ103は、ブーム161に取り付けられたIMUであってよい。この場合、ブーム角センサ103は、ブーム161の水平面に対する傾きと傾斜計測器101が計測した旋回体の傾きとに基づいて、ブーム角を計測する。ブーム角センサ103の計測値は、例えば、ブーム161の基端と先端とを通る直線の方向が旋回体140の前後方向と一致するときにゼロを示す。なお、他の実施形態係るブーム角センサ103は、ブームシリンダ116に取り付けられたストロークセンサであってもよい。また、他の実施形態に係るブーム角センサ103は、旋回体140とブーム161とを接続するピンに設けられた回転センサであってもよい。ブーム角センサ103は、計測値であるブーム角データを制御装置200へ出力する。
【0023】
アーム角センサ104は、ブーム161に対するアーム162の回転角であるアーム角を計測する。アーム角センサ104は、アーム162に取り付けられたIMUであってよい。この場合、アーム角センサ104は、アーム162の水平面に対する傾きとブーム角センサ103が計測したブーム角とに基づいて、アーム角を計測する。アーム角センサ104の計測値は、例えば、アーム162の基端と先端とを通る直線の方向がブーム161の基端と先端とを通る直線の方向と一致するときにゼロを示す。なお、他の実施形態に係るアーム角センサ104は、アームシリンダ117にストロークセンサを取付けて角度算出を行ってもよい。また、他の実施形態に係るアーム角センサ104は、ブーム161とアーム162とを接続するピンに設けられた回転センサであってもよい。アーム角センサ104は、計測値であるアーム角データを制御装置200へ出力する。
【0024】
バケット角センサ105は、アーム162に対するバケット163の回転角であるバケット角を計測する。バケット角センサ105は、バケット163を駆動させるためのバケットシリンダ118に設けられたストロークセンサであってよい。この場合、バケット角センサ105は、バケットシリンダのストローク量に基づいてバケット角を計測する。バケット角センサ105の計測値は、例えば、バケット163の基端と刃先とを通る直線の方向がアーム162の基端と先端とを通る直線の方向と一致するときにゼロを示す。なお、他の実施形態に係るバケット角センサ105は、アーム162とバケット163とを接続するピンに設けられた回転センサであってもよい。また、他の実施形態に係るバケット角センサ105は、バケット163に取付けられたIMUであってもよい。バケット角センサ105は、計測値であるバケット角データを制御装置200へ出力する。
【0025】
ペイロードメータ106は、バケット163に保持された積荷の重量を計測する。ペイロードメータ106は、例えばブーム161のシリンダのボトム圧を計測し、積荷の重量に換算する。また例えば、ペイロードメータ106は、ロードセルであってもよい。ペイロードメータ106は、計測値である積荷の重量データを制御装置200へ出力する。
【0026】
《制御装置200の構成》
図3は、第1の実施形態に係る制御装置200の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置200は、プロセッサ210、メインメモリ230、ストレージ250、インタフェース270を備えるコンピュータである。制御装置200は、制御システムの一例である。制御装置200は、傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105、およびペイロードメータ106から計測値を受信する。
【0027】
ストレージ250は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ250の例としては、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ250は、制御装置200のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース270または通信回線を介して制御装置200に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ250は、作業機械100を制御するための制御プログラムを記憶する。
【0028】
制御プログラムは、制御装置200に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、制御プログラムは、ストレージ250に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、制御装置200は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0029】
