(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035370
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】画像処理システム、画像処理装置、および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20230306BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230306BHJP
【FI】
G06T7/60 180B
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142171
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】594058333
【氏名又は名称】川田テクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168952
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 克士
(72)【発明者】
【氏名】武川 勝美
【テーマコード(参考)】
5C122
5L096
【Fターム(参考)】
5C122DA13
5C122EA42
5C122FA02
5C122FH04
5C122FL02
5C122FL05
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
5L096BA18
5L096DA02
5L096EA26
5L096FA22
5L096FA66
(57)【要約】
【課題】全天球画像内に指定された点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換すること。
【解決手段】
画像処理システム10は、全天球画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定する仮想球体平面設定手段と、全天球画像内に計測点の指定を受け付ける計測点受付手段と、計測点受付手段によって指定を受け付けた計測点を仮想球体平面に描画する描画手段と、仮想球体平面に描画された計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換する変換手段と、変換手段によって変換された2つの計測点間の距離を算出する距離算出手段とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全天球画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定する仮想球体平面設定手段と、
前記全天球画像内に計測点の指定を受け付ける計測点受付手段と、
前記計測点受付手段によって指定を受け付けた前記計測点を前記仮想球体平面に描画する描画手段と、
前記仮想球体平面に描画された前記計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換する変換手段と、
前記変換手段によって変換された2つの計測点間の距離を算出する距離算出手段とを備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理システムにおいて、
前記全天球画像の撮影位置から前記変換手段によって変換された前記計測点までの距離を算出する撮影位置距離算出手段をさらに備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理システムにおいて、
前記全天球画像と前記仮想球体平面とを合成した仮想球体平面レイヤ画像を生成する仮想球体平面レイヤ画像生成手段をさらに備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の画像処理システムにおいて、
前記変換手段は、極座標系を直行座標系に変換するための写像マトリックスと、直行座標系を全天球画像を撮影したカメラの傾きを考慮して実空間と同じ正系の3次元空間に写像するための写像マトリックスとを用いて変換処理を行うことを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像処理システムにおいて、
前記変換手段によって変換された前記計測点の座標を、該計測点の緯度経度を加えて電子地図上にマッピングできる座標に変換するマッピング手段をさらに備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項6】
全天球画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定する仮想球体平面設定手段と、
前記全天球画像内に計測点の指定を受け付ける計測点受付手段と、
前記計測点受付手段によって指定を受け付けた前記計測点を前記仮想球体平面に描画する描画手段と、
前記仮想球体平面に描画された前記計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換する変換手段と、
前記変換手段によって変換された2つの計測点間の距離を算出する距離算出手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理装置において、
前記全天球画像の撮影位置から前記変換手段によって変換された前記計測点までの距離を算出する撮影位置距離算出手段をさらに備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の画像処理装置において、
前記全天球画像と前記仮想球体平面とを合成した仮想球体平面レイヤ画像を生成する仮想球体平面レイヤ画像生成手段をさらに備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記変換手段は、極座標系を直行座標系に変換するための写像マトリックスと、直行座標系を全天球画像を撮影したカメラの傾きを考慮して実空間と同じ正系の3次元空間に写像するための写像マトリックスとを用いて変換処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記変換手段によって変換された前記計測点の座標を、該計測点の緯度経度を加えて電子地図上にマッピングできる座標に変換するマッピング手段をさらに備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
全天球画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定する仮想球体平面設定手順と、
前記全天球画像内に計測点の指定を受け付ける計測点受付手順と、
前記計測点受付手順で指定を受け付けた前記計測点を前記仮想球体平面に描画する描画手順と、
前記仮想球体平面に描画された前記計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換する変換手順と、
前記変換手順で変換した2つの計測点間の距離を算出する距離算出手順とをコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の画像処理プログラムにおいて、
前記全天球画像の撮影位置から前記変換手順で変換した前記計測点までの距離を算出する撮影位置距離算出手順をさらに有することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の画像処理プログラムにおいて、
