(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035182
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】モータ及びそれを備える電動バイク
(51)【国際特許分類】
H02K 7/08 20060101AFI20230306BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H02K7/08 Z
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141825
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 卓郎
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605AA03
5H605AA07
5H605BB10
5H605BB19
5H605CC10
5H605DD17
5H605EB10
5H605EB17
5H605EB31
5H605GG16
5H607AA05
5H607AA06
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB17
5H607CC09
5H607DD02
5H607DD16
5H607FF01
5H607GG01
5H607GG08
5H607JJ00
5H607JJ10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品点数の増加を抑制して製造コストを下げるとともに、軸受部に水及び埃等が付着することを抑制できるモータを提供する。
【解決手段】モータは、中心軸Jに沿って延びるシャフト21を含む固定部20と、固定部に対し相対回転する回転部30と、を備える。回転部は、筒状のリムと、カバー33と、軸受部34と、を有する。カバーは、リムの軸方向の一端面又は他端面の少なくとも一方を覆う。軸受部は、シャフトに対してカバーを回転可能に支持する。カバーは、本体部331と、保持部332と、を有する。本体部は、軸方向に貫通する筒部331aを有し、板状である。保持部は、本体部と別部材から成り、筒部の内周面に配置されて内部に軸受部を保持し、筒状である。保持部は、突出部332aを有する。突出部は、内周面から径方向内側に突出して軸受部の軸方向外面を覆う。突出部の径方向内端が、筒部の内周面よりも径方向内側に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びるシャフトを含む固定部と、
前記固定部に対し相対回転する回転部と、を備え、
前記回転部は、
筒状のリムと、
前記リムの軸方向の一端面又は他端面の少なくとも一方を覆うカバーと、
前記シャフトに対して前記カバーを回転可能に支持する軸受部と、を有し、
前記カバーは、
軸方向に貫通する筒部を有する板状の本体部と、
前記本体部と別部材から成り、前記筒部の内周面に配置されて内部に前記軸受部を保持する筒状の保持部と、を有し、
前記保持部は、内周面から径方向内側に突出して前記軸受部の軸方向外面を覆う突出部を有し、
前記突出部の径方向内端が、前記筒部の内周面よりも径方向内側に位置する、モータ。
【請求項2】
前記突出部は、前記軸受部の軸方向外面と接触する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記突出部が、環状に形成され、前記シャフトを囲む、請求項1又は請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記突出部の径方向内端が、前記軸受部の外輪よりも径方向内側に位置する、請求項1~請求項3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記筒部は、内周面から径方向内側に突出し、前記突出部の軸方向外面と接触する突起部を有する、請求項1~請求項4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記筒部の内部は、前記突出部の軸方向外側に配置されるシール部材により覆われている、請求項1~請求項5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記本体部が、ダイカスト部材から成る、請求項1~請求項6のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及びそれを備える電動バイクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは、例えば、回転軸と、筒状のモータケースと、モータケースの軸方向の一端面を覆う前蓋と、回転軸を回転可能に支持する軸受(軸受部)と、を有する。軸受は、筒状の保持部を介して前蓋に保持される。軸受の軸方向外側に配置される前蓋の開口内周壁には、オイルシール及びダストリップが設けられる。これにより、軸受に水及び埃等が付着することを抑制できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のモータでは、ダストリップ等を設けることにより、部品点数が増えて、製造コストが上がる可能性があった。
【0005】
