(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003540
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20230110BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20230110BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20230110BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K9/19 Z
H02K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104673
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】千葉 良平
(72)【発明者】
【氏名】河村 隼也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晶裕
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605DD01
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5H605DD13
5H605EB10
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5H609BB03
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5H609RR26
5H609RR36
5H609RR37
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5H609RR58
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】電動機を作動させる作動装置の冷却効率を向上させることができる電動機を提供する。
【解決手段】減速機付き電動機ユニット100は、電動機101のハウジング104の内部に冷却流路106を備えているとともに外表面上に外側収容部130が形成されている。冷却流路106は、ハウジング104を構成する筒状の胴体105に冷却水を流通させる管路として形成されている。外側収容部130は、冷却流路106に隣接する熱交換部107を外側収容部形成カバー131で覆って形成されており、第1領域132と第2領域133a,133bとで構成されている。第1領域132は、熱交換部107に対向して形成されている。第2領域133a,133bは、第1領域132における胴体105の軸方向に直交する幅方向の両端部に溝状に形成されている。第2領域133a,133bには、回路基板142bおよびバスバー144が配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動するロータを収容する収容空間を形成するハウジングを備えた電動機であって、
前記ハウジングは、
前記収容空間を冷却するための冷却流体を流通させる冷却流路と、
前記ハウジングの外周部における前記冷却流路に隣接する部分を覆って同部分との間に外側収容部を形成する外側収容部形成カバーと、
前記外側収容部内に配置されて前記電動機の作動に用いられる作動装置とを備え、
前記外側収容部は、
前記ロータの軸線方向に直交する幅方向に延びる第1領域と、
前記第1領域における前記幅方向の両端部のうちの少なくとも一方の端部に前記冷却流路に向かって延びて形成された第2領域とを有していることを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載した電動機において、
前記第2領域は、
前記ハウジングに溝状に窪んで形成された第2領域形成部によって形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した電動機において、
前記第2領域は、
前記第1領域における前記ロータの軸線方向の全域に形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した電動機において、
前記作動装置は、前記第2領域内に配置されていることを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項4に記載した電動機において、
前記作動装置は、
前記電動機の作動を制御する回路基板であることを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項5に記載した電動機において、
前記回路基板は、
