(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035131
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】バリ取りホルダ
(51)【国際特許分類】
B23C 3/12 20060101AFI20230306BHJP
B23D 79/00 20060101ALI20230306BHJP
B23B 31/08 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B23C3/12 B
B23D79/00 A
B23B31/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141759
(22)【出願日】2021-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】390027764
【氏名又は名称】カトウ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グィエン ディン ディン
【テーマコード(参考)】
3C022
3C032
3C050
【Fターム(参考)】
3C022DD11
3C032BB13
3C050FB09
(57)【要約】
【課題】複数の押しばねを備え、押しばねの組み合わせを切り換えることができるバリ取りホルダを提供する。
【解決手段】本発明のバリ取りホルダは、バリ取り工具の荷重を受けるメイン押しばねと、ばね受け内筒で荷重を受ける第1サブ押しばねと、第1サブ押しばねよりもばね定数が大きく、ばね受け外筒で荷重を受ける第2サブ押しばねと、ステップカバーと、を備え、該ステップカバーは、メイン押しばねだけが荷重を受ける状態と、メイン押しばねと第1サブ押しばねとが並列に荷重を受ける状態と、メイン押しばねと第2サブ押しばねとが並列に荷重を受ける状態と、メイン押しばねと第1サブ押しばねと第2サブ押しばねとが並列に荷重を受ける状態と、を切り換える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の下端部からバリ取り工具が挿脱されるバリ取りホルダであって、
前記本体の内部に設けられ、前記バリ取り工具からの荷重を、前記本体を介して直接に受けるメイン押しばねと、
前記バリ取り工具からの荷重を、前記本体の内部に設けられたばね受け筒を介して受ける一または複数のサブ押しばねと、
前記ばね受け筒と係脱可能となるように前記本体に回転操作可能に設けられ、前記メイン押しばねだけが前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け筒と係合することにより前記サブ押しばねの内のいずれか一の押しばねまたは2以上のサブ押しばねが前記メイン押しばねと並列に前記荷重を受ける状態とを切り換えるステップカバーと、を備えていることを特徴とするバリ取りホルダ。
【請求項2】
本体の下端部からバリ取り工具が挿脱されるバリ取りホルダであって、
前記本体の内部に設けられ、前記バリ取り工具からの荷重を、前記本体を介して直接に受けるメイン押しばねと、
前記バリ取り工具からの荷重を、ばね受け内筒を介して受ける第1サブ押しばねと、
前記第1サブ押しばねよりもばね定数が大きく、前記バリ取り工具からの荷重を、ばね受け外筒を介して受ける第2サブ押しばねと、
前記ばね受け内筒及び前記ばね受け外筒と係脱可能となるように前記本体に回転操作可能に設けられ、前記メイン押しばねだけが前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け内筒と係合することにより前記メイン押しばねと第1サブ押しばねとが並列に前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け外筒と係合することにより前記メイン押しばねと第2サブ押しばねとが並列に前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け内筒及び前記ばね受け外筒と係合することにより前記メイン押しばねと第1サブ押しばねと第2サブ押しばねとが並列に前記荷重を受ける状態とを切り換えるステップカバーと、を備えていることを特徴とするバリ取りホルダ。
【請求項3】
長いピンが前記ばね受け内筒に設けられ、短いピンが前記ばね受け外筒に設けられ、前記ばね受け外筒の内部に前記ばね受け内筒が組み付けられ、
前記組み付け状態の長いピン及び短いピンが、前記ステップカバーの内周側面に形成された浅い溝と浅い溝、浅い溝と深い溝、深い溝と浅い溝のいずれかに係合させることで前記切り換えがなされることを特徴とする請求項2記載のバリ取りホルダ。
【請求項4】
