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特開2023-34991応力モニタリングセンサ、センサ位置決め部材、および、応力モニタリング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034991
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】応力モニタリングセンサ、センサ位置決め部材、および、応力モニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01D5/353 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141547
(22)【出願日】2021-08-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・令和3年7月20日、2021年度日本建築学会大会(東海)学術講演梗概集、第157~158頁、一般社団法人 日本建築学会
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】関根 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】早野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正智
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103CA03
2F103EC09
2F103ED06
(57)【要約】
【課題】多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することを容易にする。
【解決手段】コンクリート構造物内部の応力をモニタリングする応力モニタリングセンサであって、光信号を伝送する光ファイバケーブルにひずみを検知する検知部が設けられた複数の光ファイバセンサまたはひずみを検知する検知部が複数設けられた単一の光ファイバセンサと、前記光ファイバセンサを支持する支持部材と、前記支持部材に設けられ、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように前記検知部の位置を制限する位置決め部と、を備えることを特徴としている。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物内部の応力をモニタリングする応力モニタリングセンサであって、
光信号を伝送する光ファイバケーブルにひずみを検知する検知部が設けられた複数の光ファイバセンサまたはひずみを検知する検知部が複数設けられた単一の光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサを支持する支持部材と、
前記支持部材に設けられ、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように前記検知部の位置を制限する位置決め部と、を備えることを特徴とする応力モニタリングセンサ。
【請求項2】
前記複数の検知部は、第1の検知部と第2の検知部とを含み、
前記第1の検知部と前記第2の検知部とは直交していることを特徴とする請求項1に記載の応力モニタリングセンサ。
【請求項3】
前記複数の検知部は、特定の一点を通り平行でない3方向に少なくとも設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の応力モニタリングセンサ。
【請求項4】
前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、
前記第1、第2および第3の検知部は、互いに直交するように設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の応力モニタリングセンサ。
【請求項5】
前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、
前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差するように設けられ、
前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差する平面上において、前記第1の検知部と前記第2の検知部との間に前記第3の検知部が延在するように設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の応力モニタリングセンサ。
【請求項6】
前記検知部を囲繞するように前記光ファイバセンサを被覆する被覆部をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の応力モニタリングセンサ。
【請求項7】
前記被覆部は第1の被覆部であり、
少なくとも前記検知部を除く前記光ファイバケーブルを被覆する第2の被覆部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の応力モニタリングセンサ。
【請求項8】
光信号を伝送する光ファイバケーブルにひずみを検知する検知部が設けられた複数の光ファイバセンサまたはひずみを検知する検知部が複数設けられた単一の光ファイバセンサを保持するセンサ位置決め部材であって、
前記光ファイバセンサを支持する支持部材と、
前記支持部材の位置を固定する固定部材と、
前記支持部材に設けられ、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように前記検知部の位置を制限する位置決め部と、を備えることを特徴とするセンサ位置決め部材。
【請求項9】
前記複数の検知部は、第1の検知部と第2の検知部とを含み、
前記第1の検知部と前記第2の検知部とが直交するように、前記位置決め部が設けられることを特徴とする請求項8に記載のセンサ位置決め部材。
【請求項10】
前記複数の検知部が特定の一点を通り平行でない3方向に少なくとも設置されるように、前記位置決め部が設けられることを特徴とする請求項8または9に記載のセンサ位置決め部材。
【請求項11】
前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、
前記第1、第2および第3の検知部が互いに直交するように、前記位置決め部が設けられることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載のセンサ位置決め部材。
【請求項12】
前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、
前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差し、
