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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035452
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20230306BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230306BHJP
   G02B 6/132 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01L31/10 A
G02B6/12 301
G02B6/132
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142316
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513065077
【氏名又は名称】技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 真一
(72)【発明者】
【氏名】中山 知士
(72)【発明者】
【氏名】小倉 卓
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康隆
(72)【発明者】
【氏名】堀川 剛
(72)【発明者】
【氏名】徳島 正敏
(72)【発明者】
【氏名】小野 英輝
(72)【発明者】
【氏名】藤方 潤一
(72)【発明者】
【氏名】西沢 元亨
【テーマコード(参考)】
2H147
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
2H147AB04
2H147AB05
2H147AB07
2H147AB10
2H147AB24
2H147AC02
2H147BC05
2H147CB01
2H147CB03
2H147EA12A
2H147EA12D
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA13D
2H147EA14B
2H147EA15C
2H147EA34A
2H147EA36A
2H147EA40A
2H147FA01
2H147FA03
2H147FC01
2H147FC08
2H147FE06
5F149AA04
5F149AB03
5F149AB17
5F149BA01
5F149BA05
5F149BB01
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5F149CB17
5F149DA44
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5F149XB01
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5F849AA04
5F849AB03
5F849AB17
5F849BA01
5F849BA05
5F849BB01
5F849CB01
5F849CB17
5F849DA44
5F849EA01
5F849GA02
5F849JA14
5F849XB01
5F849XB05
5F849XB24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体装置の特性を向上させる。
【解決手段】半導体装置SDは、第1絶縁層IL1、光導波路OW、第1半導体層SL1、第2絶縁層IL2および第1半導体膜SF1を有する。光導波路は、第1絶縁層上に形成されている。第1半導体層は、第1絶縁層上において、光導波路の末端部と一体的に形成されている。第2絶縁層は、第1半導体層の第1部分を露出している第1開口部を有している。第2絶縁層は、第1絶縁層上に形成されている。第1半導体膜は、第1半導体部のうち、第1開口部内に露出している第1部分上に形成されている。第1半導体層の一部と、第1半導体膜とは、光電変換特性を有する受光部OR1を構成している。第1半導体層の上面には、凹部が形成されている。第1半導体膜の一部は、断面視において、凹部内に位置している。第1半導体膜の全部は、平面視において、第1開口部と重なっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成された光導波路と、
前記第1絶縁層上において、前記光導波路の末端部と一体的に形成されている第1半導体層と、
前記第1半導体層の第1部分を露出している第1開口部を有しており、かつ前記第1絶縁層上に形成された第2絶縁層と、
前記第1開口部内に露出している前記第1部分上に形成された第1半導体膜と、
を有し、
前記第1半導体層の一部と、前記第1半導体膜とは、光電変換特性を有する受光部を構成しており、
前記第1半導体層の上面には、凹部が形成されており、
前記第1半導体膜の一部は、断面視において、前記凹部内に位置しており、
前記第1半導体膜の全部は、平面視において、前記第1開口部と重なっている、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1開口部の内面は、前記凹部の内面と連続している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体膜の側面は、前記第1開口部の内面と直接的に接触している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1半導体層の厚さに対する前記凹部の深さの比は、1/3以上である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体膜は、
前記凹部の底面と連続しており、かつその結晶面が(311)面である第1面と、
前記第1面と連続しており、かつその結晶面が(111)面である第2面と、
を有し、
前記第1面および前記第2面は、前記凹部の内面を構成している、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1面および前記第2面は、前記光導波路の延長線上に位置している、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2絶縁層には、前記第1半導体層の第2部分を露出している第2開口部が形成されており、
前記第2開口部内に露出している前記第2部分上に形成された第2半導体膜と、
を有し、
前記第1半導体層の他の一部と、前記第2半導体膜とは、光電変換特性を有する受光部を構成しており、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1半導体層の材料は、シリコンを含み、
