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特開2023-35336成形品の製造方法及びトランスファープレス装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035336
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】成形品の製造方法及びトランスファープレス装置
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/02 20060101AFI20230306BHJP
   B21D 22/26 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B21J5/02 B
B21D22/26 A
B21D22/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142119
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】須釜 淳史
(72)【発明者】
【氏名】木寅 孝次
(72)【発明者】
【氏名】西尾 克秀
【テーマコード(参考)】
4E087
4E137
【Fターム(参考)】
4E087AA10
4E087CA13
4E087CA17
4E087EC02
4E087FA01
4E087HB02
4E137AA11
4E137AA18
4E137BB01
4E137CA02
4E137CA09
4E137CA21
4E137CA24
4E137DA15
4E137EA01
4E137GA11
(57)【要約】
【課題】環状の被加工品の断面形状を所望の形状にプレス成形する際のプレス荷重を低減する。
【解決手段】成形品の製造方法は、凹型11の凹部11aに、環状の金属で形成された被加工品99を配置する準備工程と、凸型12により、被加工品99を押圧することにより、被加工品99を成形して環状の成形品100とする成形工程とを有する。準備工程では、凹型11の凹部11aの内周面11nと被加工品99との間、又は、凹型11の凹部11aの外周面11gと被加工品99との間の少なくとも一方に隙間がある状態で、被加工品99が凹部11aに配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の底面と、前記底面の外周側端から延びる外周面と、前記底面の内周側端から延びる内周面とを含む凹部を有する凹型の前記凹部に、環状の金属で形成された被加工品を配置する準備工程と、
前記凹部の前記底面に対してプレス方向において対向する頂面を含み、前記凹型の前記凹部に対して突出する凸型により、前記凹部に配置された前記被加工品を前記プレス方向に押圧することにより、前記凸型の前記頂面と前記凹型の前記底面に応じた形状に前記被加工品を成形して環状の成形品とする成形工程とを有し、
前記準備工程では、前記凹型の前記凹部の前記内周面と前記被加工品との間、又は、前記凹型の前記凹部の外周面と前記被加工品との間の少なくとも一方に隙間がある状態で、前記被加工品が前記凹部に配置される、成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形品の製造方法であって、
前記凹型の前記凹部の前記底面の前記外周側端及び前記内周側端は、前記プレス方向から見て円形である、成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の成形品の製造方法であって、
前記準備工程において、前記隙間の径方向の長さは、周方向全体にわたって均一である、成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の成形品の製造方法であって、
前記成形工程で成形される前記環状の成形品は、厚みが径方向で異なる、成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の成形品の製造方法であって、
前記成形工程で成形される前記環状の成形品は、径方向において内周側に行くに従って厚みが大きくなる、成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の成形品の製造方法であって、
前記準備工程において、前記凹部に配置される前記被加工品と前記凹部の前記内周面との間の隙間の径方向の長さは、前記被加工品と前記凹部の前記外周面との間の隙間の径方向の長さより短いか又は同じである、成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の成形品の製造方法であって、
前記準備工程おいて、前記被加工品は、前記凹部の前記内周面又は前記外周面のいずれかと接した状態で配置される、成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の成形品の製造方法であって、
前記成形工程において、前記凸型が前記凹型に対して下死点にある状態で、前記被加工品は、前記凹部の前記内周面又は前記外周面の少なくとも一方に接する、成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の成形品の製造方法であって、
前記成形工程で成形された前記環状の成形品を、穴拡げ絞り加工により、管状に成形して管状の成形品とする穴拡げ絞り工程をさらに有し、
前記穴拡げ絞り工程において、前記環状の成形品の外径面が、前記穴拡げ絞り加工によって、前記管状の成形品の軸方向の一方の端面となり、前記環状の成形品の内径面が、前記穴拡げ絞り加工によって、前記管状の成形品の軸方向の他方の端面となる、成形品の製造方法。
【請求項10】
ボルスタと、
前記ボルスタに対してプレス方向に相対移動可能なスライドと、
複数の金型と、を備え、
前記複数の金型のそれぞれは、前記ボルスタに取り付けられた下型と、前記スライドに取り付けられた上型を有し、
前記複数の金型のうち1つは、コイニング加工のためのコイニング金型であり、前記下型である凹型と、前記上型である凸型とを有し、
前記凹型は、環状の底面と、前記底面の外周側端から延びる外周面と、前記底面の内周側端から延びる内周面とを含む凹部を有し、
前記凸型は、前記凹部の前記底面に対してプレス方向において対向する頂面を含み、前記凹型の前記凹部に対して突出する、トランスファープレス装置。
【請求項11】
請求項10に記載のトランスファープレス装置であって、
前記コイニング金型は、前記複数の金型において上流側に配置される、トランスファープレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の製造方法、及びその製造方法に用いられるトランスファープレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軸受の軌道輪や、歯車、ホイール等の筒状の回転部品は、その機能に応じて、くぼみ、突起、テーパ等の異形断面形状を有する。このような機能に応じた形状を有する筒状の部品は、ある程度の形状精度が求められる。従来、所望の形状の筒状部品を得るために、鋼管、丸棒、ビレット等の被加工品に対して切削等の機械加工が施される。
【0003】