前記第1領域の中央側に傾斜した状態で配置されていることを特徴とする電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動するロータを収容する収容空間を形成するハウジングを備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動機のハウジングにインバータなどの電気機器が取り付けられた電動機が提案されている。例えば、下記特許文献1には、冷却剤が流動するチャネルが形成された電動機の主シェル上にインバータを収容するハウジングが取り付けられた電気駆動システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電気駆動システムにおいては、電動機の主シェルに形成した支持プラットフォームに対してインバータのハウジングが取り付けられているため、ハウジング内のインバータの冷却効率が低いという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、電動機を作動させる作動装置の冷却効率を向上させることができる電動機を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、回転駆動するロータを収容する収容空間を形成するハウジングを備えた電動機であって、ハウジングは、収容空間を冷却するための冷却流体を流通させる冷却流路と、ハウジングの外周部における冷却流路に隣接する部分を覆って同部分との間に外側収容部を形成する外側収容部形成カバーと、外側収容部内に配置されて電動機の作動に用いられる作動装置とを備え、外側収容部は、ロータの軸線方向に直交する幅方向に延びる第1領域と、第1領域における幅方向の両端部のうちの少なくとも一方の端部に冷却流路に向かって延びて形成された第2領域とを有していることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、電動機は、ハウジングの外周部における冷却流路に隣接する部分が外側収容部形成カバーで覆われて外側収容部が形成されるとともに、この外側収容部内にロータの軸線方向に直交する幅方向に延びる第1領域と第1領域における幅方向の両端部のうちの少なくとも一方の端部に冷却流路に向かって延びて形成された第2領域とを有している。これにより、本発明に係る電動機は、外側収容部内を第1領域に加えて冷却流路に接近して形成された第2領域によって効率的に冷却することができ、外側収容部内に配置した作動装置の冷却効率を向上させることができる。また、本発明に係る電動機によれば、外側収容部内に第2領域を設けることで上記した従来の電動機の主シェルから張り出した支持プラットフォームが不要となり、電動機自体を小型化することもできる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機において、第2領域は、ハウジングに溝状に窪んで形成された第2領域形成部によって形成されていることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機は、第2領域がハウジングに溝状に窪んで形成された第2領域形成部によって形成されているため、第2領域内の冷気の外部への逃げを効果的に抑制することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機において、第2領域は、第1領域におけるロータの軸線方向の全域に形成されていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機は、第2領域が第1領域におけるロータの軸線方向の全域に形成されているため、外側収容部内の表面積を増やして冷却能力を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機において、作動装置は、第2領域内に配置されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機は、作動装置が第2領域内に配置されているため、第2領域内に配置した作動装置を迅速かつ安定的に冷却することができるとともに第2領域に作動装置を配置することで外側収容部内に収容できる作動装置の数または大きさを拡大することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機において、作動装置は、電動機の作動を制御する回路基板であることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機は、作動装置が電動機の作動を制御する回路基板であるため、回路基板を効果的に冷却することができ電動機の作動を安定化させることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機において、回路基板は、第1領域の中央側に傾斜した状態で配置されていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機は、回路基板が第1領域の中央側に傾斜した状態で配置されているため、外側収容部内に長尺の回路基板を効率的に収容することができ、外側収容部の大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る電動機を備えた減速機付き電動機ユニットの全体構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す減速機付き電動機ユニットの内部構成の概略を示す縦断面図である。
【