前記全天球画像と前記仮想球体平面とを合成した仮想球体平面レイヤ画像を生成する仮想球体平面レイヤ画像生成手順をさらに有することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の画像処理プログラムにおいて、
前記変換手順は、極座標系を直行座標系に変換するための写像マトリックスと、直行座標系を全天球画像を撮影したカメラの傾きを考慮して実空間と同じ正系の3次元空間に写像するための写像マトリックスとを用いて変換処理を行うことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の画像処理プログラムにおいて、
前記変換手順で変換した前記計測点の座標を、該計測点の緯度経度を加えて電子地図上にマッピングできる座標に変換するマッピング手順をさらに有することを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理装置、および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
次のような画像処理装置が知られている。この画像処理装置では、全天球画像に対し推定アルゴリズムを施して、立体視用の全天球画像を生成する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザは全天球画像内に点を指定して、指定した2点間の実空間上における距離を算出することができれば、全天球画像によって実空間上における2点間の距離を把握することができるが、従来はこのための技術について何ら検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による画像処理システムは、全天球画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定する仮想球体平面設定手段と、全天球画像内に計測点の指定を受け付ける計測点受付手段と、計測点受付手段によって指定を受け付けた計測点を仮想球体平面に描画する描画手段と、仮想球体平面に描画された計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換する変換手段と、変換手段によって変換された2つの計測点間の距離を算出する距離算出手段とを備えることを特徴とする。
本発明による画像処理装置は、全天球画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定する仮想球体平面設定手段と、全天球画像内に計測点の指定を受け付ける計測点受付手段と、計測点受付手段によって指定を受け付けた計測点を仮想球体平面に描画する描画手段と、仮想球体平面に描画された計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換する変換手段と、変換手段によって変換された2つの計測点間の距離を算出する距離算出手段とを備えることを特徴とする。
本発明による画像処理プログラムは、全天球画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定する仮想球体平面設定手順と、全天球画像内に計測点の指定を受け付ける計測点受付手順と、計測点受付手順で指定を受け付けた計測点を仮想球体平面に描画する描画手順と、仮想球体平面に描画された計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換する変換手順と、変換手順で変換した2つの計測点間の距離を算出する距離算出手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、全天球画像内に計測点が指定されると、2つの計測点間の実空間と同じ正系の3次元空間における距離を算出することができるため、実空間上における2点間の距離を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】画像処理システム10の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】360度カメラ100の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図3】画像送信端末200の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図4】サーバ300の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図5】ユーザ端末400の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図6】画像表示機器500の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図7】実スケール3次元空間に対して仮想球体平面を設定した状態を模式的に示した図である。
【
図8】写像マトリックスを使用して仮想球体平面を実スケール3次元空間に変換する方法を模式的に示した図である。
【
図9】算出対象とする距離を模式的に示した第一の図である。
【
図10】算出対象とする距離を模式的に示した第二の図である。
【
図11】算出対象とする距離を模式的に示した第三の図である。
【
図12】算出対象とする距離を模式的に示した第四の図である。
【
図13】算出対象とする距離を模式的に示した第五の図である。
【
図14】サーバ300で実行される仮想球体平面設定処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図15】サーバ300で実行される変換処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図16】サーバ300で実行される距離算出処理の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態における画像処理システム10の一実施の形態の構成を示すブロック図である。本実施の形態における画像処理システム10は、360度カメラ100と、画像送信端末200と、サーバ300と、ユーザ端末400と、画像表示機器500とで構成されている。
【0009】
360度カメラ100は、上下方向と水平方向を360度撮影することができる全天球型のカメラである。この360度カメラ100を利用すると、カメラの周囲360度の範囲の静止画や動画を撮影することができる。なお、本実施の形態では、360度カメラ100では静止画を撮影するものとし、以下の説明では、360度カメラ100で撮影された静止画を360度カメラ画像と呼ぶ。
【0010】
