(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003526
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】車両システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20230110BHJP
F02N 11/00 20060101ALI20230110BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20230110BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230110BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20230110BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20230110BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20230110BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20230110BHJP
【FI】
F01N3/20 L ZHV
F02N11/00 G ZAB
F02N11/04 A
F01N3/24 L
F01N3/24 R
F02D41/04
F02D13/02 J
B60W20/16
B60W20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104649
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】ガブリッツア トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ソイリング ズィルケ
【テーマコード(参考)】
3D202
3G091
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB08
3D202BB09
3D202BB26
3D202BB43
3G091AA14
3G091AB03
3G091AB13
3G091BA02
3G091CA02
3G091CA27
3G091CB08
3G091EA14
3G091EA17
3G091EA30
3G091FA04
3G091FC05
3G091HA08
3G092AA11
3G092AC02
3G092DA03
3G092EA29
3G092FA15
3G092GA10
3G092HA04Z
3G092HD01Z
3G301HA19
3G301JA21
3G301KA28
3G301MA11
3G301PA10Z
3G301PD11Z
3G301PF16Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】排気通路に設けられた触媒装置を暖機する際に、排気エミッションの排出を抑制し、かつ、燃費の低下を抑制可能な車両システムを提供する。
【解決手段】内燃機関10と、駆動時に内燃機関10に空気が導入されるISG51と、内燃機関10の排気通路31に設けられた第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35と、第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35の排気上流側に設けられ、燃料を含む混合気を燃焼させるバーナ装置5とを含む車両システム1を備え、車両システム1を制御する制御装置100は、モータ51を駆動して内燃機関10に空気を導入するとともに、内燃機関10での燃焼を生じさせずに内燃機関10からバーナ装置5へ混合気又は空気を供給し、バーナ装置5で混合気を燃焼させて第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35を加熱する暖機制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)と、駆動時に前記内燃機関(10)に空気が導入されるモータ(51, 81, 91, 133, 153)と、前記内燃機関(10)の排気通路(31)に設けられた触媒装置(31, 33)と、前記触媒装置(31, 33)の排気上流側に設けられ、燃料を含む混合気を燃焼させるバーナ(5)と、を含む車両システム(1, 80, 90, 90A, 130, 140, 150)において、
前記車両システム(1, 80, 90, 90A, 130, 140, 150)を制御する制御装置(100)は、前記モータ(51, 81, 91, 133, 153)を駆動して前記内燃機関(10)に空気を導入するとともに、前記内燃機関(10)での燃焼を生じさせずに前記内燃機関(10)から前記バーナ(5)へ混合気又は空気を供給し、前記バーナ(5)で前記混合気を燃焼させて前記触媒装置(31, 33)を加熱する暖機制御を実行する、車両システム。
【請求項2】
前記モータ(51, 91)は、前記内燃機関(10)のクランクシャフト(11)を回転可能に設けられたモータ(51, 91)であり、
前記車両システム(1, 90, 90A, 140)は、前記内燃機関(10)及び前記モータ(51, 91, 133, 153)から駆動輪(69)への動力伝達経路に設けられたクラッチ(94, 99)又はトルクコンバータ(61)をさらに備え、
前記制御装置(100)は、前記内燃機関(10)及び前記モータ(51, 91)から前記駆動輪(69)へ動力が伝達されない状態で前記モータ(51, 91)を駆動して前記内燃機関(10)に空気を導入するとともに、前記内燃機関(10)での燃焼を生じさせずに前記内燃機関(10)から前記バーナ(5)へ混合気又は空気を供給し、前記バーナ(5)で前記混合気を燃焼させて前記触媒装置(31, 33)を加熱する暖機制御を実行する、請求項1に記載の車両システム。
【請求項3】
前記モータ(81)は、前記内燃機関(10)の出力により駆動される発電用モータ(81)であり、
前記内燃機関(10)の駆動トルクは、前記発電用モータ(81)の駆動にのみ用いられ、
前記制御装置(100)は、前記モータ(81)を駆動して前記内燃機関(10)に空気を導入するとともに、前記内燃機関(10)での燃焼を生じさせずに前記内燃機関(10)から前記バーナ(5)へ混合気又は空気を供給し、前記バーナ(5)で前記混合気を燃焼させて前記触媒装置(31, 33)を加熱する暖機制御を実行する、請求項1に記載の車両システム。
【請求項4】
前記車両システム(140, 150)は、前記バーナ(5)へ前記燃料を供給するバーナ燃料供給装置(143)をさらに備え、
前記バーナ(5)は、前記バーナ燃料供給装置(143)から供給される前記燃料と、前記内燃機関(10)から供給される前記空気とを混合して混合気を形成するとともに、前記混合気を燃焼させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項5】
前記制御装置(100)は、前記クランクシャフトを回転させるとともに前記内燃機関(10)の燃料噴射弁(15)から燃料を噴射して形成した混合気を前記内燃機関(10)から前記バーナ(5)へ供給し、
前記バーナ(5)は、前記内燃機関(10)から供給される前記混合気を燃焼させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項6】
前記モータ(91)を第1のモータ(91)としたときに、
前記車両システム(90A)は、前記クラッチ(94)又は前記トルクコンバータ(61)よりも前記駆動輪(69)側に設けられて前記駆動輪(69)へ伝達する動力を出力する第2のモータ(92)をさらに備え、
前記制御装置(100)は、前記暖機制御中、前記第2のモータ(92)の出力により車両を走行させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項7】
前記制御装置(100)は、車両の使用開始を予測する検知手段(165)をさらに備え、
前記検知手段(165)により前記車両の使用開始が予測されたときに、前記暖機制御を開始する、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項8】
前記モータ(153)は、前記内燃機関(10)の吸気通路に設けられて前記内燃機関(10)へ圧縮空気を供給する電動式コンプレッサ(151)を駆動するモータ(153)であり、
前記車両システム(150)は、前記バーナ(5)へ前記燃料を供給するバーナ燃料供給装置(143)をさらに備え、
前記制御装置(100)は、前記内燃機関(10)の吸気弁(17)及び排気弁(19)を開弁するとともに前記モータ(153)を駆動して前記内燃機関(10)を経由して前記バーナ(5)へ空気を供給し、
