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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035337
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】除染方法、除染装置及び除染システム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20230306BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20230306BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20230306BHJP
   B23K 26/146 20140101ALI20230306BHJP
   B23K 26/12 20140101ALI20230306BHJP
【FI】
G21F9/28 551A
G21F9/28 521Z
B23K26/36
B23K26/16
B23K26/146
B23K26/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142120
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】505466642
【氏名又は名称】株式会社東洋ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD03
4E168CB03
4E168DA42
4E168DA43
4E168EA17
4E168FB03
4E168FB05
4E168FB06
4E168FC04
4E168JA11
(57)【要約】
【課題】レーザービームの照射によりコンクリート構造物のような無機質系構造物の表面部の汚染層を剥離・破壊して除去する際に、除染作業中に表面部の継続的な温度計測を要せずともガラス化現象の発生を容易に回避でき、汚染層の除去に伴う二次汚染の発生も容易に回避できる除染技術を提供する。
【解決手段】レーザーガン21によるレーザービームLBの下向き照射と同時にかつその照射位置と同一個所に、噴霧ノズル31により超音波ミストUMを斜め下向きに噴射する。超音波ミストUMは、表面部Sに達すると蒸発時に生ずる気化熱により表面部Sを冷却するとともに、表面部Sが溶融することなく、あるいは一部溶融することがあってもガラス化現象の発生前に汚染層の独立気泡CC及び混入気泡MCに入り込み、これらの気泡CC,MC内で急激に膨張し水蒸気爆発的な現象を発生して汚染層を剥離・破壊し、汚染片PPとして放出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質の固体粒子を含み、多数の気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなす無機質系構造物の除染方法であって、
前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間において、レーザービームを前記表面部に照射すると同時に、微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、汚染層を剥離・破壊して除去することを特徴とする除染方法。
【請求項2】
骨材として無機質の固体粒子を含み、多数の微細な独立気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなすコンクリート構造物の除染方法であって、
前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間において、レーザービームを前記表面部に照射すると同時に、微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、汚染層を剥離・破壊して除去することを特徴とする除染方法。
【請求項3】
前記表面部に向けて噴射された液体はレーザービームにより加熱された当該表面部を冷却して溶融を抑制するとともに、
汚染層の気泡に入り込んだ液体はレーザービームで急加熱され、気泡内で急激に膨張して汚染層を剥離・破壊する請求項1又は請求項2に記載の除染方法。
【請求項4】
前記レーザービームの照射及び前記液体の噴射は汚染層の同一個所に対して連続的又は断続的に、互いに同期して実行される請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の除染方法。
【請求項5】
無機質の固体粒子を含み、多数の気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなす無機質系構造物の除染装置であって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、を備え、
前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去することを特徴とする除染装置。
【請求項6】
骨材として無機質の固体粒子を含み、多数の微細な独立気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなすコンクリート構造物の除染装置であって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、を備え、
前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去することを特徴とする除染装置。
【請求項7】
前記液体噴射機構は、超音波霧化により汚染層の気泡よりも小なる粒径とされた霧を噴射する請求項5又は請求項6に記載の除染装置。
【請求項8】
前記レーザー照射機構には、レーザービームを照射するための単一のレンズ又は組合せレンズと、これらのレンズのうち前記表面部に最も近いレンズにおいて当該表面部に対向するレンズ面である対物レンズ面へ送風するための気体噴射機構とが設けられ、
