(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035216
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】屈折率式濃度センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01N21/41 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141876
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】叶田 壮兵
(72)【発明者】
【氏名】大津 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】新村 紘和
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059EE02
2G059EE04
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059JJ11
2G059JJ12
2G059JJ19
2G059JJ26
2G059KK04
2G059KK09
2G059KK10
2G059NN05
2G059PP04
(57)【要約】
【課題】液体中の汚れが付着したとしても高精度な濃度検出を行う。
【解決手段】光源102から放出された光を拡散する拡散板114と、拡散板114を透過する光を第1の面で受け、測定対象の液体に接する第2の面で反射し、反射光を取り出す第3の面とを有するプリズム104を有する。プリズム104を内側から外側に向かって押圧するホルダ200に、光源102、拡散板114、受光レンズ122、撮像素子106が収容される。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から放出された光を拡散する拡散板と、
前記拡散板を透過する光を第1の面で受け、測定対象の液体に接する第2の面で反射し、反射光を取り出す第3の面とを有するプリズムと、
前記プリズムの前記第3の面で受けた光を受光する受光レンズと、
前記受光レンズの光を受ける撮像素子と、
前記プリズムを内側から外側に向かって押圧するホルダと、
前記光源、前記拡散板、前記受光レンズ、前記撮像素子および前記ホルダを収容し、前記第2の面を露出させるように前記プリズムを係合し収容する筐体と、を有する屈折率式濃度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記第2の面を測定対象の液体に対して露出させる検出窓を有し、
該検出窓と前記第2の面が面一である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記プリズムが石英プリズムで構成され、該石英プリズムの測定対象の液体と接する前記第2の面が研磨され且つ親水性のコーティングが施されている。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記筐体は、検出部と、検出部から延出する棒状部とを有し、
前記液体に対して検出部を下にし、棒状部を垂直方向に設け、前記検出窓を略水平方向を向くように用いる屈折率式濃度センサ。
【請求項5】
請求項1~4に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
該屈折率式濃度センサの検出部が測定対象の液体の中に挿入された状態で該屈折率式濃度センサが運用される。
【請求項6】
請求項1~5に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記屈折率式濃度センサの長手方向一端に前記検出部が配置され、他端部に表示灯が配置されて、測定対象の液体の濃度がしきい値を越えているときに、前記表示灯が点灯又は消灯される。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記プリズムがサファイアプリズムで構成され、該サファイアプリズムの前記第1の面と、前記拡散板との間に偏光板が介装されている。
【請求項8】
請求項7に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
該屈折率式濃度センサの検出部が測定対象の液体が流れる配管の内部に臨んだ状態で配置された状態で該屈折率式濃度センサが運用される。
【請求項9】
請求項8に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記屈折率式濃度センサを外部に接続するための端子を備え、前記端子に表示灯が配置されて、測定対象の液体の濃度がしきい値を越えているときに、前記表示灯が点灯又は消灯される。
【請求項10】
前記請求項1~9のいずれか一項に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記第2の面への汚れの付着に関連する情報をユーザに対して通報をする。
【請求項11】
前記請求項1~10のいずれか一項に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記第2の面に液体が存在しないことに関連する情報をユーザに対して通報をする。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記光源と、投光レンズと、前記拡散板と前記受光レンズと、前記撮像素子と、前記プリズムとを収容する筐体を備え、
前記筐体の開口部から前記プリズムの前記第2の面が露出し、前記プリズムと前記筐体との間に止水部材が介在され、
前記止水部材が押圧されることにより前記プリズムと筐体とが密着し固定されている。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記光源の近傍に、モニタ用の撮像素子を有し、
前記撮像素子で受光した光量に基づき、前記光源を制御し、発光量を調整する。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記筐体内に、温度センサを有し、