前記バーナ燃料供給装置(143)から供給される前記燃料と、前記内燃機関(10)から供給される前記空気とを混合して混合気を形成するとともに、前記バーナ(5)で前記混合気を燃焼させる、請求項1に記載の車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及びモータを備えた車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路には、排気を浄化する後処理を行うための触媒装置が設けられている。具体的に、内燃機関がガソリンエンジンである場合、排気通路には三元触媒が設けられ、排気中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOX)が浄化される。また、内燃機関がディーゼルエンジンである場合、排気通路には窒素酸化物を浄化するための触媒が設けられる。これらの触媒装置は、低温の状態では浄化効率が低いという特性を持つ。このため、触媒装置が低温の状態で内燃機関を始動させる場合、触媒装置を加熱する制御が行われる。
【0003】
例えば特許文献1には、排気通路に排出される排気の温度を上昇させる暖機処理を実行し、排気熱を利用して触媒を暖機する内燃機関の制御装置が開示されている。また、特許文献2には、内燃機関の排気通路に高温の燃焼ガスを供給するためのバーナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-172874号公報
【特許文献2】特開2015-206562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された内燃機関の制御装置では、暖機運転中、触媒装置が十分に加熱されていない状態で内燃機関を運転すると、触媒装置による排気の浄化が十分でないために排気エミッションを抑制できないおそれがある。また、暖機運転中、内燃機関は燃焼効率が低い状態で運転されるため、燃費が低下することとなる。一方、特許文献2に記載されたバーナを用いることで、内燃機関の始動前から触媒を暖機することができる。しかしながら、特許文献2に記載されたバーナは、バーナに燃料を供給するための装置及びバーナに空気を供給するための装置がすべて必要とされ、部品点数が多くなるとともに重量やコストの増加の原因となる。また、特にバーナに空気を供給するためのエアポンプ等の装置を内燃機関の始動前に駆動した場合には、振騒音が問題となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明は、内燃機関の排気通路に高温の燃焼ガスを供給するためのバーナの構成を簡略化した車両システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内燃機関と、駆動時に内燃機関に空気が導入されるモータと、内燃機関の排気通路に設けられた触媒装置と、触媒装置の排気上流側に設けられ、燃料を含む混合気を燃焼させるバーナと、を含む車両システムであって、車両システムを制御する制御装置は、モータを駆動して内燃機関に空気を導入するとともに、内燃機関での燃焼を生じさせずに内燃機関からバーナへ混合気又は空気を供給し、バーナで混合気を燃焼させて触媒装置を加熱する暖機制御を実行する車両システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内燃機関の排気通路に高温の燃焼ガスを供給するためのバーナの構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】マイルドハイブリッドシステムとして構成された第1の実施の形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る車両システムの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る車両システムにおける触媒装置の暖機制御処理の動作を示すフローチャートである。
【
図4】シリーズハイブリッドシステムとして構成された同実施形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図5】1モータ式のパラレルハイブリッドシステムとして構成された第2の実施の形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図6】同実施形態に係る車両システムの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】同実施形態に係る車両システムにおける触媒装置の暖機制御処理の動作を示すフローチャートである。
【
図8】2モータ式のパラレルハイブリッドシステムとして構成された第2の実施の形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図9】シリーズパラレルハイブリッドシステムとして構成された第3の実施の形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図10】同実施形態に係る車両システムの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】第4の実施の形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図12】同実施形態に係る車両システムの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】第5の実施の形態に係る車両システムを適用したマイルドハイブリッドシステムの構成を示す模式図である。
【
図14】同実施形態に係る車両システムの制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図15】同実施形態に係る車両システムにおける触媒装置の暖機制御処理の動作を示すフローチャートである。
【
図16】第6の実施の形態に係る車両システムに適用される制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<<1.第1の実施の形態>>
<1-1.車両システムの基本構成>
まず、本発明の第1の実施の形態に係る車両システムの基本構成の一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る車両システム1の構成を示す模式図である。
図1に示した車両システム1は、内燃機関10の始動時に内燃機関10をクランキングさせるISG(Integrated Starter Generator)51を備えた、いわゆるマイルドハイブリッドシステムとして構成され、当該ISG51が、駆動時に内燃機関10に空気が導入されるモータとして機能する。
【0012】
車両システム1は、内燃機関10、ISG51、トルクコンバータ61及び自動変速機63を備えている。ISG51は、ギヤ機構又は駆動ベルト等を介して内燃機関10に接続されている。ISG51は、二次電池57に充電された電力により駆動される。自動変速機63は、トルクコンバータ61を介して内燃機関10に接続されている。
【0013】
本実施形態において、内燃機関10は、ガソリン燃料を用いて駆動されて車両の駆動トルクを生成するガソリンエンジンである。内燃機関10は、ピストン13、燃料噴射弁15、吸気弁17、排気弁19及び点火プラグ21を備えている。ピストン13は、コンロッド14を介して出力軸としてのクランクシャフト11に接続されている。ピストン13は、クランクシャフト11の回転に伴って気筒16内を往復移動する。また、内燃機関10は、クランクシャフト11の回転角度を検出するクランク角センサ27を備える。クランク角センサ27のセンサ信号は、制御装置100へ送信される。
【0014】
燃料噴射弁15は、制御装置100により駆動され、気筒16内へ燃料を直接噴射供給する。本実施形態において、内燃機関10は、気筒16内へ直接燃料を噴射する直噴式の内燃機関であるが、内燃機関10は、吸気通路23内に設けられた燃料噴射弁15を備え、吸気通路23内へ燃料を噴射供給する、いわゆるポート噴射式の内燃機関であってもよい。
【0015】
吸気弁17及び排気弁19は、図示しないタイミングベルト等を介してクランクシャフト11に接続されたカムシャフトの回転によって進退動し、それぞれ吸気通路又は排気通路を開閉する。吸気弁17の開放時にピストン13が下降することにより、吸気通路23から気筒16内に吸気が導入される。吸気通路23には吸気スロットル装置25が設けられている。吸気スロットル装置25は、制御装置100により駆動され、吸気の流量を調節する。点火プラグ21は、制御装置100により駆動され、気筒16内に導入された吸気と燃料噴射弁15から噴射された燃料とにより生成された混合気に点火する。排気弁19の開放時にピストン13が上昇することにより、気筒16内から排気通路31へ排気が排出される。
