(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035168
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】無線通信装置、通信制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/00 20060101AFI20230306BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H04L27/00 Z
H04L1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141802
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 雅央
【テーマコード(参考)】
5K014
【Fターム(参考)】
5K014FA11
5K014FA13
5K014HA00
5K014HA05
(57)【要約】
【課題】単位時間内に送信できるデータ量を増加させつつ、フレームロスを低減することができる無線通信装置、通信制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】無線通信装置1は、無線通信装置2へ向けて送信するフレームに含まれる送信データサイズを特定するサイズ特定部112と、複数種類のMCSそれぞれについて、送信データサイズと複数種類のMCSそれぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、フレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部113と、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数が最小となるMCSを特定し、特定したMCSが複数存在する場合、特定した複数のMCSの中からシンボル単位データサイズが最も小さいMCSを選定する選定部114と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線通信装置へ向けて送信する送信データフレームに含まれる送信データサイズを特定するサイズ特定部と、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部と、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を備え、
前記選定部は、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、前記シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から前記シンボル単位データサイズが最大となる変調符号化方式を除く1つの変調符号化方式を選定する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記選定部は、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、前記シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から、前記シンボル単位データサイズが最も小さい変調符号化方式を選定する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記シンボル数算出部は、前記複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データフレームに含まれるデータサイズをNt(bit)、1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズをNdbps(bit)、シンボル数をSYMとしたときに、下記式(1)の関係式を用いて、シンボル数を算出する、
請求項1または2に記載の無線通信装置。
【数1】
【請求項4】
他の無線通信装置へ向けて送信する送信データフレームに含まれる送信データサイズを特定するステップと、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するステップと、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式を選定するステップと、
算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、前記シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から前記シンボル単位データサイズが最大となる変調符号化方式を除く1つの変調符号化方式を選定するステップと、を含む、
通信制御方法。
【請求項5】
コンピュータを、
他の無線通信装置へ向けて送信する送信データフレームに含まれる送信データサイズを特定するサイズ特定部、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式を選定し、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、前記シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から前記シンボル単位データサイズが最大となる変調符号化方式を除く1つの変調符号化方式を選定する選定部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、通信制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の符号化方式、変調方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)の中から、複数のMCSそれぞれに対応するフレームの他の無線通信装置への送信成功率に基づいて選定されたMCSでの通信を行う無線通信装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているような無線通信装置では、フレームの他の無線通信装置への送信成功率を高い水準で維持しつつ、通信レートを高くして単位時間内に送信できるデータ量を増加させることが要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、単位時間内に送信できるデータ量を増加させつつ、フレームロスを低減することができる無線通信装置、通信制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信装置は、
