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特開2023-34993ロッドレンズアレイ、センサユニット、読取装置、検査装置および記録システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034993
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ロッドレンズアレイ、センサユニット、読取装置、検査装置および記録システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/028 20060101AFI20230306BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H04N1/028 Z
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141550
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000104629
【氏名又は名称】キヤノン・コンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】黛 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】霜田 修一
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
【テーマコード(参考)】
5C051
【Fターム(参考)】
5C051AA01
5C051BA04
5C051DA03
5C051DB01
5C051DB04
5C051DB22
5C051DB28
5C051DB35
5C051DC07
5C051FA01
(57)【要約】
【課題】ロッドレンズアレイを縮小光学系に適用するのに有利な技術を提供する。
【解決手段】複数のレンズ素子が、前記複数のレンズ素子の光軸の法線方向に直線状に並ぶロッドレンズアレイであって、前記複数のレンズ素子は、第1レンズ素子と、前記第1レンズ素子の形状に対して一部に欠損が生じている第2レンズ素子と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ素子が、前記複数のレンズ素子の光軸の法線方向に直線状に並ぶロッドレンズアレイであって、
前記複数のレンズ素子は、第1レンズ素子と、前記第1レンズ素子の形状に対して一部に欠損が生じている第2レンズ素子と、を含むことを特徴とするロッドレンズアレイ。
【請求項2】
前記複数のレンズ素子は、複数の前記第1レンズ素子と複数の前記第2レンズ素子とを含み、
2つの前記第1レンズ素子の間に、2つ以上の前記第2レンズ素子が配されていることを特徴とする請求項1に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項3】
前記第2レンズ素子の一端側の面が、前記第1レンズ素子の一端側の面よりも粗いことを特徴とする請求項1または2に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項4】
前記第2レンズ素子の一端側の面が、前記第1レンズ素子の一端側の面に対して傾いていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項5】
前記第2レンズ素子の一端側の面の形状が、円錐状であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項6】
前記第2レンズ素子の一端側の面の前記法線方向に対する傾きが、前記第1レンズ素子の取込角の角度以上であることを特徴とする請求項4または5に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項7】
前記第2レンズ素子の一端側の面の前記法線方向に対する傾きが、9°以上であることを特徴とする請求項4または5に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項8】
前記第1レンズ素子の形状に対して欠損が生じている前記第2レンズ素子の一端側の面が、遮光部材によって覆われていることを特徴とする請求項3乃至7の何れか1項に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項9】
前記第2レンズ素子が、一端と他端との間で連続していないことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のロッドレンズアレイ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のロッドレンズアレイと、
前記ロッドレンズアレイから出射される光を受光するためのセンサと、
前記ロッドレンズアレイと前記センサとを収容するフレームと、
を含むことを特徴とするセンサユニット。
【請求項11】
前記第1レンズ素子の形状に対して欠損が生じている前記第2レンズ素子の一端側の面とは反対側の他端側の面が、前記センサと対向していることを特徴とする請求項10に記載のセンサユニット。