【0016】
排気通路31には、触媒装置として、第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35が設けられている。第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35は、それぞれ基材に触媒成分を担持させて構成され、排気中の一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を熱化学反応により浄化する。第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35は、例えば250℃程度で活性化状態となって一酸化炭素及び窒素酸化物の浄化率が50%を超え、350℃程度になると浄化率が100%近くになる。第2の三元触媒35は、例えばハニカム構造を有する基材に触媒を担持させたものであり、排気中の煤等を捕集するパティキュレートフィルタの機能を兼ねている。なお、以下、第1の三元触媒33と第2の三元触媒35を合わせて触媒装置と総称する場合がある。
【0017】
第1の三元触媒33の上流側には、バーナ装置5が設けられている。本実施形態においてバーナ装置5は、点火装置7を含んで構成され、混合気に点火する。点火装置7は、制御装置100により駆動され、内燃機関10から送られる混合気に点火する。点火装置7は、混合気に点火可能な装置であれば特に限定されないが、例えば内燃機関10に用いられる点火プラグを使用することができる。バーナ装置5は、排気を整流する整流器、あるいはスワール流又は乱流を生成するミキサを備えてもよい。
【0018】
また、排気通路31には、それぞれ排気温度を検出する第1の温度センサ37、第2の温度センサ39及び第3の温度センサ41が設けられている。第1の温度センサ37は、バーナ装置5の上流側に設けられている。第2の温度センサ39は、第1の三元触媒33と第2の三元触媒35との間に設けられている。第3の温度センサ41は、第2の三元触媒35の下流側に設けられている。これ以外の適宜の位置に温度センサが設けられていてもよい。第1の温度センサ37、第2の温度センサ39及び第3の温度センサ41のセンサ信号は制御装置100に送信される。
【0019】
トルクコンバータ61は、内燃機関10から駆動輪69への動力伝達経路に設けられ、クランクシャフト11の回転を、作動油を介して自動変速機63の入力軸に伝達する流体式のクラッチである。トルクコンバータ61は、クランクシャフト11の回転速度が所定の速度を超える場合に、クランクシャフト11の回転を、作動油を介して自動変速機63の入力軸に伝達する。
【0020】
自動変速機63は、例えば無段変速機構(CVT:Continuously Variable Transmission)又は有段式変速機構等の変速機構を備える。自動変速機63は、制御装置100により駆動され、内燃機関10のクランクシャフト11から入力された回転トルクを所定の変速比で変換して駆動軸65に伝達する。駆動軸65に伝達された回転トルクは、ディファレンシャル装置67等を介して駆動輪69に伝達される。
【0021】
ISG51は、内燃機関10のクランクシャフト11を回転可能に設けられたモータであり、内燃機関10の初始動時あるいはアイドルストップ制御による内燃機関10の始動時等に、内燃機関10をクランキングさせるために用いられる。ISG51の回転軸53は、ギヤあるいは駆動ベルト等を介して内燃機関10のクランクシャフト11に接続されている。ISG51は、例えばインバータ55によって駆動される三相交流式のモータであり、内燃機関10をクランキングする。また、ISG51は、クランクシャフト11の回転トルクを利用して発電を行う発電機としての機能を有する。
【0022】
インバータ55は、制御装置100により駆動され、二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換してISG51に供給し、ISG51を回転駆動する。また、インバータ55は、車両の減速時においてISG51を回生駆動し、発電電力を二次電池57に充電する。
【0023】
二次電池57は、例えば定格12V又は48Vのリチウムイオンバッテリであってよい。ただし、二次電池57の定格電圧は特に限定されるものではない。二次電池57は、電池管理ユニット59を備える。電池管理ユニット59は、二次電池57の開放電圧(以下、「バッテリ電圧」ともいう)を検出する電圧センサ、二次電池57から出力される電流値を検出する電流センサ及び二次電池57の温度(以下、「電池温度」ともいう)を検出する温度センサにより検出された情報を制御装置100へ送信する。なお、二次電池57は、電力を充放電可能な装置であれば二次電池に限られない。
【0024】
<1-2.制御装置>
以下、本実施形態に係る制御装置100を具体的に説明する。
制御装置100は、ISG51を駆動して内燃機関10に空気を導入するとともに、内燃機関10での燃焼を生じさせずに内燃機関10からバーナ装置5へ混合気又は空気を供給し、バーナ装置5で混合気を燃焼させて第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35を加熱する暖機制御を実行する。
【0025】
(1-2-1.構成例)
図2は、制御装置100の構成例を示すブロック図である。
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)等の少なくとも一つのプロセッサ110と、プロセッサ110と通信可能に接続された少なくとも一つのメモリ103とを含んで構成される。制御装置100は、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信バスを介して相互に通信可能に接続された複数の制御装置を含んでいてもよい。例えば制御装置100は、内燃機関10を制御するエンジン制御装置、インバータ55を制御するインバータ制御装置及び自動変速機63を制御するトランスミッション制御装置が互いに通信可能に接続されて構成されてもよい。また、制御装置100の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0026】
メモリ103は、それぞれプロセッサ110により実行されるコンピュータプログラムや種々の演算に用いるパラメータ、検出データ及び演算結果の情報等を記憶する。少なくとも一つのメモリ103は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を含んでもよく、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、CD-ROM、ストレージ装置等の記憶装置を含んでもよい。
【0027】
制御装置100は、クランク角センサ27、第1の温度センサ37、第2の温度センサ39、第3の温度センサ41及び電池管理ユニット59から送信される信号あるいはデータを取得可能に構成される。また、制御装置100は、点火装置7、燃料噴射弁15、点火プラグ21、吸気スロットル装置25、インバータ55及び自動変速機63へ駆動信号を出力可能に構成される。
【0028】
(1-2-2.機能構成)
図2は、制御装置100の構成のうち、主として第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35の暖機制御に関連する機能構成を示している。
制御装置100は、エンジン制御部111、インバータ制御部113及びトランスミッション制御部115を備えている。エンジン制御部111、インバータ制御部113及びトランスミッション制御部115は、プロセッサ110によるコンピュータプログラムの実行により実現される機能である。なお、エンジン制御部111、インバータ制御部113及びトランスミッション制御部115の一部又は全部が、ハードウェアにより構成されていてもよい。
【0029】
エンジン制御部111は、主として内燃機関10の駆動を制御する。具体的に、エンジン制御部111は、燃料噴射弁15の駆動を制御し、内燃機関10の気筒16への燃料噴射を制御する。また、エンジン制御部111は、点火プラグ21の駆動を制御し、気筒16内に形成される混合気への点火を制御する。また、エンジン制御部111は、吸気スロットル装置25の駆動を制御し、気筒16内へ導入する吸気量を制御する。また、エンジン制御部111は、バーナ装置5の駆動を制御し、第1の三元触媒33の上流側で混合気に点火する。
【0030】
インバータ制御部113は、インバータ55の駆動を制御する。具体的に、インバータ制御部113は、内燃機関10の始動時にインバータ55を駆動し、二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換してISG55を回転駆動する。これにより、内燃機関10のクランキングが行われる。また、インバータ制御部113は、車両の減速時にインバータ55を駆動してISG55を回生駆動し、ISG55により発電される交流電力を直流電力に変換して二次電池57を充電する。