ストレージ250には、旋回体140、ブーム161、アーム162及びバケット163の寸法及び重心位置を表すジオメトリデータが記録される。ジオメトリデータは、所定の座標系における物体の位置を表すデータである。
【0030】
《ソフトウェア構成》
プロセッサ210は、制御プログラムを実行することで、操作量取得部211、入力部212、表示制御部213、計測値取得部214、位置特定部215、生成部216、回転変換部217、介入判定部218、介入制御部219、制御信号出力部220を備える。
【0031】
操作量取得部211は、操作装置141から各アクチュエータの操作量を示す操作信号を取得する。
入力部212は、モニタ装置142からオペレータによる操作入力を受け付ける。
表示制御部213は、モニタ装置142に表示させる画面データをモニタ装置142へ出力する。
計測値取得部214は、傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105およびペイロードメータ106から計測値を取得する。
【0032】
位置特定部215は、車体座標系における作業機械100の外殻の位置を特定する。作業機械100の外殻とは、作業機械100の外形形状である。作業機械100の外殻は、例えば、旋回体140および作業機160の外形を形成する形状よって画定される。位置特定部215は、具体的には、計測値取得部214が取得した各種計測値とストレージ250に記録されたジオメトリデータとに基づいて、車体座標系における作業機械100の外殻の複数の点の位置を特定する。位置特定部215が特定する外殻の複数の点は、バケット163の刃先、アーム162のバケット163側の端(アームトップ)、アーム162のブーム161側の端(アームボトム)、旋回体140のカウンターウェイトの後方の点を含む。車体座標系とは、旋回体140の代表点(例えば、旋回中心を通る点)を原点とする直交座標系である。位置特定部215の計算については後述する。なお、位置特定部215が特定する点は、これに限られない。
【0033】
生成部216は、入力部212がオペレータから仮想壁の生成指示を受け付けた場合に、位置特定部215が特定したバケット163の刃先の位置に基づいて仮想壁のパラメータを計算する。生成部216は、生成した車体座標系における仮想壁のパラメータをメインメモリ230に記録する。
【0034】
回転変換部217は、旋回体140の旋回に伴ってメインメモリ230に記憶された仮想壁のパラメータを更新する。具体的には、回転変換部217は、傾斜計測器101が計測したピッチ角、ロール角、ヨー角の変化分だけ仮想壁のパラメータを車体座標系の原点を中心に回転変換する。図4は、第1の実施形態における旋回体の旋回に伴う仮想壁の再設定の一例を示す図である。例えば、図4に示すように、仮想壁の設定後に旋回体140が旋回した場合、回転変換部217は、計測値取得部214が取得した傾斜計測器101の計測値を参照して旋回体140の旋回によって生じたロール角、ピッチ角、ヨー角の変化量を計算し、仮想壁のパラメータを車体座標系の原点を中心に回転変換する。これにより、回転変換部217は、旋回体140の旋回による仮想壁の回転をキャンセルすることができる。
【0035】
介入判定部218は、位置特定部215が特定した外殻の複数の点と仮想壁との位置関係に基づいて、旋回体140の旋回速度または作業機160の速度を制限するか否かを判定する。以下、制御装置200が旋回体140または作業機160の速度を制限することを介入制御ともいう。具体的には、介入判定部218は、仮想壁と外殻の複数の点の少なくとも1つが接触するまでの最小旋回角を求め、当該最小旋回角が所定角度以下である場合に、旋回体140について介入制御をすると判定する。また、介入判定部218は、仮想壁と作業機160との最小距離を求め、当該最小距離が所定距離以下である場合に、作業機160について介入制御をすると判定する。
【0036】
介入制御部219は、介入判定部218によって介入制御を行うと判定された場合に、操作量取得部211が取得した操作量のうち介入対象の操作量を制御する。
制御信号出力部220は、操作量取得部211が取得した操作量、または介入判定部218によって制御された操作量をコントロールバルブ113に出力する。
【0037】
《位置特定部215の計算》
ここで、位置特定部215による作業機械100の外殻の点の位置の特定方法を説明する。位置特定部215は、計測値取得部214が取得した各種計測値とストレージ250に記録されたジオメトリデータとに基づいて外殻の点の位置を特定する。ストレージ250には、旋回体140、ブーム161、アーム162及びバケット163の寸法及び重心位置を表すジオメトリデータが記録される。
【0038】
