(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035463
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】プリンタ、印刷物および印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230306BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230306BHJP
B32B 3/10 20060101ALI20230306BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230306BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20230306BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230306BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20230306BHJP
B41M 3/16 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/21
B32B3/10
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
B05D1/26 Z
B41M3/06 C
B41M3/16
B41J2/01 501
B41J2/01 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142335
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 輝
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
2C056EC70
2C056EC71
2C056EE17
2C056FC01
2C056FC02
2C056HA44
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA27
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB09
2H113BB10
2H113BB18
2H113BB22
2H113BB23
2H113BC01
2H113CA13
2H113CA46
2H113FA43
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE02
4D075AE03
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DA06
4D075DA23
4D075DB01
4D075DB13
4D075DB18
4D075DB21
4D075DB48
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA21
4D075EA33
4D075EA41
4D075EA43
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA41B
4F100DC21B
4F100HB31B
(57)【要約】
【課題】指先で印刷物を触れたときの触感の種類をより多く得ることが可能な印刷物を作製する。
【解決手段】プリンタ100の制御装置160は、媒体10に印刷層12を印刷するように制御を行う。印刷層12は、複数の第1突起25を有する第1印刷領域21と、複数の第2突起26を有する第2印刷領域22を備える。第1印刷領域21における第1突起25の大きさ、高さH11、平面形状、配列間隔L21、配列方向D21のうち何れか1つ以上は、第2印刷領域22における第2突起26の大きさ、高さH12、平面形状、配列間隔L22、配列方向D22と異なる。印刷層12の任意の位置における3cm四方の抽出領域30を抽出する。抽出領域30には、第1印刷領域21と第2印刷領域22が配置されると共に、抽出領域30における第1印刷領域21と第2印刷領域22のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
前記支持台に支持された媒体に対して前記インクヘッドを相対的に移動させる移動機構と、
媒体に印刷層を印刷するように制御を行う制御装置と、
を備え、
前記印刷層は、
複数の第1突起を有する第1印刷領域と、
複数の第2突起を有する第2印刷領域と、
を備え、
前記第1印刷領域における前記第1突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向のうち何れか1つ以上は、前記第2印刷領域における前記第2突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向と異なり、
前記印刷層の任意の位置における3cm四方の抽出領域を、前記印刷層から抽出したとき、
前記抽出領域には、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域が配置されると共に、前記抽出領域における前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である、プリンタ。
【請求項2】
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの一方の印刷領域は、離間するように複数配置されている、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの一方の印刷領域のそれぞれの形状は、同じ形状である、請求項2に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの一方の印刷領域のそれぞれの形状は、円形状または多角形状である、請求項2または3に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの一方の印刷領域は、第1方向に沿って第1間隔で複数配置されている、請求項2から4までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの一方の印刷領域は、前記第1方向と交差する第2方向に沿って第2間隔で複数配置されている、請求項5に記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記第1印刷領域は、離間するように複数配置され、
前記第2印刷領域は、離間するように複数配置されている、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項8】
前記第1印刷領域の形状と、前記第2印刷領域の形状は全て同じである、請求項7に記載されたプリンタ。
【請求項9】
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域とは、第1方向に沿って交互に配置されている、請求項7または8に記載されたプリンタ。
【請求項10】
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域とは、前記第1方向と交差する第2方向に沿って交互に配置されている、請求項9に記載されたプリンタ。
【請求項11】
