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特開2023-35436固体電池、電子機器及び電子機器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035436
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】固体電池、電子機器及び電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230306BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230306BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230306BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142282
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 聡
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL11
5H029AM12
5H029HJ12
5H029HJ18
(57)【要約】
【課題】汎用性の高い固体電池を実現する。
【解決手段】固体電池1は、電池本体1aと、電池本体1aに設けられて互いに分離された3つ以上の電極、例えば、4つの電極60、電極70、電極80及び電極90とを含む。電池本体1aは、電解質層50と、その一部によって互いに分離される複数の電極層とを有し、複数の電極層はそれぞれ、電極60、電極70、電極80及び電極90と接続される。固体電池1では、電極60、電極70、電極80及び電極90のうちのいずれか2つの電極を正極及び負極として選択可能であり、選択する2つの電極の組み合わせで電池電圧を変えることが可能になっている。これにより、1つの固体電池1を、異なる電池電圧を出力する固体電池として使用することができ、搭載可能な電子デバイスの種類を増やし、固体電池1の汎用性を高めることができる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極層と、前記複数の電極層間に設けられる電解質層とを有する電池本体と、
前記電池本体に設けられ、前記複数の電極層に接続される、互いに分離された3つ以上の電極と
を含み、
前記3つ以上の電極のうちのいずれか2つの電極を正極及び負極として選択可能であることを特徴とする固体電池。
【請求項2】
選択される前記2つの電極の異なる組み合わせでそれぞれ異なる電圧を示すことを特徴とする請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記3つ以上の電極の各々に、前記複数の電極層のうちの1層又は2層以上の電極層が接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電池。
【請求項4】
前記電池本体は、6面体の形状を有し、
前記電池本体の3面以上に前記3つ以上の電極がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の固体電池。
【請求項5】
前記複数の電極層のうち、選択される前記2つの電極にそれぞれ接続される電極層が、互いに異種の活物質を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の固体電池。
【請求項6】
前記複数の電極層のうち、選択される前記2つの電極にそれぞれ接続される電極層が、互いに同種の活物質を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の固体電池。
【請求項7】
複数の電極層と、前記複数の電極層間に設けられる電解質層とを有する電池本体と、
前記電池本体に設けられ、前記複数の電極層に接続される、互いに分離された3つ以上の電極と
を含み、
前記3つ以上の電極のうちのいずれか2つの電極を正極及び負極として選択可能である固体電池と、
前記2つの電極が選択された前記固体電池が搭載される電子デバイスと
を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
複数の電極層と、前記複数の電極層間に設けられる電解質層とを有する電池本体と、
前記電池本体に設けられ、前記複数の電極層に接続される、互いに分離された3つ以上の電極と
を含み、
前記3つ以上の電極のうちのいずれか2つの電極を正極及び負極として選択可能である固体電池を準備する工程と、
前記固体電池が搭載される電子デバイスの動作電圧に基づいて前記2つの電極を選択する工程と、
前記2つの電極が選択された前記固体電池を前記電子デバイスに搭載する工程と
を含むことを特徴とする電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池、電子機器及び電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池に関し、プレート状の本体部とその一方の面の外周に沿って設けられた外周凸状部とを備えた固体電解質を用い、その形状によって強度を高める技術が知られている。更に、固体電解質の外周凸状部で囲まれた領域に正極又は負極となる電極を配置した積層構造体を得る技術、その積層構造体を正極及び負極が交互になるように積層する技術が知られている。
【0003】
また、第1及び第2の電極層が電解質領域を介して交互に積層されるリチウムイオン二次電池に関し、その第1及び第2の電極層の活物質としてLiMnOを用い、正極と負極の区別が不要な無極性リチウムイオン二次電池を得る技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-152197号公報
【特許文献2】特開2011-216235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の電極層とそれらの間に設けられる電解質層とを有する電池本体を備えた固体電池では、正極層として機能する電極層に接続される正極の電極と、負極層として機能する電極層に接続される負極の電極の、2つの電極が設けられる。固体電池は、これら2つの電極の電位差、即ち、それらがそれぞれ接続される電極層(正極層及び負極層)の電位差で示される電圧(「電池電圧」と言う)で動作する。
【0006】
固体電池を電子デバイスに搭載する際には、その電子デバイスの動作に要する電圧(「動作電圧」と言う)を2つの電極から供給可能な電池電圧を示す固体電池が選択される。そのため、動作電圧が異なる電子デバイス毎に、電池電圧が異なる固体電池を準備することを要していた。従って、これまでの固体電池では、1種の動作電圧の供給に用途が限定されてしまい、搭載可能な電子デバイスの種類が限定的となることがあった。
【0007】