旋回体140のジオメトリデータは、ローカル座標系である車体座標系における旋回体140のブーム161を支持するピンの位置(xbm、ybm、zbm)、及び旋回体140の外殻の点の位置(xsp、ysp、zsp)を示す。旋回体140の外殻の点としては、例えばカウンターウェイトの突出点のように、旋回によって壁面と接触する可能性が高い点が挙げられる。車体座標系は、旋回体140の旋回中心を基準として前後方向に伸びるXsb軸、左右方向に伸びるYsb軸、上下方向に伸びるZsb軸から構成される座標系である。なお、旋回体140の上下方向は、必ずしも鉛直方向と一致しない。
【0039】
ブーム161のジオメトリデータは、ローカル座標系であるブーム座標系におけるブームトップの位置(xam、yam、zam)を示す。ブーム座標系は、ブーム161と旋回体140とを接続するピンの位置を基準として、長手方向に伸びるXbm軸、ピンが伸びる方向に伸びるYbm軸、Xbm軸とYbm軸に直交するZbm軸から構成される座標系である。ブームトップの位置は、ブーム161とアーム162を接続するピンの位置である。ブームトップは、作業機械100の外殻の点の一つである。
【0040】
アーム162のジオメトリデータは、ローカル座標系であるアーム座標系におけるアームトップの位置(xbk、ybk、zbk)を示す。アーム座標系は、アーム162とブーム161とを接続するピンの位置を基準として、長手方向に伸びるXam軸、ピンが伸びる方向に伸びるYam軸、Xam軸とYam軸に直交するZam軸から構成される座標系である。アームトップの位置は、アーム162とバケット163を接続するピンの位置である。アームトップは、作業機械100の外殻の点の一つである。
【0041】
バケット163のジオメトリデータは、ローカル座標系であるバケット座標系におけるバケット163の刃先の位置(xed、yed、zed)を示す。刃先は、作業機械100の外殻の点の一つである。バケット座標系は、バケット163とアーム162とを接続するピンの位置を基準として、刃先の方向に伸びるXbk軸、ピンが伸びる方向に伸びるYbk軸、Xbk軸とYbk軸に直交するZbk軸から構成される座標系である。
【0042】
位置特定部215は、計測値取得部214が取得したブーム角θbmの計測値と、旋回体140のジオメトリデータとに基づいて、下記式(1)により、ブーム座標系から車体座標系へ変換するためのブーム-車体変換行列Tbm sbを生成する。ブーム-車体変換行列Tbm sbは、Ybm軸回りにブーム角θbmだけ回転させ、かつ車体座標系の原点とブーム座標系の原点の偏差(xbm、ybm、zbm)だけ平行移動させる行列である。
また、位置特定部215は、ブーム161のジオメトリデータが示すブーム座標系におけるブームトップの位置と、ブーム-車体変換行列Tbm sbとの積を求めることで、車体座標系におけるブームトップの位置を求める。
【0043】
【数1】
【0044】
位置特定部215は、計測値取得部214が取得したアーム角θamの計測値と、ブーム161のジオメトリデータとに基づいて、下記式(2)により、アーム座標系からブーム座標系へ変換するためのアーム-ブーム変換行列Tam bmを生成する。アーム-ブーム変換行列Tam bmは、Yam軸回りにアーム角θamだけ回転させ、かつブーム座標系の原点とアーム座標系の原点の偏差(xam、yam、zam)だけ平行移動させる行列である。また、位置特定部215は、ブーム-車体変換行列Tbm sbとアーム-ブーム変換行列Tam bmの積を求めることで、アーム座標系から車体座標系へ変換するためのアーム-車体変換行列Tam sbを生成する。また、位置特定部215は、アーム162のジオメトリデータが示すアーム座標系におけるアームトップの位置と、アーム-車体変換行列Tam sbとの積を求めることで、車体座標系におけるアームトップの位置を求める。
【0045】
【数2】
【0046】
位置特定部215は、計測値取得部214が取得したバケット角θbkの計測値と、アーム162のジオメトリデータとに基づいて、下記式(3)により、バケット座標系からアーム座標系へ変換するためのバケット-アーム変換行列Tbk amを生成する。バケット-アーム変換行列Tbk amは、Ybk軸回りにバケット角θbkだけ回転させ、かつアーム座標系の原点とバケット座標系の原点の偏差(xbk、ybk、zbk)だけ平行移動させる行列である。また、位置特定部215は、アーム-車体変換行列Tam sbとバケット-アーム変換行列Tbk amの積を求めることで、バケット座標系から車体座標系へ変換するためのバケット-車体変換行列Tbk sbを生成する。
【0047】
【数3】
【0048】
位置特定部215は、バケット163のジオメトリデータが示すバケット座標系における刃先の位置と、バケット-車体変換行列Tbk sbとの積を求めることで、車体座標系におけるバケット163の刃先の位置を求める。
【0049】
《作業機械100の制御方法》
以下、第1の実施形態に係る作業機械100の制御方法について説明する。