前記第1印刷領域の形状、および、前記第2印刷領域の形状は、円形状または多角形状である、請求項7から10までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項12】
前記第1印刷領域の大きさと、前記第2印刷領域の大きさは異なる、請求項7から11までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項13】
平面視において、前記第1突起の最大寸法、および、前記第2突起の最大寸法は、1mm以下である、請求項1から12までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項14】
隣り合う前記第1突起の間隔、および、隣り合う前記第2突起の間隔は、2mm以下である、請求項1から13までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項15】
隣り合う前記第1突起の間隔、および、隣り合う前記第2突起の間隔は、20μm以上である、請求項14に記載されたプリンタ。
【請求項16】
前記第1突起の高さ、および、前記第2突起の高さは、10mm以下である、請求項1から15までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項17】
平面視において、前記第1印刷領域の面積、および、前記第2印刷領域の面積は、400μm2以上である、請求項1から16までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項18】
前記インクヘッドは、クリアインクを吐出する第1インクヘッドを有し、
前記制御装置は、媒体にクリアインクを吐出することで前記印刷層を印刷するように制御を行う、請求項1から17までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項19】
前記インクヘッドは、
クリアインクを吐出する第1インクヘッドと、
カラーインクを吐出する第2インクヘッドと、
を有し、
前記制御装置は、媒体にクリアインクおよびカラーインクを吐出することで前記印刷層を印刷するように制御を行う、請求項1から17までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項20】
媒体と、
前記媒体上に形成され、かつ、インクによって形成された印刷層と、
を備え、
前記印刷層は、
複数の第1突起を有する第1印刷領域と、
複数の第2突起を有する第2印刷領域と、
を備え、
前記第1印刷領域における前記第1突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向のうち何れか1つ以上は、前記第2印刷領域における前記第2突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向と異なり、
前記印刷層の任意の位置における3cm四方の抽出領域を、前記印刷層から抽出したとき、
前記抽出領域には、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域が配置されると共に、前記抽出領域における前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である、印刷物。
【請求項21】
媒体を準備する準備工程と、
媒体に印刷層を印刷する印刷工程と、
を包含し、
前記印刷層は、
複数の第1突起を有する第1印刷領域と、
複数の第2突起を有する第2印刷領域と、
を備え、
前記第1印刷領域における前記第1突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向のうち何れか1つ以上は、前記第2印刷領域における前記第2突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向と異なり、
前記印刷層の任意の位置における3cm四方の抽出領域を、前記印刷層から抽出したとき、
前記抽出領域には、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域が配置されると共に、前記抽出領域における前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、印刷物および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、基材の表面に触感を付与した印刷物が開示されている。この印刷物は、基材の表面に複数の突起が配列された第一の印刷領域と、基材の表面に複数の突起が配列された第二の印刷領域とを備えている。ここでは、第一の印刷領域における突起の配列間隔が、第二の印刷領域における突起の配列間隔が異なっている。例えば、第一の印刷領域における突起の配列間隔は、第二の印刷領域における突起の配列間隔よりも大きい。
【0003】
このように、第一の印刷領域における突起の配列間隔と、第二の印刷領域における突起の配列間隔とを異ならせることで、第一の印刷領域の触感を、第二の印刷領域の触感と異ならせることができる。例えば第一の印刷領域における突起の配列間隔を、第二の印刷領域における突起の配列間隔よりも大きくすることで、第一の印刷領域の凸凹感を第二の印刷領域の凸凹感よりも強くすることができる。このことで、突起の高さを変えることなく、第一の印刷領域と第二の印刷領域との触感を変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された印刷物では、例えば指先で印刷物を触れたとき、第一の印刷領域のみ、第二の印刷領域のみ、または、第一の印刷領域と第二の印刷領域に亘る領域に触れるのみであり、指先で得られる印刷物の触感の種類には限りがあった。より簡易的な方法で、より多くの種類の触感が得られることが好ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、指先で印刷物を触れたときの触感の種類をより多く得ることが可能な印刷物を印刷するプリンタ、印刷物、および、当該印刷物を印刷する印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリンタは、媒体を支持する支持台と、前記支持台に支持された媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記支持台に支持された媒体に対して前記インクヘッドを相対的に移動させる移動機構と、媒体に印刷層を印刷するように制御を行う制御装置と、を備えている。前記印刷層は、複数の第1突起を有する第1印刷領域と、複数の第2突起を有する第2印刷領域と、を備えている。前記第1印刷領域における前記第1突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向のうち何れか1つ以上は、前記第2印刷領域における前記第2突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向と異なる。前記印刷層の任意の位置における3cm四方の抽出領域を、前記印刷層から抽出したとき、前記抽出領域には、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域が配置されると共に、前記抽出領域における前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である。
【0008】