前記ステップカバーを上方向に付勢するステップばねが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のバリ取りホルダ。
【請求項5】
前記本体の下部外側に、防塵フィルター付きの防塵カバーが設けられることを特徴とする請求項2に記載のバリ取りホルダ。
【請求項6】
前記本体の下部外側に、ジャバラからなる防塵カバーが取付けられ、前記防塵カバーの下端が前記本体に固定され、前記防塵カバーが前記本体の上下動に合わせて伸縮することを特徴とする請求項2に記載のバリ取りホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバリ取りホルダに関し、より詳細には、複数の押しばねを備え、ワーク(被加工物)に応じて、押しばねの組み合わせを切り換えることができるバリ取りホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
バリ取り加工では、一般にワークの凹凸を取るため、伸縮ホルダを使用する。伸縮ホルダは、ワークに凸凹があっても均一な面取りができ、小さい荷重変化に対応できる。小さい荷重変化に対応するため、ばね定数の小さいばねを使用して伸縮ホルダが作られる。例えば、ばね定数の少し強い伸縮ホルダが必要な場合には、ばね定数の異なるばねを使用した伸縮ホルダを用意することになる。1本のバリ取りホルダで複数の荷重を設定するには、使用するばねの自由長が長くなるので、バリ取りホルダの寸法が現実的なものにならない。
【0003】
本発明の出願人は、特許文献1に示すバリ取り及び面取り工具を提案した。特許文献1のバリ取りホルダは、1本のホルダで1つ荷重しか設定できない。そのため、ユーザーによっては、
図12に示すように、4つのバリ取りホルダを用意し、それぞれにばね定数の異なるばねを装填し、設定荷重が「小」、「中」、「大」、「最大」などとし、この中から選択している。これによりワークの条件に適した荷重のバリ取りホルダを選定できる。しかしながら、1本のバリ取りホルダで、設定荷重が複数段に切り換えでき、かつ、小さな荷重変化に対応できるバリ取りホルダを求める声がある。
【0004】
従来の他の技術として、
図13に示すように、1本のばねの長さを変化させ、バリ取りホルダの予荷重を調整している。ばねの長さは調整器具を使用して、ばねの支持部となるネジを回転して調整する。例として、予荷重は、a~dの4段階に設定している。
図14に示すように、1つのばねで予荷重を調整する場合、ばねを長くしたくないため、比較的大きなばね定数のばねが採用される。つまりΔW
Tの傾きが大きい。そして、予荷重にかかわらず、ばね定数は一定である。そのため、予荷重が「小」の「a」であっても、荷重の変化量が大きいので、ワークによってはバリ取りの面幅のばらつきが大きくなることがある。また、1つのばねで予荷重を広い荷重範囲で調整可能とするには、ばね縮み量を広範囲で調整する必要があり、調整ねじを回す回数が多くなる。このため、調整作業に時間がかかるし、現在の設定値も把握しにくい。間違いないようにするには作業者への負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複数の押しばねを備え、押しばねの組み合わせを切り換えることができるバリ取りホルダを提供することにある。言い換えるなら複数の押しばねを備えてもコンパクトな構造が可能で、調整作業を飛躍的に向上でき、設定値が瞬時に判断可能なバリ取りホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による請求項1のバリ取りホルダは、本体の下端部からバリ取り工具が挿脱されるバリ取りホルダであって、前記本体の内部に設けられ、前記バリ取り工具からの荷重を、前記本体を介して直接に受けるメイン押しばねと、前記バリ取り工具からの荷重を、前記本体の内部に設けられたばね受け筒を介して受ける一または複数のサブ押しばねと、前記ばね受け筒と係脱可能となるように前記本体に回転操作可能に設けられ、前記メイン押しばねだけが前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け筒と係合することにより前記サブ押しばねの内のいずれか一の押しばねまたは2以上のサブ押しばねが前記メイン押しばねと並列に前記荷重を受ける状態とを切り換えるステップカバーと、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項2のバリ取りホルダは、本体の下端部からバリ取り工具が挿脱されるバリ取りホルダであって、前記本体の内部に設けられ、前記バリ取り工具からの荷重を、前記本体を介して直接に受けるメイン押しばねと、前記バリ取り工具からの荷重を、ばね受け内筒を介して受ける第1サブ押しばねと、前記第1サブ押しばねよりもばね定数が大きく