【請求項12】
照明装置と、
前記照明装置によって照明された被照明体の画像情報を取得するためのイメージセンサと、を含む読取装置であって、
前記イメージセンサが、請求項10または11に記載のセンサユニットを含むことを特徴とする読取装置。
【請求項13】
前記第1レンズ素子の形状に対して欠損が生じている前記第2レンズ素子の一端側の面が、前記被照明体に対向するように配されていることを特徴とする請求項12に記載の読取装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の読取装置と、
前記読取装置で取得した画像情報を用いて前記被照明体の良否を判定する判定器と、
を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項15】
請求項12または13に記載の読取装置と、
前記読取装置で取得した画像情報を記録媒体に記録する記録装置と、
を含むことを特徴とする記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドレンズアレイ、センサユニット、読取装置、検査装置および記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光軸に直交する方向に屈折率分布を持った光ファイバを多数直線状に配列した、正立等倍像を形成するレンズアレイが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-342131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるようなレンズアレイを、被写界深度を深くするために縮小光学系に適用すると、近接する複数のレンズによって合成される像の重なりは、等倍光学系に適用する場合よりも発生しやすくなってしまう。
【0005】
本発明は、ロッドレンズアレイを縮小光学系に適用するのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係るロッドレンズアレイは、複数のレンズ素子が、前記複数のレンズ素子の光軸の法線方向に直線状に並ぶロッドレンズアレイであって、前記複数のレンズ素子は、第1レンズ素子と、前記第1レンズ素子の形状に対して一部に欠損が生じている第2レンズ素子と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、ロッドレンズアレイを縮小光学系に適用するのに有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るロッドレンズアレイの構成例を示す斜視図。
図2図1のロッドレンズアレイを用いたセンサユニットの構成例を示す斜視図。
図3図1のロッドレンズアレイの構造例を示す断面図。
図4図1のロッドレンズアレイの構造例を示す断面図。
図5図1のロッドレンズアレイの構成例を示す断面図。
図6図1のロッドレンズアレイの構成例を示す断面図。
図7図2のセンサユニットの変形例を示す図。
図8図1のロッドレンズアレイが組み込まれた読取装置、検査装置および記録システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1(a)~図8(b)を参照して、本開示の実施形態によるロッドレンズアレイについて説明する。図1(a)、図1(b)は、本実施形態のロッドレンズアレイ100の構成例を示す斜視図である。複数のレンズ素子101が、複数のレンズ素子(ロッドレンズ)101の光軸Lの法線方向N(光軸と垂直な配列方向)に沿って直線状に(一列に)並ぶことによって、ロッドレンズアレイ100が構成されている。レンズ素子101は、後述するように形状が互いに異なるレンズ素子101aとレンズ素子101bとを含むが、特に区別しない場合はレンズ素子「101」と表記し、区別が必要な場合は、レンズ素子101「a」、レンズ素子101「b」のように添え字する。また、本実施形態のロッドレンズアレイ100を構成するレンズ素子101(ロッドレンズ)は、入射側の面も出射側の面もいずれも平面であり、レンズ素子内に屈折率分布を持つレンズ素子である。さらに、このレンズ素子101は、物体の正立像を像面上に結ぶ(中間像を結ぶ)レンズ素子である。
【0011】
複数のレンズ素子101は、結合材102によって結合されている。図1(a)、1(b)に示される構成において、複数のレンズ素子101が1列に並ぶ例が示されているが、これに限られることはない。2列以上のレンズ素子101が、法線方向Nに沿って直線状に並んでいてもよい。レンズ素子101の列数によらず、ロッドレンズアレイ100は、図1(a)、1(b)に示される法線方向Nに沿った方向が、長手方向の形状を有しうる。
【0012】