前記第1半導体膜の材料は、ゲルマニウムを含む、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項9】
(a)第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成された半導体層とを有する半導体ウェハを準備する工程と、
(b)前記半導体層をパターニングして、互いに一体的に形成された光導波路および第1半導体層を形成する工程と、
(c)前記光導波路および前記第1半導体層を覆うように、第2絶縁層を形成する工程と、
(d)前記第1半導体層の第1部分を露出するように、前記第2絶縁層に第1開口部を形成する工程と、
(e)前記第2絶縁層をエッチングマスクとして用いて、前記第1部分に凹部を形成する工程と、
(f)前記第1開口部内に露出している前記第1部分上に第1半導体膜を形成する工程と、
を含み、
前記第1半導体層の一部と、前記第1半導体膜とは、光電変換特性を有する受光部を構成しており、
前記第1半導体膜の一部は、断面視において、前記凹部内に位置しており、
前記第1半導体膜の全部は、平面視において、前記第1開口部と重なっている、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記(e)は、前記凹部の内面に水素処理を施す工程をさらに含む、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記(d)では、前記第1半導体層の第2部分を露出するように、前記第2絶縁層に第2開口部を形成し、
前記(f)では、前記第2開口部内に露出している前記第2部分上に第2半導体膜を形成する、
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、受光部を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術として、シリコンフォトニクス技術が知られている。シリコンフォトニクス技術が採用された半導体装置は、例えば、光信号を電気信号に変換するための受光部を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された半導体装置は、p型の第1半導体層と、当該第1半導体層の一部を露出している開口部を有する絶縁層と、上記第1半導体層のうち、当該開口部内に露出した部分上に形成されたn型の第2半導体層と、を有する。上記第1半導体層および上記第2半導体層は、受光部を構成している。特許文献1に記載された受光部では、上記第2半導体層は、上記開口部内に収容されている。当該受光部は、光電変換特性を有し、受信した光信号を電気信号に変換できる。
【0004】
特許文献2に記載された半導体装置は、シリコンからなる第1半導体層と、当該第1半導体層の一部を露出している開口部が形成された絶縁層と、上記第1半導体層のうち、当該開口部から露出した部分上に形成された第2半導体層と、を有する。当該第2半導体層は、p型ゲルマニウム層と、当該p型ゲルマニウム層上に形成された真性ゲルマニウム層と、当該真性ゲルマニウム層上に形成されたn型ゲルマニウム層とを有する。真性ゲルマニウム層の一部(ひさし部)は、上記絶縁層の上面に乗り上げるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-049504号公報
【特許文献2】特開2017-201649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載された上記受光部では、例えば、上記第1半導体層と一体的に形成された光導波路を介して、光が上記受光部に入射する。上記第2半導体層は、上記第1半導体層の上面上に形成されている。すなわち、上記第2半導体層は、上記第1半導体層内を進行する上記光の進行方向上には位置していない。このため、上記光は、上記第1半導体層から上記第2半導体層に染み出しつつ、上記第2半導体層に入射しなければならない。結果として、十分な光電変換効率を得られないことがある。
【0007】
また、特許文献2に記載された上記受光部では、真性ゲルマニウム層の上記ひさし部は、上記絶縁層の上面に乗り上げている。上記ひさし部は、上記受光部の中心部から遠い位置に形成されている。このため、上記ひさし部の光電変換への寄与度は小さい。また、本発明者らの検討により、上記ひさし部は、暗電流の増加の原因となることも分かった。
【0008】
以上のとおり、従来の受光部の特性を高める観点から改善の余地がある。
【0009】
実施の形態の課題は、半導体装置の特性を高めることである。その他の課題および新規な特徴は、本明細書および図面の記載から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施の形態に係る半導体装置は、第1絶縁層と、上記第1絶縁層上に形成された光導波路と、上記第1絶縁層上において、上記光導波路の末端部と一体的に形成されている第1半導体層と、上記第1半導体層の第1部分を露出している第1開口部を有しており、かつ上記第1絶縁層上に形成された第2絶縁層と、上記第1開口部内に露出している上記第1部分上に形成された第1半導体膜と、を有する。上記第1半導体層の一部と、上記第1半導体膜とは、光電変換特性を有する受光部を構成している。上記第1半導体層の上面には、凹部が形成されている。上記第1半導体膜の一部は、断面視において、上記凹部内に位置している。上記第1半導体膜の全部は、平面視において、上記第1開口部と重なっている。
【0011】
実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)第1絶縁層と、上記第1絶縁層上に形成された半導体層とを有する半導体ウェハを準備する工程と、(b)上記半導体層をパターニングして、互いに一体的に形成された光導波路および第1半導体層を形成する工程と、(c)上記光導波路および上記第1半導体層を覆うように、第2絶縁層を形成する工程と、(d)上記第1半導体層の第1部分を露出するように、上記第2絶縁層に第1開口部を形成する工程と、(e)上記第2絶縁層をエッチングマスクとして用いて、上記第1部分に凹部を形成する工程と、(f)上記第1開口部内に露出している前記第1部分上に第1半導体膜を形成する工程と、を含む。上記第1半導体層の一部と、上記第1半導体膜とは、光電変換特性を有する受光部を構成している。上記第1半導体膜の一部は、断面視において、前記凹部内に位置している。上記第1半導体膜の全部は、平面視において、前記第1開口部と重なっている。
