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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035160
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B25J15/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141789
(22)【出願日】2021-08-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤/サブテーマIIISociety5.0実現のための社会実装技術/CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】川村 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】王 忠奎
(72)【発明者】
【氏名】森 佳樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707AS22
3C707AS28
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET01
3C707EU11
3C707EV02
3C707HS17
3C707HS20
(57)【要約】
【課題】 軽量で十分な把持力を有するとともに接触による衝撃を低減することができ、防水加工を施すことなく水中にある対象物を把持可能なエンドエフェクタを提供する。
【解決手段】エンドエフェクタ1aは、ロボットアーム2に装着される本体部3aと、対象物を把持する複数の剛体指4と、前記本体部3aにそれぞれの前記剛体指4を連結する第一ベローズ5aと、前記剛体指4の一端同士を互いに接近離反方向に移動させる第二ベローズ6aと、を備え、前記第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aは、その内部空間41,51に正圧又は負圧が供給されることで伸縮される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに装着される本体部と、
対象物を把持する複数の剛体指と、
前記本体部にそれぞれの前記剛体指を連結する第一ベローズと、
前記剛体指の一端同士を互いに接近離反方向に移動させる第二ベローズと、
を備え、
前記第一ベローズ及び第二ベローズは、その内部空間に正圧又は負圧が供給されることで伸縮されることを特徴とするエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記第一ベローズ及び第二ベローズは、弾性を有する中空であり、前記内部空間が雰囲気と同じ気圧のときよりも、前記内部空間に前記正圧又は前記負圧が供給されたときのほうが、その剛性が高いことを特徴とする請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記複数の剛体指が前記対象物を把持したときに、前記剛体指の姿勢及び当該剛体指同士の相対位置を固定するブレーキ手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記複数の剛体指が前記対象物を把持したときに、把持された前記対象物が前記本体部側に移動することを抑制する押え部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記第一ベローズ及び前記第二ベローズは、前記内部空間に前記正圧又は前記負圧をそれぞれ選択的に供給可能であることを特徴とする請求項1から請求項4に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記第一ベローズ及び前記第二ベローズは、前記剛体指の長さ方向に距離を開けて平行に配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記第一ベローズは前記内部空間に前記負圧を供給したときに、前記剛体指の一端を拘束することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
前記第一ベローズ及び前記第二ベローズによって、前記複数の剛体指は、互いに一端が接触するように姿勢が変位されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
前記第一ベローズ及び前記第二ベローズによって、前記複数の剛体指は、互いに交差するように姿勢が変位されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のエンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの先端に取り付けられるエンドエフェクタに関し、特に、対象物を把持するエンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で人手不足の解消や作業負担の低減を目的として自動化を進めることが求められている。例えば、農業分野おいてもロボット技術の導入が進められており(非特許文献1参照)、農作物集配場で行われる洗浄、葉切り、形状選別、箱詰め等の代表的作業は、大型設備によって自動化されている場合も多いが、各作業の繋ぎ目では、人手による整列作業が行われている。
【0003】
また、例えば、食品加工工場、中食産業、外食産業等においても自動化が求められているが、食品は脆弱で崩れやすい場合があり、また食器類には水や油が残存しているなどの問題があり、食品や食器類のハンドリング工程の自動化には困難な場合が多い。
【0004】
食品を把持するエンドエフェクタとしては、例えば、ドーナツ状のエアチューブを対象物に外嵌した後に、エアチューブ内部に圧縮空気を送り込んでこれを内側に膨出させることによって、対象物を中心軸方向に押圧して把持するものが提案されている(特許文献1参照)。また、食器洗いを自動化するためにベローズアクチュエーターを動力としたエンドエフェクタが提案されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-69612号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“スマート農業”,農林水産省,[令和3年8月18日検索],インターネット <URL:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/>