、前記バリ取り工具からの荷重を、ばね受け外筒を介して受ける第2サブ押しばねと、前記ばね受け内筒及び前記ばね受け外筒と係脱可能となるように前記本体に回転操作可能に設けられ、前記メイン押しばねだけが前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け内筒と係合することにより前記メイン押しばねと第1サブ押しばねとが並列に前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け外筒と係合することにより前記メイン押しばねと第2サブ押しばねとが並列に前記荷重を受ける状態と、前記ばね受け内筒及び前記ばね受け外筒とが係合することにより前記メイン押しばねと第1サブ押しばねと第2サブ押しばねとが並列に前記荷重を受ける状態とを切り換えるステップカバーと、を備えていることを特徴とする。
【0009】
長いピンが前記ばね受け内筒に設けられ、短いピンが前記ばね受け外筒に設けられ、前記ばね受け外筒の内部に前記ばね受け内筒が組み付けられ、前記組み付け状態の長いピン及び短いピンが、前記ステップカバーの内周側面に形成された浅い溝と浅い溝、浅い溝と深い溝、深い溝と浅い溝のいずれかに係合させることで前記切り換えがなされることを特徴とする。
【0010】
前記ステップカバーを上方向に付勢するステップばねが設けられていることを特徴とする。
【0011】
前記本体の下部外側に、防塵フィルター付きの防塵カバーが設けられることを特徴とする。
【0012】
前記本体の下部外側に、ジャバラからなる防塵カバーが取付けられ、前記防塵カバーの下端が前記本体に固定され、前記防塵カバーが前記本体の上下動に合わせて伸縮することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のバリ取りホルダによれば、
[a]メイン押しばねと、ばね受け筒を介して受ける一または複数の押しばねと、ばね受け筒と係脱可能で回転操作可能なステップカバーと、を設け、メイン押しばねだけが荷重を受ける状態と、ばね受け筒と係合することにより押しばねの内のいずれか一の押しばねまたは2以上の押しばねがメイン押しばねと並列に荷重を受ける状態とを切り換えるので、バリ取りホルダを面取りの荷重に合わせて複数本用意する必要がない。
[b]1本のホルダで、複数のばね定数を有するバリ取りホルダにできる。
【0014】
本発明の請求項2に記載のバリ取りホルダによれば、
[a]第1~第2サブ押しばねとステップカバーとを備えたので、メイン押しばねだけを使用する場合、メイン押しばねと第1サブ押しばねを並列に使用する場合、メイン押しばねと第2サブ押しばねを並列に使用する場合、及びメイン押しばねと第1サブ押しばねと第2サブ押しばねを並列に使用する場合をステップカバーで切り換えることができる。
[b]第1~第2サブ押しばねを組み合わせたので、押しばねの強さを4段階に調整できる。メイン押しばねのばね定数を小さいできるので、弱い押しばねが可能になり、バリ取りの面幅のばらつきを小さくしたい加工に適する。押しばね並列に使用し、強さを次第に大きくしたので、大きなばね定数を必要とする加工にも適する。
[c]ステップカバーは回転可能であり、実施例によれば、180°(又は左右に90°)回すだけで4段階の荷重に切り換えできる。シャンクに対するステップカバーの回転させた位置を示す番号などにより、調整時及び使用中の荷重が直ちに把握できる。
【0015】
本発明の請求項3によれば、ばね受け内筒に長いピンを設け、ばね受け外筒に短いピンを設け、長いピンと短いピンを、ステップカバーの内周側面に形成した浅い溝と浅い溝、浅い溝と深い溝、深い溝と浅い溝のいずれかに係合させるように構成したので、ばねの切り換えができる。次の動作ができる。
[a](長いピン、短いピン)を(浅い溝、浅い溝)に係合させた場合は、メイン押しばねだけが伸縮する。
[b](長いピン、短いピン)を(深い溝、浅い溝)に係合させた場合は、ばね受け内筒の第1サブ押しばねがメイン押しばねと並列に伸縮する。
[c](長いピン、短いピン)を(浅い溝、深い溝)に係合させた場合は、ばね受け外筒の第2サブ押しばねがメイン押しばねと並列に伸縮する。
[d](長いピン、短いピン)を(深い溝、深い溝)に係合させた場合は、ばね受け内筒の第1サブ押しばねと、ばね受け外筒の第2サブ押しばねと、メイン押しばねと、が並列に伸縮される。
【0016】
本発明の請求項4によれば、ステップカバーを上方向に付勢するステップばねを設けたので、ステップカバーを付勢力に抗して押し下げることで、例えば長いピン又は短いピンを深い溝から離し、係合状態を解除することができる。ステップカバーを押し下げるので、ステップカバーの回動が容易である。
【0017】
