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  • 特開-熱膨張性微小球、及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035309
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】熱膨張性微小球、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230306BHJP
   C08J 9/33 20060101ALI20230306BHJP
   B01J 13/02 20060101ALI20230306BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
C08J9/33 CER
C08J9/33 CEZ
B01J13/02
C08F220/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142068
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古田 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】喜夛 裕
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【テーマコード(参考)】
4F074
4G005
4J100
【Fターム(参考)】
4F074AA97
4F074BA38
4F074BA40
4F074BA91
4G005AA04
4G005AB13
4G005AB14
4G005BA03
4G005BB08
4G005BB09
4G005DA05Z
4G005DC34Y
4G005DD04Z
4G005DD12Z
4G005DD65Z
4G005DD66Z
4G005EA06
4J100AB02T
4J100AL02R
4J100AL08P
4J100AM02Q
4J100AM15S
4J100BA02P
4J100BA05P
4J100CA03
4J100CA06
4J100EA05
4J100EA09
4J100JA01
4J100JA07
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、有極性液体に対して優れた分散性を有する熱膨張性微小球、及びその用途を提供することである。
【解決方法】 熱可塑性樹脂を含む外殻と、前記外殻に内包されかつ加熱することによって気化する発泡剤とを含む熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂が単量体(A)を含む重合性成分の重合体であり、前記単量体(A)が、重合性炭素-炭素二重結合を1個有し、分子中に酸素原子を5個以上有する化合物である、熱膨張性微小球。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む外殻と、前記外殻に内包されかつ加熱することによって気化する発泡剤とを含む熱膨張性微小球であって、
前記熱可塑性樹脂が単量体(A)を含む重合性成分の重合体であり、
前記単量体(A)が、重合性炭素-炭素二重結合を1個有し、分子中に酸素原子を5個以上有する化合物である、
熱膨張性微小球。
【請求項2】
前記重合性成分に占める前記単量体(A)が5重量%以上である、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
【請求項3】
前記単量体(A)が分子中にエステル結合を有し、前記エステル結合のカルボニル部分以外の酸素原子が下記基(a1)と結合している、請求項1又は2に記載の熱膨張性微小球。
基(a1):直鎖構造部分及び/または分枝構造部分を有し、かつ炭素原子を2個以上有する基
【請求項4】
前記重合性成分が、ニトリル系単量体をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項5】
前記重合性成分が、前記単量体(A)以外のカルボキシル基含有単量体をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項6】
前記重合性成分が、前記単量体(A)以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか記載の熱膨張性微小球の膨張体である、中空粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の中空粒子と、前記中空粒子の外殻部の外表面に付着した微粒子とを含む、微粒子付着中空粒子。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の熱膨張性微小球、請求項7に記載の中空粒子、及び請求項8に記載の微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分を含む、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性微小球、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性微小球は、一般に熱膨張性微小球(熱膨張性マイクロカプセル)と呼ばれている。熱膨張性微小球は、熱処理を加えることで膨張する特長を有する微小球体である。
この熱膨張性微小球は幅広い用途に利用されており、例えば、熱膨張性微小球は基材に配合される。成形時に与えられる熱処理により、成形と同時に熱膨張性微小球は膨張し、成形物の軽量化だけではなく、成形物に意匠性やクッション性等を付与することができる。
熱膨張性微小球は膨張機能を確保するため、その外殻に使用される熱可塑性樹脂は通常、ガスバリア性を有していることが必要となる。このような熱膨張性微小球としては、例えば、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体等で構成された外殻を用い、発泡剤としてはイソブタンやイソペンタン等の炭化水素を主に使用したものが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3615972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示された熱膨張性微小球では、十分な膨張挙動が得られるものの、水等の有極性液体に対して分散性が低く、液体中にて熱膨張性微小球の凝集が顕著になることが確認された。
本発明の目的は、有極性液体に対して優れた分散性を有する熱膨張性微小球、及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂を含む外殻と、その外殻に内包されかつ加熱することによって気化する発泡剤とを含む熱膨張性微小球であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂を含む外殻と、前記外殻に内包されかつ加熱することによって気化する発泡剤とを含む熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂が単量体(A)を含む重合性成分の重合体であり、前記単量体(A)が、重合性炭素-炭素二重結合を1個有し、分子中に酸素原子を5個以上有する化合物である、熱膨張性微小球である。