【非特許文献2】王 忠奎 他6名,“A Soft Robotic Hand Based on Bellows Actuators for Dishwashing Automation”,IEEE Robotics and Automation Letters 6.2,2021年4月発行,p2139-2146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような農業や食品産業で利用されるエンドエフェクタは、ランダムに積み重なった多数の対象物から1つずつ対象物を把持して整列させる必要から高速性が要求される。また、対象物は水槽などの水中に置かれている場合もあるので、エンドエフェクタを水没させても把持機能を発揮できる必要がある。さらに、周辺環境によっては、エンドエフェクタがロボットアームの周辺や対象物に接触する可能性があり、接触の衝撃を低減できることが望まれる。また、ロボットアームへの負荷を低減するために軽量でありつつ、対象物を持ち上げる十分な把持力を有する必要がある。
【0008】
そこで本発明は、軽量で十分な把持力を有するとともに接触による衝撃を低減することができ、防水加工を施すことなく水中にある対象物を把持可能なエンドエフェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1のエンドエフェクタは、ロボットアームに装着される本体部と、対象物を把持する複数の剛体指と、前記本体部にそれぞれの前記剛体指を連結する第一ベローズと、前記剛体指の一端同士を互いに接近離反方向に移動させる第二ベローズと、を備え、前記第一ベローズ及び第二ベローズは、その内部空間に正圧又は負圧が供給されることで伸縮されることを特徴としている。
【0010】
好ましくは、本発明の第2のエンドエフェクタは、前記第一ベローズ及び第二ベローズは、弾性を有する中空であり、前記内部空間が雰囲気と同じ気圧のときよりも、前記内部空間に前記正圧又は前記負圧が供給されたときのほうが、その剛性が高いことを特徴としている。
【0011】
より好ましくは、本発明の第3のエンドエフェクタは、前記複数の剛体指が前記対象物を把持したときに、前記剛体指の姿勢及び当該剛体指同士の相対位置を固定するブレーキ手段をさらに備えることを特徴としている。
【0012】
さらに好ましくは、本発明の第4のエンドエフェクタは、前記複数の剛体指が前記対象物を把持したときに、把持された前記対象物が前記本体部側に移動することを抑制する押え部をさらに備えることを特徴としている。
【0013】
また好ましくは、本発明の第5のエンドエフェクタは、前記第一ベローズ及び前記第二ベローズは、前記内部空間に前記正圧又は前記負圧をそれぞれ選択的に供給可能であることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の第6のエンドエフェクタは、前記第一ベローズ及び前記第二ベローズは、前記剛体指の長さ方向に距離を開けて平行に配置されることを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明の第7のエンドエフェクタは、前記第一ベローズは前記内部空間に負圧を供給したときに、前記剛体指の一端を拘束することを特徴としている。
【0016】
そして、本発明の第8のエンドエフェクタは、前記第一ベローズ及び前記第二ベローズによって、前記複数の剛体指は、互いに一端が接触するように姿勢が変位されることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の第9のエンドエフェクタは、前記第一ベローズ及び前記第二ベローズによって、前記複数の剛体指は、互いに交差するように姿勢が変位されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1のエンドエフェクタによると、ロボットアームに装着される本体部と、対象を把持する剛体指とが、第一ベローズによって連結されているので、剛体指が外環境や把持対象物に接触したときに、第一ベローズが変形することで衝撃を弱めることができる。そして、内部空間に正圧又は負圧を供給することで第二ベローズを伸縮させ、剛体指の一端同士が互いに接近するように変位させるものであり、これによって対象物を剛体指の間に挟んで把持することができるので、空気圧制御のみで駆動されており、例えば電気的なアクチュエータと異なり、特別な防水処理を施さなくても水に強く、例えば対象物が水中に置かれているような場合でも把持することができる。
【0019】
好ましい形態の第2のエンドエフェクタによると、第一ベローズ及び第二ベローズは内部空間が雰囲気と同じ気圧のときにより柔軟であるので、対象物を把持する前に、ロボットアームを駆動して剛体指の先端を対象物に近づけるときには、第一ベローズ及び第二ベローズの内部空間を雰囲気と同じ気圧にすることで、剛体指がロボットアームに対して柔軟に保持されることとなり、剛体指が外環境や把持対象物に接触した場合の衝撃を極めて小さくすることができる。また、対象物を剛体指の間に把持する際には、第一ベローズ及び第二ベローズの内部空間に正圧又は負圧が供給されることで、第一ベローズ及び第二ベローズの剛性が高まるので、ロボットアームを駆動して把持している対象物を精度よく所望の場所に移動させることができる。
【0020】
より好ましい形態の本発明の第3のエンドエフェクタは、ブレーキ手段が、複数の剛体指が対象物を把持したときに、剛体指の姿勢及び剛体指同士の相対位置を固定するので、対象物をより安定して確実に把持することができる。
【0021】
さらに好ましくは、本発明の第4のエンドエフェクタは、複数の剛体指が対象物を把持したときに、押え部によって、把持された対象物の本体部側に移動が抑制されるので、対象物を安定して適切な位置で把持することができ、対象物の脱落や損傷を抑制できる。
【0022】
より好ましい形態の第5のエンドエフェクタによると、第一ベローズ及び第二ベローズは、内部空間に正圧又は負圧をそれぞれ選択的に供給可能であるので、第一ベローズ及び第二ベローズの内部空間にともに正圧を供給する、ともに負圧を供給する、又は一方に正圧を供給し、他方に負圧を供給する等によって、第一ベローズ及び第二ベローズを別々に伸縮させることができ、剛体指の開閉量や把持する強さにバリエーションを持たせることができ、対象物の状態に応じて選択することができる。