複数のレンズ素子101は、図1(a)、1(b)に示されるように、レンズ素子101aと、レンズ素子101aの形状に対して一部に欠損が生じているレンズ素子101bと、を含む。レンズ素子101aは、例えば、光軸Lの法線方向に同心円状に屈折率分布を有することによってレンズ作用を示す。つまり、レンズ素子101aにおいて、一端側の面から光が入射し、他端の側において(他端の側の面から出射した後に)結像する。レンズ素子101bは、基本的にはレンズ素子101aと同じレンズ素子である。しかしながら、後述する加工を行うことによって、レンズ素子101aの形状に対して一部に欠損が生じている。結果として、レンズ素子101bにおいては、一端側の面から入射する光の少なくとも一部が遮光され、他端の側においてレンズ素子101aよりも結像し難くなっている。ここで、レンズ素子101bの一端側(入射側)の面から入射した光のほぼすべてが、入射したレンズ素子101bの壁面(レンズ素子間の接着剤)で減衰したり、隣接するレンズ素子に入射したりすることによって、結像に寄与しなくてもよい。
【0013】
図2は、ロッドレンズアレイ100を用いたセンサユニット300を示す図である。センサユニット300は、図1(a)、1(b)に示されるロッドレンズアレイ100と、ロッドレンズアレイ100から出射される光を受光するためのセンサ201と、ロッドレンズアレイ100とセンサ201とを収容するフレーム301と、を含む。センサ201は、基板202の上に配されることによってセンサアセンブリ200を構成し、それぞれのセンサ201の位置が固定されうる。また、フレーム301によって、ロッドレンズアレイ100とセンサアセンブリ200を構成するセンサ201との間の位置関係が決定される。光は、図2に示される矢印の方向に入射し、ロッドレンズアレイ100を通りセンサ201上に結像する。
【0014】
センサユニット300において、例えば、凸凹がある被写体の撮像など、ロッドレンズアレイ100の被写界深度を深くする必要性が生じる場合がある。被写界深度を深くするために複数のレンズ素子101が並ぶロッドレンズアレイ100を縮小光学系に適用した場合、近接する複数のレンズ素子101によって合成される像の重なりの影響が大きくなってしまう。そこで、本実施形態において、複数のレンズ素子101のうち一部のレンズ素子101bが像を形成しない、または、レンズ素子101bが像を形成することを抑制することによって、複数のレンズ素子101が形成する像の重なりの影響を抑制する。例えば、被写体に対して像を取り込める範囲は、隣り合うレンズ素子101aにおいて互いに一部が重なっていてもよい。一方、1つのレンズ素子101aがセンサ201上に結像する範囲において、他のレンズ素子101aが結像しないように、レンズ素子101aおよびレンズ素子101bを配する。ロッドレンズアレイ100がこのような構成を備えることによって、像の重なりの影響を抑制しつつ、被写体の全体を撮像することができる。ここで、本実施形態の縮小光学系の結像倍率は0.3倍程度であるがその限りではなく、この結像倍率は0.05倍以上0.9倍以下(より好ましくは0.15倍以上0.35倍以下)であることが望ましい。
【0015】
例えば、図2に示されるように、2つのレンズ素子101aの間に、2つ以上のレンズ素子101bが配されていてもよい。2つのレンズ素子101aの間に配されるレンズ素子101bの数は、レンズ素子101の取込角やセンサ201に配される光電変換素子などの配置ピッチなどに応じて適宜設計されればよい。2つのレンズ素子101aの間に配されるレンズ素子101bの数は、何れの2つのレンズ素子101aの間において同じであってもよいし、センサ201の配置などに応じて一部で異なっていてもよい。例えば、2つのレンズ素子101aの間に対応する位置にセンサ201の継ぎ目がある場合など、2つのレンズ素子101aの間に対応する位置にセンサ201の継ぎ目がない場合よりも2つのレンズ素子101aの間のレンズ素子101bの数が多くなりうる。
【0016】
図1(a)、1(b)に戻り、レンズ素子101aの形状に対して一部に欠損が生じているレンズ素子101bについて、さらに説明する。図1(a)に示されるように、レンズ素子101bが、一端と他端との間で連続しなくなるように、レンズ素子101bにスリット(穴)111を設けても良い。例えば、図1(a)に示されるようにスリットを設けることによって、レンズ素子101bは、被写体を結像させる(被写体の像を結ぶ)ことが難しくなる。一方、レンズ素子101aに対応する位置にスリット111は設けられず、レンズ素子101aは、一端と他端との間で連続しており被写体を結像させる(被写体の像を結ぶ)ことが可能である。
【0017】
また、図1(b)に示されるように、レンズ素子101bの一端側の面が、レンズ素子101aの一端側の面や他端側の面よりも粗くてもよい。例えば、レンズ素子101aに対して、やすりなどを用いて一端側の面を粗面化することによって、レンズ素子101bを得ることができる。粗面化された一端側の面は、図2に示されるように、センサユニット300において光が入射する側に配されうる。レンズ素子101bの一端側の面が粗面化されることによって、入射する光が様々な方向に屈折し、結像し難くなる。例えば、入射する光がレンズ素子101bの一端側の面で屈折し、レンズ素子101bから結合材102へ入射した場合、結合材102において光は吸収されうる。このように、結合材102が遮光材として機能してもよい。結合材102は、複数のレンズ素子101を結合するための接着剤などでありうる。この接着剤に黒色の塗料などを加えることによって、結合材102に光が吸収され、光がレンズ素子101bを通り抜け難くなる。また、例えば、結合材102が透明な場合であっても、レンズ素子101bから結合材102に入射する光は、本来の結合位置からかけ離れた位置に進むため、結像に寄与し難くなる。また、例えば、レンズ素子101bの両端が粗面化されていてもよい。また、図1(a)に示されるスリット111と、図1(b)に示される端部の粗面化と、が組み合わされていてもよい。