【0007】
本発明の熱膨張性微小球は、以下に示す1)~5)のうちの少なくとも1つを満足すると、好ましい。
1)前記重合性成分に占める前記単量体(A)が5重量%以上である。
2)前記単量体(A)が分子中にエステル結合を有し、前記エステル結合のカルボニル部分以外の酸素原子が下記基(a1)と結合している。
基(a1):直鎖構造部分及び/または分枝構造部分を有し、かつ炭素原子を2個以上有する基
3)前記重合性成分が、ニトリル系単量体をさらに含む。
4)前記重合性成分が、前記単量体(A)以外のカルボキシル基含有単量体をさらに含む。
5)前記重合性成分が、前記単量体(A)以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含む。
【0008】
本発明の中空粒子は、上記熱膨張性微小球の膨張体である。
本発明の微粒子付着中空粒子は、上記中空粒子と、前記中空粒子の外殻部の外表面に付着した微粒子とを含む。
【0009】
本発明の組成物は、上記の熱膨張性微小球、上記の中空粒子、及び上記の微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分を含む。
本発明の組成物は、上記組成物を成形してなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱膨張性微小球は、有極性液体に対して優れた分散性を有する。
本発明の中空粒子は、上記熱膨張性微小球を原料として得られるので、有極性液体に対して優れた分散性を有する。
本発明の微粒子付着中空粒子は、上記熱膨張性微小球を原料として得られるので、有極性液体に対して優れた分散性を有する。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記中空粒子及び上記微粒子付着樹中空粒子から選ばれる少なくとも1種を含んでいるため、軽量な成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】熱膨張性微小球の一例を示す概略図である。
図2】微粒子付着中空粒子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔熱膨張性微小球〕
本発明の熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂を含む外殻と、その外殻に内包されかつ加熱することによって気化する発泡剤とを含むものである。熱膨張性微小球は、微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。
本発明の熱膨張性微小球は図1に示すように、外殻(シェル)6と、発泡剤(コア)7とから構成されるコア-シェル構造を有している。
【0013】
本発明の熱膨張性微小球を構成する外殻において、それを形成する熱可塑性樹脂は、重合性成分を重合して得られる重合体である。
重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。単量体成分は、重合性炭素-炭素二重結合を1個有する単量体を意味し、付加重合可能な成分である。また、架橋剤は重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する単量体を意味し、橋架け構造を熱可塑性樹脂に導入する成分である。
【0014】
重合性成分は、単量体(A)を含む。単量体(A)は、重合性炭素-炭素二重結合を1個有し、分子中に酸素原子を5個以上有する化合物であり、単量体成分に属する。分子中に酸素原子を5個以上有する化合物である単量体(A)は、十分な極性を有しており、得られる熱可塑性樹脂の極性をコントロールすることができると考えらえる。これにより、熱膨張性微小球は、有極性液体に対して優れた分散性を有することができると考えられる。
【0015】
単量体(A)の分子中における酸素原子の数は5個以上であり、好ましくは5~40個である。該酸素原子数が40個以下であると、単量体(A)の極性が過度にはならず、適正な極性を有する外殻で構成される熱膨張性微小球を効率的に得ることができる傾向がある。該酸素原子の数の上限は、より好ましくは35個、さらに好ましくは30個、特に好ましくは25個、最も好ましくは20個である。一方、該酸素原子の数の下限は、好ましくは6個、より好ましくは7個、特に好ましくは8個である。
【0016】
単量体(A)は、特に限定はないが、分子中にエステル結合を有し、そのエステル結合中のカルボニル部分以外の酸素原子が、下記基(a1)と結合している化合物であると、得られる熱可塑性樹脂の極性を効率的にコントロールできる点で好ましい。
基(a1):直鎖構造部分及び/または分枝構造部分を有し、かつ炭素原子を2個以上有する基
【0017】
単量体(A)がエステル結合を有する場合、エステル結合の数は特に限定はないが、好ましくは1~15個である。該エステル結合数の上限は、より好ましくは10個、さらに好ましくは8個、特に好ましくは6個、最も好ましくは4個である。一方、該エステル結合数の下限は、より好ましくは2個である。
また、単量体(A)がエステル結合を有する場合、単量体(A)は(メタ)アクリル酸エステルの誘導体であってもよい。
単量体(A)は硫黄原子及び/またはリン原子を有していてもよく、硫黄原子及び/またはリン原子を有していなくてもよい。
【0018】
単量体(A)が基(a1)を有する場合、基(a1)における炭素原子の数は、特に限定はないが、本発明の効果を奏する点で2~150個である。該炭素原子数の上限は、より好ましくは125個、さらに好ましくは85個、特に好ましくは65個、最も好ましくは45個である。一方、該炭素原子数の下限は、より好ましくは3個、さらに好ましくは4個、特に好ましくは5個である。
また、単量体(A)が基(a1)を有する場合、基(a1)は重合性炭素-炭素二重結合を有していなくてもよく、重合性炭素-炭素二重結合を有していてもよい。本発明の効果を奏する点で、好ましくは、基(a1)は重合性炭素-炭素二重結合を有していない。
【0019】
基(a1)が有する直鎖構造部分及び/または分枝構造部分は、炭素原子を有する。直鎖構造部分及び/または分枝構造部分の炭素原子の数としては、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、好ましくは2~150個である。該炭素原子数の上限は、より好ましくは120個、さらに好ましくは80個、特に好ましくは60個、最も好ましくは40個である。一方、該炭素原子数の下限は、より好ましくは3個、さらに好ましくは4個、特に好ましくは5個である。
基(a1)が有する直鎖構造部分及び/または分枝構造部分は、炭素原子と、さらに酸素原子を有していてもよい。
【0020】