360度カメラ100は、無線または有線の通信技術を利用して画像送信端末200に接続されており、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像のデータは画像送信端末200へ送信される。画像送信端末200は、360度カメラ100から360度カメラ画像のデータを受信すると、通信回線、例えばインターネットに接続されたサーバ300へ送信するための端末である。サーバ300は、本発明における画像処理装置として機能し、画像送信端末200を介して受信した360度カメラ画像のデータを記録するための記憶媒体を備えたサーバ装置である。ユーザ端末400は、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像を閲覧したり、ユーザが360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像に対して後述する付加情報を付加したりするための操作を行うために利用される端末である。画像表示機器500は、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像をバーチャル・リアリティ(VR)の技術を利用して表示するためのVR(VirtualReality)機器である。なお、ユーザ端末400と画像表示機器500は、通信回線、例えばインターネットを介してサーバ300にアクセスすることにより、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像を閲覧することができる。
【0011】
360度カメラ100は、上述したようにカメラの周囲360度を撮影することができる公知の全天球型のカメラである。
図2に示すように、360度カメラ100は、撮像部101と、制御装置102と、通信インターフェース103とを備えている。
【0012】
撮像部101は、レンズ、撮像素子、その他周辺回路によって構成され、カメラの周囲を360度撮影することができるように構成されている。撮像部101で撮影された静止画や動画のデータは、制御装置102へ出力される。
【0013】
制御装置102は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され360度カメラ100の全体を制御する。なお、制御装置102を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリやフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリを含む。揮発性のメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。また、不揮発性のメモリには、360度カメラ100を動作させるためのファームウェアや種々のアプリケーションを動作させるためのソフトウェアのプログラムデータが記録される。なお、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリは、不図示のカードスロットに挿入されたメモリカードなどの外部の記憶媒体を利用するようにしてもよい。
【0014】
通信インターフェース103は、無線または有線により外部の機器と通信するための通信用インターフェースを含む。本実施の形態では、360度カメラ100は、撮影した静止画や動画のデータを通信インターフェース103を介して画像送信端末200へ送信できるように設定されている。
【0015】
画像送信端末200は、例えば、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パソコンなどの通信機能を備えた端末が用いられる。
図3は、本実施の形態における画像送信端末200として、タブレット端末を用いた場合の一実施の形態の構成を示すブロック図である。画像送信端末200は、タッチパネル201と、通信インターフェース202と、制御装置203とを備えている。
【0016】
タッチパネル201は、画面上の表示を押すことで機器を操作することができる入力装置である。例えば、画像送信端末200の操作者は、液晶パネル上に表示されたボタンやメニュー等の表示項目を指やタッチペンを用いてタッチまたはスライドさせることにより、画像送信端末200を操作することができる。タッチパネル201は、操作者によるタッチやスライドといった操作を検出して、その検出信号を制御装置203へ出力する。
【0017】
通信インターフェース202は、画像送信端末200を他の装置や端末等の外部機器と接続するための通信用インターフェースを含む。例えば、通信インターフェース202には、無線または有線により外部の機器と通信するための通信用モジュールを含む。本実施の形態では、画像送信端末200は、通信インターフェース202を介して360度カメラ100やサーバ300と接続して通信できるように設定されている。
【0018】
制御装置203は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、画像送信端末200の全体を制御する。なお、制御装置203構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリやフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリを含む。揮発性のメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。また、不揮発性のメモリには、画像送信端末200を動作させるためのファームウェアや種々のアプリケーションを動作させるためのソフトウェアのプログラムデータが記録される。
【0019】
図4は、本実施の形態におけるサーバ300の一実施の形態の構成を示すブロック図である。サーバ300は、通信インターフェース301と、制御装置302と、記憶媒体303とを備えている。
【0020】
通信インターフェース301は、サーバ300をインターネット等の通信回線に接続するためのインターフェースであり、例えば、インターネットに有線で接続するための有線LANモジュールや、インターネットに無線で接続するための無線LANモジュールなどを含んでいる。本実施の形態では、サーバ300は、この通信インターフェース301を介してサーバ300と通信する。
【0021】
制御装置302は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、サーバ300の全体を制御する。なお、制御装置302を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリである。このメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。例えば、通信インターフェース301を介して読み込まれたデータは、バッファメモリに一時的に記録される。
【0022】
記憶媒体303は、サーバ300が蓄える種々のデータや、制御装置302が実行するためのプログラムのデータ等を記録するための記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。なお、記憶媒体303に記録されるプログラムのデータは、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体に記録されて提供されたり、ネットワークを介して提供され、操作者が取得したプログラムのデータを記憶媒体303にインストールすることによって、制御装置302がプログラムを実行できるようになる。
【0023】
ユーザ端末400は、例えば、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パソコンなどが用いられる。
図5は、本実施の形態におけるユーザ端末400として、パソコンを用いた場合の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0024】
ユーザ端末400は、操作部材401と、通信インターフェース402と、制御装置403と、記憶媒体404と、表示装置405とを備えている。
【0025】
操作部材401は、ユーザ端末400の操作者によって操作される種々の装置、例えばキーボードやマウスを含む。