前記気体噴射機構は、前記レーザー照射機構の作動中に常時前記対物レンズ面に向けて送風する請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の除染装置。
【請求項9】
無機質の固体粒子を含み、多数の気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなす無機質系構造物の除染システムであって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、
前記レーザー照射機構及び前記液体噴射機構に対して制御信号を発する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去するように制御信号を発することを特徴とする除染システム。
【請求項10】
骨材として無機質の固体粒子を含み、多数の微細な独立気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなすコンクリート構造物の除染システムであって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、
前記レーザー照射機構及び前記液体噴射機構に対して制御信号を発する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去するように制御信号を発することを特徴とする除染システム。
【請求項11】
前記除染室、前記レーザー照射機構、前記液体噴射機構及び前記制御部を搭載又は牽引するとともに、前記制御部から発せられた制御信号により除染対象である作業領域において前記表面部に対する位置を一括して変更可能な移動装置をさらに備える請求項9又は請求項10に記載の除染システム。
【請求項12】
前記除染室、前記レーザー照射機構及び前記液体噴射機構を搭載するとともに、除染対象である作業領域において前記表面部に対する位置を一括して変更可能な移動装置をさらに備え、
前記制御部は作業領域外の所定位置に配置され、
前記移動装置は、前記制御部での遠隔操作に基づき発せられた制御信号により、前記除染室、前記レーザー照射機構及び前記液体噴射機構を作業領域内にて位置変更する請求項9又は請求項10に記載の除染システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームの照射によって例えばコンクリート構造物のような無機質系構造物の汚染層を除去するための除染方法、除染装置及び除染システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザービームにより被加工物表面の急速加熱を行うレーザー加工技術は、切断、穴あけ、表層除去等の材料除去分野にも利用されている。このうち、例えばコンクリート構造物を被加工物(材料除去対象物)とする場合、コンクリート構造物には骨材となる砂利や砂の主成分としてシリカ(二酸化ケイ素)に代表される無機質の固体粒子が多く含まれており、レーザービームの照射で加熱され溶融(融解)したシリカ等(無機質固体粒子)が急冷されると、ガラス転移により高粘性で非晶質のガラス状態になるときがある(ガラス化現象)。そして、このガラス状態部分については、仮に一層高出力のレーザービームを再照射して再溶融したとしても、再溶融部分又はその周囲に改めてガラス化現象を生ずるおそれがあるので、切削、衝撃破壊等の機械的手段によって除去しなければならなくなる。
【0003】
特許文献1には、放射能で汚染されたコンクリート表面の放射性汚染層をレーザービームの照射によって表層除去する除染技術であって、レーザービームの照射により放射性汚染層を溶融するレーザー照射工程と、溶融汚染層に高圧ガスを噴射して冷却し汚染物質粉に粉砕する高圧ガス噴射工程と、汚染物質粉を回収する汚染物質粉回収工程と、を順次実施して、コンクリート表面の放射性汚染層を除去、回収する除染(表層除去)技術が開示されている。
【0004】
特許文献1の除染技術によれば、汚染物質粉を噴射ガスとともに回収することによって二次汚染の回避が容易である。しかし、汚染物質粉の発生や回収を促すために高圧ガスの噴射速度を上げれば溶融汚染層の冷却速度を上げることになり、急速冷却によってガラス化現象が発生しやすくなる。よって、特許文献1にあっては、レーザー照射工程と高圧ガス噴射工程との間に所定の時間差を設定して溶融汚染層の冷却タイミングを緩和するなど、高圧ガスの噴射による溶融汚染層の急冷を避け、ガラス化現象の発生を回避する工夫が必要となる。
【0005】
一方、特許文献2には、コンクリート構造物をレーザービームの照射によって切断又は破砕する除去技術であって、冷却ガス又は冷却液を噴射しつつ、レーザービームの照射によるコンクリート表面温度が融点以下となるように、レーザービームの出力等を制御する除去(切断又は破砕)技術が開示されている。
【0006】
特許文献2の除去技術によれば、レーザービームの照射による表面温度が融点以下に制御されてコンクリートは溶融せず、ガラス化現象を発生することもなくなるので、冷却ガス又は冷却液の噴射による溶融層の急冷について配慮を要しない。しかしながら、コンクリートの表面温度を融点以下に制御するには、特許文献2に記載されているように、放射温度計を装備し、制御部により温度測定データの解析とレーザービームの出力制御とを作業中常に実行する機能が必要である。よって、特許文献2のように、コンクリート構造物の厚さ全体を一回ないし数回の行程で終える切断(又は破砕)除去分野においては遅滞なく実行可能であっても、表層が少しずつ多数回にわたり除去され表面温度分布等が絶えず変動する表層除去分野においては、データ解析に時間を要し出力制御の実行に遅れを生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-116892号公報
【特許文献2】特許第4709599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、レーザービームの照射によりコンクリート構造物のような無機質系構造物の表面部の汚染層を剥離・破壊して除去する際に、除染作業中に表面部の継続的な温度計測を要せずともガラス化現象の発生を容易に回避でき、汚染層の除去に伴う二次汚染の発生も容易に回避できる除染技術(除染方法、除染装置及び除染システム)を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の除染方法は、