前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差する平面上において、前記第1の検知部と前記第2の検知部との間に前記第3の検知部が延在するように、前記位置決め部が設けられることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載のセンサ位置決め部材。
【請求項13】
前記固定部材は、前記光ファイバケーブルが挿通可能な挿通部をさらに備えることを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載のセンサ位置決め部材。
【請求項14】
前記支持部材と前記固定部材とが分離可能であることを特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載のセンサ位置決め部材。
【請求項15】
光信号を伝送する光ファイバケーブルにひずみを検知する検知部が設けられた複数の光ファイバセンサまたはひずみを検知する検知部が複数設けられた単一の光ファイバセンサを用いて、コンクリート構造物内部の応力をモニタリングする応力モニタリング方法であって、
前記光ファイバセンサを支持する支持部材、前記支持部材の位置を固定する固定部材、および前記支持部材に設けられ、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように前記検知部の位置を制限する位置決め部を備えるセンサ位置決め部材を用いて、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように、前記検知部の位置を制限することによって、前記光ファイバセンサの位置決めをするセンサ位置決め工程と、
前記位置決めされた光ファイバセンサを、前記コンクリート構造物内に埋設する工程と、
前記埋設した光ファイバセンサのひずみを測定する工程と、
前記測定したひずみの経時的変化の特性に基づいて、前記コンクリート構造物内に生じた応力を推定する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする応力モニタリング方法。
【請求項16】
前記検知部を囲繞するように、被覆部により前記光ファイバセンサを被覆する工程と、
前記被覆した光ファイバセンサから前記固定部材を取り外す工程とをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の応力モニタリング方法。
【請求項17】
前記センサ位置決め工程において、
前記光ファイバセンサの損失値が所定の閾値以上になるように、前記光ファイバセンサを前記位置決め部に設置させることを特徴とする請求項15または16に記載の応力モニタリング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物内部の応力モニタリングセンサ、センサ位置決め部材、および、応力モニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RC(Reinforced-Concrete)造やSRC(Steel Reinforce Concrete)造などのコンクリート構造物において、ひび割れが発生することは、コンクリート構造物の構造性能を大きく低下させるとともに、かぶりコンクリートの剥落につながる。その結果、第三者被害を発生させる場合がある。したがって、ひび割れの発生を含むコンクリートの損傷を検知することは、コンクリート構造物の維持管理に極めて重要である。コンクリートのひび割れの原因には、鉄筋腐食、乾燥収縮、温度応力や外力によるものが存在する。特に、地震や地盤沈下などの外力が加わった場合、各部位にひずみが生じる。このような状況下において、コンクリート構造物の各部位に生じたひずみをモニタリングすることは非常に重要である。
【0003】
コンクリートは、一般的に弾性域を有しており、収縮または膨張する。しかし、コンクリート構造物に対し、地震や地盤沈下などの弾性限界を超える大きな外力が加わりひび割れ等が生じることで、コンクリート構造物の各部位に生じたひずみは、元に戻らず、大きな残存ひずみが生じる。このように、コンクリート構造物に大きな残存ひずみが生じた場合、コンクリート構造物には損傷が生じていることになる。
【0004】
コンクリート構造物において、損傷が生じた場合には、表面にひび割れが生じる場合が多いが、例えば、建築物などのように仕上げ材がある場合などは、目視で確認することは困難である。また、コンクリート構造物内部にひび割れが生じた場合など、コンクリート構造物には目視で確認できない部位も多い。
【0005】
コンクリート構造物内部のひずみを計測する方法として、光ファイバセンサによりコンクリート構造物内部の応力を計測する方法が知られている(特許文献1を参照)。特許文献1に記載の発明では、特定の一点を通り平行でない方向に延在するように、複数の光ファイバセンサの検知部を設け、コンクリート構造物内の多方向のひずみを計測している。
【0006】
また、特許文献1に記載の発明では、糸や番線などの固定部材を型枠内に設置し、保護チューブで被覆された光ファイバセンサを、接着剤などを用いて固定部材に固定することによって、光ファイバセンサを直線状に設置することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-56768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、検知部をどの位置に設置するのか分かりにくいことから、光ファイバセンサの設置が作業者の負担となるおそれがある。特に、多方向のひずみを計測する場合には、このような問題が顕著である。そのため、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することが容易となる技術が求められている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することを容易にした、コンクリート構造物内部の応力モニタリングセンサ、センサ位置決め部材、および応力モニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下の手段を講じた。すなわち、本発明の応力モニタリングセンサは、コンクリート構造物内部の応力をモニタリングする応力モニタリングセンサであって、光信号を伝送する光ファイバケーブルにひずみを検知する検知部が設けられた複数の光ファイバセンサまたはひずみを検知する検知部が複数設けられた単一の光ファイバセンサと、前記光ファイバセンサを支持する支持部材と、前記支持部材に設けられ、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように前記検知部の位置を制限する位置決め部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