【0026】
通信インターフェース402は、ユーザ端末400を他の装置や端末等の外部機器と接続するためのインターフェースである。例えば、通信インターフェース402には、LANやインターネット等の通信回線に接続するためのインターフェースが含まれる。ユーザ端末400は、この通信インターフェース402を介してサーバ300と通信を行う。
【0027】
制御装置403は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、ユーザ端末400の全体を制御する。なお、制御装置403を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリである。このメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。例えば、通信インターフェース402を介して読み込まれたデータは、バッファメモリに一時的に記録される。
【0028】
記憶媒体404は、ユーザ端末400が蓄える種々のデータや、制御装置403が実行するためのプログラムのデータ等を記録するための記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。なお、記憶媒体404に記録されるプログラムのデータは、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体に記録されて提供されたり、ネットワークを介して提供され、操作者が取得したプログラムのデータを記憶媒体404にインストールすることによって、制御装置403がプログラムを実行できるようになる。
【0029】
表示装置405は、例えば液晶モニタであって、制御装置403から出力される種々の表示用データが表示される。
【0030】
画像表示機器500は、上述したように、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像をバーチャル・リアリティ(VR)の技術を利用して表示するためのVR(VirtualReality)機器であって、例えば公知のVRゴーグルが用いられる。
図6は、本実施の形態における画像表示機器500の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0031】
画像表示機器500は、通信インターフェース501と、制御装置502と、ディスプレイ503とを備えている。
【0032】
通信インターフェース501は、画像表示機器500を他の装置や端末等の外部機器と接続するためのインターフェースである。例えば、通信インターフェース501には、LANやインターネット等の通信回線に接続するためのインターフェースが含まれる。画像表示機器500は、この通信インターフェース501を介してサーバ300と通信する。
【0033】
制御装置502は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、画像表示機器500の全体を制御する。なお、制御装置502を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリやフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリを含む。揮発性のメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記録するためのバッファメモリとして使用される。また、不揮発性のメモリには、画像表示機器500を動作させるためのファームウェアや種々のアプリケーションを動作させるためのソフトウェアのプログラムデータが記録される。
【0034】
ディスプレイ503は、例えば液晶や有機ELなどのモニタであって、制御装置502から出力される種々の表示用データが表示される。本実施の形態では、ディスプレイ503に360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像、すなわち全天球画像をバーチャル・リアリティ(VR)の技術を利用して表示する。これによって、画像表示機器500を装着した人物に仮想現実世界を提供することができる。
【0035】
本実施の形態における画像処理システム10では、360度カメラ100により撮影された360度カメラ画像内に線、マーカ、矢印、コメント、または計測点などの付加情報を描画することができ、画像表示機器500での閲覧時に、描画された付加情報を360度カメラ画像の回転等に対して追従して表示する機能を備えている。また、360度カメラ画像内に描画された計測点については、該計測点の座標を実空間における座標に変換して、360度カメラ画像内に描画された2つの計測点間の実空間における距離を計算する機能を備えている。
【0036】
以下、本実施の形態における画像処理システム10について説明する。なお、以下の説明では、サーバ300の記憶媒体303には、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像が記憶されているものとする。上述したように、360度カメラ100は、カメラの上下方向と水平方向を360度撮影することができる全天球型のカメラであるため、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像は、実空間と同じ正系の3次元空間に配置される。本実施の形態では、この3次元空間を実スケール3次元空間と呼ぶ。実スケール3次元空間はユークリッド空間であり、座標原点は360度カメラ100のレンズ部分である。
【0037】
本実施の形態では、サーバ300では、制御装置302は、記憶媒体303に記録した360度カメラ画像に対して仮想球体平面を設定する。本実施の形態では、仮想球体平面は、次式(1)により半径が設定される非ユークリッド平面であり、極座標を座標として表現している。
仮想球体平面の半径=360度カメラ画像の半径×1.2 ・・・(1)
【0038】
図7は、実スケール3次元空間に対して仮想球体平面を設定した状態を模式的に示した図である。
図7では、
図7(A)に示す実スケール3次元空間7aに対して、
図7(B)に示すように式(1)により半径が設定された仮想球体平面7bが設定された例を示している。本実施の形態では、
図7(C)に示すように、実スケール3次元空間7aと仮想球体平面7bを合成することにより、360度カメラ画像の周囲に仮想球体平面7bを設定する。このように、仮想球体平面は、360度カメラ画像の外側に設定された曲面空間であり、本実施の形態では、仮想球体平面として設定した曲面空間をレイヤ空間とし、ユーザによって描画された付加情報は、該レイヤ空間に配置されて保存される。これによって、ユーザによって360度カメラ画像内に描画された付加情報は、360度カメラ画像とは別にレイヤ的に情報管理することが可能となる。
【0039】
本実施の形態では、制御装置302は、
図7(C)に示すように、実スケール3次元空間7aと仮想球体平面7bを合成して、360度カメラ画像の外側に仮想球体平面を設定した仮想球体平面レイヤ画像を生成し、記憶媒体303に記録する。これによって、記憶媒体303には、360度カメラ画像と、該360度カメラ画像に基づいて生成された仮想球体平面レイヤ画像が記録されることになる。
【0040】
本実施の形態では、ユーザは、ユーザ端末400を操作して360度カメラ画像に線、マーカ、矢印、コメント、または計測点などの付加情報を描画することができる。本実施の形態では、ユーザが仮想球体平面レイヤ画像に付加情報を描画すると描画された付加情報が仮想球体平面にプロットされることにより、360度カメラ画像に付加情報を付加することができる。