1つの側面では、本発明は、汎用性の高い固体電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、複数の電極層と、前記複数の電極層間に設けられる電解質層とを有する電池本体と、前記電池本体に設けられ、前記複数の電極層に接続される、互いに分離された3つ以上の電極とを含み、前記3つ以上の電極のうちのいずれか2つの電極を正極及び負極として選択可能である固体電池が提供される。
【0009】
また、別の態様では、固体電池が搭載された電子デバイスを含む電子機器、そのような電子機器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、汎用性の高い固体電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】固体電池の一例について説明する図(その1)である。
図2】固体電池の一例について説明する図(その2)である。
図3】固体電池の一例について説明する図(その3)である。
図4】固体電池の一例について説明する図(その4)である。
図5】固体電池の一例について説明する図(その5)である。
図6】固体電池の一例について説明する図(その6)である。
図7】固体電池の一例について説明する図(その7)である。
図8】固体電池の一例について説明する図(その8)である。
図9】固体電池の一例について説明する図(その9)である。
図10】固体電池の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
図11】固体電池の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
図12】固体電池の製造方法の一例について説明する図(その3)である。
図13】電極の選択の例について説明する図である。
図14】固体電池の第1の変形例について説明する図である。
図15】固体電池の第2の変形例について説明する図である。
図16】固体電池が搭載された電子デバイスを含む電子機器について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
正極活物質を含む正極層と、負極活物質を含む負極層との間に、酸化物固体電解質や硫化物固体電解質を用いた電解質層を設けるリチウムイオン電池等の固体電池が知られている。このような固体電池は、例えば、正極層及び負極層となる電極層、並びに固体電解質を用いた電解質層を、積層して熱圧着し、同時焼成することで、製造することができる。また、電極層の活物質として、LiMnO等のマンガン酸リチウムやFeSi等の鉄シリサイドといった適当な材料を用いることで、充電前又は充放電前は正極層と負極層の区別のない、無極性の固体電池を得ることもできる。リチウムイオンの伝導を利用する固体電池の場合、充電時には、正極層から電解質層を介して負極層にリチウムイオンが伝導して取り込まれ、放電時には、負極層から電解質層を介して正極層にリチウムイオンが伝導して取り込まれる。固体電池では、このようなリチウムイオン伝導によって充放電動作が実現される。製造される固体電池の性能に寄与する電極層のパラメータとしては、リチウムイオン伝導性及び電子伝導率があり、電解質層のパラメータとしては、リチウムイオン伝導性がある。
【0013】
ところで、固体電池では、正極層として機能する電極層に接続される正極の電極と、負極層として機能する電極層に接続される負極の電極の、2つの電極が設けられる。固体電池の動作時の電池電圧は、これら2つの電極の電位差、即ち、それらがそれぞれ接続される電極層(正極層及び負極層)の電位差で示される。従って、固体電池の電池電圧は、それに含まれる電極層の構成(正極層及び負極層に含有される活物質等の成分材料)に依存する。
【0014】
従来、固体電池を電子デバイスに搭載する際には、その電子デバイスの動作に要する動作電圧を2つの電極から供給可能な電池電圧を示す固体電池が選択されていた。そのため、動作電圧が異なる電子デバイス毎に、電池電圧が異なる固体電池を準備することを要していた。従って、これまでの固体電池では、1種の動作電圧の供給に用途が限定されてしまい、搭載可能な電子デバイスの種類が限定的となることがあった。
【0015】
そこで、以下に示すような手法を用い、1種の動作電圧の供給に用途が限定されない、汎用性の高い固体電池を実現する。
[固体電池]
まず、固体電池の構成について説明する。
【0016】
図1図9は固体電池の一例について説明する図である。
ここで、図1(A)には固体電池の電池本体の一例の要部斜視図を模式的に示し、図1(B)には電池本体に電極が設けられた固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。図2(A)には電池本体の一例の要部正面図を模式的に示し、図2(B)には固体電池の一例の要部正面図を模式的に示している。図3(A)には電池本体の一例の要部右側面図を模式的に示し、図3(B)には固体電池の一例の要部右側面図を模式的に示している。図4(A)には電池本体の一例の要部左側面図を模式的に示し、図4(B)には固体電池の一例の要部左側面図を模式的に示している。図5(A)には電池本体の一例の要部背面図を模式的に示し、図5(B)には固体電池の一例の要部背面図を模式的に示している。
【0017】
また、図6には固体電池の一例の要部平面図を模式的に示している。図7(A)には図6のI-I断面図を模式的に示している。図7(B)には図6のII-II断面図を模式的に示している。図8(A)には図6のIII-III断面図を模式的に示している。図8(B)には図6のIV-IV断面図を模式的に示している。図9(A)には図6のV-V断面図を模式的に示している。図9(B)には図6のVI-VI断面図を模式的に示している。
【0018】
固体電池1は、リチウムイオン二次電池の一例である。固体電池1は、図1(A)並びに図2(A)、図3(A)、図4(A)及び図5(A)に示すような電池本体1aを含む。電池本体1aは、直方体のような6面体の形状を有する。尚、電池本体1aは、立方体のような6面体の形状を有していてもよい。電池本体1aは、複数の電極層、ここでは一例として電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40を有する。電池本体1aは更に、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40を各々の一の側端面を除いて覆うように設けられる電解質層50を有する。電解質層50は、一部が電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の間に設けられる。
【0019】
図1(A)及び図2(A)に示すように、電池本体1aでは、電極層10として、4層の電極層10が設けられる。4層の電極層10は、各々の一の側端面が電解質層50(電池本体1aの面101)から露出するように、設けられる。尚、電極層10の層数は4層に限定されるものではないが、ここでは説明の便宜上、電極層10が4層である場合を例にする。
【0020】