本発明は、部品点数の増加を抑制して製造コストを下げるとともに、軸受部に水及び埃等が付着することを抑制できるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、中心軸に沿って延びるシャフトを含む固定部と、固定部に対し相対回転する回転部と、を備える。回転部は、筒状のリムと、カバーと、軸受部と、を有する。カバーは、リムの軸方向の一端面又は他端面の少なくとも一方を覆う。軸受部は、シャフトに対してカバーを回転可能に支持する。カバーは、本体部と、保持部と、を有する。本体部は、軸方向に貫通する筒部を有し、板状である。保持部は、本体部と別部材から成り、筒部の内周面に配置されて内部に軸受部を保持し、筒状である。保持部は、突出部を有する。突出部は、内周面から径方向内側に突出して軸受部の軸方向外面を覆う。突出部の径方向内端が、筒部の内周面よりも径方向内側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、部品点数の増加を抑制して製造コストを下げるとともに、軸受部に水及び埃等が付着することを抑制できるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電動バイクの模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るモータの保持部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るモータのカバーの製造工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、モータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。車両に搭載されたモータの中心軸Jは、車両の左右方向に延びる。
【0010】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0011】
(1.電動バイクの構成)
本発明の例示的な一実施形態の電動バイク1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動バイク1の模式図である。
【0012】
電動バイク1は、前輪2と、後輪3と、車体4と、ハンドル5と、ECU(electroniccontrol unit)6と、スロットル7と、バッテリ8と、モータ10と、を備える。
【0013】
前輪2及び後輪3は、一対の車輪である。車体4には、前輪2及び後輪3が取り付けられる。車体4の前部には、ハンドル5が取り付けられる。
【0014】
ECU6は、車体4の内部に配置される。ECU6は、制御装置である。ECU6には、スロットル7が接続される。スロットル7は、速度調整機構である。
【0015】
バッテリ8は、車体4の内部に配置される。バッテリ8は、ECU6に接続される。バッテリ8は、充電器9により充電される。
【0016】
モータ10は、後輪3に取り付けられる。モータ10は、ECU6に接続される。
【0017】
(2.モータの構成)
図2は、
図1中のA-A線断面図である。モータ10は、固定部20と、回転部30と、を備える。
【0018】
(2-1.固定部)
固定部20は、シャフト21と、ステータ22と、ホルダ23と、を含む。シャフト21は、中心軸Jに沿って延びる。シャフト21は、例えば金属製である。
【0019】
ステータ22は、円環状である。ステータ22の中心は、モータ10の中心軸Jと一致する。ステータ22は、ステータコア221と、インシュレータ(不図示)と、コイル223と、を有する。
【0020】
ステータコア221は、例えば磁性鋼板を軸方向に積層して構成される。ステータコア221は、コアバック221aとティース221bとを有する。コアバック221aとティース221bとは、一体に形成されている。コアバック221aは、中心軸Jを囲み、環状に形成される。ティース221bは、コアバック221aの径方向外面から径方向外側に延びて周方向に複数等間隔に配置される。
【0021】
インシュレータ(不図示)は、ステータコア221の少なくとも一部を覆う。インシュレータは、ステータコア221とコイル223とを電気的に絶縁する絶縁性部材である。インシュレータは、各ティース221bに取り付けられる。
【0022】
コイル223は、ステータコア221を励磁する。コイル223は、インシュレータを介して各ティース221bに導線(不図示)を巻き回して形成される。コイル223は、周方向に複数配置される。
【0023】
ホルダ23は、円板状のプレス品であり、ホルダ23の外周部にステータ22が固定される。ホルダ23は、中心軸Jに沿って貫通するホルダ貫通孔23aを有する。例えば、ホルダ貫通孔23aにはシャフト21が圧入され、ホルダ23とシャフト21とが固定される。これにより、ステータ22が、ホルダ23を介してシャフト21に固定される。
【0024】
(2-2.回転部)
回転部30は、固定部20に対し相対回転する。回転部30は、中心軸Jを中心に回転する。回転部30は、筒状のリム31と、マグネット32と、カバー33と、一対の軸受部34と、を有する。
【0025】
リム31は、筒状の鋳造品である。リム31は、リム本体部31aと、リムフランジ部31bと、を有する。リム本体部31aは、円筒状に形成され、内周面にマグネット32が配置される。リム本体部31aは、外周面にタイヤ3aが配置される。リムフランジ部31bは、リム本体部31aの周面上から軸方向に分岐して径方向外側に延びる。リムフランジ部31bは、タイヤ3aを軸方向から挟持して保持する。
【0026】
マグネット32は、ステータ22の径方向外側に隙間を介して複数配置される。マグネット32は、リム31の内周面において、周方向にN極とS極とが交互に並ぶように複数配置される。マグネット32は、例えば、直方体状の永久磁石によって構成される。
【0027】
