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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034990
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ネジロック用治具
(51)【国際特許分類】
   F16B 33/06 20060101AFI20230306BHJP
   F16B 39/22 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F16B33/06 G
F16B39/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141545
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】川畑 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡島 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】黒古 兼司
(57)【要約】
【課題】バラつきを低減し、作業効率を向上することが可能なネジロック用治具を提供すること。
【解決手段】ネジロック用治具1は、配置部20と、ネジ挿入部30と、液体流路40と、複数の開口34aと、を備える。配置部20は、ネジロック剤が入った容器2のキャップ部52が配置される。ネジ挿入部30は、ボルト60のネジ部61が先端61aから挿入される。液体流路40は、配置部20からネジ挿入部30の周囲まで形成されている。複数の開口34aは、ネジ挿入部30の内側面に形成され、液体流路40に繋がっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジロック用の液体が入った容器の出口部が配置される配置部と、
ボルトのネジ部が先端から挿入される第1凹部と、
前記配置部から前記第1凹部の周囲まで形成された液体流路と、
前記第1凹部の内側面に形成され、前記液体流路に繋がった複数の第1開口と、を備えた、
ネジロック用治具。
【請求項2】
前記配置部は、前記出口部が配置される凹状に形成されており、前記凹状の底面に形成され、前記液体流路に繋がった第2開口を有し、
前記配置部の底面は、前記第1凹部の底面と対向して配置されている、
請求項1に記載のネジロック用治具。
【請求項3】
前記複数の第1開口は、前記第1凹部の周方向に沿って等間隔で形成されている、
請求項1に記載のネジロック用治具。
【請求項4】
前記配置部を含む第1部材と、
前記第1凹部および前記第1開口を含む第2部材と、を備え、
前記液体流路は、前記第1部材と前記第2部材の間に形成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のネジロック用治具。
【請求項5】
前記第1部材は、
第1端と第2端を有する第1筒状部と、
前記第1筒状部の内側に配置され、第1貫通孔が形成された壁部と、
前記第1筒状部のうち前記壁部から前記第2端までの第1部分と前記壁部によって形成された第2凹部と、を有し、
前記配置部は、前記第1筒状部のうち前記壁部から前記第1端までの第2部分と前記壁部によって形成されており、
前記第2部材は、
第3端と第4端を有する第2筒状部と、
前記第3端を塞ぐように配置された蓋部と、
前記第2筒状部に形成され、前記第1開口を含む第2貫通孔と、を有し、
前記第1凹部は、前記第2筒状部と前記蓋部によって形成され、
前記第2部材は、前記蓋部が前記壁部と所定の間隔を空けて対向し、前記第2筒状部が前記第1筒状部と所定の間隔を空けて対向するように、前記第2凹部に挿入されており、
前記液体流路は、前記蓋部と前記壁部の間の空間、および前記第1筒状部と前記第2筒状部の間の空間を含む、
請求項4に記載のネジロック用治具。
【請求項6】
前記第1部材は、前記第1筒状部の前記第2端に周方向における全周に亘って配置され、外側に向かって突出する第1外側突出部を更に有し、
前記第2部材は、前記第2筒状部の前記第3端に周方向における全周に亘って配置され、外側に向かって突出する第2外側突出部を更に有し、
前記第1外側突出部と前記第2外側突出部の間は接着されている、
請求項5に記載のネジロック用治具。
【請求項7】