このように、光ファイバセンサを支持する支持部材と、支持部材に設けられ、複数の検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように検知部の位置を制限する位置決め部とを備えるから、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することを容易にする。
【0012】
(2)また、本発明の応力モニタリングセンサにおいて、前記複数の検知部は、第1の検知部と第2の検知部とを含み、前記第1の検知部と前記第2の検知部とは直交していることを特徴としている。
【0013】
このように、第1の検知部と第2の検知部と直交するから、直交する2方向におけるひずみを計測可能とする。また、第1の検知部と第2の検知部の延在方向がコンクリート構造物の表面に平行となるように、応力モニタリングセンサをコンクリート構造物内に設けることによって、コンクリート構造物内部におけるひずみの方向および大きさを容易に把握することができる。
【0014】
(3)本発明の応力モニタリングセンサにおいて、前記複数の検知部は、特定の一点を通り平行でない3方向に少なくとも設置されていることを特徴としている。このように、複数の検知部が、特定の一点を通り平行でない3方向に少なくとも設置されているから、コンクリート構造物内部における主応力を算出することができる。
【0015】
(4)本発明の応力モニタリングセンサにおいて、前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、前記第1、第2および第3の検知部は、互いに直交するように設けられることを特徴としている。
【0016】
このように、第1、第2および第3の検知部が互いに直交するように設けられるから、コンクリート構造物内部におけるひずみを3次元的に計測でき、コンクリート構造物中の3次元的なひずみの分布の算出を可能にする。
【0017】
(5)本発明の応力モニタリングセンサにおいて、前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差するように設けられ、前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差する平面上において、前記第1の検知部と前記第2の検知部との間に前記第3の検知部が延在するように設けられることを特徴としている。
【0018】
このように、第1の検知部と第2の検知部とが交差するように設けられ、第1の検知部と第2の検知部とが交差する平面上において、第1の検知部と第2の検知部との間に第3の検知部が延在するように設けられる。そのため、同一平面上に3つの検知部を設けていない場合と比べて、第1、第2および第3の検知部が設けられている平面上におけるひずみの大きさや方向をより正確に把握することができる。
【0019】
(6)本発明の応力モニタリングセンサにおいて、前記検知部を囲繞するように前記光ファイバセンサを被覆する被覆部をさらに備えることを特徴としている。このように、検知部を囲繞するように光ファイバセンサを被覆する被覆部をさらに備えるから、コンクリートを打設する前に、センサ位置決め部材により位置決めされた検知部の位置を、被覆部によって固定できる。これにより、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することをさらに容易にする。
【0020】
(7)本発明の応力モニタリングセンサにおいて、前記被覆部は第1の被覆部であり、少なくとも前記検知部を除く前記光ファイバケーブルを被覆する第2の被覆部をさらに備えることを特徴としている。
【0021】
このように、第1の被覆部だけでなく、光ファイバケーブルを被覆する第2の被覆部をさらに備えるから、応力モニタリングセンサをコンクリート構造物内へ埋設する際に、応力モニタリングセンサを損傷させることを抑制できる。その結果、応力モニタリングセンサの取り扱い性が向上する。また、少なくとも検知部を除く部分に第2の被覆部が設けられるから、検知部においてひずみを捉えることができる。
【0022】
(8)本発明のセンサ位置決め部材は、光信号を伝送する光ファイバケーブルにひずみを検知する検知部が設けられた複数の光ファイバセンサまたはひずみを検知する検知部が複数設けられた単一の光ファイバセンサを保持するセンサ位置決め部材であって、前記光ファイバセンサを支持する支持部材と、前記支持部材の位置を固定する固定部材と、前記支持部材に設けられ、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように前記検知部の位置を制限する位置決め部と、を備えることを特徴としている。
【0023】
このように、光ファイバセンサを支持する支持部材と、支持部材の位置を固定する固定部材と、支持部材に設けられ、複数の検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように検知部の位置を制限する位置決め部とを備えるから、光ファイバセンサの検知部を所望の位置に設置することを容易にする。これにより、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置可能にする。
【0024】
(9)本発明のセンサ位置決め部材において、前記複数の検知部は、第1の検知部と第2の検知部とを含み、前記第1の検知部と前記第2の検知部とが直交するように、前記位置決め部が設けられることを特徴としている。
【0025】
このように、第1の検知部と第2の検知部と直交するように位置決め部が設けられるから、直交する2方向におけるひずみを計測可能となるような位置に、検知部を正確に配置することが容易となる。また、第1の検知部と第2の検知部の延在方向がコンクリート構造物の表面に平行となるように、応力モニタリングセンサをコンクリート構造物内に設けることによって、コンクリート構造物内部におけるひずみの方向および大きさを容易に把握することができる。
【0026】
(10)本発明のセンサ位置決め部材において、前記複数の検知部が特定の一点を通り平行でない3方向に少なくとも設置されるように、前記位置決め部が設けられることを特徴としている。
【0027】
このように、複数の検知部が、特定の一点を通り平行でない3方向に少なくとも設置されているように、位置決め部が設けられるから、コンクリート構造物内部における主応力を算出可能となる位置に、検知部を正確に配置することが容易となる。
【0028】
(11)本発明のセンサ位置決め部材において、前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、前記第1、第2および第3の検知部が互いに直交するように、前記位置決め部が設けられることを特徴としている。
【0029】
このように、第1、第2および第3の検知部が互いに直交するように、位置決め部が設けられるから、コンクリート構造物内部におけるひずみを3次元的に計測でき、コンクリート構造物中の3次元的なひずみの分布の算出可能な位置に、検知部を正確に配置することが容易となる。
【0030】