例えば、特許第4562810号公報(特許文献1)では、アルミニウムビレットとマグネシウムビレットの複合ビレットを成形鍛造することで得られたプレホイールに対して、仕上げ工程において、スピニング加工、穴開け加工、切削加工、ミールリング加工等の機械加工が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4562810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機能に応じた形状を有する筒状の部品を量産する場合、機械加工では、切削による歩留り、及びタクト時間のロスが問題となる。また、機械加工のための装置を導入する必要がある場合、製造コストが問題となる。
【0006】
発明者らは、筒状部品に異形断面形状を付与する工程において、機械加工をプレスによる成形に置き換えることを検討した。検討の結果、量産性を考慮すると、環状の被加工品に対して、型で圧縮して型に応じた形状に成形するコイニング加工を利用することが好適であることを見出した。これにより、所望の断面形状が付与された環状の成形品を得ることができる。しかしながら、コイニング加工は、絞り加工や穴拡げ絞り加工等に比べて、プレス荷重が大きくなる。
【0007】
そこで、本願は、環状の被加工品の断面形状を所望の形状にプレス成形する際のプレス荷重を低減することができる、成形品の製造方法及びトランスファープレス装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態における成形品の製造方法は、環状の底面と、前記底面の外周側端から延びる外周面と、前記底面の内周側端から延びる内周面とを含む凹部を有する凹型の前記凹部に、環状の金属で形成された被加工品を配置する準備工程と、前記凹部の前記底面に対してプレス方向において対向する頂面を含み、前記凹型の前記凹部に対して突出する凸型により、前記凹部に配置された前記被加工品を前記プレス方向に押圧することにより、前記凸型の前記頂面と前記凹型の前記底面に応じた形状に前記被加工品を成形して環状の成形品とする成形工程とを有する。前記準備工程では、前記凹型の前記凹部の前記内周面と前記被加工品との間、又は、前記凹型の前記凹部の外周面と前記被加工品との間の少なくとも一方に隙間がある状態で、前記被加工品が前記凹部に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、環状の被加工品の断面形状を所望の形状にプレス成形する際のプレス荷重を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態における成形品の製造方法を説明するための図である。
図2図2は、穴拡げ絞り加工前と後の成形品の寸法の関係を説明するための断面図である。
図3図3は、穴拡げ絞り加工による穴拡げ絞り工程の例を示す図である。
図4図4は、成形工程で成形される環状の成形品及び穴拡げ絞り工程で成形される管状の成形品の変形例を示す断面図である。
図5図5は、成形工程で成形される環状の成形品及び穴拡げ絞り工程で成形される管状の成形品の他の変形例を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態におけるトランスファープレス装置の構成例を示す図である。
図7図7は、試験における金型に対する被加工品の配置を示す図である。
図8図8は、プレス荷重の試験結果を表すグラフである。
図9図9は、本試験及びFEM解析における中心径率とプレス荷重との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
プレス工法で筒状部品(管状部品)を製造する場合、貫通孔を有する板状のブランクに絞り加工を施し、筒状に成形する。筒状の成形品にさらに異形断面形状を付与するためには、絞り加工後、切削などの機械加工を施すことが考えられる。発明者らは、検討を重ねる中で、絞り加工前の板状のブランクに、予め異形断面形状を付与する発想を得た。予め異形断面形状を付与した板状のブランクを絞り加工で筒状に成形することで、絞り加工後の筒状成形品の断面形状を所望の形状にできることを見出した。発明者らは、さらなる検討の結果、絞り加工前の板状のブランクへの異形断面形状の付与に、コイニング加工を利用するのが、量産性の観点から好適であることがわかった。コイニング加工は、高い圧力を被加工品に加えて所望の形状に加工する圧縮加工である。コイニング加工で生じるプレス荷重が大きくなると、プレス機の大型化及び金型寿命の低下が生じ得る。
【0012】
そこで、発明者らは、環状の被加工品に異形断面形状を付与するためのプレス成形において、成形荷重を極力低減するための押圧方法を検討した。鋭意検討の結果、塑性流動を積極的に活用する方法に至った。具体的には、初期位置として、環状の被加工品を凹型の環状の凹部に配置し、凹型の凹部の内周面又は外周面のいずれか一方或いは両方に隙間を設けることに想到した。このように凹型の凹部に配置された環状の被加工品を凸型で押圧して成形することで、プレス荷重を低減しつつも、所望の断面形状を有する環状の成形品が得られる。下記実施形態は、この知見に基づくものである。
【0013】
本発明の実施形態における成形品の製造方法は、環状の底面と、前記底面の外周側端から延びる外周面と、前記底面の内周側端から延びる内周面とを含む凹部を有する凹型の前記凹部に、環状の金属で形成された被加工品を配置する準備工程と、前記凹部の前記底面に対してプレス方向において対向する頂面を含み、前記凹型の前記凹部に対して突出する凸型により、前記凹部に配置された前記被加工品を前記プレス方向に押圧することにより、前記凸型の前記頂面と前記凹型の前記底面に応じた形状に前記被加工品を成形して環状の成形品とする成形工程とを有する。前記準備工程では、前記凹型の前記凹部の前記内周面と前記被加工品との間、又は、前記凹型の前記凹部の外周面と前記被加工品との間の少なくとも一方に隙間がある状態で、前記被加工品が前記凹部に配置される。
【0014】
上記の製造方法によれば、環状の被加工品は、凹型の環状の凹部に、径方向の隙間を空けて配置される。このように配置された被加工品を凸型で押圧すると、被加工品は、凹型と凸型に応じた形状に成形される。この場合、隙間を設けない場合に比べて低いプレス荷重で成形することが可能になる。これは、隙間を設けることにより、成形過程で、適度な塑性流動が可能になるためと考えられる。また、凹型は、環状の底面、内周面及び外周面を含む凹部を有する。この凹部に環状の被加工品が配置されて押圧される構成であるため、成形品の形状が狙い形状から著しく異なることはない。そのため、プレス荷重を低減しつつも、環状の被加工品に、所望の断面形状を付与することができる。すなわち、環状の被加工品の断面形状を所望の形状にプレス成形する際のプレス荷重を低減することができる。
【0015】
成形前の環状の被加工品は、例えば、上面と、下面と、前記上面から前記下面へ貫通する穴とを有する板状のブランク(第1ブランク)であってもよい。成形工程で得られる環状の成形品も、上面と、下面と、前記上面から前記下面へ貫通する穴とを有する板状のブランク(第2ブランク)であってもよい。例えば、この第2ブランクの上面の形状は、凸型の頂面の形状に対応し、第2ブランクの下面の形状は、凹型の底面の形状に対応する。
【0016】