図3】
図2に示す3-3線から見た減速機付き電動機ユニットの内部構成の概略を示す横断面図である。
【
図4】
図1に示す減速機付き電動機ユニットにおける減速機収容空間および外側収容部の構成を示すために減速機ケースおよび外側収容部形成カバーの図示を省略した前方からの斜視図である。
【
図5】
図1に示す減速機付き電動機ユニットにおける外側収容部の構成を示すために外側収容部形成カバーの図示を省略した後方からの斜視図である。
【
図6】本発明の変形例に係る電動機を備えた減速機付き電動機ユニットの内部構成の概略を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る電動機の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る電動機101を備える減速機付き電動機ユニット100の全体構成の概略を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示す減速機付き電動機ユニット100の内部構成の概略を示す縦断面図である。また、
図3は、
図2に示す3-3線から見た減速機付き電動機ユニット100の内部構成の概略を示す横断面図である。この電動機101は、二輪、三輪、四輪または無限軌道で走行する車両(カートまたはバギーを含む)などの自走式車両の駆動源である。
【0020】
(電動機101の構成)
減速機付き電動機ユニット100は、電動機101を備えている。電動機101は、自走式車両の駆動輪を回転駆動するための回転駆動力を発生させる駆動源である。本実施形態においては、電動機101は、自走式二輪車を駆動させる同期モータで構成されている。
【0021】
電動機101は、主として、ステータ102、ロータ103およびハウジング104をそれぞれ備えて構成されている。ステータ102は、三相交流によって回転磁界を生じさせるための部品であり、鉄心の外周部に巻線が設けられて筒状に形成されている。このステータ102は、ハウジング104を構成する胴体105内に固定的に取り付けられている。
【0022】
ロータ103は、ステータ102が発生させる回転磁界によって回転する部品であり、棒状に延びるシャフトの外周部に永久磁石が取り付けられて構成されている。このロータ103は、ステータ102を貫通した状態で胴部内に配置されている。この場合、ロータ103における一方の端部側は、出力側蓋体110を貫通した状態で回転自在に支持されている。この場合、ロータ103における出力側蓋体110を貫通して露出した部分が電動機101の出力軸となる。また、ロータ103における他方側の端部が後部側蓋体111に回転自在な状態で支持されている。なお、
図3においては、ステータ102およびロータ103の図示をそれぞれ省略している(
図6も同様)。
【0023】
ハウジング104は、ステータ102およびロータ103を収容する収容空間104aを形成する部品であり、主として、胴体105、出力側蓋体110および後部側蓋体111をそれぞれ備えて構成されている。胴体105は、ステータ102およびロータ103の各主要部を収容する部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を筒状に形成して構成されている。この胴体105は、円筒状に形成された内部空間である収容空間104aにおいてステータ102を支持しているとともに、出力側蓋体110および後部側蓋体111によって回転自在に支持されたロータ103が貫通した状態で配置されている。また、胴体105は、収容空間104aを形成する筒状部分の内部に冷却流路106が形成されている。
【0024】
冷却流路106は、ハウジング104の収容空間104aおよび外側収容部130をそれぞれ冷却するための冷却流体を液密的かつ気密的に流通させるための管路であり、前記筒状部分の長手方向および周方向にそれぞれ延びて形成されている。この冷却流路106は、ハウジング104の収容空間104aを外側覆うように形成されている。すなわち、冷却流路106は、前記筒状部分の全体に略均等に形成されている。
【0025】
この冷却流路106は、胴体105の外周面に冷却流体の導入または排出するための管状の導入部106aおよび排出部106bがそれぞれ繋がっている。この場合、導入部106aおよび排出部106bは、冷却流体を冷却流路106内で循環させるための送液ポンプ(図示せず)に接続されている。また、冷却流路106は、胴体105を軸線方向に貫通しており、出力側蓋体110および後部側蓋体111の各壁面が面している。なお、冷却流路106は、胴体105を軸線方向に貫通しないように形成することも可能である。
【0026】
冷却流体は、ハウジング104の収容空間104aおよび外側収容部130との間で前記筒状部分を介してそれぞれ熱交換するための物質であり、液体によって構成されている。この場合、冷却流体は、水または油などの流体で構成することができる。本実施形態においては、冷却流体は、水で構成されている。
【0027】
また、胴体105の外表面の一部には、
図4および
