(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035061
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】バルブ装置および水栓装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/078 20060101AFI20230306BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F16K11/078 B
E03C1/042 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141660
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯代 啓太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 成美
(72)【発明者】
【氏名】下釜 玲
(72)【発明者】
【氏名】谷口 隆博
【テーマコード(参考)】
2D060
3H067
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BA05
2D060BB01
2D060BC02
2D060BC11
2D060BE01
2D060BE11
2D060BF03
3H067AA19
3H067CC23
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD24
3H067EA16
3H067EC07
3H067FF02
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性を向上させることができるバルブ装置および水栓装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係るクローズ構造のバルブ装置は、バルブガイド部材と、レバーと、レバーガイド部材と、スペーサとを備える。バルブガイド部材は、可動弁体に取り付けられ、固定弁体に対する可動弁体の移動をガイドする。レバーは、バルブガイド部材に回動可能に接続される。レバーガイド部材は、バルブガイド部材の上方に配置されるとともに、レバーの回動をガイドする。スペーサは、バルブガイド部材とレバーガイド部材との間に配置されるとともに、バルブガイド部材の上面に固定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローズ構造のバルブ装置であって、
可動弁体に取り付けられ、固定弁体に対する前記可動弁体の移動をガイドするバルブガイド部材と、
前記バルブガイド部材に回動可能に接続されるレバーと、
前記バルブガイド部材の上方に配置されるとともに、前記レバーの回動をガイドするレバーガイド部材と、
前記バルブガイド部材と前記レバーガイド部材との間に配置されるとともに、前記バルブガイド部材の上面に固定されるスペーサと
を備えることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記スペーサは、ポリブチレンテレフタレートで形成され、
前記レバーガイド部材は、ポリアセタールで形成されること
を特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記スペーサは、
前記バルブガイド部材に形成されたバルブガイド側切欠き部と対応する形状となるように形成される切欠き部
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記スペーサは、
前記切欠き部に形成され、前記バルブガイド側切欠き部と係合可能な係合部
を備えることを特徴とする請求項3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のバルブ装置と、
前記バルブ装置が収容される本体部と
を備えることを特徴とする水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、バルブ装置および水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドルの操作に応じて本体部内に収容されたバルブ装置が作動し、かかる作動によって洗浄水の流量や温度を調節することができる水栓装置が知られている(例えば特許文献1参照)。また、上記したバルブ装置としては、例えば給水源から供給された洗浄水を固定弁体の流入路から可動弁体内へ流入させ、可動弁体内に流入した洗浄水を固定弁体の流出路を介して流出させる、いわゆるクローズ構造のバルブ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、バルブ装置における耐摩耗性を向上させるという点で、改善の余地があった。すなわち、バルブ装置においては、ハンドルの操作に応じてレバーが回動し、レバーの回動で可動弁体を固定弁体に対して移動させることで、洗浄水の流量や温度を調節するように構成される。
