(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035199
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】引戸構造体
(51)【国際特許分類】
E06B 3/70 20060101AFI20230306BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
E06B3/70 Z
E06B3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141852
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】鹿釜 稔
(72)【発明者】
【氏名】福田 晴行
(72)【発明者】
【氏名】島本 昌晃
【テーマコード(参考)】
2E014
2E016
【Fターム(参考)】
2E014AA01
2E014FA00
2E014FB06
2E014FB11
2E014FC03
2E016HA00
2E016JA01
2E016KA05
2E016LA01
2E016LC02
2E016MA03
2E016MA11
2E016NA00
2E016NA05
2E016RA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い安全性を有する、厚さが変更可能な引戸を有する引戸構造体を提供する。
【解決手段】引戸構造体は、戸枠に設けられた開口を開閉する引戸16を備える引戸構造体であって、引戸16は、開口を開閉する方向に移動可能な引戸本体22と、引戸本体22により支持され、戸厚方向外側に移動可能な少なくとも1つの戸板24を備え、引戸構造体は、引戸本体22の閉方向への移動に応じて、戸板16の戸先側を戸厚方向外側に移動させ、その後戸板16の戸尻側を戸厚方向外側に移動させる第1移動部26をさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸枠に設けられた開口を開閉する引戸を備える引戸構造体であって、
前記引戸は、前記開口を開閉する方向に移動可能な引戸本体と、
前記引戸本体により支持され、戸厚方向に移動可能な少なくとも1つの戸板とを備え、
前記引戸構造体は、
前記引戸本体の閉方向への移動に応じて、前記戸板の戸先側を戸厚方向外側に移動させ、その後前記戸板の戸尻側を戸厚方向外側に移動させる戸板移動機構をさらに備える、引戸構造体。
【請求項2】
前記戸板移動機構は、一端が前記戸板に固定され、他端が前記引戸本体に対して閉方向と平行に摺動可能に支持され、かつ前記他端が鉛直方向に延びる軸回りで回転可能な閉リンク部材を備える、請求項1に記載の引戸構造体。
【請求項3】
前記戸板移動機構は、前記引戸本体が閉方向に移動するにしたがって前記戸板を前記引戸本体から離れる方向に誘導するガイド部を備える、請求項1又は2に記載の引戸構造体。
【請求項4】
前記戸板は、鉛直方向に突出する突出部を備え、
前記ガイド部は、前記戸板が移動するときに前記突出部を誘導する溝を有する、請求項3に記載の引戸構造体。
【請求項5】
操作者の操作に応じて駆動信号を出力する信号出力部と、
前記駆動信号に応じて前記引戸本体を閉方向に駆動させる駆動部を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の引戸構造体。
【請求項6】
前記戸板移動機構は、前記引戸本体が開方向に移動するにしたがって前記戸板を前記引戸本体に近付く方向に移動させる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の引戸構造体。
【請求項7】
前記戸板移動機構は、一端が前記戸板に固定され、かつ他端が鉛直方向に延びる軸回りで回転可能に前記引戸本体に支持された開リンク部材を備える、請求項6に記載の引戸構造体。
【請求項8】
前記戸板移動機構は、前記引戸本体が開方向に移動するにしたがって前記戸板を前記引戸本体に近付ける方向に誘導する開ガイド部を備える、請求項6又は7に記載の引戸構造体。
【請求項9】
前記開ガイド部は、前記戸枠に設けられた傾斜面を有する、請求項8に記載の引戸構造体。