図1(A)及び図3(A)に示すように、電池本体1aでは、電極層20として、4層の電極層20が設けられる。4層の電極層20は、各々の一の側端面が電解質層50(電池本体1aの面102)から露出するように、設けられる。尚、電極層20の層数は4層に限定されるものではないが、ここでは説明の便宜上、電極層20が4層である場合を例にする。
【0021】
図4(A)に示すように、電池本体1aでは、電極層30として、3層の電極層30が設けられる。3層の電極層30は、各々の一の側端面が電解質層50(電池本体1aの面103)から露出するように、設けられる。尚、電極層30の層数は3層に限定されるものではないが、ここでは説明の便宜上、電極層30が3層である場合を例にする。
【0022】
図5(A)に示すように、電池本体1aでは、電極層40として、3層の電極層40が設けられる。3層の電極層40は、各々の一の側端面が電解質層50(電池本体1aの面104)から露出するように、設けられる。尚、電極層40の層数は3層に限定されるものではないが、ここでは説明の便宜上、電極層40が3層である場合を例にする。
【0023】
このように電池本体1aでは、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40が、各々の一部が6面体の異なる4つの面101、面102、面103及び面104からそれぞれ露出するように、設けられる。電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40は、それらの間に設けられる電解質層50の一部によって互いに分離される。
【0024】
尚、後述のように、4層の電極層20と3層の電極層30とは、電極層20と電極層30とが電解質層50を介して交互に積層されるように設けられる。4層の電極層10は、4層の電極層20と同じ階層内にあって、電解質層50を介して4層の電極層20と並んで設けられる。3層の電極層40は、3層の電極層30と同じ階層内にあって、電解質層50を介して3層の電極層30と並んで設けられる。
【0025】
図1(B)並びに図2(B)、図3(B)、図4(B)及び図5(B)に示すように、固体電池1は更に、上記のような電池本体1aに設けられた複数の電極、ここでは一例として4つの電極60、電極70、電極80及び電極90を含む。4つの電極60、電極70、電極80及び電極90はそれぞれ、6面体の電池本体1aの、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の各々の一部が露出する4つの面101、面102、面103及び面104に設けられる。
【0026】
図1(A)及び図1(B)並びに図2(A)及び図2(B)に示すように、電極60は、電池本体1aの、4層の電極層10の各々の一部が露出する面101に設けられる。電極60は、4層の電極層10と接続される。電極60は、4層の電極層10が露出する面101内における、4層の電極層10の露出部分及び電解質層50と接するように設けられる。
【0027】
図1(A)及び図1(B)並びに図3(A)及び図3(B)に示すように、電極70は、電池本体1aの、4層の電極層20の各々の一部が露出する面102に設けられる。電極70は、4層の電極層20と接続される。電極70は、4層の電極層20が露出する面102内における、4層の電極層20の露出部分及び電解質層50と接するように設けられる。
【0028】
図4(A)及び図4(B)に示すように、電極80は、電池本体1aの、3層の電極層30の各々の一部が露出する面103に設けられる。電極80は、3層の電極層30と接続される。電極80は、3層の電極層30が露出する面103内における、3層の電極層30の露出部分及び電解質層50と接するように設けられる。
【0029】
図5(A)及び図5(B)に示すように、電極90は、電池本体1aの、3層の電極層40の各々の一部が露出する面104に設けられる。電極90は、3層の電極層40と接続される。電極90は、3層の電極層40が露出する面104内における、3層の電極層40の露出部分及び電解質層50と接するように設けられる。
【0030】
4つの電極60、電極70、電極80及び電極90は、互いに分離されて設けられる。即ち、4つの電極60、電極70、電極80及び電極90は、互いに接して電気的に接続されないように、互いに独立して設けられる。
【0031】
尚、ここでは、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の各々の一部がそれぞれ露出する面101、面102、面103及び面104の各面内に、それぞれ電極60、電極70、電極80及び電極90が設けられる例を示す。これに限らず、4つの電極60、電極70、電極80及び電極90は、互いに分離されていれば、部分的に他の面内まで延びるように設けられてもよい。
【0032】
図1(B)に示すように、固体電池1は更に、電池本体1aに設けられたマーカ200を含む。マーカ200は、4つの電極60、電極70、電極80及び電極90が設けられない面105の、その重心から外れた位置に設けられる。マーカ200は、電池本体1aの表面に設けられる4つの電極60、電極70、電極80及び電極90の識別、或いは電池本体1aの内部に設けられて電極60、電極70、電極80及び電極90とそれぞれ接続される電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の識別等のために利用される。
【0033】
尚、図1(A)に示す電池本体1aの一例の面106側は、図1(A)の面105側と同じ構成とすることができ、図1(B)に示す固体電池1の一例の面106側は、面105側にマーカ200が設けられることを除き、図1(B)の面105側と同じ構成とすることができるため、ここでは図示を省略する。
【0034】
上記のような固体電池1及びその電池本体1aについて更に説明する。
図6に示すように、固体電池1は、電池本体1aの面105にマーカ200が設けられ、電池本体1aの面101、面102、面103及び面104にそれぞれ電極60、電極70、電極80及び電極90が設けられた構成を有する。
【0035】
電池本体1aの、電極60が設けられる面101側の端部(内部)には、図7(A)に示すように、4層の電極層10が設けられる。4層の電極層10は、電解質層50の一部によって互いに分離された状態で積層される。
【0036】
電池本体1aの、電極90が設けられる面104側の端部(内部)には、図7(B)に示すように、3層の電極層40が設けられる。3層の電極層40は、電解質層50の一部によって互いに分離された状態で積層される。
【0037】
電池本体1aの、電極70が設けられる面102側の端部(内部)には、図8(A)に示すように、面101側の4層の電極層10と、面104側の3層の電極層40と、それらの間に位置する4層の電極層20とが設けられる。4層の電極層20は、電解質層50の一部によって互いに分離された状態で積層される。4層の電極層20は、電解質層50の一部によって4層の電極層10及び3層の電極層40と分離される。4層の電極層20は、4層の電極層10と同じ階層内に、4層の電極層10と並んで設けられる。4層の電極層20(及び4層の電極層10)間の電解質層50の部分に対応する階層内に、3層の電極層40が設けられる。