前記凹型の前記凹部の前記底面の前記外周側端及び前記内周側端は、前記プレス方向から見て円形であってもよい。これにより、成形過程における、被加工品の応力及び変形の分布を周方向において均一に近づけることができる。
【0017】
前記準備工程において、前記隙間の径方向の長さは、周方向全体にわたって均一であってもよい。これにより、成形過程における、被加工品の応力及び変形の分布を周方向においてより均一に近づけることができる。なお、前記隙間の径方向の長さが周方向全体にわたって均一である態様には、隙間の径方向の長さが、周方向において厳密に同一である場合の他、成形時の被加工品の挙動において均一と見なせる程度に誤差がある場合も含む。
【0018】
前記成形工程で成形される前記環状の成形品は、厚みが径方向で異なっていてもよい。厚みが径方向で異なる異形断面形状を有する環状の成形品は、例えば、さらに絞り加工を施すことで、所望の断面形状を有する管状の成形品とすることができる。
【0019】
前記成形工程で成形される前記環状の成形品は、径方向において内周側に行くに従って厚みが大きくなっていてもよい。このような異形断面形状を有する環状の成形品を、例えば、穴拡げ絞り加工で管状の成形品にした場合、管状の成形品の壁厚を均一に近づけることができる。
【0020】
前記準備工程において、前記凹部に配置される前記被加工品と前記凹部の前記内周面との間の隙間の径方向の長さは、前記被加工品と前記凹部の前記外周面との間の隙間の径方向の長さより短いか又は同じであってもよい。これにより、成形時のプレス荷重を効率的に低減することができる。
【0021】
前記準備工程おいて、前記被加工品は、前記凹部の前記内周面又は前記外周面のいずれかと接した状態で配置されてもよい。これにより、被加工品の凹型への配置の際に、位置決めが容易になる。
【0022】
前記成形工程において、前記凸型が前記凹型に対して下死点にある状態で、前記被加工品は、前記凹部の前記内周面又は前記外周面の少なくとも一方に接してもよい。このようにプレス成形することで、環状の成形品の形状の狙い形状と差をより小さくすることができる。
【0023】
例えば、前記成形工程において、前記凸型が前記凹型に対して下死点にある状態で、前記被加工品が前記凹部の前記外周面に接し前記内周面とは接しないよう成形されてもよい。又は、前記下死点において、前記被加工品が前記凹部の前記内周面に接し前記外周面とは接しないよう、前記被加工品が成形されてもよい。これらの場合、効率的にプレス荷重を低減させ、且つ、成形品を狙い形状に近づけることができる。また、前記成形工程において、前記凸型が前記凹型に対して下死点にある状態で、前記被加工品が前記凹部の前記外周面及び前記内周面の両方と接するよう成形されてもよい。この場合、プレス荷重を低減させつつ、成形品の形状の狙い形状と差をより小さくすることができる。特に、プレス成形後の環状の成形品において、軸方向端面のみならず内周面及び外周面でも、形状精度が高くなる。
【0024】
言い換えれば、前記成形工程において、前記凸型が前記凹型に対して下死点にある状態で、前記被加工品は、前記凹部の前記内周面又は前記外周面の少なくとも一方との間に隙間がある状態であってもよい。これにより、プレス荷重をより低減することができる。例えば、プレス成形後の環状の成形品の軸方向端面の形状精度が求められ、内周面又は外周面にはそれ程の形状精度が求められない場合に、プレス荷重が過剰にならずに、求められる形状精度を達成することができる。
【0025】
上記の成形品の製造方法は、前記成形工程で成形された前記環状の成形品を、穴拡げ絞り加工により、管状に成形して管状の成形品とする穴拡げ絞り工程をさらに有してもよい。前記穴拡げ絞り工程において、前記環状の成形品の外径面が、前記穴拡げ絞り加工によって、前記管状の成形品の軸方向の一方の端面となり、前記環状の成形品の内径面が、前記穴拡げ絞り加工によって、前記管状の成形品の軸方向の他方の端面となる。
【0026】
この場合、成形工程で成形された環状の成形品の断面形状は、その後の穴拡げ絞り工程で成形された管状の成形品の壁の断面形状に反映される。そのため、例えば、異形断面形状を有する管状の成形品等のように、所望の断面形状を有する管状の成形品を、プレス工程により製造することができる。そのため、成形品の製造において、機械加工の工程を省略又は少なくすることができる。
【0027】
なお、本明細書において、「環状の成形品」と、「管状の成形品」は、穴拡げ絞り加工前の成形品と、穴拡げ絞り加工後の成形品とを区別するために、異なる語を用いたものである。「環状の成形品」と「管状の成形品」の語によって区別される違いは、穴拡げ絞り加工前の成形品か、穴拡げ絞り加工後の成形品かの違いのみであって、この意味以外に、成形品の特徴の違いを意味するものではない。
【0028】
上記製造方法において、前記成形工程において、前記穴拡げ絞り加工前の前記環状の成形品の外径面の板厚である外径板厚(t0_out)は、前記管状の成形品の前記一方の端面の壁厚(a_up)の狙い値に対して第1の相関関係を有するように成形されてもよい。さらに、前記穴拡げ絞り加工前の前記環状の成形品の内径面の板厚である内径板厚(t0_in)は、前記管状の成形品の前記他方の端面の壁厚(a_down)の狙い値に対して第2の相関関係を有するように設定されてもよい。
【0029】
これにより、環状の成形品の外径板厚(t0_out)と内径板厚(t0_in)のそれぞれが、対応する狙い壁厚との相関関係に基づいて、それぞれ独立して設定される。これにより、穴拡げ絞り加工における内径側と外径側の応力及びひずみ変態の違いを考慮した板厚が設定できる。そのため、穴拡げ絞り加工後の管状の成形品の壁厚を狙いに近づけることができる。結果として、狙い形状の管状の成形品を精度よく製造できる。
【0030】
第1の相関関係と第2の相関関係は、互いに異なってもよい。第1の相関関係及び第2の相関関係は、いずれも、穴拡げ絞り加工後の管状の成形品の壁厚が、穴拡げ絞り加工前の環状の成形品の板厚の一次関数で表される関係であってもよい。この場合、第1の相関関係を示す一次関数の傾きは、第2の相関関係を示す一次関数の傾きよりも、大きくてもよい。
【0031】
前記成形工程において成形される前記環状の成形品は、上面と、下面と、前記上面から前記下面へ貫通する穴と、前記上面及び前記下面のうち一方の面に形成された窪みと、を有する板状であってもよい。この場合、前記穴拡げ絞り工程において、前記穴拡げ絞り加工前の前記環状の成形品の前記上面及び前記下面のうち前記一方の面が、前記穴拡げ絞り加工によって、前記管状の成形品の内周面となり、前記穴拡げ絞り加工前の前記環状の成形品の前記上面及び前記下面のうち他方の面が、前記穴拡げ絞り加工によって、前記管状の成形品の外周面となるよう成形されてもよい。さらに、前記穴拡げ絞り加工前の前記環状の成形品の前記窪みが、前記穴拡げ絞り加工によって、前記管状の成形品の前記内周面の凹部となるよう成形されてもよい。
【0032】
上記のような穴拡げ絞り加工において、穴拡げ絞り加工前の環状の成形品の窪みの位置と加工後の管状の成形品の凹部の位置に相関関係があることが発明者らによって見出されている。そのため、上記方法では、穴拡げ絞り加工前の環状の成形品の窪みの位置によって、加工後の管状の成形品の凹部の位置を制御することが可能になる。その結果、狙い形状の管状の成形品を精度よく製造できる。