図5にそれぞれ示すように、熱交換部107が形成されている。熱交換部107は、外側収容部130の一部を形成するとともに、前記冷却流路106と外側収容部130との間で熱交換する部分であり、冷却流路106に隣接する位置に同冷却流路106に対向して形成されている。本実施形態においては、熱交換部107は、胴体105の軸線方向に延びる平面視で長方形状の平坦面で構成されている。この場合、熱交換部107は、胴体105の軸線方向に直交する幅方向の中央部が冷却流路106に最も接近するように肉厚が最も薄く形成されている。この熱交換部107は、胴体105の軸線方向に直交する幅方向の両端部に第2領域形成部108a,108bがそれぞれ形成されている。
【0028】
第2領域形成部108a,108bは、第2領域133a,133bをそれぞれ形成するとともに冷却流路106との間で効率的な熱交換を行うための部分であり、熱交換部107から冷却流路106に向かって有底の溝状に延びて形成されている。この場合、第2領域形成部108a,108bの底部は、平坦面に形成することもできるが、本実施形態においては冷却流路106に沿って隣接して延びるように溝幅を徐々に狭くした尖った形状に形成されている。
【0029】
出力側蓋体110は、筒状に形成された胴体105の一方の端部に取り付けられる部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を周縁部が起立した板状体に形成して構成されている。この出力側蓋体110は、筒状に形成された胴体105の一方の端部を塞ぐとともにロータ103における一方の端部を回転自在に支持する。この場合、出力側蓋体110は、前記冷却流路106も塞いでいる。また、出力側蓋体110は、減速機120の出力軸123の一方の端部を回転自在な状態で支持している。また、出力側蓋体110は、外側収容部130に面して同外側収容部130の一部も形成している。この出力側蓋体110は、胴体105に対してボルト(図示せず)によって取り付けられている。
【0030】
後部側蓋体111は、筒状に形成された胴体105の他方の端部に取り付けられる部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を板状に形成して構成されている。この後部側蓋体111は、筒状に形成された胴体105の他方の端部を塞ぐとともにロータ103における他方の端部を回転自在に支持する。この場合、後部側蓋体111は、前記冷却流路106も塞いでいる。この後部側蓋体111は、胴体105に対してボルト(図示せず)によって取り付けられている。また、後部側蓋体111の外側面は、空間を介して後部側カバー112で覆われており、この空間内にはロータ103の回転角度を検出する検出装置(図示せず)が設けられている。
【0031】
減速機120は、電動機101の回転速度を減速して出力する機械装置であり、主として、第1歯車121、第2歯車122および減速機ケース124をそれぞれ備えて構成されている。第1歯車121は、第2歯車122と噛み合って電動機101のロータ103の回動速度を減速、換言すれば、ロータ103のトルクを増大させるための部品であり、ロータ103と一体的に回動する平歯車で構成されている。この場合、第1歯車121は、第2歯車122に対して外形が小さくかつ歯数が少なく形成されている。
【0032】
第2歯車122は、前記第1歯車121と噛み合って電動機101のロータ103の回動速度を減速、換言すれば、ロータ103のトルクを増大させるための部品であり、丸棒に延びる出力軸123と一体的に回転する平歯車で構成されている。この場合、第2歯車122は、前記第1歯車121に対して外形が大きくかつ歯数が多く形成されている。また、出力軸123は、回転駆動力を出力する軸状の部分であり、先端部に出力先に連結するためのスプライン(図示せず)が形成されている。
【0033】
減速機ケース124は、出力側蓋体110とともに第1歯車121および第2歯車122をそれぞれ収容する減速機収容空間125を形成するための部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を周縁部が起立した板状体に形成して構成されている。この減速機ケース124は、第1歯車121および第2歯車122をそれぞれ覆った状態で出力側蓋体110にボルトを介して取り付けられることで内部空間に減速機収容空間125を形成する。すなわち、減速機ケース124は、電動機101の外表面を部分的に覆うことで減速機収容空間125を形成している。この場合、減速機ケース124は、出力軸123を貫通させた状態で回転自在に支持している。
【0034】
減速機収容空間125は、第1歯車121および第2歯車122をそれぞれ収容する空間である。この場合、減速機収容空間125は、外側収容部130に少なくとも一部が隣接するように形成されている。
【0035】
外側収容部130は、作動装置140を収容するための空間部分であり、冷却流路106に隣接して形成されている。この外側収容部130は、熱交換部107が外側収容部形成カバー131で覆われることで形成されている。
【0036】