無機質の固体粒子を含み、多数の気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなす無機質系構造物の除染方法であって、
前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間において、レーザービームを前記表面部に照射すると同時に、微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、汚染層を剥離・破壊して除去することを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために、代表的な本発明の除染方法は、
骨材として無機質の固体粒子を含み、多数の微細な独立気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなすコンクリート構造物の除染方法であって、
前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間において、レーザービームを前記表面部に照射すると同時に、微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、汚染層を剥離・破壊して除去することを特徴とする。
【0011】
このように、レーザービームの照射と同時にかつその照射位置と同一個所に、微粒化又は霧化した液体(例えば水)を噴射し、微粒化又は霧化された液体が表面部に達すると、蒸発時に生ずる気化熱によって表面部を冷却して溶融を抑制するとともに、急加熱による膨張によって汚染層を剥離・破壊する。したがって、除染作業中に絶えず表面部の温度を監視しレーザービームの出力制御を行わなくてもガラス化現象の発生を容易に回避できる。また、微粒化又は霧化された液体は気化されて、剥離・破壊された汚染片とともに回収されるので、二次汚染の発生も容易に回避できる。
【0012】
本発明において「汚染物質」は、有毒物質、放射性物質、細菌等のように大気、水、土等の環境を汚染したり、除染作業者や周辺住民の健康を阻害したりするおそれのある有害な物質一般をいう。例えば高速道路、地下鉄等のトンネルにおいては、主として黒煤、NOx粉塵、SOx粉塵、PM粉塵、ダイオキシン等の有毒物質である。また、原子力発電所、核燃料再処理工場及びそれらの周辺地域においては、主としてセシウム、プルトニウム等の放射性物質である。
【0013】
ここで、「微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射すること」における「照射位置と同一個所」とは、静止するレーザービームにおいては「ビームの焦点位置」を意味し、移動した場合には「ビーム焦点の移動軌跡」で表される。なお、出力増幅のため円形軌道上を回転するレーザービームにおいては「ビームの回転径(例えば50mm)内」を意味し、また、回転しながら移動するレーザービームにおいては「ビームの移動幅(例えば50mm)内」を意味する。
【0014】
さらに、上記「液体」として通常は水が用いられ、純水や蒸留水でなくても、一般的な水道水、井戸水、湧き水等でよい。「微粒化又は霧化した液体」としては、後述するように「超音波霧化した水」すなわち「超音波ミスト」が推奨される。
【0015】
汚染層の剥離・破壊について、具体的には、
上記表面部に向けて噴射された液体は(蒸発時に生ずる気化熱によって)レーザービームにより加熱された表面部を冷却して溶融を抑制するとともに、
汚染層の気泡に入り込んだ液体はレーザービームで急加熱され、気泡内で急激に膨張して(小規模の水蒸気爆発的な現象の発生により)汚染層を剥離・破壊する。
【0016】
このように、微粒化又は霧化され表面部に向けて噴射された液体は、気化熱により表面部を冷却するとともに、表面部が溶融することなく、あるいは一部溶融することがあってもガラス化現象の発生前に汚染層の気泡に入り込み、気泡内で急激に膨張し水蒸気爆発的な現象を発生して汚染層を剥離・破壊し、汚染片として放出することができる。
【0017】
さらに、上記したレーザービームの照射及び液体の噴射は汚染層の同一個所に対して連続的又は断続的に、互いに同期して実行され(汚染層を線香花火のような細かい汚染片に破壊して除去す)る。
【0018】
これによって、汚染層の剥離・破壊及び汚染片の除去が中断することなく継続して行われる。なお、レーザービームの照射及び液体の噴射が断続的に実行されるとき、パルス的に作動するケースと、往復動を反復するケースとが含まれる。また、レーザービームには、連続的に照射されるCWレーザーと、断続的に照射されるパルスレーザーのいずれを用いてもよい。
【0019】
ところで、「コンクリート構造物」には、コンクリート舗装、コンクリート擁壁、コンクリート建屋、コンクリート隧道(トンネル)等が含まれる。また、「コンクリート」は、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、レジンコンクリート等を含む。
【0020】
さらに、「無機質系構造物」は、上記「コンクリート構造物」の他に例えば以下のものを含む。
・モルタル壁、しっくい壁、土壁、れんが壁、タイル壁;
・コンクリートブロック舗装、アスファルトブロック舗装、れんが舗装、タイル舗装。
【0021】
なお、鉄筋コンクリート造りや竹枠(竹小舞)入り土壁の場合、本発明の除染方法は鉄筋を除くコンクリート部分や竹枠(竹小舞)を除く塗壁部分に適用される。
【0022】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の除染装置は、
無機質の固体粒子を含み、多数の気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなす無機質系構造物の除染装置であって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、を備え、