前記第1部材は、前記第1筒状部の前記第2端に周方向における全周に亘って配置され、内側に向かって突出する内側突出部を更に有し、
前記第1筒状部に沿った方向において、前記内側突出部の前記壁部側の縁の位置は、前記第2貫通孔の前記第4端側の縁の位置と一致している、
請求項5または6に記載のネジロック用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネジロック用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトの緩みを防止するために、ボルトにネジロック剤を塗布してからボルトが締められる。
【0003】
図10は、従来のネジロック剤のボルトへの塗布作業を説明するための図である。ネジロック剤は例えば樹脂製の容器2000に入っており、作業者は、容器2000からネジロック剤を押し出しながら、ボルト1000のネジ部1100の周囲にネジロック剤を塗布する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業者は、ネジ部の全周に亘ってネジロック剤を塗布するために、容器2000からネジロック剤を押し出しながら、ネジ部1100の周囲において容器2000を回転させる必要がある。そのため、ボルト1000が多数ある場合には、作業に時間がかかっていた。また、ボルト1000間において塗布にバラつきが生じていた。
【0005】
本開示は、バラつきを低減し、作業効率を向上することが可能なネジロック用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示にかかるネジロック用治具は、配置部と、第1凹部と、流体流路と、複数の第1開口と、を備える。配置部は、ネジロック用の液体が入った容器の出口部が配置される。第1凹部は、ボルトのネジ部が先端から挿入される。液体流路は、配置部から凹部の周囲まで形成されている。複数の第1開口は、凹部の内側面に形成され、液体流路に繋がっている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、バラつきを低減し、作業効率を向上することが可能なネジロック用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)本開示にかかる実施の形態におけるネジロック用治具の斜視図、(b)図1(a)のネジロック用治具にネジロック剤が入った容器を取り付けた状態を示す斜視図。
図2】本開示にかかる実施の形態におけるネジロック用治具の正面断面図。
図3図2のネジロック用治具にネジロック剤が入った容器を取り付けた状態を示す図。
図4A図2のネジロック用治具を用いてボルトにネジロックを行う状態を説明するための図。
図4B】ネジロック剤が塗布された状態のボルトを示す図。
図5】(a)本開示にかかる実施の形態におけるネジロック用治具のアウター部材を示す斜視図、(b)図5(a)のアウター部材の正面断面図。
図6】(a)本開示にかかる実施の形態におけるネジロック用治具のインナー部材を示す斜視図、(b)図6(a)のインナー部材の正面断面図、(c)図6(b)のCC´間の断面図。
図7】(a)~(c)本開示にかかる実施の形態におけるネジロック用治具をネジロック剤容器に取り付ける際の手順を説明するための図。
図8】(a)本開示にかかる実施の形態におけるネジロック用治具にネジロック剤容器のキャップ部を取り付けた状態を示す正面断面図、(b)図8(a)のネジロック用治具への容器本体の取り付けを説明するための図。
図9】本開示にかかる実施の形態のネジロック用治具を用いて多数のボルトにネジロック剤を塗布する作業を説明するための図。
図10】従来のネジロック剤のボルトへの塗布作業を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態に係るネジロック用治具について説明する。
【0010】
(ネジロック用治具1の概要)
図1(a)は、実施形態に係るネジロック用治具1の斜視図である。図1(b)は、ネジロック用治具1に、ネジロック剤が入った容器2を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0011】
ネジロック用治具1は、ボルトのネジ部にネジロック剤を塗布する際に用いられる。ネジロック剤は、ボルトの緩みを防止するために、ボルトのネジ部の周囲に塗布される。ネジロック用治具1は、図1(b)に示すように、ネジロック剤が入った容器2に取り付けられる。