まず作業機械100のオペレータは、モニタ装置142を操作し、仮想壁の設定を行う。
【0050】
《仮想壁の設定》
入力部212がモニタ装置142から仮想壁の設定指示を受け付けると、表示制御部213は、モニタ装置142に設定すべき仮想壁の種類の選択画面を表示させる。制御装置200が設定可能な仮想壁は、前壁、左壁、右壁、上壁および下壁の5種類である。前壁、左壁、右壁は鉛直方向に伸びる壁面である。上壁、下壁は水平方向に伸びる壁面である。
【0051】
(前壁の設定)
図5は、第1の実施形態に係る前壁の設定方法を示すフローチャートである。
入力部212がモニタ装置142から前壁の設定指示を受け付けると、表示制御部213は、設定ボタンを含むガイダンス画面をモニタ装置142に表示させる(ステップS101)。ガイダンス画面には、前壁を設定したい点にバケット163の刃先を移動させて設定ボタンを操作する旨が表示される。オペレータは、作業機械100を操作し、バケット163の刃先を所望の位置に移動させた後に設定ボタンを操作する。入力部212はモニタ装置142から設定ボタンの操作を受け付ける(ステップS102)。
【0052】
計測値取得部214は、設定ボタンが操作された時点における傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105およびペイロードメータ106の計測値を取得する(ステップS103)。位置特定部215は、取得した計測値に基づいて車体座標系におけるバケット163の刃先の位置を特定する(ステップS104)。
【0053】
生成部216は、ステップS103で傾斜計測器101から取得したロール角およびピッチ角と、ステップS104で求めた刃先の位置とに基づいて、鉛直方向に伸びる前壁のパラメータを算出する。仮想壁は、仮想壁の法線方向を示す法線ベクトルと、仮想壁が通る点の位置を示す位置ベクトルとによって表される。生成部216は、Xsb軸の値が-1、Ysb軸の値が0、Zsb軸の値が0のベクトルを、ロール角およびピッチ角だけ回転させることで、法線ベクトルを求める(ステップS105)。また生成部216は、ステップS104で求めた刃先の位置を示すベクトルを位置ベクトルとする(ステップS106)。生成部216は、生成した前壁のパラメータを、メインメモリ230に記録する(ステップS107)。なお、メインメモリ230に既に前壁のパラメータが記録されている場合、古いパラメータを新たなパラメータで上書きする。
【0054】
(右壁、左壁の設定)
図6は、第1の実施形態に係る側壁の設定方法を示すフローチャートである。
入力部212がモニタ装置142から右壁または左壁の設定指示を受け付けると、表示制御部213は、設定ボタンを含む第1ガイダンス画面をモニタ装置142に表示させる(ステップS121)。ガイダンス画面には、右壁または左壁を設定したい点にバケット163の刃先を移動させて設定ボタンを操作する旨が表示される。オペレータは、作業機械100を操作し、バケット163の刃先を所望の位置に移動させた後に設定ボタンを操作する。入力部212はモニタ装置142から設定ボタンの操作を受け付ける(ステップS122)。
【0055】
計測値取得部214は、設定ボタンが操作された時点における傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105およびペイロードメータ106の計測値を取得する(ステップS123)。位置特定部215は、取得した計測値に基づいて車体座標系におけるバケット163の刃先の位置(1回目の刃先の位置)を特定する(ステップS124)。位置特定部215は、特定した刃先の位置と、ステップS123で取得したロール角、ピッチ角およびヨー角とを、メインメモリ230に一時的に記録する。
【0056】
次に、表示制御部213は、設定ボタンを含む第2ガイダンス画面をモニタ装置142に表示させる(ステップS125)。ガイダンス画面には、右壁または左壁を設定したい点にバケット163の刃先を移動させて設定ボタンを操作する旨が表示される。オペレータは、作業機械100を操作し、バケット163の刃先をステップS122で設定した位置とは異なる位置に移動させた後に設定ボタンを操作する。入力部212はモニタ装置142から設定ボタンの操作を受け付ける(ステップS126)。
【0057】
計測値取得部214は、2回目の設定ボタンが操作された時点における傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105およびペイロードメータ106の計測値を取得する(ステップS127)。位置特定部215は、取得した計測値に基づいて車体座標系におけるバケット163の刃先の位置(2回目の刃先の位置)を特定する(ステップS128)。
【0058】
