(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035324
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】液圧駆動回路
(51)【国際特許分類】
F15B 11/028 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
F15B11/028 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142096
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】玄 相昊
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 友朗
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA10
3H089BB01
3H089BB14
3H089BB17
3H089CC01
3H089CC11
3H089DA02
3H089DA14
3H089DB43
3H089DB44
3H089DB46
3H089DB48
3H089DB49
3H089DB54
3H089DC06
3H089GG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液圧アクチュエータの高精度化と、高負荷動作時での高速性と、高効率化を実現することができる液圧駆動回路を提供する。
【解決手段】第1モジュール部3Aは、低圧供給流路10を通って供給された圧液を、所定分、増圧して供給するサブポンプ30Aと、サブポンプ30Aから吐出された圧液が通るサブポンプ流路37A,分岐流路38Aと、サブポンプ30Aにて所定分増圧された圧液が通る高圧供給流路39Aと、高圧供給流路39Aと、サブポンプ流路37A,分岐流路38Aとを連通させるか否かを切り換える第1切換弁31Aと、アクチュエータ供給流路11Aと、サブポンプ流路37Aとを連通させるか否かを切り換える第2切換弁32Aと、低圧供給流路10と、アクチュエータ供給流路11Aとがサブポンプ30Aを経由せず連通できるように、低圧供給流路10と、アクチュエータ供給流路11Aに接続される迂回流路35Aと、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧液を吐出するメインポンプと、
前記メインポンプから吐出された圧液が通る低圧供給流路と、
前記低圧供給流路に接続されるモジュール部と、
前記モジュール部より供給された圧液を液圧アクチュエータに供給するアクチュエータ供給流路と、を有し、
前記モジュール部は、
前記低圧供給流路を通って供給された圧液を、所定分、増圧して供給するサブポンプと、
前記サブポンプから吐出された圧液が通るサブポンプ流路と、
前記サブポンプにて所定分増圧された圧液が通る高圧供給流路と、
前記高圧供給流路と、前記サブポンプ流路とを連通させるか否かを切り換える第1切換弁と、
前記アクチュエータ供給流路と、前記サブポンプ流路とを連通させるか否かを切り換える第2切換弁と、
前記低圧供給流路と、前記アクチュエータ供給流路とが前記サブポンプを経由せず連通できるように、該低圧供給流路と、該アクチュエータ供給流路に接続される迂回流路と、を有し、
前記迂回流路には、逆止弁が設けられてなる液圧駆動回路。
【請求項2】
前記液圧アクチュエータを複数使用する場合、該複数の液圧アクチュエータに対して、前記モジュール部をそれぞれ用意し、並列に並べた上で、前記複数のモジュール部それぞれに前記低圧供給流路を接続させてなると共に、前記複数のモジュール部の高圧供給流路同士も接続させてなる請求項1に記載の液圧駆動回路。
【請求項3】
前記モジュール部を第1モジュール部とし、
前記第1モジュール部と異なる第2モジュール部を用意し、
前記第2モジュール部は、
前記低圧供給流路が逆止弁を介して前記アクチュエータ供給流路に接続され、
前記高圧供給流路と、前記アクチュエータ供給流路とを連通させる否かを切り換える切換弁が設けられ、
前記液圧アクチュエータを複数使用する場合、該複数の液圧アクチュエータに対して、前記第1モジュール部又は前記第2モジュール部をそれぞれ並列に並べた状態で、前記第1モジュール部及び前記第2モジュール部に前記低圧供給流路を接続させてなると共に、前記第1モジュール部及び前記第2モジュール部の高圧供給流路同士も接続させてなる請求項1又は2に記載の液圧駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧(油圧や水圧等)駆動機械に用いられる液圧駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧システムは、大出力が必要な機器や装置に広く用いられている。例えば、一般産業用マニピュレータ、油圧ショベルや特装車のロボットアームなどのロボット、航空機、宇宙機、或いは、トラクター等の農業機械などの走行車両等に用いられている。
【0003】
このような油圧システムとして、例えば、特許文献1に記載のようなものが知られている。この特許文献1に記載の発明は、液圧アクチュエータの一種であるシリンダと、ポンプが吐出する作動油をシリンダへ供給してシリンダを伸縮作動させるサーボ弁とを備えているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】西海孝夫、田中豊他、特集「油圧ハイブリッドの技術動向」、日本フルードパワー学会誌、Vol.41、no.4、pp.182-253、2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような油圧システムをロボットに適用させる場合、ロボットは、昨今多軸化していることから、軸毎に、シリンダとサーボ弁を用意する必要がある。この際、メインポンプから吐出された作動油が分岐して、各軸に用意されているシリンダとサーボ弁に供給されることとなる。それゆえ、メインポンプで必要な圧力と流量を全て賄う必要があることから、メインポンプのサイズとコストが増大する。しかも、多軸で用いる場合、想定される最高圧力に設定しなければならないことから、負荷圧が低い軸では消費エネルギーが増大し、その影響は液圧アクチュエータの数に比例して大きくなるといった問題があった。
【0007】
一方、非特許文献1に示すような技術も知られている。この非特許文献1に示す技術は、ポンプとアクチュエータを1対1とした電気静油圧アクチュエータ(EHA)を備えているものである。これは、バルブが存在しないためバルブによるエネルギー損失の問題を完全に解決することができ、適宜必要流量を供給するため、高効率に分散型のパワーマネジメントが可能となるというものである。
【0008】