【0041】
ユーザ端末400では、制御装置403は、ユーザによって付加情報の描画開始が指示されると、サーバ300にアクセスしてサーバ300の記憶媒体303から仮想球体平面レイヤ画像を取得して、表示装置405に表示する。これによって、ユーザはサーバ300に格納されている仮想球体平面レイヤ画像を閲覧することができる。なお、表示装置405に表示させる仮想球体平面レイヤ画像の指定方法は特に限定されない。例えば、制御装置403は、ユーザによって指定されたファイル名の360度カメラ画像に対応する仮想球体平面レイヤ画像をサーバ300から取得して表示してもよいし、サーバ300に記録されている仮想球体平面レイヤ画像を一覧表示し、その中から選択されたものを表示するようにしてもよい。あるいは、制御装置403は、サーバ300に記録されている360度カメラ画像を一覧表示し、その中から選択されたものに対応する仮想球体平面レイヤ画像を表示するようにしてもよい。
【0042】
ユーザは、操作部材401、例えばマウスを操作して、表示装置405に表示された仮想球体平面レイヤ画像に対して、線、マーカ、矢印、コメント、または計測点などの付加情報を描画することができる。これによって、360度カメラ画像に線、マーカ、矢印、コメント、または計測点などの付加情報を付加することができる。
【0043】
本実施の形態では、マーカは、ポリゴンで作成され、ユーザは、大きさ、色、透過の状態を変更することができる。なお、マーカの種類や形状はデータベースで管理されている。ユーザは、マーカの種類や形状を選択して指定することができる。また、一度配置したマーカは、変更機能を利用して大きさ、位置、色、透過を変更することができる。矢印は、ポリゴンで作成され、ユーザは、大きさ、色、透過の状態を変更できる。また、一度配置した矢印は、変更機能を利用して大きさ、位置、色、透過を変更することができる。線は、ポリラインで作成され、ユーザは、複数点の指定、大きさ、色、透過の状態を変更することができる。なお、線の情報と形状はデータベースで管理されている。また、一度配置した線は、変更機能を利用してポイントの移動、大きさ、位置、色、透過を変更することができる。コメントは、ユーザが任意の文字列を入力することができる。
【0044】
制御装置403は、ユーザによって仮想球体平面レイヤ画像に付加情報が描画された場合には、360度カメラ画像の外側に合成されている仮想球体平面に、ユーザによって描画された付加情報を描画する。これによって、上述したように、仮想球体平面をレイヤ空間として、該レイヤ空間にユーザによって描画された付加情報を描画することができる。制御装置403は、仮想球体平面に付加情報を描画した後の仮想球体平面レイヤ画像をサーバ300へ送信する。
【0045】
サーバ300では、制御装置302は、記憶媒体303に記録されている仮想球体平面レイヤ画像をユーザ端末400から受信した仮想球体平面レイヤ画像で更新する。これによって、サーバ300の記憶媒体303には、ユーザによって付加情報が描画された仮想球体平面レイヤ画像が記録される。
【0046】
サーバ300では、制御装置302は、記憶媒体303に記録した仮想球体平面レイヤ画像を対象として、該仮想球体平面レイヤ画像上に設定された計測点の座標を、実スケール3次元空間における座標に変換するための変換処理を実行する。
【0047】
本実施の形態では、上述した仮想球体平面にプロットされた計測点の座標を実スケール3次元空間における座標に変換するために写像マトリックスを用いる。写像マトリックスは、平面から空間への変換マトリックスである。本実施の形態では、極座標系を直行座標系に変換するための写像マトリックスdetAと、直行座標系を360度カメラの傾きを考慮して実スケール3次元空間に写像するための写像マトリックスdetBとを用いる。これらの写像マトリックスを使用することによって仮想球体平面レイヤ画像における仮想球体平面と実スケール3次元空間とを関連付けて、仮想球体平面上に指定された計測点の座標を実空間における計測点の座標に変換する。
図8(A)は、写像マトリックス8cを使用して仮想球体平面8aを実スケール3次元空間8bに変換する方法を模式的に示した図である。
【0048】
以下、本実施の形態における計測処理について説明する。なお、以下の説明において、撮影地点における360度カメラ100の設置高さと撮影地点の緯度経度情報は、360度画像の撮影時に記録されているものとする。なお、360度カメラ100の設置高さは、設置平面から360度カメラ100のレンズ位置までの高さとすればよい。
【0049】
制御装置302は、仮想球体平面にプロットされた計測点を実スケール3次元空間における計測点に変換する。本実施の形態では、仮想球体平面に指定された点Cを計測点として、仮想球体平面に指定された計測点Cの座標を実スケール3次元空間における座標に変換する方法について説明する。
【0050】
制御装置302は、仮想球体平面上における計測点Cがある面に点Aと点Bの2点を設定する。これにより、点Aと点Bの2点で、仮想球体平面上における計測点Cがある面を設定することができる。なお、以下の説明において、仮想球体平面上の点Aの座標はPa(Xa,Ya,Za)、仮想球体平面上のB点の座標はPb(Xb,Yb,Zb)とする。また、計算で用いる値は以下のように定義する。
仮想球体面の半径:R
A点のピッチ角:θa
A点のヨー角:φa
B点のピッチ角:θb
B点のヨー角:φb
3次元空間上での360度カメラ100の設置高さ:H
360度カメラ100のジャイロにより計測されたピッチ角:Pich
360度カメラ100のジャイロにより計測されたヨー角:Yaw
360度カメラ100のジャイロにより計測されたロール角:Roll
撮影地点の緯度:Lati
撮影地点の経度:Long
【0051】
制御装置302は、点Aおよび点Bを元に仮想球体平面上から実スケール3次元空間に写像するための写像マトリックスdetAを作成する。写像マトリックスdetAはR、H、θa、θb、φa、φbを変数とした(3,3)型マトリックスであって、次式(2)で表される。なお、次式(2)において、fijは、R、H、θa、θb、φa、φbを成分とした関数である。
【数1】
【0052】
制御装置302は、写像マトリックdetAを用いて仮想球体平面上に指定された計測点C(θc、φc、R)を次式(3)により実スケール3次元空間に変換して点C´(Xc´、Yc´、Zc´)を得る。なお、点Cから点C´への変換時に極座標系から直交座標系への変換が行われる。
【数2】
【0053】
制御装置302は、式(3)によって求めた点C´(Xc´、Yc´、Zc´)を写像マトリックスdetBを用いてジャイロの傾きを考慮した実スケール3次元空間に写像する。写像マトリックスdetBは、Pich、Yaw、Rollを変数とした(3,3)型マトリックスである。式(3)によって求めた点C´(Xc´、Yc´、Zc´)は、次式(4)により実スケール3次元空間上の点C´´(Xc´´、Yc´´、Zc´´)に変換される。
【数3】
【0054】
なお、制御装置302は、式(4)によって求めた実スケール3次元空間上の点C´´(Xc´´、Yc´´、Zc´´)を、次式(5)により変換することにより、実スケール3次元空間上の点C´´(Xc´´、Yc´´、Zc´´)を緯度経度を加えて電子地図上にマッピングできる座標に変換することができる。なお、次式(5)においてdetCはLong、Latiを変数とした(3,3)型マトリックスである。