前記温度センサにより得られた温度により屈折率または濃度を補正する。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記光源と前記拡散板との間に、前記光源から放出された光を略平行光に変換する投光レンズを更に有する。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の屈折率式濃度センサにおいて、
前記筐体のうち、前記プリズムと係合する部分に段部を有し、
前記プリズムのうち、前記筐体と係合する部分に段部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
流体は濃度が変化すると屈折率が変化する。本発明はこの特性を利用した屈折率式濃度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、工作機械のクーラントの管理に向けて、超音波流量スイッチ、濃度センサ、温度センサを含む超音波流量検出装置を最適化する開発の過程で本発明を着想するに至ったものである。
【0003】
説明の都合上、先ず、超音波流量スイッチを説明する。配管内を一定値以上の流量で流体が流れているか否かを検出すれば足りる現場、換言すれば、配管内を流れる流体の正確な流量の値が必要でない現場では、ON/OFF信号を出力する超音波流量スイッチが用いられている(特許文献1)。特許文献1は、また、クランプオン超音波流量スイッチを開示している。クランプオン超音波流量スイッチは、これに含まれる要素を組み込んだユニットを配管の外周面の適宜の箇所に後付けで設置される。
【0004】
次いで、従来の屈折率式濃度センサを説明する。特許文献2は屈折率式濃度センサを開示している。特許文献2の
図2を参照して、特許文献2に開示の屈折率式濃度センサ2の構造を以下に説明する。この説明において使用する参照符号は特許文献2に記載の参照符号である。屈折率式濃度センサ2は直角プリズム22を含んでいる。直角プリズム22の一方の斜面22c側に投光部23が配置される。測定対象は、直角プリズム22の底面22aに接した状態で位置される。直角プリズム22の他方の斜面22d側に受光部24が配置される。
【0005】
投光部23は配列した複数のLED25と、この複数のLED25とプリズム22との間に配置された拡散板26とを含む。他方、受光部は、レンズ27と撮像素子(CCD)28とで構成されている。すなわち、特許文献2の屈折率式濃度センサ2は、投光部の光源にアレイ光源を採用し、このアレイ光源が発した光を拡散板で拡散してプリズムに光を当てることを特徴としている。
【0006】
他の屈折率式濃度センサを特許文献3は開示している。特許文献3の
図1を参照して、特許文献3に開示の屈折率式濃度センサ10の構造を以下に説明する。この説明において使用する参照符号は特許文献3に記載の参照符号である。屈折率式濃度センサ10はプリズム16の第1の面20側に投光部が配置され、測定対象の液体は、プリズム16の第2の面18に接した状態で位置される。第3の面22側に受光部が配置される。
【0007】
投光部は、光源24と、光源24からの光を第1の面20上に集光するコンデンサレンズ26とを含む。他方、受光部は、好ましくは第3の面22上に設置された偏光板30を含む。偏光板30は、屈折率測定面に直交する方向に振動するS偏光のみを選択的に通過させる。換言すれば、偏光板30には外光のP偏光をブロックする機能が与えられている。受光部は、また、撮像素子28と、偏光板30と撮像素子28との間に配置された対物レンズ32とを含む。撮像素子28には、光量分布曲線から測定対象の液体の臨界角及び屈折率を演算する演算手段が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-217734号公報
【特許文献2】特開2005-345175号公報
【特許文献3】特開2004-271360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の屈折率式濃度センサ(特許文献2)は、直角プリズムの投光側の斜面に均一に光を当てるために、アレイ光源と拡散板との組み合わせを採用している。しかし、アレイ光源は、複数のLEDの集合体であり、各LED毎に製造上のバラツキが含まれる。したがって、アレイ光源はこれを面光源として捉えたときに、局部局部で不均一であり、この局部局部で不均一な光を拡散板を通じて直角プリズムの投光側斜面に当てたとしても高度な均一性を確保することができない。このことは、撮像素子(CCD)の受光量にムラが発生することを意味し、濃度検出の精度に関係する。
【0010】
本発明の目的は、液体中の汚れが付着したとしても高精度な濃度検出を行うことのできる屈折率式濃度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
光源と、
前記光源から放出された光を拡散する拡散板と、
前記拡散板を透過する光を第1の面で受け、測定対象の液体に接する第2の面で反射し、反射光を取り出す第3の面とを有するプリズムと、
前記プリズムの前記第3の面で受けた光を受光する受光レンズと、
前記受光レンズの光を受ける撮像素子と、
前記プリズムを内側から外側に向かって押圧するホルダと、
前記光源、前記拡散板、前記受光レンズ、前記撮像素子および前記ホルダを収容し、
前記第2の面を露出させるように前記プリズムを係合し収容する筐体と、を有する屈折率式濃度センサを提供することにより達成される。
【0012】
本発明によれば、プリズムを筐体の内側から外側に押圧し、筐体とプリズムの密着性を高めた状態で、プリズムの検出面を筐体から露出している点に特徴を有している。プリズムを筐体の外側から取り付けるのではなく、内側から取り付けることにより防水性を高める。面一にすることにより、より汚れが付きにくくなる。
【0013】
本発明の別の観点によれば、光源の光を拡散する拡散板との組み合わせを採用した点に特徴を有している。本発明において、光源からの光を投光レンズによって略平行光(コリメート光)に変換した後に拡散板に照射する。つまり、本発明に含まれる投光レンズは典型的にはコリメータレンズで構成される。拡散板を通過した光は、拡散板を起点とする拡散光となり、この拡散光は特定の角度成分を有さない。換言すれば、拡散板の各点において、複数の角度成分を有する光に変換される。これにより、拡散板に含まれる領域つまり投光レンズを通じて略平行光が照射された領域は均一な面光源を構成することができる。これにより液体中の汚れが付着したとしても高精度な濃度検出をすることができる。