しかしながら、この非特許文献1に示す技術は、応答性がサーボ弁駆動方式と比較して低いことや、必要なパワー・流量に比例してポンプとサーボモータを大きくしなければならず、液圧アクチュエータの数に比例してサイズとコストが増大するといった問題があった。
【0009】
また、本出願人は、まだ未公開であるが特願2020-161592号という出願を行っている。この出願は、メインポンプと、4つの低コストバルブと、サブポンプをシリンダの流入、流出ポートに接続した油圧回路を提案しているものである。この発明は、高速性と高精度性をハイブリッドかつ低コストの実現を可能としたものである。しかしながら、バルブ数が多いことによるサイズの増大や、低コストバルブ使用による低応答性、サブポンプの容積が小さいことに起因する高負荷動作時での低速度に、未だ改良の余地があるといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、液圧アクチュエータの高精度化と、高負荷動作時での高速性と、高効率化を実現することができる液圧駆動回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1に係る液圧駆動回路は、圧液を吐出するメインポンプ(2)と、
前記メインポンプ(2)から吐出された圧液が通る低圧供給流路(10)と、
前記低圧供給流路(10)に接続されるモジュール部(第1モジュール部3A,3AA)と、
前記モジュール部(第1モジュール部3A,3AA)より供給された圧液を液圧アクチュエータ(5)に供給するアクチュエータ供給流路(11A)と、を有し、
前記モジュール部(第1モジュール部3A,3AA)は、
前記低圧供給流路(10)を通って供給された圧液を、所定分、増圧して供給するサブポンプ(30A)と、
前記サブポンプ(30A)から吐出された圧液が通るサブポンプ流路(37A,分岐流路38A)と、
前記サブポンプ(30A)にて所定分増圧された圧液が通る高圧供給流路(39A)と、
前記高圧供給流路(39A)と、前記サブポンプ流路(37A,分岐流路38A)とを連通させるか否かを切り換える第1切換弁(31A,切換弁31AA)と、
前記アクチュエータ供給流路(11A)と、前記サブポンプ流路(37A)とを連通させるか否かを切り換える第2切換弁(32A,切換弁31AA)と、
前記低圧供給流路(10)と、前記アクチュエータ供給流路(11A)とが前記サブポンプ(30A)を経由せず連通できるように、該低圧供給流路(10)と、該アクチュエータ供給流路(11A)に接続される迂回流路(35A)と、を有し、
前記迂回流路(35A)には、逆止弁(第2逆止弁34A)が設けられてなることを特徴としている。
【0013】
請求項2に係る液圧駆動回路は、上記請求項1に記載の液圧駆動回路(1,1A)において、前記液圧アクチュエータ(5)を複数使用する場合、該複数の液圧アクチュエータ(5)に対して、前記モジュール部(第1モジュール部3A,3AA)をそれぞれ用意し、並列に並べた上で、前記複数のモジュール部(第1モジュール部3A,3AA)それぞれに前記低圧供給流路(10)を接続させてなると共に、前記複数のモジュール部(第1モジュール部3A,3AA)の高圧供給流路(39A)同士も接続させてなることを特徴としている。
【0014】
請求項3に係る液圧駆動回路は、上記請求項1又は2に記載の液圧駆動回路(1,1A)において、前記モジュール部を第1モジュール部(3A,3AA)とし、
前記第1モジュール部(3A,3AA)と異なる第2モジュール部(3B)を用意し、
前記第2モジュール部(3B)は、
前記低圧供給流路(10)が逆止弁(30B)を介して前記アクチュエータ供給流路(11B)に接続され、
前記高圧供給流路(39A)と、前記アクチュエータ供給流路(11B)とを連通させる否かを切り換える切換弁(31B)が設けられ、
前記液圧アクチュエータ(5)を複数使用する場合、該複数の液圧アクチュエータ(5)に対して、前記第1モジュール部(3A,3AA)又は前記第2モジュール部(3B)をそれぞれ並列に並べた状態で、前記第1モジュール部(3A,3AA)及び前記第2モジュール部(3B)に前記低圧供給流路(10)を接続させてなると共に、前記第1モジュール部(3A,3AA)及び前記第2モジュール部(3B)の高圧供給流路(39A)同士も接続させてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
請求項1に係る発明によれば、液圧アクチュエータ(5)に供給される圧液が所定圧(P0)以内であれば、サブポンプ(30A)を停止又はアイドリングさせ、メインポンプ(2)のみを駆動させるようになっている。これにより、例えば、サーボ弁(4)によって高応答、且つ、高速運動を実現することができ、もって、液圧アクチュエータ(5)は、公知の油圧サーボ技術と同等の性能を発揮することができる。
【0017】
また、液圧アクチュエータ(5)に供給される圧液が所定圧(P0)以上であれば、サブポンプ(30A)を用いて、増圧するようにしている。これにより、複数の液圧アクチュエータ(5)に適用するにあたって、複数のモジュール部(第1モジュール部3A,3AA)を、それぞれ、低圧供給流路(10)に接続させれば、所定圧(P0)は共通の圧力となる。それゆえ、サブポンプ(30A)よって、局所的に圧液が増圧されても、他の液圧アクチュエータ(5)とは非干渉であることから、従来のようなエネルギーロスを回避することが可能となる。
【0018】
さらに、複数の液圧アクチュエータ(5)に適用するにあたって、複数のモジュール部(第1モジュール部3A,3AA)の高圧供給流路(39A)同士を接続させれば、高負荷動作時に、1個のサブポンプ(30A)だけでは吐出流量が不足する場合、複数のサブポンプ(30A)から吐出される流量を、高圧供給流路(39A)を通して合流させ、それを複数の液圧アクチュエータ(5)で利用することができる。これにより、サブポンプ(30A)が小型であることに起因する流量不足問題を解決することができ、もって、高負荷動作時での高速性と、高効率化を実現することが可能となる。
【0019】
しかして、本発明によれば、液圧アクチュエータ(5)の高精度化と、高負荷動作時での高速性と、高効率化を実現することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、液圧アクチュエータ(5)を複数使用する場合、該複数の液圧アクチュエータ(5)に対して、モジュール部(第1モジュール部3A,3AA)をそれぞれ用意し、並列に並べた上で、複数のモジュール部(第1モジュール部3A,3AA)それぞれに低圧供給流路(10)を接続させてなると共に、複数のモジュール部(第1モジュール部3A,3AA)の高圧供給流路(39A)同士も接続させているから、効率的に配置することができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、液圧アクチュエータ(5)を複数使用する場合、第1モジュール部(3A,3AA)と、第2モジュール部(3B)を混在させて使用するようにすれば、サブポンプ(30A)が不要な液圧アクチュエータ(5)にまで、サブポンプ(30A)を設ける必要がなくなり、もって、サブポンプ(30A)の数を最小限に抑えることが可能となるから、より高効率化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液圧駆動回路の回路図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る液圧駆動回路の回路図である。