前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去することを特徴とする。
【0023】
また、上記課題を解決するために、代表的な本発明の除染装置は、
骨材として無機質の固体粒子を含み、多数の微細な独立気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなすコンクリート構造物の除染装置であって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、を備え、
前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去することを特徴とする。
【0024】
このように、レーザー照射機構によるレーザービームの照射と同時にかつその照射位置と同一個所に、液体噴射機構により微粒化又は霧化した液体(例えば水)を噴射し、微粒化又は霧化された液体が表面部に達すると、蒸発時に生ずる気化熱によって表面部を冷却して溶融を抑制するとともに、急加熱による膨張によって汚染層を剥離・破壊する。したがって、除染作業中に絶えず表面部の温度を監視しレーザービームの出力制御を行わなくてもガラス化現象の発生を容易に回避できる。また、微粒化又は霧化された液体は気化されて、剥離・破壊された汚染片とともに回収されるので、二次汚染の発生も容易に回避できる。
【0025】
なお、上記液体噴射機構として霧化機構が推奨される。霧化機構には、負圧発生部の吸引作用を利用する吸引霧化方式と、負圧発生部以外の駆動源によって駆動される被駆動霧化方式とが知られている。前者の方式には、毛細管現象を利用して吸い上げられた液体(水)に空気流を霧吹き状に吹き付ける霧吹き式、ベンチュリやディフューザが付設される増速機構式等が含まれる。一方、後者の方式には、加圧ポンプ等によって加速するエジェクタ式、高速回転によって加速する遠心式、超音波によって加振する超音波式等が含まれる。
【0026】
上記吸引機構は、除染室内で発生する汚染エアを負圧吸引するための負圧ポンプ(吸引ファン)と、負圧ポンプの吸引流路に配置され、エアフィルタを内蔵する集塵機とを有している。このエアフィルタは、吸引流路の下流側に位置しHEPAフィルタ、ULPAフィルタ等の高性能エアフィルタで構成されるメインフィルタと、メインフィルタよりも吸引流路の上流側に位置し粗塵用エアフィルタで構成されるプレフィルタとを含む。
【0027】
HEPAフィルタ(high efficiency particulate air filter)は定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、ULPAフィルタ(ultra low penetration air filter)は定格流量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもつ。特に、粒子捕集率が99.9999%以上のものを超ULPAフィルタと呼ぶこともある。また、粗塵用エアフィルタ(coarse particle air filter)は主として粒径が5μmより大きい粒子の除去に用いられる。さらに、メインフィルタとプレフィルタとの間に、例えば中性能エアフィルタ(medium efficiency particulate air filter;すなわち主として粒径が5μmより小さい粒子に対して中程度の粒子捕集率をもつエアフィルタ)で構成される中間フィルタを追加してもよい。なお、これらのエアフィルタはJIS Z8122「コンタミネーションコントロール用語」に準拠する。
【0028】
上記液体噴射機構は、超音波霧化により汚染層の気泡よりも小なる粒径とされた霧を噴射する。
【0029】
コンクリート構造物(concrete structure)は体積の大部分を占める骨材(aggregate)をセメント、アスファルト、樹脂等の結合材(binder)で固めたものである。骨材は、砂利、砕石のようにおよそ5mm以上の粗骨材(coarse aggregate)と、砂、砕砂のようにおよそ5mm未満の細骨材(fine aggregate)とが用いられる。
【0030】
また、コンクリート構造物の内部には、結合材と水との混練時に閉じ込められた、比較的大きな混入気泡(mixed cell;例えば0.1mm以上)と、混和材(admixture)として加えられるAE剤(空気連行剤air-entraining agent)によって発生する微細な独立気泡(close cell;例えば0.01~0.1mm,平均0.05mm)とが存在する。
【0031】
一方、超音波霧化により発生する霧(超音波ミストultrasonic mist)の粒径は、一般的に0.001~0.01mm(平均0.005mm)程度とされている。したがって、超音波ミストの粒径はコンクリート構造物に内在する独立気泡よりも小さくできる。
【0032】
レーザービームの照射によって破壊された表面部に独立気泡や混入気泡が開口し、噴射された超音波ミストがこれらの気泡に次々と入り込んでレーザービームで急加熱され、これらの気泡内で急激に膨張して小規模の水蒸気爆発的な現象の発生により汚染層を次々と剥離・破壊し、微細な汚染片を発生する。このように、超音波ミストを用いることにより汚染層の剥離・破壊及び汚染片の除去が円滑に進行する。
【0033】
上記レーザー照射機構には、レーザービームを照射するための単一のレンズ又は組合せレンズと、これらのレンズのうち表面部に最も近いレンズにおいて表面部に対向するレンズ面である対物レンズ面へ送風するための気体噴射機構とが設けられ、
気体噴射機構は、レーザー照射機構の作動中に常時対物レンズ面に向けて送風する。
【0034】
このように、気体噴射機構から送風される気体によって、表面部の汚染層から剥離・破壊された汚染片がレーザー照射機構の対物レンズ面に接触(衝突)するのを抑制し、レーザー照射機構の長寿命化に貢献できる。
【0035】