【発明の効果】
【0012】
実施の形態に係る半導体装置では、半導体装置の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す要部断面図である。
図2図2は、本実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す要部断面図である。
図3図3は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図4図4は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図5図5は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図6図6は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図7図7は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図8図8は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図9図9は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図10図10は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
図11図11は、検討例に係る第1受光部の構造の一例を示す断面図である。
図12図12は、実施の形態の変形例に係る半導体装置の第1受光部の構成の一例を示す断面図である。
図13図13は、実施の形態の変形例に係る半導体装置の第1受光部の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要件または対応する構成要件には、同一の符号またはハッチングを付し、重複する説明は省略する。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。さらに、断面図は、見やすさの観点から、端面図として示している場合もある。
【0015】
[半導体装置の構成]
図1および図2は、半導体装置SDの構成の一例を示す要部断面図である。図2は、図1の破線で囲まれる領域を示す部分拡大図である。
【0016】
図1に示されるように、半導体装置SDは、半導体基板SUB、第1絶縁層IL1、光導波路OW、第1半導体層SL1、第2絶縁層IL2、第1半導体膜SF1、第2半導体膜SF2、第1キャップ層CP1および第2キャップ層CP2を有する。なお、見やすさの観点から、図2において、第1半導体層SL1へのハッチングは省略されている。
【0017】
第1半導体層SL1の一部と、第1半導体膜SF1とは、光電変換特性を有する受光部を構成している。より具体的には、第1半導体層SL1の一部と、第1半導体膜SF1と、第1キャップ層CP1とは、第1受光部OR1を構成している。第1半導体層SL1の他の一部と、第2半導体膜SF2とは、光電変換特性を有する他の受光部を構成している。より具体的には、第1半導体層SL1の他の一部と、第2半導体膜SF2と、第2キャップ層CP2とは、第2受光部OR2を構成している。
【0018】
半導体基板SUBは、第1絶縁層IL1を介して、第1受光部OR1および第2受光部OR2を支持する支持体である。半導体基板SUBの種類の例には、シリコン基板が含まれる。当該シリコン基板は、例えば、ホウ素(B)およびリン(P)などのp型不純物を含むシリコン単結晶基板である。たとえば、当該シリコン基板の主面の面方位は(100)であり、当該シリコン基板の抵抗率は5Ω・cm以上かつ50Ω・cm以下である。半導体基板SUBの厚さは、例えば、100μm以上かつ900μm以下である。
【0019】
第1絶縁層IL1は、半導体基板SUB上に形成されている。第1絶縁層IL1は、光導波路OWの内部を伝搬する光を光導波路OWの内部に実質的に閉じ込めるためのクラッド層である。第1絶縁層IL1は、光導波路OW材料の屈折率より小さい屈折率を有する材料で形成されている。第1絶縁層IL1の材料の例には、酸化シリコン(SiO)が含まれる。第1絶縁層IL1の材料の屈折率は、例えば、1.46である。なお、本明細書における屈折率は、波長1.5μmの光に対する数値である。第1絶縁層IL1の厚さは、光導波路OWからの光の染み出し距離より大きいことが好ましい。
【0020】
なお、第1絶縁層IL1が支持体として機能する場合には、半導体装置SDは、半導体基板SUBを有していなくてもよい。この場合、第1絶縁層IL1は、例えば、サファイヤ基板である。
【0021】
光導波路OWは、その内部を光が伝搬可能な経路である。光導波路OWは、第1絶縁層IL1上に形成されている。光導波路OWの末端部EPは、第1受光部OR1と光学的に接続されている。より具体的には、光導波路OWの末端部EPは、第1半導体層SL1と一体的に形成されている。
【0022】
光導波路OWの厚さは、光導波路OWの内部を光が伝搬できれば特に限定されない。光導波路OWの厚さは、例えば、200nm以上かつ400nm以下である。ここで、光導波路OWの厚さは、光導波路OWの上面および下面の対向方向における、光導波路OWの上記上面および上記下面の間隔である。
【0023】
光導波路OWの幅は、光導波路OWの内部を光が伝搬できれば特に限定されない。光導波路OWの幅は、300nm以上かつ500nm以下である。ここで、光導波路OWの幅は、光導波路OWの第1側面および第2側面の対向方向における、当該第1側面および当該第2側面の間隔である。
【0024】
光導波路OWの延在方向に直交する断面における、光導波路OWの断面視形状は、矩形状または台形状である。光導波路OWの材料の例には、シリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)が含まれる。光導波路OWの材料の結晶構造の例は、単結晶および多結晶を含む。光学素子における光の伝搬損失を低減する観点からは、光導波路OWの材料の結晶構造は、単結晶であることが好ましい。
【0025】
第1半導体層SL1は、第1絶縁層IL1上に形成されている。第1半導体層SL1は、光導波路OWと同層内に形成されている。第1半導体層SL1は、第1半導体部SP1および第3半導体部SP3を有する。第1半導体層SL1の上面には、凹部RPが形成されている。
【0026】
