(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035444
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】水産物の売買システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20230306BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20230306BHJP
【FI】
G06Q30/06 308
G06Q30/06 312
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142300
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】520002760
【氏名又は名称】株式会社クラハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 彩子
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 雄一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB53
5L049BB72
(57)【要約】
【課題】売り手と買い手との実際の配送や流通も考慮して、適切な売買条件での水産物の売買を実現する水産物の売買システムを提供する。
【解決手段】本発明の水産物の売買システムは、売り手と買い手の流通範囲における複数の地域端末と、前記複数の地域端末を管理する統括サーバーと、前記統括サーバーと前記複数の地域端末を接続するネットワークと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
売り手と買い手の流通範囲における複数の地域端末と、
前記複数の地域端末を管理する統括サーバーと、
前記統括サーバーと前記複数の地域端末を接続するネットワークと、を備え、
前記地域端末は、
前記売り手による販売商品についての販売情報を入力する販売情報入力手段と、
前記買い手による前記販売商品についての購入希望に関する購入希望情報を入力する購入希望情報入力手段と、を有し、
前記統括サーバーは、
前記売り手の売り手属性情報、前記買い手の買い手属性情報および前記地域端末の対応する流通経路情報を記憶する記憶部と、
前記買い手属性情報に基づいて、当該買い手の買い手信頼性を算出する買い手信頼性算出手段と、
前記販売商品についての前記売り手と前記買い手との売買について、
前記買い手信頼性、
前記売り手と前記買い手の流通経路情報、
の少なくとも一つの条件に基づいて、マッチングする売買マッチング手段と、を有し、
前記地域端末を介して入力された購入希望情報に基づいて、前記統括サーバーがマッチングを行う、水産物の売買システム。
【請求項2】
前記複数の地域端末のそれぞれは、前記売り手と前記買い手との間での、前記販売商品の流通が可能となる流通範囲において備わる、請求項1記載の水産物の売買システム。
【請求項3】
前記買い手属性情報は、
基本属性情報と、
履歴属性情報と、
を含み、
前記基本属性情報は、前記買い手の財務信頼情報を含み、
前記履歴属性情報は、前記買い手による売買履歴を含み、
前記買い手信頼性算出手段は、前記基本属性情報および前記履歴属性情報とを数値化することで、前記買い手信頼性を算出する、請求項1または2記載の水産物の売買システム。
【請求項4】
前記地域端末は、前記統括サーバーに情報を送信する送信手段を備え、
前記送信手段は、前記流通経路情報、前記販売情報および前記購入希望情報を前記統括サーバーに送信する、請求項1から3のいずれか記載の水産物の売買システム。
【請求項5】
前記地域端末は、前記販売商品の流通経路が変化した場合には、前記流通経路情報をアップデートして、前記送信手段を介して、前記統括サーバーに送信する、請求項4記載の水産物の売買システム。
【請求項6】
前記売買マッチング手段は、前記買い手信頼性が所定値以下の場合には、当該買い手をマッチング対象から除外する、請求項1から5のいずれか記載の水産物の売買システム。
【請求項7】
前記売買マッチング手段は、前記売り手と前記買い手の住所が、前記流通経路情報に対して不適切と判断する場合には、マッチングさせない、請求項1から6のいずれか記載の水産物の売買システム。
【請求項8】
前記流通経路情報は、前記販売商品の実際の流通方法、想定流通時間、想定流通コストの要素を含み、
前記売買マッチング手段は、前記流通方法、前記想定流通時間および前記想定流通コストの少なくとも一つが不適切であると判断する場合には、マッチングさせない、請求項1から6のいずれか記載の水産物の売買システム。
【請求項9】
前記売買マッチング手段は、マッチングした前記売り手と前記買い手の配送商品についての、最適な流通経路および流通方法を決定し、
前記マッチングした結果と併せて、前記地域端末に出力する、請求項8記載の水産物の売買システム。