【請求項10】
戸枠に設けられた開口を開閉する引戸を備える引戸構造体であって、
前記引戸は、前記開口を開閉方向に移動可能な引戸本体と、
前記引戸本体により支持され、戸厚方向に移動可能な少なくとも1つの戸板とを備え、
前記引戸構造体は、
前記引戸本体の開方向への移動に応じて、前記戸板の戸尻側を戸厚方向外側に移動させ、その後前記戸板の戸先側を戸厚方向外側に移動させる戸板移動機構前記戸板を戸厚方向内側に移動させる戸板移動機構をさらに備える、引戸構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、引戸構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸の厚みが、引戸を収容する戸袋の厚さよりも厚いときに、引戸の厚みを変化させて戸袋内に収容できるようにする引戸構造が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1には、2枚の戸板の厚さ方向の間隔を調整可能にし、引戸を閉状態から開状態に移行させる際に2枚の戸板を相対的に近付けるよう誘導するガイド部を備えた構造が記載されている。2枚の戸板の間には、厚さを増加させる方向に戸板同士を付勢するばねが配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造は、戸板同士が常に引戸の厚さを増加させる方向に付勢されている。引戸を開閉する際に、戸板にかかる付勢力をスムーズに調整することが望まれる。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、高い安全性を有する、厚さが変更可能な引戸を有する引戸構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、戸枠に設けられた開口を開閉する引戸を備える引戸構造体であって、引戸は、開口を開閉する方向に移動可能な引戸本体と、引戸本体により支持され、戸厚方向に移動可能な少なくとも1つの戸板とを備え、引戸構造体は、引戸本体の閉方向への移動に応じて、戸板の戸先側を戸厚方向外側に移動させ、その後戸板の戸尻側を戸厚方向外側に移動させる戸板移動機構をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】引戸構造体を適用した居住空間の部分的な斜視図である。
【
図8】閉位置にある引戸を開位置に移動させる際の一連の動作を示す水平断面図である。
【
図9】閉位置にある引戸を開位置に移動させる際の一連の動作を示す水平断面図である。
【
図10】閉位置にある引戸を開位置に移動させる際の一連の動作を示す水平断面図である。
【
図12】開位置にある引戸を閉位置に移動させる際の一連の動作を示す水平断面図である。
【
図13】開位置にある引戸を閉位置に移動させる際の一連の動作を示す水平断面図である。
【
図14】変形例による引戸構造体の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について説明する。実施形態では、引戸構造体を居住空間の固定壁に設けた例を用いて詳細な説明を行う。引戸構造体を取り付ける躯体としては、固定壁以外にも可動壁のような躯体であってもよい。
【0010】
以下の実施形態では、X軸、Y軸、及びZ軸からなる3次元直交座標を用いて方向を説明することがある。X軸は、引戸の開閉方向に沿って延びる。Y軸は、水平面においてX軸と直交する。Z軸は鉛直方向に沿って延びる。
【0011】
図1は、引戸構造体を適用した居住空間の部分的な斜視図である。引戸構造体10は、固定壁12により仕切られる空間同士を接続する開口14を開閉する引戸16を備える。引戸16は、開口14が閉じられる閉位置と、開口14が開かれる開位置との2つの位置の間で移動可能である。引戸16は、閉位置において固定壁12の表面とほぼ面一となる。これにより引戸構造体10の美観を向上させられる。引戸16は、開位置において固定壁12の内部に設けられた空間(後述する戸袋S)に収容される。
【0012】
開口14の上部には無目18が設けられている。無目18内には、引戸16を駆動させるためのモータ、プーリ、タイミングベルト等の駆動部(