他の無線通信装置へ向けて送信する送信データフレームに含まれる送信データサイズを特定するサイズ特定部と、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部と、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式を選定する選定部と、を備え、
前記選定部は、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、前記シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から前記シンボル単位データサイズが最大となる変調符号化方式を除く1つの変調符号化方式を選定する。
【0007】
他の観点から見た本発明に係る通信制御方法は、
他の無線通信装置へ向けて送信する送信データフレームに含まれる送信データサイズを特定するステップと、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するステップと、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式を選定するステップと、
算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、前記シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から前記シンボル単位データサイズが最大となる変調符号化方式を除く1つの変調符号化方式を選定するステップと、を含む。
【0008】
他の観点から見た本発明に係るプログラムは、
コンピュータを、
他の無線通信装置へ向けて送信する送信データフレームに含まれる送信データサイズを特定するサイズ特定部、
予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、前記送信データサイズと前記複数種類の変調符号化方式それぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出するシンボル数算出部、
前記複数種類の変調符号化方式の中から、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式を選定し、算出された前記シンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、前記シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から前記シンボル単位データサイズが最大となる変調符号化方式を除く1つの変調符号化方式を選定する選定部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る無線通信装置によれば、シンボル数算出部が、予め設定された複数種類の変調符号化方式それぞれについて、他の無線通信装置へ向けて送信する送信データフレームに含まれる送信データサイズと複数種類の変調符号化方式それぞれの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する。また、選定部が、複数種類の変調符号化方式の中から、算出されたシンボル数が最小となる変調符号化方式を選定する。そして、選定部は、算出されたシンボル数が最小となる変調符号化方式が複数存在する場合、シンボル数が最小となる複数の変調符号化方式の中から、1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズが最大となる変調符号化方式を除く1つの変調符号化方式を選定する。これにより、送信データフレームの送信に必要なシンボル数を低減しつつ、送信データフレームの送信におけるシンボル単位データサイズを可能な限り小さくすることができる。従って、送信データフレームの送信に必要なシンボル数を低減して単位時間内に送信できるデータ量を増加させながらも、送信データフレームの送信におけるシンボル単位データサイズを可能な限り小さくすることでフレームロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る無線通信装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る無線通信装置の機能構成を示す図である。
【
図4】実施の形態に係るDBPS記憶部が記憶する情報の内容を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る無線通信装置が実行する通信制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】(A)実施の形態に係る無線通信装置が100バイトの情報を送信する際の各MCSに対応するシンボル数を示す図であり、(B)実施の形態に係る無線通信装置が170バイトの情報を送信する際の各MCSに対応するシンボル数を示す図であり、(C)実施の形態に係る無線通信装置が6バイトの情報を送信する際の各MCSに対応するシンボル数を示す図である。
【
図7】変形例に係るDBPS記憶部が記憶する情報の内容を示す図である。
【
図8】変形例に係るDBPS記憶部が記憶する情報の内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る無線通信装置について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る無線通信装置は、他の無線通信装置へ向けて送信するフレームに含まれる送信データサイズを特定するデータサイズ特定部と、シンボル数算出部と、予め設定された複数種類の変調符号化方式(以下、「MCS(Modulation and Coding Scheme)」と称する。)の中から、他の無線通信装置との間での通信に適したMCSを選定する選定部と、を備える。ここで、シンボル数算出部は、複数種類のMCSそれぞれについて、送信データサイズとMCSそれぞれでの1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズとに基づいて、前記フレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する。また、選定部は、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数が最小となるMCSを特定し、特定したMCSが複数存在する場合、特定した複数のMCSの中からシンボル単位データサイズが最も小さいMCSを選定する。
