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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035319
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】バイオフィードバック装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20230306BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61B5/16 100
A61B5/055 390
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142090
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】516259468
【氏名又は名称】一般社団法人ブレインインパクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 義徳
【テーマコード(参考)】
4C038
4C096
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C096AA17
4C096AA18
4C096AD14
4C096DC27
4C096DC35
(57)【要約】
【課題】低コストかつ高精度で、被験者または患者の生体情報から精神状態を推定するバイオフィードバック装置を提供する。
【解決手段】バイオフィードバック装置は、VRコンテンツ及び/またはVRゲームの再生を行うことによって、被験者に対して精神的刺激を与えながら生体情報を取得する。すると、被験者の生体情報と、被験者の健康診断結果及び生活環境アンケート結果から、脳情報推定装置が有するDNNの機能によって、被験者の圧縮脳情報を推定する。更にバイオフィードバック装置は、推定した被験者の脳情報と、健康診断結果及び生活環境アンケート結果から、精神状態推定装置が有するDNNの機能によって、被験者の精神状態を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に対して感情面における刺激を与えるための、少なくとも映像を含む映像コンテンツを前記被験者に閲覧させるための映像表示装置と、
前記映像表示装置に前記映像コンテンツを表示させた状態で、所定の生体情報取得用センサを用いて前記被験者の生体情報を取得し、前記生体情報に基づいて前記被験者の脳情報を推定して推定脳情報を出力する脳情報推定装置と、
前記被験者の生体情報と前記推定脳情報に基づいて前記被験者の精神状態を推定して推定精神状態情報を出力する精神状態推定装置と
を具備する、バイオフィードバック装置。
【請求項2】
前記脳情報は、学習用被験者からfMRI装置が生成したMRI画像ファイル群から得られる灰白質量と、神経線維異方性と、大脳皮質領域間相互作用であり、
前記脳情報推定装置は、複数名の前記学習用被験者から得られる前記生体情報を入力データとし、前記脳情報をラベルとして学習処理を行うことで形成されるニューラルネットワークであり、
前記精神状態推定装置は、複数名の前記学習用被験者から得られる前記生体情報及び前記脳情報を入力データとし、前記学習用被験者に対して実施したアンケート結果をラベルとして学習処理を行うことで形成されるニューラルネットワークである、
請求項1に記載のバイオフィードバック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィードバック装置に関する。
より詳細には、被験者または患者に対し、所定の視聴覚情報を提供しながら生体情報を計測し、被験者または患者の精神状態を推定することで、被験者または患者の心身状態を向上させるバイオフィードバック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィードバックとは、特許文献1等に示されるように、心拍数等の、日常生活では数値として知覚できない生体情報をリアルタイムで被験者または患者に提示(フィードバック)することで、通常であれば自ら意識できない状態を制御するべく訓練する手法である。
バイオフィードバックにおける生体情報を脳情報にて応用した手法として、特許文献2等に開示されるニューロフィードバックがある。ニューロフィードバックとは、被験者または患者が自らの脳活動に関するフィードバックを受けることで、脳活動を自らの意思で制御するべく訓練する手法である。
【0003】
特許文献1には、被評価者の姿勢の変化に伴う心拍データの変化から、被評価者の体調を正確に評価することができる体調評価方法及び体調評価システムが開示されている。
特許文献2には、計測される脳領域間の結合の相関をフィードバック情報に利用して、脳領域間の結合の相関を変化させる訓練を行うための脳活動訓練装置が開示されている。
特許文献3には、脳解析情報を扱い易い値に変換し、健康の指標として使用することができる、発明者らによる脳情報解析装置と脳健康指標演算装置が開示されている。
特許文献4には、架台のボア内の居住性を向上可能な磁気共鳴イメージング装置が開示されている。
【0004】
なお、これ以降、本明細書において脳画像データから得られる情報を、脳情報と総称する。脳情報とは例えば、脳画像データを画像解析した結果得られる、脳の特定部位における灰白質の量や、脳の特定部位における神経線維の異方性、脳活動に関連した血流動態反応に基づく大脳皮質領域の反応性や領域間の同期性等である。