【0023】
また、本発明の第6のエンドエフェクタによると、第一ベローズ及び第二ベローズは、剛体指の長さ方向に距離を開けて平行に配置されているので、第一ベローズの内部空間に正圧を供給して伸長させ、第二ベローズの内部空間に負圧を供給して短く縮めることで、複数の剛体指は一端が互いに接近し、他端が互いに離反するように姿勢を変化させることとなる。また、逆に、第一ベローズの内部空間に負圧を供給して短く縮め、第二ベローズの内部空間に正圧を供給して伸長させることで、複数の剛体指は一端が互いに離反し、他端が互いに接近するように姿勢を変化させることとなる。このような制御によって、複数の剛体指を互いに開閉させることができ、対象物を把持することができる。
【0024】
さらに、本発明の第7のエンドエフェクタによると、第一ベローズは内部空間に負圧を供給したときに、剛体指の一端を拘束するので、第一ベローズに負圧を供給した状態で、第二ベローズに正圧を供給すると、複数の剛体指の第二ベローズ側の端部が互いに離反し、第二ベローズに負圧を供給すると、複数の剛体指の第二ベローズ側の端部が互いに接近するので、複数の剛体指を互いに開閉させて対象物を把持することができる。
【0025】
そして、本発明の第8のエンドエフェクタによると、第一ベローズ及び第二ベローズによって、複数の剛体指は互いに一端が接触するように姿勢が変位されるので、第一ベローズ及び第二ベローズの内部空間の正圧又は負圧を制御することで対象物を把持することができる。
【0026】
また、本発明の第9のエンドエフェクタによると、第一ベローズ及び第二ベローズによって、複数の剛体指は、互いに交差するように姿勢が変位されるので、より強く対象物を把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一実施形態のエンドエフェクタの外観構成を説明する斜視図。
図2】第一実施形態のエンドエフェクタの内部構成を説明する断面図。
図3】第一実施形態のエンドエフェクタを開閉する状態を説明する図。
図4】第一実施形態のエンドエフェクタの制御のバリエーションを説明する図。
図5】第一実施形態のエンドエフェクタを用いて対象物を把持する状態を説明する図。
図6】第一実施形態のエンドエフェクタの変形例として押え部を有するエンドエフェクタの全体構成を説明する正面図。
図7】押え部を有するエンドエフェクタが対象物を把持する状態を説明する正面図。
図8】(A)は第一実施形態のエンドエフェクタの変形例としてブレーキ手段を有するエンドエフェクタの全体構成を説明する正面図、(B)は(A)のエンドエフェクタの側面図。
図9】(A)は図8のエンドエフェクタが対象物を把持する状態を説明する正面図、(B)は(A)のエンドエフェクタの側面図。
図10】第二実施形態のエンドエフェクタの全体構成を説明する正面図。
図11】第二実施形態のエンドエフェクタを開閉する状態を説明する図。
図12】第三実施形態のエンドエフェクタの全体構成を説明する正面図。
図13】第三実施形態のエンドエフェクタを開閉する状態を説明する図。
図14】第四実施形態のエンドエフェクタの全体構成を説明する正面図。
図15】第四実施形態のエンドエフェクタを開閉する状態を説明する図。
図16】第四実施形態のエンドエフェクタの変形例を説明する正面図。
図17】第五実施形態のエンドエフェクタの全体構成を説明する正面図。
図18】第五実施形態のエンドエフェクタを開閉する状態を説明する図。
図19】第五実施形態のエンドエフェクタの変形例を説明する正面図。
図20】第五実施形態のエンドエフェクタのさらなる変形例を説明する正面図。
図21】第六実施形態のエンドエフェクタの全体構成を説明する正面図。
図22】第六実施形態のエンドエフェクタを開閉する状態を説明する図。
図23】第七実施形態のエンドエフェクタの全体構成を説明する斜視図。
図24】第七実施形態のエンドエフェクタの剛体指同士が交差する状態を説明する正面図。
図25】第八実施形態のエンドエフェクタの全体構成を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係るエンドエフェクタ1aについて、図1から図5を参照しつつ説明する。第一実施形態のエンドエフェクタ1aは、ロボットアーム2の先端に装着されて、対象物Tを把持するグリッパである。このエンドエフェクタ1aが把持する対象物Tは、特に限定されるものではないが、例えば収穫した果実や根菜類などの農作物が例示される。これらの農作物を洗浄、葉切り、形状選別、箱詰め等の作業を行う装置に供給する際に、農作物を傷つけることなく整列させるために、本実施形態のエンドエフェクタ1aが装着されたロボットアーム2が用いられる。なお、エンドエフェクタ1aが把持する対象物Tとしては、農作物の他に、例えば外食産業等における食器類や加工食品などの様々な物品を例示できる。
【0029】
第一実施形態のエンドエフェクタ1aは、図1及び図2に示すように、図示しないロボットアーム2に装着される本体部3aと、対象物Tを把持する2つ剛体指4と、本体部3aにそれぞれの剛体指4を連結する2つの第一ベローズ5aと、2つの剛体指4を連結する第二ベローズ6aとを備えている。
【0030】
なお、以下の記載及び各図においては、エンドエフェクタ1aは、便宜上、ロボットアーム2の先端に固定される側を上方向とし、対象物Tを把持する側を下方向として説明する。実際には、エンドエフェクタ1aは、ロボットアーム2の動作によって様々な姿勢をとるので、必ずしも上述のような上下方向となっているわけではない。また、以下において特に指定しない場合は、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間が雰囲気と同じ気圧であり、エンドエフェクタ1aに外力が加わっていない状態における各部の配置を説明する。
【0031】
本体部3aは、ロボットアーム2の先端に固定される四角い平板状の基部30と、基部30の長さ方向の中央から下方に延びて、両側面に第一ベローズ5aの一端が接続される四角柱状の支持部31と、を有しており、正面から見てT字状に形成されている。基部30には2つの貫通孔32が形成されており、貫通孔32に挿入される図示しないボルトによってロボットアーム2の先端に固定される。本体部3aのロボットアーム2への装着は、ボルトによる固定に限定されるものではなく、様々な公知の装着方法を用いることができる。支持部31は、基部30の長さ方向の中央から垂直に延びて形成されており、両側面に第一ベローズ5aの端部に形成されるフランジ50にかみ合う凹穴33が形成されている。第一ベローズ5aの一端部は、凹穴33に嵌合されて支持部31の側面に固定される。