1回目の刃先の位置を計測したときの作業機械100の姿勢と2回目の刃先の位置を計測したときの作業機械100の姿勢とは異なっている。そのため、回転変換部217は、メインメモリ230に記録された1回目の刃先の位置を、1回目の刃先の位置、ロール角、ピッチ角およびヨー角と、2回目の刃先の位置を計測したときのロール角、ピッチ角およびヨー角とに基づいて回転させる(ステップS129)。これにより、回転変換部217は、1回目の刃先の位置を現時点の車体座標系の位置に変換することができる。
【0059】
生成部216は、ステップS129で変換した1回目の刃先を示すベクトルと、ステップS128で求めた2回目の刃先の位置を示すベクトルの差を壁面ベクトルとして算出する(ステップS130)。壁面ベクトルは、仮想壁の壁面に沿ったベクトルであって、1回目の刃先の位置と2回目の刃先の位置とを通るベクトルである。次に、生成部216は、2回目の刃先の位置を計測したときのロール角およびピッチ角に基づいて鉛直方向を向く鉛直ベクトルを算出する(ステップS131)。生成部216は、ステップS130で算出したベクトルと鉛直ベクトルの外積を求めることで、法線ベクトルを算出する(ステップS132)。また生成部216は、ステップS128で取得した2回目の刃先の位置に基づいて位置ベクトルを得る(ステップS133)。生成部216は、生成した左壁または右壁のパラメータを、メインメモリ230に記録する(ステップS134)。なお、メインメモリ230に既に左壁または右壁のパラメータが記録されている場合、古いパラメータを新たなパラメータで上書きする。
【0060】
(上壁の設定)
図7は、第1の実施形態に係る上壁の設定方法を示すフローチャートである。
入力部212がモニタ装置142から上壁の設定指示を受け付けると、表示制御部213は、設定ボタンを含むガイダンス画面をモニタ装置142に表示させる(ステップS141)。ガイダンス画面には、上壁を設定したい点にバケット163の刃先を移動させて設定ボタンを操作する旨が表示される。オペレータは、作業機械100を操作し、バケット163の刃先を所望の位置に移動させた後に設定ボタンを操作する。入力部212はモニタ装置142から設定ボタンの操作を受け付ける(ステップS142)。
【0061】
計測値取得部214は、設定ボタンが操作された時点における傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105およびペイロードメータ106の計測値を取得する(ステップS143)。位置特定部215は、取得した計測値に基づいて車体座標系におけるバケット163の刃先の位置を特定する(ステップS144)。
【0062】
生成部216は、ステップS143で傾斜計測器101から取得したロール角およびピッチ角と、ステップS144で求めた刃先の位置とに基づいて、水平方向に伸びる上壁のパラメータを算出する。生成部216は、Xsb軸の値が0、Ysb軸の値が0、Zsb軸の値が-1のベクトルを、ロール角およびピッチ角だけ回転させることで、法線ベクトルを求める(ステップS145)。また生成部216は、ステップS144で求めた刃先の位置に基づいて位置ベクトルを得る(ステップS146)。生成部216は、生成した上壁のパラメータを、メインメモリ230に記録する(ステップS147)。なお、メインメモリ230に既に上壁のパラメータが記録されている場合、古いパラメータを新たなパラメータで上書きする。
【0063】
(下壁の設定)
図8は、第1の実施形態に係る下壁の設定方法を示すフローチャートである。
入力部212がモニタ装置142から下壁の設定指示を受け付けると、表示制御部213は、距離入力欄と設定ボタンを含むガイダンス画面をモニタ装置142に表示させる(ステップS161)。ガイダンス画面には、下壁を設定したい点の上方にバケット163の刃先を移動させ、距離入力欄に刃先から下壁までの距離を入力し、設定ボタンを操作する旨が表示される。距離入力欄には、初期値として0メートルが入力される。オペレータは、作業機械100を操作し、バケット163の刃先を所望の位置に移動させた後に設定ボタンを操作する。入力部212はモニタ装置142から距離入力欄への入力および設定ボタンの操作を受け付ける(ステップS162)。入力部212は、設定ボタンが操作された時点における距離入力欄の値を取得する(ステップS163)。
【0064】
計測値取得部214は、設定ボタンが操作された時点における傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105およびペイロードメータ106の計測値を取得する(ステップS164)。位置特定部215は、取得した計測値に基づいて車体座標系におけるバケット163の刃先の位置を特定する(ステップS165)。
【0065】