【
図3】(a)は同実施形態に係る液圧駆動回路を2関節シリアルマニピュレータに適用させる場合を説明するための説明図、(b)は2関節シリアルマニピュレータの先端位置の軌道を示す図である。
【
図4】(a)は
図3(a)に示す第1関節J1の角度の軌道を示す図であり、(b)は
図3(a)に示す第2関節J2の角度の軌道を示す図である。
【
図5】第1関節における流量と圧力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る液圧駆動回路の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0024】
本実施形態における液圧駆動回路は、一般産業用マニピュレータ、油圧ショベルや特装車のロボットアームなどのロボット、航空機、宇宙機、或いは、トラクター等の農業機械などの走行車両等に用いられるものである。具体的には、
図1に示すように、液圧駆動回路1は、メインポンプ2と、第1モジュール部3Aと、第2モジュール部3Bと、サーボ弁4と、液圧アクチュエータ5と、で主に構成されている。以下、各構成について詳しく説明することとする。
【0025】
<メインポンプの説明>
メインポンプ2は、
図1に示すサーボモータM1によって駆動され、メインポンプ2に接続されている低圧供給流路10へ低圧の圧液を吐出する。この圧液は、例えば、作動油からなり、
図1に示すタンクTに貯留されている。これにより、メインポンプ2は、サーボモータM1によって駆動されると、タンクTから圧液を吸入し、低圧供給流路10へ低圧の圧液を吐出することとなる。
【0026】
<第1モジュール部の説明>
第1モジュール部3Aは、
図1に示すように、サブポンプ30Aと、第1切換弁31Aと、第2切換弁32Aと、第1逆止弁33Aと、第2逆止弁34Aと、で主に構成されている。サブポンプ30Aは、
図1に示すサーボモータM2によって駆動され、メインポンプ2より吐出された圧液を所定分、増圧できるものである。より詳しく説明すると、
図1に示すように、低圧供給流路10には、接続点10aを経由して、迂回流路35Aが接続されている。そして、この迂回流路35Aには、分岐点35Aaを経由して、分岐流路36Aが接続されている。この分岐流路36Aは、サブポンプ30Aに接続されていることから、メインポンプ2より吐出された圧液が、低圧供給流路10と、迂回流路35Aと、さらに、分岐流路36Aとを通って、サブポンプ30Aに供給されることとなる。これにより、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aが駆動されると、低圧供給流路10と、迂回流路35Aと、さらに、分岐流路36Aとを通って供給された圧液が増圧され、サブポンプ30Aに接続されているサブポンプ流路37Aへ吐出されることとなる。このサブポンプ流路37Aは、
図1に示すように、分岐点37Aaを経由して、分岐流路38Aに接続されると共に、第2切換弁32Aに接続されている。なお、このサブポンプ流路37Aには、分岐点37Aaとサブポンプ30Aとの間に第1逆止弁33Aが設けられている。
【0027】
第1切換弁31Aは、2位置2ポート切換弁であって、
図1に示すように、供給ポート31Aaが分岐流路38Aに、出力ポート31Abが高圧供給流路39Aに接続されている。しかして、このような第1切換弁31Aは、詳しくは図示しないが、ソレノイドによって駆動されるスプールを備えており、そのスプールの位置によって、供給ポジションと、遮断ポジションに変化させることができる。供給ポジションでは、分岐流路38Aが接続点39Aaを経由して高圧供給流路39Aに接続され、遮断ポジションでは、分岐流路38Aと高圧供給流路39Aとの接続を遮断するようになっている。これにより、第1切換弁31Aによって、分岐流路38Aと高圧供給流路39Aとを連通させるか否かを切り換えることが可能となる。
【0028】
第2切換弁32Aは、2位置2ポート切換弁であって、
図1に示すように、供給ポート32Aaがサブポンプ流路37Aに、出力ポート32Abがアクチュエータ供給流路11Aに接続されている。しかして、このような第2切換弁32Aは、詳しくは図示しないが、ソレノイドによって駆動されるスプールを備えており、そのスプールの位置によって、供給ポジションと、遮断ポジションに変化させることができる。供給ポジションでは、サブポンプ流路37Aがアクチュエータ供給流路11Aに接続され、遮断ポジションでは、サブポンプ流路37Aとアクチュエータ供給流路11Aとの接続を遮断するようになっている。これにより、第2切換弁32Aによって、サブポンプ流路37Aとアクチュエータ供給流路11Aとを連通させるか否かを切り換えることが可能となる。
【0029】
一方、迂回流路35Aは、
図1に示すように、接続点11Aaを経由して、アクチュエータ供給流路11Aに接続されている。そして、この迂回流路35Aには、接続点11Aaと分岐点35Aaとの間に第2逆止弁34Aが設けられている。
【0030】
かくして、上記のように構成される第1モジュール部3Aは、以下のように動作することとなる。すなわち、メインポンプ2を、
図1に示すサーボモータM1によって駆動させると、メインポンプ2より吐出された圧液が、低圧供給流路10と、迂回流路35Aと、さらに、分岐流路36Aとを通って、サブポンプ30Aに供給されることとなる。サブポンプ30Aが、アイドリング又は停止していた際、供給された圧液は、その場で滞留した状態となる。そのため、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0031】
一方、
図1に示すサーボモータM2によって、サブポンプ30Aが駆動されると、滞留していた圧液が、サブポンプ30Aによって、サブポンプ流路37Aへ吐出される。この際、第1切換弁31Aが供給ポジションに位置していれば、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液が分岐流路38Aを通って高圧供給流路39Aに流れることとなる。さらに、この際、他の第1モジュール部3Aによって生成された圧液が、高圧供給流路39Aを通ってサブポンプ流路37Aへ流れ込むこともある。なお、この点の詳細は後述することとする。