第1半導体部SP1は、第1受光部OR1の一部である。第1半導体部SP1は、第1導電型の半導体領域である。第1導電型は、p型またはn型である。上記第1導電型がp型である場合、第1半導体部SP1は、ホウ素(B)および二フッ化ボロン(BF)などのp型不純物を含む。上記第1導電型がn型である場合、第1半導体部SP1は、ヒ素(As)およびリン(P)などのn型不純物を含む。第1半導体部SP1の不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上かつ1×1020cm-3以下である。
【0027】
本実施の形態では、凹部RPは、第1半導体部SP1の上面に形成されている。凹部RPの形状は、第1半導体膜SF1の下面の形状を規定する。凹部RPの形状は、所望の第1半導体膜SF1の形状に応じて適宜設定される。凹部RPは、第1半導体部SP1を貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。凹部RPが、第1半導体部SP1を貫通していない場合、凹部RPの底部には、第1半導体層SL1が露出する。
【0028】
第1受光部OR1の受光効率を高める観点から、凹部RPの深さは大きいことが好ましい。一方で、第1半導体層SL1の抵抗成分の増大を抑制する観点から、凹部RPの深さは小さいことが好ましい。第1半導体層SL1の厚さtに対する凹部RPの深さdの比(深さd/厚さt)は、1/3以上かつ2/3以下であることが好ましい。たとえば、光導波路OWの厚さが300nmである場合、凹部RPの深さdは、100nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。なお、凹部RPの深さdは、第1半導体層SL1の厚さ方向における、第1半導体層SL1の上面と、凹部RPの底面との距離である。
【0029】
第3半導体部SP3は、第2受光部OR2の一部である。第3半導体部SP3は、上記第1導電型の半導体領域である。第3半導体部SP3の不純物濃度は、第1半導体部SP1の不純物濃度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施の形態では、第3半導体部SP3の不純物濃度の例は、第1半導体部SP1の不純物濃度と同じである。
【0030】
第2絶縁層IL2は、光導波路OWを覆うように第1絶縁層IL1上に形成されている。第2絶縁層IL2には、互いに離間している第1開口部OP1および第2開口部OP2が形成されている。
【0031】
第1開口部OP1は、第1受光部OR1の位置および大きさを規定している。第1開口部OP1は、第2開口部OP2から離間している。第1開口部OP1は、第1半導体部SP1に形成された凹部RPと連通している。第2絶縁層IL2および第1半導体部SP1の接触部分において、第1開口部OP1の大きさは、凹部RPの大きさと略等しい。換言すると、図1に示されるように、第1開口部OP1の内面は、凹部RPの内面と連続している。
【0032】
第2開口部OP2は、第2受光部OR2の位置および大きさを規定している。第2開口部OP2は、第1半導体層SL1の第3半導体部SP3を露出している。第2開口部OP2の大きさは、第1開口部OP1の大きさと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
第2絶縁層IL2の材料の例は、酸化シリコン(SiO)、および窒素などの元素を含む酸化シリコンを含む。被覆性を高める観点から、第2絶縁層IL2の厚さは大きいことが好ましい。第2絶縁層IL2の厚さは、例えば、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。第1開口部OP1および第2開口部OP2を所望の形状に加工しやすくする観点から、第2絶縁層IL2の厚さは小さいことが好ましい。第2絶縁層IL2の厚さは、例えば、500nm以下であることが好ましい。
【0034】
第1半導体膜SF1は、第1半導体部SP1のうち、第1開口部OP1内に露出している部分(第1部分)上に形成されている。第1半導体膜SF1の一部は、断面視において、凹部RP内に位置している。第1半導体膜SF1の側面は、第1開口部OP1の内面および凹部RPの内面と直接的に接触している。第1半導体膜SF1は、第5半導体部SP5および第2半導体部SP2を有する。
【0035】
第5半導体部SP5は、第1半導体層SL1の第1半導体部SP1上に形成されている。第5半導体部SP5の一部(下部)は、断面視において、凹部RP内に位置している。第5半導体部SP5の残部(上部)は、凹部RP外に位置している。第5半導体部SP5の不純物濃度は、第1半導体部SP1の不純物濃度および第2半導体部SP2の不純物濃度より小さい。第5半導体部SP5の不純物濃度は、例えば、1×1017cm-3以下である。
【0036】
第5半導体部SP5は、第1半導体部SP1に形成された凹部RPの内面に直接的に接触している。図1および図2に示されるように、第5半導体部SP5の上記一部は、下面LSF、第1面S1および第2面S2を有する。下面LSF、第1面S1および第2面S2は、凹部RPの内面を構成している。
【0037】
第5半導体部SP5の下面LSFは、凹部RPの底面を構成している。下面LSFの結晶面は、第1面S1の結晶面および第2面S2の結晶面に応じて決定される。本実施の形態では、下面LSFの結晶面は、(100)面である。下面LSFの平面視形状は、略矩形状である。第5半導体部SP5の下面LSFは、第1絶縁層IL1の上面に沿う面である。
【0038】
第5半導体部SP5の第1面S1は、下面LSFと連続している。第1面S1の結晶面は、(311)面である。換言すると、第1面S1と、下面LSFを含む仮想平面VS1とのなす角度(第1半導体膜SF1の外角)θ1は、約25.2度である。第1面S1の平面視形状は、環形状である。第1半導体SL1の厚さ方向において、第1半導体SL1の下面と、第1面S1との間隔は、第1半導体SL1の下面と、下面LSFとの間隔より大きい。
【0039】
第5半導体部SP5の第2面S2は、第1面S1と連続している。第2面S2は、第5半導体部SP5の上記側面と連続している。第2面S2の結晶面は、(111)面である。換言すると、第2面S2を含む仮想平面VS2と、下面LSFを含む仮想平面VS1とのなす角度(第1半導体膜SF1の外角)θ2は、約54.7度である。第2面S2の平面視形状は、環形状である。なお、第5半導体部SP5の上記側面は、第1絶縁層IL1の上面に対する垂線に沿う面である。第1半導体SL1の厚さ方向において、第1半導体SL1の下面と、第2面S2との間隔は、第1半導体SL1の下面と、第5半導体部SP5の下面LSFとの間隔、および第1半導体SL1の下面と、第5半導体部SP5の下面LSFとの間隔より大きい。
【0040】