脳情報は、特許文献3にも開示されている他、本発明において重要なキーワードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-113118号公報
【特許文献2】再表2019/172245号公報
【特許文献3】特開2018-33516号公報
【特許文献4】特許6775943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイオフィードバックやニューロフィードバックの目的は、被験者または患者の心身の健康、特に精神面の健康を向上させることである。しかしながら、これまでのバイオフィードバックは、取得した生体情報に基づいて被験者又は患者の精神状態等をディスプレイ表示する際の、精神状態を表示する精度が必ずしも高くはない、という課題があった。また、特許文献2に開示されるニューロフィードバックは、MRI装置の使用が前提条件であり、システムの運用コストが無視できない。
【0007】
本発明はかかる課題を解決し、低コストかつ高精度で、被験者または患者の生体情報から精神状態を推定するバイオフィードバック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のバイオフィードバック装置は、被験者に対して感情面における刺激を与えるための、少なくとも映像を含む映像コンテンツを被験者に閲覧させるための映像表示装置と、映像表示装置に映像コンテンツを表示させた状態で、所定の生体情報取得用センサを用いて被験者の生体情報を取得し、生体情報に基づいて被験者の脳情報を推定して推定脳情報を出力する脳情報推定装置と、被験者の生体情報と推定脳情報に基づいて被験者の精神状態を推定して推定精神状態情報を出力する精神状態推定装置とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低コストかつ高精度で、被験者または患者の生体情報から精神状態を推定するバイオフィードバック装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るバイオフィードバック装置を示す概略図である。
図2】バイオフィードバック装置の情報取得時における使用状態を示す概略図である。
図3】fMRI装置の模式的断面図である。
図4】バイオフィードバック装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】バイオフィードバック装置のソフトウェア機能を示すブロック図である。
図6】脳情報圧縮演算処理部の内部処理の詳細を示すブロック図である。
図7】各種テーブルのフィールド構成を示す図である。
図8】バイオフィードバック装置の学習モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
図9】圧縮脳情報学習処理、圧縮脳情報推定処理、被験者精神状態学習処理及び被験者精神状態推定処理を示す概略図である。
図10】脳情報推定装置と精神状態推定装置の機能ブロック図である。
図11】バイオフィードバック装置の推定モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、先ず、心と脳と身体状態のデータベース、すなわち、精神状態と脳情報と生体情報のデータベースを構築する。これが脳情報データベースである。
次に本発明は、脳情報データベースを基にDNN(Deep Neural Network)を用いて、生体情報から脳情報を推定する装置を構築する。これが脳情報推定装置である。
次に本発明は、脳情報データベースを基にDNNを用いて、脳情報から精神状態を推定する装置を構築する。これが精神状態推定装置である。
次に本発明は、上述の脳情報推定装置と精神状態推定装置を組み合わせて、生体情報から脳情報を推定し、推定した脳情報から精神状態を推定する装置を構築する。これがバイオフィードバック装置である。
なお、本発明の実施形態として、バイオフィードバック装置を説明するが、以上の説明より明らかなように、バイオフィードバック装置は、脳情報推定装置及び精神状態推定装置を構成要素として内包する。そして、脳情報推定装置及び精神状態推定装置は脳情報データベースを基に構築される。
【0012】
人の心と体の間には脳が存在する。つまり、人の生体情報からいきなり精神状態を推定するよりも、生体情報から脳情報を推定して、推定脳情報から精神状態を推定する方が、推定精度が高い。更に、脳情報と精神状態との関連性を脳情報データベースから導き出すことができるので、脳情報データベースに蓄積されるデータ量が多くなるほど、バイオフィードバック装置における精神状態の推定精度の向上が見込まれる。
本発明は、発明者が特許文献3等を始めとする、脳情報に関する知見の蓄積により完成した。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るバイオフィードバック装置101を示す概略図である。
被験者102は、映像コンテンツを閲覧するための映像表示装置であるVRゴーグル103を装着し、VRコンテンツV104を閲覧し、及び/またはVRゲームに興じる。
その際、被験者102から種々のセンサによって生体情報が取得される。
【0014】
バイオフィードバック装置101は、VRコンテンツV104及び/またはVRゲームの再生を行うと同時に、被験者102の生体情報を取得する。そして、バイオフィードバック装置101は、被験者102の生体情報から被験者102の脳情報を推定する。更にバイオフィードバック装置101は、推定した被験者102の脳情報から被験者102の精神状態を推定する。