【0014】
本発明の作用効果、本発明の他の目的は、以下の実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例の屈折率式濃度センサが好ましく適用される超音波流量検出装置の全体構成図である。
【
図2】
図1に図示の超音波流量検出装置に含まれるクランプオン超音波流量スイッチの構成を説明するための図である。
【
図3】
図2に図示のクランプオン超音波流量スイッチにおいて切り替え可能なドップラー測定運用モード、時間差測定運用モードに適用される第1、第2超音波素子の機能を説明するための図である。
【
図4】超音波流量検出装置に含まれる屈折率式濃度センサの一つの例示として差し込み型濃度センサの斜視図である。
【
図5】
図4の差し込み型濃度センサの検出部を例えばタンクの中に挿入した状態で設置する際に使用される治具を説明するための側面図であり、差し込み型濃度センサはタンクに対して固定する前の状態が図示されている。
【
図6】
図5に図示の差し込み型濃度センサ及び治具の斜視図である。
【
図7】
図5に関連して、治具を使って、差し込み型濃度センサをタンクに固定した状態を示す側面図である。
【
図9】超音波流量検出装置に含まれる屈折率式濃度センサの他の例示として通水型濃度センサの側面図である。
【
図10】
図9に図示の通水型濃度センサの斜視図である。
【
図11】配管に設置した通水型濃度センサの斜視図である。
【
図14】
図4に図示の差し込み型濃度センサの内部構造を示すための断面図である。
【
図15】
図10等に図示の通水型濃度センサの内部構造を示すための断面図である。
【
図16】実施例の差し込み型濃度センサ、通水型濃度センサに共通する基本構造において、プリズムに対する投光部として、コリメータレンズの投光レンズと、投光レンズからの略平行な光を拡散する拡散板との組み合わせを採用したときのプリズムでの作用を説明するための図である。
【
図17】実施例の差し込み型濃度センサ、通水型濃度センサに共通する基本構造において、プリズムに対する投光部として、コリメータレンズの投光レンズと、投光レンズからの略平行な光を拡散する拡散板との組み合わせを採用したときに、測定対象の液体の濃度によって屈折率が変化し、この変化が撮像素子で検知されることを説明するための図である。
【
図18】
図17と同様に、コリメータレンズの投光レンズと、投光レンズからの略平行な光を拡散する拡散板との組み合わせを採用した実施例において、測定対象の液体の濃度によって屈折率が変化し、この変化が撮像素子で検知されることを説明するための図である。
【
図19】通水型濃度センサおよび差し込み型濃度センサのブロック図である。
【
図20】屈折率式濃度センサを用いた乾水検知を説明するための図である。
【
図21】屈折率式濃度センサによる濃度算出のフローチャートである。
【
図22】クランプオン超音波流量スイッチの斜視図である。
【
図23】超音波流量検出装置において、表示器に表示可能なメニュー表示画面において、現在値(濃度)を選択したときの表示例を示す。
【
図24】実施例の超音波流量検出装置において、表示器の表示画面を使って濃度センサに関する設定を行うことができる画面を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例0016】
実施例の屈折率式濃度センサを説明する前に、工作機械のクーラントの管理に向けて最適化した超音波流量検出装置を説明する。超音波流量検出装置は、超音波流量スイッチ、濃度センサ、温度センサで構成される。超音波流量スイッチは、表示機能を備えた一体型クランプオン超音波流量スイッチが採用されている。
【0017】
工作機械は、水で希釈した水溶性切削油剤が用いられる。水溶性切削油剤の希釈液は「クーラント」と呼ばれている。クーラントの有効成分の量は僅かであり、この微量成分で潤滑作用を発揮させ、クーラントの腐敗を抑制し、錆の発生を抑制し、切削性能の低下を抑えるのに、クーラントの濃度を適正値に維持することが肝要である。濃度が推奨値よりも低いと工作機械の加工性能が低下する。工作機械のオペレータは、生産品質の向上、ランニングコストの低減、作業効率の向上のためのスキルとして、クーラントの適正な管理を学習している。オペレータにとって、クーラントの適正な管理、特に濃度管理は、工作機械の生産品質の向上、ランニングコストの低減、作業効率の向上などのために重要である。
【0018】
図1を参照して、参照符号2はクーラント収容タンクを示す。クーラント収容タンク2には、水で希釈した水溶性切削油剤つまりクーラントが収容されている。クーラント収容タンク2のクーラントは配管4を通じて図外の工作機械に供給される。
【0019】
配管4には、後付けでクランプオン超音波流量スイッチ6が脱着可能に固定される。そして、クランプオン超音波流量スイッチ6には、例えばクーラント収容タンク2の中に検出部を挿入した濃度センサ8が接続され、また、配管4の例えば連結部に設置された温度センサ10が接続される。クランプオン超音波流量スイッチ6は後に説明する表示器64を有し、これらの要素によって超音波流量検出装置12が構成されている。
【0020】
図2は、クランプオン超音波流量スイッチ6の具体例を説明するための図である。クランプオン超音波流量スイッチ6は、取付ベース部材60、測定ヘッド部材62、表示器64の3つの部材で構成されている。取付ベース部材60は、配管4の適宜の箇所に後付けで且つ脱着可能に設置可能である。測定ヘッド部材62は流量検出部を構成する第1、第2の超音波素子66、68を備えており(
図3)、この測定ヘッド部材62は、上記の取付ベース部材60に脱着可能に組み付けられ、そして、取付ベース部材60によって測定ヘッド部材62は配管4に圧接した状態が維持される。
【0021】
測定ヘッド部材62には表示器64が組み付けられる。