基(a1)は、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、及び水酸基から選ばれる少なくとも1種を有していてもよい。基(a1)がアルコシキ基、フェノキシ基、カルボキシル基、及び水酸基から選ばれる少なくとも1種を有することにより、熱可塑性樹脂の極性をより効率的にコントロールすることができ、好ましい。また、アルコキシ基の炭素原子の数は1~20個であると、好ましい。
【0021】
単量体(A)は、特に限定はないが、その分子中にオキシアルキレン構造部分を有していてもよい。オキシアルキレン構造部分を有する場合、その構造中の炭素原子の数は、特に限定はないが、本発明の効果を奏する点で、好ましくは2~4個、好ましくは2~3個である。
単量体(A)の分子中にオキシアルキレン構造部分を有する場合、オキシアルキレンの構成単位の数は、特に限定はないが、好ましくは1~30である。該構成単位数の上限は、より好ましくは20、さらに好ましくは15、特に好ましくは10である。一方、該構成単位数の下限は、より好ましくは2、さらに好ましくは3である。
また、単量体(A)の分子中にオキシアルキレン構造部分を有する場合、オキシアルキレン構造部分は基(a1)にあると、好ましい。
【0022】
単量体(A)は、アルキレンオキサイド付加物及び/またはラクトン付加物であってもよい。単量体(A)が上記化合物であると、有機系基材成分との相溶性の点で好ましい。
単量体(A)におけるアルキレンオキサイドの付加モル数は、特に限定はないが、上記で説明したオキシアルキレンの構成単位の数と同じ数値範囲であると、好ましい。なお、本発明においてアルキレンオキサイドの付加モル数は、アルキレンオキサイドの平均付加モル数を意味する。
また、アルキレンオキサイド中の炭素原子の数は、特に限定はないが、好ましくは2~4個、好ましくは2~3個である。
【0023】
単量体(A)におけるラクトンの付加モル数は、特に限定はないが、好ましくは1~15である。該付加モル数の上限は、より好ましくは10、さらに好ましくは8、特に好ましくは6、最も好ましくは4である。一方、該付加モル数の下限は、より好ましくは2である。なお、本発明においてラクトンの付加モル数は、ラクトンの平均付加モル数を意味する。
また、ラクトン中の炭素原子の数は、特に限定はないが、好ましくは4~15個、より好ましくは5~10個、さらに好ましくは6~9個、特に好ましくは6個(カプロラクトン)である。
【0024】
単量体(A)としては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール-ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクチルポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート;フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のフェノキシポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル);ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のポリラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本発明においては、(メタ)アクリレートの表記はアクリレート又はメタクリレートを意味する。これらの単量体(A)は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
重合性成分に占める単量体(A)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5重量%以上である。該重量割合が5重量%以上であると、得られる熱可塑性樹脂は十分な極性を有する傾向がある。該重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは70重量%、最も好ましくは50重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。
【0026】
重合性成分は単量体成分として、単量体(A)以外の単量体成分(以下では、単にその他の単量体成分ということがある)を含んでもよい。
その他の単量体成分としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の単量体(A)以外のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸の無水物や、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等の単量体(A)以外のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単量体(A)以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等が挙げられる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。なお、本発明においては、アクリル酸又はメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸ということもあり、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味するものとする。これらのその他の単量体成分は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
重合性成分は単量体成分として、ニトリル系単量体をさらに含んでもよい。ニトリル系単量体をさらに含むと、熱膨張性微小球の耐溶剤性が向上するため、好ましい。
重合性成分がニトリル系単量体を含む場合、重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~95重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%、最も好ましくは75重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。
【0028】
ニトリル系単量体は、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを含むと、膨張性能が向上するために好ましい。ニトリル系単量体がアクリロニトリルを含む場合、ニトリル系単量体に占めるアクリロニトリルの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5重量%以上である。該重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは80重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%である。
ニトリル系単量体がメタクリロニトリルを含む場合、ニトリル系単量体に占めるメタクリロニトリルの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5重量%以上である。該重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは90重量%、特に好ましくは80重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%である。
