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特開2023-35019モデル動物及びその製造方法、並びに石灰化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035019
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】モデル動物及びその製造方法、並びに石灰化剤
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141591
(22)【出願日】2021-08-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年1月27日、科研費の2019年度 実績報告書(https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-17H04317/17H043172019jisseki/)
(71)【出願人】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】片桐 岳信
(72)【発明者】
【氏名】塚本 翔
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】濱井 瞭
(72)【発明者】
【氏名】土屋 香織
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筋組織内に石灰化物を有し、長期間安定なモデル動物、筋組織内に高効率で石灰化物を誘導することができ、長期間安定なモデル動物の製造方法、及び筋組織内に高効率で石灰化物を誘導することができる筋線維の石灰化剤の提供。
【解決手段】ヒドロキシアパタイト結晶を含有する石灰化物を筋組織内に有するモデル動物、非ヒト動物にノテキシンを投与することを含み、筋組織内に石灰化物を誘導することを特徴とするモデル動物の製造方法、及びノテキシンを含有することを特徴とする筋線維の石灰化剤を提供する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋組織内に石灰化物を有することを特徴とするモデル動物。
【請求項2】
石灰化物が、ヒドロキシアパタイト結晶を含有する請求項1に記載のモデル動物。
【請求項3】
石灰化物が、骨芽細胞及び破骨細胞を含有しない請求項1から2のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項4】
異所性石灰化の病態モデルである請求項1から3のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項5】
非ヒト動物にノテキシンを投与することを含み、筋組織内に石灰化物を誘導することを特徴とするモデル動物の製造方法。
【請求項6】
モデル動物が、筋組織内に石灰化物を有する請求項5に記載のモデル動物の製造方法。
【請求項7】
動物が、げっ歯目動物である請求項5から6のいずれかに記載のモデル動物の製造方法。
【請求項8】
ノテキシンを含有することを特徴とする筋線維の石灰化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデル動物及びその製造方法、並びに石灰化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格筋組織は、柔軟な筋線維によって構成され、特に運動機能に重要である。しかし、ある種の病的な状態、例えば、遺伝性疾患、強い外傷、脳挫傷、火傷、人工関節周囲などでは、筋組織の中に固く石灰化した硬組織が形成されることが知られている。筋組織内で異所性に形成された石灰化物は、しばしば長期間残存し、痛みや運動機能等に障害を与える。これまで、このような硬組織が骨組織か否かの議論に結論は得られておらず、石灰化物の性状や、その形成メカニズム、予防法、及び治療法についても明らかになっていないという問題がある。そのため、異所性石灰化のモデル動物の提供が求められている。
【0003】
異所性石灰化疾患モデル動物として、ラットのアキレス腱にMycobacterium butyricumを注入し、アキレス腱に石灰化を誘導したモデル動物が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、アキレス腱は、コラーゲンの線維から形成されており(非特許文献1参照)、筋線維とはその構造が全く異なるものであるため、前述の筋組織の病的な状態のモデルとしては使用できない。
【0004】
したがって、筋組織に形成される石灰化物の性状や、その形成メカニズム、予防法、及び治療法の研究のために、筋組織の中に固く石灰化した硬組織が形成された、安定なモデルの確立が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-87082号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】坂井 建雄、河原 克雅(編集)、「人体の正常構造と機能」、日本医事新報社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、筋組織内に石灰化物を有し、長期間安定なモデル動物、筋組織内に高効率で石灰化物を誘導することができ、長期間安定なモデル動物の製造方法、及び筋組織内に高効率で石灰化物を誘導することができる筋線維の石灰化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 筋組織内に石灰化物を有することを特徴とするモデル動物である。