【0012】
図2は、ネジロック用治具1の正面断面図である。図3は、容器2を取り付けた状態のネジロック用治具1の正面断面図である。図4Aは、ボルトのネジ部にネジロック剤を塗布する状態におけるネジロック用治具1の断面図である。
【0013】
ネジロック用治具1は、図2に示すように、配置部20と、ネジ挿入部30と、液体流路40と、複数の開口34aと、を備える。図3に示すように、配置部20には、ネジロック剤が入った容器2のキャップ部52が配置される。ネジ挿入部30には、図4Aに示すように、ボルト60のネジ部61が挿入される。図2に示すように、液体流路40は、配置部20からネジ挿入部30の周囲まで形成されている。複数の開口34aは、ネジ挿入部30の内側面31cに形成されている。複数の開口34aは、液体流路40に繋がっている。
【0014】
作業者が容器2を把持して容器2に圧力を加えると、キャップ部52の突起残部54a(後述する)からネジロック剤が吐出する。吐出したネジロック剤は、液体流路40を通って複数の開口34aに向かって移動する(図4Aの矢印参照)。開口34aから吐出されるネジロック剤は、吐出の圧力によって、ネジ挿入部30とネジ部61の間の隙間Gにおいて広がり、ネジ部61の先端61aから1~2つのネジ山を空けて所定のネジ山数分塗布される。図4Bは、ネジロック剤が塗布された状態のボルト60を示す図である。ネジロック剤Hがネジ部61の先端61aから1~2つのネジ山を空けて所定数のネジ山を覆っている。例えば、M12以下のボルトの場合、先端61aから1~2つのネジ山を空けて3~4つのネジ山を覆うようにネジロック剤を塗布することが好ましい。また、M14以上のボルトの場合、先端61aから1~2つのネジ山を空けて7~8つのネジ山を覆うようにネジロック剤を塗布することが好ましい。
【0015】
本実施の形態のネジロック用治具1は、図2に示すように、アウター部材11(第1部材の一例)とインナー部材12(第2部材の一例)が組み合わされている。インナー部材12は、アウター部材11に挿入される。アウター部材11は、上述した配置部20を含む。インナー部材12は、ネジ挿入部30と、複数の開口34aを含む。液体流路40は、アウター部材11とインナー部材12の間に形成される。
【0016】
(アウター部材11)
図5(a)は、アウター部材11の斜視図である。図5(b)は、アウター部材11の正面断面図である。
【0017】
図5(a)に示すように、アウター部材11の外形は概ね筒状である。図5(b)に示すように、アウター部材11は、筒状部21(第1筒状部の一例)と、壁部22と、インナー部材挿入部23(第2凹部の一例)と、内側突出部24と、外側突出部25と、を有する。
【0018】
筒状部21は、両端が開口された筒状の部材である。筒状部21は、端21a(第1端の一例)と、端21b(第2端の一例)と、を有する。図5(b)には、筒状部21の中心軸Aが示されている。
【0019】
壁部22は、図5(b)に示すように、筒状部21の内側に配置されている。壁部22は、筒状部21の端21aと端21bの間に配置されている。壁部22は、筒状部21の中心軸Aに対して垂直な方向に沿って配置されている。また、本実施の形態では、壁部22は、筒状部21の端21bよりも端21a寄りに配置されている。壁部22の中央には、筒状部21の中心軸Aに沿って貫通孔26が形成されている。
【0020】
筒状部21のうち壁部22から端21aまでの部分211(第2部分の一例)と壁部22によって、上述した配置部20が形成されている。配置部20は、中心軸Aに沿った方向に凹んだ形状に形成されている。配置部20には、図4Aに示すように、キャップ部52が嵌る。図5(b)に示すように、壁部22の貫通孔26は、壁部22の配置部20側の面22aに開口26aを有している。面22aは、配置部20の底面を構成する。
【0021】
インナー部材挿入部23は、図2に示すように、中心軸Aに沿ってインナー部材12が挿入される。インナー部材挿入部23は、中心軸Aに沿った方向に凹んだ形状に形成されている。インナー部材挿入部23は、図5(b)に示すように、筒状部21のうち壁部22から端21bまでの部分212(第1部分の一例)と壁部22によって形成されている。貫通孔26は、壁部22のインナー部材挿入部23側の面22bに開口26bを有している。配置部20とインナー部材挿入部23は、壁部22を挟んで配置されている。