【0029】
重合性成分は単量体成分として、単量体(A)以外のカルボキシル基含有単量体をさらに含んでもよい。単量体(A)以外のルボキシル基含有単量体をさらに含むと、得られる熱可塑性樹脂の熱膨張時の延伸性が向上するため、好ましい。
重合性成分がカルボキシル基含有単量体を含む場合、重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは75重量%、特に好ましくは70重量%、最も好ましくは65重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%である。
【0030】
重合性成分は単量体成分として、単量体(A)以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含んでもよい。単量体(A)以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含むと、熱膨張性微小球の耐熱性が向上するため、好ましい。
重合性成分がカルボキシル基含有単量体を含む場合、重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~60重量%である。カルボキシル基含有単量体の重量割合の上限は、より好ましくは50重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは35重量%、最も好ましくは30重量%である。一方、カルボキシル基含有単量体の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%である。
【0031】
重合性成分は単量体成分として、ハロゲン化ビニリデン系単量体をさらに含んでもよい。ハロゲン化ビニリデン系単量体を含むと、熱膨張性微小球を構成する外殻を形成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上するため、好ましい。重合性成分がハロゲン化ビニリデン系単量体を含む場合、重合性成分に占めるハロゲン化ビニリデン系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~55重量%である。
【0032】
重合性成分は、上述のとおり、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合することにより、得られる熱膨張性微小球では、内包された発泡剤の熱膨張時における保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
架橋剤はなくてもよいが、その量については特に限定はなく、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0~5.0重量部、より好ましくは0.01~3.0重量部、さらに好ましくは0.02~2.0重量部、特に好ましくは0.05~1.5重量部である。架橋剤の含有量が5.0重量部超であると、熱膨張性微小球の膨張性能が低下することがある。
【0034】
発泡剤は、加熱することで気化する成分であり、熱膨張性微小球を構成する外殻に内包されることによって、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示すようになる。
【0035】
発泡剤は特に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン等の直鎖状炭化水素;イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソドデカン、3-メチルウンデカン、イソトリデカン、4-メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン等の分岐状炭化水素;シクロドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、ヘプチルシクロヘキサン、n-オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等の炭化水素;石油エーテル;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。また、これらの発泡剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の熱膨張性微小球の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.5~200μmである。該平均粒子径が0.5μm以上であると熱膨張性微小球の膨張性能が高くなる傾向があり、該平均粒子径が200μm以下であると熱膨張性微小球の膨張安定性が高くなる傾向がある。該平均粒子径の上限は、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは75μm、最も好ましくは50μmである。該平均粒子径の下限は、より好ましくは1μm、さらに好ましくは1.5μm、特に好ましくは2μm、最も好ましくは5μmである。なお、熱膨張性微小球の平均粒子径は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0037】
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定はないが、好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、特に好ましくは40%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)及び(2)で算出される。
【0038】
【数1】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xiはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0039】
発泡剤の内包率は、熱膨張性微小球の重量に対する熱膨張性微小球に内包された発泡剤の重量の百分率で定義される。発泡剤の内包率は、特に限定はないが、好ましくは1~50重量%、より好ましくは2~45重量%、さらに好ましくは5~40重量%、特に好ましくは10~35重量%である。なお、熱膨張性微小球における発泡剤の内包率は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0040】
熱膨張性微小球の膨張開始温度(T)は、特に限定はないが、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上、最も好ましくは120℃以上である。熱膨張性微小球の膨張開始温度が80℃未満であると、熱膨張性微小球は十分な耐熱性が得られないことがある。熱膨張性微小球の膨張開始温度の上限値は、好ましくは300℃である。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は、特に限定はないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上、最も好ましくは140℃以上である。また、最大膨張温度の上限値は、好ましくは350℃である。熱膨張性微小球の最大膨張温度が100℃未満であると十分な耐熱性が得られないことがあり、350℃超であると十分な膨張倍率が得られないことがある。なお、熱膨張性微小球の膨張開始温度(T)及び最大膨張温度(Tmax)は、本発明の実施例に記載の方法によるものである。