【0032】
また、第2切換弁32Aが供給ポジションに位置していれば、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0033】
ところで、第2切換弁32Aが供給ポジションに位置していた際、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなるが、それは以下の理由によるものである。すなわち、サブポンプ30Aによって、サブポンプ流路37Aへ圧液が吐出された際、差圧(Pbst)が発生し、その吐出圧は、メインポンプ2より吐出される圧力(P0)を必ず超える圧力(P0+Pbst)となる。そのため、第2切換弁32Aが供給ポジションに位置していた際、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液の方が、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液より、圧力が優勢になる。それゆえ、メインポンプ2より吐出された圧液はせき止められ、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。この際、せき止められたメインポンプ2より吐出された圧液が、サブポンプ30A側に流れ込みメインポンプ2に逆流しないように第1逆止弁33Aが設けられ、さらに、迂回流路35A側からメインポンプ2に逆流しないように第2逆止弁34Aが設けられている。
【0034】
なお、
図1に示す符号40Aは、第3逆止弁であって、後述する共通排出流路13を流れる圧液を低圧供給流路10に流す役割を担うものである。これにより、メインポンプ2が利用できない場合に、サブポンプ30Aが、共通排出流路13から圧液を吸い上げることが可能となる。
【0035】
<第2モジュール部の説明>
第2モジュール部3Bは、従来周知の構成からなるもので、
図1に示すように、逆止弁30Bと、切換弁31Bと、で主に構成されている。
図1に示すように、低圧供給流路10には、接続点10bを経由してアクチュエータ供給流路11Bが接続されており、このアクチュエータ供給流路11Bには、分岐点11Baを経由して、分岐流路32Bが接続されている。そして、このアクチュエータ供給流路11Bには、分岐点11Baと接続点10bとの間に逆止弁30Bが設けられている。
【0036】
切換弁31Bは、2位置2ポート切換弁であって、
図1に示すように、供給ポート31Baが分岐流路32Bに、出力ポート31Bbが高圧供給流路39Aに接続されている。しかして、このような切換弁31Bは、詳しくは図示しないが、ソレノイドによって駆動されるスプールを備えており、そのスプールの位置によって、供給ポジションと、遮断ポジションに変化させることができる。供給ポジションでは、分岐流路32Bが接続点39Abを経由して高圧供給流路39Aに接続され、遮断ポジションでは、分岐流路32Bと高圧供給流路39Aとの接続を遮断するようになっている。これにより、切換弁31Bによって、分岐流路32Bと高圧供給流路39Aとを連通させるか否かを切り換えることが可能となる。
【0037】
<サーボ弁の説明>
サーボ弁4は、
図1に示すように、3位置4ポートのサーボ弁であって、供給ポート4aがアクチュエータ供給流路11A,11Bに、排出ポート4bが排出流路12に、制御ポート4cが、液圧アクチュエータ5の収縮側室5aに、制御ポート4dが、液圧アクチュエータ5の伸長側室5bに、それぞれ連通されている。なお、排出流路12は、
図1に示すように、共通排出流路13に接続されており、この共通排出流路13は、タンクTに接続されている。これにより、排出された圧液をタンクTに戻すようになっている。
【0038】
また、サーボ弁4は、詳しくは図示しないが、ソレノイドによって駆動されるスプールを備えており、スプールの位置によって伸側供給ポジションから縮側供給ポジションまで流路と開口面積を連続的かつ高応答に変化させることができるようになっている。しかして、このようなサーボ弁4は、伸側供給ポジションでは、収縮側室5aを排出流路12へへ連通すると共に、伸長側室5bを、アクチュエータ供給流路11A,11Bへ連通する。そして、縮側供給ポジションでは、収縮側室5aをアクチュエータ供給流路11A,11Bへ連通すると共に、伸長側室5bを、排出流路12へ連通する。そしてさらに、遮断ポジションでは、収縮側室5aと伸長側室5bを、アクチュエータ供給流路11A,11Bと、排出流路12の双方への連通を阻止する。他方、サーボ弁4は、伸側供給ポジションと縮側供給ポジションとのそれぞれで通過流量の調整ができるようになっている。なお、このようなサーボ弁4は、応答性が良いことが知られており、負荷が急激にかかっても、圧液を逃がしたり、ブレーキをかけたりすることができるようになっている。
【0039】
<液圧アクチュエータの説明>
液圧アクチュエータ5は、例えば、シリンダからなり、
図1に示すように、チューブ50と、チューブ50内に移動自在に挿入されるとともにチューブ50内を収縮側室5aと伸長側室5bとに区画するピストン51と、チューブ50内に移動自在に挿入されるとともにピストン51に連結されるロッド52とを備えている。しかして、このように構成される液圧アクチュエータ5は、アクチュエータ供給流路11A,11Bを通って供給された圧液が、チューブ50内へ供給されることによって伸縮動作することとなる。具体的には、上述したサーボ弁4の制御によって、アクチュエータ供給流路11A,11Bを通って供給された圧液が、収縮側室5aへ供給され、伸長側室5bが排出流路12へ連通されると、液圧アクチュエータ5は収縮動作することとなる。そして、反対に、上述したサーボ弁4の制御によって、アクチュエータ供給流路11A,11Bを通って供給された圧液が、伸長側室5bへ供給されて、収縮側室5aが排出流路12へ連通されると、液圧アクチュエータ5は伸長動作することとなる。
【0040】
かくして、上記のように構成される液圧アクチュエータ5を、
図1に示すように複数使用する場合、複数の液圧アクチュエータ5に対し、それぞれ、サーボ弁4と、第1モジュール部3Aとを用意し、さらに、その複数の液圧アクチュエータ5の1つの液圧アクチュエータ5に対し、サーボ弁4と、第2モジュール部3Bとを用意する。そして、このようなサーボ弁4と、第1モジュール部3Aと、第2モジュール部3Bとを、並列に並べた上で、複数の第1モジュール部3Aと、第2モジュール部3Bとを、それぞれ、低圧供給流路10に接続すると共に、高圧供給流路39Aに接続する。
【0041】
しかして、このようにして、
図1に示す液圧駆動回路1が構成されることとなる。
【0042】
<液圧駆動回路の動作説明>