【0005】
上記した可動弁体には、可動弁体の移動をガイドするバルブガイド部材が取り付けられる。かかるバルブガイド部材は、バルブ装置内においてレバーの回動をガイドするレバーガイド部材と接触するように配置されるため、可動弁体を移動させる際、レバーガイド部材に対して摺動する。
【0006】
ここで、クローズ構造のバルブ装置において、バルブガイド部材がレバーガイド部材と接触して摺動する部位は、洗浄水によって水没しない部位であり、言い換えると、乾式摺動する部位である。そのため、バルブガイド部材は、レバーの回動によって可動弁体を移動させる際、レバーガイド部材に対する摺動によって摩耗することがあり、改善の余地があった。
【0007】
実施形態の一態様は、耐摩耗性を向上させることができるバルブ装置および水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様は、クローズ構造のバルブ装置であって、可動弁体に取り付けられ、固定弁体に対する前記可動弁体の移動をガイドするバルブガイド部材と、前記バルブガイド部材に回動可能に接続されるレバーと、前記バルブガイド部材の上方に配置されるとともに、前記レバーの回動をガイドするレバーガイド部材と、前記バルブガイド部材と前記レバーガイド部材との間に配置されるとともに、前記バルブガイド部材の上面に固定されるスペーサとを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、バルブ装置の耐摩耗性を向上させることができる。すなわち、スペーサがバルブガイド部材とレバーガイド部材との間に配置され、バルブガイド部材の上面に固定されるため、例えばバルブガイド部材においては、可動弁体を移動させる際、スペーサがレバーガイド部材に対して摺動することとなる。
【0010】
言い換えると、バルブガイド部材は、上面にスペーサが固定されているため、レバーガイド部材に直接接触しておらず、可動弁体を移動させる際、レバーガイド部材に対して摺動しない。
【0011】
また、バルブ装置は、クローズ構造であり、バルブガイド部材やスペーサ、レバーガイド部材が配置される位置は水没しない。すなわち、バルブガイド部材に固定されたスペーサと、レバーガイド部材とは、乾式摺動する。
【0012】
このようなクローズ構造のバルブ装置において、スペーサがバルブガイド部材に固定されることで、バルブガイド部材がレバーガイド部材に対して摺動しないようにすることが可能になる。これにより、バルブガイド部材が、例えば従来技術のようにレバーガイド部材に対する摺動によって摩耗することを抑制することができ、よってバルブ装置の耐摩耗性を向上させることができる。
【0013】
また、バルブガイド部材は、摺動による摩耗が抑制されることから、バルブガイド部材の強度を確保(維持)することができる。
【0014】
また、例えばバルブ装置の小型化を図ると、レバーガイド部材とバルブガイド部材との間には、比較的高い面圧が作用する場合があり、バルブガイド部材により強度が求められる。一方、バルブガイド部材により強度を向上させようとすると、比較的耐摩耗性が低い材質の部材を選択する必要がある。かかる場合であっても、上記したスペーサがバルブガイド部材に固定され、バルブガイド部材とレバーガイド部材との間に配置されることで、バルブガイド部材の摩耗を抑制でき、耐摩耗性が高くないが、より強度のある材質をバルブガイド部材に使用でき、よってバルブ装置の耐摩耗性を向上させつつ、バルブガイド部材の強度を確保(向上)することができる。
【0015】
また、前記スペーサは、ポリブチレンテレフタレートで形成され、前記レバーガイド部材は、ポリアセタールで形成されることを特徴とする。
【0016】
このように、スペーサは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成されることで、耐摩耗性を向上させることができ、結果としてスペーサを含むバルブ装置における耐摩耗性をより向上させることができる。また、レバーガイド部材は、ポリアセタール(POM)で形成されることで、レバーの保持やガイドするのに必要な強度を確保することができる。
【0017】
また、前記スペーサは、前記バルブガイド部材に形成されたバルブガイド側切欠き部と対応する形状となるように形成される切欠き部を備えることを特徴とする。
【0018】
これにより、スペーサにおいては、例えば切欠き部をバルブガイド側切欠き部と一致させることで、バルブガイド部材に容易に組み付けることが可能になる。従って、スペーサを備える場合であっても、組み立て性が低下することを抑制することができる。
【0019】
また、前記スペーサは、前記切欠き部に形成され、前記バルブガイド側切欠き部と係合可能な係合部を備えることを特徴とする。
【0020】
このように、スペーサが係合部を備えることで、スペーサをバルブガイド部材に確実に固定することができるとともに、組み付け後にスペーサとバルブガイド部材とが外れて分離することを抑制することができる。