生成部216は、ステップS164で傾斜計測器101から取得したロール角およびピッチ角と、ステップS165で求めた刃先の位置と、ステップS163で取得した距離とに基づいて、水平方向に伸びる下壁のパラメータを算出する。生成部216は、Xsb軸の値が0、Ysb軸の値が0、Zsb軸の値が1のベクトルを、ロール角およびピッチ角だけ回転させることで、法線ベクトルを求める(ステップS166)。また生成部216は、ステップS165で求めた刃先の位置を示すベクトルと、法線ベクトルに距離を乗算した深度ベクトルとの和を求めることで、位置ベクトルを得る(ステップS167)。生成部216は、生成した下壁のパラメータを、メインメモリ230に記録する(ステップS168)。なお、メインメモリ230に既に下壁のパラメータが記録されている場合、古いパラメータを新たなパラメータで上書きする。
【0066】
《仮想壁の更新および介入制御》
作業機械100は、旋回体140を旋回させて作業機160が届く範囲内の作業を行うことができる。そのため、通常、オペレータは、掘削などの作業を行う場合、作業機械100を旋回させる。車体座標系は、旋回体140を基準とするため、グローバル座標系の視点から見て作業機械100の旋回に追従して回転する。車体座標系に設定される仮想壁が作業機械100の旋回に追従して回転してしまうと、右壁および左壁は作業機械100に干渉することがなく、意味をなさない。例えば、旋回体140の右側に右壁を設定すると、旋回体140をどのように旋回させても、右壁は常に旋回体140の右側に維持され、作業機械100に干渉することがない。また、前壁は、作業機械100の旋回に追従して回転してしまうと、平面状の壁ではなく環状の壁としてふるまうため、建築物の壁面に沿った仮想壁として機能しない。
そのため、第1の実施形態に係る制御装置200は、作業機械100の旋回前後でグローバル座標系における仮想壁の位置を維持するために、仮想壁の回転変換処理を行う。
【0067】
図9および図10は、第1の実施形態において設定された仮想壁の更新および介入制御を示すフローチャートである。作業機械100のオペレータがモニタ装置142の操作によって少なくとも1つの仮想壁を設定すると、制御装置200は、以下に示す制御を開始する。
【0068】
操作量取得部211は、操作装置141からブーム161、アーム162、バケット163、および旋回体140の操作信号を取得する(ステップS201)。計測値取得部214は、傾斜計測器101、旋回角センサ102、ブーム角センサ103、アーム角センサ104、バケット角センサ105およびペイロードメータ106の計測値を取得する(ステップS202)。
【0069】
回転変換部217は、メインメモリ230が記憶する1つ以上の仮想壁それぞれを、ステップS202で傾斜計測器101から取得した旋回体140のロール角、ピッチ角、ヨー角に基づいて回転変換し、更新する(ステップS203)。
【0070】
位置特定部215は、ステップS202で取得した計測値に基づいて車体座標系における作業機械100の外殻の複数の点の位置を算出する(ステップS204)。介入判定部218は、位置特定部215が特定した点を1つずつ選択し(ステップS205)、以下のステップS206からステップS212の処理を実行する。
【0071】
介入判定部218は、ステップS205で選択した点を通り、且つ、車体座標系のXsb-Ysb平面に平行な断面を特定する(ステップS206)。また、介入判定部218は、ステップS205で選択した点を通り、且つ、車体座標系のXsb-Zsb平面に平行な断面を特定する(ステップS207)。
【0072】
介入判定部218は、メインメモリ230に設定された1つ以上の仮想壁を1つずつ選択し(ステップS208)、以下のステップS209からステップS212の処理を実行する。
介入判定部218は、ステップS206で生成した断面とステップS208で選択した仮想壁との交線を水平仮想壁線として算出する(ステップS209)。なお、ステップS206で生成した断面と仮想壁との位置関係によっては水平仮想壁線が存在しない場合もある。水平仮想壁線が存在する場合、介入判定部218は、右旋回と左旋回のそれぞれについて、ステップS205で選択した点がステップS209で算出した水平仮想壁線と接触する旋回角を求める(ステップS210)。例えば、介入判定部218は、旋回中心を中心としてステップS205で選択した点を通る円と水平仮想壁線との交点を算出し、旋回中心からステップS205で選択した点へ伸びる線分と旋回中心から交点へ伸びる線分とのなす角を求める。なお、ステップS205で選択した点と水平仮想壁線との位置関係によっては交点が存在しない場合もある。
【0073】
また、介入判定部218は、ステップS207で生成した断面とステップS208で選択した仮想壁との交線を鉛直仮想壁線として算出する(ステップS211)。なお、ステップS207で生成した断面と仮想壁との位置関係によっては鉛直仮想壁線が存在しない場合もある。鉛直仮想壁線が存在する場合、介入判定部218は、ステップS205で選択した点とステップS211で算出した鉛直仮想壁線との距離を求める(ステップS212)。