図1では省略)が収容される。
【0013】
引戸構造体10は、固定壁12に配置された信号出力部20を備える。信号出力部20は、操作者の操作に応じて引戸16の駆動信号を出力する。信号出力部20は、接触型又は非接触型の操作スイッチにより構成されている。この場合、操作者が操作スイッチを操作することで信号出力部20は駆動信号を出力する。駆動部は駆動信号に応じて引戸16を駆動させる。引戸16の正面の所定範囲内に人等がいないかを検知するためのセンサを無目18に設けてもよい。
【0014】
図2及び
図3は引戸構造体の断面図であり、
図4は引戸本体の斜視図である。具体的には
図2には閉位置にある引戸16を示し、
図3には開位置にある引戸16を示す。
図2及び
図3に示すように閉位置にある引戸16の戸厚(Y軸方向に沿った厚さ)は、開位置にある引戸16の戸厚よりも薄い。開位置にある引戸16の厚さは、戸袋Sの厚さ(Y軸方向に沿った厚さ)よりも僅かに薄い。閉位置にある引戸16の厚さは、引戸16により閉じられる開口14の厚さ(つまり、反対側を向く固定壁12の2つの表面間の距離)とほぼ同一である。これにより引戸16は開位置において、固定壁12の表面と平坦な面をなす。引戸16は、開位置から閉位置に移動するに従って戸厚が厚くなる。一方で引戸16は、閉位置から開位置に移動するに従って戸厚が薄くなる。
【0015】
引戸16は、引戸本体22と、2枚の戸板24と、第1移動部26と、第2移動部28とを備える。引戸本体22は、枠体により構成される。引戸本体22は、引戸16の他の構成部品(戸板24、第1移動部26、第2移動部28等)を保持する。引戸本体22は、上述したモータ等の駆動部に機械的に接続されている。したがって駆動部からの駆動力は引戸本体22に入力され、引戸本体22が駆動することで引戸16全体が駆動する。引戸本体22を枠体とすることにより、引戸本体22を軽量化できる。また引戸本体22を枠体とすることにより、枠体の開口部に第1移動部26、第2移動部28等の部品を内蔵でき、引戸16の戸厚を薄くできる。
【0016】
2枚の戸板24は、Y軸に沿って引戸本体22を挟むよう配置される。それぞれの戸板24は、引戸16の戸厚方向外側を向いた第1主面30と、戸厚方向内側を向いた第2主面32とを備える板状部材により構成される。第1主面30には、例えば固定壁12の表面と同一の装飾を施してもよい。これにより引戸16を閉じたときに引戸16と固定壁12との一体性を向上させられる。戸板24は、引戸本体22に懸架されている。戸板24は、引戸16が移動することに応じて引戸本体22本体に対して戸厚方向外側又は戸厚方向内側に移動する。引戸本体22に対する戸板24の位置が変化することで、引戸16の戸厚が変化する。なお、本実施形態では、2枚の戸板24がそれぞれ引戸本体22に対してY軸に沿って移動する例について説明する。しかしながら1枚の戸板24を引戸本体22に対して固定し、もう一枚の戸板24のみを引戸本体22に対して移動可能にしてもよい。
【0017】
2枚の戸板24と、引戸本体22は、幅方向(X軸方向)においてほぼ同一の長さを有する。引戸16が閉位置にあるときには、2枚の戸板24と、引戸本体22との端(±X側の端)は、ほぼ一直線上に並ぶ。一方で引戸16が開位置にあるときには、2枚の戸板24の戸先側の端は、引戸本体22に対して+X側に位置する。
【0018】
第1移動部26及び第2移動部28は、引戸16の移動にしたがって引戸本体22に対して戸板24を移動させる引戸移動機構の一部をなす。第1移動部26は、引戸16の幅方向(X軸方向)中央よりも戸尻側に配置され、第2移動部28は引戸16の幅方向(X軸方向)中央よりも戸先側に配置される。第1移動部26と第2移動部28は、互いに独立して引戸本体22に対する戸板24の位置を変化させる。
【0019】
第1移動部26は、一対のリアアーム34,36(「閉リンク部材」に相当)と、一対のスライドアーム38,40とを備える。第2移動部28は、一対のフロントアーム42,44(「開リンク部材」に相当)と、リニアガイド46とを備える。一対のリアアーム34,36とスライドアーム38,40の組み合わせは、引戸16の上下にそれぞれ一組ずつ設けられている。また一対のフロントアーム42,44も、引戸16の上下にそれぞれ一対ずつ設けられている。これにより、引戸16の上下方向において厚さを同時に変更できる。