【0021】
また、係合部は、切欠き部に形成されるため、例えば組み付け後にスペーサの周方向への回転に対するストッパとして機能することができる。すなわち、係合部が切欠き部に形成されることで、組み付け後にスペーサがバルブガイド部材に対して周方向に回転することを防止することができる。
【0022】
実施形態の一態様に係る水栓装置は、上記したバルブ装置と、前記バルブ装置が収容される本体部とを備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、水栓装置において、バルブ装置における耐摩耗性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
実施形態の一態様によれば、バルブ装置における耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態に係るバルブ装置を備える水栓装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るバルブ装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るバルブ装置の斜視図である。
【
図5】
図5は、バルブガイド部材およびスペーサの斜視図である。
【
図6】
図6は、バルブガイド部材およびスペーサの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、バルブガイド部材およびスペーサを下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するバルブ装置および水栓装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0027】
まず、実施形態に係るバルブ装置を備える水栓装置の全体構成について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るバルブ装置10を備える水栓装置1の斜視図である。
【0028】
図1に示すように、水栓装置1は、本体部2と、吐水部3と、操作ハンドル4と、バルブ装置10とを備える。本体部2は、中空状に形成され、バルブ装置10などを収容する。例えば、本体部2は、円筒状であって上端および下端に開口を有し、鉛直方向に沿って延在するように形成される。本体部2は、洗面台や台所などのカウンターA上に設置される。
【0029】
吐水部3は、本体部2の外周面から側方へ向けて突出するように設けられ、水(洗浄水)を吐水する。例えば、吐水部3は、吐水管3aと、吐水口3bとを備え、後述するようにバルブ装置10から流出した水を吐水管3aを介して吐水口3bから吐水する。なお、「水」という表現は、例えば常温の水の他、湯や湯水混合水、冷水などを含む意味で用いる場合がある。
【0030】
操作ハンドル4は、本体部2の上端に回動操作自在に設けられる。バルブ装置10は、操作ハンドル4の操作に応じて作動し、かかる作動によって水の流量や温度が調節される。すなわち、バルブ装置10は、吐水部3から吐水される水の流量や温度を調節する装置(弁機構)であり、いわゆる、シングルレバーカートリッジである。なお、バルブ装置10の構成については、後に詳しく説明する。
【0031】
上記のように構成される水栓装置1は、操作ハンドル4を鉛直方向の中心軸線Bを中心に水平方向に回動させることにより(矢印C1参照)、給水ホース5から供給される水(例えば水道水)と給湯ホース6から供給される湯との混合比をバルブ装置10で調節することができる。また、水栓装置1は、操作ハンドル4を鉛直方向に回動させることにより(矢印C2参照)、吐水部3から吐水される水の流量をバルブ装置10で調節することができる。
【0032】
このように、水栓装置1は、1つの操作ハンドル4の操作により水の流量や温度を調節して吐水部3から吐水することができる、いわゆる、シングルレバー式の水栓装置(詳しくは湯水混合水栓装置)である。なお、上記した本体部2、吐水部3および操作ハンドル4は、水栓装置1の外観部材(外殻部材)である。
【0033】
次に、実施形態に係る水栓装置1の内部(正確には本体部2の内部)に収容されるバルブ装置10の構成について
図2~
図4を参照して説明する。
図2および
図3は実施形態に係るバルブ装置10の斜視図であり、
図4は
図2のIV-IV線断面図である。なお、
図3では、バルブ装置10の内部構造の理解のため、後述する上側ケーシング部材11を取り外した状態のバルブ装置10を示している。
【0034】
図2~
図4に示すように、バルブ装置10は、上側ケーシング部材11(
図3で図示せず)と、下側ケーシング部材12と、固定弁体13と、可動弁体14と、バルブガイド部材15と、スペーサ16と、レバーガイド部材17と、レバー18とを備える。なお、
図2では、固定弁体13、可動弁体14、バルブガイド部材15およびスペーサ16は、上側ケーシング部材11に隠れて見えない。