図2において、(I)は表示器64の正面図であり、(II)は表示器64の背面図である。表示器64には、濃度センサ8、温度センサ10が接続される。濃度センサ8、温度センサ10が検出した検出値は、演算などの加工することなく、検知した実際の数値が表示器64に表示される。
【0022】
クランプオン超音波流量スイッチ6は、最も好ましくは、一体型クランプオン超音波流量スイッチ(
図3)で構成されるのがよい。測定ヘッド部材62において、第1超音波素子66、第2超音波素子68は一つの素子保持部70に一体的に保持されるのが好ましい。
【0023】
図3を参照して、測定ヘッド部材62は、超音波を送受信する第1、第2の超音波素子66、68を内蔵し、第1、第2の超音波素子66、68の相対的位置は、素子保持部70によって固定されている。第1、第2の超音波素子66、68は、典型的には圧電素子で構成される。第1、第2の超音波素子66、68は、配管4の母線上において、配管の軸線方向に離間して位置するように素子保持部70に位置決めされている。一体型クランプオン超音波流量スイッチ6は、後述する「伝播時間差」方式の原理の下で計測する時間差運用モードの観点から特定すると、いわゆるV配置方式あるいは反射配置方式である。
【0024】
測定ヘッド部材62に含まれる第1超音波素子66に隣接して、第1超音波伝達部16としての第1くさび部材162を含み、また、第2超音波素子68に隣接して、第2超音波伝達部18としての第2くさび部材182を含んでいる。第1くさび部材162は、素子保持部70に組み込まれて、第1超音波素子66と音響的に結合するように第1超音波素子66を支持する第1素子結合面162aを有し、この第1素子結合面162aに第1超音波素子66が設置される。第2くさび部材182は、素子保持部70に組み込まれて、第2超音波素子68と音響的に結合するように第2超音波素子68を支持する第2素子結合面182aを有し、この第2素子結合面182aに第2超音波素子68が設置される。
【0025】
また、測定ヘッド部材62は、第1、第2のくさび部材162、182に、夫々、隣接して、第1、第2のカプラント164、184を好ましくは含んでいる。第1、第2のカプラント164、184は、第1、第2の超音波伝達部16、18の一部を構成すると共に、素子保持部70において、配管4と音響的に結合する配管結合面を構成している。
【0026】
測定ヘッド部材62は、第1、第2の超音波素子66、68の送受信の制御を行うと共に検出データを演算する回路基板186を有している。測定ヘッド部材62には、前述したように表示器64が脱着可能に設置される。表示器64は表示部64aを備えている。表示器64は測定ヘッド部材62で求めた流量を受け取って表示部64aに表示する。
【0027】
測定ヘッド部材62は、第1、第2の超音波素子66、68が協働して「伝播時間差」方式で流量測定を実行する時間差測定運用モードと、第1の超音波素子66が単独で動作して「パルスドップラー」方式で流量測定を実行するドップラー測定運用モードとを含み、ユーザの選択又は例えば流体内の気泡の量の多い少ないに対応して自動的に使い分けられる。例えば、時間差測定運用モードとドップラー測定運用モードとで交互に動作し、気泡が多いときはドップラー測定運用モードが自動的に設定され、他方、気泡が少ないときには時間差測定運用モードが自動的に設定される。
【0028】
図3において、実線RLの矢印は、第1、第2の超音波素子66、68が協働して「伝播時間差」方式の原理の下で流量測定することを意味している。他方、破線DLの矢印は、第1超音波素子66が単独で動作して「パルスドップラー」方式の原理の下で流量測定することを意味している。
【0029】
図1を参照して前述した濃度センサ8に関し、2種類の屈折率式濃度センサが用意される。一つは差し込み型であり、
図1に例示的に図示した濃度センサ8は、差し込み型である。他の一つは通水型である。差し込み型、通水型を識別する必要があるときには、差し込み型濃度センサには参照符号8Aを付し、通水型濃度センサには参照符号8Bを付す。
【0030】
図4は、差し込み型濃度センサ8Aの斜視図である。差し込み型濃度センサ8Aは、筐体によって棒状の形状を有し、
図1を参照して説明したように、検出部8A-1を下にしてタンク2内の測定対象液体の中に検出部8A-1を挿入した状態で使用される。差し込み型濃度センサ8Aの筐体は金属製であるのが好ましい。
図4の参照符号8A-2は表示灯を示す。差し込み型濃度センサ8Aは棒状の細長い形状を有し、長手方向一端に検出部8A-1が配置され、他端に表示灯8A-2が設けられている。表示灯8A-2は、検出した濃度が、差し込み型濃度センサ8Aに設定されたしきい値を越えたときに点灯又は消灯される。検出部8A-1とは長手方向反対側に配置された表示灯8A-2は、その点灯又は点滅を全周に亘って視認することが可能であり、差し込み型濃度センサ8Aの運用時は、液体の液面よりも上方に位置しているため容易に視認可能である。
【0031】
表示灯8A-2について詳しく説明すると、全周に亘って光を発する表示灯8A-2は、赤、緑の2色のLED(緑、赤)を有しており、点灯パターンとして、緑、赤を共に点灯したアンバー色の光による点灯を実現している。濃度センサの状態により、どの色のLEDを点灯、消灯、点滅させるかを変化させる。表示灯8A-2のうち、例えば緑のLEDと赤のLEDは、濃度が所定の範囲内にあるときに緑色のLEDを点灯させ、所定の範囲外になったときに赤色のLEDを点灯する。タンクが乾水している場合には赤点滅させる。表示灯8A-2のうち、例えばアンバー色の点灯、点滅は、ユーザにメンテナンス時期であることを知らせる。また、検出窓に汚れがある場合にはアンバー点滅させることにより、ユーザに、緑色、赤色が意味する状態とは別の状態であることを認識させることができる。
【0032】
また、表示灯8A-2は、差し込み型濃度センサ8Aの筐体ケーブルに近い部分、最も好ましくは端に配置され、円錐台状の形状である。このため、周囲360度の全方位から視認し易く、また、タンク2の液面の上方に配置されるので、タンク2の上方からでも表示灯8A-2を視認し易い。
【0033】
図5、
図6は、治具80を用いて差し込み型濃度センサ8Aを設置する説明図であり、差し込み型濃度センサ8Aの検出部8A-1をタンク2内に挿入する過程を示す。