なお、気体噴射機構から送風される気体として一般的には空気が用いられるが、空気の代わりにあるいは空気に加えて不活性ガス(すなわち、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)、窒素ガス、炭酸ガス等)を用いることもできる。また、気体噴射機構から送風される気体の一部を上記液体噴射機構へ導入し、液体噴射機構から噴射される、微粒化又は霧化された液体(例えば超音波ミスト)を送風気体(例えば空気)によって加速してもよい。
【0036】
そして、上記課題を解決するために、本発明の除染システムは、
無機質の固体粒子を含み、多数の気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなす無機質系構造物の除染システムであって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、
前記レーザー照射機構及び前記液体噴射機構に対して制御信号を発する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去するように制御信号を発することを特徴とする。
【0037】
また、上記課題を解決するために、代表的な本発明の除染システムは、
骨材として無機質の固体粒子を含み、多数の微細な独立気泡が内在するとともに、少なくとも表面部が汚染物質によって汚染された汚染層をなすコンクリート構造物の除染システムであって、
吸引機構が接続され、前記表面部を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染室と、
レーザービームを前記表面部に照射するレーザー照射機構と、
微粒化又は霧化した液体を前記表面部に噴射する液体噴射機構と、
前記レーザー照射機構及び前記液体噴射機構に対して制御信号を発する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記除染室内で前記レーザー照射機構がレーザービームを前記表面部に照射すると同時に、前記液体噴射機構が微粒化又は霧化した液体をレーザービームの照射位置と同一個所に噴射し、剥離・破壊された汚染層を前記吸引機構が吸引・除去するように制御信号を発することを特徴とする。
【0038】
このように、レーザー照射機構によるレーザービームの照射と同時にかつその照射位置と同一個所に、液体噴射機構により微粒化又は霧化した液体(例えば水)を噴射し、微粒化又は霧化された液体が表面部に達すると、蒸発時に生ずる気化熱によって表面部を冷却して溶融を抑制するとともに、急加熱による膨張によって汚染層を剥離・破壊するように、制御部は制御信号を発する。したがって、除染作業中に絶えず表面部の温度を監視しレーザービームの出力制御を行わなくてもガラス化現象の発生を容易に回避できる。また、微粒化又は霧化された液体は気化されて、剥離・破壊された汚染片とともに回収されるので、二次汚染の発生も容易に回避できる。
【0039】
上記した除染室、レーザー照射機構、液体噴射機構及び制御部を搭載又は牽引するとともに、制御部から発せられた制御信号により除染対象である作業領域において表面部に対する位置を一括して変更可能な移動装置(例えば移動式作業車両や高所作業車両)をさらに備える。
【0040】
これによって、開放作業領域での除染作業の場合、制御信号により作業車両を自動運転しながら除染作業の自動化が可能となる。なお、作業者が作業車両を運転しながら除染作業のみの自動化も可能である。
【0041】
上記した除染室、レーザー照射機構及び液体噴射機構を搭載するとともに、除染対象である作業領域において表面部に対する位置を一括して変更可能な移動装置(例えばロボットアーム付き移動作業台車)をさらに備え、
制御部は作業領域外の所定位置に配置され、
移動装置は、制御部での遠隔操作に基づき発せられた制御信号により、除染室、レーザー照射機構及び液体噴射機構を作業領域内にて位置変更する。
【0042】
これによって、閉鎖作業領域での除染作業の場合、作業領域外の安全な制御部(外部の制御室)から作業者が見守る中で、制御信号に基づきロボットアームや移動作業台車の移動を含む全除染作業工程の完全自動化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明に係る除染装置の一例を模式的に示す説明図。
図2図1の主要部において本発明に係る除染方法の概念を表す説明図。
図3】本発明に係る除染システムの第一例として路面開放作業領域用除染システムを模式的に示す説明図。
図4図3の除染システムに基づく工程説明図。
図5】本発明に係る除染システムの第二例として壁面開放作業領域用除染システムを模式的に示す説明図。
図6図5の除染システムに基づく工程説明図。
図7】本発明に係る除染システムの第三例として建屋内閉鎖作業領域用除染システムを模式的に示す説明図。
図8図7の除染システムに基づく工程説明図。
図9】本発明に係る除染システムの第四例として隧道内閉鎖作業領域用除染システムを模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本発明に係る除染装置の一例を模式的に示す説明図である。図1に示す除染装置100は、載置台B上に載置された、塊状のコンクリート構造物CSを除染する。除染装置100は、吸引機構40が接続され、コンクリート構造物CS全体を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染ブース10(除染室)と、レーザービームLBをコンクリート構造物CSの表面部S(図2参照)に照射するレーザー照射機構20と、超音波霧化した超音波ミストUMを表面部Sに噴射する水噴射機構30(液体噴射機構)と、を備える。なお、図1では載置台Bは地面上に固定配置されているが、図の左右方向(矢印方向)、紙面と直交する方向等に地面上で移動可能としてもよい。
【0045】