カバー33は、リム31の軸方向の一端面又は他端面の少なくとも一方を覆う。本実施形態のカバー33は、リム31の軸方向の両端面をそれぞれ覆う。カバー33は、例えばホイールカバーである。
【0028】
カバー33は、カバー本体部(本体部)331と、保持部332と、を有する。カバー本体部331は、円板状であり、筒部331aを有する。筒部331aは、中心軸Jを囲み、軸方向に貫通する。
【0029】
保持部332は、カバー本体部(本体部)331と別部材からなり、筒状である。保持部332は、筒部331aの内周面に配置されて内部に軸受部34を保持する。軸受部34は、シャフト21に対してカバー33を回転可能に支持する。
【0030】
(3.保持部の構造)
図3は、保持部332を拡大して示す断面図である。保持部332は、突出部332aを有する。突出部332aは、保持部332の内周面から径方向内側に突出して軸受部34の軸方向外面を覆う。突出部332aの径方向内端は、筒部331aの内周面よりも径方向内側に位置する。これにより、軸受部34の軸方向外面の少なくとも一部が、突出部332aで覆われる。従って、筒部331aの軸方向外側の開口端から水及び埃等が、内部に侵入し、軸受部34の軸方向外面に付着することを抑制できる。また、軸受部34を保持する保持部332に突出部332aを設けることにより、部品点数の増加を抑制してモータ10の製造コストを下げることができる。
【0031】
また、突出部332aは、軸受部34の軸方向外面と接触する。なお、本実施形態では、軸受部34の軸方向外面とは、軸方向においてステータ22と反対側に位置する軸受部34の外面である。
【0032】
これにより、突出部332aと軸受部34との間に水及び埃等が侵入して軸受部34に付着することをより抑制できる。また、突出部332aが、軸受部34の軸方向外面と接触することにより、保持部332内において、軸受部34が、軸方向外側に移動することを防止できる。なお、本実施形態では、軸方向外側とは、軸方向においてステータ22から離れる方向側である。つまり、軸受部34が軸方向に移動した場合でも、突出部332aの軸受部34と軸方向に対向する面が、軸受部34の軸方向外面と接触するため、軸受部34の軸方向の移動を防止できる。
【0033】
また、突出部332aは、環状に形成され、シャフト21を囲む。また、突出部332aの径方向内端が、軸受部34の外輪34aよりも径方向内側に位置する。これにより、軸受部34は、突出部332aにより覆われる領域が広くなり、軸受部34に水及び埃等が付着することをより抑制できる。
【0034】
また、筒部331aは、突起部331bを有する。突起部331bは、筒部331aの内周面から径方向内側に突出し、突出部332aの軸方向外面と接触する。これにより、筒部331aの内部が狭まり、軸受部34側に水及び埃等が侵入することをより抑制できる。また、軸受部34が、保持部332ごと軸方向外側に移動することを防止できる。
【0035】
また、シール部材40は突出部332aの軸方向外側に配置され、筒部331aの内部は、シール部材40により覆われている。シール部材40は、例えば、環状のゴムキャップであり、筒部331aの内部に固定される。シール部材40の内周縁はシャフト21の外周面に摺動する。シール部材40を設けることにより、筒部331aの軸方向の開口端から内部に侵入した水及び埃等が、軸受部34側に侵入することをより抑制できる。
【0036】
図4は、カバー33の製造工程を説明する説明図である。本実施形態では、カバー本体部(本体部)331はダイカスト部材から成り、保持部332は、鉄等の金属部材からなる。また、カバー33は、インサート成形品であり、保持部332が保持された金型(不図示)の内部に、ダイカスト部材を流し込み、カバー本体部(本体部)331と保持部332とを一体に成形する。
【0037】
このとき、突出部332aの径方向内端は、筒部331aの内周面よりも径方向内側に位置するため、筒部331aの内部において、ピンPで突出部332aを軸方向(図中の矢印方向)に押圧して保持部332を金型に押さえつけることができる。これにより、インサート成形時に保持部332が、カバー本体部(本体部)331に対して軸方向にずれて成形されることを防止できる。
【0038】
(5.その他)
上記実施形態は、本発明の例示にすぎない。実施形態の構成は、本発明の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されてもよい。また、実施形態は、可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。本実施形態では、突出部332aは、環状に形成されているが、環状に限定されない。例えば、保持部332の内周面から径方向内側に部分的に突出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のモータは、例えば、電動バイクに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 電動バイク
2 前輪
3 後輪
3a タイヤ
4 車体
5 ハンドル
6 ECU(electronic control unit)
7 スロットル
8 バッテリ
9 充電器
10 モータ
20 固定部
21 シャフト
22 ステータ
23 ホルダ
23a ホルダ貫通孔
30 回転部
31 リム
31a リム本体部
31b リムフランジ部
32 マグネット
33 カバー
34 軸受部
34a 外輪
40 シール部材
221 ステータコア
221a コアバック
221b ティース
223 コイル
331 カバー本体部
331a 筒部
331b 突起部
332 保持部
332a 突出部
J 中心軸
P ピン