【0041】
熱膨張性微小球の体積最大膨張倍率は、特に限定はないが、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、さらにより好ましくは10倍以上、特に好ましくは15倍以上、さらに好ましくは20倍以上である。一方、最大膨張倍率の上限値は、好ましくは200倍である。
【0042】
本発明の熱膨張性微小球は有極性液体に対する分散性に優れているので、塩ビペースト等のペースト状物や、EVAエマルション、アクリルエマルション、溶剤型バインダー等の液状組成物への利用に好適である。また、射出成形、押出成形、プレス成形、混練成形、カレンダー成形、ブロー成形、圧縮成形、真空成形、熱成形等の成形加工へも利用することができる。
【0043】
〔熱膨張性微小球の製造方法〕
本発明の熱膨張性微小球において、その製造方法は、重合性成分と、発泡剤と、重合開始剤とを含有する油性混合物を水性分散媒中に分散させ、重合性成分を重合させる工程(以下では、単に重合工程ということがある)を含む方法である。
【0044】
重合開始剤としては、特に限定はないが、ごく一般に用いられる過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;クメンハイドロパーキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルを挙げることができる。
【0045】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等が挙げられる。
【0046】
重合開始剤の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部であり、さらに好ましくは0.1~8重量部、最も好ましくは0.2~5重量部である。該重量割合が0.05重量%未満である場合、重合されない重合性成分が残存し、所定の熱膨張性微小球を安定的に作製できないことがある。当該重量割合が10重量%を超える場合、耐熱性が低下することがある。
【0047】
重合工程では、水性分散媒は重合性成分および発泡剤を必須とする油性混合物を分散させる媒体であり、イオン交換水等の水を主成分とする。水性分散媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100~1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0048】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。
電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1~50重量部含有するのが好ましい。
【0049】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0050】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001~1.0重量部、さらに好ましくは0.0003~0.1重量部、特に好ましくは0.001~0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加したりすることがある。
【0051】
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含んでもよい。
分散安定剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~30重量部、さらに好ましくは0.2~20重量部である。
【0052】
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0053】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤及び/または分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
【0054】
本発明の熱膨張性微小球において、その製造方法では、水酸化ナトリウム及び塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
本発明の熱膨張性微小球において、その製造方法では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
また、重合工程においては、連鎖移動剤、有機顔料、表面が疎水性処理された無機顔料や無機粒子等をさらに使用してもよい。
【0055】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように、油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された水系懸濁液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、水系懸濁液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体成分の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0056】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30~100℃、さらに好ましくは40~90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0~5.0MPa、さらに好ましくは0.1~3.0MPaである。
【0057】
得られたスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等により濾過し、含水率10~50重量%、好ましくは15~45重量%、さらに好ましくは20~40重量%の湿粉を得ることができる。また、得られた湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体が得られる。得られた乾燥粉体の含水率は、好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
また、イオン性物質の含有量を低減させる目的で、得られた湿粉または乾燥粉体を水洗及び/または再分散後に再濾過し、乾燥させても構わない。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体を得てもよい。湿粉と乾燥粉体は使用用途に応じて適宜選択することができる。
【0058】
〔中空粒子〕