図5は側面図であり、差し込み型濃度センサ8Aの治具がアンロック状態にある。
図6は
図5に対応した斜視図である。
図7、
図8は、治具80を用いて差し込み型濃度センサ8Aを例えばタンク2に固定した状態を示す。
図7は側面図であり、差し込み型濃度センサ8Aの治具がロック状態にある。
図8は
図7に対応した斜視図である。
【0034】
治具80は、例えばタンク2の開口部に設置される台座プレート82を含み、また、差し込み型濃度センサ8Aに脱着可能に設置されるレバー式の固定具84を含む。この固定具84は、ボルト88によって濃度センサ8Aに脱着可能に固定される。
【0035】
図5、
図6を参照して、差し込み型濃度センサ8Aの検出部8A-1をタンク2内の測定対象液体Sの中に挿入する、又は、タンク2から抜き取る際は、レバー式固定具84はロック解除された状態で行われる。
図7、
図8を参照して、差し込み型濃度センサ8Aは、レバー式固定具84をユーザが押し倒して、これをロック状態にすることで、タンク2に固定される。差し込み型濃度センサ8Aの検出部8A-1は検出窓86(
図8)を有し、この検出窓86を通じてタンク2内の測定対象の液体の濃度の検出が行われる。
図4ないし
図8から分かるように、差し込み型濃度センサ8Aの検出部8A-1は横方向に向いた姿勢で保持される。これにより、検出部8A-1の検出窓86は垂直方向に広がる面で構成される。
【0036】
治具80を取り付ける場合であっても、差し込み型濃度センサ8Aの筐体のうち、表示灯8A-2よりも検出部8A-1側つまり検出部8A-1と表示灯8A-2との中間部分で固定するため、外部から表示灯8A-2を視認できる。
【0037】
【0038】
通水型濃度センサ8Bは検出部8B-1が配管4の内部に臨んだ状態で配管4に設置される。
図10の参照符号90は、通水型濃度センサ8Bの検出窓を示し、検出窓90は検出部8B-1に位置し、この検出窓90を通じて配管4を流れる測定対象の液体の濃度の検出が行われる。
図9の参照符号8B-2は表示灯を示す。通水型濃度センサ8Bに含まれる表示灯8B-2は、構造及び機能の点で、前述した差し込み型濃度センサ8Aの表示灯8A-2と実質的に同じである。例えば、通水型濃度センサ8Bに含まれる表示灯8B-2は、前述した差し込み型濃度センサ8Aの表示灯8A-2と同様に、周囲360度の全方位に亘って光を発することができ、その点灯又は点滅を全周に亘って視認することができる。したがって、通水型濃度センサ8Bに含まれる表示灯8B-2の詳細な説明を省略する。
【0039】
通水型濃度センサ8Bにおいて、表示灯8B-2は、通水型濃度センサ8Bのケーブルコネクタ部つまり端子に設けられ、このコネクタ部つまり端子の検出部8B-1側に配置され且つ表示灯8B-2の形状は円錐台形状である。通水型濃度センサ8Bの筐体は、差し込み型濃度センサ8Aの筐体と同様に金属製であるのが好ましい。
【0040】
図14は差し込み型濃度センサ8Aの検出部8A-1の構造を説明するための図である。
図14に示すように、後に説明するLED光源102、光量制御用のモニタPD103、投光レンズ112、拡散板114はモジュール化され、投光モジュールとしてホルダ200に取り付けられ、組み込まれている。同様に、撮像素子106、受光レンズ122もモジュール化され、受光モジュールとしてホルダ200に取り付けられ、組み込まれている。差し込み型濃度センサ8Aの金属製筐体81には検出窓86が設けられている。要素102、112、114を含む投光モジュール、要素106、122を含む受光モジュールおよびメイン基板CB(m)を押し当て部材200に対して組み付ける。そのあと、各要素が実装された押し当て部材つまりホルダ200をプリズム130に関連して設置した後、その全体を金属製筐体81に押し当てて固定する。その際に、プリズム130の周回り庇つまり周回り方向に延びる段部と金属製筐体81との間に、止水部材としてのゴム製の第1パッキン123を介在させる。金属製筐体81に押し当てて固定することで第1パッキン123を押しつぶすことにより筐体81の外部から内部に浸水するのを防止している。プリズム130の周回りに延びる段部つまり周回り庇と、金属製筐体81の表面との間は、金属製筐体81が部分的に肉薄化されて、第1パッキン123を収容する空間が形成されており、これにより、後述するように、面一の検出窓86が実現されている。また、検出部8A-1のうち、プリズム130より先端側に、温度センサ(温度測定回路)40が設けられている。この、温度測定回路40が設けられている部分は、金属製筐体81が他の部分より肉薄に設けられている。プリズム130が押し当てられ、肉薄化されている部分よりも薄い。
【0041】
上記の第1筐体81と、これとは別体の第2筐体83との間にも、止水部材としての第2パッキン124を介在してあり、第1筐体81と第2筐体83とを押圧して第2パッキン124を押し潰すことにより、第1筐体81と第2筐体83の界面部分つまり合わせ面から差し込み型濃度センサ8aの内部への浸水を防止している。第1、第2の筐体81、83を一体化した後に、この組立体を第3筐体85に挿入、嵌合、ねじ止めして固定することで、第2筐体83と第3筐体85との界面つまり合わせ面からの浸水を防止している。
【0042】
図15は通水型濃度センサ8Bの検出部8B-1の構造を説明するための図である。
図15に示すように、投光モジュール(102,112)、受光モジュール(106、122)およびメイン基板CB(m)を押し当て部材205に対して組み付ける。そのあと、各要素が実装された押し当て部材205をプリズム140に取り付け、その全体を8Bの検出窓90を有する金属製筐体87に押し当てて固定する。その際に、プリズム140の周回り庇と金属製筐体87との間に、止水部材としてのゴム製のパッキン125を介在させる。このパッキン125を押しつぶすことにより筐体87の外部から通水型濃度センサ8Bの内部に浸水するのを防止している。プリズム140の周回りに延びる段部つまり周回り庇と、金属製筐体87の表面との間は、金属製筐体81が部分的に肉薄化されて、パッキン125を収容する空間が形成されており、これにより、後述するように、面一の検出窓90が実現されている。また、検出部8B-1のうち、プリズム140より先端側に、温度センサ(温度測定回路)40が設けられている。この、温度測定回路40が設けられている部分は、金属製筐体87が他の部分より肉薄に設けられている。