【0031】
トランスミッション制御部115は、自動変速機63の駆動を制御する。なお、本実施形態では、内燃機関10の低速回転時に内燃機関10から駆動輪69への動力伝達を遮断する機能をトルクコンバータ61が有している。
【0032】
<1-2-3.触媒装置の暖機制御処理の動作>
続いて、制御装置100により実行される触媒装置の暖機制御処理の動作を詳しく説明する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る車両システム1における触媒装置の暖機制御処理の動作を示すフローチャートである。
まず、制御装置100は、車両システム1が起動されると(ステップS11)、触媒装置の暖機制御を実行するか否かを判定する(ステップS13)。例えば制御装置100は、第1の温度センサ37、第2の温度センサ39及び第3の温度センサ41のうちの少なくとも一つにより検出される温度の情報に基づいて第1の三元触媒33又は第2の三元触媒35あるいは両方の触媒装置の温度を推定する。また、制御装置100は、推定される触媒装置の温度があらかじめ設定された閾値を下回っている場合に触媒装置の暖機制御を実行すると判定する。
【0034】
なお、触媒装置の暖機制御を実行するか否かの判定方法は上記の例に限られない。例えば制御装置100は、前回内燃機関10が停止してからの経過時間及び外気温度に基づいて触媒装置の温度が所定温度を下回っていると推定される場合に触媒装置の暖機制御を実行すると判定してもよい。あるいは、車両システム1の起動時に常時触媒装置の暖機制御の実行を開始するように設定されていてもよい。
【0035】
触媒装置の暖機制御を実行すると判定しない場合(S13/No)、制御装置100は、暖機制御処理をそのまま終了する(ステップS25)。一方、触媒装置の暖機制御を実行すると判定した場合(S13/Yes)、制御装置100は、吸気通路23を開いた状態でインバータ55の駆動を制御し、二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換してISG51へ供給してISG51を回転駆動する(ステップS15)。内燃機関10の停止時に吸気スロットル装置25により吸気通路23が閉じられている場合、制御装置100は、吸気スロットル装置25を駆動し、吸気通路23を開く。
【0036】
これにより、ISG51の回転軸53に接続されたクランクシャフト11が回転し始める。このとき、ISG51による内燃機関10のクランキング動作の回転速度では、自動変速機63側の抵抗に打ち勝つことができず、トルクコンバータ61による動力伝達は行われない。このため、クランクシャフト11のみが回転する状態で、内燃機関10のクランキングが行われる。内燃機関10に設けられた吸気弁17及び排気弁19は、内燃機関10のクランキング動作に伴ってそれぞれ吸気行程及び排気行程において開弁される。したがって、ステップS15の処理により、内燃機関10による吸排気動作が開始される。
【0037】
なお、内燃機関10が可変バルブタイミング機構(VVT)を備えている場合、ISG51を回転駆動する際に可変バルブタイミング機構を動作させ、吸気弁17及び排気弁19の開閉時期を調節してもよい。これにより、内燃機関10による吸排気動作が行われる際のポンプ損失が少なくなるように内燃機関10のクランキング動作を最適化することができる。
【0038】
次いで、制御装置100は、内燃機関10の燃料噴射弁15を駆動し、燃料噴射を実行する(ステップS17)。これにより、気筒16内に空気と燃料が混合した混合気が形成される。触媒装置の暖機制御において、制御装置100は点火プラグ21を駆動せず、形成された混合気をそのまま排気通路31へ排出させる。したがって、排気通路31に設けられたバーナ装置5には、混合気が供給される。
【0039】
次いで、制御装置100は、バーナ装置5の点火装置7を駆動し、排気通路31を流れる混合気に点火する(ステップS19)。これにより、混合気が燃焼するとともに高温の排気が第1の三元触媒33に流れ込み、第1の三元触媒33が加熱される。また、高温の排気はさらに第2の三元触媒35に流れ込み、第2の三元触媒35が加熱される。
【0040】
ステップS15~ステップS19までの処理を実行する間、制御装置100は、ISG51の回転速度により調節されるクランクシャフト11の回転速度及び吸気スロットル装置25により調節される吸気通路23の開度の少なくとも一方を調節することにより内燃機関10に導入する吸気量を制御する。また、制御装置100は、形成される混合気の空燃比が、バーナ装置5による混合気の燃焼効率が高くなる空燃比となるように、燃料噴射量を制御する。
【0041】
また、制御装置100は、排気通路31に排出される混合気における燃料の混合状態が所望の状態となるように燃料噴射時期を制御してもよい。例えば制御装置100は、排気弁19が閉じる一方、吸気弁17が開いた状態でピストン13が下降する吸気行程で燃料を噴射することにより、燃料を均一に分散させた混合気を気筒16内に形成することができる。これにより、燃料を均一に分散させた混合気が排気通路31に排出され、バーナ装置5による均質燃焼状態を形成することができる。したがって、少なくとも第1の三元触媒33の上流側端面に対して高温の排気を均一に流入させることができ、第1の三元触媒33の温度分布のばらつきを抑制し、均等に加熱することができる。
【0042】
なお、触媒装置の暖機制御中の燃料噴射時期は適宜設定されればよい。ただし、燃料噴射量が多すぎると内燃機関10の気筒16内や排気通路31内に未燃状態の燃料が付着し、当該燃料が内燃機関10の始動後に一気に燃焼するおそれがあることから、あらかじめシミュレーション等により適切な燃料噴射量に設定することが好ましい。また、本実施形態に係る車両システム1の内燃機関10はいわゆる直噴式の内燃機関であることから、上記の噴射時期の例を説明した。内燃機関10が例えばポート噴射式の内燃機関の場合、従来の内燃機関の燃焼技術において、均一に混合分散された混合気が気筒16内に導入される噴射時期を適用してもよい。
【0043】
次いで、制御装置100は、触媒装置の暖機制御を終了させるか否かを判定する(ステップS21)。例えば制御装置100は、第1の温度センサ37、第2の温度センサ39及び第3の温度センサ41のうちの少なくとも一つにより検出される温度の情報に基づいて第1の三元触媒33又は第2の三元触媒35あるいは両方の触媒装置の温度を推定する。また、制御装置100は、推定される触媒装置の温度があらかじめ設定された閾値に到達した場合に触媒装置の暖機制御を終了させると判定する。
【0044】
なお、触媒装置の暖機制御を終了させるか否かの判定方法は上記の例に限定されない。例えば制御装置100は、暖機制御を開始してからあらかじめ設定した実行時間、あるいは、暖機制御開始時の外気温度あるいは触媒装置の温度に応じて設定される実行時間が経過したときに触媒装置の暖機制御を終了させると判定してもよい。
【0045】
触媒装置の暖機制御を終了させると判定した場合(S21/Yes)、制御装置100は、触媒装置の暖機制御を終了する(ステップS25)。その後、制御装置100は、内燃機関10の始動動作が行われるまで待機状態となる。一方、触媒装置の暖機制御を終了させると判定しない場合(S21/No)、制御装置100は、内燃機関10の始動動作が行われたか否かを判定する(ステップS23)。例えばドライバにより内燃機関10のイグニションスイッチや内燃機関10を始動させるスイッチが操作された場合、制御装置100は、内燃機関10の始動動作が行われたと判定する。
【0046】
内燃機関10の始動動作が行われたと判定されない場合(S23/No)、制御装置100は、ステップS15に戻り、内燃機関10で形成した混合気を排気通路31に排出させてバーナ装置5により燃焼させる暖機制御を継続する。一方、内燃機関10の始動動作が行われたと判定された場合(S23/Yes)、制御装置100は、強制的に暖機制御を終了させる(ステップS25)。この場合、制御装置100は、内燃機関10の点火プラグ21を動作して気筒16内で混合気を燃焼させて内燃機関10を駆動させ、ドライバ等の内燃機関10を始動させる意思を優先させる。
【0047】
このように、本実施形態に係る車両システム1では、内燃機関10において混合気を燃焼させる始動前に、駆動輪69に動力が伝達されない状態でISG51を駆動して内燃機関10をクランキングさせ、内燃機関10で形成した混合気を排気通路31に排出させる。また、排気通路31に設けられたバーナ装置5は、内燃機関10から排出されて流れてくる混合気に点火し、混合気を燃焼させる。したがって、内燃機関10とは別に、バーナ装置5に燃料及び空気を供給する装置を設けることなく、簡易な構成のバーナ装置5で効率的に混合気を燃焼することができる。これにより、燃費の低下を抑制することができるとともに、触媒装置の暖機制御による排気エミッションの排出を抑制することができる。また、車両システム1では、バーナ装置5に空気を供給するためのエアポンプ等が不要となるため、内燃機関の始動前に触媒装置の暖機制御を実行する場合であっても振騒音が発生することを防ぐことができる。