(12)本発明のセンサ位置決め部材において、前記複数の検知部は、第1、第2および第3の検知部を含み、前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差し、前記第1の検知部と前記第2の検知部とが交差する平面上において、前記第1の検知部と前記第2の検知部との間に前記第3の検知部が延在するように、前記位置決め部が設けられることを特徴とするとしている。
【0031】
このように、第1の検知部と第2の検知部とが交差するように設けられ、第1の検知部と第2の検知部とが交差する平面上において、第1の検知部と第2の検知部との間に第3の検知部が延在するように設けることが容易となる。そのため、同一平面上に3つの検知部を設けていない場合と比べて、第1、第2および第3の検知部が設けられている平面上におけるひずみの大きさや方向をより正確に把握することができる。
【0032】
(13)本発明のセンサ位置決め部材において、前記固定部材は、前記光ファイバケーブルが挿通可能な挿通部をさらに備える特徴としている。このように、固定部材はケーブルが挿通可能な挿通部をさらに備えるから、特に、複数の光ファイバセンサを保持する場合において、挿通部によって光ファイバケーブルをまとめることができるから、応力モニタリングセンサの取り扱い性が向上する。
【0033】
(14)本発明のセンサ位置決め部材において、前記支持部材と前記固定部材とが分離可能であることを特徴としている。このように、支持部材と固定部材とが分離可能であるから、固定部材を取り外した状態でコンクリート構造物に埋設することができる。特に、セメント系材料を用いて光ファイバセンサの位置を固定した後に、コンクリート構造物に埋設する場合には、固定に用いたセメント系材料と、コンクリート構造物を構成するコンクリートとが一体化するため、コンクリート構造物の強度に影響を与えることがない。
【0034】
(15)本発明の応力モニタリング方法は、光信号を伝送する光ファイバケーブルにひずみを検知する検知部が設けられた複数の光ファイバセンサまたはひずみを検知する検知部が複数設けられた単一の光ファイバセンサを用いて、コンクリート構造物内部の応力をモニタリングする応力モニタリング方法であって、前記光ファイバセンサを支持する支持部材、前記支持部材の位置を固定する固定部材、および前記支持部材に設けられ、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように前記検知部の位置を制限する位置決め部を備えるセンサ位置決め部材を用いて、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように、前記検知部の位置を制限することによって、前記光ファイバセンサの位置決めをするセンサ位置決め工程と、前記位置決めされた光ファイバセンサを、前記コンクリート構造物内に埋設する工程と、前記埋設した光ファイバセンサのひずみを測定する工程と、前記測定したひずみの経時的変化の特性に基づいて、前記コンクリート構造物内に生じた応力を推定する工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
【0035】
このように、位置決め部材を用いて、複数の前記検知部が特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように、前記検知部の位置を制限することによって、前記光ファイバセンサの位置決めをするセンサ位置決め工程を含むから、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することを容易にする。
【0036】
(16)本発明の応力モニタリング方法において、前記検知部を囲繞するように、被覆部により前記光ファイバセンサを被覆する工程と、前記被覆した光ファイバセンサから前記固定部材を取り外す工程とをさらに含むことを特徴としている。
【0037】
このように、光ファイバセンサを埋設するために、被覆部によって、検知部を囲繞するように光ファイバセンサを被覆する工程をさらに含むから、コンクリートを打設する前に、センサ位置決め部材により位置決めされた検知部の位置を、被覆部によって固定できる。これにより、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することがさらに容易となる。
【0038】
また、被覆した光ファイバセンサから固定部材を取り外す工程をさらに含むから、コンクリート構造物に埋設した際に、固定部材を取り外した分、コンクリート構造物を構成するコンクリートの量が多くなり、コンクリート構造物の強度が向上する。
【0039】
(17)本発明の応力モニタリング方法は、前記センサ位置決め工程において、前記光ファイバセンサの損失値が所定の閾値以上になるように、前記光ファイバセンサを前記位置決め部に設置させることを特徴としている。
【0040】
このように、光ファイバセンサを損失値が所定の閾値以上になるように、光ファイバセンサをセンサ位置決め部材に保持させるから、モニタリングに十分な損失値を維持することを可能にする。
【発明の効果】
【0041】
このように、本発明によれば、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することを容易にする。そのため、コンクリート構造物内部におけるひずみの方向や大きさをより正確に把握することができ、コンクリート構造物内部のひび割れなどの損傷状況についても、より正確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】XY平面上において、第1および第2の検知部が直交し、その間に第3の検知部が延在する様子を示す模式図である。
図2図1に示す模式図について、XY平面を正面として見た正面図である。
図3】第1、第2および第3の検知部が互いに直交する様子を示す模式図である。
図4】交点が端部に位置する場合におけるロゼット配線の様子を示す模式図である。
図5A】6本の検知部が互いに交差する様子を示す模式図である。
図5B図5Aに示す模式図におけるB-B断面図である。
図6A】本実施形態におけるセンサ位置決め部材の斜視図である。
図6B】本実施形態における型枠形成部材の斜視図である。
図7】センサ位置決め部材と型枠形成部材とを嵌め合わせた状態を示す図である。
図8】本実施形態における支持部材の概略構成を示す図である。
図9】支持部材の変更例の概略構成を示す図である。
図10】支持部材の変更例の概略構成を示す図である。
図11】センサ位置決め部材の変更例の概略構成を示す模式図である。
図12図10に示すセンサ位置決め部材を横から見た斜視図である。
図13】センサ位置決め部材の変更例の概略構成を示す模式図である。
図14】本実施形態における応力モニタリングセンサの概略構成を示す模式図である。
図15】本実施形態における光ファイバセンサの構成を示す図である。
図16】本実施形態に係る応力モニタリングセンサを、コンクリート構造物内に設置した様子を模式的に示す図である。