【0022】
内側突出部24は、図5(b)に示すように、筒状部21の端21bに、周方向における全周に亘って配置されている。内側突出部24は、筒状部21の径方向の内側に向かって突出している。図2に示すように、アウター部材11にインナー部材12が組み合わされた状態において、内側突出部24は、インナー部材12に向かって突出している。
【0023】
外側突出部25は、図5(b)に示すように、筒状部21の端21bに、周方向における全周に亘って配置されている。外側突出部25は、筒状部21の径方向の外側に向かって突出している。外側突出部25は、内側突出部24と、筒状部21を挟んで対向して配置されている。
【0024】
(インナー部材12)
図6(a)は、インナー部材12の斜視図である。図6(b)は、インナー部材12の正面断面図である。図6(c)は、インナー部材12の平断面図である。図6(c)は、図6(b)におけるCC´間の矢視断面図である。
【0025】
インナー部材12は、図2に示すように、アウター部材11のインナー部材挿入部23に挿入される。インナー部材12は、図6(a)および図6(b)に示すように、筒状部31と、蓋部32と、外側突出部33と、を有する。
【0026】
筒状部31は、筒状である。筒状部31は、図6(b)に示すように、その両端である端31a(第3端の一例)と端31b(第4端の一例)とを有する。筒状部31の中心軸Bが示されている。
【0027】
筒状部31には、複数の貫通孔34が形成されている。図6(b)に示すように、複数の貫通孔34は、筒状部31の内側面31cに開口34aを有し、外側面31dに開口34bを有している。図6(c)に示すように、複数の貫通孔34は、中心軸Bに沿って視て、周方向に沿って等角度間隔で設けられている。本実施の形態では、4つの貫通孔26が90度間隔で筒状部31に設けられている。各々の貫通孔26は、中心軸Bに対して垂直な方向に沿って形成されている。
【0028】
複数の貫通孔34は、中心軸Bに沿った方向において同じ位置に配置されている。すなわち、複数の貫通孔34の中心軸Bに沿った方向における端31aまでの長さは同じである。複数の貫通孔34は、筒状部31において端31aよりも端31b側寄りの位置に設けられている。また、貫通孔34の内径は1~3mmに設定することができる。なお、図6(a)~図6(c)に示すように、4つの貫通孔34が設けられているが、例えば、120度間隔で3つの貫通孔34が設けられていてもよい。
【0029】
蓋部32は、筒状部31の端31aを塞ぐように配置されている。蓋部32とインナー部材12によって有底円筒形状が形成される。蓋部32は、中心軸Bに対して垂直に配置されている。
【0030】
筒状部31と蓋部32によって、上述したネジ挿入部30が形成される。ネジ挿入部30には、ボルト60のネジ部61が挿入される(図4A参照)。ネジ挿入部30は、中心軸Bに沿った方向に凹んだ形状に形成されている。蓋部32の端31b側の面32a(図6(a)参照)が、凹形状であるネジ挿入部30の底を構成する。また、筒状部31の内側面31cが、ネジ挿入部30の内側面を構成する。
【0031】
外側突出部33は、図6(b)に示すように、筒状部31の端31bに、周方向における全周に亘って配置されている。外側突出部33は、筒状部31の径方向の外側に向かって突出している。
【0032】
(アウター部材11とインナー部材12の組み合わせ)
図2に示すように、インナー部材12が、筒状部31の端31a側からアウター部材11のインナー部材挿入部23に挿入される。アウター部材11の中心軸Aと、インナー部材12の中心軸Bは一致する。ここで、アウター部材11の筒状部21および内側突出部24と、インナー部材12の外側突出部33との間が全周に亘って接着剤によって接着され(図2における接着部D1)、アウター部材11の内側突出部24と、インナー部材12の筒状部31との間が全周に亘って接着剤によって接着される(図2における接着部D2)。
【0033】
インナー部材12をアウター部材11に挿入することによって、アウター部材11の壁部22にインナー部材12の蓋部32が所定の間隔を空けて対向する。アウター部材11の壁部22とインナー部材12の蓋部32の間には所定の空間S1が形成されている。
【0034】