外側収容部形成カバー131は、外側収容部130を形成するための部品であり、炭素鋼などの鉄系金属またはアルミニウムなどの非鉄系金属などの金属板を胴体105の軸線方向に延びる半円のドーム状に湾曲させて形成されている。この外側収容部形成カバー131は、ボルトを介して熱交換部107上に着脱自在に取り付けられている。これにより、外側収容部130は、気密的に形成さている。すなわち、外側収容部形成カバー131は、電動機101の外表面を部分的に覆うことで外側収容部130を形成している。
【0037】
ここで、外側収容部130内に収容される気体は、冷却流体との間でそれぞれ熱交換可能な気体であり、空気または不活性ガス(窒素、ヘリウムまたはアルゴンなど)などの気体で構成されている。本実施形態においては、外側収容部130内に収容される気体は、空気によって構成されている。この場合、空気は、湿度が50%以下、好ましくは20%以下に調整されているとよい。
【0038】
この外側収容部130は、主として、第1領域132と第2領域133a,133bとが一体的に繋がって形成されている。第1領域132は、熱交換部107と外側収容部形成カバー131との間に形成された部分であり、半円ドーム状の空間で構成されている。この第1領域132は、熱交換部107の全域に亘って形成されている。
【0039】
第2領域133a,133bは、第1領域132における胴体105の軸線方向に直交する幅方向の両端部に凹状に窪んでそれぞれ形成されている。これらの第2領域133a,133bは、熱交換部107から冷却流路106に向かって有底の溝状に延びて形成されている。また、各第2領域133a,133bは、第1領域132における胴体105の軸線方向の全域に亘って連続的に延びて形成されている。
【0040】
作動装置140は、電動機101を作動させるための電気機器であり、主として、支持台141、制御装置142および電源部143をそれぞれ備えて構成されている。支持台141は、制御装置142および電源部143を支持するための部品であり、樹脂材などの不導体の材料を直方体状の枠体に形成して構成されている。この支持台141は、熱交換部107上にボルトを介して取り付けられている。
【0041】
制御装置142は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されるとともに、電動機101の作動を制御するためのインバータ、昇圧コンバータおよびDCDCコンバータなどからなるパワーコントールユニット(PCU)などを備えて構成されている。また、制御装置142は、電源部143および冷却流路106内に冷却流体を循環させる送液ポンプ(ウォータポンプ)の作動もそれぞれ制御する。この制御装置142は、本実施形態においては、2つの回路基板142a,142bおよびインターフェース端子142cを備えて構成されている。
【0042】
回路基板142aは、第1領域132内において支持台141の外側に熱交換部107と平行な姿勢で取り付けられている。回路基板142bは、一部が第1領域132内に位置するとともに他の一部が第2領域133a内に位置した状態で支持台141に取り付けられている。この場合、回路基板142bは、第1領域132における胴体105の軸線方向に直交する幅方向の中央部側に傾斜した姿勢で配置されている。
【0043】
インターフェース端子142cは、制御装置142を外部の機器に電気的に接続するための部品であり、外側収容部形成カバー131を貫通した状態で外側収容部形成カバー131上に露出した状態で取り付けられている。これらの2つの回路基板142a,142bおよびインターフェース端子142cは、互いに電気的に接続されている。
【0044】
電源部143は、電動機101に供給する三相交流を生成するための電気機器であり、基板上に複数のコンデンサを備えて構成されている。この電源部143は、支持台141の内部空間にボルトを介して取り付けられている。この場合、電源部143は、外側収容部形成カバー131を貫通した状態で電源接続部143aが外部に露出しており、自走式車両のバッテリー(図示せず)から電力供給を受ける。
【0045】
この電源部143は、バスバー144を介して電動機101のステータ102に電気的に接続されている。バスバー144は、電動機101のステータ102に三相交流の電力を供給するための部品であり、銅板によって構成されている。このバスバー144は、外側収容部130における第2領域133b内を延びて配置されるとともに、第2領域形成部108bの底部を貫通してステータ102に接続されている。
【0046】
(電動機101の作動)
次に、このように構成した電動機101を備えた減速機付き電動機ユニット100の作動について説明する。この減速機付き電動機ユニット100は、自走式車両の駆動輪を駆動させる駆動源として自走式車両内に搭載される。この場合、減速機付き電動機ユニット100は、自走式車両内において、外側収容部130が電動機101に対して上方、下方または側方に位置するように配置することができる。そして、この減速機付き電動機ユニット100は、自走式車両の作動を総合的に制御する車両制御装置(図示せず)によって作動が制御される。
【0047】