【0032】
2つの剛体指4は、上下方向に長尺な平板状に形成されており、本体部3aの支持部31を挟んで両側に配置されている。剛体指4の支持部31と向かい合う面には、凹穴40,41が上下2箇所に形成されている。上側の凹穴40は、第一ベローズ5aの端部に形成されるフランジ50にかみ合う。第一ベローズ5aは一端部が本体部3aの支持部31に形成された凹穴33に固定され、他端部が剛体指4に形成された上側の凹穴40に固定されて、本体部3aと剛体指4とを連結している。下側の凹穴41は、第二ベローズ6aの端部に形成されるフランジ60にかみ合う。第二ベローズ6aは、両端が2つの剛体指4の下側の凹穴41に嵌合して固定され、2つの剛体指4の間に架け渡される。2つの剛体指4の互いに向かい合う面の下端寄りの位置には、滑り止めの弾性面材42が貼付されている。
【0033】
本体部3a及び剛体指4は、ロボットアーム2の動作中や対象物Tを把持したときに、ほとんど変形しない剛性が必要であり、また、軽量であることが好ましいことから、例えばPLA等の弾性が低く硬い樹脂製であることが好ましい。本体部3a及び剛体指4の材料は、所望の剛性を有する材料であれば、樹脂に限られることはなく、例えば金属であってもよい。また、本体部3aや剛体指4の形状は対象物の形状に応じて変更されてもよい。
【0034】
第一ベローズ5aは、縮径と拡径とを繰り返す蛇腹構造の中空管状に形成されており、内部空間51に正圧を供給することで軸方向に伸長し、内部空間51に負圧を供給することで軸方向に短く縮める。第一ベローズ5aは伸縮により、本体部3aに対する剛体指4の相対位置を変位させる空気圧式のアクチュエーターである。第一ベローズ5aは、本体部3aの支持部31側の端部が完全に閉じられており、剛体指4側の端部には吸排気口が形成されている。吸排気口には、正圧及び負圧を供給可能な図示しないポンプに接続される接続管9が接続されている。接続管9は剛体指4を貫通して第一ベローズ5aの吸排気口に接続されている。第一ベローズ5aは、弾性を有する樹脂で形成されており、外力が加わると径方向に撓むことができる。第一ベローズ5aは、内部空間51が雰囲気と同じ気圧のときに最も撓みやすく、内部空間51に正圧又は負圧が供給されたときに剛性が高くなる。
【0035】
第二ベローズ6aは、第一ベローズ5aと同様に、山折りと谷折りとを繰り返す蛇腹構造の中空管状に形成されており、内部空間61に正圧を供給することで伸長し、内部空間61に負圧を供給することで短く縮める。2つのベローズの内部空間51,61の気圧が雰囲気の気圧と同じときに、第二ベローズ6aは、第一ベローズ5aに対して、剛体指4の長さ方向に距離を開けて平行に配置されている。第二ベローズ6aは、本体部3aの支持部31よりも下方に配置されており、2つの第一ベローズ5aの長さ及び支持部31の幅の合計と略同じ長さとなる。第二ベローズ6aは伸縮によって、2つの剛体指4の相対位置を変位させる空気圧式のアクチュエーターである。
【0036】
第二ベローズ6aは、一方の剛体指4側の端部が完全に閉じられており、他方の剛体指4側の端部には吸排気口が形成されている。吸排気口には、正圧及び負圧を供給可能な図示しないポンプに接続される接続管9が接続されている。接続管9は剛体指4を貫通して第二ベローズ6aの吸排気口に接続されている。第二ベローズ6aは、第一ベローズ5aと同様の弾性を有する樹脂で形成されており、外力が加わると径方向に撓むことができる。第二ベローズ6aは、内部空間61が雰囲気と同じ気圧のときに最も撓みやすく、内部空間61に正圧又は負圧が供給されたときに剛性が高くなる。
【0037】
なお、ここで「正圧を供給」とは、雰囲気の空気圧よりも高い圧縮空気を内部空間51,61に供給することをいい、「負圧を供給」とは、内部空間51,61から空気を吸いだすことをいう。「雰囲気と同じ気圧」とは、接続管9とポンプとの間に配置された図示しない弁を開放し第一ベローズ5a又は第二ベローズ6aの内部空間51,61を外部に連通させた状態をいう。エンドエフェクタ1aに外力が加わって第一ベローズ5a又は第二ベローズ6aが変形し、内部空間51の体積が変動したときに、内部空間51,61が外部に連通していることで外部から空気を吸排することができる。
【0038】
ポンプは、図示しないが、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61に正圧又は負圧をそれぞれ選択的に供給可能に構成されている。ポンプは、それぞれのベローズ5a,6aと対になるように配置されていてもよいが、正圧、負圧を切り替え可能な弁によってそれぞれのベローズ5a,6aに、正圧又は負圧を選択的に供給するものであってもよい。
【0039】
第一実施形態のエンドエフェクタ1aは、第一ベローズ5aの内部空間51に負圧を供給し、第二ベローズ6aの内部空間61に正圧を供給すると、図3(A)に示すように、第一ベローズ5aが短く縮まることで、剛体指4の上端側がそれぞれ支持部31に接近し、第二ベローズ6aが伸長することで、下側に向かって剛体指4同士が広がる方向に姿勢を変化させる。また、エンドエフェクタ1aは、第一ベローズ5aの内部空間51に正圧を供給し、第二ベローズ6aの内部空間61に負圧を供給すると、図3(B)に示すように、第一ベローズ5aが伸長することで、剛体指4の上端側がそれぞれ支持部31から離れる方向に移動し、第二ベローズ6aが短く縮まることで、剛体指4の下端側が互いに接近する方向に移動し、剛体指4の下端同士が互いに接触する。このように第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aへの正圧及び負圧の供給を制御することで、エンドエフェクタ1aの剛体指4を開閉制御することができる。
【0040】