ところで、上記のように構成される液圧駆動回路1は、次のように使用される。すなわち、この液圧駆動回路1は、5つの動作モードで動作することとなる。以下、各動作モードについて説明することとする。
【0043】
<N-modeの説明>
第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを遮断ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジション又は遮断ポジションに位置させる。そして、サブポンプ30Aの駆動を停止又はアイドリングさせる。これにより、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。これを、Nomal Mode(N-mode)と呼ぶ。
【0044】
このような、N-modeでは、液圧アクチュエータ5の負荷が低いときに、一般的なサーボ弁駆動回路と同様、高い応答性を確保することができる。また、メインポンプ2の流量が十分である場合、各液圧アクチュエータ5は、サーボ弁4の最大流量の範囲内で高速に動作可能である。なお、メインポンプ2より吐出される圧力(P0)の設定の目安は様々であるが、例えば、ロボットアームの重力を補償するのに必要な値とすれば良い。
【0045】
ところで、第2モジュール部3Bは、
図1に示すように、サブポンプ30Aが存在しないため、メインポンプ2より吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Bに流れることとなる。
【0046】
<DB-modeの説明>
第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを遮断ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジションに位置させる。そして、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aを駆動させる。これにより、上記説明したように、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液(メインポンプ2より吐出される圧力(P0)以上の高い圧力を有する)がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。それゆえ、第1モジュール部3A毎に、サブポンプ30Aの吐出圧を異なる値に設定すれば、独立した圧力を設定することが可能となる。そのため、これをDecoupled Boost Mode(DB-Mode)と呼ぶ。
【0047】
このような、DB-modeでは、液圧アクチュエータ5の負荷が高いにときに有効である。ただし、上記説明したように、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液は、せき止められるため、上記説明したN-modeと異なり、サーボ弁4に供給される流量は、各サブポンプ30Aの最大吐出流量に制限されることとなる。
【0048】
なお、第2モジュール部3Bは、
図1に示すように、サブポンプ30Aが存在しないため、DB-modeの動作をさせることはできない。
【0049】
<SB-modeの説明>
第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを供給ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジションに位置させる。そして、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aを駆動させる。これにより、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れると共に、分岐流路38Aを通って高圧供給流路39Aに流れることとなる。また、この際、高圧供給流路39Aに流れ込んだ圧液は、他の第1モジュール部3Aの状態によって、他の第1モジュール部3Aの分岐流路38Aを通ってサブポンプ流路37Aへ流れ込み、もって、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。なお、他の第1モジュール部3Aの状態とは、第1切換弁31Aを供給ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジションに位置させ、そして、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aを駆動させている状態をいう。また、言うまでもないが、この他の第1モジュール部3Aでも、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れると共に、分岐流路38Aを通って高圧供給流路39Aに流れることにもなる。
【0050】
しかして、このような動作を行わせるようにすれば、高圧供給流路39Aに接続されている複数のサブポンプ30Aの合計流量を1つ以上のサーボ弁4へ供給することが可能となる。それゆえ、複数のサブポンプ30Aが吐出する高圧の流量を他の第1モジュール部3Aとシェアすることができることから、これをShared Boost Mode(SB-mode)と呼ぶ。ただし、高圧供給流路39Aの圧力は、最高圧に唯一定まることとなる。すなわち、2つ以上の異なる圧力を実現することはできない。そのため、2つ以上の圧力が必要なときは、第1モジュール部3Aを2つ以上のグループに分け、グループ間の高圧供給流路39Aにプラグを挿入する等して遮断するようにすれば良い。このようにすれば、システムサイズや配管を替えずに簡単に2つ以上の異なる圧力を実現することが可能となる。
【0051】
一方、上記のように合流された圧液が、どの液圧アクチュエータ5で使用されるのかは、各液圧アクチュエータ5に接続されているそれぞれのサーボ弁4の開度によって決定されることとなる。
【0052】
なお、第2モジュール部3Bは、
図1に示すように、サブポンプ30Aが存在しないため、SB-modeの動作をさせることはできない。
【0053】
<AB-modeの説明>
第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを供給ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを遮断ポジションに位置させる。そして、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aを駆動させる。これにより、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液が分岐流路38Aを通って全て高圧供給流路39Aに流れることとなる。これを、Assisted Boost Mode(AB-mode)と呼ぶ。このモードは、特定の液圧アクチュエータ5に高圧で大流量の圧液を供給するときに有効である。