本発明の請求項5によれば、本体の下部外側に、防塵フィルター付きの防塵カバーを設けたので、可動部材である本体とシャンク下端の隙間から、内部に鉄粉が浸入することを防ぐことができる。
【0018】
本発明の請求項6によれば、本体の下部外側に、ジャバラからなる防塵カバーを取付け、防塵カバーの下端を本体に固定したので、防塵カバーが本体の上下動に合わせて伸縮するようにでき、可動部材である本体とシャンク下端の隙間から、内部に鉄粉が浸入することを完全に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によるバリ取りホルダの全体構成図である。(a)はA-A’断面図で、(b)はB-B’断面図である。(c)は、ステップカバーの上部側面の図である。
【
図2】
図1のばね受け内筒と、ばね受け外筒を示す図である。(a)は、組み立て前の各外観図である。(b)は、組み立て後のばね受け内筒がばね受け外筒に挿入された状態を示す図である。
【
図3】
図1でステップカバーを外した状態のシャンクを示す図である。
【
図4】ばね受け内筒がばね受け外筒に挿入された状態の図と、ステップカバーの外観図と、ステップカバーの上部側面の図である。
【
図5】本発明のバリ取りホルダが、メイン押しばねのみで動作する場合の説明図である。
【
図6】本発明のバリ取りホルダが、メイン押しばねと第1サブ押しばねで動作する場合の説明図である。
【
図7】本発明のバリ取りホルダが、メイン押しばねと第2サブ押しばねで動作する場合の説明図である。
【
図8】本発明のバリ取りホルダが、メイン押しばねと第1サブ押しばねと第2サブ押しばねで動作する場合の説明図である。
【
図9】本発明によるバリ取りホルダの荷重(N)と縮み量(mm)との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明によるメイン押しばねと、第1サブ押しばねと、第2サブ押しばねの切り換え状態を示す説明図である。
【
図11】本発明による防塵カバーの取付け状況を示す図である。(a)は防塵カバーに防塵フィルターを使用した場合で、(b)は防塵カバーにジャバラを使用した場合を示す。
【
図12】従来のバリ取りホルダの例で、ばね定数の異なるばねが装填された4つのバリ取りホルダを示す図である。
【
図13】従来のバリ取りホルダの例で、1本のばねの長さを変化させ、バリ取りホルダの予荷重が調整される。
【
図14】従来のバリ取りホルダの例で、1本のばねに複数の予荷重を与えた場合の荷重(N)に対する縮み量(mm)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0020】
図面を参照して、本発明によるバリ取りホルダを詳しく説明する。
図1~
図11に示す実施例は、1本のメイン押しばねと2本のサブ押しばねを使用し、4段階の荷重を設定できるバリ取りホルダである。
【0021】
図1は、本発明によるバリ取りホルダ100の全体構成図である。
図1(a)はA-A’断面図で、A-A’は
図1(b)に示す。
図1(b)はB-B’断面図で、B-B’
図1(a)に示す。
図1(c)はステップカバーの上部側面の外観図である。バリ取りホルダ100は、本体2の下端に設けられるテーパコレット20とナット19によってバリ取り工具21が装着される。バリ取り工具がワークから受ける上方向の荷重は、テーパコレット20の把握力と本体2により第1押ばね9に伝達される。アジャストスクリュー18は、刃先の位置調整に使われ、シャンク部が長い場合は使用しないこともある。メイン押しばね9は、上側がシャンクキャップ8で押さえられているので、上方向への荷重を受けて縮み、荷重がなくなると伸びる。バリ取り工具21からの荷重は本体2で受け止められる。本体2は、荷重により上方向に押し上げられ、メイン押しばね9が縮み、メイン押しばねが押し戻されるなら下方向に押し下げられる可動部材である。
【0022】
本実施例では、メイン押しばね9の他に第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11が設けられる。ばね定数は、メイン押しばね9がk1、第1サブ押しばね10がk2、第2サブ押しばね11がk3とする。そして第1サブ押しばね10が内側、第2サブ押しばね11が外側となるように重ねてシャンクキャップ8の軸に組付けられる。第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11は、コイルの巻き方が互いに逆向きに挿入され、絡みつきのジャムが起きないようにしている。メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11は、シャンク1で覆われる形となる。
【0023】