<2> 石灰化物が、ヒドロキシアパタイト結晶を含有する前記<1>に記載のモデル動物である。
<3> 石灰化物が、骨芽細胞及び破骨細胞を含有しない前記<1>から<2>のいずれかに記載のモデル動物である。
<4> 異所性石灰化の病態モデルである前記<1>から<3>のいずれかに記載のモデル動物である。
<5> 非ヒト動物にノテキシンを投与することを含み、筋組織内に石灰化物を誘導することを特徴とするモデル動物の製造方法である。
<6> モデル動物が、筋組織内に石灰化物を有する前記<5>に記載のモデル動物の製造方法である。
<7> 動物が、げっ歯目動物である前記<5>から<6>のいずれかに記載のモデル動物の製造方法である。
<8> ノテキシンを含有することを特徴とする筋線維の石灰化剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、筋組織内に石灰化物を有し、長期間安定なモデル動物、筋組織内に高効率で石灰化物を誘導することができ、長期間安定なモデル動物の製造方法、及び筋組織内に高効率で石灰化物を誘導することができる筋線維の石灰化剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ヒトにおける石灰化(石灰沈着性)筋壊死(Calcific myonecrosis)のCT像と、本発明のモデル動物における石灰化のマイクロX線CT像を比較した図である。
図2図2は、試験例1における、ノテキシン投与マウス、カルディオトキシン投与マウス、及び非投与マウスの筋組織のHE染色像を示す図である。
図3図3は、試験例2における、ノテキシン投与マウス、カルディオトキシン投与マウス、及び非投与マウスの筋組織のマイクロX線CTを示す図である。
図4図4は、試験例3における、ノテキシン投与マウス及び非投与マウスの筋組織のフォンコッサ染色及びアリザリンレッドS染色の結果を示す図である。
図5A図5Aは、試験例4における、非投与マウスの筋組織のX線回折の結果を示す図である。縦軸は強度(cps)、横軸は2θ(deg)である。
図5B図5Bは、試験例4における、ノテキシン投与マウスの筋組織中の石灰化物のX線回折の結果を示す図である。矢印はヒドロキシアパタイト結晶のピークを示す。縦軸は強度(cps)、横軸は2θ(deg)である。
図6図6は、試験例4における、ノテキシン投与マウスの筋組織及び非投与マウスの筋組織中の石灰化物の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
図7図7は、試験例5における、BMP移植マウス及びノテキシン投与マウスの筋組織のアリザリンレッドS染色、ALP染色、及びTRAP染色の結果を示す図である。
図8A図8Aは、試験例6-1における、ノテキシン非投与のマウス、並びにノテキシン投与から1日間後、2日間後、及び3日間後のマウスの筋組織について、HE染色、フォンコッサ染色、及び組織免疫染色により経過観察を行った結果である。
図8B図8Bは、試験例6-2における、ノテキシン非投与マウス及びノテキシン投与マウスの筋組織中のTNF-α及びIL-6のRNAの発現量の結果である。縦軸は、相対的mRNA発現量を示す。
図9図9は、試験例7における、ノテキシン投与前、ノテキシン投与から1週間後、3週間後、6ヶ月後、及び16ヶ月後のマウスの後肢をマイクロX線CTにより経過観察を行った結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(モデル動物及びモデル動物の製造方法)
本発明のモデル動物は、筋組織内に石灰化物を有する動物である。
本発明のモデル動物の製造方法は、非ヒト動物にノテキシン(Notexin)を投与する投与工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明のモデル動物は、本発明のモデル動物の製造方法により好適に製造される。以下、モデル動物の製造方法の説明と併せて、本発明のモデル動物について説明する。
【0012】
<投与工程>
前記投与工程は、非ヒト動物にノテキシンを投与する工程である。これにより、前記非ヒト動物の筋組織内に石灰化物が誘導される。
【0013】
-ノテキシン-
前記ノテキシンは、Tiger snake由来のヘビ毒である。
前記ノテキシンは、市販品を使用してもよく、Tiger snakeから調製してもよい。前記ノテキシンの市販品としては、Latoxan社から入手することができる。
【0014】
従来、ヘビ毒の一種である、Naja mossambica由来のカルディオトキシン(Cardiotoxin)が筋組織の損傷や再生誘発剤として多用されてきた。しかしながら、カルディオトキシンを非ヒト動物に投与しても、筋組織内に石灰化物を誘導することはできない。同じヘビ毒であっても、ノテキシンの投与により筋組織内に石灰化物を誘導することができることは、本発明者らの予想外の知見である。
【0015】
前記ノテキシンの形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、そのまま投与してもよいが、溶媒と混合したノテキシン溶液の形態で投与することが好ましい。