【請求項10】
前記地域端末は、前記マッチングした結果を、マッチング当事者の売り手と買い手とに、マッチングに関わる条件と併せて通知する通知手段を更に備える、請求項9記載の水産物の売買システム。
【請求項11】
前記統括サーバーは、前記買い手と売り手との間の決済をする決済代行手段を更に備える、請求項1から10のいずれか記載の水産物の売買システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産物を売りたい売り手とこれを買いたい買い手との間とをマッチングしつつ、実際の配送を考慮したマッチングをできる水産物の売買システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、水産物はこれを水揚げする漁師などが漁協に納品し、漁協あるいは魚市場などの卸業者が、買い手に販売する。この買い手は、水産物小売店、量販店(スーパーなど)、飲食店などである。漁協や卸業者を介在した水産物の売買は、セリや買い手との個別契約に基づいた値付けにより行われる。
【0003】
このため、既存の一般的な水産物の売買では、買い手と売り手との交渉による(セリなど)価格決定で、売買が成立する。また、実際の売買の取引現場では(漁協や魚市場などでは)、経験豊かな売り手や買い手の経験やあうんの呼吸で、売買が成立する部分も大きい。魚市場などでの卸業者は、この経験値を高く有しており、この経験により、売り手および買い手の双方の良好な売買や関係が構築されている。
【0004】
漁協や卸市場においては、買い手が売り手である漁業者との間でセリなどにより売買を成立させることも多い。この場合には、漁協や卸市場は、場所や売買のための事務処理などを提供することを業務とする。
【0005】
一方、近年では、水産物小売店だけでなく、スーパーマーケットなどの大型量販店やこれを取りまとめる購買部が、大量の購入を行うことも多い。このような場合に対応して、卸業者などは、大型量販店向けの商品構成を行って、買い手に販売することもある。この場合には、漁業者から量販店などが直接買い入れをするのではなく、卸業者から買い入れをする。すなわち、漁業者(あるいは漁協)などから、卸業者が水産物を購入してこれを商品化し、量販店などに販売する。
【0006】
このように、これまでにおいては、売り手である漁業者と買い手との直接取引、あるいは、卸業者が量販店などへの販売を考慮した漁業者からの買取と量販店などへの販売により水産物の売買がなされていた。
【0007】
ここで、近年においては、次のような変化や現象が生じている。
【0008】
漁業者が水揚げした水産物において、漁協や卸業者が購入しない、あるいは購入をためらう水産物が含まれていることがある。一般的な小売店や量販店では、購入されにくくて敬遠される魚種などである。あるいは、購入される魚種であっても、サイズの大小などにより、敬遠される水産物もある。
【0009】
このような敬遠される水産物は、漁協や卸業者が引き取らなかったりセリにかけられなかったりすることが多かった。このため、そのまま廃棄されていたり、漁業者が自ら販売を手掛けたりするしかなかった。勿論、卸業者が、これらの水産物を購入して、取引のある小売店や量販店などへの販売に努力することもある。しかしながら、これらにおいても限界がある。
【0010】
これと並行して、買い手も多様化している事実もある。従来であれば、漁協や卸業者によるセリに参加できる権利を持った小売店、量販店、一部の飲食店などが買い手であった。
【0011】
しかしながら、現在では、セリの権利を持っていない小売店、水産物を専門とはしないが、水産物も取り扱いたいと考える小売店、小売店ではないが一般顧客、より多様な飲食店などが水産物を購入したいとの欲求が増えている。
【0012】
加えて、売り手である漁業者も、従来の漁協や卸業者を介した販売や、卸業者による買取を基点とした販売だけでなく、購入者である買い手に対して直接売買を行いたいと考える欲求も増えている。また、上述したような、従来は販売が困難であった水産物を販売したいという売り手の欲求や、これを購入したいという買い手の欲求などが存在する。また、特定の地域で水揚げされる特徴ある魚種の水産物を購入したいあるいは販売したいという、買い手と売り手の欲求も高まっている。
【0013】
このような背景の中、ネットワークを介した売買についての技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003-242381号公報
【特許文献2】特開2004-362122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1は、直売支援センター26と、複数の店舗2とを通信回線を介して接続し、直売支援センターには、店舗で売買される生産物毎の公的商品取引所における当日の取引価格を得る手段と、自動的に生産物毎の当日の販売価格を設定する手段と、これを関連する店舗に送信する手段とを備え、さらに店舗には関連する生産物毎の当日販売価格を表示する手段を設け、店舗に陳列された生産物を当日の販売価格でもって顧客23-1~n,24-1~nに売買する生産者直売システムを開示する。