推定した被験者102の脳情報及び精神状態は、例えばネットワーク105を通じて端末106にて表示される。なお、バイオフィードバック装置101はスタンドアロン構成でもよい。その場合、端末106は不要になる。
バイオフィードバック装置101は、被験者102の推定脳情報と推定精神状態から、VRコンテンツV104及び/またはVRゲームの継続、切り替え、あるいは停止等を判断する。
【0015】
本発明におけるバイオフィードバック装置101は、被験者102が訓練を意識することなく、VRコンテンツV104に興じるだけで、被験者102の心身の健康向上が期待できるという点において、従来技術におけるバイオフィードバックと異なる。よって、被験者102の精神的負担は軽微であり、被験者102は気軽にバイオフィードバックを受けることができる。
【0016】
バイオフィードバック装置101は、その内部に脳情報推定装置と精神状態推定装置を内包する。
脳情報推定装置は、被験者102の生体情報の入力を受けると、被験者102の脳情報を推定し、推定圧縮脳情報を出力する。
精神状態推定装置は、被験者102の圧縮脳情報の入力を受けると、被験者102の精神状態を推定し、推定精神状態情報を出力する。
【0017】
図2は、バイオフィードバック装置101の情報取得時における使用状態を示す概略図である。
図3は、fMRI装置201の模式的断面図である。
バイオフィードバック装置101を構成する脳情報推定装置と精神状態推定装置は、脳情報データベースに後述する学習処理を施すことで、構成される。
なお、図2及び図3に図示されている被験者は、図1の被験者102とは別の、脳情報データベースにデータを収集して蓄積するための被験者なので、学習用被験者206として区別する。
【0018】
fMRI装置201(functional magnetic resonance imaging)は、通常のMRIと比べ、学習用被験者206の脳活動に関連した血流動態反応をもデータ化できるMRI装置である。
図3に示すように、fMRI装置201には、特許文献4に開示されているものと同様の、学習用被験者206に映像を表示する反射板301とレンズ302を有するプロジェクタ303が、学習用被験者206の頭上に設置されている。また、反射板301の近傍には、学習用被験者206の顔を撮影する不図示のカメラが取り付けられている。このカメラは、学習用被験者206の脈拍を検出し、脈拍信号として出力することができる。カメラは更に、学習用被験者206の瞳孔を撮影し、瞳孔径を計測することができる。他にも、fMRI装置201には学習用被験者206の血圧や心拍、発汗等を取得するセンサが設けられている。
【0019】
以上より、fMRI装置201は、学習用被験者206のMRI画像ファイル群202を出力する他、学習用被験者206の計測時生体情報203を出力する。これらの情報はバイオフィードバック装置101の内部において、日時情報を伴う。
バイオフィードバック装置101は、学習用被験者206のMRI画像ファイル群202、学習用被験者206の計測時生体情報203の他、学習用被験者206の健康診断結果204、学習用被験者206のfMRI装置201計測前及び計測後の生活環境アンケート結果205の入力を受け、内部のデータベースに登録する。バイオフィードバック装置101は、それら情報をデータベース登録した後、後述する学習処理を行うことで、脳情報推定装置と精神状態推定装置を構成する。
【0020】
健康診断結果204は、通常の健康診断にて得られる診断結果の情報の集合体である。学習用被験者206の年齢、身長、体重、視力、聴力、体脂肪率、BMI(Body Mass Index:ボディマス指数)、血中中性脂肪値、γGTP(γ-glutamyltransferase:ガンマグルタミルトランスフェラーゼ)等、年に一回実施される健康診断の診断結果の情報である。これらのデータは、学習用被験者206から機械的あるいは化学的な手段で取得される、学習用被験者206の主観が入り込む余地のない、客観的な測定結果である。なお、健康診断に留まらず、学習用被験者206から日常的に計測を行った体重や血圧等の生体計測データ、歩数や活動量等のライフログデータも、この健康診断結果204に含めることができる。
【0021】
生活環境アンケート結果205は、健康診断の際に設問され、学習用被験者206が回答する種々のアンケートの他に、精神神経系の健康指標を推し量るためのアンケートも含まれる。例えば、以下の様な項目について設問を設け、学習用被験者206に回答させる。
(1)階層帰属意識及び金融不安を含む社会経済的な状況の自覚
(2)生活に関する満足感と生活向上への意識を含む健康で安心なことについての自覚
(3)個人的な価値観、ポスト物質主義(物質や経済的な富よりも精神や心の安寧(リッチネス)を優先させる考え方)及びエピクロス主義(将来の為の準備よりも現在に生きることに優先権を与えて生きる主義)
(4)ストレスや疲労感(身体的疲労や精神的疲労等)及びその他の気分(怒り、混乱、抑うつ、緊張、無気力等)に関する自覚
(5)モチベーション(報酬反応性や刺激探求、駆動等)や対人関係(共感的関心や視点取得、空想、個人的苦痛等)、好奇心(進展型好奇心、包括型好奇心等)、根性(根気や一貫性等)等の性格特性や状態特性に関する自己評価
(6)幸福感やWellbeingに関する自覚
(7)ワークエンゲージメント(仕事への熱意、仕事への没頭、仕事への活力等)に関する自覚