図2に示すように、コンクリート構造物CSは、体積の大部分(例えば7割)を占め、無機質の固体粒子である骨材CA,FAがセメント、アスファルト、樹脂等の結合材で固められている。砂利、砕石からなりおよそ5mm以上の粗骨材CAと、砂、砕砂からなりおよそ5mm未満の細骨材FAとが骨材を構成する。コンクリート構造物CSの内部には、例えば0.1mm以上の比較的大きな混入気泡MCと、例えば0.01~0.1mm,平均0.05mmの多数の微細な独立気泡CCとが存在する。混入気泡MCは結合材と水との混練時に閉じ込められた気泡であり、独立気泡CCは混和材として加えられるAE剤(空気連行剤)によって発生する。コンクリート構造物CS(例えば、原子力発電所で発生した放射性廃棄物)において、少なくとも表面部Sが汚染物質(例えば放射性物質)によって汚染された汚染層(例えば放射性汚染層)をなす。
【0046】
図1に戻り、除染ブース10は、コンクリート構造物CSを上方から蓋状にすっぽりと覆うフレーム11と、フレーム11の外側を囲む蛇腹状カバー12とを有し、内部に閉鎖空間を形成する。
【0047】
レーザー照射機構20はレーザービームLBをコンクリート構造物CSの表面部Sに向けて下向きに照射するレーザーガン21を有する。レーザーガン21にはレーザービームLBを照射するための組合せレンズ22が内蔵される。レーザーガン21は光ファイバー21Fを介してレーザー発振器21Lと接続される。
【0048】
また、レーザー照射機構20にはエア噴射ノズル23(気体噴射機構)が付設される。エア噴射ノズル23は、組合せレンズ22のうち表面部Sに最も近いレンズ(対物レンズ)においてコンクリート構造物CSの表面部Sに対向するレンズ面である対物レンズ面22Sに沿って、レーザー照射機構20の作動中常に横向きに噴射エアJAを送風する。エア噴射ノズル23はエアホース23Hを介してエアコンプレッサ23Cと接続される。
【0049】
レーザービームLBはレーザー発振器21Lで発生し、光ファイバー21Fを介してレーザーガン21から下向きに照射される。一方、噴射エアJAはエアコンプレッサ23Cで発生し、エアホース23Hを介してエア噴射ノズル23から横向きに送風される。
【0050】
水噴射機構30は、超音波霧化器32(微粒化機構)で超音波霧化された水(霧)を噴霧ノズル31から超音波ミストUMとして斜め下向きに噴霧する。超音波霧化器32はホース23Hを介してポンプ32Pと接続される。タンク32T内の水はポンプ32Pで汲み上げられ、ホース23Hを介して超音波霧化器32に至り、超音波ミストUMとなって噴霧ノズル31から斜め下向きに噴霧される。また、エア噴射ノズル23から送風される噴射エアJAの一部を噴霧ノズル31へ導入し、噴霧ノズル31から噴霧される超音波ミストUMを噴射エアJAによって加速している。
【0051】
なお、超音波ミストUMの粒径は、一般的に0.001~0.01mm(平均0.005mm)程度とされている。したがって、超音波ミストUMの粒径は、コンクリート構造物CSに内在する独立気泡CC、混入気泡MCのいずれよりも小さくできる。
【0052】
吸引機構40は、除染ブース10内で発生する汚染エアDAを負圧吸引するための負圧ポンプ41(吸引ファン)と、負圧ポンプ41の吸引流路に配置されたフレキシブルホース42Hの出口側に接続され、エアフィルタ42Fを内蔵する集塵機42とを有している。フレキシブルホース42Hの入り口側(吸い込み側)は除染ブース10に開口する。
【0053】
電源設備90は、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32及び負圧ポンプ41にそれぞれ駆動用の電源を供給する。なお、図1において、一点鎖線は電源供給線を表す。
【0054】
次に、主として図2により、除染装置100によるコンクリート構造物CSの除染について説明する。レーザー照射機構20のレーザーガン21によるレーザービームLBの下向き照射と同時にかつその照射位置と同一個所に、水噴射機構30の噴霧ノズル31により超音波ミストUMを斜め下向きに噴射する。超音波ミストUMは、表面部Sに達すると蒸発時に生ずる気化熱により表面部Sを冷却するとともに、表面部Sが溶融することなく、あるいは一部溶融することがあってもガラス化現象の発生前に汚染層の独立気泡CC及び混入気泡MCに入り込み、これらの気泡CC,MC内で急激に膨張し水蒸気爆発的な現象を発生して汚染層を剥離・破壊し、汚染片PPとして放出する。汚染片PPはエア噴射ノズル23から送風された噴射エアJAとともに汚染エアDAとなって負圧ポンプ41により負圧吸引され、フレキシブルホース42Hを通り集塵機42のエアフィルタ42Fで捕捉される(図1参照)。
【0055】
このように、除染作業中に絶えず表面部Sの温度を監視しレーザービームLBの出力制御を行わなくてもガラス化現象の発生を容易に回避できる。また、超音波ミストUMは気化されて、剥離・破壊された汚染片PPとともに回収されるので、二次汚染の発生も容易に回避できる。
【0056】
この実施例では、レーザーガン21はレーザービームLBを下向きに照射し、噴霧ノズル31は超音波ミストUMを斜め下向きに噴射しているが、互いの向きを交換してもよい。すなわち、噴霧ノズル31を下向き噴射、レーザーガン21を斜め下向き照射に変更できる。あるいは、両者ともに斜め下向きに変更してもよく、さらに両者の傾斜角度を異ならせてもよい。
【0057】
図3は本発明に係る除染システムの第一例として路面開放作業領域用除染システムを模式的に示す説明図である。図3に示す路面開放作業領域用除染システム(以下、単に除染システムという)1000は、コンクリート構造物としてのコンクリート舗装CP(例えば原子力発電所内の舗装路)の地表面(表面部)を除染する。除染システム1000は、吸引機構40が接続され、コンクリート舗装CPの表面部S(図2参照)を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染ブース10(除染室)と、レーザービームLBをコンクリート舗装CPの表面部Sに照射するレーザー照射機構20と、超音波霧化した超音波ミストUMを表面部Sに噴射する水噴射機構30(液体噴射機構)と、レーザー照射機構20及び水噴射機構30に対して制御信号を発するコントローラ200(制御部)と、を備える。
【0058】
さらに、除染システム1000は、除染ブース10、レーザー照射機構20及び水噴射機構30を牽引しかつコントローラ200を搭載するとともに、コントローラ200から発せられた制御信号により除染対象である作業領域(路面)において表面部Sに対する位置を一括して変更可能な移動式作業車両300(移動装置)をさらに備える。除染ブース10のフレーム11は連結バー310(連結機構)によって移動式作業車両300と連結(牽引)され、フレーム11の下端には路面を移動するためのキャスタ13が装備される。