また、本実施形態のエンドエフェクタ1aは、上述のような制御の他に、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61にともに負圧を供給することもできる。このように制御すると、図4(A)に示すように、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aはともに短く縮まる。第二ベローズ6aは第一ベローズ5aよりも長さが長く形成されていることから、同じ比率で短く縮まったとき、第一ベローズ5aよりも第二ベローズ6aのほうが大きく短縮するので、剛体指4を上端よりも下端側が互いに近づくように姿勢を変位させることとなる。また、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61にともに正圧を供給すると、図4(B)に示すように、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aはともに伸長する。前述のとおり第二ベローズ6aが第一ベローズ5aよりも長いので同じ比率で伸長したとき、第二ベローズ6aのほうが第一ベローズ5aよりも大きく伸長するので、剛体指4を上端よりも下端が広がるように変位させることとなる。
【0041】
このように、第一実施形態のエンドエフェクタ1aは、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61に正圧又は負圧をそれぞれ選択的に供給可能であるので、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61の一方に正圧を供給し、他方に負圧を供給する、2つの内部空間51,61にともに正圧を供給する、又は、ともに負圧を供給する等の制御によって、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aを別々に伸縮させて、剛体指4の開閉量や把持する強さにバリエーションを持たせることができ、把持する対象物Tの状態に応じて剛体指4の開閉姿勢を適切に選択することができる。
【0042】
エンドエフェクタ1aは初期状態では、図5(A)に示すように、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61は雰囲気と同じ気圧になっており、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aが撓みやすい状態に維持されている。この状態でロボットアーム2を動作させて、所望の対象物Tを把持する位置にエンドエフェクタ1aを移動させるときに、エンドエフェクタ1aの剛体指4が対象物Tや対象物Tの周辺環境に接触した場合であっても、当該接触による衝撃を第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aが撓んで受け流すことができるので、剛体指4や対象物Tの損傷を防止できる。
【0043】
図5(B)に示すように、2つの剛体指4が対象物Tを挟んで両側に配置されるようにエンドエフェクタ1aを移動させた後、第一ベローズ5aの内部空間51に正圧を供給し、第二ベローズ6aの内部空間61に負圧を供給することで、当該エンドエフェクタ1aは、剛体指4の下端同士を接近させて対象物Tを把持する。第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61に正圧又は負圧が供給されると、内部空間51,61が雰囲気と同じ気圧のときよりも当該第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの剛性が高まるので、ロボットアーム2を動作させて対象物Tを精度よく移動させることができる。なお、対象物Tを把持する際に、第一ベローズ5aの内部空間51及び第二ベローズ6aの内部空間61に、ともに負圧を供給してもよい。第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aの内部空間51,61にともに負圧を供給した場合であっても、第一ベローズ5aよりも第二ベローズ6aのほうがより縮むので、剛体指4の下端同士を接近させて対象物Tを把持することができる。なお、内部空間51,61に正圧が供給された第一ベローズ5a又は第二ベローズ6aであっても一定の柔軟性や緩衝性を有しているので、対象物Tの大きさに多少の幅があるような場合でも対象物Tを把持することができる。対象物Tが水中に置かれた状態でエンドエフェクタ1aに把持されるような場合でも、エンドエフェクタ1aは空気圧制御のみで駆動されているので、水の付着や水没した場合でも故障することがない。
【0044】
第一実施形態のエンドエフェクタ1aは、図6に示すように、第二ベローズ6aの下側で、剛体指4の弾性面材42が貼付されて対象物Tを把持する位置よりも上側に、把持した対象物Tが本体部3側に逃げることを抑制する押え部10が形成されていてもよい。押え部10は、長尺な布状、ひも状、又は網状に形成されて、両端が2つの剛体指4にそれぞれ固定され、剛体指4の間に架け渡されている。押え部10は、剛体指4同士の接近又は離反を阻害しないように、例えば弾性又は可撓性を有している。
【0045】
上述のように構成されると、図7(A)に示すように、対象物Tが好ましい位置に把持されており、対象物Tと剛体指4に貼付された弾性面材42との摩擦によって、当該対象物Tが本体部3側に逃げることなく剛体指4の間に把持された状態で安定しているときには、押え部10は対象物Tに接触することなく撓んだ状態となっている。そして、対象物Tの表面の状態や形状によって、当該対象物Tを剛体指4の間に把持した際に、本体部3側に逃げるように動いたときには、図7(B)に示すように、対象物Tが押え部10に接触し、押え部10は対象物Tの形状に応じて変形しつつ当該対象物Tを拘束し、対象物Tが本体部3側に移動することを防止する。
【0046】
また、第一実施形態のエンドエフェクタ1aは、図8及び図9に示すように、剛体指4が対象物Tを把持した状態で姿勢及び相対位置を維持するブレーキ手段14をさらに備えるものであってもよい。ブレーキ手段14は、本体部3の基部30の第一ベローズ5の伸縮方向に対して垂直な方向の両端部からそれぞれ垂れ下がる2つの垂れ壁部13と、垂れ壁部13に一端が固定されて支持部31に向かって突出するブレーキ用ベローズ11と、ブレーキ用ベローズ11の他端に固定される平板状のブレーキプレート12と、を有する。
【0047】
垂れ壁部13は、図8(A)に示すように、基部30の端部の中央から細くなって垂れ下がり、下側で側方に広がって矩形平板状の幅広部15が形成されている。ブレーキプレート12は、垂れ壁部13の下側の幅広部15と重なる矩形平板状であり、幅広部15とブレーキプレート12との間に2つのブレーキ用ベローズ11が並んで架設されており、内部空間に接続管9を介して図示しないポンプから正圧及び負圧を供給可能となっている。