図17】本実施形態に係る応力モニタリング方法を示すフローチャートである。
図18】比較例であるひずみゲージが設置された位置を示す図である。
図19】ひずみゲージに対して載荷試験を実施した結果を示すグラフである。
図20】ロゼット配線された応力モニタリングセンサに対して載荷試験を実施した結果を示すグラフである。
図21】3軸配線された応力モニタリングセンサに対して載荷試験を実施した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[検知部を設置する位置について]
本明細書において、光ファイバセンサ10は、光信号を伝送する光ファイバケーブル9にひずみを検知する検知部3を備える。単一の検知部3が設けられた複数の光ファイバセンサ10を用いても良いし、複数の検知部3を備えた単一の光ファイバセンサ10を用いても良い。まず、本発明によって、1または複数の光ファイバセンサ10が備える複数の検知部3が設置される位置について説明する。本発明における複数の検知部3は、特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように設置される。すなわち、複数の検知部3は、2以上の検知部3が特定の一点において互いに交わり、異なる方向に延在するように設置される。
【0044】
図1は、第1および第2の検知部が直交し、その間に第3の検知部が延在する様子を示している。図2は、図1のXY平面をz軸方向から見た正面図である。図3は、第1の検知部、第2の検知部および第3の検知部が互いに直交する様子を示している。なお、図1~3では、検知部3のみを示しており、光ファイバケーブル9については省略している。
【0045】
図1では、ある直方体の頂点を原点とした三次元直交座標系におけるXY平面上において、第1の検知部3Aと第2の検知部3Bとが交点Iで直交している。そして、図2に示すように、第1の検知部3Aとの距離と、第2の検知部3Bとの距離が等しくなるように、第3の検知部3Cが延在している。このような構成とすることで、検知部3AによりX軸方向のひずみの評価ができ、検知部3BによりY軸方向のひずみの評価ができるとともに、主応力についても適切に評価できる。本明細書では、図1に示すように検知部3が配置されることを「ロゼット配線」とも呼ぶ。なお、各検知部3の交差角度については、上述の例に限られない。特定の一点で交差するように、同一平面状に延在する検知部3を3つ配置すれば、少なくとも主応力については適切に評価することができる。
【0046】
図1に示すように3つの検知部3を設置すると、同一平面上に3つの検知部3を設けていない場合と比べて、第1、第2および第3の検知部が設けられている平面上におけるひずみの大きさや方向をより正確に把握することができる。また、第1の検知部3Aと第2の検知部3Bとが直交しているから、コンクリート構造物内部における主応力の算出が容易となる。
【0047】
図3では、図1と同様の三次元直交座標系において、第1の検知部3Aがx軸、第2の検知部3Bがy軸、第3の検知部3Cがz軸と平行になるように、ある特定の一点を交点Iとして互いに直交している。本明細書では、図1に示すように検知部3が配置されることを「三軸配線」とも呼ぶ。
【0048】
このように、第1、第2および第3の検知部が互いに直交するように設けられるから、コンクリート構造物内部におけるひずみを3次元的に計測でき、コンクリート構造物100中の3次元的なひずみの分布の算出を可能にする。また、第1、第2および第3の検知部が互いに直交しているから、ひずみの分布の算出が容易となる。
【0049】
図1、3では、検知部3の中央近傍に交点Iが位置しているが、図4に示すように交点Iは検知部3の端部に位置してもよい。少なくとも検知部3が交差していれば、交点Iの位置に関わらず、交点I近傍の局所的なひずみを複数の検知部3によって検出できる。なお、交点Iを検知部3の中央近傍に配置した場合には、交点Iを中心とした検知範囲が3方向で略等しくなるため、より局所的なひずみを検知することができる。そのため、交点Iが検知部3の中央近傍に位置することが好ましい。
【0050】
また、交点Iを通る検知部3は2本であってもよいが、3本以上であることが好ましい。交点Iを通る検知部3が3本以上であるから、コンクリート構造物100内部における主応力を算出することができる。
【0051】
また、複数の検知部3のうち、交点Iにおいて互いに直交する検知部3が少なくとも1組あることが好ましい。交点Iにおいて互いに直交する検知部3があるから、コンクリート構造物100内部におけるひずみを容易に把握することができる。
【0052】
また、図1では、XY平面上に3本の検知部3が延在するように設けられているが、3つの検知部3が同一平面上に位置していればよく、Z軸方向における位置は特に問わず、紙面奥側に位置してもよいし、YZ平面またはXZ平面に位置してもよい。また、複数の面に検知部3が設けられてもよい。このとき、検知部3が検知するひずみの方向が重複しないように、交点Iを通る検知部3の本数が他の面よりも少ない面があってもよい。
【0053】
加えて、検知部3を6本としてもよい。図5Aは、6本の検知部3が交点Iにて交差する様子を示す図である。交点Iを中心とした三次元直交座標系としたとき、交点Iで直交する3つの各平面において、ロゼット配線と同様に、3つの検知部3が交点Iで交差するように延在する。
【0054】
図5Bは、XY平面における断面図である。なお、XY平面と平行に延在しない検知部3D~Fについては省略している。図5Bに示すように、XY平面では第1の検知部3Aと第2の検知部3Bとが交点Iで直交し、第1の検知部3Aとの距離と、第2の検知部3Bとの距離が等しくなるように、第3の検知部3Cが延在している。
【0055】
XY平面と同様に、YZ平面では第1の検知部3Aと第4の検知部3Dとが交点Iで直交し、第1の検知部3Aとの距離と、第4の検知部3Dとの距離が等しくなるように、第5の検知部3Eが延在している。ZA平面では第2の検知部3Bと第4の検知部3Dとが交点Iで直交し、第2の検知部3Bとの距離と、第4の検知部3Dとの距離が等しくなるように、第6の検知部3Fが延在している。
【0056】
以上の通り、本発明における複数の検知部3は、特定の一点において互いに交わり、平行でない方向に延在するように設置されることにより、多方向のひずみを検出することができる。
【0057】
[センサ位置決め部材の構成]
以下に本実施形態におけるセンサ位置決め部材、応力モニタリングセンサ、および、応力モニタリング方法について順に説明する。
【0058】
図6Aは、第1の型枠形成部材の構成を示す斜視図である。図6Bは、第2の型枠形成部材の構成を示す斜視図である。図7は、対となる第1の型枠形成部材と第2の型枠形成部材とが組み合わさった状態を示す図である。図8は、本実施形態に係る支持部材を示す模式図である。
【0059】