【0059】
電源設備90は、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32、負圧ポンプ41及びコントローラ200にそれぞれ駆動用の電源を供給する。一方、コントローラ200は、レーザーガン21、エア噴射ノズル23、噴霧ノズル31、電源設備90及び移動式作業車両300に対してそれぞれ制御信号を発する。なお、図3において、一点鎖線は電源供給線、破線は制御信号線をそれぞれ表す。以下の各図においても同様である。
【0060】
次に、図4図3の除染システムに基づく工程説明図を示す。まず、S1にて電源設備90にON指令を発し、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32及び負圧ポンプ41を始動させ、除染準備を行う。S2にてレーザーガン21、エア噴射ノズル23及び噴霧ノズル31を同期作動させ除染作業を実施する。S3にて移動式作業車両300に自動運転指令を発し、路面開放作業領域内を移動する。S4にて移動の結果路面開放作業領域の終端に到達して除染作業が終了に至ったかを確認し、終端に到達していなければ(S4でNO)S2に戻り、終端に到達していれば(S4でYES)終了する。
【0061】
図5は本発明に係る除染システムの第二例として壁面開放作業領域用除染システムを模式的に示す説明図である。図5に示す壁面開放作業領域用除染システム(以下、単に除染システムという)2000は、コンクリート構造物としてのコンクリート擁壁CW(例えば原子力発電所内の防護壁)の外壁面(表面部)を除染する。除染システム2000は、吸引機構40が接続され、コンクリート擁壁CWの表面部S(図2参照)を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染ブース10(除染室)と、レーザービームLBをコンクリート擁壁CWの表面部Sに照射するレーザー照射機構20と、超音波霧化した超音波ミストUMを表面部Sに噴射する水噴射機構30(液体噴射機構)と、レーザー照射機構20及び水噴射機構30に対して制御信号を発するコントローラ200(制御部)と、を備える。
【0062】
さらに、除染システム2000は、除染ブース10、レーザー照射機構20及び水噴射機構30を保持しかつコントローラ200を搭載するとともに、コントローラ200から発せられた制御信号により除染対象である作業領域(外壁面)において表面部Sに対する位置を一括して変更可能な高所作業車両400(移動装置)及び昇降装置500(移動装置)をさらに備える。除染ブース10のフレーム11は連結リンク530(連結機構)によって昇降装置500の巻掛伝動機構520(例えばモータ510で駆動されるローラチェン)と連結され、フレーム11の先端には外壁面を移動するためのキャスタ13が装備される。
【0063】
電源設備90は、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32、負圧ポンプ41、モータ510及びコントローラ200にそれぞれ駆動用の電源を供給する。一方、コントローラ200は、レーザーガン21、エア噴射ノズル23、噴霧ノズル31、電源設備90、モータ510及び高所作業車両400に対してそれぞれ制御信号を発する。
【0064】
次に、図6図5の除染システムに基づく工程説明図を示す。まず、S1にて電源設備90にON指令を発し、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32及び負圧ポンプ41を始動させ、除染準備を行う。S2にてレーザーガン21、エア噴射ノズル23及び噴霧ノズル31を同期作動させ除染作業を実施する。S3’にて高所作業車両400に自動運転指令を発し、昇降装置500に昇降駆動指令を発し、壁面開放作業領域内を移動する。S4にて移動の結果壁面開放作業領域の終端に到達して除染作業が終了に至ったかを確認し、終端に到達していなければ(S4でNO)S2に戻り、終端に到達していれば(S4でYES)終了する。なお、S3’において、高所作業車両400は図5の紙面と直交する方向(すなわち、コンクリート擁壁CWの外壁面に沿う方向)等へも移動可能である。
【0065】
図7は本発明に係る除染システムの第三例として建屋内閉鎖作業領域用除染システムを模式的に示す説明図である。図7に示す建屋内閉鎖作業領域用除染システム(以下、単に除染システムという)3000は、コンクリート構造物としてのコンクリート建屋CH(例えば原子力発電所内の使用済み核燃料貯蔵庫)の内壁面及び天井面(表面部)を除染する。除染システム3000は、吸引機構40が接続され、コンクリート建屋CHの表面部S(図2参照)を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染ブース10(除染室)と、レーザービームLBをコンクリート建屋CHの表面部Sに照射するレーザー照射機構20と、超音波霧化した超音波ミストUMを表面部Sに噴射する水噴射機構30(液体噴射機構)と、レーザー照射機構20及び水噴射機構30に対して制御信号を発するコントローラ200(制御部)と、を備える。
【0066】
さらに、除染システム3000は、除染ブース10、レーザー照射機構20及び水噴射機構30を搭載するとともに、除染対象である作業領域(内壁面及び天井面)において表面部Sに対する位置を一括して変更可能な移動作業台車600(移動装置)及びロボットアーム700(移動装置)をさらに備え、コントローラ200は作業領域(内壁面及び天井面)外の遠隔地に配置される。移動作業台車600及びロボットアーム700は、コントローラ200での遠隔操作に基づき発せられた制御信号により、除染ブース10、レーザー照射機構20及び水噴射機構30を作業領域(内壁面及び天井面)内にて位置変更する。除染ブース10のフレーム11はロボットアーム700によって移動作業台車600と連結され、フレーム11の先端には内壁面及び天井面を移動するためのキャスタ13が装備される。