また、インナー部材12の筒状部31の外周面と、アウター部材11の筒状部21の内周面が所定の間隔を空けて対向する。アウター部材11の筒状部31とインナー部材12の筒状部21の間には所定の空間S2が形成されている。図2に示すように、貫通孔34の開口34bは、空間S2に面している。
【0035】
貫通孔26、空間S1および空間S2によって、ネジロック剤が流れる液体流路40が形成される。液体流路40は、配置部20と、ネジ挿入部30への開口34aを含む貫通孔34とを繋ぐ。
【0036】
図2に示すように、インナー部材12における複数の貫通孔34の端31b側の縁34eの位置と、アウター部材11における内側突出部24の端21a側の縁24eの位置は一致している。貫通孔34は、空間S2の空間S1とは反対側の端に設けられている。
【0037】
このような構成によって、開口26aから貫通孔26に流入したネジロック剤は、開口26bから空間S1に流入する。空間S1に流入したネジロック剤は、空間S2に流れ込み、貫通孔34を通って開口34aからネジ挿入部30へと吐出される。
【0038】
(容器2のネジロック用治具1への取り付け)
図7(a)は、ネジロック剤が入った容器2の斜視図である。容器2は、例えば樹脂によって形成される。容器2は、容器本体51と、キャップ部52と、を有する。容器本体51には、ネジロック剤が入っている。キャップ部52は、容器本体51に取り付けられている。キャップ部52は、キャップ本体53と、突起54と、を有する。キャップ本体53は、キャップ部52のうち容器本体51に取り付けられる部分である。突起54は、キャップ本体53の上面から突出している。突起54のいずれかの箇所を切断し、容器2に圧力をかける(押さえる)ことによって、切断した箇所からネジロック剤が吐出される。
【0039】
本実施の形態では、図7(a)の切断線Eで示すように、突起54が根元近傍で切断される。図7(b)は、突起54が切断された状態の容器2を示す図である。切断された突起54を突起残部54aとして示す。図7(c)は、キャップ部52を容器本体51から取り外した状態を示す図である。図7(c)に示すように、容器本体51は、外部に向かって開口し、キャップ部52が取り付けられる筒状の取付部51aを有している。取付部51aの外周には、ネジ形状が形成されている。また、キャップ本体53の内側面にネジ形状が形成されている。これによって、キャップ部52を容器本体51に対して回転させることによって、容器本体51から取り外すことができる(矢印J参照)。また、反対に回転させることによって、キャップ部52に容器本体51を捻じ込んで取り付けることができる。
【0040】
容器本体51から取り外されたキャップ部52は、図8(a)に示すように、ネジロック用治具1の配置部20に配置される。キャップ部52は、突起残部54aが、貫通孔26に対向若しくは挿入されるように配置部20に配置される。キャップ本体53の外側面と、配置部20の内側面の間は、接着剤によって接着されている(図8(a)における接着部F)。
【0041】
接着によって固定されたキャップ部52が、図8(b)に示すように、ネジロック用治具1ごと、容器本体51の取付部51aに捻じ込みによって取り付けられる。これによって、図3に示すように、ネジロック用治具1に容器2が取り付けられる。なお、容器2内のネジロック剤がなくなった場合には、容器本体51を別のものと取り換えることによってネジロック剤を補充することができる。
【0042】
(ネジロック剤の塗布)
図9は、ボルト60のネジ部61にネジロック剤を塗布する作業の一例を示す図である。図9に示すように、コンテナ70の内側に多数のボルト60が、ネジ部61を上側に向けて配置されている。
【0043】
ネジロック用治具1が取り付けられた容器2を把持し、ネジ部61がネジ挿入部30に挿入されるように、ネジロック用治具1をボルト60に被せる(図4A参照)。そして、容器2に圧力を加えることによって、突起残部54aからネジロック剤が吐出され、壁部22の貫通孔26を通って空間S1および空間S2に流れ込み、貫通孔34を通って開口34aからネジ部61に向かって吐出される。開口34aから吐出されたネジロック剤は、吐出圧力によって、ネジ部61と筒状部31の内側面31cとの隙間Gで広がり、ネジ部61の表面に塗布される。
【0044】
このように、ボルト60にネジロック用治具1を被せて、容器2に圧力をかけるだけでボルト60のネジ部61の表面にネジロック剤を塗布することができる。
【0045】
また、図9に示すように、多数並んで配置されたボルト60にネジロック用治具1を順次被せて吐出するだけで、多数のボルト60にネジロック剤を塗布することができる。