【0048】
また、混合気を燃焼させるバーナ装置5を用いて触媒装置を加熱することにより、電気ヒータ等の電力を利用した加熱手段と比較して、速やかに触媒装置を加熱することができる。
【0049】
なお、バーナ装置5は、第1の三元触媒33の下流側、かつ、第2の三元触媒35の上流側に設けられてもよい。例えば内燃機関10の始動後に内燃機関10で混合気が燃焼して排出された高温の排気により第1の三元触媒33が速やかに加熱されるようなレイアウト設計となっている場合、バーナ装置5は、第2の三元触媒35のみを加熱する装置として設けられていてもよい。この場合においても、内燃機関10から排出された混合気は第1の三元触媒33を通過してバーナ装置5に供給され、バーナ装置5により点火されて燃焼する。したがって、内燃機関10において混合気を燃焼させる始動前に、燃費の低下及び排気エミッションを抑制しつつ、触媒装置の暖機制御を実行することができる。
【0050】
<1-3.応用例>
上記の実施形態に係る車両システム1は、内燃機関10の始動時に内燃機関10をクランキングさせるISG51を備えたマイルドハイブリッドシステムであったが、いわゆるシリーズ式のハイブリッドシステムであっても上記実施形態を適用することができる。以下、主として上記実施形態に係る車両システム1と異なる点を説明する。
【0051】
図4は、シリーズ式のハイブリッドシステムとして構成された車両システム80の構成を示す模式図である。車両システム80は、内燃機関10、ジェネレータ81、モータジェネレータ83及び自動変速機63を備えている。ジェネレータ81は、インバータ85によって駆動される三相交流式の発電用モータであり、内燃機関10のクランクシャフト11に接続されてクランクシャフト11の回転トルクが入力される。ジェネレータ81は、内燃機関10の運転時にクランクシャフト11の回転トルクを利用して発電を行う発電機としての機能を有する。また、ジェネレータ81は、内燃機関10の始動時に内燃機関10をクランキングさせるスタータモータとしての機能を有する。なお、ジェネレータ81とは別に、内燃機関10をクランキングさせるためのスタータモータを備えていてもよい。
【0052】
モータジェネレータ83は、インバータ85によって駆動される三相交流式のモータであり、内燃機関10及びジェネレータ81の駆動力から切り離されて設けられている。つまり、内燃機関10から出力される駆動トルクは、ジェネレータ81の駆動にのみ用いられる。モータジェネレータ83の回転軸87は自動変速機63に接続されている。モータジェネレータ83は、駆動輪69に伝達する駆動トルクを生成して自動変速機63へ出力する。また、モータジェネレータ83は、車両の減速時に駆動輪69の回転力を利用して発電を行う発電機としての機能を有する。ただし、シリーズ式のハイブリッドシステムは、自動変速機63を備えていなくてもよい。
【0053】
インバータ85は、制御装置100により駆動され、ジェネレータ81により発電される電力を二次電池57に充電する。また、インバータ85は、二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ83に供給し、モータジェネレータ83を回転駆動する。また、インバータ85は、車両の減速時においてモータジェネレータ83を回生駆動し、発電電力を二次電池57に充電する。
【0054】
車両システム80において、ジェネレータ81は、駆動時に内燃機関10に空気が導入されるモータとして機能する。当該車両システム80における制御装置100による触媒装置の暖機制御処理の動作は、内燃機関10をクランキングさせる動作がISG51ではなくジェネレータ81を用いて行われる点を除き、上記の実施形態に係る車両システム1と同様に実行され得る。
【0055】
シリーズ式のハイブリッドシステムとして構成された車両システム80によっても、第1の実施の形態に係る車両システム1により得られる効果と同様の効果を得ることができる。また、シリーズ式のハイブリッドシステムとして構成された車両システム80では、モータジェネレータ83が、内燃機関10及びジェネレータ81の駆動力から切り離されて設けられている。したがって、触媒装置の暖機制御を実行している間にモータジェネレータ83から出力される駆動トルクにより、車両をモータ走行させることができる。したがって、車両を運転しながら触媒装置の暖機制御を実行することができ、速やかに車両の運転を開始することができる。
【0056】
<<2.第2の実施の形態>>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る車両システムを説明する。
第1の実施の形態では、回転速度が低い状態で駆動輪に動力が伝達されないマイルドハイブリッドシステム及びシリーズ式のハイブリッドシステムに本発明を適用した例を説明した。第2の実施の形態では、パラレル式のハイブリッドシステムに本発明を適用した例を説明する。以下、主として上記実施形態に係る車両システム1と異なる点を説明し、第1の実施の形態に係る車両システム1と同一の構成とされ得る点については適宜説明を省略する。
【0057】
<2-1.1モータシステムの構成例>
図5は、パラレル式のハイブリッドシステムとして構成された車両システム90の構成を示す模式図である。車両システム90は、内燃機関10、モータジェネレータ91、自動変速機63、第1のクラッチ98及び第2のクラッチ99を備えている。車両システム90は、1つのモータジェネレータ91を備えた1モータシステムとして構成されている。パラレル式のハイブリッドシステムでは、内燃機関10、モータジェネレータ91及び駆動輪69が直列に接続されている。
【0058】
第1のクラッチ98及び第2のクラッチ99は、例えば油圧式のクラッチ装置であり、それぞれ制御装置100により油圧が制御される。第1のクラッチ98は、内燃機関10とモータジェネレータ91との間に設けられて内燃機関10のクランクシャフト11とモータジェネレータ91の回転軸95との断接を切り替える。また、第2のクラッチ99は、モータジェネレータ91と自動変速機63との間に設けられてモータジェネレータ91の回転軸95と自動変速機63の入力軸97との断接を切り替える。つまり、第2のクラッチ99は、内燃機関10及びモータジェネレータ91から駆動輪69への動力伝達を遮断する機能を有する。
【0059】
モータジェネレータ91は、インバータ93によって駆動される三相交流式のモータである。モータジェネレータ91の回転軸95は、第1のクラッチ98を介して内燃機関10のクランクシャフト11に接続されている。また、モータジェネレータ91の回転軸95は、第2のクラッチ99を介して自動変速機63の入力軸97に接続されている。モータジェネレータ91は、第1のクラッチ98及び第2のクラッチ99が締結された状態で内燃機関10から出力される駆動トルクとともに駆動輪69に伝達する駆動トルクを生成して自動変速機63へ出力する。また、モータジェネレータ91は、第1のクラッチ98が開放され、第2のクラッチ99が締結された状態で駆動輪69に伝達する駆動トルクを生成して自動変速機63へ出力する。
【0060】
また、モータジェネレータ91は、車両の減速時に、少なくとも第2のクラッチ99が締結された状態で駆動輪69の回転力を利用して発電を行う発電機としての機能を有する。さらに、モータジェネレータ91は、内燃機関10の始動時に、第1のクラッチ98が締結され、第2のクラッチ99が開放された状態で内燃機関10をクランキングさせるスタータモータとしての機能を有する。なお、モータジェネレータ91とは別に、内燃機関10をクランキングさせるためのスタータモータを備えていてもよい。本実施形態に係る車両システム90において、モータジェネレータ91は、駆動時に内燃機関10に空気が導入されるモータとして機能する。
【0061】
インバータ93は、制御装置100により駆動され、二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ91に供給し、モータジェネレータ91を回転駆動する。また、インバータ93は、車両の減速時においてモータジェネレータ91を回生駆動し、発電電力を二次電池57に充電する。本実施形態の車両システム90では、例えば定格200Vの二次電池57が用いられてよいが、二次電池57の定格電圧は特に限定されるものではない。
【0062】
図6は、本実施形態に係る制御装置100の構成例を示すブロック図である。
本実施形態に係る制御装置100の基本的な構成は、