【0016】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記ノテキシン溶液におけるノテキシンの濃度としては、特に制限はなく、前記非ヒト動物の種類に応じて適宜選択することができるが、その下限値としては、0.5μg/mL以上が好ましく、1.0μg/mL以上がより好ましく、1.5μg/mL以上が特に好ましく、またその上限値としては、20μg/mL以下が好ましく、10μg/mL以下がより好ましく、5μg/mL以下が特に好ましい。前記下限値と前記上限値とは適宜組み合わせることができ、前記ノテキシン溶液におけるノテキシンの濃度としては、0.5μg/mL~20μg/mLが好ましく、1.0μg/mL~10μg/mLがより好ましく、1.5μg/mL~5μg/mLが特に好ましい。
【0018】
前記非ヒト動物への前記ノテキシン溶液の投与量としては、特に制限はなく、前記非ヒト動物の種類に応じて適宜選択することができるが、その下限値としては、10μL以上が好ましく、100μL以上がより好ましく、150μL以上が特に好ましく、またその上限値としては、1,000μL以下が好ましく、500μL以下がより好ましく、300μL以下が特に好ましい。前記下限値と前記上限値とは適宜組み合わせることができ、前記非ヒト動物への前記ノテキシン溶液の投与量としては、10μL~1,000μLが好ましく、100μL~500μLがより好ましく、150μL~300μLが特に好ましい。
【0019】
前記ノテキシンの投与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、直接的又は間接的に、筋組織内に前記ノテキシンを投与できる方法が好ましく、例えば、筋肉内投与、皮下投与などが挙げられる。これらの中でも、前記ノテキシンの投与方法としては、筋肉内投与が好ましい。
【0020】
前記ノテキシンの投与回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単回投与であってもよく、複数回投与してもよいが、単回投与が簡便で好ましい。前記モデル動物の製造方法は、ノテキシンを単回投与しても、筋組織内に石灰化物を好適に誘導することができる。
【0021】
前記モデル動物におけるノテキシンの投与の経過期間としては、特に制限はなく、前記モデル動物の使用目的に応じて適宜選択することができる。したがって、前記モデル動物は、ノテキシンを投与した直後の動物、ノテキシンの投与から7日間後の動物、ノテキシンの投与から3週間後の動物、ノテキシンの投与から6カ月後の動物、ノテキシンの投与から16カ月後の動物、ノテキシンの投与から16カ月以上経過した動物など、前記非ヒト動物にノテキシンを投与した動物は、いずれも本発明の範囲内である。即ち、前記モデル動物の製造方法は、前記非ヒト動物の筋組織内に石灰化物を誘導することを特徴としており、前記モデル動物の製造方法により得られたモデル動物には、筋組織内に石灰化物を有するものだけでなく、前記非ヒト動物にノテキシンを投与後、筋組織内に石灰化物が完全に形成される前(筋組織内に石灰化物が誘導されている状態又は筋組織内に石灰化物が形成される過程)の動物も含まれる。更に、前記モデル動物は、筋組織内の石灰化物を長期間、安定に有するものであるため、様々な目的で使用できる点で有利である。
例えば、筋線維の石灰化の性状の解析、筋線維に石灰化物が形成されるメカニズムの解析、筋線維の石灰化の生理的役割の解析、筋組織内に石灰化を伴う様々な疾患の発症機序の解明、前記疾患の予防方法又は治療方法の研究、前記疾病に対する予防薬又は治療薬のスクリーニングや開発などの用途に応じて、適宜選択した石灰化の過程又は状態を有するモデル動物を使用することができる。
【0022】
-非ヒト動物-
前記非ヒト動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、げっ歯目動物、ウサギ目動物、ネコ目動物、ウシ目動物、サル目動物、イヌ目動物、イタチ目動物、イノシシ目動物、霊長目動物などが挙げられる。
前記げっ歯目動物としては、例えば、マウス、ラット、スナネズミ、オキナワハツカネズミ、シッキムハツカネズミ、チャイニーズハムスター、モルモットなどが挙げられる。
他の前記非ヒト動物としては、例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、フェレット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタ、カニクイザル、アカゲザル、マーモセットなどが挙げられる。
これらの中でも、前記非ヒト動物は、実験動物として取り扱い易く有用である点で、げっ歯目動物が好ましく、マウス、ラットがより好ましく、マウスが特に好ましい。
【0023】
<モデル動物>
前記モデル動物が有する前記石灰化物は、非ヒト動物に前記ノテキシンを投与することで形成されるものである。
前記石灰化物は、マイクロX線CT(例えば、CosmoScan GX、株式会社リガク製)で確認することができる。
【0024】
前記石灰化物の性状としては、リン酸カルシウムのヒドロキシアパタイト結晶を含有し、骨芽細胞及び破骨細胞を含有しないものである。
前記石灰化物が、リン酸カルシウムのヒドロキシアパタイト結晶を含有することは、フォンコッサ染色、アリザリンレッドS染色、X線回折、走査電子顕微鏡などにより確認することができる。