【数4】
【0055】
本実施の形態では、ユーザが仮想球体平面上に計測点を2点指定すれば、制御装置302は、指定された2点をそれぞれ実スケール3次元空間上の点に変換することができる。このため、制御装置302は、実スケール3次元空間上の2つの座標の平方から仮想球体平面上に指定された2点間の実スケール3次元空間における距離を算出することができる。例えば、上述した計測点C(θc、φc、R)の他に計測点D(θd、φd、R)が指定された場合には、制御装置302は、以下のように変換処理を行って、計測点Cと計測点Dとの間の実スケール3次元空間における距離を算出する。
【0056】
制御装置302は、仮想球体平面上における計測点Cと計測点Dがある面に点Aと点Bの2点を設定して式(2)により写像マトリックスdetAを作成する。そして、計測点C(θc、φc、R)と計測点D(θd、φd、R)のそれぞれについて式(3)を用いて実スケール3次元空間に変換し、点C´(Xc´、Yc´、Zc´)と点D´(Xd´、Yd´、Zd´)を求める。そして、これらを式(4)により実スケール3次元空間上の点C´´(Xc´´、Yc´´、Zc´´)と点D´´(Xd´´、Yd´´、Zd´´)に変換する。制御装置302は、このようにして求めた実スケール3次元空間上の点C´´(Xc´´、Yc´´、Zc´´)と実スケール3次元空間上の点D´´(Xd´´、Yd´´、Zd´´)の座標に基づいて、座標の平方から計測点Cと計測点Dとの間の実スケール3次元空間上における距離を算出することができる。
【0057】
例えば、点PP(n)と点PP(n+1)の距離を算出する場合には、次式(6)に示すように計算をすればよい。
SQRT((X(n+1)-X(n))2+(Y(n+1)-Y(n))2+(Z(n+1)-Z(n))2) ・・・(6)
【0058】
制御装置302は、仮想球体平面上における全ての計測点を対象として写像マトリックスdetA、detBを用いた変換処理を行うことにより、ユーザによって360度カメラ画像内に描画された全ての計測点の座標を実スケール3次元空間における座標に変換することができる。
図8(B)は、仮想球体平面上に設定された複数の計測点の座標を実スケール3次元空間における座標に変換した状態を模式的に示した図である。
【0059】
制御装置302は、上述した処理によって算出した2点間の距離の情報を仮想球体平面レイヤ画像の付加情報に記録する。本実施の形態では、画像表示機器500の制御装置502は、サーバ300から仮想球体平面レイヤ画像を取得してディスプレイ503に表示することができるため、画像表示機器500で仮想球体平面レイヤ画像を閲覧したユーザは、画像内で2点間の距離を確認することができる。
【0060】
次に、本実施の形態で算出対象とする距離について説明する。本実施の形態で計測対象として想定する距離の一例を
図9~
図13に示す。
図9~
図13は、本実施の形態で計測対象とする距離の具体例を模式的に示した図である。以下、
図9~
図13を用いてそれぞれの距離について説明する。なお、
図9~
図13では、計測対象となる線の範囲を破線矢印で示している。
【0061】
図9は、地盤に対して鉛直に立つ構造物上に、鉛直方向に任意に指定された2つの計測点間の距離を算出することにより、実空間における構造物の高さVを算出する場合を模式的に示した図である。
図9(A)に示すように、この方法は、例えば、360度カメラ画像9aで撮影した360度画像に含まれる構造物9bの地盤面からの高さVを計測する場合に利用される。ユーザは、高さVを求める場合には、
図9(B)に示すように、360度カメラ画像内の構造物9bに対して計測点9cと計測点9dの2点を指定する。ユーザによって指定された計測点は、上述した付加情報として仮想球体平面に描画される。
【0062】
この場合、制御装置302は、計測点9cと計測点9dのそれぞれを対象として式(2)~式(4)を用いた変換処理を行うことにより、計測点9cと計測点9dの実スケール3次元空間上における座標を求め、実スケール3次元空間上における2点の座標に基づいて計測点9cと計測点9dの実スケール3次元空間上における距離、すなわち構造物9bの高さVを計測することができる。
【0063】
図10は、撮影位置から、地盤に対して水平に配置された構造物上に任意に指定された計測点までの間の距離を算出する場合を模式的に示した図である。本実施の形態では、撮影位置から計測点までの実空間における水平方向の距離(以下、水平距離と呼ぶ)と、360度カメラ10aのレンズ位置(撮影点)から計測点までの実空間における距離(以下、カメラ距離と呼ぶ)を算出対象とする。
図10(A)に示すように、この方法は、例えば、地盤に対して水平に配置された構造物に対して指定された計測点までの360度カメラ10aからの水平距離H1と、該計測点までの撮影点からのカメラ距離H2を計測する場合に利用される。ユーザは、水平距離H1やカメラ距離H2を求める場合には、
図10(B)に示すように、360度カメラ画像内の構造物10bに対して計測点10cを指定する。ユーザによって指定された計測点は、上述した付加情報として仮想球体平面に描画される。なお、水平距離H1とカメラ距離H2は、両方とも算出するようにしてもよいし、どちらの距離を算出するかについてユーザからの指示を受け付けて、ユーザによって指示された方の距離のみを算出するようにしてもよい。
【0064】
この場合、制御装置302は、計測点10cを対象として式(2)~式(4)を用いた変換処理を行うことにより、計測点10cの実スケール3次元空間上における座標を求め、実スケール3次元空間上における計測点10cの座標と、360度カメラ100の設置位置の座標や360度カメラ100のレンズ位置の座標との間の距離を算出することによって、実スケール3次元空間上における水平距離H1やカメラ距離H2を計測することができる。
【0065】
図11は、地盤に対して任意角面を持つ構造物上に任意に指定された複数の計測点間の距離を算出することにより、実空間における計測点間の鉛直方向の距離Lv(n)を算出する場合を模式的に示した図である。
図11(A)に示すように、この方法は、例えば、360度カメラ画像11aで撮影した360度画像に含まれる構造物11bに設定された複数の点を含む線の実長Lv(n)を計測する場合に利用される。ユーザは、実長Lv(n)を求める場合には、
図11(B)に示すように、360度カメラ画像内の構造物10bに対して、鉛直方向に複数の計測点11c、11d、11e、および11fの4
点を指定する。ユーザによって指定された計測点は、上述した付加情報として仮想球体平面に描画される。
【0066】
この場合、制御装置302は、計測点11c、11d、11e、および11fのそれぞれを対象として式(2)~式(4)を用いた変換処理を行うことにより、計測点11c、11d、11e、および11fの実スケール3次元空間上における座標を求める。そして、実スケール3次元空間上における計測点11cと11dの間の距離、計測点11dと11eの間の距離、および計測点11eと11fの間の距離をそれぞれ算出して、これらを合計することにより、計測点11c、11d、11e、および11fで構成される線の実長Lv(n)を計測することができる。
【0067】
図12は、地盤に対して任意角面を持つ構造物に任意に指定された複数の計測点間の水平方向の距離を算出することにより、実空間における計測点間の水平方向の距離Lh(n)を算出する場合を模式的に示した図である。