【0012】
例えば
図1に示すように、本実施の形態に係る無線通信装置1、2は、無線通信機能を有するPC(Personal Computer)3が接続される無線LAN(Local Area Network)を構築するために使用される。無線通信装置1は、例えばデータ回線終端装置(以下、「DCE」と称する。)4を介してインターネットのような広域ネットワークNW1に接続されたステーションとして機能する。また、無線通信装置2は、例えばPC3と無線通信装置1との間で送受信されるデータを中継するアクセスポイントとして機能する。ここで、PC3は、例えば、広域ネットワークNW1に接続されたサーバ(図示せず)から、DCE4、無線通信装置1、2を介してデータを取得したり、無線通信装置2、1、DCE4および広域ネットワークNW1を介してサーバへデータを送信したりする。
【0013】
次に、本実施の形態に係る無線通信装置1、2は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、無線モジュール105と、を備える。なお、無線通信装置1は、DCE4に有線接続されるインタフェース(図示せず)も備える。主記憶部102は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリから構成され、CPU101の作業領域として使用される。補助記憶部103は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ、または、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等から構成され、無線通信装置1、2を制御するためのプログラムを記憶する。CPU101は、補助記憶部103が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行する。
【0014】
無線モジュール105は、例えばIEEE802.11の無線LAN規格に適合する通信方式で通信する。無線モジュール105は、アンテナ(図示せず)と、受信回路(図示せず)と、信号処理部(図示せず)と、送信回路(図示せず)と、を有する。受信回路は、アンテナを介して無線信号を受信し、受信した無線信号に対応する信号を復調してベースバンド信号を生成して信号処理部へ出力する。送信回路は、信号処理部から入力されるベースバンド信号を用いてキャリア信号を変調することにより、送信フレームに対応する無線信号を生成し、生成した無線信号を、アンテナを介して送信する。ここで、送信回路は、CPU101から指示されるMCS情報に基づいて、当該MCS情報に対応する変調方式でキャリア信号を変調する。信号処理部は、例えばDSP(Digital Signal Processor)により実現され、受信回路から入力されるベースバンド信号に基づいて受信回路が受信した無線信号に対応するフレームを生成してバス109へ送出する。また、信号処理部は、主記憶部102からバス109を介して転送されてきたフレームに基づいてベースバンド信号を生成して送信回路へ出力する。
【0015】
無線通信装置1では、CPU101が、補助記憶部103が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行することにより、
図3に示すように、フレーム取得部111、サイズ特定部112、シンボル数算出部113、選定部114およびフレーム転送部115として機能する。無線通信装置2も同様である。また、
図2に示す補助記憶部103は、DBPS(Data Bit Per Symbol)記憶部131を有する。DBPS記憶部131は、例えば
図4に示すように、1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズであるDBPSを、各MCSを識別するMCS識別番号に対応づけて記憶している。
図4に示す例では、無線通信装置1、2が1ストリーム且つ帯域幅4MHzでフレームを送信する場合の例を示している。更に、
図2に示す主記憶部102は、
図3に示すように、無線モジュール105或いはDCE4から取得したフレームを一時的に記憶するフレームバッファ121としても機能する。
【0016】
無線通信装置1のフレーム取得部111は、無線モジュール105、或いは、DCE4に接続されたインタフェースから、無線通信装置2に向けて送信されるフレームを取得する。一方、無線通信装置2のフレーム取得部111は、無線モジュール105から、無線通信装置1に向けて送信される送信データフレームを取得する。無線通信装置1、2それぞれのフレーム取得部111は、それぞれ、取得した送信データフレームをフレームバッファ121に記憶させる。
【0017】
サイズ特定部112は、フレームバッファ121が記憶するフレームに含まれるデータのサイズである送信データサイズを特定する。ここで、無線通信装置1のサイズ特定部112は、無線通信装置2へ向けて送信する送信データフレームの送信データサイズを特定する。一方、無線通信装置2のサイズ特定部112は、無線通信装置1へ向けて送信する送信データフレームの送信データサイズを特定する。そして、サイズ特定部112は、特定した送信データサイズを示す送信データサイズ情報をシンボル数算出部113に通知する。
【0018】
シンボル数算出部113は、DBPS記憶部131が記憶する各MCSに対応するDBPS情報を参照して、複数種類のMCSそれぞれについて、サイズ特定部112から通知される送信データサイズ情報が示す送信データサイズと、複数種類のMCSそれぞれのDBPSと、に基づいて、送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する。具体的には、シンボル数算出部113は、複数種類のMCSそれぞれについて、送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数SYMを、下記式(1)の関係式を用いて算出する。
【0019】
【0020】
ここで、Ntは、送信データフレームに含まれる送信データサイズ(ビット数)を示し、Ndbpsは、1シンボル当たりに含ませることができるシンボル単位データサイズ(ビット数)を示す。Roundup(*)は、引数の小数点以下を切り上げて出力する関数を示す。また、シンボル数算出部113は、算出した各MCSに対応するシンボル数SYMを示すシンボル数情報を選定部114に通知する。
【0021】