【0054】
ところで、AB-modeに設定されている第1モジュール部3Aは、第2切換弁32Aが遮断ポジションに位置しているから、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0055】
なお、第2モジュール部3Bは、
図1に示すように、サブポンプ30Aが存在しないため、AB-modeの動作をさせることはできない。
【0056】
<PTO-modeの説明>
第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを供給ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジションに位置させる。そして、サブポンプ30Aの駆動を停止又はアイドリングさせる。すなわち、SB-modeにおいて、サブポンプ30Aの駆動を停止又はアイドリングさせたものが、Power-Take-OffMode(PTO-mode)である。このとき、第2モジュール部3Bの切換弁31Bを供給ポジションに位置させておけば、PTO-modeに設定された第1モジュール部3Aの高圧供給流路39Aに流れ込んだ高圧の圧液が分岐流路32Bに流れる込むこととなる。この際、分岐流路32Bに流れ込んだ高圧の圧液の方が、メインポンプ2より吐出された圧液より、圧力が優勢となるから、メインポンプ2より吐出された圧液はせき止められ、分岐流路32Bに流れ込んだ高圧の圧液が、アクチュエータ供給流路11Bに流れることとなる。この際、せき止められたメインポンプ2より吐出された圧液が、メインポンプ2に逆流しないように逆止弁30Bが設けられている。
【0057】
かくして、第2モジュール部3Bは、基本的に低圧の圧液で動作させ、ごくまれに、高圧の圧液で動作させたい場合に有用である。
【0058】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、N-modeにおいて、圧力P0内の負荷においては、サブポンプ30Aを停止又はアイドリングさせ、メインポンプ2のみを駆動させているから、サーボ弁4によって高応答、且つ、高速運動を実現することができる。これにより、液圧アクチュエータ5は、公知の油圧サーボ技術と同等の性能を発揮することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、DB-modeにおいて、圧力P0以上の負荷に対しては、サブポンプ30Aを用いて、増圧するようにしている。これにより、複数の液圧アクチュエータ5に適用するにあたって、複数の第1モジュール部3Aは、それぞれ、低圧供給流路10に接続され、さらに、排出流路12は、共通排出流路13に接続されているから、圧力P0は共通の圧力となる。それゆえ、サブポンプ30Aよって、局所的に圧液が増圧されても、他の液圧アクチュエータ5とは非干渉であることから、従来のようなエネルギーロスを回避することが可能となる。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、高負荷動作時に、1個のサブポンプ30Aだけでは吐出流量が不足する場合、SB-modeやAB-modeを用いて、複数のサブポンプ30Aから吐出される流量を、高圧供給流路39Aを通して合流させ、それを複数の液圧アクチュエータ5で利用することができる。これにより、サブポンプ30Aが小型であることに起因する流量不足問題を解決することができ、もって、高負荷動作時での高速性と、高効率化を実現することが可能となる。
【0061】
しかして、本実施形態によれば、液圧アクチュエータ5の高精度化と、高負荷動作時での高速性と、高効率化を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、第1モジュール部3Aは、従来の構造である第2モジュール部3Bに、第1切換弁31A又は第2切換弁32A、そして、サブポンプ30Aを組み込めば良いだけの上位互換の構造になっている。さらに、第1モジュール部3Aは、モジュラー構造になっている。これにより、コンパクト化が可能となり、もって、多軸ロボットの駆動源として好適となる。すなわち、通常のサーボ弁駆動回路やEHAをシリアルマニピュレータに適用する場合、近位部の液圧アクチュエータが遠位部の液圧アクチュエータよりも大きくなることが多い。それゆえ、それに合わせて、サイズの異なるポンプやモータが混在するとシステムは総じて大型化し易い。そこで、本実施形態においては、第1モジュール部3Aを、モジュラー構造にすることにより、コンパクト化を実現している。
【0063】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、サーボモータM1、サーボモータM2を使用する例を示したが、それに限らず、モータであればどのようなものを用いても良い。
【0064】
また、本実施形態においては、サーボ弁4を例示したが、それに限らず、比例弁や方向切換弁、絞り弁等どのようなものを用いても良い。
【0065】
また、本実施形態においては、液圧駆動回路1として、複数の第1モジュール部3Aと、1つの第2モジュール部3Bとで構成するようにしたが、第1モジュール部3Aと第2モジュール部3Bとの組み合わせは自由であり、順番も自由である。例えば、複数の第1モジュール部3Aだけで、構成しても良く、第2モジュール部3Bを複数設けるようにしても良い。ただし、第1モジュール部3Aは、最低1つは備えておく必要がある。なお、第2モジュール部3Bを設けておけば、基本的に低圧の圧液で動作させ、ごくまれに、高圧の圧液で動作させたい場合に有用である。さらに、第2モジュール部3Bを設けることで、サブポンプ30Aが不要な液圧アクチュエータ5にまで、サブポンプ30Aを設ける必要がなくなり、もって、サブポンプ30Aの数を最小限に抑えることが可能となるから、より高効率化を実現することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、第1逆止弁33Aを設ける例を示したが、サブポンプ30Aの回転を確実に停止させる手段があれば、設けなくとも良い。
【0067】
また、本実施形態においては、複数の液圧アクチュエータ5を使用する場合、複数の液圧アクチュエータ5に対し、それぞれ、サーボ弁4と、第1モジュール部3Aとを用意し、さらに、その複数の液圧アクチュエータ5の1つの液圧アクチュエータ5に対し、サーボ弁4と、第2モジュール部3Bとを用意する。そして、このようなサーボ弁4と、第1モジュール部3Aと、第2モジュール部3Bとを、並列に並べた上で、複数の第1モジュール部3Aと、第2モジュール部3Bとを、それぞれ、低圧供給流路10に接続すると共に、高圧供給流路39Aに接続するようにしている。しかしながら、それに限らず、上記説明した5つの動作モードが行えるのであれば、どのように配置しても良い。ただ、本実施形態のように配置した方が、効率的に配置することができるため好ましい。