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子であり、組成物や成形体に含ませると材料物性に優れる。
本発明の中空粒子は、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂を含む外殻と、その外殻に内包される発泡剤を含む熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子であるため、基材成分と混合した際の分散性に優れる。
【0059】
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球を、好ましくは80~450℃で加熱膨張させることで得られる。加熱膨張の方法としては、特に限定はなく、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法等のいずれでもよい。乾式加熱膨張法としては、例えば、特開2006-213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法が挙げられる。また、別の乾式加熱膨張法としては、特開2006-96963号公報に記載の方法等がある。湿式加熱膨張法としては、特開昭62-201231号公報に記載の方法等がある。
【0060】
本発明の中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.001~0.60である。該真比重が0.001以上であると、外殻部の膜厚が十分となり、ヘタリを抑制できる傾向がある。一方、該真比重0.60以下であると、低比重化効果が十分に得られ、中空粒子を用いて組成物を調製する際に、組成物や成形体としての物性を十分に保つことができる傾向がある。該真比重の上限は、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.40、特に好ましくは0.30、最も好ましくは0.20である。一方、該真比重の下限は、より好ましくは0.003、さらに好ましくは0.005、特に好ましくは0.01である。なお、中空粒子の真比重は実施例で測定される方法によるものである。
【0061】
〔微粒子付着中空粒子〕
本発明の微粒子付着中空粒子は、上記で説明した中空粒子と、その外殻部の外表面に付着した微粒子とを含むものであって、例えば、図2のように、中空粒子(1)の外殻部(2)の外表面に付着した微粒子(4や5)で形成されたものである。
ここでいう付着とは、単に中空粒子の外殻2の外表面に微粒子4及び5が、吸着された状態(図2の微粒子4の状態)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、中空粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(図2の微粒子5の状態)であってもよいという意味である。微粒子の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。
微粒子が中空粒子に付着することにより、中空粒子の飛散を抑制しハンドリングを向上させることができ、また、バインダーや樹脂等の基材成分への分散性も向上させることができる。
【0062】
微粒子としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物としては、特に限定はないが、例えば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカ、アルミナ、雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロサルタイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ、ガラスマイクロバルーン等が挙げられる。
【0063】
微粒子を構成する有機物としては、特に限定はないが、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
微粒子を構成する無機物や有機物は、シランカップリング剤、パラフィンワックス、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理されていてもよく、未処理のものでもよい。
【0064】
微粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001~30μm、より好ましくは0.005~25μm、特に好ましくは0.01~20μmである。なお、該平均粒子径は、レーザー回折法により測定された体積基準の累積50%粒子径の値である。
微粒子の体積平均粒子径と中空粒子の体積平均粒子径との比率(微粒子の体積平均粒子径/中空粒子の体積平均粒子径)は特に限定はないが、中空粒子表面への微粒子の付着性の点で、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下である。
【0065】
微粒子付着中空粒子全体に占める微粒子の重量割合については、特に限定はないが、95重量%以下が好ましく、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下、最も好ましくは80重量%以下である。該重量割合が95重量%超であると、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際にその添加量が大きくなり、非経済的であることがある。微粒子の重量割合の下限は、好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは30重量%、最も好ましくは40重量%である。
【0066】
微粒子付着中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.01~0.60である。該真比重が0.01以上であると、外殻部の膜厚が十分となり、ヘタリを抑制できる傾向がある。一方、該真比重0.60以下であると、低比重化効果が十分に得られ、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際に、組成物や成形体としての物性を十分に保つことができる傾向がある。該真比重の上限は、より好ましくは0.40、特に好ましくは0.30、最も好ましくは0.20である。一方、該真比重の下限は0.07、特に好ましい下限は0.10である。
【0067】
本発明の微粒子付着中空粒子において、その製造方法は、例えば、微粒子付着熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって得ることができる。微粒子付着中空粒子の製造方法としては、熱膨張性微小球と微粒子とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を前記軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程(付着工程)を含む製造方法が好ましい。
【0068】
混合工程は、前述の熱膨張性微小球と前述の微粒子とを混合する工程である。