すなわち、これらのデータは健康診断結果204とは異なり、学習用被験者206の主観が混じるアンケート結果等の情報である。
なお、「Wellbeing」とは、1948年の世界保健機関 (WHO) 憲章における健康の定義から、当該個人が肉体的、精神的及び社会的に充足した状態を指す。
【0022】
従来、MRI装置では学習用被験者206の平常状態における脳情報を取得していた。平常状態とは、学習用被験者206に対して特別な刺激を与えていない状態である。このような状態における脳情報は、他の人と比較した特徴程度しか、有用な情報を得られず、学習用被験者206の脳の機能的特色を見出すには至らない。
【0023】
そこで、本発明に係るバイオフィードバック装置101は、fMRI装置201で学習用被験者206の脳情報を取得する際に、学習用被験者206に対して学習用被験者206の感情を揺さぶるための、様々な精神的刺激を与える。例えば、学習用被験者206に美麗な絵やイラストレーションを一定時間見せた後に、醜悪な絵等を一定時間見せる、あるいは簡単なアクションゲームで遊んで貰う等である。
【0024】
この、学習用被験者206または被験者102に対して感情面における刺激を与えるための、少なくとも映像を含む映像コンテンツが、VRコンテンツV104である。
VRコンテンツV104は、学習用被験者206または被験者102に対して様々な感情面における刺激を与えるため、多様なコンテンツを用意する。また、VRコンテンツV104は、単に静止画を表示させるのみならず、学習用被験者206または被験者102に特定の感情を誘起させるために、ストーリー性を有する動画コンテンツや、クイズやゲーム等も用意する。
【0025】
バイオフィードバック装置101によりVRコンテンツV104を学習用被験者206に閲覧させ、あるいはバイオフィードバック装置101によりVRゲームを学習用被験者206にプレイして貰うことで、学習用被験者206の感情が誘起される。学習用被験者206の感情が誘起される、ということは、学習用被験者206の脳がVRコンテンツV104やVRゲームという刺激に対して反応することを意味する。
【0026】
脳が外的刺激に対して反応すると、その感情の種類によって、脳の異なる部位における血流が活発になることが知られている。本発明に係るバイオフィードバック装置101は、VRコンテンツV104で学習用被験者206の脳を刺激しながらfMRI装置201で脳情報を取得することで、学習用被験者206の脳が特定の感情を誘起した状態においてどのような状態になるのかを知ることができる。
【0027】
更に、fMRI装置201で脳情報を取得している間、生体情報も同時に取得することで、学習用被験者206が特定の感情を誘起した状態における脳情報と学習用被験者206の生体情報を紐付けることが可能になる。
加えて、fMRI装置201で脳情報と生体情報を同時取得した直後に、学習用被験者206に対して精神状態をモニタリングするための簡単なアンケートを実施する。このアンケートの結果によって学習用被験者206の精神状態を示す情報を取得できる。すると、学習用被験者206が特定の感情を誘起した状態における脳情報と、学習用被験者206の生体情報と、学習用被験者206の精神状態情報を紐付けることが可能になる。
【0028】
すなわち、VRコンテンツV104で学習用被験者206に精神的刺激を与えながら脳情報と生体情報を取得し、更にVRコンテンツV104のチャプター終了直後に、学習用被験者206にアンケートを実施して精神状態情報を取得することで、学習用被験者206が特定の感情を誘起した状態における脳情報と、学習用被験者206の生体情報と、学習用被験者206の精神状態情報という、データベースのレコードが得られる。このレコードの集合体が、本発明におけるバイオフィードバック装置101が取得する脳情報データベースである。
この脳情報データベースを基に、DNN等によるAIを構築することで、生体情報から脳情報を推定する脳情報推定装置、そして脳情報から精神状態を推定する精神状態推定装置を実現することが可能になる。
【0029】
しかしながら、脳情報と健康状態は密接な関連性を有することが、脳科学分野におけるこれまでの研究等により明らかである。また、脳情報は年齢と性別によるばらつきが激しいことが、発明者のこれまでの研究により明らかになっている。このため、学習用被験者206から得られるMRI画像ファイル群202をそのままDNNに投入すると、過学習を引き起こし易い。
そこで、脳情報推定装置において生体情報から脳情報を推定する際に、予め学習用被験者206をグルーピングする。以下、グルーピングの一例を示す。
先ず、学習用被験者206を性別と年齢層でグルーピングする。年齢層は例えば、学習用被験者206の年齢を10歳毎に区切る。次に、性別と年齢層でグルーピングした学習用被験者206のグループに対し、GM-BHQ及びFA-BHQの平均値を算出する。そして、GM-BHQ及びFA-BHQの平均値を境に、以下のようなグルーピングが可能になる。
(1)GM-BHQ値が平均値以上、且つ、FA-BHQ値が平均値以上のグループ。
(2)GM-BHQ値が平均値以上、且つ、FA-BHQ値が平均値未満のグループ。
(3)GM-BHQ値が平均値未満、且つ、FA-BHQ値が平均値以上のグループ。
(4)GM-BHQ値が平均値未満、且つ、FA-BHQ値が平均値未満のグループ。
なお、このようなグルーピングは、学習用被験者206のサンプル数に応じて適宜変更し得る。