【0038】
電池本体1aの、電極80が設けられる面103側の端部(内部)には、図8(B)に示すように、面101側の4層の電極層10と、面104側の3層の電極層40と、それらの間に位置する3層の電極層30とが設けられる。3層の電極層30は、電解質層50の一部によって互いに分離された状態で積層される。3層の電極層30は、電解質層50の一部によって4層の電極層10及び3層の電極層40と分離される。3層の電極層30は、3層の電極層40と同じ階層内に、3層の電極層40と並んで設けられる。3層の電極層30(及び3層の電極層40)は、4層の電極層10間の電解質層50の部分に対応する階層内に設けられる。
【0039】
4層の電極層20と、3層の電極層30とは、図9(A)及び図9(B)に示すように、電池本体1aの端部よりも内側(例えば中央部)の領域では、電極層20と電極層30とが電解質層50の一部を介して交互に積層されるように、設けられる。
【0040】
4層の電極層20は、電池本体1aの面102に一の側端面が露出し、他の側端面が電池本体1aから露出せず、面102に露出する一の側端面に電極70が接続される。3層の電極層30は、電池本体1aの、面102と対向する面103に一の側端面が露出し、他の側端面が電池本体1aから露出せず、面103に露出する一の側端面に電極80が接続される。
【0041】
4層の電極層10は、電池本体1aの面101に一の側端面が露出し、他の側端面が電池本体1aから露出せず、面101に露出する一の側端面に電極60が接続される。3層の電極層40は、電池本体1aの、面101と対向する面104に一の側端面が露出し、他の側端面が電池本体1aから露出せず、面104に露出する一の側端面に電極90が接続される。
【0042】
このように固体電池1では、電極60、電極70、電極80及び電極90とそれぞれ接続される電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40が、図7(A)、図7(B)、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)のような配置とされる。電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40は、電解質層50の一部によって互いに分離される。
【0043】
固体電池1では、電極60、電極70、電極80及び電極90とそれぞれ接続される電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のうち、異なる電極に接続される電極層が、正極層及び負極層として機能する。正極層及び負極層として機能する電極層と接続される電極が、正極及び負極として機能する。
【0044】
例えば、固体電池1では、電極70及び電極80とそれぞれ接続される電極層20及び電極層30の、一方が正極層、他方が負極層として機能し、電極70及び電極80の、一方が正極、他方が負極として機能する。
【0045】
例えば、固体電池1では、電極60及び電極90とそれぞれ接続される電極層10及び電極層40の、一方が正極層、他方が負極層として機能し、電極60及び電極90の、一方が正極、他方が負極として機能する。
【0046】
例えば、固体電池1では、電極60及び電極70とそれぞれ接続される電極層10及び電極層20の、一方が正極層、他方が負極層として機能し、電極60及び電極70の、一方が正極、他方が負極として機能する。
【0047】
例えば、固体電池1では、電極60及び電極80とそれぞれ接続される電極層10及び電極層30の、一方が正極層、他方が負極層として機能し、電極60及び電極80の、一方が正極、他方が負極として機能する。
【0048】
例えば、固体電池1では、電極70及び電極90とそれぞれ接続される電極層20及び電極層40の、一方が正極層、他方が負極層として機能し、電極70及び電極90の、一方が正極、他方が負極として機能する。
【0049】
例えば、固体電池1では、電極80及び電極90とそれぞれ接続される電極層30及び電極層40の、一方が正極層、他方が負極層として機能し、電極80及び電極90の、一方が正極、他方が負極として機能する。
【0050】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40は、それらとそれぞれ接続される電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極として選択される2つの電極と接続されるものが、正極層及び負極層として機能するように、材料が設定される。例えば、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のそれぞれに含有される活物質の種類等が設定される。
【0051】
ここで、固体電池1における電池本体1aの電解質層50の材料、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の材料、並びに電極60、電極70、電極80及び電極90の材料の例について述べる。
【0052】
固体電池1における電池本体1aの電解質層50は、固体電解質を含有する。電解質層50の固体電解質には、酸化物固体電解質や硫化物固体電解質等が用いられる。例えば、電解質層50の固体電解質として、NASICON(ナシコン)型の酸化物固体電解質の1種であるLi1.5Al0.5Ge1.5(PO(「LAGP」と言う)が用いられる。LAGPは、アルミニウム置換リン酸ゲルマニウムリチウム等とも称される。電解質層50の固体電解質には、非晶質のLAGP(「LAGPg」と言う)又は結晶質のLAGP(「LAGPc」と言う)が用いられてよく、LAGPg及びLAGPcの両方が用いられてもよい。
【0053】
固体電池1における電池本体1aの電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40はそれぞれ、活物質、固体電解質及び導電助剤を含有する。
活物質は、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40をそれぞれ、正極層とするか、負極層とするか、或いは無極性の電極層とするかによって、活物質の種類が設定される。
【0054】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のそれぞれについて、正極層とする場合であれば、活物質として、正極活物質が含有される。正極活物質には、例えば、ピロリン酸コバルトリチウム(LiCoP,「LCPO」と言う)が用いられる。このほか、正極活物質には、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO)、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO,「LVP」と言う)、コバルト酸リチウム(LiCoO)やその置換型(LiNi0.8Co0.15Al0.05,LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガン酸ニッケルリチウム(LiNi0.5Mn1.5)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等が用いられてもよい。