【0035】
上側ケーシング部材11は、
図2,4に示すように、円筒状に形成され、上方と下方に開口を有する。下側ケーシング部材12は、略円柱状(別言すれば円盤状)に形成される。下側ケーシング部材12は、上側ケーシング部材11の下方の開口を水密に封止するようにして上側ケーシング部材11に取り付けられる。
【0036】
上記のようにして取り付けられた上側ケーシング部材11および下側ケーシング部材12の内部には、固定弁体13、可動弁体14、バルブガイド部材15、スペーサ16、レバーガイド部材17およびレバー18の一部(下方部分)が収容される。なお、水栓装置1(
図1参照)において、バルブ装置10は、下側ケーシング部材12が下方に位置する弁座(図示せず)に接続された状態で、本体部2に収容される。
【0037】
下側ケーシング部材12には、水流入路(図示せず)、湯流入路(図示せず)および湯水混合水流出路12aが形成される。下側ケーシング部材12の水流入路には、給水ホース5(
図1参照)が弁座に穿設された給水路を介して接続される。下側ケーシング部材12の湯流入路には、給湯ホース6(
図1参照)が弁座に穿設された給湯路を介して接続される。下側ケーシング部材12の湯水混合水流出路12aは、吐水部3と連通する。
【0038】
固定弁体13は、下側ケーシング部材12に固定される。固定弁体13には、図示しない水流入路(図示せず)、湯流入路(図示せず)および湯水混合水流出路13aが形成される。固定弁体13の水流入路は、下側ケーシング部材12の水流入路と連通し、湯流入路は、下側ケーシング部材12の湯流入路と連通する。固定弁体13の湯水混合水流出路13aは、下側ケーシング部材12の湯水混合水流出路12aと連通する。
【0039】
可動弁体14は、固定弁体13の上部に摺動および回転可能に配置される。可動弁体14には、流路14aが形成される。可動弁体14は、後述するように、操作ハンドル4の操作に応じたレバー18の回動により固定弁体13に対して移動し、固定弁体13の水流入路および湯流入路を閉弁(閉鎖)したり、固定弁体13の水流入路および(または)湯流入路を開弁して流路14aを介して固定弁体13の湯水混合水流出路13aと連通させたりする。
【0040】
なお、
図4では、固定弁体13の水流入路や湯流入路を流路14aを介して固定弁体13の湯水混合水流出路13aに連通させた状態の可動弁体14(正確には流路14a)を想像線で示している。かかる連通させた状態のとき、
図4に矢印Dで示すように、バルブ装置10は、給水ホース5や給湯ホース6(
図1参照)から供給された水を、固定弁体13の水流入路や湯流入路(図示せず)から可動弁体14の流路14aへ流入させ、可動弁体14の流路14aに流入した水を固定弁体13の湯水混合水流出路13a、下側ケーシング部材12の湯水混合水流出路12aを介して流出させ、吐水部3(
図1参照)から吐水させる。
【0041】
このように、本実施形態に係るバルブ装置10は、クローズ構造(クローズドタイプ)のバルブ装置である。具体的には、バルブ装置10は、下側ケーシング部材12、固定弁体13および可動弁体14等によって水の流路が形成される構造とされ、可動弁体14より上方の部材(例えばバルブガイド部材15やスペーサ16、レバーガイド部材17など)が水没しない構造(非水没式)とされる。
【0042】
バルブ装置10の説明を続けると、バルブガイド部材15は、可動弁体14の上部に取り付けられる。バルブガイド部材15は、中央付近に形成される開口15cにレバー18の下端18aが接続され、かかるレバー18の動作に応じた、固定弁体13に対する可動弁体14の移動をガイドする。なお、バルブガイド部材15の詳細な構成については、
図5以降を参照して後述する。
【0043】
スペーサ16は、バルブガイド部材15とレバーガイド部材17との間に配置され、バルブガイド部材15に取り付けられる。なお、スペーサ16の詳細な構成については、
図5以降を参照して後述する。
【0044】
レバーガイド部材17は、スペーサ16の上方に配置される、別言すると、スペーサ16が取り付けられたバルブガイド部材15の上方に配置される。レバーガイド部材17は、レバー18を保持しつつレバー18の回動(動作)をガイドする。
【0045】
レバー18は、可動弁体14を操作する部材である。例えば、レバー18は、棒状の部材であり、下端18aがバルブガイド部材15に回動可能に接続され(嵌め込まれ)、上端が操作ハンドル4(
図1参照)に接続される。このため、操作ハンドル4が操作されると、レバー18が回動し、スペーサ16が取り付けられたバルブガイド部材15を介して可動弁体14が操作される(可動する)。
【0046】
例えば、止水状態において、可動弁体14は、固定弁体13の水流入路および湯流入路を閉弁(閉鎖)するように配置される。そして、操作ハンドル4が上方に操作されると、レバー18が回動し、可動弁体14は固定弁体13上で並進移動し、固定弁体13の水流入路および(または)湯流入路が開弁される。これにより、給水ホース5(