学習用被験者206に対して以上のようなグルーピングを施した上で、学習用被験者206の健康状態、fMRI装置201による計測前のアンケート、fMRI装置201による計測直後のアンケートも、推定精度を高めるための情報としてDNNに投入する。学習用被験者206を適切にグルーピングすることによって、DNNの過学習を防ぎ、DNNによる高精度な推定を実現できる。
【0030】
図4は、バイオフィードバック装置101のハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のサーバ装置で構成されるバイオフィードバック装置101は、バス410に、CPU401、ROM402、RAM403、不揮発性ストレージ404、NIC(Network Interface Card)405、USB等のシリアルポート406、RTC(Real Time Clock)407が接続されている。
バイオフィードバック装置101は周知のPC等でも代用可能であり、その場合は表示部408と操作部409が付随する。
【0031】
図5は、バイオフィードバック装置101のソフトウェア機能を示すブロック図である。
入出力制御部501は、端末106または操作部409から受ける操作命令に従い、種々の動作を行う。
入出力制御部501は、fMRI装置201からMRI画像ファイル群202及び計測時生体情報203を受信する。また入出力制御部501は、端末106、操作部409またはシリアルポート406等から、健康診断結果204及び生活環境アンケート結果205を受信する。そして入出力制御部501は、これら受信した情報を後述するテーブルに登録する。
入出力制御部501は更に、テーブルや演算処理機能とデータのやり取りを行い、種々の実行結果を端末106または表示部408に表示する。
【0032】
NN演算処理部502は、DNN(Deep Neural Network)のエンジンである。
脳情報圧縮演算処理部503は、MRI画像ファイル群202から得られる脳情報を次元圧縮する次元圧縮演算処理を実行する。
【0033】
図6は、脳情報圧縮演算処理部503の内部処理の詳細を示すブロック図である。
脳情報圧縮演算処理部503は、灰白質量算出部601、神経線維異方性算出部602、大脳皮質領域間相互作用算出部603、大脳皮質領域間反応性算出部604及び平均値演算部605a、605b、605c、605dよりなる。
灰白質量算出部601は、入出力制御部501を通じて入力されるMRI画像ファイル群202に対して灰白質量演算処理を行い、例えば116個の灰白質量データ群606を出力する。灰白質量データ群606は更に平均値演算部605aに入力される。平均値演算部605aは灰白質量データ群606の平均値を演算して灰白質量平均値607を出力する。この灰白質量平均値607の演算処理は特許文献3に示されるGM-BHQ(Grey-Matter Brain Healthcare Quotient)と等価であり、灰白質量平均値607は単一のスカラ値である。
【0034】
神経線維異方性算出部602は、入出力制御部501を通じて入力されるMRI画像ファイル群202に対して神経線維異方性演算処理を行い、例えば48個の神経線維異方性データ群608を出力する。神経線維異方性データ群608は更に平均値演算部605bに入力される。平均値演算部605bは神経線維異方性データ群608の平均値を演算して神経線維異方性平均値609を出力する。この神経線維異方性平均値609の演算処理は特許文献3に示されるFA-BHQ(fractional anisotropy Brain Healthcare Quotient)と等価であり、神経線維異方性平均値609は単一のスカラ値である。
【0035】
大脳皮質領域間相互作用算出部603は、入出力制御部501を通じて入力されるMRI画像ファイル群202に対して大脳皮質領域間相互作用演算処理を行い、例えば116個の領域間相互作用データ群610を出力する。この領域間相互作用データ群610は、fMRIでのみ計測可能な、学習用被験者206の脳の活動に関連した血流動態反応に基づく情報である。領域間相互作用データ群610は更に平均値演算部605cに入力される。平均値演算部605cは領域間相互作用データ群610の平均値を演算して領域間相互作用平均値611を出力する。この領域間相互作用平均値611は単一のスカラ値である。
【0036】
大脳皮質領域間反応性算出部604は、入出力制御部501を通じて入力されるMRI画像ファイル群202に対して大脳皮質領域間反応性演算処理を行い、例えば116×(116-1)÷2=6670個の領域間反応性データ群612を出力する。この領域間反応性データ群612は、fMRIでのみ計測可能な、学習用被験者206の脳の活動に関連した血流動態反応に基づく情報である。領域間反応性データ群612は更に平均値演算部605dに入力される。平均値演算部605dは領域間反応性データ群612の平均値を演算して領域間反応性平均値613を出力する。この領域間反応性平均値613は単一のスカラ値である。
以上、灰白質量データ群606、灰白質量平均値607、神経線維異方性データ群608、神経線維異方性平均値609、領域間相互作用データ群610、領域間相互作用平均値611、領域間反応性データ群612及び領域間反応性平均値613が圧縮脳情報614として、図7にて後述する被験者計測情報テーブル507の圧縮脳情報フィールドに記録される。
【0037】
図5に戻ってブロック図の説明を続ける。
精神状態判定処理部504は、アンケート結果から学習用被験者206の精神状態を判定し、判定した精神状態情報を出力する。
アンケートは例えば公知のPOMS2等であり、精神状態は例えばPOMS2で測定できる7つの気分尺度
1:怒り-敵意
2:混乱-当惑