図2に示した制御装置100の構成と同一であってよい。エンジン制御部111は、主として内燃機関10の駆動を制御する。また、エンジン制御部111は、バーナ装置5の駆動を制御し、第1の三元触媒33の上流側で混合気に点火する。また、インバータ制御部113は、インバータ93の駆動を制御する。また、トランスミッション制御部115は、自動変速機63と併せて、第1のクラッチ98及び第2のクラッチ99の断接を制御する。
【0063】
図7は、本実施形態に係る車両システム90における触媒装置の暖機制御処理の動作を示すフローチャートである。本実施形態において、制御装置100により実行される触媒装置の暖機制御処理は、モータジェネレータ91を駆動して内燃機関10のクランキング動作を開始する前に第2のクラッチ99を開放させ、第1のクラッチ98を締結させるステップS14が設けられる以外、
図3に示すフローチャートと同様の処理が実行される。パラレル式のハイブリッドシステムとして構成された車両システム90によっても、第1の実施の形態に係る車両システム1により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、
図5に例示したパラレル式の車両システム90は、第1のクラッチ98又は第2のクラッチ99のいずれか一方のみを備えた構成であってもよい。その場合、第1のクラッチ98又は第2のクラッチ99を開放した状態で、触媒装置の暖機制御処理が実行される。第1のクラッチ98のみを備えて構成される場合には、触媒装置の暖機制御を実行している間にモータジェネレータ91から出力される駆動トルクにより、車両をモータ走行させることができる。
【0065】
<2-2.2モータシステムの構成例>
図8は、クラッチ94を挟んで配置された2つのモータジェネレータ91,92を備えたパラレル式のハイブリッドシステム(車両システム)90Aの構成を示す模式図である。
図8に示した車両システム90Aは、内燃機関10、第1のモータジェネレータ91、第2のモータジェネレータ92、自動変速機63及びクラッチ94を備えている。車両システム90Aは、2つのモータジェネレータ91,92を備えた2モータシステムとして構成されている。内燃機関10、第1のモータジェネレータ91、第2のモータジェネレータ92及び駆動輪69は直列に接続されている。
【0066】
第1のモータジェネレータ91は、クラッチ94よりも内燃機関10側に設けられている。第2のモータジェネレータ92は、クラッチ94よりも駆動輪69側に設けられている。第1のモータジェネレータ91及び第2のモータジェネレータ92は、それぞれインバータ93によって駆動される三相交流式のモータである。クラッチ94は、第1のモータジェネレータ91の回転軸95と、第2のモータジェネレータ92の入力軸97との断接を切り替える。当該クラッチ94は、内燃機関10及び第1のモータジェネレータ91から駆動輪69への動力伝達を遮断する機能を有する。
【0067】
第1のモータジェネレータ91は、クラッチ94が締結された状態で内燃機関10から出力される駆動トルクとともに駆動輪69に伝達する駆動トルクを生成して自動変速機63へ出力する。また、第1のモータジェネレータ91は、クラッチ94が開放された状態で内燃機関10から出力される駆動トルクを利用して発電を行う発電機としての機能を有する。また、第1のモータジェネレータ91は、内燃機関10の始動時に内燃機関10をクランキングさせるスタータモータとしての機能を有する。なお、第1のモータジェネレータ91とは別に、内燃機関10をクランキングさせるためのスタータモータを備えていてもよい。車両システム90Aにおいて、第1のモータジェネレータ91は、駆動時に内燃機関10に空気が導入されるモータとして機能する。
【0068】
第2のモータジェネレータ92は、駆動輪69に伝達する駆動トルクを生成して自動変速機63へ出力する。クラッチ94が締結された状態で生成される駆動トルクは、例えばアシストトルクとして内燃機関10又は第1のモータジェネレータ91から出力される駆動トルクに付加され、クラッチ94が開放された状態で生成される駆動トルクは、車両をモータ走行させる駆動トルクとなる。また、第2のモータジェネレータ92は、車両の減速時に、クラッチ94が開放された状態で駆動輪69の回転力を利用して発電を行う発電機としての機能を有する。
【0069】
インバータ93は、制御装置100により駆動され、二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換して第1のモータジェネレータ91又は第2のモータジェネレータ92にそれぞれ供給し、第1のモータジェネレータ91又は第2のモータジェネレータ92をそれぞれ回転駆動する。また、インバータ93は、内燃機関10の運転時に第1のモータジェネレータ91に発電させる制御を行い、発電電力を二次電池57に充電する。さらに、インバータ93は、車両の減速時において第2のモータジェネレータ92を回生駆動し、発電電力を二次電池57に充電する。
【0070】
上記の1つのモータジェネレータ91を備えた車両システム90の構成では、第2のクラッチ99を開放し、内燃機関10及びモータジェネレータ91を駆動輪69から切り離した状態で内燃機関10のクランキング動作を行い、触媒装置の暖機制御を実行している。このため、ドライバが強制的に内燃機関10を始動させない限り触媒装置の暖機制御が終了するまで内燃機関10の始動が許可されず、車両を走行させることができない。
【0071】
これに対して、車両システム90Aは、第1のモータジェネレータ91とは別に、クラッチ94よりも駆動輪69側に接続された第2のモータジェネレータ92を備えている。このため、制御装置100は、クラッチ94を開放して触媒装置の暖機制御を実行している間に第2のモータジェネレータ92から出力される駆動トルクにより、車両をモータ走行させることができる。したがって、車両を運転しながら触媒装置の暖機制御を実行することができ、速やかに車両の運転を開始することができる。
【0072】
なお、第1のモータジェネレータ91と第2のモータジェネレータ92との間にクラッチ94を設ける代わりに、第1のモータジェネレータ91と第2のモータジェネレータ92との間にトルクコンバータ61を含む自動変速機63が設けられていてもよい。
【0073】
<<3.第3の実施の形態>>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る車両システムを説明する。
第3の実施の形態では、シリーズパラレル式のハイブリッドシステムに本発明を適用した例を説明する。以下、主として第1の実施の形態に係る車両システム1と異なる点を説明し、第1の実施の形態に係る車両システム1と同一の構成とされ得る点については適宜説明を省略する。
【0074】
図9は、シリーズパラレル式のハイブリッドシステムとして構成された車両システム130の構成を示す模式図である。車両システム130は、内燃機関10、動力分割機構131、ジェネレータ133、モータジェネレータ135及び減速機構139を備えている。動力分割機構131は、例えばプラネタリギヤを含んで構成され、内燃機関10から出力される駆動トルクをジェネレータ133の駆動トルク及び減速機構139を介して駆動輪69へ伝達する駆動トルクに分割する。減速機構139は、内燃機関10から出力される駆動トルク及びモータジェネレータ135から出力される駆動トルクによる回転を減速して駆動軸65に伝達する。
【0075】
ジェネレータ133は、インバータ137によって駆動される三相交流式の発電用モータであり、内燃機関10から出力されて動力分割機構131により分割された駆動トルクが入力される。ジェネレータ133は、内燃機関10の運転時に動力分割機構131を介して入力される駆動トルクを利用して発電を行う発電機としての機能を有する。本実施形態において、ジェネレータ133は、駆動時に内燃機関10に空気が導入されるモータとして機能する。なお、本実施形態では、内燃機関10の始動時に内燃機関10をクランキングさせるためのスタータモータ71を備えている。ジェネレータ133に、スタータモータとしての機能を持たせてもよい。
【0076】
モータジェネレータ135は、インバータ137によって駆動される三相交流式のモータである。モータジェネレータ135により生成され出力される駆動トルクは、減速機構139を介して駆動輪69に伝達される。また、モータジェネレータ135は、車両の減速時に駆動輪69の回転力を利用して発電を行う発電機としての機能を有する。
【0077】
インバータ137は、制御装置100により駆動され、ジェネレータ133により発電される電力を二次電池57に充電し、あるいは、モータジェネレータ135の供給電力として使用する。また、インバータ137は、二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ135に供給し、モータジェネレータ135を回転駆動する。また、インバータ137は、車両の減速時においてモータジェネレータ135を回生駆動し、発電電力を二次電池57に充電する。