【0016】
特許文献2は、採れた魚介類の種類及び量を入力される提供者端末と、購入を希望する魚介類及び量を購入者により入力される購入者端末と、この購入者端末及び前記提供者端末にネットワークを介して接続され、前記採れた魚介類の種類が前記購入を希望する魚介類の種類が一致するか否かを判定する種類判定手段と、この種類判定手段により前記魚介類の種類が一致したと判定されたとき、前記購入者端末から入力した前記購入者に前記購入を希望する魚介類が採れた旨を電子メールにより通知する通知手段とを備える魚介類の売買システムを、開示する。
【0017】
特許文献1、2のいずれも、ネットワークを介して、売り手と買い手の売買を処理する技術を開示している。
【0018】
しかしながら、今の背景では、今までは買い手として参加することが想定されていない小売店や消費者が買い手として購入したいという希望がある。また、売り手も、従来の漁業者であったりこれを取りまとめる卸業者であったりと、多面性を持っている状態がある。従来技術ではこのような多面性に対応できない問題があった。
【0019】
また、水産物は鮮度が重要である。売買条件などで最適と考えられる売り手と買い手をマッチングしても、売り手と買い手との物理的距離が大きいと、鮮度を維持した配送が困難となる。また、距離が遠いことは流通コストや流通の効率化を妨げる問題もある。従来技術では、このような配送や流通での最適化を含めたマッチングができていない問題があった。
【0020】
本発明は、売り手と買い手との実際の配送や流通も考慮して、適切な売買条件での水産物の売買を実現する水産物の売買システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題に鑑み、本発明の水産物の売買システムは、売り手と買い手の流通範囲における複数の地域端末と、
前記複数の地域端末を管理する統括サーバーと、
前記統括サーバーと前記複数の地域端末を接続するネットワークと、を備え、
前記地域端末は、
前記売り手による販売商品についての販売情報を入力する販売情報入力手段と、
前記買い手による前記販売商品についての購入希望に関する購入希望情報を入力する購入希望情報入力手段と、を有し、
前記統括サーバーは、
前記売り手の売り手属性情報、前記買い手の買い手属性情報および前記地域端末の対応する流通経路情報を記憶する記憶部と、
前記買い手属性情報に基づいて、当該買い手の買い手信頼性を算出する買い手信頼性算出手段と、
前記販売商品についての前記売り手と前記買い手との売買について、
前記買い手信頼性、
前記売り手と前記買い手の流通経路情報、
の少なくとも一つの条件に基づいて、マッチングする売買マッチング手段と、を有し、
前記地域端末を介して入力された購入希望情報に基づいて、前記統括サーバーがマッチングを行う。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水産物の売買システムは、既存の卸市場などを地域端末により活用しつつ、売り手と買い手のマッチングを、より高度で統一性のある基準で実現することができる。これにより、流通経路などの地域特性を生かしつつ、適切なマッチングを行える。特に、既存の地域市場とそこに参加する売り手と買い手を、地域端末で希望受付し、マッチング処理を統括サーバーで適切な基準で行う2段階とすることで、適切管理でのマッチングができる。
【0023】
また、地域端末に希望を出す売り手と買い手とのマッチングにおいて、買い手の信頼性を確認した上で行われる。これにより売り手も安心であり、買い手も売買システムに参加しやすくなる。
【0024】
加えて、マッチング処理された販売商品の実際の流通経路を考慮することで、配送困難となるようなマッチングを指せないメリットも生じる。
【0025】
また、買い手と売り手との間で成立した売買における決済が代行処理される。これにより、買い手と売り手で成立した売買に対する支払処理や受け取り処理が、それぞれにおいて負担軽減される。これにより、売買システムへの参加がより促進される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の形態1における水産物の売買システムの概念図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における水産物の売買システムの地域端末のブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における統括サーバーのブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における地域端末の内部ブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態2における統括サーバーのブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態2における地域端末のブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態2における統括サーバーのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の発明に関わる水産物の売買システムは、売り手と買い手の流通範囲における複数の地域端末と、