図1参照)や給湯ホース6から供給される水や湯は、下側ケーシング部材12の水流入路および湯流入路、固定弁体13の水流入路および湯流入路を介して可動弁体14の流路14aに流入して混合される。流路14aで混合された湯水混合水は、固定弁体13の湯水混合水流出路13aから流出する(矢印D参照)。固定弁体13の湯水混合水流出路13aから流出した湯水混合水は、下側ケーシング部材12の湯水混合水流出路12aを通り、吐水部3の吐水管3aを介して吐水口3b(
図1参照)から吐出される。
【0047】
また、操作ハンドル4が上下方向(
図1の矢印C2参照)に操作されると、レバー18が回動し、可動弁体14が固定弁体13上で並進移動する。これにより、固定弁体13の水流入路および湯流入路を流れる水および湯の流量が変化し、可動弁体14の移動量に応じてバルブ装置10から流出する湯水混合水の流量が変化する。また、操作ハンドル4が中心軸線Bを中心に水平方向(
図1の矢印C1参照)に操作されると、レバー18が回動し、可動弁体14は固定弁体13上で回動して、固定弁体13の水流入路および湯流入路を流れる水および湯の流量の割合が変化し、バルブ装置10から流出する湯水混合水の温度が変化する。
【0048】
このように、バルブ装置10は、操作ハンドル4の操作に応じて作動し、水栓装置1から吐出される水(例えば湯水混合水)の流量や温度を調節することができる。
【0049】
次に、バルブガイド部材15およびスペーサ16等の構成について
図5~
図8を参照しつつ詳しく説明する。
図5は、バルブガイド部材15およびスペーサ16の斜視図である。
図6は、バルブガイド部材15およびスペーサ16の分解斜視図である。
図7は、
図5に示すバルブガイド部材15およびスペーサ16を下方から見た斜視図である。
図8は、
図5のVIII-VIII線断面図である。
【0050】
図5~
図8に示すように、バルブガイド部材15は、例えば厚さが比較的薄い円板状に形成される。バルブガイド部材15は、上記した開口15cと、バルブガイド側切欠き部15dと、被係合部15eと、取付部15fとを備える。
【0051】
開口15cは、バルブガイド部材15の中央付近において鉛直方向に沿って貫通する孔である。また、開口15cは、バルブガイド部材15の上面15aから上方に向けて突出する円筒状の部位によって形成される。かかる開口15cには、レバー18(
図4等参照)が回動可能に接続される。
【0052】
バルブガイド側切欠き部15dは、バルブガイド部材15の外周の一部に形成され、平面視において略矩形状に切欠かれた部位である。かかるバルブガイド側切欠き部15dは、バルブガイド部材15が回動(移動)する際に支点として機能する部位である。
【0053】
詳しくは、バルブガイド側切欠き部15dには、
図4に示すように、バルブガイド部材15が本体部2に組み付けられた状態において、上側ケーシング部材11の凸部11aが配置される。凸部11aは、例えば上側ケーシング部材11の内壁(内周面)11bから径方向の内側へ向けて突出するように形成され、バルブガイド側切欠き部15d内に配置される。これにより、バルブガイド部材15は、凸部11aが配置されたバルブガイド側切欠き部15dを支点として固定弁体13上で回動(移動)することができる。
【0054】
図6~
図8に示すように、被係合部15eは、後述するスペーサ16の係合部16eが係合する部位である。例えば、被係合部15eは、バルブガイド部材15の外周側に形成される。詳しくは、被係合部15eは、バルブガイド側切欠き部15dの外周側にある2つの端部にそれぞれ形成される段差である。すなわち、被係合部15eは、バルブガイド側切欠き部15dに複数(ここでは2つ)形成される。なお、上記した被係合部15eが形成される位置や個数は、あくまでも例示であって限定されるものではない。
【0055】
取付部15fは、バルブガイド部材15を可動弁体14(
図4参照)に取り付けるための部位である。例えば、取付部15fは、
図7などに示すように、バルブガイド部材15の下面15bの外周に沿って複数(例えば3つ)形成される。また、取付部15fは、下面15bの外周部分から下方に向けて突出するように形成される。そして、バルブガイド部材15は、これら3つの取付部15fによって囲まれる位置に可動弁体14の上部が配置されることで、可動弁体14に取り付けられる。なお、取付部15fが形成される位置や個数は、あくまでも例示であって限定されるものではない。
【0056】
上記したように、バルブガイド部材15は、可動弁体14に取り付けられるとともに、レバー18が接続され、レバー18の動作(回動)によるトルクを可動弁体14に伝達する部材である。そのため、バルブガイド部材15は、強度が比較的高い材質などによって形成される。
【0057】