例えば3cm四方の抽出領域の大きさは、指先で印刷層に触れたときの接触面積の大きさに基づいて決定された大きさである。上記プリンタによれば、プリンタによって印刷された印刷層では、第1印刷領域と第2印刷領域とにおいて触感が異なる。ここでは、媒体に印刷された印刷層を指先で触れたとき、触感が異なる第1印刷領域と第2印刷領域とを同時に触れることができると共に、第1印刷領域と第2印刷領域のうちの少なくとも一方の領域を同時に複数触れることができる。よって、指先で同時に触れられる第1印刷領域と第2印刷領域との触感を変化させた複数の印刷物を作製することで、様々な種類の触感が得られる印刷物を作製することができる。
【0009】
本発明に係る印刷物は、媒体と、前記媒体上に、インクによって形成された印刷層と、
を備えている。前記印刷層は、複数の第1突起を有する第1印刷領域と、複数の第2突起を有する第2印刷領域と、を備えている。前記第1印刷領域における前記第1突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向のうち何れか1つ以上は、前記第2印刷領域における前記第2突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向と異なる。前記印刷層の任意の位置における3cm四方の抽出領域を、前記印刷層から抽出したとき、前記抽出領域には、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域が配置されると共に、前記抽出領域における前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である。
【0010】
本発明に係る印刷方法は、媒体を準備する準備工程と、媒体に印刷層を印刷する印刷工程と、を包含する。前記印刷層は、複数の第1突起を有する第1印刷領域と、複数の第2突起を有する第2印刷領域と、を備えている。前記第1印刷領域における前記第1突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向のうち何れか1つ以上は、前記第2印刷領域における前記第2突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向と異なる。前記印刷層の任意の位置における3cm四方の抽出領域を、前記印刷層から抽出したとき、前記抽出領域には、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域が配置されると共に、前記抽出領域における前記第1印刷領域と前記第2印刷領域のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、指先で印刷物を触れたときの触感の種類をより多く得ることが可能な印刷物を印刷するプリンタ、印刷物、および、当該印刷物を印刷する印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】カバーが開いた状態のプリンタを示す正面図である。
【
図5】キャリッジ、インクヘッドおよび光照射装置を示す底面図である。
【
図6】第1実施形態に係る印刷物の第2印刷層を示す平面図である。
【
図7】第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図9】実施例1~実施例12における第1印刷領域、第2印刷領域、第1突起および第2突起の大きさなどを示す表である。
【
図10】第1実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図11】第1実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図12】第1実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図13】第1実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図14】第2実施形態に係る印刷物の第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図15】実施例13~実施例24における第1印刷領域、第2印刷領域、第1突起および第2突起の大きさなどを示す表である。
【
図16】第3実施形態に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図17】第3実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図18】第3実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図19】第3実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図20】第3実施形態の変形例に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図21】他の実施形態に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図22】他の実施形態に係る印刷物の断面図である。
【
図23】他の実施形態に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【
図24】他の実施形態に係る第2印刷層から抽出した抽出領域を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に関する実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0014】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る印刷物5について説明する。
図1は、第1実施形態に係る印刷物5の断面図である。
図1に示す印刷物5は、例えば後述のプリンタ100(
図2参照)を使用して作製されるものである。
図1に示すように、印刷物5は、媒体10と、第1印刷層11と、第2印刷層12とを備えている。
【0015】
媒体10は、例えば紙である。ただし、媒体10の種類は特に限定されない。例えば媒体10は、PCV、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、金属板、ガラス板、木材板などの比較的に厚みを有するものであってもよい。また、媒体10は、例えばスマートフォンケースなどの立体物であってもよい。
【0016】
本実施形態では、第1印刷層11および第2印刷層12は、プリンタ100から吐出されたインクによって形成される層である。第1印刷層11は、媒体10に印刷される層である。第1印刷層11は、媒体10上(言い換えると、媒体10の表面(または上面))に形成される層である。本実施形態では、第1印刷層11は、下地層であり、例えばプライマーインクやホワイトインクなどの下地インクによって形成される層である。
【0017】
しかしながら、第1印刷層11は、例えば画像データに基づいて、絵、模様、図形や文字などの画像が形成される画像形成層であってもよい。また、第1印刷層11は、下から下地層と画像形成層が積層された層であってもよい。すなわち、第1印刷層11は、下地層と画像形成層とから構成された層であってもよい。
【0018】