【0078】
図10は、本実施形態に係る制御装置100の構成例を示すブロック図である。
本実施形態に係る制御装置100の基本的な構成は、自動変速機を制御するトランスミッション制御部が設けられないことを除き、
図2に示した制御装置100の構成と同一であってよい。エンジン制御部111は、主として内燃機関10の駆動を制御する。また、エンジン制御部111は、バーナ装置5の駆動を制御し、第1の三元触媒33の上流側で混合気に点火する。また、インバータ制御部113は、インバータ137の駆動を制御する。
【0079】
本実施形態に係る車両システム130において、制御装置100により実行される触媒装置の暖機制御処理は、ジェネレータ133を回転駆動することにより内燃機関10のクランキング動作を行う以外、
図3に示すフローチャートと同様の処理が実行される。具体的に、制御装置100は、インバータ137を駆動して二次電池57から出力される直流電力を交流電力に変換してジェネレータ133に供給する。このとき、動力分割機構131を介して接続される減速機構139は駆動輪69に接続され、回転抵抗が大きいことから、ジェネレータ133から出力される回転トルクにより内燃機関10のクランクシャフト11が回転する。制御装置100は、ジェネレータ133から出力される回転トルクにより減速機構139が回転しないように、つまり、駆動輪69が回転しないようにジェネレータ133から出力する回転トルクを制御する。
【0080】
これにより、シリーズパラレル式のハイブリッドシステムとして構成された車両システム130によっても、第1の実施の形態に係る車両システム1により得られる効果と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の車両システム130では、触媒装置の暖機制御中にモータジェネレータ135から出力される駆動トルクにより、車両をモータ走行させることもできる。したがって、車両を運転しながら触媒装置の暖機制御を実行することができ、速やかに車両の運転を開始することができる。
【0081】
<<4.第4の実施の形態>>
次に、本発明の第4の実施の形態に係る車両システムを説明する。
ここまでに説明した各実施形態に係る車両システムは、内燃機関10において混合気を形成し、排気通路31に混合気を排出してバーナ装置5により混合気を燃焼させていた。これに対して、第4の実施の形態に係る車両システムは、内燃機関10から排気通路31へ空気を排出し、バーナ装置5において当該空気に燃料を混合して混合気を形成し、当該混合気を燃焼させるように構成されている。
【0082】
図11は、本実施形態に係る車両システム140の構成を示す模式図である。
図11に示した車両システム140は、基本的に第1の実施の形態に係る車両システム1と同様にマイルドハイブリッドシステムとして構成されているが、バーナ装置5が燃料添加弁141を備えるとともに、当該燃料添加弁141に燃料を供給するバーナ燃料供給装置143を備える点で、第1の実施の形態に係る車両システム1と異なっている。
【0083】
燃料添加弁141は、バーナ燃料供給装置143から供給される燃料圧力と、燃料供給通路を閉じる方向に弁体を付勢する付勢力とのバランスにより開弁する機械式の燃料添加弁であってよい。この場合、バーナ燃料供給装置143は、制御装置100により駆動制御され、燃料添加弁141に供給される燃料の流量を調節し、燃料添加弁141から排気通路31に噴射される燃料添加量を制御する。バーナ燃料供給装置143は、例えば制御装置100により回転駆動されるモータを備え、燃料タンク内の燃料を吸入及び吐出する調量ポンプを含んで構成されてもよい。調量ポンプは、モータの回転速度を調節することにより燃料添加弁141に供給される燃料の流量を調節する。
【0084】
あるいは、バーナ燃料供給装置143は、内燃機関10のクランクシャフト11に接続されて回転駆動するギヤポンプと、制御装置100により駆動される流量制御弁を含んで構成されてもよい。ギヤポンプは、内燃機関10のクランクシャフト11の回転に伴い回転駆動されて、燃料タンク内の燃料を吸入及び吐出する。ギヤポンプの吐出量は、回転数に応じて変化する。流量制御弁は、ギヤポンプから吐出された燃料が通過する流路の面積を調節することにより燃料添加弁141に供給される燃料の流量を調節する。ギヤポンプの代わりに、一定圧力あるいは適宜の圧力で燃料を吐出する電動ポンプが用いられてもよい。
【0085】
さらに、燃料添加弁141は、内燃機関10の燃料噴射弁15と同様に制御装置100により駆動される電磁制御弁であってもよい。この場合、バーナ燃料供給装置143は、燃料添加弁141に対して一定圧力の燃料を供給するように駆動される。
【0086】
バーナ装置5は、燃料添加弁141から噴射される燃料を内燃機関10から排出される空気と混合して混合気を形成し、点火装置7により混合気に点火する。これにより、混合気が燃焼するとともに高温の排気が第1の三元触媒33に流れ込み、第1の三元触媒33が加熱される。また、高温の排気はさらに第2の三元触媒35に流れ込み、第2の三元触媒35が加熱される。
【0087】
図12は、本実施形態に係る制御装置100の構成例を示すブロック図である。
本実施形態に係る制御装置100の基本的な構成は、
図2に示した制御装置100の構成と同一であってよい。エンジン制御部111は、主として内燃機関10の駆動を制御する。また、エンジン制御部111は、バーナ装置5及びバーナ燃料供給装置143の駆動を制御し、第1の三元触媒33の上流側で混合気に点火する。また、インバータ制御部113は、インバータ93の駆動を制御する。また、トランスミッション制御部115は、自動変速機63と併せて、第1のクラッチ98及び第2のクラッチ99の断接を制御する。
【0088】
第4の実施の形態に係る車両システム140における制御装置100による触媒装置の暖機制御処理の動作は、燃料噴射処理(
図3のステップS17)を内燃機関10の燃料噴射弁15ではなくバーナ装置5に設けられた燃料添加弁141により行う点を除き、第1の実施の形態に係る車両システム1と同様に実行され得る。
【0089】
本実施形態に係る車両システム140によっても、第1の実施の形態に係る車両システム1により得られる効果と同様の効果を得ることができる。また、第4の実施の形態に係る車両システム140では、バーナ装置5において燃料を供給する燃料添加弁141及びバーナ燃料供給装置143を備えているため、所望のタイミングで燃料を噴射して混合気を形成することができる。また、触媒装置の暖機制御時に、内燃機関10の気筒16や、内燃機関10からバーナ装置5までの排気通路31に燃料が付着して残留することを防ぐことができる。
【0090】
なお、内燃機関10から排気通路31へ空気を排出し、バーナ装置5において当該空気に燃料を混合して混合気を形成し、当該混合気を燃焼させるように構成される車両システムは、マイルドハイブリッドシステムに限定されない。シリーズ式のハイブリッドシステムやパラレル式のハイブリッドシステム、シリーズパラレル式のハイブリッドシステム等、いずれのハイブリッドシステムであっても本実施形態の構成を適用することができる。
【0091】
<<第5の実施の形態>>
次に、本発明の第5の実施の形態に係る車両システムを説明する。
ここまでに説明した各実施形態の車両システムは、内燃機関10のクランクシャフト11に接続されたISG、ジェネレータ及びモータジェネレータを駆動して内燃機関10のクランキング動作を行い、内燃機関10から排気通路へ混合気を排出していた。本実施形態に係る車両システムは、内燃機関10の吸気通路に設けられて内燃機関10へ圧縮空気を供給する電動式コンプレッサを駆動するモータを駆動して内燃機関10から排気通路31へ空気を排出するように構成されている。
【0092】
図13は、本実施形態に係る車両システムを適用したマイルドハイブリッドシステムの構成を示す模式図である。
図13に示した車両システム150は、第4の実施の形態で説明した車両システム140に、電動式コンプレッサの一態様として電動ターボチャージャ151を設けた構成例を示している。電動ターボチャージャ151は、回転軸154の両端に設けられたタービンホイール155及びコンプレッサホイール157を備える。タービンホイール155は、排気通路31に設けられて排気の流れを受けて回転する。コンプレッサホイール157は、吸気通路23に設けられ、タービンホイール155の回転に伴って回転軸154が回転することによって回転し、内燃機関10の気筒16に向けて空気を供給する。
【0093】