選定部114は、シンボル数算出部113から通知されるシンボル数情報に基づいて、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数が最小となるMCSを特定する。そして、選定部114は、特定したMCSが複数存在する場合、特定した複数のMCSの中からDBPSが最も小さいMCSを選定する。そして、選定部114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する。また、選定部114は、生成したMCS情報を無線モジュール105へ転送した後、MCS情報を無線モジュール105へ転送したことを通知するMCS転送通知情報をフレーム転送部115に通知する。
【0022】
フレーム転送部115は、選定部114からMCS転送通知情報が通知されると、フレームバッファ121が記憶する送信データフレームを無線モジュール105へ転送する。
【0023】
次に、本実施の形態に係る無線通信装置1、2が実行する通信制御処理について
図5および
図6を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態における
図6に示す値は、IEEE802.11ah規格に準拠したものであるが、これに限定されない。この通信制御処理は、例えば無線通信装置1、2へ電源が投入されたことを契機として開始される。まず、無線通信装置1の場合、フレーム取得部111は、無線通信装置1またはDCE4から、無線モジュール105またはインタフェースを介して送信データフレームを取得したか否かを判定する(ステップS1)。なお、無線通信装置2の場合、フレーム取得部111は、無線通信装置2から、無線モジュール105を介してフレームを取得したか否かを判定する。ここで、フレーム取得部111は、フレームを取得していないと判定する限り(ステップS1:No)、ステップS1の処理を繰り返し実行する。
【0024】
一方、フレーム取得部111は、送信データフレームを取得したと判定すると(ステップS1:Yes)、取得した送信データフレームをフレームバッファ121に記憶させる。そして、サイズ特定部112は、フレームバッファ121が記憶する送信データフレームの送信データサイズを特定する(ステップS2)。ここで、サイズ特定部112は、特定した送信データサイズを示す送信データサイズ情報をシンボル数算出部113に通知する。
【0025】
次に、シンボル数算出部113は、複数種類のMCSそれぞれについて、サイズ特定部112から通知される送信データサイズ情報が示す送信データサイズと、複数種類のMCSそれぞれのDBPSと、に基づいて、送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を、上述した式(1)を用いて算出する(ステップS3)。ここで、シンボル数算出部113により算出される各MCSのシンボル数は、1ストリーム且つ帯域幅4MHzで送信データフレームを送信する場合、例えば、送信データサイズが100Byteである場合、
図6(A)に示すようになり、送信データサイズが170Byteである場合、
図6(B)に示すようになり、送信データサイズが6Byteである場合、
図6(C)に示すようになる。そして、シンボル数算出部113は、算出した各MCSに対応するシンボル数を示すシンボル数情報を選定部114に通知する。
【0026】
図5に戻って、続いて、選定部114は、シンボル数算出部113から通知されるシンボル数情報に基づいて、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数が最小のMCSを特定する(ステップS4)。例えば
図6(A)に示すように送信データサイズが100Byteの場合、選定部114は、MCS識別番号が「5」乃至「9」のMCSを特定する(シンボル数が2のMCS)。また、例えば
図6(B)に示すように送信データサイズが170Byteの場合、選定部114は、MCS識別番号が「9」のMCSのみを特定する(シンボル数が2のMCS)。更に、例えば
図6(C)に示すように送信データサイズが6Byteの場合、選定部114は、全てのMCSを特定する(シンボル数が1のMCS)。
【0027】
図5に戻って、その後、選定部114は、特定したシンボル数が最小のMCSが複数存在するか否かを判定する(ステップS5)。ここで、選定部114が、シンボル数が最小となるMCSが1つだけ存在すると判定したとする(ステップ5:No)。例えば
図6(B)のSM2に示すように、シンボル数が最小値「2」となるMCSが1つだけ存在する場合である。この場合、後述のステップS7の処理が実行され、
図6(B)のSM2で示すMSC識別番号に対応するMCSを示すMCS情報が無線モジュール105へ転送される。
【0028】
一方、選定部114が、
図5に示すように、特定したシンボル数が最小のMCSが複数存在すると判定したとする(ステップS5:Yes)。例えば
図6(A)または
図6(C)に示すように、シンボル数が最小値となるMCSが複数存在する場合である。この場合、選定部114は、
図5に示すように、特定した複数のMCSの中からDBPSが最も小さいMCSを選定する(ステップS6)。具体的には、選定部114は、送信データサイズが100Byteの場合、
図6(A)のSM1に示すように、シンボル数が「2」となるMCSの中からDBPSが最小値432bitであるMCS識別番号「5」のMCSを選定する。また、選定部114は、送信データサイズが6Byteの場合、
図6(C)のSM3に示すように、シンボル数が「1」となる全てのMCSの中からDBPSが最小値54bitであるMCS識別番号「0」のMCSを選定する。
【0029】
図5に戻って、次に、選定部114は、選定したMCSを示すMCS情報を生成して無線モジュール105へ転送する(ステップS7)。このとき、選定部114は、生成したMCS情報を無線モジュール105へ転送した後、MCS情報を無線モジュール105へ転送したことを通知するMCS転送通知情報をフレーム転送部115に通知する。
【0030】
続いて、フレーム転送部115は、選定部114からMCS転送通知情報が通知されると、フレームバッファ121が記憶する送信データフレームを無線モジュール105へ転送する(ステップS8)。その後、再びステップS1の処理が実行される。
【0031】