【0046】
(特徴等)
(1)
本実施の形態のネジロック用治具1は、配置部20と、ネジ挿入部30(第1凹部の一例)と、液体流路40と、複数の開口34a(第1開口の一例)と、を備える。配置部20は、ネジロック剤(ネジロック用の液体の一例)が入った容器2のキャップ部52(出口部の一例)が配置される。ネジ挿入部30は、ボルト60のネジ部61が先端61aから挿入される。液体流路40は、配置部20からネジ挿入部30の周囲まで形成されている。複数の開口34aは、ネジ挿入部30の内側面31cに形成され、液体流路40に繋がっている。
【0047】
これにより、作業者が容器2からネジロック剤を押し出すことによって、配置部20に配置されたキャップ部52から出たネジロック剤が、液体流路40を通って、ネジ挿入部30に挿入されたボルト60のネジ部61に向かって複数の開口34aから吐出される。吐出されたネジロック剤は、吐出の圧力によって、ネジ部61の周囲に広がって塗布される。
【0048】
このため、図10に示すように、作業者が容器2000から液体を押し出しながらボルト1000の周囲を回して、液体をボルト1000のネジ部1100に塗布する必要がなく、短い時間でネジロック用の液体をネジ部の周囲に塗布することができる。
【0049】
また、ネジ挿入部30にボルト60のネジ部61を挿入した状態で、開口34aから液体を吐出しているため、安定した状態でムラを抑制して塗布を行うことができ、ボルト60間における塗布のバラつきを低減することができる。
【0050】
(2)
本実施の形態のネジロック用治具1では、配置部20は、キャップ部52が配置される凹状に形成されており、凹状の面22a(底面の一例)に形成され、液体流路40に繋がった開口26a(第2開口の一例)を有する。配置部20の面22aは、ネジ挿入部30の面32a(底面の一例)と対向して配置されている。
【0051】
これにより、キャップ部52から吐出したネジロック剤が開口26a、液体流路40、および開口34aを介してネジ部に塗布される。
【0052】
(3)
本実施の形態のネジロック用治具1では、複数の開口34aは、ネジ挿入部30の周方向に沿って等間隔で形成されている。
【0053】
これにより、ネジ部61の全周に亘って短時間で均等に、ネジロック剤を塗布することができる。
【0054】
(4)
本実施の形態のネジロック用治具1は、アウター部材11(第1部材の一例)と、インナー部材12(第2部材の一例)と、を備える。アウター部材11は、配置部20を含む。インナー部材12は、ネジ挿入部30および開口34aを含む。液体流路40は、アウター部材11とインナー部材12の間に形成される。
【0055】
これにより、アウター部材11とインナー部材12を組み合わせることによって、ネジロック用治具1を構成することができる。また、ネジロック剤が詰まった場合であってもアウター部材11とインナー部材12を分解することによって容易に清掃することができる。
【0056】
(5)
本実施の形態のネジロック用治具1では、アウター部材11は、筒状部21(第1筒状部の一例)と、壁部22と、インナー部材挿入部23(第2凹部の一例)と、を有する。筒状部21は、端21a(第1端の一例)と端21b(第2端の一例)を有する。壁部22は、筒状部21の内側に配置され、貫通孔26(第1貫通孔の一例)が形成されている。インナー部材挿入部23は、筒状部21のうち壁部22から端21bまでの部分212(第1部分の一例)と壁部22によって形成されている。配置部20は、筒状部21のうち壁部22から端21aまでの部分211(第2部分の一例)と壁部22によって形成されている。インナー部材12は、筒状部31(第2筒状部の一例)と、蓋部32と、貫通孔34(第2貫通孔の一例)と、を有する。筒状部31は、端31a(第3端の一例)と端31b(第4端の一例)を有する。蓋部32は、端31aを塞ぐように配置されている。貫通孔34は、筒状部31に形成され、開口34aを含む。ネジ挿入部30は、筒状部31と蓋部32によって形成されている。インナー部材12は、蓋部32が壁部22と所定の間隔を空けて対向し、筒状部31が筒状部21と所定の間隔を空けて対向するように、インナー部材挿入部23に挿入されている。液体流路40は、蓋部32と壁部22の間の空間S1、および筒状部21と筒状部31の間の空間S2を含む。
【0057】