【0067】
電源設備90は、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32、負圧ポンプ41、移動作業台車600、ロボットアーム700及びコントローラ200にそれぞれ駆動用の電源を供給する。一方、コントローラ200は、レーザーガン21、エア噴射ノズル23、噴霧ノズル31、電源設備90、移動作業台車600及びロボットアーム700に対してそれぞれ制御信号を発する。
【0068】
次に、図8図7の除染システムに基づく工程説明図を示す。まず、S1にて電源設備90にON指令を発し、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32及び負圧ポンプ41を始動させ、除染準備を行う。S2にてレーザーガン21、エア噴射ノズル23及び噴霧ノズル31を同期作動させ除染作業を実施する。S3”にて移動作業台車600に自動走行指令を発し、ロボットアーム700に回転、伸縮の駆動指令を発し、建屋内閉鎖作業領域内を移動する。S4にて移動の結果建屋内閉鎖作業領域の終端に到達して除染作業が終了に至ったかを確認し、終端に到達していなければ(S4でNO)S2に戻り、終端に到達していれば(S4でYES)終了する。
【0069】
図9は本発明に係る除染システムの第四例として隧道内閉鎖作業領域用除染システムを模式的に示す説明図である。図9に示す隧道内閉鎖作業領域用除染システム(以下、単に除染システムという)4000は、コンクリート構造物としてのコンクリート隧道CT(例えば高速道路や地下鉄のトンネル)の傾斜内面(表面部)を除染する。除染システム4000は、吸引機構40が接続され、コンクリート隧道CTの表面部S(図2参照)を囲む状態で閉鎖された負圧空間を形成する除染ブース10(除染室)と、レーザービームLBをコンクリート隧道CTの表面部Sに照射するレーザー照射機構20と、超音波霧化した超音波ミストUMを表面部Sに噴射する水噴射機構30(液体噴射機構)と、レーザー照射機構20及び水噴射機構30に対して制御信号を発するコントローラ200(制御部)と、を備える。
【0070】
さらに、除染システム4000は、除染ブース10、レーザー照射機構20及び水噴射機構30を搭載するとともに、除染対象である作業領域(傾斜内面)において表面部Sに対する位置を一括して変更可能な移動作業台車600(移動装置)及びロボットアーム700(移動装置)をさらに備え、コントローラ200は作業領域(傾斜内面)外の遠隔地に配置される。移動作業台車600及びロボットアーム700は、コントローラ200での遠隔操作に基づき発せられた制御信号により、除染ブース10、レーザー照射機構20及び水噴射機構30を作業領域(傾斜内面)内にて位置変更する。除染ブース10のフレーム11はロボットアーム700によって移動作業台車600と連結され、フレーム11の先端には傾斜内面を移動するためのキャスタ13が装備される。
【0071】
電源設備90は、レーザー発振器21L、エアコンプレッサ23C、ポンプ32P、超音波霧化器32、負圧ポンプ41、移動作業台車600、ロボットアーム700及びコントローラ200にそれぞれ駆動用の電源を供給する。一方、コントローラ200は、レーザーガン21、エア噴射ノズル23、噴霧ノズル31、電源設備90、移動作業台車600及びロボットアーム700に対してそれぞれ制御信号を発する。
【0072】
図9の除染システムに基づく工程説明図は図8と同一であるため省略する。
【0073】
なお、除染システム1000,2000,3000,4000の各実施例(図3図5図7図9)において、除染装置100(図1)の各部と共通する機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略した。
【0074】
また、これらの実施例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。さらに、コンクリート構造物CS(図2)において記述した放射性物質に限らず、有毒物質、細菌等のように大気、水、土等の環境を汚染する汚染物質を除去する方法、装置及びシステム一般に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
10 除染ブース(除染室)
11 フレーム
12 蛇腹状カバー
13 キャスタ
20 レーザー照射機構
21 レーザーガン
21F 光ファイバー
21L レーザー発振器
22 組合せレンズ
22S 対物レンズ面
23 エア噴射ノズル(気体噴射機構)
23C エアコンプレッサ
23H エアホース
30 水噴射機構(液体噴射機構)
31 噴霧ノズル
32 超音波霧化器(微粒化機構)
32H ホース
32P ポンプ
32T タンク
40 吸引機構
41 負圧ポンプ(吸引ファン)
42 集塵機
42F エアフィルタ
42H フレキシブルホース
90 電源設備
100 除染装置
200 コントローラ(制御部)
300 移動式作業車両(移動装置)
310 連結バー(連結機構)
1000 路面開放作業領域用除染システム(除染システム)
400 高所作業車両(移動装置)
500 昇降装置(移動装置)
510 モータ
520 巻掛伝動機構
530 連結リンク(連結機構)
2000 壁面開放作業領域用除染システム(除染システム)
600 移動作業台車(移動装置)
700 ロボットアーム(移動装置)
3000 建屋内閉鎖作業領域用除染システム(除染システム)
4000 隧道内閉鎖作業領域用除染システム(除染システム)
B 載置台
CS コンクリート構造物
CA 粗骨材
FA 細骨材
CC 独立気泡
MC 混入気泡
PP 汚染片
S 表面部(汚染層)
CP コンクリート舗装(コンクリート構造物)
CW コンクリート擁壁(コンクリート構造物)
CH コンクリート建屋(コンクリート構造物)
CT コンクリート隧道(コンクリート構造物)
LB レーザービーム
UM 超音波ミスト
JA 噴射エア
DA 汚染エア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9