【0020】
リアアーム34,36は、それぞれ戸尻側の端と、戸先側の端とを備える。リアアーム34,36の戸尻側の端は、それぞれ引戸本体22に固定されZ軸方向に延びる軸Z1回りに回転可能に支持されている。リアアーム34,36の戸先側の端は、それぞれ2枚の戸板24の第2主面32に取り付けられている。リアアーム34,36の戸先側の端は、それぞれ第2主面32に対して軸Z2,Z3回りに回転可能に取り付けられている。リアアーム34,36は、上面視において引戸本体22を挟むようそれぞれ+X側及び-X側に配置されている。
【0021】
スライドアーム38,40は、それぞれ戸尻側の端と、戸先側の端とを備える。スライドアーム38,40の戸尻側の端は、それぞれ2枚の戸板24の第2主面32に取り付けられている。より具体的にはスライドアーム38,40の戸尻側の端は、リアアーム34,36の戸先側の端と同一の軸Z2,Z3回りで回転可能に戸板24に取り付けられている。スライドアーム38,40の戸先側の端は、引戸本体22に対してX軸に沿って移動可能である。
【0022】
図5は、引戸本体の一部を示す拡大斜視図である。
図5に示すように具体的にはスライドアーム38,40の戸先側の端には、ギア100及びギアダンパ102が設けられている。スライドアーム38,40の戸先側の端は、ギア100のシャフトに取り付けられている。ギア100及びギアダンパ102の組み合わせにより、スライドアーム38,40が閉じる(X軸との間の鋭角が小さくなる)方向への移動に対して減速力が付与される。ギア100及びギアダンパ102の組み合わせは、引戸本体22のX軸方向に延びる支持部材104上で摺動可能に支持される。
【0023】
図2乃至4を参照して、リアアーム34,36の戸尻側の端と、スライドアーム38,40の戸先側の端は、X軸に沿って相対的に移動可能に保持される。リアアーム34,36の戸先側の端と、スライドアーム38,40の戸尻側の端は、同一の軸Z2,Z3回りに回転可能に保持される。このような構成を有する第1移動部26によれば、リアアーム34,36の戸尻側の端と、スライドアーム38,40の戸先側の端との距離が短くなるに従って、リアアーム34,36のX軸に対する角度(両者の間の鋭角な角度)、及びスライドアーム38,40のX軸に対する角度(両者の間の鋭角な角度)が増加する。これにより、第1移動部26付近において戸板24は引戸本体22から離れる。反対に、リアアーム34,36の戸尻側の端と、スライドアーム38,40の戸先側の端との距離が長くなるに従って、第1移動部26付近において戸板24は引戸本体22に近付く。つまり、リアアーム34,36の戸尻側の端と、スライドアーム38,40の戸先側の端との距離を変化させることで、第1移動部26付近において、戸板24と引戸本体22との距離を変化させられる。第1移動部26のX軸に沿った長さと、第1移動部26のY軸に沿った長さは反比例するとも言える。
【0024】
第2移動部28は、第1移動部26に対してX軸に沿って戸先側にずれた位置に配置される。フロントアーム42,44の戸尻側の端は、それぞれ2枚の戸板24の各々に固定されZ軸方向に延びる軸Z4,Z5回りに回転可能に支持されている。フロントアーム42,44の戸先側の端は、それぞれリニアガイド46により支持されている。具体的にはフロントアーム42,44の戸先側の端は、リニアガイド46を貫く軸Z6回りに回転可能に支持される。
【0025】
リニアガイド46は、引戸本体22の一部をなすシャフト48に沿ってX軸方向に摺動自在に保持される。リニアガイド46が戸尻側に摺動すると、フロントアーム42,44のX軸に対する角度(両者の間の鋭角の角度)が増加する。これにより、第2移動部28付近において戸板24は引戸本体22から離れる。反対に、リニアガイド46が戸先側に摺動すると、第2移動部28付近において戸板24は引戸本体22に近付く。つまり、リニアガイド46の位置を変化させることで、第2移動部28付近において、戸板24と引戸本体22との距離を変化させられる。第2移動部28のX軸に沿った長さと、第1移動部26のY軸に沿った長さは反比例するとも言える。