【0025】
前記モデル動物では、筋組織内に石灰化物を有することの他、炎症反応が起きているという性状も有する。具体的には、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色で炎症細胞と考えられる細胞群の浸潤が観察され、更には、単球マクロファージのマーカーであるCD11bの浸潤、TNF-αのmRNAの発現の亢進、IL-6のmRNAの発現の亢進などが認められる。
これらの炎症反応は、HE染色、免疫染色、逆転写PCR(RT-PCR)などで確認することができる。
【0026】
前記モデル動物は、筋組織の病的な状態、例えば、遺伝性疾患、強い外傷、脳挫傷、火傷、人工関節周囲などにより誘導される筋線維の石灰化の性状や、その形成メカニズム、生理的役割の解析などに利用可能である。
また、図1に示すように、ヒトにおける石灰化(石灰沈着性)筋壊死(Calcific myonecrosis)(Barron SL & MacGrory BJ, Arthroplast Today, 2018, 4(4), p.421-425参照)のCT像と、本発明のモデル動物における石灰化物のマイクロX線CT像は非常に類似している。したがって、前記モデル動物は、筋組織内に石灰化(異所性石灰化)を伴う様々な疾患、例えば、進行性骨化性線維異形成症(fibrodysplasia ossificans progressiva:FOP)や石灰化(石灰沈着性)筋壊死(Calcific myonecrosis)の病態モデルとして有用であり、更に、これらの疾患の発症機序の解明や、前記疾患の予防方法、治療方法、予防薬、治療薬などの開発への応用が期待できる。
【0027】
(筋線維の石灰化剤)
本発明の筋線維の石灰化剤は、ノテキシンを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0028】
<ノテキシン>
前記ノテキシンとしては、前述の(モデル動物の製造方法)の<投与工程>の項目に記載の通りである。
【0029】
前記ノテキシンの含有量としては、筋組織に石灰化物を誘導することができれば、特に制限はなく、投与対象などに応じて適宜選択することができる。
【0030】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、薬理学的に許容され得る担体の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加剤、補助剤、溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記添加剤又は前記補助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、殺菌剤、保存剤、粘結剤、増粘剤、固着剤、結合剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、溶剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤、消泡剤、物性向上剤、防腐剤などが挙げられる。
【0032】
前記殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0033】
前記保存剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、クレゾール、チメロサール、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0034】
前記粘結剤、前記増粘剤、又は前記固着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デンプン、デキストリン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、キサンタンガム、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、エチレン・プロピレンブロックポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0035】
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0036】
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。
【0037】
前記安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。
【0038】
前記pH調整剤又は前記緩衝剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
前記等張化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ブドウ糖などが挙げられる。
【0040】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
【0041】
前記その他の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
-剤型-
前記筋線維の石灰化剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形剤、液剤などが挙げられる。これらの中でも、液剤が好ましい。