【0048】
エンドエフェクタ1aは上述のように構成されると、図8(B)に示すように、エンドエフェクタ1aの剛体指4が対象物Tを把持していないときには、ブレーキ用ベローズ11の内部空間は雰囲気と同じ気圧となっており、このときブレーキ用ベローズ11の端部に固定されているブレーキプレート12は剛体指4に接触していない。したがって、第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aが撓みやすい状態に維持され、剛体指4が対象物Tや対象物Tの周辺環境に接触した場合であっても、その衝撃を第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aが撓んで受け流すことができる。
【0049】
そして、第一ベローズ5aの内部空間51、及び第二ベローズ6aの内部空間61に負圧を供給することで、図9(A)に示すように、エンドエフェクタ1aは、剛体指4の下端同士を接近させて対象物Tを把持する。そして、図9(B)に示すように、それぞれのブレーキ用ベローズ11の内部空間に正圧が供給されると、ブレーキ用ベローズ11が伸長し、ブレーキ用ベローズ11の端部に固定されているブレーキプレート12が2つの剛体指4の上端側の側面に接触し押し付けられる。
【0050】
このように、2つのブレーキ用ベローズ11が2つ剛体指4を挟んで、その摩擦によって剛体指4の姿勢が固定され、剛体指4同士の相対位置が固定されるので、対象物Tを安定して把持することができる。また、2つのブレーキ用ベローズ11を介して剛体指4は本体部3に対しても固定されるので、対象物Tを把持した状態でロボットアーム2を動作させた場合でも、剛体指4が揺動することを抑制でき、対象物Tをより精度よく移動させることができる。
【0051】
上述のようなベローズを用いたエンドエフェクタ1aは、第一実施形態のものに限られるものではない。以下、エンドエフェクタ1a~1kの様々な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において第一ベローズ5b~5k及び第二ベローズ6b~6kは、その配置及び伸縮する軸方向等が第一実施形態のものとは変更されているので別の符号を付しているが、材質や基本形状は第一実施形態の第一ベローズ5a及び第二ベローズ6aと同じであるので、説明を省略している。
【0052】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態のエンドエフェクタ1bについて、図10及び図11を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の構成は、第一実施形態の変形例であるので、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。第二実施形態のエンドエフェクタ1bは、図10に示すように、第二ベローズ6bが2つ設けられており、本体部3bの支持部31と2つの剛体指4とをそれぞれ連結するように配置されている。すなわち、第一ベローズ5b及び第二ベローズ6bが同様の構成であり上下に平行に配置されている。
【0053】
このような構成においても、図11(A)に示すように、第一ベローズ5bに負圧を供給して短く縮めつつ、2つの第二ベローズ6bに正圧を供給して伸長させると、剛体指4の上端は支持部31に接近する方向に移動し、剛体指4の下端は支持部31から離反する方向へ移動する。また、図11(B)に示すように、第一ベローズ5bに正圧を供給して伸長させ、2つの第二ベローズ6bに負圧を供給して短く縮めると、剛体指4の上端は支持部31から離れる方向へ移動し、剛体指4の下端は支持部31へ接近する方向へ移動する。したがって、支持部31を挟んで両側に配置される剛体指4の下端を接近・離反方向に制御することができ、対象物Tを把持することができる。
【0054】
〔第三実施形態〕
次に、第三実施形態のエンドエフェクタ1cについて、図12及び図13を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の構成は、第一実施形態の変形例であるので、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。第三実施形態のエンドエフェクタ1cは、図12に示すように、第二ベローズ6cが第一ベローズ5cの上に距離を開けて平行に配置されている。本体部3cの支持部31は、第一実施形態のエンドエフェクタ1aの支持部3よりも下方に長く垂れ下がって形成されており、上側に側面を貫通して第二ベローズ6cが挿入可能な挿入孔34が設けられており、第二ベローズ6cは挿入孔を通して2つの剛体指4の上端付近に架設されている。また、第一ベローズ5cはそれぞれ第二ベローズ6cの下側で第二ベローズ6cに対して平行に、本体部3cの支持部31と剛体指4との間に架設されている。
【0055】
この構成においては、2つの第一ベローズ5cが第二ベローズ6cよりも下側に配置されているので、剛体指4の下端を広げる際には、図13(A)に示すように、2つの第一ベローズ5cに正圧を供給して伸長させつつ、第二ベローズ6cに負圧を供給して短く縮めると、2つの剛体指4同士の上端同士が接近しつつ、下端同士が互いに離反する方向に移動する。また、図13(B)に示すように、2つの第一ベローズ5cに負圧を供給して短く縮めつつ、第二ベローズ6cに正圧を供給して伸長させると、2つの剛体指4同士の上端同士が離反する方向に移動しつつ、下端同士が互いに接近する方向に移動する。したがって、支持部31を挟んで両側に配置される剛体指4の下端を接近・離反方向に制御することができ、対象物Tを把持することができる。
【0056】
〔第四実施形態〕
次に、第四実施形態のエンドエフェクタ1dについて、図14及び図15を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の構成は、第一実施形態の変形例であるので、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。第三実施形態のエンドエフェクタ1cは、図14に示すように、本体部3dの形状が第一実施形態とは異なる。本体部3dは、ロボットアーム2の先端に固定される四角い平板状の基部30と、基部30の長さ方向の両端からそれぞれ下方に延びて形成される四角柱状の支持部31と、を有している。2つの支持部31の間に2つの剛体指4の上端が差し入れられており、2つの第一ベローズ5dがそれぞれの支持部31と剛体指4の上端とを接続している。また、第二ベローズ6dは、第一ベローズ5dよりも下側で2つの剛体指4の間に架設されている。2つの第一ベローズ5dと第二ベローズ6dとは長さ方向が互いに平行に配置されている。