【0018】
また、例えば、図3(a)、3(b)に示されるように、レンズ素子101bの一端側の面の形状が、円錐状であってもよい。例えば、レンズ素子101bのそれぞれに対応する位置にドリルなどの切削工具151を配し、切削することによってレンズ素子101bを形成してもよい。照明装置401によって照明された被照明体411から入射する光は、レンズ素子101aを透過する(図3(b)において、レンズ作用は描かれていない。以下の図も同様である。)。一方、レンズ素子101bに入射した光は、レンズ素子101bの一端側の面が円錐状になっているため、図3(b)に示されるように、レンズ素子101bと結合材102との界面方向に屈折し、レンズ素子101bを通り抜け難くなる。つまり、レンズ素子101bは、結像し難くなる。
【0019】
次に、レンズ素子101bの一端側の面の角度について説明する。図3(b)に示されるレンズ素子101bの一端側の面の法線方向(例えば、法線方向N)に対する傾きθが、レンズ素子101aの取込角の角度以上であってもよい。ここで、取込角とは、レンズ素子101aの光入射面と光軸とが交わる位置に入射する光束のうちレンズ素子101で結像可能な光束と、光軸とがなす角度のうち最大の角度のことである。また、取込角は開口角と称する場合もある。この取込角(開口角)は、本実施形態では9度だが12度でもよく、好ましくは3度以上21度以下(4.8度以上12.3度以下)であることが望ましい。この傾きθを取込角の1.5倍以上の角度にすることによって、レンズ素子101bに入射する光のほぼすべてを、センサ201に対して遮光する(センサ201に入射させないようにする)ことができる。さらに、レンズ素子101bの一端側の面の法線方向に対する傾きθが、レンズ素子101aの取込角の2倍以上の角度(更に好ましくは3倍以上)であってもよい。また、この傾きθは取込角の6倍以下(より好ましくは5倍以下)であることが望ましい。ロッドレンズアレイ100に用いられるレンズ素子101は、上述のように9°程度の取込角を有しうる。したがって、レンズ素子101bの一端側の面の法線方向に対する傾きθが、13.5°以上であってもよい。さらに、マージンを考慮し、レンズ素子101bの一端の法線方向Nに対する傾きθが、18°以上(好ましくは27°以上)であってもよい。図3(a)、3(b)では、ドリルなど先端が90°程度の傾きを有する切削工具151で加工を行い、傾きθが45°程度である場合を示している。
【0020】
図3(a)、3(b)に示される構成において、レンズ素子101bのそれぞれに対応するように円錐状の凹部が形成されているが、これに限られることはない。例えば、図4(a)、4(b)に示されるように、1つのレンズ素子101bに複数の円錐状の凹部が形成されていてもよいし、2つ以上のレンズ素子101bにわたり1つの円錐状の凹部が形成されていてもよい。
【0021】
また、例えば、図5(a)~5(c)に示されるように、レンズ素子101bの一端側の面が、レンズ素子101aの一端側の面に対して傾いていてもよい。ここで、図3(a)~4(b)において、図の横方向に複数のレンズ素子101が並ぶ断面が示されているが、図5(a)~5(c)において、図の奥行き方向に複数のレンズ素子101が並ぶ断面が示されている。
【0022】
図5(a)に示されるように、レンズ素子101aに入射する光は、レンズ素子101aを透過する。一方、レンズ素子101bは、エンドミルなどの切削工具151を用いて、斜めに切削されている。そのため、レンズ素子101bに入射した光は、図5(b)に示されるように、レンズ素子101bと結合材102との界面方向に屈折し、レンズ素子101bを通り抜け難くなる。つまり、レンズ素子101bは、結像し難くなる。上述のように、結合材102が遮光材として機能してもよい。また、レンズ素子101bは、図5(b)に示されるように、一方の方向へ斜めに傾いているだけでなく、図5(c)に示されるように、複数のレンズ素子101が並ぶ方向とは交差する両方向に斜めに傾いていてもよい。上述と同様に、図5(b)、5(c)に示されるレンズ素子101bの一端の光軸の法線方向に対する傾きθが、レンズ素子101aの取込角の角度以上であってもよい。さらに、レンズ素子101bの一端の光軸の法線方向に対する傾きθが、レンズ素子101aの取込角の3倍以上の角度であってもよい。また、レンズ素子101bの一端の法線方向Nに対する傾きθが、9°以上であってもよいし、さらに、27°以上であってもよい。
【0023】