回転軸154は、モータ153の回転軸として構成されている。モータ153は、例えばインバータ159によって駆動される三相交流式のモータである。モータ153は、電流を供給することにより駆動される単相のモータであってもよい。インバータ159は、制御装置100により駆動され、補機用バッテリ158から出力される直流電力を交流電力に変換してモータ153に供給し、モータ153を回転駆動する。電動ターボチャージャは、例えば内燃機関10の低回転時等、タービンホイール155が排気の流れを受け入れる前であってもコンプレッサホイール157を回転駆動し、速やかに空気の流れを形成することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る車両システム150は、吸気弁17及び排気弁19をそれぞれ開弁状態で保持させる吸気弁保持機構161及び排気弁保持機構163を備えている。吸気弁保持機構161及び排気弁保持機構163は、それぞれ吸気弁17及び排気弁19の後端部に設けられてカムの力を受けるロッカーアームを、吸気弁17及び排気弁19を押し下げた状態で保持可能な機構として構成される。例えば吸気弁保持機構161及び排気弁保持機構163は、油圧を供給することにより移動するピストンによってロッカーアームを所定状態で保持する機構とすることができるが、具体的な構成は特に限定されない。
【0095】
図14は、本実施形態に係る制御装置100の構成例を示すブロック図である。
本実施形態に係る制御装置100の基本的な構成は、
図2に示した制御装置100の構成と同一であってよい。エンジン制御部111は、主として内燃機関10の駆動を制御する。また、エンジン制御部111は、吸気弁保持機構161、排気弁保持機構163及び電動ターボチャージャ151の駆動を制御する。また、エンジン制御部111は、バーナ装置5及びバーナ燃料供給装置143の駆動を制御し、第1の三元触媒33の上流側で混合気に点火する。また、インバータ制御部113は、インバータ93の駆動を制御する。また、トランスミッション制御部115は、自動変速機63と併せて、第1のクラッチ98及び第2のクラッチ99の断接を制御する。
【0096】
図15は、本実施形態に係る車両システム150における触媒装置の暖機制御処理の動作を示すフローチャートである。本実施形態において、制御装置100により実行される触媒装置の暖機制御処理は、内燃機関10のクランキング動作を行うステップS15の代わりに、吸気弁17及び排気弁19を開弁状態で保持し(ステップS31)、電動ターボチャージャ151のモータ153を駆動し(ステップS33)、内燃機関10を経由して排気通路31に設けられたバーナ装置5へ空気を供給する点、及び、燃料噴射処理(
図3のステップS17)を内燃機関10の燃料噴射弁15ではなくバーナ装置5に設けられた燃料添加弁141により行う点を除き、第1の実施の形態に係る車両システムと同様の処理が実行される。
【0097】
本実施形態に係る車両システム150によっても、第1の実施の形態に係る車両システム1及び第4の実施の形態に係る車両システム140により得られる効果と同様の効果を得ることができる。また、第5の実施の形態に係る車両システム150では、吸気弁17及び排気弁19を開弁状態に保持して電動ターボチャージャ151のモータ153を駆動することによって内燃機関10から排気通路31へ空気が排出される。したがって、排気通路31へ排出される空気の脈動が生じないため、バーナ装置5の燃料添加弁141からの燃料噴射タイミングが制限されず、燃料添加制御を容易にすることができる。
【0098】
なお、電動式コンプレッサは、電動ターボチャージャ151に限られるものではなく、排気タービンを利用せずにモータを駆動することにより内燃機関10へ吸気を供給する電動スーパーチャージャであってもよい。電動スーパーチャージャを備えた車両システムであっても本実施形態の車両システム150により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、内燃機関10から排気通路31へ空気を排出し、バーナ装置5において当該空気に燃料を混合して混合気を形成し、当該混合気を燃焼させるように構成される車両システムは、マイルドハイブリッドシステムに限定されない。シリーズ式のハイブリッドシステムやパラレル式のハイブリッドシステム、シリーズパラレル式のハイブリッドシステム等、いずれのハイブリッドシステムであっても本実施形態の構成を適用することができる。
<<6.第6の実施の形態>>
次に、本発明の第6の実施の形態に係る車両システムを説明する。
ここまでに説明した各実施形態に係る車両システムは、ドライバにより内燃機関10のイグニションスイッチや内燃機関10を始動させるスイッチが操作された場合に触媒装置の暖機制御を開始するように構成されていた。本実施形態に係る車両システムは、ドライバによる内燃機関10の始動操作が行われる前に制御装置100が車両の使用開始を予測し、触媒装置の暖機制御を開始するように構成される。
【0100】
本実施形態に係る車両システムは、マイルドハイブリッドシステム、シリーズ式のハイブリッドシステム、パラレル式のハイブリッドシステム又はシリーズパラレル式のハイブリッドシステム等、いずれのハイブリッドシステムであってもよい。以下、第1の実施の形態で説明したマイルドハイブリッドシステムを例に採って、第1の実施の形態に係る車両システム1と異なる点を説明する。
【0101】
図16は、本実施形態に係る車両システムに適用される制御装置100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る制御装置100の基本的な構成は、
図2に示した制御装置100の構成と同一であってよい。本実施形態において、車両システムは、車両の使用開始を予測する検知手段165を備えており、制御装置100は、検知手段165から送信される信号を取得可能に構成される。
【0102】
例えば検知手段165は、車両のドアロックの解除を検知するセンサ又はスイッチであってよい。また、検知手段165は、運転席にドライバが着座したことを検知する荷重センサ又は車内撮影カメラであってもよい。さらに、検知手段165は、内燃機関10あるいは車両システムを起動させるタイマであってもよい。検知手段165は、これらの例に限られるものではなく、内燃機関10の始動あるいは車両の使用につながる動作を検知する手段であればよい。
【0103】
本実施形態に係る車両システムにおいて制御装置100により実行される触媒装置の暖機制御処理では、
図3に示したフローチャートにおけるステップS11は省略される。制御装置100は、車両システムが待機状態となるスリープ状態において、検知手段165から送信される信号に基づいて触媒装置の暖機制御を実行するか否かを判定する(
図3のステップS13)。具体的に、制御装置100は、内燃機関10の始動あるいは車両の使用につながる動作を検知したことを示す信号が検知手段165から送信されたときに触媒装置の暖機制御を実行すると判定し(S13/Yes)、以降の暖機制御処理を実行する。
【0104】
上述した第2の実施の形態~第5の実施の形態に係る車両システムにおいても同様に、本実施形態に係る制御装置100による触媒装置の暖機制御を実行するか否かの判定処理を適用することができる。
【0105】
本実施形態に係る車両システムは、第1の実施の形態~第5の実施の形態に係る車両システムにより得られる効果と同様の効果を得ることができる。また、第6の実施の形態に係る車両システム150では、ドライバにより内燃機関10を始動させるための操作が行われる前に、制御装置100が内燃機関10の始動を予測して触媒装置の暖機制御を開始させる。したがって、ドライバが車両に乗車した後すぐに内燃機関10を始動させる場合であっても、速やかに第1の三元触媒33及び第2の三元触媒35が活性化状態となって、排気エミッション及び燃料消費量を低減することができる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、各実施形態で説明した車両システムを適宜組み合わせた構成例も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0107】
また、上記各実施形態ではガソリンエンジンを例に採って説明したが、内燃機関がディーゼルエンジンであっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1…車両システム、5…バーナ装置、7…点火装置、10…内燃機関、11…クランクシャフト、31…排気通路、33…第1の三元触媒、35…第2の三元触媒、51…ISG(モータ)、55…インバータ、57…二次電池、61…トルクコンバータ、63…自動変速機、69…駆動輪、81…ジェネレータ(モータ)、91…モータジェネレータ(モータ)、133…ジェネレータ(モータ)、141…燃料添加弁、143…バーナ燃料供給装置、151…電動ターボチャージャ(電動式コンプレッサ)、153…モータ、100…制御装置、110…プロセッサ、111…エンジン制御部、113…インバータ制御部、115…トランスミッション制御部、80・90・90A・130・140・150…車両システム