前記複数の地域端末を管理する統括サーバーと、
前記統括サーバーと前記複数の地域端末を接続するネットワークと、を備え、
前記地域端末は、
前記売り手による販売商品についての販売情報を入力する販売情報入力手段と、
前記買い手による前記販売商品についての購入希望に関する購入希望情報を入力する購入希望情報入力手段と、を有し、
前記統括サーバーは、
前記売り手の売り手属性情報、前記買い手の買い手属性情報および前記地域端末の対応する流通経路情報を記憶する記憶部と、
前記買い手属性情報に基づいて、当該買い手の買い手信頼性を算出する買い手信頼性算出手段と、
前記販売商品についての前記売り手と前記買い手との売買について、
前記買い手信頼性、
前記売り手と前記買い手の流通経路情報、
の少なくとも一つの条件に基づいて、マッチングする売買マッチング手段と、を有し、
前記地域端末を介して入力された購入希望情報に基づいて、前記統括サーバーがマッチングを行う。
【0028】
この構成により、地域ごとの流通も考慮して、売り手のリスク低減も含めて売買のマッチングを実現できる。また、統括サーバーに様々なデータが集約されて、マッチングやその他の精度向上ができる。また、様々な情報が集約されることで、統括サーバーの運営者や管理者による、新しいサービスの検討やレベルアップを実現できる。また、地域に存在する仲卸や市場をネットワーク化して、より広い売買のシステムを構築することができる。
【0029】
本発明の第2の発明に関わる水産物の売買システムでは、第1の発明に加えて、前記複数の地域端末のそれぞれは、前記売り手と前記買い手との間での、前記販売商品の流通が可能となる流通範囲において備わる。
【0030】
この構成により、流通可能な範囲での売買を管理することができ、流通まで考慮したマッチングができる。
【0031】
本発明の第3の発明に関わる水産物の売買システムでは、第1または第2の発明に加えて、前記買い手属性情報は、
基本属性情報と、
履歴属性情報と、
を含み、
前記基本属性情報は、前記買い手の財務信頼情報を含み、
前記履歴属性情報は、前記買い手による売買履歴を含み、
前記買い手信頼性算出手段は、前記基本属性情報および前記履歴属性情報とを数値化することで、前記買い手信頼性を算出する。
【0032】
この構成により、買い手信頼性を算出して基準化することで、売り手リスクの低減を、データに基づいて実現できる。
【0033】
本発明の第4の発明に関わる水産物の売買システムでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記地域端末は、前記統括サーバーに情報を送信する送信手段を備え、
前記送信手段は、前記流通経路情報、前記販売情報および前記購入希望情報を前記統括サーバーに送信する。
【0034】
この構成により、統括サーバーは、地域端末が有する情報を得て、売買マッチングを行える。
【0035】
本発明の第5の発明に関わる水産物の売買システムでは、第4の発明に加えて、前記地域端末は、前記販売商品の流通経路が変化した場合には、前記流通経路情報をアップデートして、前記送信手段を介して、前記統括サーバーに送信する。
【0036】
この構成により、流通経路に変化が生じても、これに対応して売買マッチングを実現できる。
【0037】
本発明の第6の発明に関わる水産物の売買システムでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、前記売買マッチング手段は、前記買い手信頼性が所定値以下の場合には、当該買い手をマッチング対象から除外する。
【0038】
この構成により、売り手のリスクを低減できる。
【0039】
本発明の第7の発明に関わる水産物の売買システムでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記売買マッチング手段は、前記売り手と前記買い手の住所が、前記流通経路情報に対して不適切と判断する場合には、マッチングさせない。
【0040】
この構成により、売買成立した商品の配送が困難となることを防止できる。
【0041】
本発明の第8の発明に関わる水産物の売買システムでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記流通経路情報は、前記販売商品の実際の流通方法、想定流通時間、想定流通コストの要素を含み、
前記売買マッチング手段は、前記流通方法、前記想定流通時間および前記想定流通コストの少なくとも一つが不適切であると判断する場合には、マッチングさせない。