このように、複数のレンズ素子101のうち一部のレンズ素子(レンズ素子101b)が結像し難くなるように加工する。これによって、近接する複数のレンズによって合成される像の重なりに起因する画質の低下を抑制しつつ、ロッドレンズアレイ100を縮小光学系に適用し、被写界深度を深くすることが可能になる。
【0024】
センサユニット300において、レンズ素子101a、101bを備えるロッドレンズアレイ100を用いずに、複数のレンズ素子を所定の間隔を開けて配置することが考えられる。しかしながら、φ1.0mm程度のレンズ素子をセンサ201に配される光電変換素子などの位置に応じて、所定の間隔で光軸を揃えて配置するためには高い精度が求められ、コストアップの原因にもなりうる。一方、本実施形態では、センサユニット300などに一般的に用いられるロッドレンズアレイを加工するため、センサユニット300などにロッドレンズアレイ100を組み付ける際の精度は、通常のセンサユニット300を作製する際と同等でありうる。また、ロッドレンズアレイ100は、汎用的なロッドレンズアレイに上述のスリット111の形成やレンズ素子101aの一端側の面の粗面化、円錐状の凹部の形成や面を傾かせるなど、比較的容易な加工の追加で作製できるため、コストに対する影響も抑制できる。
【0025】
また、一部のレンズ素子101を遮光するために、汎用的なロッドレンズアレイに配された複数のレンズ素子101のうち一部のレンズ素子の上に遮光用部材を配置することが考えられる。例えば、遮光用部材として、ロッドレンズアレイを覆うように、一部が開口した金属板や樹脂板などを配することが考えられる。しかしながら、遮光用部材は、構造の違いなどから、ロッドレンズアレイとは異なる線膨張率を有する可能性が高い。そのため、温度などの環境変化やセンサユニット300の長尺化に対して、ロッドレンズアレイ100のそれぞれのレンズ素子101に対する遮光用部材の位置合わせは困難である。一方、本実施形態において、ロッドレンズアレイ100に配されたレンズ素子101自体に加工が行われるため、環境変化やセンサユニット300の長尺化に対して容易に対応できる。
【0026】
次いで、ロッドレンズアレイ100の変形例について、図6を用いて説明する。レンズ素子101bが結像し難くなるように、レンズ素子101aの形状に対して欠損が生じているレンズ素子101bの一端側の面が、遮光部材112によって覆われていてもよい。例えば、図6に示されるように、黒色などの着色された樹脂が、レンズ素子101bの一端側の面の欠損が生じている部分に埋め込まれていてもよい。また、例えば、レンズ素子101bの一端側の面の欠損が生じている部分に遮光部材112として金属膜が形成されていてもよい。遮光部材112は、レンズ素子101bの端面の全体を覆っている必要はなく、一部だけ覆っていてもよい。遮光部材112が配されることによって、光がよりレンズ素子101bを通り抜け難くなる。
【0027】
図7(a)、7(b)は、図2に示されるセンサユニット300の変形例を示す図である。図2に示されるセンサユニット300と同様に、図7(a)に示されるセンサユニット300は、ロッドレンズアレイ100と、ロッドレンズアレイ100から出射される光を受光するためのセンサ201と、ロッドレンズアレイ100とセンサ201とを収容するフレーム301と、を含む。図7(a)、7(b)に示される構成において、ロッドレンズアレイ100に配されたレンズ素子101bの一端側の面は、図3(a)~5(c)に示されるように、例えば、切削工具151を用いて切削され、凹部が形成されている。また、図2に示される構成と同様に、レンズ素子101aの形状に対して欠損(凹部)が生じているレンズ素子101bの一端側の面とは反対側の他端側の面が、センサ201に対向するように配されている。
【0028】
このとき、図7(a)、7(b)に示されるように、レンズ素子101bの凹部を備える一端側が、ロッドレンズアレイ100とフレーム301との間の位置合わせに使用されてもよい。図7(a)は、センサユニット300の分解斜視図、図7(b)は、図7(a)の部分160の断面図である。上述のように、レンズ素子101bの一端側の面は、凹部を備えている。このレンズ素子101bの凹部に嵌合するように、フレーム301には基準ピン302が配されている。ロッドレンズアレイ100をフレーム301に組み込む際に、レンズ素子101bの凹部と基準ピン302とが嵌合することによって、ロッドレンズアレイ100のフレーム301に対する位置合わせが容易になりうる。
【0029】
図7(b)に示されるように、複数のレンズ素子101bのうち基準ピン302が挿入される凹部と基準ピン302が挿入されない凹部とが、互いに異なる形状をしていてもよい。また、複数のレンズ素子101bのうち基準ピン302が挿入される凹部と基準ピン302が挿入されない凹部とが、同じ形状であってもよい。基準ピン302が挿入される凹部と基準ピン302が挿入されない凹部との形状が異なる方が、ロッドレンズアレイ100とフレーム301との位置合わせが、より容易になりうる。ロッドレンズアレイ100にスリット111を形成した場合であっても、レンズ素子101bの一端側の面に適当な形状の凹部を形成し、基準ピン302と嵌合するようにしてもよい。
【0030】