センサ位置決め部材200は、複数の検知部3が特定の一点である交点Iにおいて互いに交わり、平行でない方向に延在するように、光ファイバセンサ10の位置決めをする。図6Aに示す第1の型枠形成部材21を含むセンサ位置決め部材200では、第1の検知部3Aと第2の検知部3Bとが直交し、第1の検知部3Aと第2の検知部3Bとが直交する平面上において、第1の検知部3Aと第2の検知部3Bとの間に第3の検知部3Cが延在するように、各検知部3を位置決め可能な構成となっている。すなわち、図1のように、複数の検知部3を位置決めする。なお、各検知部3の交差角度については特に限定されず、特定の一点で交差するように、同一平面状に延在する3つの検知部3が位置決め可能な構成となっていればよい。
【0060】
センサ位置決め部材200は、図6Aに示す第1の型枠形成部材21と、図6Bに示す第2の型枠形成部材25とを備える。第1の型枠形成部材21と第2の型枠形成部材25とは、それぞれ3枚の板部材205から形成されている。第1の型枠形成部材21は、篏合凹部22を有し、第2の型枠形成部材25は、篏合凸部26を有する。第1の型枠形成部材21と第2の型枠形成部材25とは、篏合凹部22および篏合凸部26を篏合させることで、図7に示すような立方体状の型枠を形成する。
【0061】
また、第1の型枠形成部材21と第2の型枠形成部材25とは、切り欠き部42を有していることが好ましい。切り欠き部42は、型枠形成時に第1の被覆部11を形成する材料を投入可能な投入口201を形成する。投入口201は、材料を投入可能であればよく、切り欠き部42の形態に限られない。型枠形成部材を形成する板部材205に貫通孔を形成し、貫通孔を投入口201としてもよい。
【0062】
第1の型枠形成部材21は、支持部材30と、固定部材40とを備えている。支持部材30は、光ファイバセンサ10を支持する部材であり、固定部材40は、支持部材30の位置を固定する部材である。
【0063】
支持部材30は、光ファイバセンサ10の2か所以上を支持することによって、検知部3を直線状に設置することを容易にする。すなわち、光ファイバセンサ10は、支持部材30によって支持される2か所以上の部分の間に検知部3が位置するように設置される。支持部材30は、例えば、図8に示すような棒状の部材であるが、光ファイバセンサ10を支持できればどのような形状であってもよく、1または複数の部材から構成されていてもよい。
【0064】
また、支持部材30は、検知部3の位置決めをする位置決め部31を備えており、検知部3の位置を制限する。そのため、光ファイバセンサ10を位置決め部31に保持させることで、検知部3の位置がズレることが抑制され、光ファイバセンサ10の設置が容易となる。
【0065】
位置決め部31は、光ファイバセンサ10の位置決めをする観点においては、図7に示す貫通孔であることが好ましい。また、位置決め部31は、光ファイバセンサ10を保持できればよく、図9、10に示すような凹部や凸部であってもよい。また、位置決め部31は、検知部3を設置する位置に合わせて、1つの支持部材30に対して複数設けられてもよい。
【0066】
固定部材40は、複数の支持部材30と結合し、支持部材30の位置を固定する。図6Aに示す第1の型枠形成部材21では、3枚の板部材205のうち、2枚の板部材205が固定部材40であり、それぞれ2つずつ支持部材30が固定されている。センサ位置決め部材200は、3次元的に複数の検知部3の位置を定める必要があるが、支持部材30を固定部材40に固定することによって、複数の検知部3の位置を3次元的に定めることを容易にする。これにより、多方向のひずみを計測する複数の検知部3を、所望の方向に対して直線状に設置することを容易にする。
【0067】
また、第1の型枠形成部材21は、挿通部41を備えることが好ましい。挿通部41は、光ファイバセンサ10を挿通する部分であり、例えば、固定部材40の外周近傍に挿通孔を設けることで形成されてもよい。また、挿通部41は、型枠形成時に挿通孔を形成するように、固定部材40の外周部に形成される凹部や切り欠きであってもよい。センサ位置決め部材200が複数の光ファイバセンサ10を保持する場合、挿通部41にて光ファイバセンサ10をまとめることで応力モニタリングセンサ1の取り扱い性が向上する。
【0068】
また、センサ位置決め部材200は、どのような材料および形成方法によって形成されてもよいが、3Dプリンター等を用いて一体成型されることが好ましい。このとき、支持部材30と固定部材40とを、手で分離可能な程度の強度を有する樹脂で構成されることが好ましい。なお、支持部材30の断面積が小さければ、3Dプリンターで通常用いられる樹脂によって、手で簡単に分離できる。他方、支持部材30と固定部材40とが別々に形成されてもよく、接続部を介して接続および分離可能な構成であってもよい。
【0069】
また、センサ位置決め部材200は、立方体状だけでなく、矩形状、多角形状、球状や柱状等であってもよい。センサ位置決め部材200が立方体状であるとき、1辺の長さが5cm以下であることが好ましい。1辺の長さが5cm以下であるから、一般的なコンクリート構造物100の過密鉄筋部への設置が容易となり、かつ、応力モニタリングセンサ1の設置によってコンクリート構造物100の強度に与える影響についても小さくすることができる。
【0070】
センサ位置決め部材200は、図11図12に示すように、3本の検知部3が互いに直交するように形成されてもよい。図11図12は、図3に示すように、3本の検知部3が互いに直交するように複数の検知部3の位置決めをする第1の型枠形成部材21であり、図6Bに示す第2の型枠形成部材25と対になるように作製されている。図11図12に示す第1の型枠形成部材21は、第1の型枠形成部材21を形成する3枚の板部材205のすべてが固定部材40であり、各板部材205にそれぞれ2つずつ支持部材30が固定されている。
【0071】
また、センサ位置決め部材200は、図13に示すように、6本の検知部3が交点Iにて交差するように形成されてもよい。図13は、図5Aに示すように、6本の検知部3が交点Iにて交差するように複数の検知部3の位置決めをする第1の型枠形成部材21である。図13では、1本の光ファイバセンサ10を保持した状態を示しており、篏合凹部22や挿通部41、切り欠き部42については省略している。
【0072】
図13に示す第1の型枠形成部材21は、図11図12と同様に、第1の型枠形成部材21を形成する3枚の板部材205のすべてが固定部材40であり、各板部材205にそれぞれ2つずつ支持部材30が固定されている。他方、図11図12に示す第1の型枠形成部材21とは、1つの支持部材30に設けられる位置決め部31の数が異なっている。図11図12に示す第1の型枠形成部材21では、各支持部材30に対して位置決め部31が1つ設けられているが、図13に示す第1の型枠形成部材21では、各支持部材30に2つの位置決め部31が設けられている。
【0073】
上記では、第1の型枠形成部材21だけに支持部材30が形成される場合について説明したが、第1の型枠形成部材21および第2の型枠形成部材25の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0074】