【0055】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のそれぞれについて、負極層とする場合であれば、活物質として、負極活物質が含有される。負極活物質には、例えば、アナターゼ型の酸化チタン(TiO)が用いられる。このほか、負極活物質には、五酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、チタン酸リチウム(LiTi12)、NASICON型の酸化物系固体電解質の1種であるLi1.3Al0.3Ti1.7(PO(「LATP」と言う)、LVP、ニッケルシリサイド(NiSi)、鉄シリサイド(FeSi)等が用いられてもよい。
【0056】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のそれぞれについて、無極性の電極層とする場合であれば、活物質として、マンガン酸リチウム(LiMnO)、鉄シリサイド等が含有される。例えば、鉄シリサイドは、負極活物質としても、導電助剤としても機能し得る材料である。鉄シリサイドを含有する電極層が、充電又は充放電の開始によって負極層とされる(負極層として固定される)と、鉄シリサイドは、負極活物質として機能する。鉄シリサイドを含有する電極層が、充電又は充放電の開始によって正極層とされる(正極層として固定される)と、鉄シリサイドは、導電助剤として機能する。
【0057】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40にはそれぞれ、活物質として、1種の材料が含有されてもよいし、2種以上の材料が含有されてもよい。
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の固体電解質には、酸化物固体電解質、例えば、LAGPが用いられる。固体電解質には、LAGPg又はLAGPcが用いられてよく、LAGPg及びLAGPcの両方が用いられてもよい。
【0058】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の導電助剤には、例えば、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等のカーボン材料が用いられる。このほか、導電助剤には、鉄シリサイド等の導電性材料が用いられてもよい。
【0059】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40は、それらとそれぞれ接続される電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極として選択される2つの電極と接続されるものが、正極層及び負極層として機能するように、材料が設定される。即ち、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40は、電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極として選択される2つの電極と接続されるものの間に、所定の電位差が得られるように、材料が設定される。
【0060】
例えば、電極層20及び電極層30を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とし、電極層10及び電極層40を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とするか、或いは電極層10及び電極層40の両方を無極性の電極層とする。
【0061】
例えば、電極層10及び電極層40を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とし、電極層20及び電極層30を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とするか、或いは電極層20及び電極層30の両方を無極性の電極層とする。
【0062】
例えば、電極層10及び電極層20を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とし、電極層30及び電極層40を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とするか、或いは電極層30及び電極層40の両方を無極性の電極層とする。
【0063】
例えば、電極層10及び電極層30を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とし、電極層20及び電極層40を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とするか、或いは電極層20及び電極層40の両方を無極性の電極層とする。
【0064】
例えば、電極層30及び電極層40を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とし、電極層10及び電極層20を、一方に正極活物質を含有させ且つ他方に負極活物質を含有させて正極層及び負極層とするか、或いは電極層10及び電極層20の両方を無極性の電極層とする。
【0065】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40は、それらとそれぞれ接続される電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極として選択される2つの電極と接続されるものが、所定の電位差を示し、正極層及び負極層として機能するように、材料が設定される。
【0066】
固体電池1における電極60、電極70、電極80及び電極90には、各種導体材料が用いられる。例えば、電極60、電極70、電極80及び電極90には、金属を含有する導電性ペーストを乾燥、硬化させたものや、スパッタ法又は蒸着法を用いて堆積される金属を用いることができる。電極60、電極70、電極80及び電極90の金属には、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銅(Cu)等の材料を用いることができる。電極60、電極70、電極80及び電極90には、互いに同種の材料が用いられてもよいし、互いに異種の材料が用いられてもよい。電極60、電極70、電極80及び電極90は、互いに分離されるように、即ち、互いに電気的に接続されないように独立して、設けられる。
【0067】
[固体電池の製造方法]
続いて、固体電池1の製造方法について説明する。
固体電池1の製造では、例えば、電解質シート、電極層ペースト及び埋め込み層ペーストが準備される。
【0068】
例えば、電解質シートの形成には、固体電解質、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含有するペーストが用いられる。ペーストが、塗工及び乾燥、例えば、ドクターブレード等のシート成形機を用いて塗工され、乾燥されることで、電解質シートが準備される。