車両制御装置は、自走式車両の運転者による起動操作によって電動機101を駆動させる。この場合、制御装置142は、送液ポンプを起動させることで電動機101の冷却流路106内に冷却流体を流動させる。これにより、電動機101は、ハウジング104の収容空間104a内の空気が冷却されてハウジング104内の温度上昇が抑制される。また、外側収容部130は、熱交換部107を介して冷却流路106と隣接しているため、外側収容部130内の空気が冷却されて温度上昇が抑制される。
【0048】
この場合、外側収容部130は、第1領域132が主として熱交換部107によって冷却されるとともに、第2領域133a,133bが主として第2領域形成部108a,108bをそれぞれ介して冷却される。これにより、作動装置140は、回路基板142a、回路基板142bの一部(第1領域132内に位置する部分)および電源部143が主として第1領域132によって冷却される。また、作動装置140は、回路基板142bの他の一部(第2領域133a内に位置する部分)および電源部143のバスバー144が主として第2領域133a,133bによって冷却される。
【0049】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、電動機101は、ハウジング104の外周部における冷却流路106に隣接する部分が外側収容部形成カバー131で覆われて外側収容部130が形成されるとともに、この外側収容部130内にロータ103の軸線方向に直交する幅方向に延びる第1領域132と第1領域132における幅方向の両端部に冷却流路106に向かって延びて形成された第2領域133a,133bとをそれぞれ有している。これにより、本発明に係る電動機101は、外側収容部130内を第1領域132に加えて冷却流路106に接近して形成された第2領域133a,133bによって効率的に冷却することができ、外側収容部130内に配置した作動装置140の冷却効率を向上させることができる。また、本発明に係る電動機101によれば、外側収容部130内に第2領域133a,133bを設けることで上記した従来の電動機の主シェルから張り出した支持プラットフォームが不要となり、電動機101自体を小型化することもできる。
【0050】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態における減速機付き電動機ユニット100と同様の構成部分には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、外側収容部130は、2つの第2領域133a,133bを備えて構成した。しかし、外側収容部130は、第1領域132の幅方向の両端部のうちの少なくとも一方に第2領域133a(または第2領域133b)を備えて構成されていればよい。
【0052】
また、第2領域133a,133bは、第1領域132における胴体105の軸線方向の全域に亘って連続的に延びて形成されている。しかし、第2領域133a,133bのうちの少なくとも一方は、第1領域132における胴体105の軸線方向の全域に亘って断続的に延びて形成されていてもよい。また、第2領域133a,133bのうちの少なくとも一方は、第1領域132における胴体105の軸線方向の一部にのみ形成されていてもよい。この場合、第2領域133a,133bは、第1領域132内に配置される回路基板142aに対向する位置に回路基板142aと同じ長さで形成してもよいし、回路基板142bの大きさに応じた大きさに形成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、第2領域133a,133bは、回路基板142bおよびバスバー144をそれぞれ収容した。すなわち、第2領域133a,133bは、作動装置140を収容した。しかし、第2領域133a,133bは、回路基板142bおよびバスバー144以外の機器、例えば、電源部143を収容してもよいし、作動装置140などの機器を一切収容することなく空洞空間として使用することもできる。なお、作動装置140は、外側収容部130における第1領域132に配置することなく、第2領域にのみ配置することもできる。
【0054】
また、上記実施形態においては、外側収容部130内に設けられる作動装置140は、支持台141、制御装置142および電源部143によって構成した。しかし、作動装置140は、電動機101の作動に用いられる機器であればよい。したがって、作動装置140は、制御装置142および電源部143のうちの少なくとも一方で構成することもできる。
【0055】
また、上記実施形態においては、回路基板142bは、第1領域132の幅方向の中央部側に傾斜した状態で配置した。これにより、電動機101は、外側収容部130内に長尺の回路基板142bを効率的に収容することができ、外側収容部130の大型化を抑えることができる。しかし、回路基板142bは、第1領域132の幅方向に直交する姿勢(
図3において上方に起立した姿勢)、または第1領域132の幅方向に中央部側とは反対側に傾斜した姿勢で配置することもできる。
【0056】
また、回路基板142bは、電動機101を自走式車両内に設置した場合に鉛直方向に対して直交する水平方向以外の姿勢であって、鉛直方向または同鉛直方向に対して水平方向未満(90°未満)の角度で傾斜した姿勢となるように第2領域133a内に配置することができる。これによれば、電動機101は、回路基板142bにおける冷却流路106側に生じた熱が回路基板142b自身によって籠ることなく上方に逃げるため、回路基板142bが過熱されることを防止することができる。