混合工程における熱膨張性微小球及び微粒子の合計に対する微粒子の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下、最も好ましくは80重量%以下である。該重量割合が95重量%以下であると、得られる微粒子付着中空粒子は軽量であり、十分な低比重化効果が得られる傾向がある。該重量割合の下限は、好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは30重量%である。
【0069】
混合工程において、熱膨張性微小球と微粒子とを混合するのに用いられる装置としては、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。
粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等も紹介されており、これらを用いてもよい。
【0070】
付着工程は、前述の混合工程で得られた熱膨張性微小球と微粒子とを含む混合物を、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱する工程である。付着工程では、熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外殻部の外表面に微粒子を付着させる。
加熱は、一般的な接触伝熱型または直接加熱型の混合式乾燥装置を用いて行えばよい。混合式乾燥装置の機能については、特に限定はないが、温度調節可能で原料を分散混合する能力や、場合により乾燥を早めるための減圧装置や冷却装置を備えたものが好ましい。加熱に使用する装置としては、特に限定はないが、たとえば、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)、ソリッドエアー(株式会社ホソカワミクロン)等が挙げられる。
加熱の温度条件については熱膨張性微小球の種類にもよるが、最適膨張温度とするのがよく、好ましくは70~250℃、より好ましくは80~230℃、さらに好ましくは90~220℃である。
【0071】
〔組成物及び成形体〕
本発明の組成物は、上記で説明した熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含むものである。
基材成分としては、特に限定はなく、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、変性ポリサルファイド系、ウレタン系、アクリル系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン-酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系等のエマルジョンやプラスチゾル等の液状物成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物;セルロース、ケナフ、フスマ、アラミド繊維、フェノール繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、レーヨン等の有機繊維が挙げられる。これらの基材成分は水や有機溶剤に希釈、溶解、分散していてもよい。これらの基材成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明の組成物は、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、上記の基材成分とを混合することによって調製することができる。また、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを混合して得られた組成物に、さらに別の基材成分と混合して本発明の組成物とすることもできる。
また、本発明の組成物は、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分以外に、用途に応じて適宜、その他の成分を含んでもよい。その他成分としては、例えば、可塑剤、充填材、着色剤、高沸点有機溶剤、接着剤等が挙げられる。
【0073】
本発明の組成物において、熱膨張性微小球、中空粒子、及び微粒子付着中空粒子の含有量の合計は、特に限定はないが、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.05~750重量部である。該含有量の合計が0.01重量部以上であると、十分に軽量な成形体が得られる傾向がある。一方、該含有量の合計が750重量部以下であると、熱膨張性微小球、中空粒子及び微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種の均一分散性がより向上する傾向がある。該含有量の合計の上限は、より好ましくは700重量部、さらに好ましくは650重量部、特に好ましくは600重量部、最も好ましくは500重量部である。一方、該含有量の合計の下限は、より好ましくは0.1重量部、さらに好ましくは0.2重量部、特に好ましくは0.5重量部、最も好ましくは1重量部である。
【0074】
本発明の組成物を調製する方法は特に限定はなく、従来公知の方法を採用すればよい。該方法としては、例えば、ホモミキサー、スタティックミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等の混合機を用いて、機械的に均一に混合させる方法が挙げられる。
本発明の組成物としては、例えば、ゴム組成物、成形用組成物、塗料用組成物、粘土組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
【0075】
本発明の成形体は、上記で説明した組成物を成形してなるものである。
本発明の成形体としては、例えば、成形品や塗膜等を挙げることができる。
本発明の成形体では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上し、また、外観に優れるという効果も得ることができる。
【実施例0076】
以下に、本発明の熱膨張性微小球の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味し、「部」とは「重量部」を意味するものである。
また、以下の実施例および比較例で挙げた熱膨張性微小球について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。以下では、熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
【0077】
〔熱膨張性微小球の平均粒子径(D50)と粒度分布の測定〕
測定装置として、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)を使用し、体積基準測定によるD50値を平均粒子径とした。
【0078】
〔熱膨張性微小球の膨張開始温度(T)、及び最大膨張温度(Tmax)の測定〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型 TA instruments社製)を使用した。微小球0.5mgを直径5.6mm、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(T)とし、最大変位量(Hmax)を示した温度を最大膨張温度(Tmax)とした。