3:抑うつ-落ち込み
4:疲労-無気力
5:緊張-不安
6:活気-活力
7:友好
を基本とする種々の精神状態情報である。
【0038】
図7は、図5のブロック図に示される各種テーブルのフィールド構成を示す図である。
被験者マスタ505は、被験者IDフィールドと、被験者氏名フィールドと、性別フィールドと、年齢フィールドを有する。
被験者IDフィールドには、学習用被験者206を一意に識別する被験者IDが格納される。
被験者氏名フィールドには、学習用被験者206の氏名が格納される。
性別フィールドには、学習用被験者206の性別が格納される。
年齢フィールドには、学習用被験者206の年齢が格納される。
【0039】
被験者基本情報テーブル506は、被験者IDフィールドと、fMRI計測日フィールドと、健康診断結果フィールドと、fMRI計測前アンケート結果フィールドと、fMRI計測後アンケート結果フィールドを有する。
被験者IDフィールドは、被験者マスタ505の同名フィールドと同じである。
fMRI計測日フィールドには、学習用被験者206がfMRI装置201にて計測を実施した日が格納される。
健康診断結果フィールドには、学習用被験者206が提供する学習用被験者206自身の健康診断の結果の情報が格納される。
【0040】
fMRI計測前アンケート結果フィールドには、学習用被験者206がfMRI装置201にて計測を実施した日における、fMRI装置201計測前のアンケート結果が格納される。
fMRI計測後アンケート結果フィールドには、学習用被験者206がfMRI装置201にて計測を実施した日における、fMRI装置201計測後のアンケート結果が格納される。
この被験者基本情報テーブル506は、fMRI装置201における計測が実施された際の、時間を伴わない情報が格納される。
【0041】
被験者計測情報テーブル507は、被験者IDフィールドと、日時フィールドと、脳情報フィールドと、圧縮脳情報フィールドと、生体情報フィールドと、fMRI計測中アンケート結果フィールドを有する。
被験者IDフィールドは、被験者マスタ505の同名フィールドと同じである。
日時フィールドには、学習用被験者206がfMRI装置201にて計測を実施した際の、後述する脳情報フィールド、生体情報フィールド、fMRI計測中アンケート結果フィールドの値を取得した日時が格納される。
【0042】
脳情報フィールドには、学習用被験者206がfMRI装置201にて計測を実施した際の、リアルタイムで取得した脳情報が格納される。
圧縮脳情報フィールドには、脳情報フィールドの脳情報を脳情報圧縮演算処理部503で圧縮した圧縮脳情報610が格納される。
生体情報フィールドには、学習用被験者206がfMRI装置201にて計測を実施した際の、リアルタイムで取得した生体情報が格納される。
【0043】
fMRI計測中アンケート結果フィールドには、学習用被験者206がfMRI装置201にて計測を実施した際の、リアルタイムで取得したアンケート結果、またはVRコンテンツV104内で取得される種々の情報が格納される。
VRコンテンツV104内で取得される種々の情報とは、例えばVRゲームにおけるスコア値等である。
この被験者計測情報テーブル507は、fMRI装置201における計測が実施された際の、時間を伴う情報が格納される。
【0044】
VRコンテンツ情報508は、相対時間フィールドと、VRコンテンツ名称フィールドと、VRコンテンツ本体フィールドを有する。
相対時間フィールドには、VRコンテンツV104の相対時間情報(チャプター)が格納される。
【0045】
VRコンテンツ名称フィールドには、VRコンテンツV104のチャプター毎の名称が格納される。
VRコンテンツ本体フィールドには、VRコンテンツV104の動画データやVRゲーム等のプログラム等のVRコンテンツ本体が格納される。
【0046】
被験者AI係数テーブル509は、被験者年齢層フィールドと、被験者性別フィールドと、AI種別フィールドと、近似関数パラメータフィールドを有する。
被験者年齢層フィールドには、学習用被験者206をグルーピングする際の年齢層が格納される。
被験者性別フィールドには、学習用被験者206の性別が格納される。
AI種別フィールドには、推定出力を行うDNNの種別を示す情報が格納される。
近似関数パラメータフィールドには、DNNの学習処理を行った際の近似関数パラメータが格納される。
【0047】
本発明の実施形態に係る脳情報推定装置と精神状態推定装置は、DNNよりなる。
脳情報推定装置は、図9で後述するが、被験者102の年齢、事前アンケート結果、事後アンケート結果、計測中生体情報を入力されると、被験者102の圧縮脳情報610を推定する。
精神状態推定装置は、図9で後述するが、被験者102の年齢、事前アンケート結果、事後アンケート結果、圧縮脳情報610を入力されると、被験者102の精神状態情報を推定する。
【0048】
DNNよりなるこれらの脳情報推定装置及び精神状態推定装置は、過学習を防ぐために、学習用被験者206を年齢層と性別でグルーピングして、学習処理を行う。
被験者年齢層フィールドと被験者性別フィールドは、学習用被験者206のグルーピングに用いる情報である。
AI種別フィールドは、脳情報推定と精神状態推定の何れかを示す情報である。
【0049】
図8は、バイオフィードバック装置101の学習モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
処理を開始すると(S801)、先ず、fMRI計測作業に先立ち、学習用被験者206に事前アンケートを実施する(S802)。