【0033】
本発明の実施形態におけるトランスファープレス装置は、ボルスタと、前記ボルスタに対してプレス方向に相対移動可能なスライドと、複数の金型と、を備える。前記複数の金型のそれぞれは、前記ボルスタに取り付けられた下型と、前記スライドに取り付けられた上型を有する。前記複数の金型のうち1つである第1金型は、コイニング加工のためのコイニング金型であり、前記下型である凹型と、前記上型である凸型とを有する。前記凹型は、環状の底面と、前記底面の外周側端から延びる外周面と、前記底面の内周側端から延びる内周面とを含む凹部を有する。前記凸型は、前記凹部の前記底面に対してプレス方向において対向する頂面を含み、前記凹型の前記凹部に対して突出する。
【0034】
上記構成において、複数の金型のうち1つは、コイニング金型であり、環状の凹部を含む凹型と、凸部を含む。そのため、凹部に、環状の金属で形成された被加工品を配置し、凸部で押圧することで、コイニング金型に応じた形状の環状の成形品を得ることができる。また、凹型の凹部の内周面と被加工品との間、又は、凹部の外周面と被加工品との間の少なくとも一方に隙間がある状態で、被加工品を凹部に配置できる。これにより、隙間がない場合に比べて、プレス荷重を低減しつつも、被加工品を狙いの形状に成形することができる。すなわち、環状の被加工品の断面形状を所望の形状にコイニング加工する際のプレス荷重を低減することができる。また、コイニング金型によるコイニング加工の荷重と、他の金型のプレス成形の荷重との差を小さくできる。すなわち、複数の金型におけるプレス荷重の偏り(偏荷重)が緩和される。そのため、トランスファープレス装置の構成を簡素化できる。
【0035】
前記コイニング金型は、前記複数の金型において上流側に配置されてもよい。この場合、コイニング金型によってコイニング加工された環状の成形品を、他の金型で成形することで、所望の形状の成形品を得ることができる。これにより、例えば、異形断面を有する管状の成形品をプレス工程によって製造することが可能になる。さらに、荷重が比較的大きいコイニング金型を上流に配置した構成において、偏荷重が緩和できる。
【0036】
なお、トランスファープレス装置においては、被加工品(加工対象材)は、複数の金型に順次、搬送されプレスされる。複数の金型は、被加工品の搬送方向に並んで配置される。コイニング金型が複数の金型の上流側に配置される構成においては、複数の金型のうち搬送方向の中央の金型よりも上流にコイニング金型が配置される。なお、トランスファープレス装置は、複数の金型に順次、被加工品を搬送する搬送機構を有してもよい。
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による成形品の製造方法について説明する。図中、同一又は相当部分には、同一符号を付して、その部材についての説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0038】
(実施形態)
図1は、本実施形態における成形品の製造方法を説明するための図である。本実施形態における製造方法は、準備工程、成形工程、及び、穴拡げ絞り工程を有する。図1の上段は準備工程、中段は成形工程、下段は穴拡げ絞り工程をそれぞれ示している。図1に示す例では、準備工程において、凹型11の凹部11aに、環状の被加工品99が配置される。成形工程において、凹型11の凹部11aに配置された被加工品99が、凸型12によって押圧され、成形されて環状の成形品100となる。穴拡げ絞り工程では、環状の成形品100が、穴拡げ絞り加工により成形されて、管状の成形品110となる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0039】
[準備工程]
図1の上段においては、環状の被加工品99の斜視図と、被加工品99が、金型に配置された状態の断面図が示される。この断面図は、被加工品99の穴1の中心を通り板厚方向(軸方向)と平行な面における断面を示す。これは、図1の中段及び下段の断面図も同様である。図1において、一点鎖線C1は、被加工品99及び凹型11の凹部11aの中心軸を示す。図1では、被加工品99と凹部11aは同軸に配置される。
【0040】
図1に示す例では、環状の被加工品99は、板状であり、上面2、下面3、及び上面2から下面3へ貫通する穴1を有する。被加工品99は、上から見て(板厚方向に見て)、中央に穴1を有し、穴1から径方向に放射状に広がる形状を有する。被加工品99は、ドーナツ形状を有するとも言える。また、本例では、被加工品99は、中央に穴1を有する円板である。被加工品99の径方向の最大寸法は板厚より大きい。
【0041】
被加工品99が配置される凹型11は、凹部11aを有する。凹部11aは、環状の底面11bと、底面11bの外周側端から延びる外周面11gと、底面11bの内周側端から延びる内周面11nとを含む。外周面11gは、底面11bの外周側端からプレス方向に延びる。内周面11nは、底面11bの内周側端からプレス方向に延びる。外周面11gと内周面11nは、径方向において対向する。外周面11g及び内周面11nは、底面11bに対して傾斜している。図1の例では、外周面11g及び内周面11nは、底面11bに対して垂直である。なお、外周面11g又は内周面11nの少なくとも1つは、底面11bに対して垂直でなくてもよい。図1の例では、凹型11の凹部11aの底面11bの外周側端及び内周側端は、プレス方向から見て同心の円形である。なお、プレス方向は、プレス成形時に凹型11に対して凸型12が移動する方向である。
【0042】
なお、凹型11の凹部11aの形状は、環状の成形品の狙い形状に応じた形状とされる。図1に示す例では、一例として、凹型11の底面11bは、平らであるが、底面11bは凹凸又は傾斜を有してもよい。図1に示す例では、凹型11の内周面11n及び外周面11gは、底面11bに対して垂直であるが、内周面11n又は外周面11gの少なくとも一方は底面11bに対して垂直でなくてもよい。例えば、内周面11n又は外周面11gの少なくとも一方は、底面11bに垂直な面に対して傾いていてもよいし、表面に凹凸を有してもよい。
【0043】
準備工程では、凹部11aの内周面11nと被加工品99との間、又は、凹部11aの外周面11gと被加工品99との間の少なくとも一方に隙間がある状態で、被加工品99が凹部11aに配置される。このように隙間を設けることで、被加工品99を凸型12で押圧した場合に、被加工品99が塑性流動し易くなる。また、塑性流動の範囲は、主に凹部11aの外周面11g及び内周面11nによって制限される。これにより、凹型11と凸型12の間に環状の被加工品99を配置してプレス成形する際に、プレス荷重を低減しつつ、所望の形状に成形することが可能になる。
【0044】
図1に示す例では、被加工品99の内周面及び外周面、並びに、凹部11aの内周面11n及び外周面11gは、軸方向(プレス方向)から見て、いずれも同心の円形である。この場合、凹部11aに配置された被加工品99と凹部11aとの間の隙間の径方向の長さは、周方向全体にわたって均一となる。
【0045】