【0026】
それぞれの戸板24の戸先側の上面には、戸板24から+Z側に延びるガイドローラ50(「突出部」に相当)が突出している。ガイドローラ50は、Z軸回りに回転するローラを備える。
【0027】
引戸本体22の上部には、駆動部と連結される連結部108が設けられている。連結部108は、駆動部の無端形状のタイミングベルトに固定されている。
【0028】
図6は、開口の上部を示す平面図である。
図6は、-Z側から+Z側を見たとき(つまり開口14の上部を下から見たとき)の図を示す。開口14の下面には、戸板24が移動するときにガイドローラ50を誘導する2本の溝52(「ガイド部」及び「開ガイド部」に相当)が形成されている。溝52には、ガイドローラ50が差し込まれる。溝52は、ガイドローラ50の位置、及び戸板24の戸先側の端の位置を変化させる。2本の溝52は、戸尻側の端から、引戸16の幅方向(X軸方向)中央よりも戸先側にかけてX軸と平行に延びる。2本の溝52は、戸先側の端付近において(XY平面内で)互いに離れる方向に延びる移行部54を有する。移行部54よりも戸先側において2本の溝52は、再びX軸と平行に延びる。なお、溝52を戸板24側に設け、ガイドローラ50を開口14の下面に設けてもよい。
【0029】
図7は、引戸構造体の構成を示すブロック図である。
図7は、引戸構造体の各構成部を機能に基づいて分類した機能的なブロック図を示す。
図7に示すように、引戸構造体10は、引戸16と、信号出力部20と、駆動部60と、戸板移動機構62とを備える。駆動部60は、フレーム駆動部に相当し、モータ、プーリ、タイミングベルト等を備え、引戸16を開駆動又は閉駆動させる。戸板移動機構62は、引戸16の厚さを変化させる。
図7では、説明をより明確にするために、機能的観点から引戸16を駆動させる駆動部60と、引戸16の厚さを変化させる戸板移動機構62とを分けている。戸板移動機構62は、第1移動部26と、第2移動部28と、溝52及びガイドローラ50からなるガイド機構64とを含む。
【0030】
以下、引戸構造体の作用について説明する。このとき引戸16は、開口14を閉じている状態にあるものとする。このときそれぞれの戸板24は引戸本体22から離れた位置にあり、引戸16は膨らんだ状態にある。
【0031】
引戸16を開こうとする操作者が信号出力部20を操作すると、信号出力部20は駆動部60に開駆動信号を出力する。これにより駆動部60はモータ等を駆動させて引戸16を開き始める。引戸16が開き始めると、主として第1移動部26が戸尻側において戸板24を引戸本体22に近付け、戸尻側において引戸16の厚さを薄くする。次いで、引戸16が開き続ける動作に伴い戸板移動機構62が戸先側において戸板24を引戸本体22に近付け、戸先側において引戸16の厚さを薄くする。これにより、引戸16は戸袋Sに収まる厚さに縮められる。
【0032】
引戸構造体10が、引戸16の周辺に人等がいないと判断した場合、引戸構造体10は引戸16を閉じる。引戸16を閉じる際、引戸構造体10は駆動部60を駆動させて引戸16をX軸に沿って移動させる。引戸16が所定量移動すると、主として第2移動部28、ガイドローラ50及び溝52の作用により、戸板24が引戸本体22から離れる。これにより戸先側において引戸16の厚さが厚くなり、引戸16の戸先側が戸厚方向に膨らむ。引戸16を閉じ続けると、主として第1移動部26の作用により戸尻側において戸板24が引戸本体22から離れる。これにより戸尻側において引戸16の厚さが厚くなり、引戸16の戸尻側が戸厚方向に膨らむ。これにより、引戸16は固定壁12の表面と平坦な面をなす。
【0033】
引戸16を開く際、引戸構造体10は駆動部60を駆動させて引戸16をX軸に沿って移動させる。引戸16が所定量移動すると、主として第1移動部26の作用により、戸板24が引戸本体22に近づく。これにより戸先側において引戸16の厚さが薄くなり、引戸16の戸尻側が戸厚方向においてしぼむ。引戸16を閉じ続けると、主として第2移動部28の作用により戸先側において戸板24が引戸本体22に近づく。これにより戸先側において引戸16の厚さが薄くなり、引戸16の戸先側が戸厚方向においてしぼむ。これにより、引戸16は戸袋Sに収容可能な厚さになる。