【0079】
〔熱膨張性微小球の含水率(Cw1)の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型 京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。熱膨張性微小球の含水率(重量%)をCw1とした。
【0080】
〔熱膨張性微小球の発泡剤の内包率(C)の測定〕
熱膨張性微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W(g))を測定した。アセトニトリルを30ml加え均一に分散させ、24時間室温で静置した後に、130℃で2時間減圧乾燥後の重量(W(g))を測定した。
熱膨張性微小球の発泡剤の内包率(C)は、下記の式により計算される。
(重量%)=100×{100×(W-W)/1.0-Cw1}/(100-Cw1
(式中、熱膨張性微小球の含水率Cw1は、上記方法で測定した。)
【0081】
〔真比重の測定〕
熱膨張性微小球、中空粒子、または微粒子付着中空粒子(以下、単に総じて粒子試料ということがある)の真比重は、以下の測定方法で測定した。
真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。具体的には、容量100mLのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100mLの充満されたメスフラスコの重量(WB2)を秤量した。また、容量100mLのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50mLの粒子試料を充填し、粒子試料の充填されたメスフラスコの重量(WS2)を秤量した。そして、粒子試料の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS3)を秤量した。そして、得られたWB1、WB2、WS1、WS2及びWS3を下式に導入して、粒子試料の真比重(d)を計算した。
d={(WS2-WS1)×(WB2-WB1)/100}/{(WB2-WB1)-(WS3-WS2)}
【0082】
〔熱膨張性微小球の膨張後の真比重の測定〕
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作成し、その中に熱膨張性微小球1.0gを均一になるように入れ、アルミ箔にて蓋をした。蓋をした箱をギア式オーブン中に入れ、上記で説明した熱膨張性微小球の最大膨張温度で1分間加熱し、膨張体を得た。得られた膨張体である中空粒子の真比重を、上記で説明した方法にて測定した。
【0083】
<有極性液体に対する分散性の評価>
乾燥した熱膨張性微小球0.5部にエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂の水性エマルジョン(エチレン30重量%及び酢酸ビニル70重量%を構成成分とするエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂を、水性エマルジョン全体に対して55重量%含有するもの)8.0gを添加し混合後、24時間静置した。
静置後、この液状組成物を、コーターを用いて、普通紙上に塗工し、これを常温で風乾させて、普通紙上に未膨張の微小球を含有する100μmのEVA塗膜を作製した。
作成したEVA塗膜から任意の5点(n、n、n、n、n)の厚みを測定し、その平均値であるnaveから、標準偏差σを以下の計算式より算出した。
有極性液体に対する分散性は以下に示す指標により評価した。
σ=〔{(n-nave+(n-nave+(n-nave+(n-nave+(n-nave}/5〕(1/2)
◎:標準偏差σが0μm以上、2μm以下
〇:標準偏差σが2μm超、4μm以下
×:標準偏差σが4μm超
【0084】
(実施例1)
イオン交換水500部に、塩化ナトリウム130部を溶解させ、ポリビニルピロリドン1.0部、カルボキシメチル化ポリイミン・Na塩0.05部及びコロイダルシリカ(有効濃度20%)65部を添加し、pHを3.0に調整し水性分散媒を調製した。
これとは別に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレングリコールの平均構成単位数:4)20部、アクリロニトリル25部、メタクリロニトリル5部、メタクリル酸40部、メタクリルアミド5部、スチレン3部、エチレングリコールジメタクリレート2部、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート2部、2-メチルペンタン(イソブタン)40部を混合し油性混合物とした。
水性分散媒体と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(プライミクス株式会社製、TKホモミキサー)により回転数10000rpmで1分間分散して、水系懸濁液を調製した。
得られた水系懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.35MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で20時間重合反応した。重合後、生成物を濾過、乾燥し、熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の物性を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例2~13、比較例1~4)
実施例2~13は、実施例1と同様に表1に示すように変更する以外は、同様にして熱膨張性微小球を得た。
一方、比較例1~4では、単量体(A)を使用せずに表2に示すようにそれぞれ変更する以外は実施例1と同様にして熱膨張性微小球を得た。
得られたそれぞれの熱膨張性微小球の物性を実施例1と同様に測定し、評価した。結果を表1~2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
重合性炭素-炭素二重結合を1個有し、分子中に酸素原子を5個以上有する化合物である単量体(A)を使用した熱膨張性微小球は、有極性液体に対して分散性に優れる。また、膨張性能も良好である。
それに対して、単量体(A)を使用していない熱膨張性微小球は、有極性液体に対して分散性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の熱膨張性微小球は、例えば、パテ、塗料、インク、シーリング材、モルタル、紙粘土、陶器等の軽量化材として用いることができ、また基材成分とともに用いて、射出成形、押出成形、プレス成形等の成形を行い、遮音性、断熱性、遮熱性、吸音性等に優れる成形体を製造することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 微粒子付着中空粒子
2 外殻部
3 中空部
4 微粒子(吸着された状態)
5 微粒子(めり込み、固定化された状態)
6 外殻(シェル)
7 発泡剤(コア)
図1
図2