図1に示す例では、凹部11aの内周面11nと被加工品99との間、及び、凹部11aの外周面11gと被加工品99との間の両方に隙間がある。これにより、成形時の被加工品の塑性流動の自動度を高くなる。そのため、プレス荷重の低減効果を高くできる。これに対して、被加工品99は、凹部11aの内周面11n又は外周面11gのいずれか接した状態で配置されてもよい。この場合も、プレス荷重の低減効果は得られる。また、この場合、凹部11aにおける被加工品99の位置決めが容易になる。
【0046】
一例として、凹部11aに配置される被加工品99と凹部11aの内周面11nとの間の隙間の径方向の長さsnは、被加工品99と凹部11aの外周面11gとの間の隙間の径方向の長さsgより短いか又は同じ(sn≦sg)としてもよい。これにより、成形時のプレス荷重を効率的に低減することができる。特に、図1に示すように、径方向において厚みが均一な被加工品99を、径方向において内周側に行くに従って厚みが大きくなるような形状に成形する場合、この効果はより顕著になる。
【0047】
被加工品99の内周縁の半径r1と外周縁の半径r2から、(r1+r2)/2で算出される値を、被加工品中心径とする。凹型11の凹部11aの内周縁の半径R1と、凹型11の凹部11aの外周縁の半径R2から(R1+R2)/2で算出される値を金型中心径とする。一例として、被加工品中心径を金型中心径で除した値、すなわち、(r1+r2)/(R1+R2)の値(中心径率)が、1.1以下となるように、被加工品99を凹部11aに配置してもよい。これにより、プレス荷重の低減の効果がより得やすくなる。さらに、(r1+r2)/(R1+R2)の値が1.0より小さくなるように、被加工品99を凹部11aに配置してもよい。これにより、プレス荷重の低減の効果をより増大させることができる。
【0048】
[成形工程]
図1の中段においては、成形工程で成形された環状の成形品100の斜視図と、成形工程の下死点における金型及び成形品100の断面図が示される。図1に示す例では、凸型12は、凹型11の凹部11aの底面11bに対してプレス方向において対向する頂面12aを含む。凸型12は、凹型11の凹部11aに対して突出する形状を有する。凸型12は、凹型11の凹部11aに挿入可能な形状を有する。プレス方向から見て、凸型12の頂面12aは、凹部11aの領域と重なっている。プレス方向から見て、凸型12の頂面12aは環状であり、凹部11aに対応する形状となっている。下死点において、凸型12は、凹型11の凹部11aの内部に途中まで挿入された状態となる。
【0049】
成形工程では、凸型12により、凹型11に配置された被加工品99をプレス方向に押圧する。これにより、被加工品99は、凸型12の頂面12aと凹型11の底面11bに応じた形状に成形され、環状の成形品100となる。下死点において、被加工品99は、凸型12の頂面12aと凹型11の底面11bの間で、これら頂面12aと底面11bに接した状態で圧縮される。これにより、凸型12と凹型11の間で被加工品99の形状が凍結される。下死点において頂面12aと底面11bで圧縮された時の被加工品99の形状が、成形品100の形状となる。成形品100は、凸型12と凹型11から解放された後のその形状を維持する。
【0050】
このように、本例の成形工程では、下死点における金型で被加工品を圧縮することで金型に応じた形状に加工するコイニング加工が実行される。コイニング加工は高い圧力を被加工品に加える圧縮加工である。そのため、コイニング加工では、被加工品に大きなプレス荷重を加えられ、成形品の形状精度を高くできる。
【0051】
なお、凸型12と凹型11は、プレス装置に取り付けられた金型である。プレス装置は、例えば、凹型11を固定して、凸型12をプレス方向に動かすよう構成されてもよい。或いは、プレス装置は、凸型12を固定して凹型11を動かす構成でもよいし、凸型12及び凹型11の両方を動かす構成でもよい。
【0052】
図1の例では、下死点において、成形品100(被加工品)は、凹部11aの内周面11nと外周面11gの両方に接している。この場合、内周面11n及び外周面11gで成形工程における被加工品の径方向の変形が規制される。これにより、成形品100の形状が狙い形状から著しく外れることを抑えられる。なお、下死点において、成形品100(被加工品)が、凹部11aの内周面11n又は外周面11gの少なくとも一方に接するように成形されてもよい。凸型12が下死点に到達するまでに、被加工品99が内周面11n又は外周面11gに接すると、接した後は、被加工品99における垂直応力が増すと考えられる。この垂直応力が増すと、その分、要求されるプレス荷重が増える。そのため、プレス荷重低減の観点からは、成形中に被加工品99が内周面11n又は外周面11gに接する時間は短い方が好ましい。この観点からは、下死点において、成形品100(被加工品)が、内周面11n又は外周面11gの少なくとも一方に接さないよう成形されてもよい。下死点における成形品100の凹部11aに対する位置は、凹部11aの形状及び成形前の被加工品99の凹部11aにおける配置によって調整することができる。例えば、成形品100の板厚方向(軸方向)の形状精度が高く求められるが、径方向の形状精度は高く求められない場合、下死点において、成形品100(被加工品)と、内周面11n又は外周面11gの少なくとも一方との間に隙間が生じるよう調整されてもよい。これにより、プレス荷重が、形状精度の要求に対して過剰にならないようにすることができる。
【0053】
図1に示す例では、成形工程で成形される環状の成形品100は、厚みが径方向で異なる形状を有する。本例では、コイニング加工により、成形品100の径方向の厚み分布を調整できる。一例として、図1に示すように、成形工程で成形される成形品100の形状を、径方向において内周側に行くに従って厚みが大きくなる形状とすることができる。これにより、後述する、環状の成形品100を、穴拡げ絞り加工して得られる管状の成形品110における軸方向両端の壁厚を均一に近づけることができる。
【0054】
環状の成形品100の外側の側面は外径面4であり、成形品100の内側の側面、すなわち穴1の内面は、内径面5である。図1の例では、外径面4の軸方向の寸法(外径板厚)は、内径面5の軸方向の寸法(内径板厚)より小さい。環状の成形品100の板厚は、内径面5が最も厚く、内径面5から外径面4へ行くに従って薄くなる。上面2は、板厚方向に対して傾斜している。下面3は、板厚方向に垂直である。
【0055】
[穴拡げ絞り工程]
図1の下段においては、穴拡げ絞り工程で成形された管状の成形品110の斜視図と、断面図が示される。穴拡げ絞り工程では、成形工程で成形された環状の成形品100を、穴拡げ絞り加工により、管状に成形して管状の成形品110とする。図1の例では、管状の成形品110の軸方向の寸法は、壁厚より大きい。
【0056】
環状の成形品100の外径面4は、穴拡げ絞り加工後、管状の成形品110の一方の端面6となる。環状の成形品100の内径面5は、穴拡げ絞り加工後、管状の成形品110の他方の端面7となる。環状の成形品100の上面2は、穴拡げ絞り加工後、管状の成形品110の内周面8となる。環状の成形品100の下面3は、穴拡げ絞り加工後、管状の成形品110の外周面9となる。
【0057】