【0057】
また、上記実施形態においては、第2領域133a,133bは、ハウジング104に溝状に窪んで形成された第2領域形成部108a,108bによってそれぞれ形成されている。これにより、電動機101は、第2領域133a,133b内の冷気の外部への逃げを効果的に抑制することができる。しかし、第2領域133a,133bのうちの少なくとも一方は、
図6に示すように、ハウジング104の外周部分に切欠き状の第2領域形成部108a,108bをそれぞれそれ形成することで、これらの第2領域形成部108a,108bと外側収容部形成カバー131とでこれらの間の空間に形成することもできる。
【0058】
また、減速機付き電動機ユニット100は、減速機120を電動機101の回転速度を減速するように構成した。しかし、減速機120は、電動機101の回転速度を変化させる機械装置であればよい。したがって、減速機120は、電動機101の回転速度を互いに変速比の異なる複数の変速段を切り替えながら変速する変速機のほか、電動機101の回転速度を増速する増速機で構成することもできる。すなわち、本願における減速機には、変速機および増速機を含むものである。また、電動機101は、減速機120を省略して構成することもできる。
【0059】
また、上記実施形態においては、減速機120は、第1歯車121および第2歯車122を用いて減速機構を構成した。しかし、減速機120は、他の構造例えば、遊星ギアを用いた構造によって減速機構をそれぞれ構成してもよいことは当然である。
【0060】
また、上記実施形態においては、電動機101は、同期モータで構成した。しかし、電動機101は、同期モータ以外のモータ、例えば、誘導モータなどの他のACモータのほか、各種DCモータで構成することもできる。
【0061】
また、上記実施形態においては、熱交換部107は、胴体105の軸線方向に直交する幅方向の中央部が冷却流路106に最も接近するように肉厚が最も薄く形成されている。しかし、熱交換部107は、胴体105の軸線方向および/または同軸線方向に直交する幅方向において冷却流路106に対して等間隔で形成することもできる。
【0062】
また、上記実施形態においては、減速機付き電動機ユニット100は、外側収容部形成カバー131をハウジング104に対して着脱自在に構成した。これにより、減速機付き電動機ユニット100は、外側収容部形成カバー131がハウジング104に対して着脱自在に設けられていることで外側収容部130内のメンテナンスを容易にすることができる。しかし、減速機付き電動機ユニット100は、外側収容部形成カバー131をハウジング104に対して固定的に取り付けることもできる。この場合、外側収容部形成カバー131は、ハウジング104と一体的に形成することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、冷却流路106は、筒状の胴体105の全周に亘って形成した。しかし、冷却流路106は、ハウジング104を構成する胴体105、出力側蓋体110および後部側蓋体111のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に形成されていればよい。また、冷却流路106は、必ずしも冷却流体が循環する必要はなく閉鎖領域として構成して単に貯留していてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、外側収容部130は、気密的に構成した。しかし、外側収容部130は、外気と連通する通気部を備えて構成することもできる。この場合、通気部は、外側収容部形成カバー131に設けた貫通孔で構成してもよいし、外側収容部形成カバー131と熱交換部107との間の隙間で構成することもできる。これによれば、減速機付き電動機ユニット100は、外側収容部130が外気と連通する通気部を備えているため、外側収容部130内の温度の上昇または低下による気体の体積変化に追従して圧力を一定にすることで外側収容部130の損傷を抑えることができるとともに外側収容部130の剛性の確保負担を抑えて構成を簡単化することができる。
【符号の説明】
【0065】
100…減速機付き電動機ユニット、101…電動機、102…ステータ、103…ロータ、104…ハウジング、104a…収容空間、105…胴体、106…冷却流路、106a…導入部、106b…排出部、107…熱交換部、108a,108b…第2領域形成部、
110…出力側蓋体、111…後部側蓋体、112…後部側カバー、
120…減速機、121…第1歯車、122…第2歯車、123…出力軸、124…減速機ケース、125…減速機収容空間、
130…外側収容部、131…外側収容部形成カバー、132…第1領域、133a,133b…第2領域、
140…作動装置、141…支持台、142…制御装置、142a,142b…回路基板、142c…インターフェース端子、143…電源部、143a…電源接続部、144…バスバー。