例えば、バルブガイド部材15は、樹脂材料で形成される(言い換えると樹脂製である)。バルブガイド部材15の樹脂材料としては、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などを用いることができ、一例としてPPS-GF40(ガラス繊維40%配合のポリフェニレンサルファイド)などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
このように、バルブガイド部材15は、強度が比較的高い材質(ここではPPS)で形成されることから、例えばレバー18の動作によるトルクを受けて可動弁体14へ伝達するのに必要な、バルブガイド部材15の強度を適切に確保することができる。
【0059】
次に、スペーサ16について説明する。
図5~
図8に示すように、スペーサ16は、例えば厚さが比較的薄い円板状、詳しくはバルブガイド部材15に比べて厚さの薄い円板状に形成される。
【0060】
また、スペーサ16は、バルブガイド部材15の上面15aに取り付けられて固定される。詳しくは、スペーサ16は、下面16bがバルブガイド部材15の上面15aと対向した状態で、バルブガイド部材15に固定される。なお、スペーサ16のバルブガイド部材15への固定は、係合部16e(後述)や被係合部15e等を用いるが、これについては後に説明する。
【0061】
スペーサ16が固定されたバルブガイド部材15は、
図4に示すように、バルブガイド部材15等が本体部2に組み付けられた状態において、レバーガイド部材17の下方に配置される。従って、スペーサ16は、バルブガイド部材15とレバーガイド部材17との間に配置されることとなる。
【0062】
これにより、本実施形態にあっては、バルブ装置10の耐摩耗性を向上させることができる。詳しく説明すると、スペーサ16は、バルブ装置10内において、上面16aがレバーガイド部材17の下面17aと接触するように配置される。従って、例えばバルブガイド部材15においては、可動弁体14を移動させる際、スペーサ16(正確にはスペーサ16の上面16a)がレバーガイド部材17(正確にはレバーガイド部材17の下面17a)に対して摺動することとなる。
【0063】
言い換えると、本実施形態に係るバルブガイド部材15は、上面15aにスペーサ16が固定されているため、レバーガイド部材17に直接接触しておらず、可動弁体14を移動させる際、レバーガイド部材17に対して摺動しない。
【0064】
ここで、バルブ装置10は、上記したようにクローズ構造であり、バルブガイド部材15やスペーサ16、レバーガイド部材17が配置される位置は水没しない。すなわち、バルブガイド部材15に固定されたスペーサ16と、レバーガイド部材17とは、乾式摺動する。
【0065】
本実施形態にあっては、このようなクローズ構造のバルブ装置10において、スペーサ16がバルブガイド部材15に固定されることで、バルブガイド部材15がレバーガイド部材17に対して摺動(乾式摺動)しないようにすることが可能になる。これにより、本実施形態にあっては、バルブガイド部材15が、例えば従来技術のようにレバーガイド部材17に対する摺動によって摩耗することを抑制することができ、よってバルブ装置10の耐摩耗性を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態に係るバルブガイド部材15は、摺動による摩耗が抑制されることから、バルブガイド部材15の強度を確保(維持)することができる。
【0067】
また、例えばバルブ装置10の小型化を図ると、レバーガイド部材17とバルブガイド部材15との間には、比較的高い面圧が作用する場合があり、バルブガイド部材15により強度が求められる。一方、バルブガイド部材15により強度を向上させようとすると、比較的耐摩耗性が低い材質の部材を選択する必要がある。かかる場合であっても、本実施形態においては、上記したスペーサ16がバルブガイド部材15に固定され、バルブガイド部材15とレバーガイド部材17との間に配置されることで、バルブガイド部材15の摩耗を抑制でき、耐摩耗性が高くないが、より強度のある材質をバルブガイド部材15に使用でき、よってバルブ装置10の耐摩耗性を向上させつつ、バルブガイド部材15の強度を確保(向上)することができる。
【0068】
スペーサ16の説明を続ける。スペーサ16は、上記したようにレバーガイド部材17に対して摺動する部材である。そのため、スペーサ16は、耐摩耗性が比較的高い材質などによって形成される。
【0069】
例えば、スペーサ16は、樹脂材料で形成される(言い換えると樹脂製である)。スペーサ16に用いられる樹脂材料は、例えばバルブガイド部材15や後述するレバーガイド部材17で用いられる樹脂材料とは異なる材料(材質)とされる。詳しくは、スペーサ16の樹脂材料としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0070】
このように、スペーサ16は、PBTで形成されることで、耐摩耗性を向上させることができ、結果としてスペーサ16を含むバルブ装置10における耐摩耗性をより向上させることができる。
【0071】