【0069】
電極層ペーストとしては、活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含有するものが準備される。電極層ペーストは、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40として設定される活物質等の材料成分を含有するものが、それぞれ準備される。電極層ペーストに用いられる固体電解質には、電解質シートに用いられる固体電解質と同種のものが用いられてもよいし、異種のものが用いられてもよい。
【0070】
埋め込み層ペーストとしては、固体電解質、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含有するものが準備される。埋め込み層ペーストの固体電解質には、電解質シートに用いられる固体電解質と同種のものが用いられてもよいし、異種のものが用いられてもよい。
【0071】
準備された電解質シート、電極層ペースト及び埋め込み層ペーストが用いられ、固体電池1が製造される。
図10図12は固体電池の製造方法の一例について説明する図である。図10(A)には第1の電極層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示し、図10(B)には第1の埋め込み層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示し、図10(C)には第2の電極層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示し、図10(D)には第2の埋め込み層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図11(A)には電極層パーツ積層工程の一例の要部断面図を模式的に示し、図11(B)には裁断工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図12(A)には焼成工程の一例の要部断面図を模式的に示し、図12(B)には電極形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0072】
図10(A)に示すように、電解質シート50aの所定の領域上に、電極層10用の材料成分を含有する電極層ペースト、及び電極層20用の材料成分を含有する電極層ペーストが、スクリーン印刷法を用いて塗工され、乾燥されて、電極層10及び電極層20が形成される。電極層10及び電極層20の形成後、図10(B)に示すように、それらの周囲に埋め込み層ペーストが塗工され、乾燥されて、埋め込み層50bが形成される。これにより、図10(B)に示すような電極層パーツ2が形成される。
【0073】
同様に、図10(C)に示すように、電解質シート50aの所定の領域上に、電極層30用の材料成分を含有する電極層ペースト、及び電極層40用の材料成分を含有する電極層ペーストが、スクリーン印刷法を用いて塗工され、乾燥されて、電極層30及び電極層40が形成される。電極層30及び電極層40の形成後、図10(D)に示すように、それらの周囲に埋め込み層ペーストが塗工され、乾燥されて、埋め込み層50bが形成される。これにより、図10(D)に示すような電極層パーツ3が形成される。
【0074】
電極層パーツ2及び電極層パーツ3の形成後、それらが交互に積層され、最上層に電解質シート50aが積層され、これらが熱圧着されて、図11(A)に示すような積層体4が形成される。積層体4の形成時には、電極層20と電極層30とが電解質シート50aを介して部分的に重なる位置関係(図9(A))となるように、電極層パーツ2及び電極層パーツ3が予め形成され、それらが交互に積層される。更に、電極層10同士、電極層20同士、電極層30同士、電極層40同士がそれぞれ、電解質シート50a及び埋め込み層50bを介して重なる位置関係となるように、電極層パーツ2及び電極層パーツ3が予め形成され、それらが交互に積層される。
【0075】
積層体4の形成後、図11(B)に示すように、裁断機を用いて積層体4が裁断され、その個片4aが形成される。この裁断によって得られる個片4aの一の切断面には電極層10が露出し、他の切断面には電極層40が露出する。図11(B)では図示されないが、裁断によって得られる個片4aの別の一の切断面(図11(B)の紙面奥行側)には電極層20が露出し、別の他の切断面(図11(B)の紙面手前側)には電極層30が露出する(図9(A))。
【0076】
積層体4の裁断後、図12(A)に示すように、裁断によって得られた個片4aに対し、脱脂及び焼成のための熱処理が行われる。熱処理において、脱脂は、例えば、酸素を含む雰囲気下、所定の温度及び時間の条件を用いて行われる。熱処理において、焼結は、例えば、窒素を含む雰囲気下、所定の温度及び時間の条件を用いて行われる。熱処理により、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の脱脂及び各々の固体電解質の焼結が行われる。更に、電解質シート50a及び埋め込み層50bの脱脂及び固体電解質の焼結が行われ、電解質シート50a及び埋め込み層50bが一体化されて、電解質層50が形成される。これにより、図12(A)に示すような電池本体1aが形成される。
【0077】
図12(A)に示すように、電池本体1aでは、面101に電極層10の一の側端面が露出し、面104に電極層40の一の側端面が露出する。図12(A)では図示されないが、電池本体1aでは、別の面102(図12(A)の紙面奥行側)に電極層20の一の側端面が露出し、別の面103(図12(A)の紙面手前側)に電極層30の一の側端面が露出する(図9(A))。
【0078】
電池本体1aの形成後、図12(B)に示すように、電池本体1aの電極層10が露出する面101に、電極層10と接続される電極60が形成され、電極層40が露出する面104に、電極層40と接続される電極90が形成される。図12(B)では図示されないが、電池本体1aの電極層20が露出する面102(図12(B)の紙面奥行側)に、電極層20と接続される電極70が形成され、電極層30が露出する面103(図12(B)の紙面手前側)に、電極層30と接続される電極80が形成される(図9(A))。例えば、電池本体1aの表面に、導電性ペーストを塗工したり、金属を堆積したりすることで、電極60、電極70、電極80及び電極90が形成される。
【0079】
以上のような工程により、固体電池1が形成される。
[固体電池の使用方法]
続いて、固体電池1の使用方法について説明する。
【0080】
固体電池1では、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40から選択される2つの組み合わせによって所定の電位差が得られるように、予め電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40の材料が設定される。例えば、電極層20が正極層とされ且つ電極層30が負極層とされた時には3Vの電位差が得られ、電極層10が正極層とされ且つ電極層40が負極層とされた時には2Vの電位差が得られるといったように、選択される2つの電極層の組み合わせによって所定の電位差が得られるように、予め材料が設定される。