【0043】
前記液剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、酒精剤、混餌剤、液剤、点眼剤、エアゾール剤、噴霧剤などが挙げられる。
【0044】
-製造方法-
前記筋線維の石灰化剤の製造方法としては、前記ノテキシンと、更に必要に応じて、前記その他の成分とを混合することができれば、特に制限はなく、剤型などに応じて公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
前記筋線維の石灰化剤は、筋組織内に石灰化物を有するモデル動物の作製や、インビトロでの培養細胞(例えば、筋芽細胞など)による筋線維での石灰化のメカニズムの解析に好適に用いることができる。また、筋組織内に石灰化(異所性石灰化)を伴う様々な疾患、の発症機序の解明や、前記疾患の予防方法、治療方法、予防薬、治療薬などの開発研究への応用が期待できる。
【実施例0046】
以下に試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(試験例1:ヘビ毒投与による筋組織の損傷誘発)
野生型マウスのヘビ毒投与に対する影響を組織切片で解析した。2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシン(Latoxan社製)又は10μMのカルディオトキシン(Latoxan社製)を200μL筋肉内に単回投与した。投与3日間後に、安楽死させ、皮膚を剥離し、後肢の筋組織を採取した。また、対照として、ヘビ毒非投与のマウスについても同様にして、後肢の筋組織を採取した。
採取した筋組織を4質量%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(ナカライテスク株式会社製)で2日間固定した後、エタノール脱水を行い、キシレンへ置換し、パラフィンで包埋した。回転式ミクロトーム(Leica社製)を用いてパラフィン切片を作製し、定法に従いヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を施し、BZ-9000(Keyence社製)により筋損傷を評価した。
【0048】
結果を図2に示す。HE染色像から、ノテキシン投与マウス及びカルディオトキシン投与マウスでは、非投与マウスに比較して、筋線維が損傷し、炎症細胞と考えられる細胞群の浸潤が観察された。
【0049】
(試験例2:ヘビ毒投与による異所性の硬組織形成)
2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシン(Latoxan社製)又は10μMのカルディオトキシン(Latoxan社製)を200μL筋肉内に単回投与した。また、対照として、ヘビ毒非投与のマウスも同時に飼育した。投与7日間後、2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、マイクロX線CT(CosmoScan GX、株式会社リガク製)を用い、後肢の筋組織を解析した。
【0050】
結果を図3に示す。ノテキシン投与マウスでは、筋組織中にX線不透過の異所性石灰化が観察された。一方、カルディオトキシン投与マウスでは、筋組織中にX線不透過は観察されなかった。
【0051】
(試験例3:ノテキシン投与による異所性の硬組織形成)
2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシン(Latoxan社製)を200μL筋肉内に単回投与した。投与7日間後に、安楽死させ、皮膚を剥離し、後肢の筋組織を採取した。また、対照として、ノテキシン非投与のマウスについても同様にして、後肢の筋組織を採取した。
採取した筋組織を4質量%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(ナカライテスク株式会社製)で2日間固定した後、エタノール脱水を行い、キシレンへ置換し、パラフィンで包埋した。回転式ミクロトーム(Leica社製)を用いてパラフィン切片を作製し、定法に従いフォンコッサ染色又はアリザリンレッドS染色を施し、BZ-9000(Keyence社製)により筋損傷を評価した。
【0052】
結果を図4に示す。フォンコッサ染色はリン酸カルシウムを染色し、アリザリンレッドS染色はカルシウムを染色する。これらの染色像から、ノテキシン投与マウスでは、筋組織内にカルシウムの石灰化が認められた。
【0053】
(試験例4:異所性硬組織の成分解析)
2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシン(Latoxan社製)を200μL筋肉内に単回投与した。投与7日間後に、安楽死させ、皮膚を剥離し、後肢の筋組織を採取し、以下の解析の試料とした。また、対照として、ノテキシン非投与のマウスについても同様にして、後肢の筋組織を採取し、回収組織をアルコールに固定後に自然乾燥して、以下の解析の試料とした。
【0054】
<X線回折による解析>
X線回折装置(MiniFlex 600、株式会社リガク製)を用い、採取した筋組織中の石灰化物の結晶構造の分析を行った。X線には単色化されたCuKα線(波長1.541862Å)を用い、Cu管球の電圧は40kV、電流は15mAに設定した。スキャンスピードは1°/sec、ステップ幅は0.02°に設定し、ホルダー上に固定した試料の回折X線を計測することで、X線回折(XRD)パターンを得た。その際、計測の範囲は、2θ=3°~60°とした。