ここで、スペーサ16と接触するレバーガイド部材17の材質について説明する。レバーガイド部材17は、上記したようにスペーサ16と接触する部材である。また、レバーガイド部材17は、レバー18を保持しつつレバー18の回動をガイドする部材である。従って、レバーガイド部材17は、レバー18の保持やガイドするのに必要な強度を有する材質などによって形成される。
【0072】
例えば、レバーガイド部材17は、樹脂材料で形成される(言い換えると樹脂製である)。レバーガイド部材17に用いられる樹脂材料は、例えばスペーサ16で用いられる樹脂材料とは異なる材料(材質)とされる。詳しくは、レバーガイド部材17の樹脂材料としては、例えばPOM(ポリアセタール)などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
このように、レバーガイド部材17は、POMで形成されることで、レバー18の保持やガイドするのに必要な強度を確保することができる。
【0074】
なお、上記したように、スペーサ16およびレバーガイド部材17の材質が互いに異なる。そのため、同材料を摺動させた際に発生するリンキングなどの問題を回避することができるようになる。とくに、POMに対して、PBTは相性が良く、優れた摺動性を発揮することができる。
【0075】
続いて、スペーサ16の形状について説明する。
図5~
図8に示すように、スペーサ16は、開口16cと、切欠き部16dと、係合部16eとを備える。
【0076】
開口16cは、スペーサ16の中央付近において穿設される孔である。開口16cは、バルブガイド部材15の開口15cと対応する位置に形成される。従って、スペーサ16は、開口16cが、バルブガイド部材15の開口15cを形成する円筒状の部位に挿入されて、バルブガイド部材15に取り付けられる。
【0077】
切欠き部16dは、バルブガイド部材15のバルブガイド側切欠き部15dと対応する形状となるように形成される。例えば、切欠き部16dは、スペーサ16の外周の一部に形成され、平面視において略矩形状に切欠かれた部位である。そして、スペーサ16は、切欠き部16dがバルブガイド側切欠き部15dと一致するようにして、バルブガイド部材15に取り付けられる。
【0078】
このように、スペーサ16は、バルブガイド側切欠き部15dと対応する形状の切欠き部16dを備えることから、例えば切欠き部16dをバルブガイド側切欠き部15dと一致させることで、バルブガイド部材15に容易に組み付けることが可能になる。従って、本実施形態にあっては、スペーサ16を備える場合であっても、組み立て性が低下することを抑制することができる。
【0079】
係合部16eは、切欠き部16dに形成され、上記した被係合部15eと係合する部位である。例えば、係合部16eは、スペーサ16の外周側に形成される。詳しくは、係合部16eは、切欠き部16dの外周側にある2つの端部にそれぞれ形成される。
【0080】
また、係合部16eは、
図8に示すように、爪部16e1を備える。詳しくは、爪部16e1は、2つの係合部16eにそれぞれ形成される。2つの爪部16e1は、切欠き部16dの下端から周方向に沿って互いに離間する方向へ延在するように形成される。そして、スペーサ16は、係合部16eの爪部16e1が被係合部15eである段差に係合することで、バルブガイド部材15に固定される。
【0081】
このように、スペーサ16が係合部16eを備えることで、スペーサ16をバルブガイド部材15に確実に固定することができるとともに、組み付け後にスペーサ16とバルブガイド部材15とが外れて分離することを抑制することができる。
【0082】
また、係合部16eは、切欠き部16dに形成されるため、例えば組み付け後にスペーサ16の周方向への回転に対するストッパとして機能することができる。すなわち、本実施形態にあっては、係合部16eが切欠き部16dに形成されることで、組み付け後にスペーサ16がバルブガイド部材15に対して周方向に回転することを防止することができる。
【0083】
上述してきたように、実施形態に係るクローズ構造のバルブ装置10は、バルブガイド部材15と、レバー18と、レバーガイド部材17と、スペーサ16とを備える。バルブガイド部材15は、可動弁体14に取り付けられ、固定弁体13に対する可動弁体14の移動をガイドする。レバー18は、バルブガイド部材15に回動可能に接続される。レバーガイド部材17は、バルブガイド部材15の上方に配置されるとともに、レバー18の回動をガイドする。スペーサ16は、バルブガイド部材15とレバーガイド部材17との間に配置されるとともに、バルブガイド部材15の上面15aに固定される。これにより、バルブ装置10における耐摩耗性を向上させることができる。
【0084】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 水栓装置
10 バルブ装置
13 固定弁体
14 可動弁体
15 バルブガイド部材
16 スペーサ
17 レバーガイド部材
18 レバー