【0042】
この構成により、配送困難となることを未然防止できる。
【0043】
本発明の第9の発明に関わる水産物の売買システムでは、第8の発明に加えて、前記売買マッチング手段は、マッチングした前記売り手と前記買い手の配送商品についての、最適な流通経路および流通方法を決定し、
前記マッチングした結果と併せて、前記地域端末に出力する。
【0044】
この構成により、効率的な配送業務にも対応できる。
【0045】
本発明の第10の発明に関わる水産物の売買システムでは、第9の発明に加えて、前記地域端末は、前記マッチングした結果を、マッチング当事者の売り手と買い手とに、マッチングに関わる条件と併せて通知する通知手段を更に備える。
【0046】
この構成により、売り手と買い手の情報理解をより透明化できる。
【0047】
本発明の第11の発明に関わる水産物の売買システムでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、前記統括サーバーは、前記買い手と売り手との間の決済をする決済代行手段を更に備える。
【0048】
この構成により、個別に決済を行う手間にも対応できる。
【0049】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0050】
(実施の形態1)
【0051】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における水産物の売買システムの概念図である。
図2は、本発明の実施の形態1における水産物の売買システムの地域端末のブロック図である。なお、本発明の水産物の売買システムは、水産物以外の農産物など、産地、生産者(売り手)、買い手により売買や流通が動く一次産品などに適用したり応用したりすることもよい。
【0052】
水産物の売買システム(以下、必要に応じて「売買システム」と略す)1は、
図1に示されるような要素を備える。これらの要素は、ハードウェア、デバイス、装置、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの混成などの、様々な態様で実現されればよい。例えば、サーバー装置を中核として、これに接続されるデバイス、ネットワークを介して設けられる仮想空間、ネットワークを介してつながる装置などによって構成されればよい。また、サーバー装置などにおいて、売買システム1の要素の少なくとも一部がソフトウェアで構成されることもよい。
【0053】
このような組み合わせによって、水産物の売買システム1が構成される。
【0054】
売買システム1は、売り手と買い手の流通範囲に対応して備わる複数の地域端末3と、複数の地域端末3を管理する統括サーバー2と、統括サーバー2と複数の地域端末3とを接続するネットワーク4を備える。ネットワーク4は、電気信号のやり取りを可能とする接続を行う。有線、無線、有線と無線の混在のいずれでもよい。
【0055】
統括サーバー2は、売買システム1を管理する管理主体が管理する。管理主体が管理できる場所に備わればよく、実体、クラウドなどの仮想などの組み合わせであってもよい。
【0056】
地域端末3は、売買システム1がマッチングする売り手と買い手との間で、売買される水産物を流通可能な範囲の地域に備わる。この地域とは、流通経路から定まることもあるし、従来からある流通エリアによって定まることもあるし、卸市場や生産者の地域区分により定まることもある。いずれも、売り手と買い手との間で、売買成立した水産物(販売商品)の流通が可能な範囲を地域の単位とする。この単位となる地域に地域端末3が備わる。
【0057】
統括サーバー2は、記憶部21,買い手信頼性算出手段22、売買マッチング手段23を備える。記憶部21は、売り手の売り手属性情報、買い手の買い手属性情報および地域端末3の対応する流通経路情報を記憶する。
図3は、これを示している。
図3は、本発明の実施の形態1における統括サーバーのブロック図である。
【0058】
売り手属性情報、買い手属性情報および流通経路情報は、地域端末3に入力されて地域端末3から送信されてもよいし、地域端末3に記憶されている情報が送信されてもよいし、統括サーバー2に入力されて記憶されてもよいし、統括サーバー2に予め記憶されていてもよい。
【0059】
買い手信頼性算出手段22は、買い手属性情報に基づいて、買い手信頼性を算出する。
【0060】
買い手属性情報は、買い手として売り手から見て販売を行ってもよいかを判断するための情報である。すなわち、安心して売買取引を行えるかを把握するのに必要となる情報である。言い換えれば、売買システム1が、売買マッチングを行うことの可否を判断する一つの情報である。
【0061】
買い手属性情報は、基本属性情報と履歴属性情報と、を含む。
【0062】