【0081】
これにより、固体電池1では、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のうち、いずれを正極層とし、いずれを負極層とするかによって、電池電圧を変更することが可能になっている。即ち、1つの固体電池1で2つ以上の電池電圧を実現することが可能になっている。
【0082】
電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のうち、いずれを正極層とし、いずれを負極層とするかは、それらにそれぞれ接続される電極60、電極70、電極80及び電極90から2つの電極を選択することで決定することができる。
【0083】
図13は電極の選択の例について説明する図である。図13(A)~図13(C)にはそれぞれ固体電池の一例の要部平面図を模式的に示している。
例えば、電極層20を正極層とし、電極層30を負極層とする場合には、図13(A)に示すように、電極層20及び電極層30にそれぞれ接続される電極70及び電極80を、それぞれ正極及び負極として選択する。
【0084】
例えば、電極層10を正極層とし、電極層40を負極層とする場合には、図13(B)に示すように、電極層10及び電極層40にそれぞれ接続される電極60及び電極90を、それぞれ正極及び負極として選択する。
【0085】
例えば、電極層20を正極層とし、電極層40を負極層とする場合には、図13(C)に示すように、電極層20及び電極層40にそれぞれ接続される電極70及び電極90を、それぞれ正極及び負極として選択する。
【0086】
電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極として選択可能な2つの電極の組み合わせは、図13(A)~図13(C)の例に限定されるものではない。固体電池1では、図13(A)~図13(C)の例に従い、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のうち、いずれを正極層とし、いずれを負極層とするかによって、電極60、電極70、電極80及び電極90から2つの電極が選択される。電極60、電極70、電極80及び電極90から2つの電極が正極及び負極として選択されることで、固体電池1の電池電圧が設定される。電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極として選択される2つの電極の組み合わせを変えることで、固体電池1の電池電圧が変えられる。
【0087】
このように固体電池1では、電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極として選択する2つの電極の組み合わせを変えることで、1つの固体電池1を、異なる電池電圧を出力する固体電池として使用することができる。よって、固体電池1では、それを搭載する一の電子デバイスの動作電圧に基づき、電極60、電極70、電極80及び電極90から2つの電極を選択し、電池電圧を設定することができる。動作電圧が異なる別の電子デバイスに搭載する場合には、その動作電圧に基づき、電極60、電極70、電極80及び電極90から別の組み合わせの2つの電極を選択し、別の電池電圧を設定することができる。
【0088】
上記のような固体電池1によれば、電池電圧が1つの従来の固体電池に比べて、搭載可能な電子デバイスの種類を増やし、固体電池1の汎用性を高めることができる。
[固体電池の変形例]
以上の説明では、4つの電極60、電極70、電極80及び電極90を有する固体電池1を例にしたが、固体電池1の電極数は4つに限定されるものではない。
【0089】
図14は固体電池の第1の変形例について説明する図である。図14(A)には固体電池の電池本体の第1の変形例の要部斜視図を模式的に示し、図14(B)には電池本体に電極が設けられた固体電池の第1の変形例の要部斜視図を模式的に示している。
【0090】
図14(A)に示す電池本体1Aaは、例えば、その面105(上面)から電極層20の一部が露出する構成を有する。例えば、面105から一部が露出する電極層20は、その側端面が面102から露出しない構成とされる。電池本体1Aaは、このような構成を有する点で、上記電池本体1a(図1(A))と相違する。尚、図14(A)に示すような電池本体1Aaは、上記図11(A)に示した工程において、電極層パーツ2及び電極層パーツ3を交互に積層し、その最上層に、電極層20に通じる開口部50cを設けた電解質シート50aを積層し、裁断後、熱処理することで、得ることができる。或いは、最上層に、電極層20に通じる開口部50cが形成されるように埋め込み層ペーストを塗工及び乾燥し、裁断後、熱処理することで、得ることができる。
【0091】
図14(B)に示す固体電池1Aは、図14(A)に示すような電池本体1Aaの、その面105に電極100が設けられた構成を有する。固体電池1Aは、このような構成を有する点で、上記固体電池1(図1(B))と相違する。固体電池1Aの電極100は、電池本体1Aaの面105から一部が露出する電極層20と接続される。固体電池1Aの電池本体1Aaの面101、面102、面103及び面104にはそれぞれ、上記固体電池1と同様に、電極60、電極70、電極80及び電極90が設けられる。例えば、面105から一部が露出する電極層20は、面102に設けられる電極70とは接続されない構成とされる。
【0092】
固体電池1Aでは、その電池本体1Aaの表面に、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40と接続される5つの電極60、電極70、電極80、電極90及び電極100が設けられる。固体電池1Aでは、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のうち、いずれを正極層とし、いずれを負極層とするかによって、電極60、電極70、電極80、電極90及び電極100から2つの電極が選択される。電極60、電極70、電極80、電極90及び電極100から2つの電極が正極及び負極として選択されることで、固体電池1Aの電池電圧が設定される。電極60、電極70、電極80、電極90及び電極100から正極及び負極として選択される2つの電極の組み合わせを変えることで、固体電池1Aの電池電圧が変えられる。
【0093】
固体電池1Aでは、上記固体電池1に比べて、電極100が増えることで、正極及び負極として選択可能な2つの電極の組み合わせが増える。これにより、固体電池1Aは、更に多くの電池電圧に設定することが可能になる。従って、より汎用性の高い固体電池1Aが実現される。
【0094】
ここでは、6面体の電池本体1Aaに5つの電極60、電極70、電極80、電極90及び電極100を設ける例を示したが、6面体の電池本体に対し、6つの電極を設けることもできる。