【0057】
この構成においては、2つの第一ベローズ5dは、2つの剛体指4の外側にそれぞれ配置されることとなるので、図15(A)に示すように、2つの第一ベローズ5dに正圧を供給して伸長させると剛体指4の上端が互いに接近する方向に移動し、第二ベローズ6dに正圧を供給して伸長させると剛体指4の下端が互いに離反する方向に移動する。また、図15(B)に示すように、2つの第一ベローズ5dに負圧を供給して短く縮めつつ、第二ベローズ6dに負圧を供給して短く縮めると、2つの剛体指4同士の上端同士が離反する方向に移動しつつ、下端同士が互いに接近する方向に移動する。したがって、2つの剛体指4の下端を接近・離反方向に制御することができ、対象物Tを把持することができる。
【0058】
なお、第四実施形態のエンドエフェクタ1dは、上述の形態に限定されるものではない。変形例のエンドエフェクタ1eは、図16に示すように、第二ベローズ6eが第一ベローズ5eよりも上側に配置されて、2つの剛体指4の間に架設されるものであってもよい。この変形例のエンドエフェクタ1eにおいては、図示しないが、2つの第一ベローズ5e及び第二ベローズ6eに正圧が供給されると、剛体指4の上端同士が互いに離反し、剛体指4の下端同士が互いに接近する方向に移動することとなり、2つの第一ベローズ5e及び第二ベローズ6eに負圧が供給されると、剛体指4の上端同士が互いに接近し、剛体指4の下端同士が互いに離反する方向に移動することとなる。したがって、2つの剛体指4の下端を接近・離反方向に制御することができ、対象物Tを把持することができる。
【0059】
〔第五実施形態〕
次に、第五実施形態のエンドエフェクタ1fについて、図17及び図18を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の構成は、第一実施形態の変形例であるので、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。第五実施形態のエンドエフェクタ1fは、図17に示すように、第一ベローズ5fが、内部空間51に負圧を供給したときに剛性が高まって、剛体指4の上端が本体部3fに拘束され、2つの剛体指4の上端同士の間の距離が固定される。
【0060】
第五実施形態の本体部3fは、支持部31が形成されず、ロボットアーム2の先端に固定される四角い平板状に形成されている。2つの剛体指4は、上端が膨らんで形成されており、上下方向に長尺に形成された平板状である。2つの剛体指4の上端と本体部3fとの間にはそれぞれ第一ベローズ5fが設けられている。第一ベローズ5fは上下方向に伸縮可能となるように配置されている。また、2つの剛体指4の間に架設されている。すなわち、第五実施形態の第一ベローズ5fが上下方向に伸縮可能であり、第二ベローズ6fは水平方向に伸縮可能となっている。
【0061】
この構成においては、2つの剛体指4の下端同士を接近及び離反させる際には、2つの第一ベローズ5fにそれぞれ負圧を供給して、剛体指4の上端を本体部3fに拘束する。そして、図18(A)に示すように、2つの剛体指4の間に架設されている第二ベローズ6fに正圧を供給して伸長させると、剛体指4の下端が互いに離反する方向に移動する。また、図18(B)に示すように、第二ベローズ6fに負圧を供給して短く縮めると、2つの剛体指4の下端同士が互いに接近する方向に移動する。したがって、剛体指4は上端が本体部3fに拘束されつつ、下端が接近離反することで、対象物Tを把持することができる。
【0062】
なお、第五実施形態のエンドエフェクタ1fは、上述の形態に限定されるものではない。変形例のエンドエフェクタ1gは、剛体指4の間に第二ベローズ6gが配置される形態に替えて、図19に示すように、第二ベローズ6gが剛体指4の外側に配置される形態であってもよい。具体的には、本変形例のエンドエフェクタ1gの本体部3gは、ロボットアーム2の先端に固定される四角い平板状の基部30と、基部30の長さ方向の両端からそれぞれ下方に延びて形成される四角柱状の支持部31と、を有している。2つの支持部31の間に2つの剛体指4の上端が差し入れられており、2つの第一ベローズ5gがそれぞれの基部30と剛体指4の上端と上下方向に接続している。また、第二ベローズ6gが、支持部31と剛体指4との間にそれぞれ水平方向に形成されている。
【0063】
この変形例においては、2つの第一ベローズ5gにそれぞれ負圧を供給して、剛体指4の上端を本体部3gに拘束し、2つの第二ベローズ6gに負圧を供給して短く縮めると剛体指4の下端同士が互いに離反し、2つの第二ベローズ6gに正圧を供給して伸長させると剛体指4の下端同士が互いに接近する。したがって、2つの剛体指4の下端を接近・離反方向に制御することができ、対象物Tを把持することができる。
【0064】
なお、第五実施形態のエンドエフェクタ1は、第一ベローズ5gが1つの剛体指4の上端を拘束する構成であるが、さらなる変形例のエンドエフェクタ1hでは、図20に示すように、剛体指4の周囲を囲むように複数の第一ベローズ5hが設けられる構成であってもよい。この構成においては、複数の第一ベローズ5hが、剛体指4の上端と本体部3hとの間に配置されて、本体部3hに剛体指4を接続しており、当該複数の第一ベローズ5hに正圧又は負圧を供給することでそれぞれの剛体指4の上端を本体部3hに拘束することができる。そして、2つの第二ベローズ6hに負圧を供給して短く縮めると剛体指4の下端同士が互いに離反し、2つの第二ベローズ6hに正圧を供給して伸長させると剛体指4の下端同士が互いに接近する。したがって、2つの剛体指4の下端を接近・離反方向に制御することができ、対象物Tを把持することができる。
【0065】
〔第六実施形態〕