【0043】
差し込み型の検出部8A-1と、通水型の検出部8B-1とは、基本的に同じ構造を有し、この基本構造を
図16に図示してある。
図16を参照して、差し込み型と通水型が共通する基本構造を説明する。差し込み型濃度センサ8Aと通水型濃度センサ8Bとが共通する基本構造は、光源102と、プリズム104、撮像素子106を含む。光源102は単一のLED光源で構成されている。一例として、中心波長が589nm程度のアンバー色の単一のLEDを用いる。LED光源102は投光部110の一部を構成し、投光部110はプリズム104の第1の面104aに光を照射する。プリズム104の入力側に位置する投光部110は少なくともLED光源102と拡散板114とを含む。投光部110は、LED光源102の光を受けて、これを好ましくは略平行光にする投光レンズ112を含む。投光レンズ112は典型的にはコリメータレンズで構成される。投光部110は、また、投光レンズ112を通過して生成された略平行光を拡散する拡散板114を更に含む。拡散板114を通過した光は、拡散板114を起点とする拡散光となり、この拡散光は特定の角度成分を有さない。つまり、拡散板114によって、拡散板114の各点において、複数の角度成分を有する光に変換される。これにより、拡散板114は均一な面光源を構成して、プリズム104の第1の面104aを照射する。
図14、
図15を参照して、LED光源102に隣接して、LED光源102の発光量をモニタするモニタPD103が設けられている(
図19参照)。このモニタPD103での受光した光を監視して、LED光源102からの発光量が一定になるように制御部でLED光源102の発光量を制御する。
【0044】
これは、中心波長が589nm程度のアンバー色のLED光源を用いる場合、他のLEDに比べて温度特性が良くない。液体の温度を含めた周辺温度によらず、発光量を一定にするため、LEDの発光量を見て、発光量に応じてLED光源に供給する電流量を制御している。電流量を増減してもよいし、パルス点灯するLEDのデューティー比を調整して、発光量が一定になるように調整してもよい。
【0045】
プリズム104の第2の面104bは、検出窓86又は90を通じて測定対象液体に臨んで位置し、測定対象液体と接した状態になる。拡散板114で拡散された光は、第1の面104aを通じてプリズム104の内部に入り、測定対象の液体に接する第2の面104bで反射して、この反射光は、受光部120側の第3の面104cを通じてプリズム104から外部に出る。受光部120は、受光レンズ122と撮像素子106とで構成され、第3の面104cを通じてプリズム104の外に出た反射光は、受光レンズ122によって集光され、受光レンズ122で集光された光が撮像素子106に入力される。撮像素子106は、典型的には、一次元CMOSセンサで構成される。プリズム104と対象液体との界面での全反射光を、受光レンズ122で撮像素子106上に集光して、光量分布を取得する。液体の濃度による屈折率の変化を、撮像素子106上の集光位置の変化として測定する。濃度の変化と屈折率の変化とは比例関係にあり、屈折率の変化を測定することで、対象液体の濃度を測定することができる。
【0046】
撮像素子106では、常に受光状態にしておくのではなく、短い間隔で複数回撮像を行った後、それ以降の長い時間は撮像をオフにする、という撮像のオンとオフとの1セットを周期的に行うことで、撮像素子106からの発熱を抑制している。これは撮像素子106からの発熱により撮像素子106が搭載される基板の位置ズレなどを抑える。屈折率式濃度センサにおいては、撮像素子106の光量分布から濃度を測定するため、わずかな基板の位置ズレであっても、濃度の測定精度に直接影響してしまうという原理上の課題があった。それに対して、濃度の測定精度を落とさぬよう、常時測定が必要な温度センサにおいて、オンオフを周期的に繰り返した1セットを周期的に行うことで、撮像素子106側の発熱を抑えている。
【0047】
図17、
図18は、測定対象の液体の濃度によって測定対象の液体Sに接する第2の面104bでの屈折率が変化することを説明するための図である。
図17を参照して、第2の面104bに関する入射角θ1と、第2の面104bでの反射光の出射角θ2との比が屈折率であり、この屈折率は測定対象の液体Sの濃度によって変化する。この変化は、撮像素子106上で集光される部位が変位することで知ることができる。
【0048】
図14、
図15に戻って、
図14は差し込み型濃度センサ8Aの検出部8A-1の具体的な構造を示す。
図15は、通水型濃度センサ8Bの検出部8B-1の具体的な構造を示す。具体的な構造において、差し込み型濃度センサ8Aと通水型濃度センサ8Bとの違いはプリズム104の材料に関連している。
図14に図示の差し込み型では、プリズム104として石英プリズム130が採用されている。
図15に図示の通水型では、プリズム104としてサファイアプリズム140が採用されている。
図14、
図15に図示の参照符号CB(m)はメイン基板を示す。
【0049】
通水型濃度センサ8Bにおいて、サファイアプリズム140の第1の面104aと拡散板114との間に偏光板128(
図15)が介装されている。サファイアプリズム140は偏光方向によって屈折率が変わり安定しないという特性を有している。偏光板128によって偏光の方向を整えることで、安定して屈折率を検出することができる。偏光板128は拡散板114の後に配置されており、P偏光のみを選択的に透過させる。これにより、
図20で示す受光波形において、急峻な傾きを有す波形を得るためである。
【0050】
プリズム104において、サファイアプリズムと石英プリズムとを比較すると、サファイアプリズムはその表面に油が付着し易い特性(水中接触角が約10°である。)を有し、他方、石英プリズムはその表面に油が付着し難い特性を有している(水中接触角が約90°である。)。プリズム104として石英プリズム130を採用した差し込み型濃度センサ8A(