次に、学習用被験者206に所定の生体情報取得用センサを装着して貰いながら、fMRI装置201に入って貰う(S803)。
最初に、VRコンテンツV104を再生しない状態で、学習用被験者206の初期状態時のfMRI計測を実施すると共に、同時に生体情報も計測する(S804)。
【0050】
これ以降(S805からS808)はループ処理である。
バイオフィードバック装置101のVRコンテンツ情報508からVRコンテンツV104を再生して、VR映像を表示、及び/またはVRゲームを実行する。そして、fMRI計測を実施すると共に、同時に生体情報も計測する(S806)。
1つのチャプターのVRコンテンツV104の再生が終わったら、VRコンテンツV104の再生を一旦停止し、学習用被験者206にアンケートを実施する(S807)。
このステップS806とS807を、全てのVRコンテンツV104の再生が終了するまで繰り返す(S808)。
【0051】
全てのVRコンテンツV104の再生が終了したら、fMRI計測も終了する。その後、学習用被験者206に事後アンケートを実施する(S809)。
一通りの情報収集が終了したら、バイオフィードバック装置101は脳情報圧縮演算処理を実行し、被験者計測情報テーブル507の脳情報フィールドから、圧縮脳情報フィールドの値を生成して記憶する(S810)。
【0052】
圧縮脳情報610が出来上がったら、学習用被験者206を年齢層と性別で分類した上で、圧縮脳情報学習を実施する(S811)。
次に、学習用被験者206を年齢層と性別で分類した上で、被験者精神状態学習を実施する(S812)。
そして、一連の処理を終了する(S813)。
【0053】
図9Aは、圧縮脳情報学習処理を示す概略図である。
先ず、NN演算処理部502を学習モードで稼働させる。これが図9Aにおける特定年代及び性別の被験者群のNN学習モード901aである。その上で、学習用被験者206の年齢、健康診断結果、事前アンケート結果、事後アンケート結果、計測中生体情報を学習データとしてNN学習モード901aに入力し、圧縮脳情報610をラベル(回答)としてNN学習モード901aに入力して、学習処理を行う。このとき、特定被験者群の近似関数パラメータ902が生成され、更新される。
【0054】
図9Bは、圧縮脳情報推定処理を示す概略図である。
先ず、NN演算処理部502を推定モードで稼働させる。これが図9Bにおける特定年代及び性別の被験者群のNN推定モード901bである。その上で、特定被験者群の近似関数パラメータ902をNN推定モード901bに読み込ませた上で、被験者102の年齢、健康診断結果、事前アンケート結果、計測中生体情報を評価データとして入力すると、NN推定モード901bは推定圧縮脳情報を出力する。
【0055】
図9Cは、被験者精神状態学習処理を示す概略図である。
先ず、NN演算処理部502を学習モードで稼働させる。これが図9Cにおける特定年代及び性別の被験者群のNN学習モード901cである。その上で、学習用被験者206の年齢、健康診断結果、事前アンケート結果、事後アンケート結果、計測中圧縮脳情報を学習データとしてNN学習モード901cに入力し、計測中精神状態をラベル(回答)としてNN学習モード901cに入力して、学習処理を行う。このとき、特定被験者群の近似関数パラメータ903が生成され、更新される。
【0056】
図9Dは、被験者精神状態推定処理を示す概略図である。
先ず、NN演算処理部502を推定モードで稼働させる。これが図9Dにおける特定年代及び性別の被験者群のNN推定モード901dである。その上で、特定被験者群の近似関数パラメータ903をNN推定モード901dに読み込ませた上で、被験者102の年齢、健康診断結果、事前アンケート結果、計測中精神状態を評価データとして入力すると、NN推定モード901dは推定精神状態情報を出力する。
【0057】
図10は、脳情報推定装置1001と精神状態推定装置1002の機能ブロック図である。
脳情報推定装置1001は、前述の図9Bに示した圧縮脳情報推定処理と同一である。
NN演算処理部502を推定モードで稼働させ、特定被験者群の近似関数パラメータ902をNN演算処理部502に読み込ませると、脳情報推定装置1001が構成される。脳情報推定装置1001に、被験者102の年齢、健康診断結果、事前アンケート結果、事後アンケート結果、計測中生体情報を評価データとして入力すると、脳情報推定装置1001は推定圧縮脳情報を出力する。
精神状態推定装置1002は、前述の図9Dに示した被験者精神状態推定処理と同一である。
【0058】
NN演算処理部502を推定モードで稼働させ、特定被験者群の近似関数パラメータ903をNN演算処理部502に読み込ませると、精神状態推定装置1002が構成される。精神状態推定装置1002に、被験者102の年齢、健康診断結果、事前アンケート結果、そして脳情報推定装置1001が出力した推定圧縮脳情報を評価データとして入力すると、精神状態推定装置1002は推定精神状態情報を出力する。
脳情報推定装置1001が出力する推定圧縮脳情報と、精神状態推定装置1002が出力する推定精神状態情報は、入出力制御部501によって所定の表示用加工が施された上で、端末106または表示部408に送られる。
【0059】
図11は、バイオフィードバック装置101の推定モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
処理を開始すると(S1101)、先ず、精神状態介入治験に先立ち、被験者102に事前アンケートを実施する(S1102)。