また、センサ位置決め部材200は、検知部3が所望の位置となるように保持可能であればよく、支持部材30と固定部材40のみであってもよい。すなわち、型枠を形成する固定部材40以外の板部材205が設けられてなくてもよく、第2の型枠形成部材25がなくてもよい。しかしながら、後述する第1の被覆部11の形成が困難であるため、板部材205によって型枠を形成する形態が好ましい。
【0075】
(応力モニタリングセンサの構成)
図14は、本実施形態に係る応力モニタリングセンサの概略構成を示す図である。図15は、光ファイバセンサ10の概略構成を示す図である。図14では、応力モニタリングセンサのうち、検知部3の部分にハッチングを付している。なお、本実施形態では、FBGセンサである光ファイバセンサ10を用いた場合について説明する。
【0076】
応力モニタリングセンサ1は、交点Iにおいて互いに交わり、平行でない方向に延在するように設置された検知部3を有し、多方向のひずみを計測する。応力モニタリングセンサ1は、1または複数の光ファイバセンサ10と、支持部材30とを備えている。
【0077】
支持部材30は、上述した通り、光ファイバセンサ10を支持する部材である。応力モニタリングセンサ1は、支持部材30だけでなく、センサ位置決め部材200を構成する部材をさらに有していてもよい。
【0078】
また、応力モニタリングセンサ1は、光ファイバセンサ10を保護する被覆部を有していてもよい。例えば、応力モニタリングセンサ1は、光ファイバセンサ10の検知部3の周辺を被覆する第1の被覆部11と、光ファイバケーブル9を被覆する第2の被覆部12とを有しても良い。
【0079】
第1の被覆部11は、セメント系材料または樹脂で構成されている。第1の被覆部11を構成するセメント系材料または樹脂は、応力モニタリングセンサ1を設置するコンクリート構造物に用いるコンクリートと同程度以上の強度を有する材料であれば良い。また、第1の被覆部11にセメント系材料を用いる場合、第1の被覆部11がひび割れて水分や塩分などの劣化因子が侵入することを防ぐため、収縮の小さいまたは無収縮モルタルとすることがより好ましい。
【0080】
第1の被覆部11は、検知部3を覆うのに十分な厚みを有することが好ましい。例えば、検知部3が10mmの場合には、第1の被覆部11の厚さも10mmより大きいことが好ましく、検知部3の厚さに応じて、検知部3が露出しないように検知部3の厚さと同程度以上の厚みと有することが好ましい。
【0081】
また、交点Iで互いに交わる複数の検知部3を覆うように、矩形状、多角形状、球状や柱状を形成するように、第1の被覆部11が設けられることがより好ましい。特に矩形状に形成される場合には、第1の被覆部11の表面に平行となるように検知部3を設けることによって、第1の被覆部11によって検知部3の位置が外部から見えずとも、検知部3をコンクリート構造物100の所望の位置に設置しやすくなる。
【0082】
第1の被覆部11が立方体状であるとき、1辺の長さが1辺の長さが5cm以下であることが好ましい。1辺の長さを5cm以下とした場合には、一般的なコンクリート構造物100の過密鉄筋部への設置が容易となり、かつ、応力モニタリングセンサ1の設置によってコンクリート構造物100の強度に与える影響についても小さくすることができる。しかしながら、1辺の長さは特に限定されず、当該配筋の間に配置可能な長さであればよく、例えば、コンクリート構造物100の配筋の過密度合に応じて、5cmより大きくしてもよい。
【0083】
第2の被覆部12は、図15に示すように、少なくとも検知部3除く部分にて光ファイバケーブル9を保護することが好ましい。より好ましくは、少なくともセンサ位置決め部材200に保持されている部分を除いて光ファイバケーブル9を保護することであり、第2の被覆部12に保護された光ファイバセンサ10が曲げにくくなりやすいことから、光ファイバセンサ10の設置を容易にする。第2の被覆部12は、例えば、円筒状であり、光ファイバケーブル9が挿通可能な保護チューブであるが、光ファイバケーブル9の表面をコーティングすることで形成されてもよい。
【0084】
第2の被覆部12の材料は、フッ素樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、TPEE(熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、ハイトレル)、高耐熱柔軟性エラストマー樹脂、PI(ポリイミド)樹脂、PU(ポリウレタン)樹脂等が挙げられるが、これに限らない。また、第2の被覆部12の内径は0.3~0.5mm、かつ外径は1mm以下が好ましい。
【0085】
[応力モニタリングセンサのコンクリート構造物への設置例]
図16は、コンクリート構造物100内部に埋設された応力モニタリングセンサの様子を示す図である。コンクリート構造物100は、横方向や縦方向に鉄筋101を備えている。光ファイバセンサを設置する位置は、柱、梁など構造物の主要構造部が好ましい。図16は、3本の光ファイバセンサから応力モニタリングセンサが構成されている場合を示す図である。図16では、複数の検知部3および第1の被覆部11については模式的に示されており、支持部材30については省略されている。
【0086】
応力モニタリングセンサ1は、計測器80と接続している。計測器80は、応力モニタリングセンサ1が有する各光ファイバセンサ10に接続されており、検知部3にて検知したひずみを測定する。計測器80は、光ファイバセンサによるひずみを測定できれば良く、地震時の振動モニタリングを行なう場合には、測定周波数が100Hz以上のものが好ましく、より好ましくは1kHZ以上である。
【0087】
事前にセンサの載荷試験を実施し、応力と光ファイバセンサのひずみの関係を求めてお
くことにより、その部位の応力を把握することもできる。また、損傷の有無を確認する場
合には、ひずみをモニタリングし、残存ひずみで損傷が生じているかを把握することがで
きる。
【0088】
また、応力モニタリングセンサ1は、図16に示すように、1つの応力モニタリングセンサ1によりコンクリート構造物100内部の複数の場所でひずみを計測できるように構成されてもよい。すなわち、検知部3の両端から光ファイバケーブル9が伸びてもよい。このとき、1つのセンサ位置決め部材200が有する挿通部41が2以上であってもよい。
【0089】
[応力モニタリング方法]
次に、本実施形態に係る応力モニタリング方法について説明する。図17は、本実施形態に係る応力モニタリング方法を示すフローチャートである。
【0090】
まず、上述したセンサ位置決め部材200を用いて、複数の検知部3が交点Iにおいて互いに交わり、平行でない方向に延在するように、検知部3の位置を制限することによって、光ファイバセンサ10の位置決めをする(ステップS1)。このとき、2以上の位置決め部31の間に検知部3が位置するように位置決めをする。これにより、検知部3が直線状に設置できる。