第1サブ押しばね10は、ばね受け内筒6で受け止められる。第2サブ押しばね11は、ばね受け外筒7で受け止められる。ばね受け内筒6とばね受け外筒7は、まとめてばね受け筒と呼ぶ。ばね受け内筒6の下部には、2本の長いピン15が筒の両側に突出する。ばね受け外筒7の下部には、2本の短いピン15が筒の両側に突出する。ばね受け内筒6及びばね受け外筒7の下側には、ばね切り換えのステップカバー3が設けられる。ステップカバー3はステップばね12で上方向に付勢されている。そのため、手動でステップカバー3を押し下げることができる。ステップカバー3を押し下げることで、ステップカバー3とばね受け内筒6及びばね受け外筒7の係脱ができる。カバー4はステップばね12の下側に設けられる。防塵カバー5は、下部が本体2を覆うように設けられる。防塵カバー5には防塵フィルター13が設けられる。鋼球14はシャンク1に設けられる。
【0024】
図1(b)は、
図1(a)のB-B’断面図である。
図1(b)は、ステップカバー3の断面を示しており、ステップカバー3の外側面には、ステップ番号23を示す[1]~[4]が刻印されている。ステップ番号は、四角で囲った数字で、反時計回りに[1]、[2]、[4]、[3]、[1]、[2]、[4]、[3]の順(底面視)に刻印されている。ステップカバー3の内周面には刻印に対応して半円形の溝が45°の間隔で8つ設けられている。半円形の溝には、浅い溝と深い溝がある。浅い溝に長いピン15が係合すると、ばね受け内筒6はステップカバー3の内部を下降できず、第1サブ押しばね10の動作が遮断される。深い溝に長いピン15が係合すると、ばね受け内筒6は、ステップカバー3の内部を下降して本体2の上端と接触して、第1サブ押しばね10が伸縮動作できる。同様に、浅い溝に短いピン16が係合する場合は、押しばね11の動作が遮断される。深い溝に短いピン16が係合する場合は、第1サブ押しばね11が伸縮動作できる。
【0025】
図1(c)はステップカバー3の上部側面の外観図である。シャンク1の上部外側には、三角マーク22が刻印されており、ステップカバー3のステップ番号23を示す刻印[1]を三角マーク22に合わせてある。この場合、
図1(b)に示すように、長いピン15、15が、ステップカバー3の内周面の刻印[1]、[1]に対応した溝に係合し、短いピン16、16が、ステップカバー3の内周面の刻印[3]、[3]に対応した溝に係合する。
【0026】
図2は、
図1のばね受け内筒6と、ばね受け外筒7を示す図である。(a)は、組み立て前のそれぞれの外観図である。(b)は、組み立て後のばね受け内筒6が、ばね受け外筒7に挿入された状態を示す図である。ばね受け外筒7には長いピン15のためのスリットがあるので、長いピン15があるばね受け内筒6をばね受け外筒7に挿入できる。ばね受け内筒6がばね受け外筒7に挿入された状態では、長いピン15、15の2つがばね受け外筒7の両側から突出し、短いピン16、16の2つが、長いピン15、15から45°離れたばね受け外筒7の両側に突出した状態になる。
【0027】
図3は、
図1でステップカバー3を外した状態のシャンク1を示す図である。シャンク1には、4カ所に長い溝があって、長いピン15、15と短いピン16、16が付き出せる。4カ所に長い溝に沿って、長いピン15、15と短いピン16、16が移動できる。バリ取り加工中の荷重を示すため、シャンク1には三角マーク22が刻印されている。
図3では三角マーク22の位置に長いピン15が突出し、45°離れた位置に短いピン16が突出する。三角マーク22と、長いピン15と、短いピン16との位置関係は、組み立てた後は変化しない。
【0028】
図4は、ばね受け内筒6がばね受け外筒7に挿入された状態の図と、ステップカバー3の外観図と、ステップカバー3の上部側面の図である。ステップカバー3の外面に、ステップ番号23が時計回りに[1]、[2]、[4]、[3]、[1]、[2]、[4]、[3]の順(上面視)に刻印されている。刻印[1]と[3]が浅い溝で、刻印[2]と[4]が深い溝である。組み立て状態では、ステップカバー3のステップ番号23の刻印[1]を三角マーク22に合わせている。そのため長いピン15、15が浅い溝に係合し、短いピン16、16が浅い溝に係合している。
【0029】
ステップカバー3を、ステップばね12の付勢力に抗して下方向に引っ張りながら45°ずつ回動させることで、ステップカバー3のステップ番号23の刻印[1]~[4]をシャンク1の三角マーク22に合わせる。これにより、表1に示す4段階の荷重に切り換えることができる。以下では、4段階の切り換えを説明する。
【0030】
【0031】