次に、被験者102に図示しない所定の生体情報取得用センサと、VRゴーグル103を装着して貰う(S1103)。
最初に、VRコンテンツV104を再生しない状態で、被験者102の初期状態時の生体情報を計測する(S1104)。
【0060】
これ以降(S1105からS1111)はループ処理である。
バイオフィードバック装置101のVRコンテンツ情報508からVRコンテンツV104を再生して、VR映像を表示、及び/またはVRゲームを実行する。そして、生体情報を計測する(S1106)。
1つのチャプターのVRコンテンツV104の再生が終わったら、VRコンテンツV104の再生を一旦停止し、被験者102にアンケートを実施する(S1107)。
生体情報とアンケート結果をAIに投入して、被験者102の圧縮脳情報610を推定する(S1108)。これが、脳情報推定装置1001の機能である。
【0061】
ステップS1108で取得した被験者102の推定圧縮脳情報とアンケート結果をAIに投入して、被験者102の精神状態を推定する(S1109)。これが、精神状態推定装置1002の機能である。
図示しないバイオフィードバック装置101の操作者は、推定した被験者102の精神状態に応じて、直前に再生したVRコンテンツV104を再度再生するか、別のVRコンテンツV104を再生すべきか、あるいは終了すべきかを判断する(S1110)。
以上、S1106からS1110までを、ステップS1110で終了すべきと判断するまで繰り返す(S1111)。そして、一連の処理を終了する(S1112)。
【0062】
なお、上述の図11に示したバイオフィードバック装置101の処理手順では、操作者、つまり人間の判断で、VRコンテンツV104の再生継続や停止等を選択したが、手順に定型化の傾向が明確になれば、推定圧縮脳情報及び推定精神状態情報の値に応じて、VRコンテンツV104の選択、再生継続、停止等をプログラムで制御することも可能である。
【0063】
本発明の実施形態では、脳情報推定装置1001、精神状態推定装置1002、バイオフィードバック装置101及び脳情報データベースを説明した。
本発明の実施形態に係るバイオフィードバック装置101は、VRコンテンツV104及び/またはVRゲームの再生を行うことによって、被験者102に対して精神的刺激を与えながら生体情報を取得する。すると、被験者102の生体情報と、被験者102の健康診断結果204及び生活環境アンケート結果205から、脳情報推定装置1001が有するDNNの機能によって、被験者102の圧縮脳情報を推定する。更にバイオフィードバック装置101は、推定した被験者102の脳情報と、健康診断結果204及び生活環境アンケート結果205から、精神状態推定装置1002が有するDNNの機能によって、被験者102の精神状態を推定する。
【0064】
脳情報推定装置1001は、学習用被験者206の年齢、事前アンケート結果、事後アンケート結果、計測中生体情報を学習データとして、そして圧縮脳情報610をラベル(回答)として、学習モードで稼働するNN演算処理部502に入力して、NN演算処理部502に学習処理を行うことで、構成される。
精神状態推定装置1002は、学習用被験者206の年齢、事前アンケート結果、事後アンケート結果、計測中圧縮脳情報を学習データとして、そして計測中精神状態をラベル(回答)として、学習モードで稼働するNN演算処理部502に入力して、NN演算処理部502に学習処理を行うことで、構成される。
【0065】
すなわち、被験者基本情報テーブル506と被験者計測情報テーブル507において、学習用被験者206の年齢、性別、健康診断結果、事前アンケート結果、事後アンケート結果、計測中生体情報、計測中脳情報が紐付けられており、被験者基本情報テーブル506と被験者計測情報テーブル507は、脳情報推定装置1001及び精神状態推定装置1002を構成するに必要な、脳情報データベースを構成する。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0067】
101…バイオフィードバック装置、102…被験者、103…VRゴーグル、105…ネットワーク、106…端末、201…fMRI装置、202…MRI画像ファイル群、203…計測時生体情報、204…健康診断結果、205…生活環境アンケート結果、206…学習用被験者、301…反射板、302…レンズ、303…プロジェクタ、401…CPU、402…ROM、403…RAM、404…不揮発性ストレージ、405…NIC、406…シリアルポート、407…RTC、408…表示部、409…操作部、410…バス、501…入出力制御部、502…NN演算処理部、503…脳情報圧縮演算処理部、504…精神状態判定処理部、505…被験者マスタ、506…被験者基本情報テーブル、507…被験者計測情報テーブル、508…VRコンテンツ情報、509…被験者AI係数テーブル、601…灰白質量算出部、605a、605b…平均値演算部、602…神経線維異方性算出部、603…大脳皮質領域間相互作用算出部、606…灰白質量データ群、607…灰白質量平均値、608…神経線維異方性データ群、609…神経線維異方性平均値、610…領域間相互作用データ群、611…領域間相互作用平均値、612…領域間反応性データ群、613…領域間反応性平均値、614…圧縮脳情報、901a、901c…NN学習モード、901b、901d…NN推定モード、902、903…近似関数パラメータ、1001…脳情報推定装置、1002…精神状態推定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11