図12(A)に示すように、この方法は、例えば、360度カメラ画像12aで撮影した360度画像に含まれる構造物12bに設定した複数の点を含む線の実長Lh(n)を計測する場合に利用される。ユーザは、実長Lh(n)を求める場合には、
図12(B)に示すように、360度カメラ画像内の構造物に対して、水平方向に複数の計測点12c、12d、12e、及び12fの4点を指定する。ユーザによって指定された計測点は、上述した付加情報として仮想球体平面に描画される。
【0068】
この場合、制御装置302は、計測点12c、12d、12e、および12fのそれぞれを対象として式(2)~式(4)を用いた変換処理を行うことにより、計測点12c、12d、12e、および12fの実スケール3次元空間上における座標を求める。そして、実スケール3次元空間上における計測点12cと12dの間の距離、計測点12dと12eの間の距離、および計測点12eと12fの間の距離をそれぞれ算出して、これらを合計することにより、計測点12c、12d、12e、および12fで構成される線の実長Lh(n)を計測することができる。
【0069】
図13は、地盤に対して任意角面(ヨー角、ピッチ角)を持つ平面上に任意に指定された計測点間の該平面上での距離を算出することにより、実空間における計測点間の平面上における距離Ld(n)を算出する場合を模式的に示した図である。
図13(A)に示すように、この方法は、例えば、360度カメラ画像13aで撮影した360度画像に含まれる地盤に対してヨー角とピッチ角をもつ平面13bに設定した複数の点を含む線の実長Ld(n)を計測する場合に利用される。ユーザは、実長Ld(n)を求める場合には、
図13(B)に示すように、360度カメラ画像内の平面上に複数の計測点13c、13d、13e、及び13fの4点を指定する。ユーザによって指定された計測点は、上述した付加情報として仮想球体平面に描画される。
【0070】
この場合、制御装置302は、計測点13c、13d、13e、および13fのそれぞれを対象として式(2)~式(4)を用いた変換処理を行うことにより、計測点13c、13d、13e、および13fの実スケール3次元空間上における座標を求める。そして、実スケール3次元空間上における計測点13cと13dの間の距離、計測点13dと13eの間の距離、および計測点13eと13fの間の距離をそれぞれ算出して、これらを合計することにより、計測点13c、13d、13e、および13fで構成される線の実長Ld(n)を計測することができる。
【0071】
制御装置302は、上記の処理によって計測点に基づいて計測した距離の情報を付加情報として仮想球体平面に描画して、付加情報を更新する。これによって、ユーザによって指定された計測点に基づいて算出した距離の情報を付加情報に含めて記録することができる。また、上述したように、画像表示機器500での閲覧時には描画された付加情報を360度カメラ画像の回転等に対して追従して表示することができるため、画像表示機器500を装着した人物は、360度カメラ画像とともに、計測点に基づいて測定された距離情報も閲覧することができる。また、本実施の形態では、実スケール3次元空間上における計測点間の距離を算出することができるため、算出した距離を用いれば、360度カメラ画像内に存在する構造物等の実スケール3次元空間上における面積や体積も求めることが可能となる。これによって、本実施の形態における画像処理システム10は、以下の(A)~(F)に示すような場面での活用が期待できる。
【0072】
(A)災害時における応急調査や復旧計画
河川堤防の破堤などにおいて、破堤長さや面積の計測において計測機器や精密機器を使用せずに360度カメラ画像のみで形状や流出土量を算定できる。また、計測結果を使用して応急復旧に使用する土量数を簡単に算出できるようになる。災害時は現場が混乱していることや土壌が悪いことから計測機器の使用が制限される中、非常に有効なシステムとなる。また、計測機器を使用すると計測データから必要なデータを抽出し、関係者に配信するにはデータ加工しなければならない。しかし、本システムは、このデータ加工の作業も不要であることから非常に迅速な応急復旧計画を作成できる。
【0073】
(B)狭所空間における形状の概略計測
狭所空間において計測機器が使用できない状態や人が入れない空間においても簡単に物体計測を実施できる。360度カメラ100が入るスペースがあれば計測できるため、多様な利用方法が考えられる。例えば、人が入れない下水道管や橋梁内部の距離を計測したり、建物の天井裏の状況を計測したり、災害時で生じた狭所空間の内部の計測など計測機器を搬入したり人が入れない場所の計測ができる。
【0074】
(C)建物などへの搬入・搬出計画
建物において機械や重機など大型の物体を搬入・搬出する際、本システムにて簡単に開口部の大きさを計測できることから円滑な活動が可能となる。図面等で判断もできるが、図面が管理されていないことが多い場合、経時的な変化で形状が変わった場合でも機器搬入ルートの確認を迅速かつ簡単に実施できるようになる。
【0075】
(D)逐次変化する動植物などの生育状況の効果的な観察
360度カメラ100で動植物の成長や大きさの効果的な観測が可能である。360度カメラ100で撮影された静止画や動画にて計測できるため、動植物に接触することなく計測できることは自然保護の観点でも効果的である。
【0076】
(E)経時的に変化する状況の効果的な観察
360度カメラ画像の動画や定点観測で画像上にマーカを添付することで物体の移動状態を観測したり移動量を把握したりすることができる。例えば、河川にある浮島の移動距離や大きさの変化を特別な機材(レーザ測量等)を使用せずとも計測および観測できる。
【0077】
(F)発展途上国において計測機器の購入や利用が困難な地区での簡易測量
発展途上国において、レーザ計測機器を広く普及させるためには、費用や技術などの相応の支援が必要である。本システムを使用すれば360度カメラ100とシステムを導入するだけで道路計測、土地計測、施工状況の把握が視覚的に可能となる。計測機器は、数値を判断しなければならないが、本システムは、必要な点をポイントするだけで計測できるため、どのような地区でも利用できる。
【0078】
図14は、本実施の形態におけるサーバ300で実行される仮想球体平面設定処理の流れを示すフローチャートである。
図14に示す処理は、仮想球体平面の設定タイミングにおいて起動するプログラムとして、制御装置302によって実行される。なお、仮想球体平面の設定タイミングは特に限定されないが、例えば、ユーザによって指示されたタイミング、あらかじめ設定されたタイミング、360度カメラ画像が記憶媒体303に記録されたタイミングなどが想定される。また、
図14においては、記憶媒体303には、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像があらかじめ記憶されているものとする。
【0079】
ステップS10において、制御装置302は、上述したように、記憶媒体303に記録されている360度カメラ画像に対して、式(1)によって算出される半径の仮想球体平面を設定する。その後、ステップS20へ進む。
【0080】
ステップS20では、制御装置302は、上述したように、実スケール3次元空間と仮想球体平面を合成して、360度カメラ画像の外側に仮想球体平面を設定した仮想球体平面レイヤ画像を生成する。その後、ステップS30へ進む。
【0081】
ステップS30では、制御装置302は、ステップS20で生成した仮想球体平面レイヤ画像を記憶媒体303に記録する。その後、処理を終了する。