【0055】
非投与マウスの筋組織中の石灰化物のX線回折の結果を図5Aに、ノテキシン投与マウスの筋組織中の石灰化物のX線回折の結果を図5Bに示す。ノテキシン投与マウスでは、ヒドロキシアパタイト結晶のピーク(図5B中、矢印で示すピーク)が確認され、石灰化物は、骨と同様のリン酸カルシウムのヒドロキシアパタイト結晶を含むことが分かった。一方、非投与マウスでは、筋組織中の石灰化物のX線回折において、ヒドロキシアパタイト結晶のピークは観察されなかった。
【0056】
<走査電子顕微鏡による解析>
走査型電子顕微鏡(SEM:JSM-6390LA、日本電子株式会社製)を用い、採取した筋組織中の石灰化物の観察を行った。観察前には、カーボンテープ上に固定した試料をAu-Pdでコーティングした。SEM観察における電子線の加速電圧は、15kVとした。また、観察された石灰化物の元素分析には、SEM付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いた。
【0057】
結果を図6に示す。ノテキシン投与マウスでは、筋組織内に、ヒドロキシアパタイトの結晶構造と認められる棒状の結晶構造が認められた。一方、非投与マウスでは、前記棒状の結晶構造は観察されなかった。
【0058】
(試験例5:異所性硬組織の組織解析)
骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Protein、BMP)の移植による異所性の骨組織と、ノテキシン投与マウスの筋組織の石灰化について、以下の方法で比較検討を行った。
【0059】
<BMP移植マウス>
直径4mmの円形状に切り取ったColla Tape(登録商標)(ジンマー・バイオメット・デンタル合同会社製)に、2.0μgのBMP-2(コアフロント株式会社製)を染み込ませ、凍結乾燥し、BMP-2ペレットを作製した。10週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)を、2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、大腿を切開し、BMP-2ペレットを大腿筋に移植した。BMP-2ペレットの移植から14日間後に、安楽死させ、大腿筋を採取し、皮膚を剥離後、採取した筋組織を4質量%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(ナカライテスク株式会社製)で2日間固定した後、エタノール脱水を行い、キシレンへ置換し、パラフィンで包埋した。
【0060】
<ノテキシン投与マウス>
9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシンを200μL筋肉内に単回投与した。ノテキシンの投与から7日間後に、安楽死させ、皮膚を剥離し、後肢の筋組織を採取した。採取した筋組織を4質量%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(ナカライテスク株式会社製)で2日間固定した後、エタノール脱水を行い、キシレンへ置換し、パラフィンで包埋した。
【0061】
回転式ミクロトーム(Leica社製)を用いて、BMP移植群及びノテキシン投与群のそれぞれのパラフィン切片を作製し、定法に従い、アリザリンレッドS染色、アルカリフォスファターゼ(ALP)染色、及び酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を実施し、BZ-9000(Keyence社製)で組織切片を観察した。
【0062】
結果を図7に示す。染色像から、BMP-2で誘導した筋組織の異所性骨組織の周囲には、ALP陽性の骨芽細胞及びTRAP染色陽性の破骨細胞が認められた。一方、ノテキシン投与マウスの筋組織では、ALP陽性の骨芽細胞及びTRAP染色陽性の破骨細胞は観察されなかった。
骨では、骨形成の代謝回転(ターンオーバー)が行われることが知られており、まず、破骨細胞によって骨吸収が起こり、その後に骨芽細胞によって骨形成が行われる。ノテキシン投与マウスの筋組織では、骨芽細胞及び破骨細胞が観察されなかったことから、ノテキシン投与による筋組織中の石灰化物は、骨ではなく、ヒドロキシアパタイト結晶が物理的に析出した構造であると考えられた。
【0063】
(試験例6-1:ノテキシン投与による炎症反応)
2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシン(Latoxan社製)を200μL筋肉内に単回投与し、1日間後、2日間後、又は3日間後に安楽死させ、皮膚を剥離し、後肢の筋組織を採取した。また、対照として、ノテキシン非投与のマウスについても同様に後肢の筋組織を採取した。
採取した筋組織を4質量%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(ナカライテスク株式会社製)で2日間固定した後、エタノール脱水を行い、キシレンへ置換し、パラフィンで包埋した。回転式ミクロトーム(Leica社製)を用いてパラフィン切片を作製し、定法に従い、HE染色、フォンコッサ染色、又は組織免疫染色を行った。
【0064】