第1面S1および第2面S2は、光導波路OWの延長線上に位置している。第1面S1および第2面S2は、光導波路OWの延長線と交差する。上記のとおり、第5半導体部SP5の下部の表面は、第5半導体部SP5の下面LSFから第5半導体部SP5の上記側面に向かって、互いに連続する複数の面によって段階的に構成されている。本実施の形態では、上記複数の面は、第1面S1および第2面S2である。これにより、第5半導体部SP5の下面LSFと、第5半導体部SP5の上記側面とのなす角度が90度である場合と比較して、光導波路OWの末端部EPから、第5半導体部SP5に光が入射するとき、第1半導体部SP1および第5半導体部SP5の界面で、上記光が反射されることを抑制できる。
【0041】
第2半導体部SP2は、第1半導体膜SF1の上部に形成されている。第2半導体部SP2は、第1キャップ層CP1と直接的に接触している。第2半導体部SP2は、第5半導体部SP5上に形成されている。第2半導体部SP2は、上記第1導電型と異なる第2導電型を有する。上記第2導電型は、p型またはn型である。リーク電流の低減の観点から、第2半導体部SP2は、第1半導体膜SF1のうち、第1半導体膜SF1の上面から10nm以上かつ20nm以下の厚さを有する領域内に位置していることが好ましい。第2半導体部SP2の不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上かつ1×1020cm-3以下である。
【0042】
第1半導体膜SF1の全部は、平面視において、第1開口部OP1内に位置するように形成されている。すなわち、第1半導体膜SF1の全部は、平面視において、第1開口部OP1と重なっている。詳細については後述するが、これにより、第1受光部OR1の暗電流を低減できる。
【0043】
第1半導体膜SF1の全部は、断面視において、凹部RPおよび第1開口部OP1内に位置していてもよい。また、第1半導体膜SF1の一部(上部)は、断面視において、第1開口部OP1外に位置していてもよい。本実施の形態では、図1に示されるように、第1半導体膜SF1の一部は、断面視において、第1開口部OP1外に位置している。
【0044】
第1半導体膜SF1の形状は、第1受光部OR1が光導波路OWからの光を効率的に吸収できる形状であることが好ましい。このような観点から、第1半導体膜SF1は、光導波路OWの延長線に沿って延在していることが好ましい。第1半導体膜SF1の平面視形状は、略矩形状であることが好ましい。
【0045】
第1半導体膜SF1の材料は、上記光を吸収することができる材料であればよい。第1半導体膜SF1の材料は、光信号を構成する光の波長に応じて適宜設定され得る。第1半導体膜SF1の材料の例には、ゲルマニウムが含まれる。
【0046】
本実施の形態では、第1半導体部SP1、第5半導体部SP5および第2半導体部SP2は、PIN型ダイオードを構成している。これにより、第1受光部OR1は、光電変換特性を有する。なお、第1受光部OR1がPN型ダイオードの場合、第1半導体膜SF1は、第5半導体部SP5を有しておらず、第2半導体部SP2のみを有する。
【0047】
第1半導体膜SF1の厚さは、光の染み出しを抑制する観点から、大きいことが好ましい。第1半導体膜SF1の厚さは、例えば、光導波路OWの厚さより大きく、かつ光導波路OWの厚さの3倍以下である。本実施の形態では、「第1半導体膜SF1の厚さ」とは、第1半導体膜SF1の下面および上面の対向方向における、当該下面および当該上面の間隔である。第1半導体膜SF1の上記上面は、第1半導体膜SF1の上記下面と平行な面である。
【0048】
第1半導体膜SF1の長さは、光の吸収量を高める観点から、大きいことが好ましい。第1半導体膜SF1の長さは、例えば、20μm以上かつ100μm以下である。なお、「第1半導体膜SF1の長さ」は、光導波路OWの延在方向における第1半導体膜SF1の長さである。たとえば、第1半導体膜SF1の長さは、光導波路OWの延在方向における第1半導体膜SF1の両側面間の距離である。
【0049】
第1キャップ層CP1は、第1半導体膜SF1を保護する保護層である。第1キャップ層CP1は、第1半導体膜SF1を覆っている。第1キャップ層CP1の材料および厚さは、上記機能を発揮できれば、特に限定されない。第1キャップ層CP1の材料の例は、シリコン(Si)およびシリコンゲルマニウム(SiGe)を含む。第1キャップ層CP1は、上記第2導電型の不純物が含む半導体領域を含む。当該半導体領域は、第2半導体部SP2に接触している。第1キャップ層CP1の厚さは、第1キャップ層CP1の抵抗を低減する観点から、小さいことが好ましい。第1キャップ層CP1の厚さは、例えば、20nm以上かつ50nm以下である。
【0050】
前述したとおり、第1受光部OR1は、第1半導体部SP1、第1半導体膜SF1、および第1キャップ層CP1により構成されている。本実施の形態において、第1受光部OR1は、光導波路OWからの光を受光するように構成されている。すなわち、第1受光部OR1は、光導波路OWを介して光を受ける。
【0051】
第2半導体膜SF2は、第3半導体部SP3のうち、第2開口部OP2内に露出している部分(第2部分)上に形成されている。第2半導体膜SF2の厚さ方向において、第2半導体膜SF2は、第1半導体膜SF1よりも第1絶縁層IL1から遠くに位置している。換言すると、第2半導体膜SF2の厚さ方向において、第2半導体膜SF2および第1絶縁層IL1の間隔は、第1半導体膜SF1および第1絶縁層IL1の間隔より大きい。第2半導体膜SF2は、第6半導体部SP6および第4半導体部SP4を有する。
【0052】
第6半導体部SP6は、第1半導体層SL1の第3半導体部SP3上に形成されている。第6半導体部SP6の不純物濃度は、第3半導体部SP3の不純物濃度および第4半導体部SP4の不純物濃度より小さい。第6半導体部SP6の不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以下である。
【0053】
第4半導体部SP4は、第3半導体膜SF3の上部に形成されている。第4半導体部SP4は、第6半導体部SP6上に形成されている。第4半導体部SP4は、上記第2導電型を有する。リーク電流の低減の観点から、第4半導体部SP4は、第3半導体層SL3のうち、第2半導体膜SF2の上面から10nm以上かつ20nm以下の厚さを有する領域内に位置していることが好ましい。第4半導体部SP4の不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上かつ1×1020cm-3以下である。
【0054】