【0068】
また、本実施形態においては、第3逆止弁40Aを設ける例を示したが、それに限らず、設けなくとも良い。しかしながら、単軸毎に独立して動作するモジュラーロボットに液圧駆動回路1を適用する場合、第3逆止弁40Aを設けた方が好ましい。すなわち、本実施形態における各第1モジュール部3Aは、一つのユニットにスタックされているが、当然ながら、別々の場所に置いて、配管によって接続することも可能である。これは、例えば、「杉本隼一, 上倉定幸, 齊藤靖, 玄相昊, 単関節モジュールを用いた分解組立が容易な油圧ロボットの開発, 第37回日本ロボット学会学術講演会(2019年9月3日~7日)」にて示されたような、単軸毎に独立して動作するモジュラーロボットに内蔵する場合に有効である。この際、単独で動作させるために、液圧駆動回路1に第3逆止弁40Aを設けた方が好ましい。
【0069】
また、本実施形態においては、第1切換弁31A及び第2切換弁32Aを用いて流路を切り換えるようにしたが、第1切換弁31A及び第2切換弁32Aに代え、3位置4ポート切換弁を用いて、同一の機能を実現させるようにしても良い。具体的に例示すると、
図2に示すような構成となる。以下、この
図2に示す液圧駆動回路1Aについて説明することとする。なお、この
図2に示す液圧駆動回路1Aを説明するにあたり、
図1に示す液圧駆動回路1と同一構成については、同一の符号を付し、説明は省略することとする。
【0070】
図2に示す液圧駆動回路1Aの第1モジュール部3AAは、第1モジュール部3Aの第1切換弁31A及び第2切換弁32Aに代え、切換弁31AAを用いている。この点が相違するだけで、その他の構成は同一である。
【0071】
切換弁31AAは、3位置4ポート切換弁であって、詳しくは図示しないが、ソレノイドによって駆動されるスプールを備えており、スプールの位置によって、流路を切り換えられるようになっている。具体的には、スプールが
図2に示す真ん中に位置していた場合、サブポンプ流路37Aがアクチュエータ供給流路11Aに接続されると共に、高圧供給流路39Aに接続されることとなる。さらに、スプールが
図2に示す右側に位置していた場合、サブポンプ流路37Aがアクチュエータ供給流路11Aに接続され、高圧供給流路39Aとの接続は遮断されることとなる。そしてさらに、スプールが
図2に示す左側に位置していた場合、サブポンプ流路37Aが高圧供給流路39Aに接続され、アクチュエータ供給流路11Aとの接続は遮断されることとなる。
【0072】
しかして、このように3位置4ポート切換弁を用いたとしても、第1切換弁31A及び第2切換弁32Aと同一の機能を実現させることができる。
【0073】
<実施例>
ここで、実施例を用いて、本発明を更に詳しく説明することとする。
図3(a)は、2関節シリアルマニピュレータJを例示しており、この2関節シリアルマニピュレータJは、肩の関節に相当する第1関節J1と、肘に相当する第2関節J2とを備えている。この第1関節J1と、第2関節J2を動作させるにあたって、本実施例においては、液圧駆動回路1として、2つの第1モジュール部3Aを用いて動作させることとする。
【0074】
この実施例においては、
図3(a)に示すワークWを矢印Y1方向に持ち上げる動作を5秒間させる動作を例に説明する。この動作では、
図3(b)及び
図4に示すように、Phase1~5の5つのフェーズに分けることができる。なお、
図3(b)は、2関節シリアルマニピュレータJの先端位置の軌道を示すものであり、
図4(a)は、第1関節J1の角度の軌道を示すものであり、
図4(b)は、第2関節J2の角度の軌道を示すものである。以下、Phase1~5について詳細に説明する。
【0075】
<Phase1(0~1秒)について>
Phase1では、
図4(a)に示すように、第1関節J1の角度は狭まり、
図4(b)に示すように、第2関節J2の角度は広がっていることから、第1関節J1及び第2関節J2ともに高い圧力が必要である。そのため、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3A、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3A共々、DB-modeで動作させる。すなわち、第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを遮断ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジションに位置させる。そして、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aを駆動させる。これにより、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液(メインポンプ2より吐出される圧力(P
0)以上の高い圧力を有する)がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。具体的には、
図5に示す圧力P
0+Pbst、流量ΔQの範囲の圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。なお、Phase1では、サブポンプ30Aとサーボ弁4が協調して、液圧アクチュエータ5の位置を制御することによって、絞り捨てを最小限に抑えている。具体的には、サブポンプ30Aが液圧アクチュエータ5の所望の速度を達成するために、必要な入口流量を生成し、その後、サーボ弁4が実際の圧力降下を利用して出口流量を制御するようにしている。なお、
図5は、第1関節J1における流量と圧力の関係を示している。
【0076】
<Phase2(1~2秒)について>
Phase2では、
図4(a)に示すように、第1関節J1の角度はさらに狭まり、
図4(b)に示すように、第2関節J2の角度は狭まっていることから、第1関節J1は、正の高いパワーを必要とし、第2関節J2は、負のパワーを必要としている。そのため、第1関節J1は、サブポンプ30A単体では十分な流量が得られないことから、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aは、SB-modeで動作させる。一方、第2関節J2は、メインポンプ2からパワーが供給されることで、サーボ弁4の絞りで簡単に背圧を立たせることができるため、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aは、AB-modeで動作させる。
【0077】