組織免疫染色は、酵素ブロッキング用試薬(SP-6000、VECTOR製)を用いて、パラフィン切片の内因性のペルオキシダーゼを不活化処理した後、ブロッキング剤(Blocking One Histo、ナカライテスク株式会社製)を用いて、非特異的吸着を抑制し、CD11b抗体(Abcam社製)を4℃で一晩反応させた。CD11b抗体の検出には、二次抗体として、HRP標識のAnti-Rabbit IgG(ImmPRESS Reagent、VECTOR製)を使用した。またDAB(3,3’‐ジアミノベンジジン四塩酸塩)を用いて、二次抗体のHRPを検出し、可視化した後、BZ-9000(Keyence社製)で観察を行った。
【0065】
結果を図8Aに示す。ノテキシン投与から3日間後に、筋組織内に、フォンコッサ陽性のリン酸カルシウムの結晶が認められた。これと同時に、単球マクロファージのマーカーであるCD11bも筋組織内に出現した。
【0066】
(試験例6-2:ノテキシン投与による炎症反応)
2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシン(Latoxan社製)を200μL筋肉内に単回投与し、3日間後に安楽死させ、皮膚を剥離し、後肢の筋組織を採取した。また、対照として、ノテキシン非投与のマウスについても同様に後肢の筋組織を採取した。
採取した筋組織から、Nucleo Spin RNA(タカラバイオ株式会社製)を用いて、全RNAを抽出した。この全RNAを鋳型に、RNA to cDNA EcoDry Premix(タカラバイオ株式会社製)を用いて、cDNAに逆転写した。更に、得られたcDNAを鋳型として、下記プライマー及びPremix Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)を用いてThermal Cycler Dice Real-time system TP800(タカラバイオ株式会社製)で定量的逆転写PCR(RT-qPCR)を行い、TNF-α及びIL-6のRNAの発現量を定量化した。なお、各遺伝子のRNAの発現量は、GAPDH遺伝子のRNAの発現量で補正した。
[プライマー]
-TNF-α-
・ フォワード : ATGAGCACAGAAAGCATGA(配列番号:1)
・ リバース : AGTAGACAGAAGAGCGTGGT (配列番号:2)
-IL-6-
・ フォワード : CCTCTGGTCTTCTGGAGTACC(配列番号:3)
・ リバース : ACTCCTTCTGTGACTCCAGC(配列番号:4)
-GAPDH-
・ Mouse Housekeeping Gene Primer Set(タカラバイオ株式会社製)を使用。
【0067】
結果を図8Bに示す。ノテキシン投与から3日間後に、炎症性サイトカインであるTNF-α及びIL-6のmRNAの発現量は、非投与と比較してノテキシン投与で100倍程度上昇した。この炎症反応が、筋組織内でリン酸カルシウム結晶の析出を促す重要な機序と予想される。
【0068】
(試験例7:ノテキシン投与による異所性石灰化の持続性)
2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、9週齢の野生型マウス(C57BL/6、日本クレア株式会社より入手)の後肢に2μg/mLのノテキシン(Latoxan社製)を200μL筋肉内に単回投与した。同一個体の後肢を、ノテキシン投与前、ノテキシン投与から1週間後、3週間後、6ヶ月後、及び16ヶ月後に、2体積%イソフルラン吸引麻酔下で、マイクロX線CT(CosmoScan GX、株式会社リガク製)を用い、筋組織を解析した。
【0069】
結果を図9に示す。ノテキシン投与による異所性石灰化は、1年以上残存していた。
試験例4の結果より、筋組織内の石灰化物は、骨と同様のリン酸カルシウムのヒドロキシアパタイト結晶であるものの、試験例5の結果より、骨組織のように骨を吸収する破骨細胞が出願しないため、長期間に渡り生体内に残存するものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のモデル動物は、筋組織の病的な状態、例えば、遺伝性疾患、強い外傷、脳挫傷、火傷、人工関節周囲などにより誘導される筋組織中の石灰化の性状や、その形成メカニズム、生理的役割の解析などに利用可能である。また、本発明のモデル動物は、筋組織内に石灰化(異所性石灰化)を伴う様々な疾患、例えば、進行性骨化性線維異形成症(FOP)や石灰化(石灰沈着性)筋壊死(Calcific myonecrosis)の病態モデルとして有用であり、更に、これらの疾患の発症機序の解明や、前記疾患の予防方法、治療方法、予防薬、治療薬などの開発への応用が期待できる。
また、本発明のモデル動物の製造方法は、筋組織内に高効率で石灰化物を誘導することができ、長期間安定なモデル動物の製造方法として好適に利用可能である。
更に、本発明の筋線維の石灰化剤は、筋組織内に石灰化物を有するモデル動物の作製や、インビトロでの培養細胞(例えば、筋芽細胞など)による筋線維での石灰化のメカニズムの解析に好適に用いることができる。また、筋組織内に石灰化(異所性石灰化)を伴う様々な疾患、の発症機序の解明や、前記疾患の予防方法、治療方法、予防薬、治療薬などの開発研究への応用が期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
【配列表】
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