基本属性情報は、買い手の財務信頼情報を含む。いわゆる与信情報に繋がる情報を含む。財務信頼情報が買い手属性情報として提供されることで、不払いなどのリスクを低減してマッチングを実行できる。財務信頼情報は、買い手が自ら財務諸表や資産内容資料などを用いて入力してもよい。あるいは、外部の与信機関などからのデータを取り込むことで、あるいは記憶部21に入力されることで財務信頼情報として入力されればよい。
【0063】
また、基本属性情報は、買い手の法人や個人の登記情報、名称、住所、組織体の概要、地域や配送ルートに関する情報などを含むことも好適である。売り手による把握や、売買マッチング手段23によるマッチングの際の参考となるからである。
【0064】
履歴属性情報は、買い手による売買履歴を含む。ある買い手が、これまでに購入した商品の種類、量、金額、回数、頻度、あるいはこれらの総計などの情報を含む。また、これらの情報から、買い手の嗜好や購入動態を解析して、情報拡張することも好適である。
【0065】
買い手信頼性算出手段22は、買い手属性情報に含まれる基本属性情報および履歴属性情報を数値化することで、買い手信頼性を算出する。すなわち、買い手信頼性算出手段22は、買い手属性情報に基づいて、買い手の買い手信頼性を算出する。この買い手信頼性は、売買マッチング手段23において、売り手と買い手をマッチングする際の参考情報となる。買い手信頼性は、必要に応じて、数値により算出されればよい。
【0066】
買い手信頼性算出手段22が備わることで、マッチングの際に、好ましくない買い手とのマッチングを行うリスクを、売り手から排除できる。また、買い手属性情報には、財務信頼情報が含まれるので、買い手の不払いや不渡りなどの回収問題などを低減させることもできる。売り手にとってのリスク低減ができる。
【0067】
また、記憶部21は、売り手属性情報も記憶する。売買マッチング手段23は、必要に応じて、売り手属性情報も参考にする。
【0068】
売り手属性情報は、売り手の法人や個人事業登記の情報、住所、名称、規模、販売での得意分野、過去の実績などの情報を含む。また、必要に応じて、売り手の信頼性に係る情報を含んでいてもよい。あるいは、過去の販売実績や、販売実績の中での評価情報を含んでいてもよい。
【0069】
売り手属性情報は、統括サーバー2からの入力、地域端末3からの入力などによって、記憶部21に記憶されればよい
【0070】
地域端末3は、販売情報入力手段31と購入希望情報入力手段32を備える。販売情報入力手段31は、売り手による販売商品についての販売情報を入力する。すなわち、売り手が、販売したい水産物を販売商品として情報入力する。この販売情報が入力されることで、買い手による購入希望の前提を作り、買い手による購入ができるようになる。すなわち、売り手と買い手とをつなぐ売買マッチングの前提が生まれる。
【0071】
購入希望情報入力手段32は、買い手による販売商品について購入希望に関する購入希望情報を入力する。買い手が、販売商品の中から購入希望とするものを選択して、これの購入希望を入力する。これが、購入希望情報である。
【0072】
地域端末3は、この販売情報と購入希望情報を受け付けるターミナルである。地域端末3は、売り手と買い手との間での販売商品の流通が可能な範囲を地域として、この地域に対応して備わる。売り手や買い手が、地域端末3に対して、販売情報や購入希望情報を入力する。入力は、遠隔的に行われればよい。
【0073】
これら販売情報や購入希望情報は、地域端末3から統括サーバー2に送信される。統括サーバー2における売買マッチングにおいて、必要に応じて用いられる。
【0074】
統括サーバー2は、備える買い手信頼性算出手段22で、買い手信頼性を算出する。また、記憶部21に記憶する売り手と買い手との流通経路情報を記憶している。
【0075】
売買マッチング手段23は、販売情報に含まれる販売商品についての売り手と買い手との売買について、買い手信頼性および売り手と買い手との流通経路情報の少なくとも一つの条件に基づいて、マッチングする。地域端末3を介して入力された購入希望情報に基づいた、売り手と買い手との間の販売商品についてのマッチングを行う。
【0076】
すなわち、売買マッチング手段23は、売り手の提示する販売商品と、これの購入希望だけで、売り手と買い手をマッチングするのではない。(1)買い手の信頼性(買い手の支払い能力などを示す)、(2)マッチングされた販売商品の流通が可能であるか、ということも含めて、マッチングできる。
【0077】
すなわち、売買を成立させても決済上の問題が生じない、配送において問題が無い、ということを担保して、売買のマッチングを実行できる。また、地域端末3は、地域ごとに対応して複数が備わる。このため、地域ごとに入力される購入希望情報に対して、統括サーバー2が、売買マッチングを判断する。地域ごとでの流通経路も把握したうえで、マッチングを行えるので、マッチングした水産物が流通困難となることもない。
【0078】
また、地域ごとでの購入希望情報について、統括サーバー2で体系的なマッチングが行える。判断基準となる買い手信頼性や流通経路情報を、共通にしてマッチングされることで、地域の違いによる好ましくないマッチングが生じることを防止できる。すなわち、共通に体系化された基準で、マッチングが行われる。