穴拡げ絞り加工は、環状の成形品100をパンチとダイスの間に配置し、パンチとダイスを相対的に近づけてプレスする工程を含む。パンチは、穴1の径より大きい径の凸部を有する。ダイスは、環状の成形品100の外径より小さい径の凹部を有する。パンチの凸部が環状の成形品100の上面2を押し、ダイスの凹部が環状の成形品100の下面3を押す。環状の成形品100は、パンチによって穴1が拡げられながら、パンチとダイスの間に巻き込まれて変形する。
【0058】
穴拡げ絞り加工による成形の工程は、一例として、所定のテーパが付与されたパンチ及びダイスのテーパ面同士で環状の成形品100の上面2及び下面3を押圧して穴拡げ絞り加工を施すことにより円錐台形状の中間成形品を得る中間成形工程と、中間成形工程に用いられるパンチ及びダイスよりもテーパ角度の小さいパンチ及びダイスで、中間成形品の小径側がダイス側に配置された状態で、中間成形品の大径側からパンチを挿入することにより中間成形品を押圧して更に穴拡げ絞り加工を施す工程と、を含んでもよい。中間成形工程において、パンチ及びダイスのテーパ面と加工方向との成す角の角度を変えて、複数回の絞り加工が施されてもよい。穴拡げ絞り加工の具体例については後述する。
【0059】
図2は、穴拡げ絞り加工前の環状の成形品100及び、穴拡げ絞り加工後の管状の成形品110の寸法の関係を説明するための断面図である。環状の成形品100の外径部の板厚t0_outは、内径部の板厚t0_inより小さい(薄い)。環状の成形品100において、外径面4における外径板厚t0_outは、管状の成形品110の一方の端面6を含む一方端部の壁厚a_upの狙い値に対する第1の相関関係に基づいて設定される。環状の成形品100の内径面5における内径板厚t0_inは、管状の成形品110の他方の端面7を含む他方端部の壁厚a_downの狙い値に対する第2の相関関係に基づいて設定される。
【0060】
第1の相関関係と第2の相関関係は、互いに異なる。第1の相関関係は、例えば、管状の成形品110の一方端部の壁厚a_upが外径部の板厚t0_outの一次関数によって表される関係とすることができる。第2の相関関係は、例えば、管状の成形品110の他方端部の壁厚a_downが外径部の板厚t0_inの一次関数によって表される関係とすることができる。この場合、例えば、第1の相関関係を示す一次関数の傾きK1は、第2の相関関係を示す一次関数の傾きK2よりも、大きい。これらの相関関係は、発明者によって見出されたものである。一例として、傾きK1が1.19 ≦K1≦ 1.55とし、傾きK2が、0.63 ≦K2≦ 0.83としてもよい。
【0061】
<穴拡げ絞り加工による穴拡げ絞り工程の例>
図3は、穴拡げ絞り加工による穴拡げ絞り工程の例を示す図である。図3(a)に示すように、中間成形工程における1回目の穴拡げ絞り加工では、所定のテーパが付与されたパンチ10A1及びダイス20A1の金型で金属円板の環状の成形品100の両面全体を押圧して穴拡げ絞り加工を施して、中間成形品100A1を得る。
【0062】
パンチ10A1及びダイス20A1のテーパ面は、加工方向との成す角の角度がそれぞれθp1及びθd1である。一例として、θp1=θd1とできる。
【0063】
図3(b)に示すように、中間成形工程における2回目の穴拡げ絞り加工では、所定のテーパが付与されたパンチ10A2及びダイス20A2の金型で中間成形品100A1の両側面全体を押圧して穴拡げ絞り加工を施して、中間成形品100A2を得る。
【0064】
パンチ10A2及びダイス20A2のテーパ面は、加工方向との成す角の角度がそれぞれθp2及びθd2である。一例として、θp2=θd2とすることができる。2回目の穴拡げ絞り加工に用いるパンチ10A2及びダイス20A2におけるテーパ面の加工方向との成す角度θp2及びθd2は、1回目の穴拡げ絞り加工に用いるパンチ10A1及びダイス20A1のテーパ面の加工方向との成す角度θp1及びθd1よりも小さく設定される。
【0065】
図3(c)に示すように、最終成形工程では、所望の形状の筒状回転部品を成形できるパンチ10B及びダイス20Bの金型で、中間成形品100A2に対して更に穴拡げ絞り加工を施して、筒状回転部品100Bを得る。本実施形態では、内径がD1´、外径がD2´の管状の成形品を得るため、パンチ10Bは外径がD1´の円柱形状を備え、ダイス20Bは、内径がD2´の環状形状を備える。なお、筒状回転部品100Bは、管状の成形品の例である。
【0066】
なお、穴拡げ絞り加工による成形工程の例は、図3に示す例に限られない。図3では、異なるダイス及びパンチの組を複数用いて、複数回の穴拡げ絞り加工がなされる。穴拡げ絞り加工は、1回でもよいし、4回以上でもよい。
【0067】
本実施形態では、環状の被加工品99をコイニング加工して環状の成形品100とし、この環状の成形品100を穴拡げ絞り加工により、管状の成形品110とする。コイニング加工により、環状の成形品100の形状を、管状の成形品110の狙い寸法に基づく値に制御できる。これにより、穴拡げ絞り加工の後に、管状の成形品110をさらに切削して所望の形状にする作業を省略又は低減できる。また、環状の成形品100の成形工程では、凹型11の凹部11aに隙間を空けて配置した被加工品99を凸型12で押圧して圧縮成形するため、プレス荷重を低減しつつも、精度よく成形品100を形成できる。これにより、量産に適した工程により、環状の成形品100及び管状の成形品110を製造できる。
【0068】
なお、本実施形態の製造方法で製造できる環状の成形品100及び管状の成形品110は、上記例に限られない。凹型11及び凸型12の形状を、環状の成形品100の狙い形状に応じた形状とすることで、種々の形状の環状の成形品100を製造できる。また、凹型11、凸型12、及び、穴拡げ絞り加工に用いる金型の形状を、管状の成形品110の狙い形状に応じた形状とすること種々の管状の成形品110を製造できる。
【0069】
図4は、成形工程で成形される環状の成形品100及び穴拡げ絞り工程で成形される管状の成形品110の変形例を示す断面図である。図4に示す例では、環状の成形品100の上面2には、窪み2aが形成されている。窪み2aは、穴1の周囲を全周にわたって取り囲むよう溝である。窪み2aは、断面が曲線の溝である。窪み2aの断面形状は、円弧であってもよいし、円弧でなくてもよい。上から見て窪み2aは、穴1と同心円状に形成されている。例えば、成形工程において、凸型12の頂面12aの形状を、窪み2aに対応する凸形状とした凸型12を用いることで、図4に示す環状の成形品100を製造できる。
【0070】
環状の成形品100を、穴拡げ絞り加工することで、図4に示す管状の成形品110が得られる。環状の成形品100の上面2における窪み2aは、穴拡げ絞り加工後の管状の成形品110の内周面8の凹部8aとなる。管状の成形品110の内周面8の凹部8aは、軸方向の一部において、内周面8の全周にわたって形成される。凹部8aの断面は、曲線となる。なお、凹部8aの断面は、円弧であってもよいし、円弧でなくてもよい。凹部8aの形状は、環状の成形品100の上面2における窪み2aの形状の調整により、調整可能である。
【0071】