ところで、日本国内では、900MHz帯域におけるデューティ比10%規制のように、無線送信時間に厳しい制約が存在している。例えば、802.11ahの無線LAN規格に従って通信を行う場合など、このような制約が存在する環境下では、無線送信時間を如何に抑制するかが重要である。単位時間内に多くの送信データフレームを送信したい場合、送信レートが高いMCSでの通信を行うことが一般的である。但し、送信レートが高くDBPSが大きいMCSで無線通信を行う場合、ノイズの影響を受け易くなり送信データフレームが到達する確率は送信レートが低くDBPSの小さいMCSに比べて劣る。更に、送信データフレームが到達しない場合には送信データフレームの再送が発生してしまい、その結果、割り当てられた無線送信時間を余分に消費してしまう。また、IEEE802.11の無線LAN規格に適合した無線通信装置は、一般的にできるだけ送信レートの高いMCSを自動的に選択して送信を試みる。この場合、送信レートの高いMCSを採用することが適切でない環境下においても不必要に送信レートの高いMCSで送信を試みるため、送信データフレームの再送が頻発してしまい、その結果、割り当てられた無線送信時間を無駄に消費してしまう。
【0032】
これに対して、本実施の形態に係る無線通信装置1、2によれば、シンボル数算出部113が、複数種類のMCSそれぞれについて、送信データフレームに含まれる送信データサイズと複数種類のMCSそれぞれのDBPSとに基づいて、送信データフレームを送信するのに必要なシンボル数を算出する。そして、選定部114が、複数種類のMCSの中から、算出されたシンボル数が最小となるMCSを特定する。ここで、選定部114は、特定したMCSが複数存在する場合、特定した複数のMCSの中からDBPSが最小となるMCSを選定する。これにより、送信データフレームの送信に必要なシンボル数を低減しつつ、フレーム送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることができる。従って、送信データフレームの送信に必要なシンボル数を低減して単位時間内に送信できるデータ量を増加させながらも、送信データフレームの送信におけるDBPSを可能な限り小さくすることで安定したフレーム送信を実現できる結果、フレームロスを低減することができる。それ故、送信データフレームの再送発生頻度が低減されるので、割り当てられた無線送信時間の無駄な消費が抑制できる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、選定部114が、シンボル数算出部113が算出したシンボル数が最小となるMCSが複数存在する場合、シンボル数が最小となる複数のMCSの中からDBPSが最大となるMCSを除く任意の1つのMCSを選定するものであってもよい。
【0034】
実施の形態では、無線通信装置1、2がそれぞれ1つだけアンテナを備えており、1ストリーム且つ帯域幅4MHzで通信を行う例について説明した。但し、これに限らず、例えば、無線通信装置1、2がそれぞれ2つのアンテナを備えており、4ストリーム且つ帯域幅16MHzで通信を行うものであってもよい。この場合、DBPS記憶部131は、例えば
図7に示すようなDBPS情報を、MCS識別番号に対応づけて記憶すればよい。或いは、無線通信装置1、2がそれぞれ実施の形態と同様に1つのアンテナを備えており、1ストリーム且つ帯域幅1MHzで通信を行うものであってもよい。この場合、DBPS記憶部131は、例えば
図8に示すようなDBPS情報を、MSC識別番号に対応づけて記憶すればよい。また、こうした様々な態様に応じて、DBPS記憶部131では複数パターンのDBPS情報を記憶してもよい。
【0035】
実施の形態では、フレーム取得部111が送信データフレームを取得する毎に、当該フレームを送信する際のMCSを選定する例について説明した。但し、これに限らず、例えばフレーム取得部111が予め設定された基準数だけ送信データフレームを取得する毎に、サイズ特定部112が、フレーム取得部111が取得した基準数のフレームそれぞれの送信データサイズを特定し、特定した送信データサイズの平均値或いは中間値を算出するものであってもよい。そして、シンボル数算出部113が、算出された送信データサイズの平均値或いは中間値を用いて各MCSにおけるシンボル数を算出するものであってもよい。
【0036】
或いは、サイズ特定部112が、予め設定されたサイズ特定時期が到来する毎に、その時点から前回のサイズ特定時期までの間にフレーム取得部111が取得した送信データフレームそれぞれの送信データサイズを特定し、特定した送信データサイズの平均値或いは中間値を算出するものであってもよい。
【0037】
本構成によれば、送信データサイズに応じて送信成功率のより高いMCSを選択することにより、無線モジュール105において再送の発生頻度を抑制することができ、データフレームの送信に要する時間が削減されるので、その分、フレーム送信に使用できる時間を多く確保することができるという利点がある。
【0038】
本発明に係る無線通信装置1の各種機能は、専用のシステムによらず、無線通信モジュールを備えるコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、ネットワークに接続されているコンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、コンピュータシステムが読み取り可能な非一時的な記録媒体(CD-ROM等)に格納して配布し、当該プログラムをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行する無線通信装置1を構成してもよい。
【0039】
また、コンピュータにプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムは、通信回線のサーバにアップロードされ、通信回線を介してコンピュータに配信されてもよい。そして、コンピュータは、このプログラムを起動して、OSの制御の下、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、コンピュータは、上述の処理を実行する無線通信装置1として機能する。
【0040】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の無線通信装置は、無線LANに使用されるアクセスポイントとステーションとして好適である。
【符号の説明】
【0042】
1,2:無線通信装置、3:PC、4:DCE、101:CPU、102:主記憶部、103:補助記憶部、105:無線モジュール、111:フレーム取得部、112:サイズ特定部、113:シンボル数算出部、114:選定部、115:フレーム転送部、121:フレームバッファ、131:DBPS記憶部、NW1:ネットワーク