【0079】
また、統括サーバー2に、売り手属性情報、買い手属性情報、流通経路情報、買い手信頼性などのデータが集約される。この結果、売買システム1全体のマッチング能力やマッチング信頼性が高まる。また、統括サーバー2に種々の情報が集約されることで、マッチング基準の精度を上げて、地域端末3の広がりを増やしていくこともできる。
【0080】
このように、売買システム1は、地域単位での売買を、統一基準でマッチングして、より実際に即した売買を実現できる。
【0081】
次に、追加的要素やバリエーションについて説明する。
【0082】
(送信手段)
図4は、本発明の実施の形態1における地域端末の内部ブロック図である。
図4の地域端末3は、送信手段33を更に備える。送信手段33は、統括サーバー2に情報としての、流通経路情報、販売情報および購入希望情報を送信する。
【0083】
これらの情報は、地域端末3に入力されている。あるいは、予め地域端末3に記憶されている。送信手段33が、これらの情報を統括サーバー2に送信することで、統括サーバー2は、売買マッチング手段23での実際のマッチングを行うことができる。
【0084】
送信手段33は、有線、無線、あるいはこれらの混合によるネットワーク4を介して、情報を送信すればよい。統括サーバー2は、必要に応じて、地域端末3への情報の再送信を要求してもよい。
【0085】
地域端末3は、流通経路情報を記憶している。売り手と買い手の変化、あるいは流通業者の変化や流通業者の都合により、流通経路情報が変化することがある。例えば、具体的な流通経路が変化する場合や、流通距離や流通時間が変化する場合などがある。あるいは流通方法(トラックなのか列車なのか等)が変化する場合もある。
【0086】
この場合には、売買マッチング手段23でのマッチング基準が変化する。このため、送信手段33は、変化があった場合には、変化した流通経路情報を、統括サーバー2に送信する。これにより、売買マッチングの精度の高さを維持できる。
【0087】
(買い手信頼性)
売買マッチング手段23は、買い手信頼性を一つの基準として売り手と買い手とのマッチングを行う。このとき、買い手信頼性が所定値以下の場合には、買い手をマッチング対象から外すことも好適である。不払いや回収困難などの売り手にとってのリスクを未然回避できるからである。
【0088】
買い手信頼性は、買い手の財務情報などの支払い能力に関する情報や、過去の売買履歴から算出される。財務能力や支払い能力が低いデータがあったり、売買履歴において不払いや支払い遅延などのデータがあったりすると、買い手信頼性は低いと算出される。
【0089】
この買い手信頼性が低い場合に、売買マッチング手段23によって売り手に対してこの買い手がマッチングされてしまうと、売り手にとっては不払いなどのリスクを受ける懸念もある。このため、買い手信頼性が所定値以下の場合には、買い手をマッチングの対象から外して、売買マッチング手段23は、売り手と買い手とをマッチングさせる。
【0090】
このようなマッチングでのリスクの高い買い手の除外により、売買システム1の安全性や信頼性が高まる。売り手にとって安全であることは、結果として善良な買い手にとっても安心である。
【0091】
売買マッチング手段23からの除外は、継続的でも断続的でもよい。当該買い手の買い手信頼性が上昇すれば、除外から外すことでもよい。
【0092】
(流通経路情報)
売買マッチング手段23は、売り手と買い手の住所が、流通経路情報に対して不適切と判断する場合には、マッチングさせないことも好適である。売買マッチング手段23は、流通経路情報を一つの基準として売り手と買い手をマッチングさせる。
【0093】
このとき、売り手属性情報には売り手の住所や居所が含まれ、買い手属性情報には買い手の住所や居所が含まれる。この売り手の住所と買い手の住所の少なくとも一方が、流通経路情報から見て、不適切であることがある。流通経路にはまらない住所であるとか、配送において相当に大きな時間がかかってしまう可能性があるなどである。この場合には、売買マッチングさせても、販売商品の配送が困難となる。
【0094】
このような場合にマッチングをさせないように、売買マッチング手段23は処理する。
【0095】
ここで、流通経路情報は、販売商品の実際の流通方法、想定流通時間および想定流通コストの少なくとも一つの要素を含む。売買マッチング手段23は、これら販売商品の実際の流通方法、想定流通時間および想定流通コストの少なくとも一つが不適切であると判断する場合には、売り手と買い手とのマッチングを行わない。
【0096】
こうすることで、配送での問題が生じにくくできる。
【0097】
このように、売り手と買い手との売買希望に対して、統括サーバー2が、統一的な基準を踏まえて売買マッチングをすることで、売り手リスクを低減したり、配送リスクを低減したりできる。これにより、統括サーバー2を管理する管理者は、水産物の売買でのリスクを低減しつつ、売買の品質を維持することができる。