これにより、アウター部材11のインナー部材挿入部23にインナー部材12を挿入することによって、ネジロック用治具1を構成することができる。
【0058】
(6)
本実施の形態のネジロック用治具1では、アウター部材11は、外側突出部25(第1外側突出部の一例)を更に有する。外側突出部25は、筒状部21の端21bに周方向における全周に亘って配置され、外側に向かって突出する。インナー部材12は、外側突出部33(第2外側突出部の一例)を更に有する。外側突出部33は、筒状部31の端31bに周方向における全周に亘って配置され、外側に向かって突出する。外側突出部25と外側突出部33の間は接着されている。
【0059】
これによって、アウター部材11とインナー部材12の間をシールすることができる。
【0060】
(7)
本実施の形態のネジロック用治具1では、アウター部材11は、内側突出部24(第1内側突出部の一例)を更に有する。内側突出部24は、筒状部21の端21bに周方向における全周に亘って配置され、内側に向かって突出する。筒状部21に沿った方向において、内側突出部24の壁部22側の縁24eの位置は、貫通孔34の端31b側の縁34eの位置と一致している。
【0061】
これによって、液体流路40の端に配置された貫通孔34から、液体を吐出することができる。
【0062】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
(A)
上記実施の形態では、貫通孔34は周方向において等間隔に3つまたは4つ設けられていると述べたが、これに限らず、2つでもよく、また5以上でも良い。
【0064】
上記実施の形態では、複数の貫通孔34は、中心軸Aに沿った方向において端31aから同じ位置に設けられているが、同じ位置でなくてもよい。
【0065】
上記実施の形態では、複数の貫通孔34は、端31b側の縁34eが、内側突出部24の端21a側の縁24eと一致するように配置されているが、中心軸Aに沿った方向において、縁34eが縁24eよりも端31a、21a側に配置されていてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、複数の貫通孔34は中心軸Aに沿った方向において一列だけ設けられているが、複数列設けられていてもよい。
【0067】
上記実施の形態では、複数の貫通孔34は同じ大きさであるが、異なっていてもよい。
【0068】
要するに、ボルトにネジロック剤を適切に塗布できるように、複数の貫通孔34は、それらの位置、大きさ、および数を適宜設定すればよい。
【0069】
(B)
上記実施の形態では、ネジロック用治具1は、アウター部材11とインナー部材12の2つの部材によって形成されているが、2つに限らなくてもよく、1つの部材若しくは3つ以上の部材から形成されていてもよい。
【0070】
(C)
上記実施の形態では、アウター部材11とインナー部材12は、接着部D1と接着部D2の双方で接着されているが、いずれか一方だけで接着されていてもよい。
【0071】
(D)
上記実施の形態では、アウター部材11とインナー部材12の間は接着剤で接着されることによって、ネジロック剤に対するシール性が確保されているが、これに限らなくてもよい。例えば、アウター部材11の外側突出部25とインナー部材12の外側突出部33の間にOリング等のシール材が配置されてシール性が確保されてもよい。
【0072】
(E)
上記実施の形態では、突起残部54aが、貫通孔26に挿入されているが、挿入されていなくてもよい。突起残部54aが貫通孔26に挿入されていなくても、キャップ部52と配置部20の内側面が接着剤によってシールされていれば、突起残部54aから吐出されたネジロック剤は貫通孔26に流入することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示のネジロック用治具によれば、バラつきを低減し、作業効率を向上することが可能な効果を有し、多数のボルトに対してネジロック剤を塗布する際に有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 :ネジロック用治具
2 :容器本体
20 :配置部
30 :ネジ挿入部
40 :液体流路
52 :キャップ部
60 :ボルト
61 :ネジ部
61a :先端


図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10