第2半導体膜SF2の全部は、平面視において、第2開口部OP2内に位置していていることが好ましい。この場合、第2半導体膜SF2の全部は、平面視において、第2開口部OP2と重なっている。これにより、第2受光部OR2の暗電流を低減できる。なお、第2半導体膜SF2の一部は、平面視において、第2開口部OP2外に位置していてもよい。
【0055】
第2半導体膜SF2の全部は、断面視において、第2開口部OP2内に位置していてもよい。また、第2半導体膜SF2の一部(上部)は、断面視において、第1開口部OP1外に位置していてもよい。本実施の形態では、図1に示されるように、第2半導体膜SF2の一部は、断面視において、第2開口部OP2外に位置している。換言すると、第2半導体膜SF2の厚さは、第2絶縁層IL2の厚さより大きい。これにより、第2受光部OR2の光吸収量を高めることができる。
【0056】
第2半導体膜SF2の形状は、第2受光部OR2が外部の光ファイバからの光を効率的に吸収できる形状であることが好ましい。このような観点から、第2半導体膜SF2の平面視形状は、上記光ファイバの出射面に対応する形状であることが好ましい。第2半導体膜SF2の平面視形状は、略円形状であることが好ましい。第2半導体膜SF2の平面視形状は、第1半導体膜SF1の平面視形状と異なる。
【0057】
第2半導体膜SF2の材料は、上記光を吸収できる材料であればよい。第2半導体膜SF2の材料は、光信号を構成する光の波長に応じて適宜設定され得る。第2半導体膜SF2の材料の例は、ゲルマニウムを含む。
【0058】
第2半導体膜SF2の厚さは、第2受光部OR2における光の吸収量を高める観点から、大きいことが好ましい。第2半導体膜SF2の厚さは、例えば、1μm以上かつ2.0μm以下である。第2半導体膜SF2の厚さは、第1半導体膜SF1の厚さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
第2半導体膜SF2の大きさは、受光する光のスポットサイズの大きさに応じて、適宜調整される。第2半導体膜SF2の大きさは、例えば、外部の光ファイバの大きさに応じて決定される。このため、平面視において、第2半導体膜SF2の大きさは、第1半導体膜SF1の大きさより大きいことが好ましい。第2半導体膜SF2の平面視形状が略円形状であり、かつ第1半導体膜SF1の平面視形状が略矩形状である場合、平面視において、第2半導体膜SF2の直径は、第1半導体膜SF1の幅および長さの一方または両方より大きいことが好ましい。
【0060】
第2キャップ層CP2は、第2半導体膜SF2を保護する保護層である。第2キャップ層CP2は、第2半導体膜SF2を覆っている。第2キャップ層CP2の材料および厚さは、上記機能を発揮できれば、特に限定されない。第2キャップ層CP2の材料の例は、シリコン(Si)およびシリコンゲルマニウム(SiGe)を含む。第2キャップ層CP2は、上記第2導電型の不純物が含む半導体領域を含む。当該半導体領域は、第4半導体部SP4に接触している。第2キャップ層CP2の厚さは、第2キャップ層CP2の抵抗を低減する観点から、小さいことが好ましい。第2キャップ層CP2の厚さは、例えば、20nm以上かつ50nm以下である。
【0061】
第2受光部OR2は、第3半導体部SP3、第2半導体膜SF2、および第2キャップ層CP2により構成されている。本実施の形態において、第2受光部OR2は、例えば、外部の光ファイバからの光を受光するように構成されている。すなわち、第2受光部OR2は、第2半導体膜SF2の厚さ方向において、光を受ける。第2受光部OR2の受光面は、第2受光部OR2の上面である。本実施の形態では、第2受光部OR2の受光面は、第2キャップ層CP2の上面である。
【0062】
(半導体装置の製造方法)
次いで、本実施の形態に係る半導体装置SDの製造方法の一例について説明する。図3図10は、半導体装置SDの製造方法に含まれる工程の一例を示す断面図である。
【0063】
本実施の形態に係る半導体装置SDの製造方法は、(1)半導体ウェハSWの準備工程、(2)半導体層SLのパターニング工程、(3)第1半導体部SP1および第3半導体部SP3の形成工程、(4)第2絶縁層IL2の形成工程、(5)第1開口部OP1、第2開口部OP2および凹部RPの形成工程、(6)エピタキシャル成長工程、(7)第1キャップ層CP1および第2キャップ層CP2の形成工程、(8)第2半導体部SP2および第4半導体部SP4の形成工程を含む。
【0064】
(1)半導体ウェハSWの準備
まず、図3に示されるように、半導体基板SUBと、半導体基板SUB上に形成された第1絶縁層IL1と、第1絶縁層IL1上に形成された半導体層SLと、を有する半導体ウェハSWを準備する。半導体ウェハSWは、製造されてもよいし、市販品として購入されてもよい。
【0065】
半導体ウェハSWは、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板である。SOI基板の製造方法としては、公知の製造方法から適宜選択され得る。SOI基板の製造方法の例には、SIMOX(Separation by Implantation of Oxygen)法およびスマートカット法が含まれる。半導体基板SUBの材料の例は、前述の通りである。半導体層SLの材料の例には、シリコンおよびゲルマニウムが含まれる。半導体層SLの材料の結晶構造は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。
【0066】
(2)半導体層SLのパターニング
次いで、図4に示されるように、準備した半導体ウェハSWの半導体層SLをパターニングする。これにより、互いに一体的に形成された光導波路OWおよび第1半導体層SL1が形成される。たとえば、パターニングは、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術によって行われる。
【0067】
(3)第1半導体部SP1および第3半導体部SP3の形成
次いで、図5に示されるように、第1半導体層SL1における所望の領域に、第1半導体部SP1および第3半導体部SP3を形成する。第1半導体部SP1および第3半導体部SP3は、例えば、イオン注入法によって、所望の不純物濃度で不純物を第1半導体層SL1内に導入する。なお、特に図示しないが、イオン注入法では、イオン注入が行われるべき領域以外の領域上には、レジストマスクが形成される。なお、光導波路OWのうち、第1半導体部SP1と隣接する部分は、光導波路OWの末端部EPである。
【0068】
(4)第2絶縁層IL2の形成
次いで、図6に示されるように、光導波路OWおよび第1半導体層SL1を覆うように、第1絶縁層IL1上に第2絶縁層IL2を形成する。第2絶縁層IL2の形成方法は、例えば、CVD法である。