図14)において、好ましくは、測定対象の液体Sに接する第2の面104bを研磨し且つ親水性コーティングを施すのがよい。研磨且つ親水性コーティングにより第2の面104bは油が付着し難くなる(水中接触角が135°になる。)。これにより、石英プリズム130を採用して、過酷な汚染環境の下で使用しても第2の面104bに関して汚れの付着に対する耐性を石英プリズム130に提供することができる。
【0051】
また、
図14、
図15を見ると良く分かるように、差し込み型濃度センサ8Aの検出窓86、通水型濃度センサ8Bの検出窓90は、プリズム104の第2の面104bと面一である。これにより、例えば、プリズム104の第2の面104bを検出窓86、90よりも低位に位置させたとき、この検出窓86、90は第2の面104bによって凹所が形成され、この凹所に測定対象の液体Sに含まれる油や気泡が留まり易くなる。これに対して、実施例の差し込み型濃度センサ8A(
図14)、通水型濃度センサ8B(
図15)の検出窓86、90は共に筐体及び第2の面104bとの間に凹所を形成しないように面一の形状を付与されているため、検出窓86、90の存在によって第2の面104bとの間に凹所が出来て、ここに油や気泡が留まり易くなる現象の発生を防止できる。このことは、測定対象の液体Sの濃度測定の精度を高めるのに貢献する。また、
図6、
図8から分かるように、差し込み型濃度センサ8Aの検出窓86は検出部8A-1の縦面に形成され、且つ縦長の形状を有している。これにより、検出窓86に油や気泡が付着するのを効果的に防止できる。
【0052】
図14の差し込み型濃度センサ8Aにおいては、
図14に図示した部分全体が、流体の中に置かれ、周囲に液体にある環境に常設される。そのため、上述したような部分で全体の防水構造を保っている。
【0053】
図15の通水型濃度センサ8Bにおいては、
図13に図示したように、プリズム140近傍のみが常に液体Sに接触する部分であり、
図15に示した部分のうち、他の部分は常時液体に接しない。周囲の液体からの防水がなされればよいだけであるため、プリズム140の接液面を中心に防水をしている。
【0054】
図16を参照して上述した、差し込み型濃度センサ8Aと通水型濃度センサ8Bとが共通する基本構造において、LED光源102の光を受けて、これを略平行光にする投光レンズ112と拡散板114とを含み、拡散板114は、事実上の面光源を構成している。仮にこれを点光源で構成した場合、検出窓86、90を通じて測定対象の液体Sと接する第2の面104bの汚染、油膜ムラが測定精度に影響を及ぼす。これに対して、実施例の差し込み型濃度センサ8A、通水型濃度センサ8Bでは、略平行光を生成する投光レンズ112と、投光レンズ112からの略平行光を拡散する拡散板114との組み合わせによって、拡散板114の各点において、複数の角度成分を有する光に変換した面光源が作られる。この面光源によって、測定対象の液体Sと接する第2の面104bの油膜ムラによる影響を平均化することができる。また、第2の面104bに局所的に気泡が付着しても、安定した濃度測定が可能になる。
【0055】
撮像素子106における受光量の絶対値が減少した場合、対象液体または検出窓86、90に異常があるとして、表示器64または表示灯8A-2,8B-2によりユーザに警告を表示することもできる。対象液体自体に汚れがあるか、または、検出窓86、90に汚れが付着し、屈折率測定、つまり濃度測定に異常がある可能性が高いためである。ユーザはこれに応じて、検出窓86、90に付着した汚れを取り除くこと、対象液体自体の汚れを確認することができる。従来の濃度センサでは、汚れ検知ができないため、ユーザは濃度に変化があるのか(流体に変化あり)、流体に変化はないものの濃度センサに汚れが付着し、測定のためにメンテナンスが必要なのかがわからなかった。それに対して、本実施例では、汚れ検知ができるので、流体の変化か、定期的なメンテナンスの時期なのかをユーザは把握でき、原因の究明に無駄な時間を要さずにすむ。
【0056】
図19は、本実施例にかかる差し込み型8A、通水型8Bの屈折率式濃度センサ8のブロック図である。屈折率式濃度センサ8は、差し込み型8A、通水型8Bともに、外部との信号ケーブルは1つである。
図1に示すように、クランプオン超音波流量スイッチ6から分岐コネクタを経由して屈折率式濃度センサ8と接続されている。超音波流量スイッチ6から電源線、通信線を含む1つのケーブルで接続されている。信号線は屈折率式濃度センサの内部で電源線と通信IF部とに分かれ、電源線は屈折率式濃度センサ内の各回路要素に電源を供給する。通信IFは流量スイッチ6から濃度センサ8へ、濃度センサ8から流量スイッチ6への双方向通信を行うためのものである。制御部CB(m)によりLED基板(LED光源102)を制御し、プリズム130、140に光を照射し、液体により反射された光をCMOS基板106で受光し、その受光位置により屈折率に変換する。LED基板のLED光源102の近傍には、モニタPD103が設けられており、LEDの発光量をモニタする。LED光源102の発光量に応じて、LED光源102に供給する電流を調整し、発光量が一定になるように制御する。表示灯8A-2,8B-2は、CMOS基板106での受光状態、屈折率により、点灯状態を変える。屈折率式濃度センサ8の液面側には、温度計を含む温度測定回路40を有する。温度測定回路40の温度計により得られた温度により、流体の温度を表示してもよい。また、温度による液体の屈折率の変化があるため、この温度依存を補正するため、得られた濃度を液体温度を用いて補正してもよい。
【0057】
ここで、屈折率濃度センサ8A,8Bは、検出窓86、90の「汚れ検知」も検出可能であるし、流体が乾水状態となっていることも検出(「乾水検知」)可能である。
【0058】
「汚れ検知」は、撮像素子106で得られる受光波形により検出窓86、90に汚れが付着していることを判定する。流体Sが存在し、検出窓86、90に汚れがなければ、受光量が多い箇所と、少ない箇所が存在する。受光波形を微分して得られた波形信号に対して、所定の演算をすることで、検出窓86、90に汚れがあるか否かを判定できる。検出窓86、90に汚れがあると判定したときには、表示灯8A-2、8B-2を用いて、汚れがあることを意味するユーザに通報する。ここに、汚れがある場合には、受光波形が緩やかな変化となるので、微分して得られた波形の信号強度、ピーク幅などについて汚れがない状態とは変わる。