【0034】
なお、上述の説明において、「主として作用する」という表現は、主に該当する構成部が作用し、かつ他の構成部も副次的に作用していることも含む。例えば、引戸16を閉位置から開位置に移動させる際に、主として第1移動部26が引戸16の厚みを薄くしているが、引戸16の厚さが薄くなる際にフロントアーム42,44やガイドローラ50等の他の構成部も引戸本体22に対する戸板24の位置を保持するために副次的に作用している。
【0035】
以下、引戸構造体10の動作についてさらに詳細に説明する。
図8乃至
図10は、閉位置にある引戸を開位置に移動させる際の一連の動作を示す水平断面図である。なお、説明の便宜上、
図8乃至
図10では、引戸16の断面と、溝52及びガイドローラ50とを同一の平面に図示している。
【0036】
図8に示すように、引戸16が閉位置にあるとき、引戸16の戸先側の端は、縦桟66に接触している。リアアーム34,36、スライドアーム38,40及びフロントアーム42,44は、最も開いた状態(つまりX軸との間の鋭角が最も大きい状態)にある。この状態では戸板24は、引戸本体22から離れた位置で、X軸と平行に保持されている。この状態で駆動部60(
図7参照)を駆動させて引戸本体22を-X側に駆動させると、
図9に示す状態に移行する。
【0037】
図9に示すように、引戸16を-X側に駆動させると、引戸本体22が-X側に引っ張られることに伴ってリアアーム34,36の戸尻側の端が-X側に引っ張られる。スライドアーム38,40の戸先側の端、及びリニアガイド46は、引戸本体22と固定されていない。したがって、引戸本体22が駆動した直後は、スライドアーム38,40の戸先側の端、及びリニアガイド46は現在位置に留まろうとする。リアアーム34,36の戸尻側の端が-X側に引っ張られると、リアアーム34,36の軸方向に引っ張り力が作用する。これにより、リアアーム34,36の戸尻側の端がZ軸方向に延びる軸Z1回りに回転しながら、リアアーム34,36の戸先側の端が軸Z2,Z3回りに回転し、戸板24を引戸本体22に近付ける力F1が発生する。力F1は、戸板24を戸袋Sに引き込む方向に作用する。これに伴いスライドアーム38,40の戸先側の端は、X軸に沿って戸先側に摺動し、スライドアーム38,40とX軸がなす角度(鋭角)は小さくなる。つまり第1移動部26はX軸方向において延び、Y軸方向において縮む。このとき戸先側において2枚の戸板24の間の距離はほぼ変化していない。この状態で駆動部60(
図7参照)を駆動させて引戸本体22を-X側に駆動させると、
図10に示す状態に移行する。
【0038】
駆動部60(
図7参照)を駆動し続けると、
図10に示すように、引戸本体22が-X側に引っ張られることに伴って戸板24も-X側に引っ張られる。戸板24の移動に伴ってガイドローラ50も溝52に沿って移動する。ガイドローラ50が移行部54に入ると、2枚の戸板24は互いに近付く方向に移動する。これにより戸先側において戸板24は、引戸本体22に近付く。これにより、引戸16は戸袋Sに収容可能な厚さとなる。
【0039】
その後、駆動部60を駆動し続けることで、
図11に示すように引戸16は戸袋Sに収容される。
【0040】
図12及び
図13は、開位置にある引戸を閉位置に移動させる際の一連の動作を示す水平断面図である。なお、説明の便宜上、
図12及び
図13では、引戸16の断面と、溝52及びガイドローラ50とを同一の平面に図示している。
【0041】
図11に示すように、引戸16が開位置にあるとき、リアアーム34,36、スライドアーム38,40及びフロントアーム42,44は、最も閉じた状態(つまりX軸との間の鋭角が最も小さい状態)にある。この状態では戸板24は、引戸本体22に近接した位置で、X軸と平行に保持されている。この状態で駆動部60(
図7参照)を駆動させて引戸本体22を+X側に駆動させると、引戸本体22が+X側に移動することに伴って戸板24も引戸本体22と一緒に移動する。
【0042】