【0069】
(5)第1開口部OP1、第2開口部OP2および凹部RPの形成
次いで、図7に示されるように、第1開口部OP1、第2開口部OP2および凹部RPを形成する。より具体的には、まず、第1開口部OP1および第2開口部OP2が、第2絶縁層IL2に形成される。次いで、凹部RPが、第1半導体層SL1の第1半導体部SP1に形成される。
【0070】
第1開口部OP1および第2開口部OP2の形成は、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法によって行われる。
【0071】
凹部RPは、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法によって第1半導体層SLの上面に形成される。その後、当該凹部の内面に水素(H)処理を施すことによって、凹部RPの第1面S1および第2面S2が形成され得る。ここで、水素処理は、水素ガス雰囲気中で、熱処理を行うことである。水素処理における設定温度は、例えば、800℃以上である。なお、凹部RPを形成するとき、第2絶縁層IL2は、ハードマスク(エッチングマスク)として用いることもできる。
【0072】
(6)エピタキシャル成長
次いで、図8に示されるように、エピタキシャル成長法によって、第1半導体層SL1のうち、第2絶縁層IL2の第1開口部OP1内に露出している部分上に第1エピタキシャル層EP1を形成し、第2絶縁層IL2の第2開口部OP2内に露出している部分上に第2エピタキシャル層EP2を形成する。第1エピタキシャル層EP1の厚さと、第2エピタキシャル層EP2の厚さとが所望の大きさとなるように、時間および温度を調整する。
【0073】
第1エピタキシャル層EP1および第2エピタキシャル層EP2は、共通の工程で形成されてもよいし、異なる工程で形成されてもよい。製造工程数を低減する観点からは、第1エピタキシャル層EP1および第2エピタキシャル層EP2は、共通の工程で形成されることが好ましい。この場合でも、第1開口部OP1の平面視形状と、第2開口部OP2の平面視形状とが異なることによって、第1エピタキシャル層EP1の厚さと、第2エピタキシャル層EP2の厚さとは、互いに異なる。
【0074】
(7)第1キャップ層CP1および第2キャップ層CP2の形成
次いで、図9に示されるように、第1エピタキシャル層EP1を覆うように、第1キャップ層CP1を形成し、第2エピタキシャル層EP2を覆うように、第2キャップ層CP2を形成する。第1キャップ層CP1および第2キャップ層CP2の形成方法は、例えば、エピタキシャル成長法である。
【0075】
(8)第2半導体部SP2および第4半導体部SP4の形成
次いで、図10に示されるように、第2半導体部SP2を第1エピタキシャル層EP1内に形成し、第4半導体部SP4を第2エピタキシャル層EP2内に形成する。第1エピタキシャル層EP1のうち、第2半導体部SP2以外の領域は、第5半導体部SP5である。第2エピタキシャル層EP2のうち、第4半導体部SP4以外の領域は、第6半導体部SP6である。これにより、第1半導体膜SF1および第2半導体膜SF2が形成される。第2半導体部SP2は、イオン注入法によって、第1エピタキシャル層EP1内に不純物を導入することによって形成される。第4半導体部SP4は、イオン注入法によって、第2エピタキシャル層EP2内に不純物を導入することによって形成される。
【0076】
最後に、上記工程によって得られた構造体をダイシングすることによって、個片化された複数の半導体装置SDが得られる。
【0077】
以上の製造方法により、本実施の形態に係る半導体装置SDが製造される。
【0078】
なお、本実施の形態に係る半導体装置SDの製造方法は、必要に応じて、他の工程をさらに含んでいてもよい。たとえば、他の工程の例には、配線層の形成工程、光源としてのレーザダイオードの配置工程、グレーティングカプラの形成工程、スポットサイズコンバータの形成工程、および変調部の形成工程が含まれる。当該他の工程は、シリコンフォトニクス技術において公知の形成方法から適宜採用され得る。
【0079】
(効果)
本実施の形態に係る半導体装置SDの第1受光部OR1は、第1半導体層SL1の凹部RP内に形成された第1半導体膜SF1を有する。第1半導体膜SF1の一部は、光導波路OW内を伝搬する光の光路上に位置できる。このため、第1半導体膜SF1が、凹部RPを有しない第1半導体層SL1上に形成されている場合と比較して、光導波路OWからの光は、直接的に第1半導体膜SF1内に入射しやすくなる。これにより、本実施の形態に係る第1受光部OR1は、高い光の吸収率を有することができる。結果として、第1受光部OR1は、高い光電変換効率を有する。本実施の形態によれば、半導体装置SDの特性を高めることができる。
【0080】
また、第1半導体膜SF1の全部は、平面視において、第1開口部OP1と重なっている。本構成による作用を説明するために、まず、第1受光部OR1の一部が第1開口部OP1の外側に位置している場合について検討する。図11は、検討例に係る第1受光部rOR1の構造の一例を示す断面図である。図11に示されるように、第1受光部rOR1は、第1半導体膜rSF1の一部が、第2絶縁層IL2の上面上に位置するように形成されている。第1半導体膜rSF1のうち、平面視において、第1開口部OP1の外側に位置している部分(以下、「ひさし部rEP」ともいう)は、第1受光部OR1の中心位置から遠く、光電変換への寄与率が小さい。また、ひさし部rEPがエピタキシャル成長法によって形成されるとき、ひさし部rEPでは、第2絶縁層IL2の段部に起因して、結晶面の面方位が不連続になりやすい。結果として、ひさし部rEPにおいて、結晶欠陥が発生し、暗電流成分が増大する原因となる。一方で、本実施の形態に係る第1受光部OR1は、平面視において、第1受光部OR1の全部が第1開口部OP1と重なるように形成されている(図1参照)。このため、第1受光部OR1では、ひさし部rEPに起因する暗電流の増大が生じない。結果として、半導体装置SDの特性を高めることができる。
【0081】
また、本実施の形態では、第1半導体膜SF1は、第1面S1および第2面S2を有する。第1半導体膜SF1の表面は、光導波路OWの光軸(光の進行方向)に対して、エッチングの揺らぎに影響されない安定な傾斜面を再現している。当該傾斜面は、第1半導体膜SF1に入射する光の受光面となる。当該受光面が光の光軸に対して傾斜している。これにより、上記受光面で反射される光の量が低減する。このため、第1受光部OR1の第1半導体膜SF1の表面が、光導波路OWの光軸と直交する場合と比較して、本実施の形態に係る第1受光部OR1の光の吸収率は高くなる。結果として、半導体装置SDの特性をさらに高めることができる。