【0059】
図20を参照して、「乾水検知」は、撮像素子106の受光領域のうち、屈折率の測定に用いていない領域の画素を乾水検知用に用いる。すなわち、CMOS撮像素子106のうち、液体の濃度が0%であっても、受光信号を受けない画素位置がある。その画素を乾水検出画素として用いる。
【0060】
流体に液体が存在している場合は、液体の屈折率に従い臨界角よりも小さい角度に対応する画素にはLED光源102からの光は入光しない。したがって、当該乾水検出用の画素の受光量はゼロまたはゼロに近くなる。一方、流体に液体が存在していない場合、検出窓86、90との界面には空気が存在し、乾水検出用の画素の受光量が増える。乾水検出用の画素の受光量がある閾値を超えると、乾水が生じていると判断し、乾水である旨を表示灯8A-2、8B-2または表示器64に表示する。
【0061】
乾水検知のレベルも汚れ検知のレベルも、ユーザにより設定可能であり、「低」、「中」、「高」や、レベル1~4のように選択可能である。この選択は表示器64へのユーザ入力により可能であり、乾水検知、汚れ検知のレベルを変えることができる。使用している流体、周囲環境により、乾水や汚れの発生し易さは変わる。この事実を念頭に置けば、一律な乾水、汚れ検知は適当ではない。よって、上述したようにユーザにより設定可能としている。
【0062】
図21を用いて、本実施例にかかる屈折率式濃度センサによる濃度の算出方法を説明する。通水式、差し込み式に共通である。まず、St1として、初期設定を行う、
図22の流量センサに取り付けられた表示器64において、表示部64aの上部に大型表示灯64bが設けられ、表示器の下部に操作部64cが設けられている(
図22)。この操作部64cにより、表示部64aに現れる画面に従って設定を入力することが可能である。操作部64cへの入力で、表示部64aに表示される濃度の単位、閾値を設定する。
【0063】
次に、St2として、LED光源102からの投光の制御を行う。タイミング制御を行い、パルス発光を行う。外乱光によるノイズ耐性を上げるためである。パルス発光時の非発光時の受光信号をキャンセルするなどにより、外乱光のノイズを取り除くことができる。
【0064】
また、LED光源102では、発光量制御を行う。モニタPD103により、LED光源102の発光量をモニタし、発光量が一定となるようにLED光源102を制御する。モニタPD103での受光信号により、次のタイミング以降のLED光源102の発光量を制御することで、投光側からの発光量を一定とすることで、撮像素子での受光量を一定とし、受光波形の信号処理が容易になるためである。精度向上につながる。
【0065】
次に、St3として、撮像素子(CMOS基板)106により受光する。撮像素子106は筐体内に、検出窓86における反射角に応じた位置に各画素が配列するように撮像素子106が配置される。撮像素子106では、受光分布を取得する。この際、発光素子側のパルス発光した点灯タイミングに同期して露光制御する。非発光時の受光量を外乱光として、受光波形信号から除くことにより外乱光対策を行うことができる。
【0066】
次に、St4として、撮像素子106で得られた
図20に示すような受光分布に基づき、明暗ラインの画素位置を決定する。液体の濃度により反射角が変わるため、濃度により、明暗が生じる位置が変わる。このように濃度による屈折率の変化を利用し、屈折率と濃度との対応関係を利用して、屈折率から濃度に変換する。
【0067】
ここで、St5に示すように、温度により濃度補正を行う。これは、屈折率と濃度との対応関係が、液体の温度により変わるため、温度測定回路40で取得した温度により、屈折率から濃度への変換の際に、温度による補正を行う。
【0068】
St6に示すように、撮像素子106における受光波形や受光信号により、異常検知を行う。乾水検知は、撮像素子106内の乾水検出用の画素を用いる。汚れ検知は、受光波形における明暗の変化の急峻さにより判定する。また、外乱光が多く濃度検出範囲において受光信号が高ければ、外乱光有判定することも可能である。なお、異常検知は濃度算出や補正と並行して行ってもよいし、濃度算出や補正の前に行ってもよい。
【0069】
St3ないし6をまとめると、濃度を測定するために、濃度と相関関係にある屈折率を取得すべく、臨界角に応じて変化する受光波形の明暗ラインを取得する。屈折率は濃度と相関関係あるものの、温度による差があるため温度により屈折率から濃度への変換テーブルを補正し、濃度を測定している。
【0070】
St7として、得られた濃度を表示器64の表示部64aに表示する。閾値と現在地を比較し、その結果を表示器64の表示灯64bに表示する。また、異常検知した内容を表示器64の表示部64aに表示し、異常内容に応じた点灯状態又は点滅状態を表示灯64bを介して行ってもよい。
【0071】
図24に示すように、スタビリティ警報として、検出窓86の汚れに対する警報の閾値を設定可能である。閾値を低く設定すれば、すこしの汚れでも表示器64の表示灯64bおよび8A-2、8B-2に、検出窓に汚れがあることを示し検出窓のメンテナンスを促す警報を出力する。閾値を高く設定すれば、相対的に汚れが多くならない限り警報出力しない。液体Sの性質、液体S内の溶質の性質によって、ユーザが警報閾値を変更可能である。
【0072】
乾水検知感度も、操作部への入力により、閾値変更可能であり,OFFにすることも可能であるし、感度設定を変更可能。感度を高く設定すると、検出窓に少しでも乾水があったり、差し込み式の場合に、タンクの液面が下がってきて窓の一部が液面になり、その面より上が乾水になったときに警告表示ができる。
【0073】
ティーチング目標値は、いわゆるゼロ点調整であり、濃度のリファレンスとなるある液体に対して目標値を設定し、濃度の基準を調整する。このような設定が、操作部64cと表示器64aを通じて可能である。
【0074】
以上、本発明の実施例を超音波流量検出装置との関係で説明したが、本発明は超音波流量検出装置に関係なく、広く一般的に屈折率式濃度センサに適用できるのは勿論である。