図5は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9だけで動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[1]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が小(弱い)の設定である。メイン押しばね9は、ばね定数k1が小さいばねとする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[1]を三角マーク22に合わせた場合、B-B’断面図に示すように、長いピン15、15が、刻印[1]と[1]に設けられた浅い溝に入り、短いピン16、16が刻印[3]と[3]に設けられた浅い溝に入る。このため、長いピン15と短いピン16がそれぞれ浅い溝に入ると、ばね受け内筒6とばね受け外筒7が共に、本体2の上下方向に移動できる範囲外に押し留められる。そのためメイン押しばね9だけがバリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図5のA-A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9だけが縮み、本体2も上昇するが、ばね受け内筒6とばね受け外筒7が、ステップカバー3の浅い溝でブロックされ、本体2とは係合しないので、第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11は働かない。
【0032】
図6は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10で動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[1]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が中(普通)の設定である。メイン押しばね9のばね定数がk1で、第1サブ押しばね10のばね定数がk2で、k2はk1より値が大きい(k1<k2)とする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[2]を三角マーク22に合わせた場合、B-B’断面図に示すように、長いピン15、15が、刻印[2]、[2]に設けられた深い溝に入り、短いピン16、16が、刻印[1]、[1]に設けられた浅い溝に入る。深い溝に短いピン15が入ると、ばね受け内筒6が本体2の頂部に当接するまで下降する。浅い溝に短いピン16が入ると、ばね受け外筒7は、本体2の上下方向に移動できる範囲外に押し留められる。そのため、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10が並列に配置されて、バリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図6のA-A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10が縮む。本体2が上昇してもばね受け外筒7とは係合せず、第2サブ押しばね11は働かない。
【0033】
図7は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11で動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[3]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が大(強い)の設定である。メイン押しばね9のばね定数がk1で、第1サブ押しばね10のばね定数がk2で、第2サブ押しばね11のばね定数がk3で、k3はk2より値が大きい(k2<k3)とする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[3]を三角マーク22に合わせた場合、B-B’断面図に示すように長いピン15、15が、刻印[3]、[3]に設けられた浅い溝に入り、短いピン16、16が、刻印[4]、[4]に設けられた深い溝に入る。浅い溝に長いピン15が入ると、ばね受け内筒6が本体2の上下方向に移動できる範囲外に押し留められる。深い溝に長いピン16が入ると、ばね受け外筒7が本体2の頂部に当接するまで下降する。そのため、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11が並列に配置されて、バリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図7のA-A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11が縮む。本体2が上昇してもばね受け内筒6とは係合しないので、第1サブ押しばね10は働かない。
【0034】