【0074】
介入判定部218は、ステップS210で求めた作業機械100上の各点における仮想壁ごとの旋回角に基づいて、右旋回と左旋回のそれぞれについて、複数の点の少なくとも1つが少なくとも1つの仮想壁に接触する最小旋回角を算出する(ステップS213)。
介入判定部218は、ステップS212で求めた作業機械100上の各点における仮想壁ごとの距離に基づいて、作業機160と仮想壁との最短距離を算出する(ステップS214)。
【0075】
介入判定部218は、ステップS201で取得した旋回体140の操作信号に基づいて、旋回方向および目標旋回速度を算出する(ステップS215)。介入判定部218は、操作信号が示す旋回方向についての最小旋回角が、介入開始角度より大きいか否かを判定する(ステップS216)。最小旋回角が介入開始角度より大きい場合(ステップS216:YES)、介入制御部219は旋回についての介入制御を行わない。他方、最小旋回角が介入開始角度以下である場合(ステップS216:NO)、介入制御部219は、予め定められた制限角速度テーブルに基づいて最小旋回角から制限角速度を特定し、旋回体140の目標旋回速度を制限角速度以下の値に制限する(ステップS217)。制限角速度テーブルは、最小旋回角と制限角速度との関係を示す関数であって、最小旋回角が小さいほど制限角速度が小さくなる関数である。
制限角速度テーブルは、例えば、オペレータによる旋回体140の操作感が損なわれない減速率に設定してもよい。
【0076】
介入判定部218は、ステップS201で取得したブーム161、アーム162およびバケット163の操作信号に基づいて、作業機160の目標速度を算出する(ステップS218)。具体的には、介入判定部218は、ステップS201で取得したブーム161、アーム162およびバケット163の操作信号に基づいて、ブーム161、アーム162およびバケット163の目標速度を算出する。次に、介入判定部218は、ステップS214で算出した最短距離が、介入開始距離より長いか否かを判定する(ステップS219)。最短距離が介入開始距離より長い場合(ステップS219:YES)、介入制御部219は作業機160についての介入制御を行わない。他方、最短距離が介入開始距離以下である場合(ステップS219:NO)、介入制御部219は、作業機160の各軸を1つずつ選択し、選択した軸について、以下のステップS221からステップS222の処理を行う(ステップS220)。介入制御部219は、選択された軸の操作方向が仮想壁へ接近する方向の操作であるか否かを判定する(ステップS221)。選択された軸の操作方向が仮想壁へ接近する方向の操作ではない場合(ステップS220:NO)、介入制御部219は、選択された軸についての介入制御を行わない。他方、選択された軸の操作方向が仮想壁へ接近する方向の操作である場合(ステップS220:YES)、介入制御部219は、選択された軸について、予め定められた制限速度テーブルに基づいて制限速度を特定し、目標速度を制限速度以下の値に制限する(ステップS222)。
【0077】
制御信号出力部220は、ブーム161、アーム162、バケット163の目標速度および旋回体140の目標角速度に基づいて制御信号を生成し、コントロールバルブ113に出力する(ステップS223)。
【0078】
《作用・効果》
このように、制御装置200は、旋回体140の旋回に伴って車体座標系で規定された仮想壁を回転変換し、作業機械100の外殻が仮想壁と接触しないように、作業機械100を制御する。このように、車体座標系で規定された仮想壁を旋回体140の旋回に伴って回転させることで、制御装置200は、仮想壁の絶対位置を固定することができる。したがって、制御装置200は、グローバル座標系を参照することなく平面の仮想壁によって作業機械100の動作を制限することができる。平面の仮想壁を設定することで、通常平面で区切られる施工現場の領域への進入を適切に制限することができる。
【0079】
また、第1の実施形態に係る制御装置200は、車体座標系における作業機160の先端の位置を特定し、仮想壁の生成指示を受け付けたときに、作業機160の先端の位置に仮想壁を生成する。これにより、オペレータは、作業機の操作と生成指示の入力によって容易に仮想壁を設定することができる。なお、他の実施形態においてはこれに限られず、例えばオペレータがモニタ装置142の操作によって仮想壁の座標を入力することで仮想壁の設定がなされてもよい。
【0080】