【0082】
図15は、本実施の形態におけるサーバ300で実行される変換処理の流れを示すフローチャートである。
図15に示す処理は、変換処理の開始タイミングにおいて起動するプログラムとして、制御装置302によって実行される。なお、変換処理の開始タイミングは特に限定されないが、例えば、ユーザによって指示されたタイミング、あらかじめ設定されたタイミング、仮想球体平面に付加された付加情報に計測点が含まれることを検出したタイミングなどが想定される。また、
図15においては、記憶媒体303には、仮想球体平面に付加情報を描画した後の仮想球体平面レイヤ画像があらかじめ記憶されているものとする。
【0083】
ステップS110において、制御装置302は、上述したように、仮想球体平面上における計測点がある面に2つの点を設定し、式(2)で表される写像マトリックスdetAを作成する。その後、ステップS120へ進む。
【0084】
ステップS120では、制御装置302は、上述したように、写像マトリックdetAを用いて式(3)により仮想球体平面上に指定された計測点を実スケール3次元空間上の点に変換する。その後、ステップS130へ進む。
【0085】
ステップS130では、制御装置302は、上述したように、式(3)によって求めた点を、写像マトリックスdetBを用いて式(4)により実スケール3次元空間に写像することによって、式(3)によって求めた点をジャイロの傾きを考慮した実スケール3次元空間上の点に変換する。その後、ステップS140へ進む。
【0086】
ステップS140では、制御装置302は、仮想球体平面レイヤ画像に含まれるすべての計測点に対してステップS110~ステップS130の処理が完了したか否かを判断する。ステップS140で肯定判断した場合には処理を終了する。これに対して、ステップS140で否定判断した場合には、ステップS110へ戻り、ステップS110~ステップS130の処理が完了していない計測点を対象としてステップS110~ステップS130の処理を繰り返す。
【0087】
図16は、本実施の形態におけるサーバ300で実行される距離算出処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示す処理は、距離算出処理の開始タイミングにおいて起動するプログラムとして、制御装置302によって実行される。なお、距離算出処理の開始タイミングは特に限定されないが、例えば、ユーザによって指示されたタイミング、あらかじめ設定されたタイミング、
図15に示した変換処理が終了したタイミングなどが想定される。
【0088】
ステップS210において、制御装置302は、上述したように、実スケール3次元空間上の点に変換された2つの点の間の距離を座標の平方から算出する。その後、ステップS220へ進む。
【0089】
ステップS220では、制御装置302は、ステップS210で算出した2点間の距離の情報を仮想球体平面レイヤ画像の付加情報に記録する。その後、処理を終了する。
【0090】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)制御装置302は、360度カメラ画像の外側に非ユークリッド平面である仮想球体平面を設定し、360度カメラ画像内に計測点の指定を受け付け、指定された計測点を仮想球体平面に描画し、仮想球体平面に描画された計測点の座標を実空間と同じ正系の3次元空間における座標に変換し、変換した2つの計測点間の距離を算出するようにした。これによって、360度カメラ画像内に計測点が指定されると、2つの計測点間の実空間と同じ正系の3次元空間における距離を算出することができる。
【0091】
(2)制御装置302は、360度カメラ画像の撮影位置から計測点までの距離を算出するようにした。これによって、360度カメラ100から計測点までの実空間上における距離を算出することができる。
【0092】
(3)制御装置302は、360度カメラ画像と仮想球体平面とを合成して仮想球体平面レイヤ画像を生成するようにした。これによって、付加情報が描画された仮想球体平面を360度カメラ画像に合成した仮想球体平面レイヤ画像を生成することができる。
【0093】
(4)制御装置302は、極座標系を直行座標系に変換するための写像マトリックスdetAと、直行座標系を全天球画像を撮影したカメラの傾きを考慮して実空間と同じ正系の3次元空間に写像するための写像マトリックスdetBとを用いて変換処理を行うようにした。これによって、仮想球体平面に描画された計測点の座標を実スケール3次元空間における座標に変換することができる。
【0094】
(5)制御装置302は、式(5)を用いて変換することにより、実スケール3次元空間上の計測点の座標を緯度経度を加えて電子地図上にマッピングできる座標に変換するようにした。これによって、仮想球体平面に描画された計測点を電子地図上にマッピングすることができる。
【0095】
―変形例―
なお、上述した実施の形態の画像処理システムは、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、360度カメラ100は、無線または有線の通信技術を利用して画像送信端末200に接続されており、360度カメラ100で撮影された360度カメラ画像のデータは画像送信端末200へ送信された後に、画像送信端末200からサーバ300へ送信する例について説明した。しかしながら、360度カメラ100が通信機能を備えており、サーバ300と直接通信が可能な場合には、画像送信端末200は設けなくてもよい。
【0096】
(2)上述した実施の形態において、ユーザは、ユーザ端末400を操作して仮想球体平面レイヤ画像に線、マーカ、矢印、コメント、または計測点などの付加情報を描画する例について説明した。このとき、ユーザ端末400では、制御装置403は、ユーザによって仮想球体平面レイヤ画像の表示が指示されると、サーバ300にアクセスしてサーバ300の記憶媒体303から仮想球体平面レイヤ画像を取得して、表示装置405に表示するようにした。しかしながら、サーバ300では、制御装置302は、アクセス元のユーザ端末400のユーザがサーバ300にアクセス可能なIDを有している場合にのみ、サーバ300へのアクセスを許可するようにしてもよい。
【0097】
(3)上述した実施の形態では、計測点の座標変換に用いる写像マトリックスは、極座標を実距離座標に変換するための写像マトリックスdetAと、実距離座標を実緯度経度にマッピングする写像マトリックスdetBとを用いる例について説明した。しかしながら、写像マトリックスは、写像マトリックスdetAと写像マトリックスdetBを合成した1つの合成マトリックスとして表現してもよい。
【0098】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。また、上述の実施の形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 画像処理システム
100 360度カメラ
101 撮像部
102 制御装置
103 通信インターフェース
200 画像送信端末
201 タッチパネル
202 通信インターフェース
203 制御装置
300 サーバ
301 通信インターフェース
302 制御装置
303 記憶媒体
400 ユーザ端末
401 操作部材
402 通信インターフェース
403 制御装置
404 記憶媒体
405 表示装置
500 画像表示機器
501 通信インターフェース
502 制御装置
503 ディスプレイ