穴拡げ絞り加工前の環状の成形品100の上面2における窪み2aの最深点C0から外径面4までの距離a0_outは、窪み2aの最深点C0から内径面5までの距離a0_inより小さい。窪み2aの位置は、穴拡げ絞り加工後の管状の成形品110の凹部8aの狙い位置に対して第3の相関関係を有するように設定される。具体的には、加工前の環状の成形品100の窪みの最深点C0から内径面5まで距離a0_inと窪み2aの最深点C0から環状の成形品100の外径面4までの距離a0_outとの比率a0_out/a0_inは、管状の成形品の内周面8の凹部8aの最深点Cから一方の端面6までの距離h_upと、凹部の前記最深点から他方の端面7までの距離h_downとの比率h_up/h_downの狙い値に対して、第3の相関関係を有するように設定される。第3の相関関係は、例えば、加工後の凹部の比率h_up/h_downが、穴拡げ絞り加工前の窪みの比率a0_out/a0_inの一次関数によって表される関係とすることができる。
【0072】
第3の相関関係は、例えば、下記の式で表される。
穴拡げ絞り加工前の窪みの比率a0_out/a0_inと加工後の凹部の比率h_up/h_downの関係式は、例えば、下記式で表される。
h_up/h_down=1.17×a0_out/a0_in + B (Bは定数)
この場合、傾きは、1.17±0.12の範囲でばらつくと見られる。すなわち、相関関係の範囲は、1.05×a0_out/a0_in + B ~ 1.29×a0_out/a0_in + Bとすることができる。
穴拡げ絞り加工前の窪みの比率a0_out/a0_inは、加工後の凹部の比率h_up/h_downの狙い値を下記式のh_up/h_downに代入することにより決定できる。
(h_up/h_down)= K3×(a0_out/a0_in)+ B
1.05≦K3≦1.29
【0073】
ここでBは、条件に応じた値とすることができる。Bの値は、例えば、以下の予備解析または予備実験を行うことで、Bを求めることができる。任意の値a0_out_0、a0_in_0の値を持つ加工前の環状の成形品を、本実施形態の穴拡げ絞り加工を実施した管状の成形品のh_up_0、h_down_0の値を測定又は解析する。これらの値を、B=(h_up_0/h_down_0)-K3×(a0_out_0/a0_in_0)に値を代入することで、Bを求めることができる。
【0074】
このように、本実施形態によれば、第3の相関関係を用いることで、加工後の管状の成形品110の凹部8aを所望に形成するために必要な、環状の成形品の窪みの位置を算出することが可能になる。これにより、所望の位置に凹部が形成された管状の成形品を、穴拡げ絞り加工により製造できる。そのため、加工後に管状の成形品を切削して凹部を形成する作業を省略又は低減することができる。
【0075】
図4に示す例では、管状の成形品110の一方端部の壁厚a_upが増肉され、他方端部の壁厚a_downが減肉している。管状の成形品110の軸C2を通る面の断面において、外周面9と内周面8が平行でない台形になっている。これは、図4に示すように、環状の成形品100の外径板厚t0_outと内径板厚t0_inが等しいためである。そこで、上記図2の形態と組み合わせて、環状の成形品100の外径板厚t0_outと内径板厚t0_inを調整することにより、管状の成形品110の壁厚が均一に近づけることができる。
【0076】
すなわち、第1の相関関係を用いて、環状の成形品100の外径部の板厚t0_outを設定し、第2の相関関係を用いて、環状の成形品100の内径部の板厚t0_inを設定し、さらに、第3の相関関係を用いて、環状の成形品100の窪みの位置を示す比率a0_out/a0_inを設定してもよい。これにより、管状の成形品110の一方端部の壁厚a_up, 他方端部の壁厚a_down及び凹部8aの位置を示す比率h_up_0/h_down_0を狙いの値に近づけることが可能になる。
【0077】
この場合、例えば、図5に示すように、環状の成形品100において、外径部の板厚t0_outが内径部の板厚t0_inより小さく(t0_out<t0_in)、且つ、窪みのa0_out/a0_inを1より小さく((a0_out/a0_in)<1)設定することができる。これにより、管状の成形品110の板厚が軸方向に均一に近くなり、凹部8aの最深点の軸方向の中央からのずれを小さくすることができる。図5に示す管状の成形品110は、壁厚が軸方向において略均一であり、一方端部の壁厚a_up,と他方端部の壁厚a_downが略同じになっている。
【0078】
被加工品99の材料として、例えば、鋼、アルミ、銅、ニッケル、チタン、これらの少なくとも1つを含む合金、その他の金属を用いることができる。また、金属以外の被加工品99の材料として、例えば、CFRTP (Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)等の樹脂が用いられてもよい。
【0079】
上記実施形態では、被加工品99及び成形品100が環状であり、管状の成形品110が円筒形状である。被加工品99及び成形品100は、板厚が、径方向の寸法より小さい。被加工品99、環状の成形品100及び管状の成形品110の形状はこれらに限られない。これらにおいて、平面視における外縁及び穴の縁の形状は、真円である場合の他、扁平した円、楕円であってもよい。また、一例として、被加工品99、環状の成形品100及び管状の成形品110の軸方向から見た外縁及び穴の縁の形状は、多角形であってもよい。この場合、管状の成形品は、軸に垂直な面の断面が多角形の管となる。多角形の角の数を増やして、被加工品99、環状の成形品100及び管状の成形品110の外縁及び穴の縁の平面視形状を円形に近づけてもよい。
【0080】
[トランスファープレス装置]
図6は、本実施形態における成形品の製造に用いるトランスファープレス装置の構成例を示す図である。図6に示すトランスファープレス装置は、フレーム50と、ボルスタ30と、スライド40と、複数の金型20a~20eと、駆動装置60と、搬送機構70とを備える。スライド40は、ボルスタ30に対してプレス方向に相対移動可能である。ボルスタ30及びスライド40は、フレーム50に取り付けられる。駆動装置60は、スライド40を、ボルスタ30に対してプレス方向に往復運動させる。駆動装置60は、例えば、油圧シリンダ、又は、モータ等の動力源を含む。駆動装置60は、フレーム50に固定される。搬送機構70は、プレス対象材を、順次、複数の金型20a~20eのプレス位置に搬送する。トランスファープレス装置には、複数の独立した金型20a~20eが、取り付けられる。複数の金型20a~20eは、搬送機構70によるプレス対象材の搬送方向に沿って並んで配置される。
【0081】
複数の金型20a~20eのそれぞれは、ボルスタ30に取り付けられた下型と、スライド40に取り付けられた上型を有する。複数の金型20a、20b、20c、20d及び20eは、この順で、搬送方向の上流から配置される。
【0082】
最も上流にある金型20aは、抜き加工のための金型である。金型20aを用いたプレスにより、平板のブランク98から、環状の被加工品99が打ち抜かれる。
【0083】
上流から2番目の金型20bは、コイニング金型である。金型20bの下型22bは、図1に示す上記の凹型11であり、金型20bの上型21bは、上記の凸型12である。
【0084】
上流から3番目の金型20cは、図3(a)に示す中間成形工程における1回目の穴拡げ絞り加工により中間成形品100A1を得るために用いられる金型である。金型20cの下型22cは図3(a)のダイス20A1であり、金型20cの上型21cは、図3(a)のパンチ10A1である。