【0091】
また、センサ位置決め部材200に光ファイバセンサ10を設置する際に、光ファイバセンサ10の伝搬光の損失値が所定の閾値以上になるように設置することが好ましい。すなわち、光ファイバセンサ10の損失値が所定の閾値以上であることを確認しながら、光ファイバセンサ10を設置する。所定の閾値とは、応力のモニタリングに十分な損失値のことである。例えば、複数の光ファイバケーブル9を挿通部41に挿通する場合、各光ファイバケーブルに曲げが生じることになるが、光ファイバセンサ10の損失値が所定の閾値以上であることを確認しながら、各光ファイバケーブル9を設置することで、最小曲げ半径以内の範囲であっても、ひずみを取得することができる。なお、損失値については、測定機器の種類等によって誤差が生じる可能性があるため、所定の閾値を定める際には、応力モニタリングセンサ1を作製する前に損失値を変えた複数の応力モニタリングセンサ1を試作し、所定の閾値の目処をつけることが望ましい。
【0092】
応力モニタリングセンサ1を構成する光ファイバセンサ10は1または複数であってもよいが、光ファイバセンサ10の損失値を所定の閾値以上にするためには、複数の光ファイバセンサ10から構成されることが好ましい。複数の検知部3を有する1つの光ファイバセンサ10をセンサ位置決め部材200に保持させる場合には、曲げを抑えるために、コンクリート構造物100に設置可能な範囲でセンサ位置決め部材200を大きくしてもよい。
【0093】
次に、検知部3を囲繞するように、第1の被覆部11を形成する(ステップS2)。第1の被覆部11は、第1の被覆部11の材料を投入口201から充填することで形成される。なお、第2の被覆部12の形成は、第1の被覆部の形成(ステップS2)とともに行われても良いが、光ファイバセンサの設置(ステップS1)より前に行なわれることが好ましい。
【0094】
次に、第1の被覆部11が形成された後に、固定部材40を取り外す(ステップS3)。固定部材40の取り外しは、手で取り外すことができ、表面を加工するために、カッターやニッパーなどの工具を補助として用いてもよい。固定部材40を取り外すことで、セメント系材料からなる第1の被覆部11と、コンクリート構造物を構成するコンクリートとが一体化するため、コンクリート構造物100の強度に影響を与えることがない。
【0095】
次に、応力モニタリング対象となるコンクリート構造物の内部に応力モニタリングセンサを埋設する(ステップS4)。応力モニタリングセンサ1は、コンクリート構造物100を形成する型枠のなかに設置され、その状態のままコンクリートを打設されることでコンクリート構造物100内部に埋設される。
【0096】
次に、埋設した応力モニタリングセンサのひずみを測定する(ステップS5)。応力モニタリングセンサに接続された計測器80によって、検知部3が検知したひずみが計測される。
【0097】
次に、計測されたひずみから主応力を算出する(ステップS6)。交点Iで交差し、同一平面上に延在する3つ以上の検知部がある場合に、計測されたひずみから主応力の大きさや方向を算出することができる。
【0098】
[実施例]
次に、本実施形態に係る応力モニタリングセンサの性能について検証した。本実施例で用いた応力モニタリングセンサ1には、上述した応力モニタリング方法におけるステップS1~S3に基づいて作製された応力モニタリングセンサを用いた。また、図6Aに示すセンサ位置決め部材を用いて作製した応力モニタリングセンサを実施例1とし、図11に示すセンサ位置決め部材を用いて作製した応力モニタリングセンサを実施例2とした。実施例1および2では、第1の被覆部11が一辺4cmとなる立方体を形成するように作製した。また、比較例として、ひずみゲージを使用した。
【0099】
表1は、実施例に係る第1の被覆部を構成するコンクリートの配合を示す表である。表1に示すように、「W」は「水道水(密度1g/cm3)」である。また、「PM-A」は、ダクタル(登録商標、太平洋セメント社製)のセメントであるダクタルプレミックスA」であり、「PM-B」は、「ダクタル(登録商標、太平洋セメント社製)の細骨材であるダクタルプレミックスB」である。ダクタル(登録商標、太平洋セメント社製)は、超高強度繊維補強コンクリートであるが、繊維を混入させずに高流動高強度のセメント系材料として使用した。
【表1】
【0100】
比較例では、一辺が4cmとなる立方体状の第1の被覆部の表面に、図18に示すような位置にひずみゲージを貼り付けた。つまり、第1のひずみゲージ500Aと第2のひずみゲージ500Bとが交点Iで直交し、第1のひずみゲージ500Aとの距離と、第2のひずみゲージ500Bとの距離が等しくなるように、第3のひずみゲージ500Cが延在するように設置した。第1の被覆部にひずみゲージを貼りつけた後に、耐圧試験機でセンサの載荷試験を実施した。図19は、比較例の結果を示している。
【0101】
実施例1および2では、第1の被覆部11を形成し、固定部材を取り外した後に、耐圧試験機でセンサの載荷試験を実施した。図20および21は、耐圧試験機で載荷試験を実施した結果を示すグラフであり、図20は実施例1の結果を示しており、図21は実施例2の結果を示している。
【0102】
比較例において、最も大きい荷重がかかったときに測定された横ひずみは24μであり、縦ひずみは-176μであった。また、実施例1において、最も大きい荷重がかかったときに測定された横ひずみは、27μであり、縦ひずみは-176μであった。実施例2において、最も大きい荷重がかかったときに測定された横ひずみは43μであり、縦ひずみは-254μであった。
【0103】
どちらの実施例についても、弾性域における縦ひずみと横ひずみの関係を確認すると、横ひずみが縦ひずみの1/6程度の大きさになった。第1の被覆部の表面に貼り付けたひずみゲージの縦ひずみに対する横ひずみの関係も1/6程度であることから、応力モニタリングセンサによって、正確にひずみを取得できることが確認された。
【0104】
以上のことから、本発明に係る応力モニタリングセンサは、多方向のひずみを計測する場合であっても、所望の方向に対して直線状に設置することを容易にすることができ、測定されるひずみについても、ひずみゲージと同程度の確度であることが確認できた。
【符号の説明】
【0105】
1 応力モニタリングセンサ
3 検知部
3A 第1の検知部
3B 第2の検知部
3C 第3の検知部
9 光ファイバケーブル
10 光ファイバセンサ
11 第1の被覆部
12 第2の被覆部
21 第1の型枠形成部材
22 篏合凹部
25 第2の型枠形成部材
26 篏合凸部
30 支持部材
31 位置決め部
40 固定部材
41 挿通部
42 切り欠き部
80 計測器
100 コンクリート構造物
101 鉄筋
200 センサ位置決め部材
201 投入口
205 板部材
500A 第1のひずみゲージ
500B 第2のひずみゲージ
500C 第3のひずみゲージ
I 交点
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21