すなわち、SB-modeでは、第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを供給ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジションに位置させる。そして、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aを駆動させる。一方、AB-modeでは、第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを供給ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを遮断ポジションに位置させる。そして、サーボモータM2によって、サブポンプ30Aを駆動させる。それゆえ、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aは、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液が分岐流路38Aを通って全て高圧供給流路39Aに流れることとなる。それゆえ、高圧供給流路39Aに流れた圧液は、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aの分岐流路38Aを通ってサブポンプ流路37Aへ流れ込み、もって、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。そのため、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aのサブポンプ30Aにて吐出された圧液に加え、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aのサブポンプ30Aにて吐出された圧液を加わって流れることとなる。具体的には、
図5に示す圧力P
0+Pbst、流量2ΔQの範囲の圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0078】
一方、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aは、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0079】
<Phase3(2~3秒)について>
Phase3では、
図3(b)に示すように、2関節シリアルマニピュレータJの先端位置が最も高い位置に位置しており、さらに、
図4(a)に示すように、第1関節J1の角度は保持され、
図4(b)に示すように、第2関節J2の角度も保持されていることから、第1関節J1及び第2関節J2ともに高い圧力が必要である。そのため、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3A、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3A共々、DB-modeで動作させる。これにより、サブポンプ流路37Aへ吐出された圧液(メインポンプ2より吐出される圧力(P
0)以上の高い圧力を有する)がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。具体的には、
図5に示す圧力P
0+Pbst、流量ΔQの範囲の圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0080】
<Phase4(3~4秒)について>
Phase4では、
図4(a)に示すように、第1関節J1の角度は、Phase2と反転し、
図4(b)に示すように、第2関節J2の角度も、Phase2と反転している。それゆえ、Phase2の動作方法を反転させ、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aは、AB-modeで動作させ、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aは、SB-modeで動作させる。これにより、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aは、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。具体的には、
図5に示す圧力P
0、流量Q
0の範囲の圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0081】
一方、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aのサブポンプ30Aにて吐出された圧液に加え、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3Aのサブポンプ30Aにて吐出された圧液を加わって流れることとなる。
【0082】
<Phase5(4~5秒)について>
Phase5では、
図3(b)に示すように、2関節シリアルマニピュレータJの先端位置が最も低い位置(元の位置)に位置していることから、第1関節J1及び第2関節J2ともに低負荷である。そのため、第1関節J1を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3A、第2関節J2を動作させる液圧アクチュエータ5に対応する第1モジュール部3A共々、N-modeで動作させる。それゆえ、第1モジュール部3Aの第1切換弁31Aを遮断ポジションに位置させ、第2切換弁32Aを供給ポジション又は遮断ポジションに位置させる。そして、サブポンプ30Aの駆動を停止又はアイドリングさせる。これにより、迂回流路35A側を通ったメインポンプ2より吐出された圧液が、アクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。具体的には、
図5に示す圧力P
0、流量Q
0の範囲の圧液がアクチュエータ供給流路11Aに流れることとなる。
【0083】
しかして、上記の実施例で説明したように、本実施形態においては、上記のように動作状況に応じて動作モードを切り替えることができる。それゆえ、液圧アクチュエータ5の高精度化と、高負荷動作時での高速性と、高効率化を実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,1A 液圧駆動回路
2 メインポンプ
3A,3AA 第1モジュール部
3B 第2モジュール部
4 サーボ弁
5 液圧アクチュエータ
10 低圧供給流路
11A,11B アクチュエータ供給流路
30A サブポンプ
31A 第1切換弁
31AA 切替弁(第1切換弁、第2切換弁)
32A 第2切換弁
33A 第1逆止弁
34A 第2逆止弁(逆止弁)
35A 迂回流路
37A サブポンプ流路
38A 分岐流路(サブポンプ流路)
39A 高圧供給流路
30B 逆止弁