また、第1の実施形態に係る制御装置200は、傾斜計測器101の計測値に基づいて、鉛直方向または水平方向に伸びる仮想壁を生成する。一般的に施工現場の領域は壁や柵によって鉛直方向に沿って区切られている。そのため、仮想壁が鉛直方向に伸びるように設定されることで、作業機械100による領域への進入を適切に制御することができる。また、架線や天井などの上方の障害物については作業機械100がその最下点を超えない制御することが一般であることから、仮想壁が水平方向に伸びるように設定されることで、適切に最下点制御を行うことができる。
【0081】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る制御装置200は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置200の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置200として機能するものであってもよい。このとき、制御装置200を構成する一部のコンピュータが作業機械100の内部に搭載され、他のコンピュータが作業機械100の外部に設けられてもよい。
【0082】
他の実施形態に係る制御装置200は、旋回操作の介入制御を行う際に、予め定められた制限角速度テーブルに基づいて制限角速度を決定するがこれに限られない。作業機械100の慣性モーメントは作業機160の姿勢やバケット163に積まれた荷の重量によって変化する。そのため、介入制御部219は、慣性モーメントの変化に鑑みて制限角速度を決定してもよい。例えば、ジオメトリデータに各部品の重心位置を格納しておくことで、位置特定部215は車体座標系における各部品の重心位置を特定することができる。介入制御部219は、各重心位置に既知の重量を乗算したベクトルと、さらにバケット163の位置にペイロードメータ106の計測値が示す重量を乗算したベクトルに基づいて作業機160の重心位置を求めることができる。これにより、介入制御部219は、制限角速度テーブルから求められた制限角速度に作業機160の重心位置と重量から計算されたイナーシャ比に応じた係数を乗算することで、慣性モーメントの変化に鑑みた制限角速度を決定することができる。
【0083】
第1の実施形態に係る作業機械100は、運転室180に搭乗したオペレータによって操作されるが、他の実施形態に係る作業機械100はこれに限られない。図11は、他の実施形態に係る作業システムの構成を示す図である。他の実施形態に係る作業機械100は、図10に示すように遠隔操作装置500によって操作されてもよい。遠隔操作される作業機械100は、第1の実施形態の構成に加え、さらに撮像装置119を備え、制御装置200は、撮像装置119が撮像した画像を遠隔操作装置500にリアルタイムに送信する。遠隔操作装置500は、運転席510、ディスプレイ520、操作装置530及び遠隔操作サーバ540を備える。遠隔操作サーバ540は、作業機械100から受信した画像をディスプレイ520に表示させる。これにより、オペレータは遠隔の作業機械100の周囲の状況を認識することができる。また遠隔操作サーバ540は、オペレータによる操作装置530の操作信号をネットワークを介して作業機械100に送信する。遠隔操作サーバ540は、第1の実施形態に係る制御装置200の少なくとも一部の機能を実行する。つまり、遠隔操作サーバ540を備える作業システムにおいて、制御装置200と遠隔操作サーバ540は、作業システムを構成する。
【0084】
第1の実施形態に係る作業機160にはバケット163が取り付けられるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機160は、バケットに代えて、ブレーカやグラップルなどの他の作業機具を備えていてもよい。また、他の実施形態に係るバケット163などの作業機具は、チルトアタッチメントやチルトローテートアタッチメントを介してアーム162の先端部に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0085】
100…作業機械 101…傾斜計測器 102…旋回角センサ 103…ブーム角センサ 104…アーム角センサ 105…バケット角センサ 106…ペイロードメータ 111…エンジン 112…油圧ポンプ 113…コントロールバルブ 114…走行モータ 115…旋回モータ 116…ブームシリンダ 117…アームシリンダ 118…バケットシリンダ 120…走行体 140…旋回体 141…操作装置 142…モニタ装置 160…作業機 161…ブーム 162…アーム 163…バケット 180…運転室 200…制御装置 210…プロセッサ 211…操作量取得部 212…入力部 213…表示制御部 214…計測値取得部 215…位置特定部 216…生成部 217…回転変換部 218…介入判定部 219…介入制御部 220…制御信号出力部 230…メインメモリ 250…ストレージ 270…インタフェース
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