次いで、本実施形態のロッドレンズアレイ100の応用例として、ロッドレンズアレイ100が組み込まれたセンサユニット300を含む読取装置、検査装置、記録システムについて説明する。図8(a)は、ロッドレンズアレイ100が組み込まれたセンサユニット300を含む読取装置400、および、読取装置400を含む検査装置500について説明する図である。図8(b)は、ロッドレンズアレイ100が組み込まれたセンサユニット300を含む読取装置400、および、読取装置400を含む記録システム510について説明する図である。
【0031】
読取装置400は、図8(a)、8(b)に示されるように、照明装置401と、照明装置401によって照明された被照明体411(被写体)の画像情報を取得するためのイメージセンサ402と、を含む。イメージセンサ402には、上述のロッドレンズアレイ100が組み込まれたセンサユニット300が配されている。図1(b)、3(a)~5(c)に示されるように、レンズ素子101bの一端側の面が加工されている場合、レンズ素子101aの形状に対して欠損が生じているレンズ素子101bの一端側の面が、被照明体411に対向するように配されうる。
【0032】
被照明体411が、図8(a)、8(b)に示されるように大きさ(高さ)に差がある場合、撮像に際して深い被写界深度が求められる。したがって、ロッドレンズアレイ100が上述の構成を備えることによって、ロッドレンズアレイ100が組み込まれたセンサユニット300を含む読取装置400は、大きさが異なる被照明体411に対してピントを合わせることが可能になる。
【0033】
大きさが異なる被照明体411に対してピントを合わせられる読取装置400は、例えば、図8(a)に示されるような、検査装置500に適用することができる。検査装置500は、読取装置400と、読取装置400で取得した画像情報を用いて被照明体411の良否を判定する判定器501と、を含みうる。また、検査装置500は、図8(a)に示されるような、被照明体411を搬送するための搬送装置502を備えていてもよい。検査装置500は、例えば、ライン状のロッドレンズアレイ100およびセンサ201を備えるセンサユニット300(ラインセンサユニット)を含み、搬送装置502上を移動する被照明体411を検査する検査装置であってもよい。大きさが異なる被照明体411に対してピントを合わせられる読取装置400によって、検査装置500での検査の精度を高めることが可能になる。
【0034】
また、大きさが異なる被照明体411に対してピントを合わせられる読取装置400は、例えば、図8(b)に示されるような、記録システム510に適用することができる。記録システム510は、読取装置400と、読取装置400によって取得された画像情報に基づいて記録媒体に記録を行う記録装置511と、を含む。記録システム510は、複写機やプリンタ、ハードディスクやメモリにデータを記録するデータ記録装置などを含む。図8(b)は、記録システム510のうち複写機やプリンタなどの紙媒体などに記録をする例を示している。記録システム510は、上述の検査装置500のように被照明体411を移動させながら撮像を行ってもよいし、読取装置400が移動することによって被照明体411を撮像してもよい。被照明体411が、図8(b)に示されるように、凸凹している場合であっても、ロッドレンズアレイ100が組み込まれたセンサユニット300を含む読取装置400を備える記録システム510は、被照明体411の表面にピントが合った像を記録することができる。
【0035】
記録装置511は、例えば、インクジェット方式や電子写真方式などの任意の方法で、記録媒体513(例えば紙)に文字を含む画像などを記録することができる。この場合、記録システム510は、搬送装置512を含みうる。搬送装置512として、記録媒体を上流から下流へと搬送する搬送ローラを用いることができる。ひとつの実施形態において、記録システム510はコピー処理を行うことができ、この場合、記録装置511は、読取装置400が読み取った画像情報を、画像として記録媒体に記録する。また、ひとつの実施形態において、記録システム510はフィードバック制御を行うことができる。例えば、読取装置400が、記録装置511によって記録が行われた後の記録媒体513に対する画像情報の読取を行い、読取データとして記録装置511に送信することができる。この読取データに基づき、記録装置511は記録媒体への記録状態を確認することができ、次回の記録時における記録パラメータを制御することができる。
【0036】
また、記録システム510は、上述のように、紙などの記録媒体513に記録する装置に限られるものではない。記録装置511が、読取装置400が読み取った画像情報などを、電子データとしてハードディスクやメモリなどの記録媒体に記録してもよい。この場合、記録装置511が、ハードディスクやメモリなどの記録媒体を内包していてもよい。この場合、記録システム510に、搬送装置512は配されていなくてもよい。
【0037】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
100:ロッドレンズアレイ、101a,101b:レンズ素子
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