【0095】
図15は固体電池の第2の変形例について説明する図である。図15には電池本体に電極が設けられた固体電池の第2の変形例の要部斜視図を模式的に示している。
図15に示す固体電池1Bは、上記図14(A)及び図14(B)に示した電池本体1Aaの、電極100を設けた面105と対向する面106(底面)に、面105側と同様に、電極層20の一部が露出する開口部を設け、その面106に、電極層20と接続される電極110を更に設けた電池本体1Baを有する。例えば、面106から一部が露出する電極層20は、その側端面が面102から露出しない構成とされ、面102に設けられる電極70とは接続されない構成とされる。
【0096】
固体電池1Bの電池本体1Baの面101、面102、面103、面104及び面105にはそれぞれ、上記固体電池1Aと同様に、電極60、電極70、電極80、電極90及び電極100が設けられる。固体電池1Bでは更に、電池本体1Baの面106にも電極110が設けられる。これにより、合計6つの電極を備えた固体電池1Bが得られる。6つの電極を備えた固体電池1Bによれば、正極及び負極として選択可能な2つの電極の組み合わせが更に増え、より一層多くの電池電圧に設定することが可能になる。従って、より一層汎用性の高い固体電池1Bが実現される。
【0097】
ここでは、電池本体1Aaの面105に設ける電極100、或いは電池本体1Baの面106に設ける電極110を、電極層20と接続する例を示したが、これらの電極100及び電極110は、必ずしも電極層20と接続されることを要しない。例えば、上記電極層パーツ2及び電極層パーツ3の積層順や積層数を変更し、電極層30と接続されるようにしてもよい。或いは、電池本体1Aaの面105に設ける電極100、或いは電池本体1Baの面106に設ける電極110と接続される電極層を、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40とは異なる材料成分(例えば活物質)を含有する電極層としてもよい。
【0098】
尚、以上の説明では、4つの電極を備えた固体電池1(図1(B)等)、5つの電極を備えた固体電池1A(図14(B))及び6つの電極を備えた固体電池1B(図15)を例として示したが、3つの電極を備えた固体電池を得ることも可能である。例えば、上記固体電池1における電極層40及びそれと接続される電極90を設けない構成とすることで、3つの電極60、電極70及び電極80を備えた固体電池が得られる。尚、電極層40及び電極90に限らず、上記固体電池1における電極層10及び電極60、若しくは電極層20及び電極70、若しくは電極層30及び電極80のいずれかを設けない構成とすることで、3つの電極を備えた固体電池を得ることもできる。
【0099】
[電子機器]
以上説明したような固体電池1等が電子デバイスに搭載され、固体電池1等から電力が供給されて電子デバイスが動作する電子機器が実現される。
【0100】
図16は固体電池が搭載された電子デバイスを含む電子機器について説明する図である。
一例として、図16に示すように、4つの電極60、電極70、電極80及び電極90を備えた固体電池1(図1(B)等)が、電子デバイス300に搭載される。ここで、電子デバイス300の動作電圧はPであるとする。
【0101】
このような動作電圧Pの電子デバイス300に固体電池1を搭載する場合には、電子デバイス300の動作電圧Pに基づき、固体電池1の電極60、電極70、電極80及び電極90から正極及び負極とする2つの電極が選択される。即ち、動作電圧Pの電子デバイス300を動作させることのできる電池電圧が出力可能な2つの電極、換言すれば、電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40のうち当該電池電圧が得られる電位差を示す2つの電極層に接続される2つの電極が選択される。
【0102】
例えば、固体電池1の電極層20を正極層とし、電極層30を負極層とした時、電極層20と電極層30との電位差が、動作電圧Pの電子デバイス300を動作させることのできる電池電圧が得られる電位差になるものとする。このように電極層20及び電極層30が、動作電圧Pの電子デバイス300を動作させることのできる電池電圧が得られる電位差を示す2つの電極層であったとすれば、図16に示すように、それらに接続される2つの電極70及び電極80が、それぞれ正極及び負極として選択される。
【0103】
このように電子デバイス300の動作電圧Pに基づき、電極60、電極70、電極80及び電極90から所定の2つの電極、図16の例では電極70及び電極80が正極及び負極として選択された固体電池1が、例えば充電後又は充放電後に、電子デバイス300に搭載される。そして、固体電池1の、選択された2つの電極、図16の例では電極70及び電極80が、電子デバイス300が備える正極端子310及び負極端子320とそれぞれ接続される。これにより、動作電圧Pで動作する電子デバイス300と、電子デバイス300に搭載されてそれに電力を供給する固体電池1とを備える電子機器400が実現される。
【0104】
固体電池1を、動作電圧が異なる別の電子デバイスに搭載する場合には、その動作電圧に基づき、それに応じた電池電圧が得られる電位差を示す2つの電極層が接続される別の組み合わせの2つの電極が選択される。そして、例えば充電後又は充放電後に、当該別の電子デバイスに搭載され、選択された2つの電極が、その電子デバイスの正極端子及び負極端子とそれぞれ接続される。これにより、別の電子機器が実現される。
【0105】
固体電池1では、正極及び負極として選択する2つの電極の組み合わせを変えることで、複数の電池電圧を実現することができ、動作電圧が異なる複数種の電子デバイスに搭載することができる。従って、固体電池1は、電池電圧が1つの従来の固体電池に比べて、汎用性が高い。
【0106】
尚、図16では固体電池1を例にして説明したが、他の構成を有する固体電池1Aや固体電池1B等についても同様に、それを搭載する電子デバイスの動作電圧に基づき、正極及び負極として選択する2つの電極の組み合わせを設定又は変更し、複数種の電子デバイスに搭載することができる。
【0107】
以上の説明では、電極層10及び電極層20をそれぞれ4層とし、電極層30及び電極層40をそれぞれ3層とする例を示したが、前述の通り、これらの層数は限定されるものではない。電極層10、電極層20、電極層30及び電極層40はそれぞれ、1層又は2層以上とすることが可能である。
【符号の説明】
【0108】
1,1A,1B 固体電池
1a,1Aa,1Ba 電池本体
2,3 電極層パーツ
4 積層体
4a 個片
10,20,30,40 電極層
50 電解質層
50a 電解質シート
50b 埋め込み層
50c 開口部
60,70,80,90,100,110 電極
101,102,103,104,105,106 面
200 マーカ
300 電子デバイス
310 正極端子
320 負極端子
400 電子機器
図1
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