【0085】
上流から4番目の金型20dは、図3(b)に示す中間成形工程における2回目の穴拡げ絞り加工により中間成形品100A2を得るために用いられる金型である。金型20dの下型22dは図3(b)のダイス20A2であり、金型20dの上型21dは、図3(b)のパンチ10A2である。
【0086】
上流から5番目の金型20eは、図3(c)に示す最終成形工程における穴拡げ絞り加工により筒状回転部品100Bすなわち管状の成形品110を得るために用いられる金型である。金型20eの下型22eは図3(c)のダイス20Bであり、金型20eの上型21eは、図3(c)のパンチ10Bである。
【0087】
トランスファープレス装置の複数の金型20a~20eのうち1つの金型20bは、コイニング加工のためのコイニング金型である。コイニング金型の下流には、複数の穴拡げ絞り加工のための金型20c~20eが配置される。このように、1つのプレス装置に、コイニング金型及び絞り加工の金型の両方が設けられる。コイニング加工のプレス荷重は、絞り加工のプレス荷重に比べて大きい。本実施形態における製造方法では、コイニング加工におけるプレス荷重を低減しつつ、コイニング加工により、形状精度の高い環状の成形品100を得ることができる。そのため、トランスファープレス装置の偏荷重を緩和できる。
【0088】
図6に示す例では、複数の金型20a~20eのうち、搬送方向の上流側にコイニング金型である金型20bが配置される。この例では、プレス荷重が他の金型より大きいコイニング金型が搬送方向の中央から外れた上流の位置にある。本実施形態では、コイニング金型によるプレス荷重を低減できるため、コイニング金型が搬送方向の中央から外れた位置に配置されても、偏荷重を緩和できる。そのため、複数の金型20a~20eの荷重を均等化するための構成を省略又は削減できる。その結果、トランスファープレス装置の構成を簡素化できる。
【0089】
本実施形態は、これに限られないが、例えば、軸受の軌道輪等の環状又は管状の成形品の製造に好適に適用できる。例えば、転がり軸受の外レースや、すべり軸受のブッシュ等の環状又は管状の成形品の製造に、本実施形態の製造方法又はトランスファープレス装置を適用することができる。或いは、自動車ブッシュやオイルポンプ部品などに使用される異形断面形状(くぼみ、突起、テーパーなど)を呈する環状の成形品及び管状の成形品の製造に、本実施形態を適用できる。
【0090】
<試験結果>
図7は、試験における金型(凹型11及び凸型12)に対する被加工品99の配置を示す図である。図7に示す条件A~Fのそれぞれの被加工品を、図7に示す配置を初期位置として、凹型11及び凸型12を用いてコイニング加工を行った。
【0091】
条件Aでは、被加工品の外周面が凹型の凹部11aの外周面11gに接する位置を初期位置とする。また、被加工品の中心径が、コイニング加工後の環状の成形品の重心よりも外径側にある。なお、コイニング加工後の環状の成形品の重心の位置は計算により求めた。条件Cは、コイニング加工後の環状の成形品の重心と被加工品の中心径が一致する位置を、初期位置としている。条件Bは、被加工品の中心径が、条件Aの中心径の位置と条件Cの中心径の位置の間に存在し、被加工品の中心径が、コイニング加工後の環状の成形品の重心よりも外径側にある位置を、初期位置としている。条件Eは、被加工品の内周面が、凹型の凹部の内周面に接し、被加工品の中心径が、コイニング加工後の環状の成形品の重心よりも内径側にある位置を、初期位置としている。条件Dは、被加工品の中心径が、条件Cの中心径の位置と条件Eの中心径の位置の間に存在し、被加工品の中心径が、コイニング加工後の環状の成形品の重心よりも内径側にある位置を、初期位置としている。条件Fは、凹型11の凹部11aの内周面11nが被加工品の内周面と接し、凹部11aの外周面11gが、被加工品の外周面と接する位置を、初期位置としている。
【0092】
条件A~Fのそれぞれについて、コイニング加工により得られた環状の成形品を、穴拡げ絞り加工により成形して管状の成形品を得た。凹型11及び凸型12を用いたコイニング加工のプレス荷重を測定した。プレスストロークの下死点から0.125mm手前の位置の荷重を測定した。なお、条件A~Fの被加工品は、体積が一定となるようにサイズを調整した。
【0093】
試験における条件A~Fにおける被加工品の寸法と中心径率は、下記表1の通りである。
【表1】
【0094】
試験における環状の成形品の試作条件は、下記表2に示す通りである。下記表2に示すように、試験は、材料1、材料2、材料3のそれぞれを用いて環状の成形品を作成した場合について行った。材料1の場合は、実際に成形品を作成した。材料2及び材料3の場合については、FEM解析を行った。材料1は、普通鋼冷延鋼板を基材とする溶融亜鉛メッキ鋼板とした。材料1の機械的特性は、降伏点330MPa、引張強さ425MPa、全伸び33%とした。材料1の板厚は6mmとした。材料2及び材料3の機械的特性は、材料1の機械的特性と同様とした。材料2の板厚は9mmとした。材料3の板厚は3mmとした。なお、材料2及び材料3の機械的特性と板厚は、FEM解析のパラメータとして設定した。
【表2】
【0095】
穴拡げ絞り加工の条件は下記の通りである。
絞りダイス径Φ42mm、潤滑油:同上、プレス機:200トンメカプレス、プレス速度:同上
【0096】
被加工品及び金型(凹型)の凹部の中心径、及び中心径率の値は、下記のように算出した。
被加工品中心径=(被加工品内径+被加工品外径)/2=(r1+r2)/2
金型中心径=(凹部内径+凹部外径)/2=(R1+R2)/2
中心径率=被加工品の中心径/凹部の中心径=((r1+r2)/2)/((R1+R2)/2)
=(r1+r2)/(R1+R2)
【0097】
図8は、図7に示す条件A~Fそれぞれについての、凹型11及び凸型12を用いたコイニング加工におけるプレス荷重を表すグラフである。図9は、本試験及びFEM解析における中心径率とプレス荷重との関係を示すグラフである。
【0098】
図8に示す結果から、被加工品を、凹型11の凹部11aの外周面11g及び内周面11nの両方で拘束した状態を初期位置としてプレス成形した場合(条件F)のプレス荷重に比べて、凹部11aの外周面11g及び内周面11nの少なくとも一方と被加工品との間に隙間がある状態を初期状態としてプレス成形した場合(条件A~E)の方が、プレス荷重が低くなることがわかった。また、初期位置における被加工品99が内周側に近い方が、荷重が低くなる傾向がみられた。特に、条件Cを境として、荷重が急激に低減する。これにより、初期位置における被加工品の中心径を、コイニング加工後の環状の成形品の重心と同じ位置又はより内径側に寄せることで、効率的に荷重を低減できることがわかった。
【0099】
図9に示す結果から、中心径率が1.1以下の場合に効率的に荷重を低減できることがわかった。特に、中心径率が1.0より小さい場合に、荷重の低減の度合いが大きくなる。
【符号の説明】
【0100】
11 凹型
11a 凹部
11b 凹部の底面
11g 凹部の外周面
11n 凹部の内周面
12 凸型
12a 頂面
99 被加工品
100 環状の成形品
110 管状の成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9