図12に示すように、ガイドローラ50が移行部54に入ると、2枚の戸板24は互いに離れるよう移動し始める。これにより引戸16の戸先側において戸厚が増加する。このときフロントアーム42,44の戸先側の端は軸Z6回りに回転し、フロントアーム42,44がX軸に対してなす鋭角が増加する。これに伴い、リニアガイド46は、引戸本体22に対して戸尻側に移動する。2枚の戸板24の戸先側の端は、引戸本体22に対して+X側に位置する。したがって、引戸16を+X側に移動させると、戸板24の戸先側の端が、引戸本体22の戸先側の端よりも先に縦桟66に接触する。戸板24の戸先側の端が縦桟66に接触した後も引戸本体22を+X方向に駆動し続けることにより、戸板24は+X方向に沿って移動しないが引戸本体22は+X方向に移動する。つまり、引戸本体22は戸板24に対して独立して移動する。これにより、リアアーム34,36の戸先側の端のX軸方向の位置が固定された状態で、リアアーム34,36の戸尻側の端が+X方向に移動する。これにより、リアアーム34,36がX軸に対してなす鋭角が増加し、戸板24に対して戸板24を開く方向に向いた力F2が作用する。これにより引戸16の戸尻側において戸厚が増加する。引戸本体22が縦桟66に接触するタイミングで駆動部60は停止する。これにより
図13に示すように、引戸16の戸厚が戸尻側及び戸先側において同一になる。
【0043】
このように引戸構造体10によれば、引戸16のX軸に沿った動作に連動させて、戸先側と戸尻側とを独立させて引戸16の厚さを変更できる。このときばね等の付勢部材を用いることなく引戸16の厚さをスムーズに調整できるため、高い安全性を得ることができる。また変更できるため、戸板16が突然飛び出すのを防げる。さらに戸板24が飛び出して戸板24が縦桟に接触して引戸16が加速することを防げる。これにより安全性を高められる。
【0044】
また、一端が戸板24に固定され、他端が摺動可能に保持されたフロントアーム42,44を備える第2移動部28を用いることにより、引戸16を閉駆動させる際にばね等の付勢手段を用いることなく、引戸16に応じて引戸16を膨らませられる。これにより安全性を高められる。
【0045】
また、ガイド部としての溝52及びガイドローラ50を用いることにより、引戸16を閉駆動させる際に確実に引戸16を膨らませられる。
【0046】
また、信号出力部20からの駆動信号に応じて駆動部60を駆動させ、これにより引戸16を駆動させることで、引戸構造体10を自動ドアにも適用できるようになる。
【0047】
また、引戸本体22が開方向に移動するにしたがって、戸板24を引戸本体22に近づけることにより、引戸16の厚さを戸袋Sに収容できる厚さに変化させられる。
【0048】
この際、一端が戸板24に固定され、他端が摺動可能に保持されたリアアーム34,36を備える第1駆動部26を用いることにより、引戸16を開駆動させる際にばね等の付勢手段を用いることなく、引戸16に応じて引戸16をしぼませられる。これにより安全性を高められる。
【0049】
以下、実施形態の変形例について説明する。
図14は、変形例による引戸構造体の水平断面図である。
図14に示すように、戸袋Sへの入口に傾斜面200を設けてもよい。傾斜面200は、戸尻側(-X側)にある縦桟の戸厚方向内側の面に形成されている。傾斜面200は、-X側に向かうに連れて戸厚方向の幅が狭まる形状を有する。引戸16を開位置に移行させるときに引戸16の戸尻側の端が傾斜面200に接触し、戸厚方向内側に誘導される。これにより、引戸16を閉位置から開位置に移行させるときに引戸16の動作を滑らかにできる。
【0050】
なお、本開示は手動の引戸構造体にも適用可能である。この場合、利用者が引戸を動かす際に掴む取っ手を、引戸本体に直接接続すればよい。これにより、利用者が引戸本体に直接力を加えられる。
【符号の説明】
【0051】
10:引戸構造体, 16:引戸, 20:信号出力部, 22:引戸本体, 24:戸板, 26:第1移動部, 28:第2移動部, 34:リアアーム, 36:リアアーム, 38:スライドアーム, 40:スライドアーム, 42:フロントアーム, 44:フロントアーム, 46:リニアガイド, 50:ガイドローラ, 52:溝, 60:駆動部, 62:戸板移動機構, 64:ガイド機構