次に、第六実施形態のエンドエフェクタ1iについて、図21及び図22を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。第六実施形態のエンドエフェクタ1iは、第五実施形態の第一ベローズ5fの内部空間51に負圧を供給したときに当該第一ベローズ5fの剛性が高まって、剛体指4の上端が本体部3iに拘束する構成に替えて、第一ベローズ5iの内部空間51に負圧を供給することで第一ベローズ5iを短く縮めると、剛体指4が本体部3iに引き寄せられて、当該本体部3iに形成された突起部35に剛体指4の上端が挟まることで、剛体指4が拘束される構成としている。
【0066】
第六実施形態の本体部3iは、支持部31が形成されず、ロボットアーム2の先端に固定される四角い平板状に形成されており、本体部3iの下面に剛体指4を拘束可能な突起部35が形成されている。突起部35はそれぞれの剛体指4の上端の移動を妨げることができる構成であればよく、例えば突起部35に替えて窪み部が形成されていてもよい。本体部3iの長さ方向の中央には、第一ベローズ5iの一端が固定されており、第一ベローズ5iの他端には、第一ベローズ5iに吊り下げられる吊下体7が形成されている。吊下体7は、直方体形状であり上面に第一ベローズ5iが固定されるとともに、両側面に第二ベローズ6iが固定されている。第二ベローズ6iは吊下体7と剛体指4との間に架設されている。
【0067】
この構成においては、2つの剛体指4の下端同士を接近及び離反させる際には、第一ベローズ5iに負圧を供給して、吊下体7を本体部3iに引き寄せることで、剛体指4の上端を本体部3iの突起部35に接触させて拘束する。そして、図22(A)に示すように、2つの剛体指4の間に架設されている第二ベローズ6iに正圧を供給して伸長させると、剛体指4の下端が互いに離反する方向に移動する。また、図22(B)に示すように、第二ベローズ6iに負圧を供給して短く縮めると、2つの剛体指4の下端同士が互いに接近する方向に移動する。したがって、剛体指4は上端が本体部3iに拘束されつつ、下端が接近離反することで、対象物Tを把持することができる。
【0068】
〔第七実施形態〕
次に、第七実施形態のエンドエフェクタ1jについて、図23及び図24を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。第七実施形態のエンドエフェクタ1jは、図23に示すように、剛体指4が3つ設けられている。第一ベローズ5j及び第二ベローズ6jは互いに上下平行に3つの剛体指4と本体部3jの支持部31との間にそれぞれ形成されており、エンドエフェクタ1j全体で3つの第一ベローズ5jと3つの第二ベローズ6jとが配置されている。
【0069】
この構成においては、図示しないが、第一ベローズ5jに負圧を供給して短く縮めつつ、2つの第二ベローズ6jに正圧を供給して伸長させると、剛体指4の上端は支持部31に接近する方向に移動し、剛体指4の下端は支持部31から離反する方向へ移動する。また、図24に示すように、第一ベローズ5jに正圧を供給して伸長させ、第二ベローズ6jに負圧を供給して短く縮めると、剛体指4の上端は支持部31から離れる方向へ移動し、剛体指4の下端は支持部31へ接近する方向へ移動する。互いに対向する剛体指4は支持部31の奥行方向に交互にずれて配置されており、複数の剛体指4は、互いに交差するように姿勢が変位される。剛体指4の数は3つに限られるものではなく、4つ以上の剛体指4が支持部31の奥行方向に沿って交互に配置されるものであってもよい。剛体指4同士が、互いに交差するように変位可能であれば、把持する対象物Tがが例えば細長いものであるような場合にも十分な把持力で把持することができる。
【0070】
〔第八実施形態〕
次に、第八実施形態のエンドエフェクタ1kについて、図25を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。第八実施形態のエンドエフェクタ1kは、3つの剛体指4を有しており、それぞれの剛体指4の下端同士が互いに接近する方向に姿勢を変更できる構成となっている。本実施形態の本体部3kは正三角柱形状であり、3つの側面にそれぞれ、第一ベローズ5kが固定されている。第一ベローズ5kは、本体部3kの側面と剛体指4の上端近くの側面との間に架設されている。また、本実施形態のエンドエフェクタ1kは、本体部3kの下方に当該本体部3kと同一形状の中間体8が設けられている。中間体8は3つの側面にそれぞれ第二ベローズ6kが固定されており、第二ベローズ6kは、中間体8の側面と剛体指4の側面との間に架設されている。
【0071】
この構成においては、第一ベローズ5kに負圧を供給し、第二ベローズ6kに正圧を供給すると、3つの剛体指4はそれぞれ上端が本体部3kに接近し、下端が互いに離反する方向に変位する。また、第一ベローズ5kに正圧を供給し、第二ベローズ6kに負圧を供給すると、3つの剛体指4はそれぞれ上端が本体部3kから離れる方向に変位し、下端が互いに接近する方向に変位する。したがって、3つの剛体指4の下端を接近・離反方向に制御することができ、対象物Tを把持することができる。
【0072】
なお、剛体指4は3つに限定されるものではなく、例えば本体部3k及び中間体8を正n角形柱状に構成し、n個の剛体指4をそれぞれ第一ベローズ5k及び第二ベローズ6kによって本体部3k及び中間体8に接続して形成されるものとしてもよい。
【0073】
各実施形態のエンドエフェクタ1a~1kは、第一ベローズ5a~5k及び第二ベローズ6a~6kによって剛体指4が直接開閉制御されるものであるので、ベローズ5,6がそれ自体の弾性によって撓むことで、対象物Tなどへの接触時の衝撃を和らげるとともに、内部空間51,61の空気によっても緩衝されるので、衝撃を十分に緩和することができ、単純な構造であるので軽量化に適し、水没可能であることから水を利用する作業におけるロボットアーム2のエンドエフェクタ1として用いることができる。ベローズの数、剛体指4の数、ベローズを設ける方向などに様々な選択肢があることから、様々な把持対象物Tの種類に適応することができる。
【0074】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るエンドエフェクタ1は、例えば根菜類を仕分けするロボットアーム2の先端に取り付けられるエンドエフェクタ1として好適である。
【符号の説明】
【0076】
1a~k エンドエフェクタ
2 ロボットアーム
3a~k 本体部
4 剛体指
5a~k 第一ベローズ
6a~k 第二ベローズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25