【0098】
結果として、売り手、買い手にとってもメリットがあり、信頼性が高まることでの普及にもつながる。また、必要に応じて、地域端末3のそれぞれの地域事情にも応じた柔軟性のある売買マッチングを統括サーバー2が行ってもよい。
【0099】
以上のように、実施の形態1における売買システム1は、地域ごとに備わる地域端末3への売り手と買い手の売買希望を、適切で統一した基準でマッチングさせる。これにより、高い信頼性と流通も考慮した売買マッチングが実現できる。
【0100】
(実施の形態2)
【0101】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、他のバリエーションなどについて説明する。
【0102】
(流通経路および流通方法の決定)
図5は、本発明の実施の形態2における統括サーバーのブロック図である。統括サーバー2は、売買マッチング手段23を備える。この売買マッチング手段23は、マッチングした売り手と買い手の配送商品についての最適な流通経路および流通方法を決定する。
【0103】
売り手と買い手の住所や居所などの情報、および流通経路情報などを基にして、売買マッチング手段23は、最適な流通経路および流通方法を決定すればよい。例えば、流通業者が設定している既存の流通経路のいずれかを選択して流通経路を決定する。あるいはこれをカスタマイズして最適な流通経路とする。また、トラック、鉄道、その他、組み合わせなどによる流通方法を決定する。
【0104】
売買マッチング手段23は、地域端末3が対応する地域での、実際の販売商品の流通も最適化する。これにより、販売商品が適切に配送される。水産物であれば、傷むなどの問題を生じさせにくい。
【0105】
売買マッチング手段23は、決定した最適な流通経路および流通方法を、マッチング結果と併せて地域端末3に出力する。地域端末3は、マッチング結果により実際の売買を成立させる。加えて、受け取った流通経路や流通方法に基づいて、流通業者への指示を出せる。
【0106】
地域端末3が、流通業者への指示を売買成立に合わせて出力することで、売買された商品の流通への移行が即座に行われる。
【0107】
(通知手段)
図6は、本発明の実施の形態2における地域端末のブロック図である。統括サーバー2は、マッチング結果を地域端末3に出力する。これにより地域端末3は、売買成立を実行できる。
【0108】
地域端末3は、通知手段34を備える。この通知手段34は、マッチング結果を当事者である売り手と買い手に通知する。このとき、マッチングに関わる条件と併せて通知する。例えば、上述した流通経路や流通方法などを含めて、通知すればよい。
【0109】
通知手段34による通知を受けることで、売り手と買い手とは、売買成立に関する結果と付帯情報を得ることができる。
【0110】
(決済代行手段)
図7は、本発明の実施の形態2における統括サーバーのブロック図である。
図7の統括サーバー2は、決済代行手段24を更に備える。決済代行手段24は、売り手と買い手との間の決済をする。売買マッチングがなされれば、実際の売買成立のために決済が必要となる。例えば、クレジットカード、電子マネー、仮想通過、ネット通貨などで決済すればよい。
【0111】
統括サーバー2は、これらの決済を行う決済代行手段24を備えることで、売り手と買い手の売買の便利をさらに向上させることができる。
【0112】
決済代行手段24は、実際の支払いあるいはデータ上での支払い処理を行う。この代行処理により、売り手および買い手は、最終的な売買処理までを、売買システム1で完了することができる。すなわち、最初から最後までの物販を終えることができ、非常に便利である。
【0113】
また、決済代行手段は、電子マネーやデジタル通貨などでの決済を行う既存のシステムを利用することでもよい。既存の決済システムを、売買システム1の中に組み込むことで実現できる。このように既存の決済システムを組み込むことは、売買システム1の構築の効率化につながる。また、既存の決済システムに、本発明の売買システム1を組み込む方向性として構築することもできる。後者の場合には、既存の大型の決済システムに組み込まれることで、売買システム1の運用や知名度を高めることができる。
【0114】
また、決済代行システム24は、電子帳簿での出納を管理することで処理を実行してもよい。すなわち、実際の金銭などの授受ではなく、売り手と買い手あるいはその他の当事者間での、費用の動きを電子帳簿において記録していく。これにより、当事者のそれぞれは月次や年次などの経理締めを容易に行うこともできる。
【0115】
なお、実施の形態1~2で説明された水産物の売買システムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0116】
1 水産物の売買システム
2 統括サーバー
21 記憶部
22 買い手信頼性算出手段
23 売買マッチング手段
24 決済代行手段
3 地域端末
31 販売情報入力手段
32 購入希望情報入力手段
33 送信手段
34 通知手段