【0082】
本実施の形態では、第1半導体層SL1の凹部RPの形成工程は、第2絶縁層IL2の第1開口部OP1の形成工程の後に行われる。このとき、第2絶縁層IL2は、ハードマスクとして利用される。このため、互いに異なるレジストマスクを利用して、凹部RPおよび第1開口部OP1のそれぞれを別工程で形成する場合と比較して、凹部RPの寸法制御が容易となる。
【0083】
本実施の形態に係る半導体装置SDは、光導波路OWを介して受光する第1受光部OR1と、外部の光ファイバ等から受光する第2受光部OR2とを有する。光の吸収率を高める観点から、第1半導体膜SF1の一部は、第1半導体層SL1の凹部RP内に位置していることが好ましい。一方で、外部の光ファイバから受光する第2受光部OR2においては、第2半導体膜SF2は、第1半導体層SL1のうち、凹部RPが形成されていない部分上に位置していることが好ましい。これにより、受光時に第2受光部OR2内で生成されたキャリアの取り出し効率を高めることができる。以上のように、本実施の形態では、受光部の受光方式の違いに応じて、最適な構造を採用できる。結果として、半導体装置SDの特性をさらに高めることができる。
【0084】
[変形例1]
図12は、本実施の形態の変形例1に係る半導体装置mSD1の第1受光部mOR1-1の構成の一例を示す断面図である。
【0085】
変形例1に係る第1受光部mOR1-1は、第1半導体部mSP1、第2半導体部mSP2、第1半導体膜mSF1-1、および第1キャップ層CP1により構成されている。
【0086】
第1半導体部mSP1は、第1半導体層SL1の一部である。第1半導体部mSP1は、第1半導体膜mSF1-1の一部と直接的に接している。第1半導体部mSP1は、上記第1導電型の半導体領域である。
【0087】
第2半導体部mSP2は、第1半導体層SL1の他の一部である。第2半導体部mSP2は、第1半導体膜mSF1-1の他の一部と直接的に接している。第2半導体部mSP2は、上記第2導電型の半導体領域である。第2半導体部mSP2は、第1半導体部mSP1から離間している。
【0088】
第1半導体膜mSF1-1は、第5半導体部SP5、第7半導体部mSP7および第8半導体部mSP8を有する。第7半導体部mSP7および第8半導体部mSP8は、第5半導体部SP5を挟んでいる。第7半導体部mSP7は、第1半導体部mSP1と直接的に接している。第7半導体部mSP7は、上記第1導電型の半導体領域である。第8半導体部mSP8は、第2半導体部mSP2と直接的に接している。第8半導体部mSP8は、上記第2導電型の半導体領域である。
【0089】
第1半導体部mSP1への不純物の注入工程と、第7半導体部mSP7への不純物の注入工程とは、互いに同じタイミングで行われてもよいし、互いに異なるタイミングで行われてもよい。第2半導体部mSP2への不純物の注入工程と、第8半導体部mSP8への不純物の注入工程とは、互いに同じタイミングで行われてもよいし、互いに異なるタイミングで行われてもよい。
【0090】
変形例に係る第1受光部mOR1のPIN型構造は、光導波路OWの延在方向に沿うように構成されている。この場合、コンタクトは、第1半導体部mSP1または第2半導体部mSP2に達するように形成される。上記コンタクトは、第1半導体膜mSF1-1の直上には形成されない。上記コンタクトを第1半導体膜mSF1-1の直上に形成する場合、上記コンタクトの形成過程で第1半導体膜mSF1-1にダメージが生じ得る。しかし、本変形例では、当該ダメージを抑制できる。結果として、第1受光部mOR1の特性をより高めることができる。
【0091】
[変形例2]
図13は、本実施の形態の変形例2に係る半導体装置mSD2の第1受光部mOR1-2の構成の一例を示す断面図である。
【0092】
変形例2に係る第1受光部mOR1-2は、第1半導体部mSP1、第2半導体部mSP2、第1半導体膜mSF1-2、および第1キャップ層CP1により構成されている。変形例2に係る第1受光部mOR1-2は、第1受光部mOR1-2が第7半導体部mSP7および第8半導体部mSP8を有しない点について、変形例1に係る第1受光部mOR1-1と異なる。
【0093】
変形例2は、変形例1と同様の効果を有する。また、変形例2に係る半導体装置mSD2は、第7半導体部mSP7および第8半導体部mSP8を有しない。これにより、イオン注入による不純物の導入時に発生する欠陥が生じない。結果として、欠陥性の暗電流を抑制できる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更され得る。たとえば、第1半導体膜SF1の表面は、(311)面の第1面S1と、(111)面の第2面S2とを有していなくてもよい。この場合、凹部RPの内面のH処理は行われない。また、第1半導体膜SF1の底面と、第1半導体膜SF1の側面とのなす角(第1半導体膜SF1の内角)は、約90度となる。
【0095】
また、上記半導体装置は、上記第1受光部のみを有していてもよいし、上記第1受光部および上記第2受光部の両方を有していてもよい。
【0096】
また、特定の数値例について記載した場合であっても、理論的に明らかにその数値に限定される場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値であってもよい。また、成分については、「Aを主要な成分として含むB」などの意味であり、他の成分を含む態様を排除するものではない。
【符号の説明】
【0097】
CP1 第1キャップ層
CP2 第2キャップ層
EP 末端部
LSF 第1半導体膜の下面
rEP ひさし部
IL1 第1絶縁層
IL2 第2絶縁層
OP1 第1開口部
OP2 第2開口部
OR1、rOR1、mOR1-1、mOR1-2 第1受光部
OR2 第2受光部
OW 光導波路
SD、mSD1、mSD2 半導体装置
S1 第1半導体膜の第1面
S2 第1半導体膜の第2面
SF1、mSF1-1、mSF1-2 第1半導体膜
SF2 第2半導体膜
SF3 第3半導体膜
SL 半導体層
SL1 第1半導体層
SP1、mSP1 第1半導体部
SP2、mSP2 第2半導体部
SP3 第3半導体部
SP4 第4半導体部
SP5 第5半導体部
SP6 第6半導体部
mSP7 第7半導体部
mSP8 第8半導体部
SUB 半導体基板
SW 半導体ウェハ
図1
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図4
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図13