図8は、本発明のバリ取りホルダ100が、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11で動作する場合の説明図である。ステップカバー3の刻印[4]を三角マーク22に合わせている。表1の荷重が最大(強い)の設定である。メイン押しばね9のばね定数がk1で、第1サブ押しばね10のばね定数がk2で、第2サブ押しばね11のばね定数がk3で、k3はk2より値が大きい(k2<k3)とする。ステップカバー3の刻印[1]、[3]には浅い溝が設けられ、刻印[2]、[4]には深い溝が設けられている。ステップカバー3を回動し、刻印[4]を三角マーク22に合わせた場合、B-B’断面図に示すように長いピン15、15が、刻印[4]、[4]に設けられた深い溝に入り、短いピン16、16が刻印[2]、[2]に設けられた深い溝に入る。深い溝に長いピン15が入ると、ばね受け内筒6が本体2の頂部に当接するまで下降する。深い溝に短いピン16が入ると、ばね受け外筒7も本体2の頂部に当接するまで下降する。そのため、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11が並列に配置されてバリ取り工具21からの荷重を受ける状態となる。
図8のA-A’断面図に示すように、バリ取り工具21からの荷重で、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11が縮む。
【0035】
図9は、本発明によるバリ取りホルダ100の荷重(N)と縮み量(mm)との関係を示すグラフである。a’、b’、c’、d’は、表1の三角マークでの刻印[1]、[2]、[3]、[4]に対応する。a’は、メイン押しばね9のばね定数k1が小さいので、傾きが小さく、よって、ΔW
kが小さい。b’は、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10を並列に使用するので、傾きはa’よりも大きい。c’は、メイン押しばね9と第2サブ押しばね11を並列に使用するので、傾きはb’よりも大きくなる。d’は、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11を並列に使用するので、傾きはc’よりも大きくなる。a’、b’、c’、d’には予荷重をかけているが、
図1のアジャストスクリュー18を回すことで、第1押しばね9の予荷重を調節できる。
【0036】
図10は、本発明によるメイン押しばね9と、第1サブ押しばね10と、第2サブ押しばね11の切り換え状態を示す説明図である。a’、b’、c’、d’は、表1の三角マークでの刻印[1]、[2]、[3]、[4]に対応する。メイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11の各ばね定数をk1、k2、k3とすると、ばねを並列に配置して使用するので、a’ではk1、b’ではk1+k2、c’ではk1+k3、d’ではk1+k2+k3となる。k2<k3とするので、このようにばね各段階で定数を次第に大きくできる。
【0037】
図11は、本発明による防塵カバー5の取付け状況を示す図である。(a)は、防塵カバー5に防塵フィルター13を使用した場合で、
図1のバリ取りホルダ100の下側部分を切り出した図である。(b)は、防塵カバー5にジャバラを使用した場合を示す。本体2の下部の側面は、シャンク1が下方向に伸びて、本体2を覆っている。本体2はバリ取り工具21からの荷重を受けて伸縮する可動部材で、シャンク1の下端と本体2のわずかな隙間にバリ取りの鉄粉等が入り込むことがあった。
図11(a)に示すように、本体2の下部外側に防塵フィルター13付きの防塵カバー5を設けた。これにより鉄粉が防塵フィルター13で捕捉され、シャンク1の下端と本体2の間の隙間に入り込まないようにできる。
図11(b)に示すように、ジャバラからなる防塵カバー5を取付け、防塵カバー5の下端を本体2に固定した。
図11(b)の防塵カバー5はジャバラなので、本体2の上下動に合わせて伸縮できる。そのため、防塵カバー5の下端を本体2に固定しても、固定した箇所に負荷がかからず、鉄粉等の浸入をブロックできる。
【0038】
本実施例(
図1~
図11)では、バリ取りホルダ100にメイン押しばね9と第1サブ押しばね10と第2サブ押しばね11の3つを使用したが、これに限らず、メイン押しばね9と第1サブ押しばね10の2つで構成することもできる。その場合、バリ取りホルダ100は、2段階の切り換えとなる。ばね受け筒は単筒となる。メイン押しばね9とサブ押しばねを3つで構成することもできる。その場合、バリ取りホルダ100は、8段階の切り換えとなる。ばね受け筒は内筒と、中筒と、外筒の3つからなる。
本発明は、複数の押しばねを備え、押しばねの組み合わせを切り換えて使用することができるバリ取りホルダとして好適である。このバリ取りホルダは、マシニングセンターの工作機械やロボットに装着して使用できる。