第1印刷層11では、例えば複数の層が積層されることで、1つの下地層や、1つの画像形成層が形成されてもよい。下地層を構成する層の数、および、画像形成層を構成する層の数は、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0019】
第2印刷層12は、媒体10に印刷される層である。ここでは、第2印刷層12は、媒体10に印刷された第1印刷層11に重なるように、第1印刷層11に印刷される層である。第2印刷層12は、媒体10上(言い換えると、媒体10の表面(または上面))に形成される。本実施形態では、第2印刷層12は、第1印刷層11の表面(または上面)に形成される層であり、第1印刷層11を介して媒体10の表面に形成される層である。
【0020】
第2印刷層12は、本発明の印刷層の一例である。第2印刷層12は、クリアインクが吐出されて印刷される層である。すなわち、第2印刷層12は、クリアインクによって形成されている。第2印刷層12は、複数の層が積層されることで形成される層であってもよい。第2印刷層12を構成する層の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。なお、第2印刷層12の詳しい構成については、後述する。
【0021】
本実施形態では、媒体10に第1印刷層11が印刷され、第2印刷層12は、第1印刷層11に重なるように第1印刷層11に印刷されている。下地層の一例である第1印刷層11は、第2印刷層12のインクと媒体10との接着性の観点から、第2印刷層12と媒体10との間に形成される層である。そのため、例えば第2印刷層12のインクと媒体10との接着性が高い場合などには、第1印刷層11を省略することも可能である。この場合、媒体10に第2印刷層12が直接印刷されることになる。
【0022】
次に、媒体10に第1印刷層11および第2印刷層12を印刷するプリンタ100の構成について説明する。
図2、
図3は、それぞれ本実施形態に係るプリンタ100の斜視図、正面図である。
図4は、本実施形態に係るプリンタ100のブロック図である。以下において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ100の前、後、左、右、上、下を示している。また、符号Y、Xは、それぞれ主走査方向、副走査方向を示している。例えば主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差しており、ここでは直交している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではない。
【0023】
図3に示すように、プリンタ100は、媒体10にインクを吐出して、媒体10に対して印刷を行うものである。ここでは、プリンタ100は、媒体10上に第1印刷層11と第2印刷層12を印刷する。このことで、媒体10の表面に、第1印刷層11と第2印刷層12が積層される。プリンタ100は、
図1に示す印刷物5を作製する。
【0024】
プリンタ100は、インクジェット式のプリンタ、すなわちインクジェットプリンタである。本実施形態では、プリンタ100は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであり、後述の支持台140(
図3参照)が副走査方向Xに移動することで、媒体10も副走査方向Xに移動する。ただし、プリンタ100は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタであってもよく、ロール状の媒体10のみを副走査方向Xに移動させるものであってもよい。
【0025】
図2に示すように、プリンタ100は、ケース111と、カバー112とを備えている。ケース111は、例えば直方体形状であり、内部空間を有している。当該内部空間において、媒体10に対して、第1印刷層11および第2印刷層12の印刷が行われる。
図3に示すように、ケース111の前部には開口115が形成されている。
【0026】
カバー112は、開口115を開閉自在にケース111に支持されている。カバー112は、後端を軸に回転可能に構成されている。
図2に示すように、カバー112の前部および上部には、窓116が設けられている。窓116は、透明または半透明の部材、例えばアクリル板によって形成されている。ユーザは、窓116を通じてケース111の内部空間を視認することができる。
【0027】
次に、プリンタ100の内部構成について説明する。
図3に示すように、プリンタ100は、ガイドレール118と、キャリッジ120と、インクヘッド122と、光照射装置130と、支持台140とを備えている。
【0028】
ガイドレール118は、ケース111の内部空間においてケース111に固定されている。ガイドレール118は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ120は、ガイドレール118に摺動自在に係合している。キャリッジ120は、ガイドレール118に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0029】
インクヘッド122は、支持台140に支持された媒体10に対してインクを吐出する。インクヘッド122は、キャリッジ120に設けられている。インクヘッド122は、キャリッジ120と共に主走査方向Yに移動可能に構成されている。なお、インクヘッド122の数は特に限定されない。本実施形態では、インクヘッド122の数は4つである。4つのインクヘッド122は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0030】
図5は、キャリッジ120、インクヘッド122および光照射装置130を示す底面図である。
図5に示すように、インクヘッド122は、ノズル面123を有している。ノズル面123は、インクヘッド122の底面を構成している。ノズル面123は、キャリッジ120から下方に露出している。1つのノズル面123には、複数のノズル124が形成されている。本実施形態では、1つのノズル面123における複数のノズル124は、副走査方向Xに並んで配置されている。ここでは、副走査方向Xに並んだ複数のノズル124の列のことをノズル列125という。本実施形態では、1つのノズル面123におけるノズル列125の数は2つである。しかしながら、1つのノズル面123におけるノズル列125の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0031】
本実施形態では、インクヘッド122のノズル列125毎に、ノズル124から異なる色のインクが吐出される。ノズル124から吐出されるインクは、例えばカラーインクまたは特色インクである。カラーインクとは、ここではプロセスカラーインクのことである。プロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。特色インクは、プロセスカラーインク以外の色のインクである。特色インクには、下地インクが含まれている。下地インクは、例えばプライマーインクや、ホワイトインクのことである。特色インクには、更に、例えばクリアインク、グロスインク、蛍光インク、メタリックインク、オレンジインク、レッドインク、バイオレットインク、ブルーインク、グリーンインクなどが含まれる。
【0032】
本実施形態では、クリアインクを吐出するインクヘッド122が、本発明の第1インクヘッドの一例である。カラーインクを吐出するインクヘッド122が、本発明の第2インクヘッドの一例である。
【0033】
インクヘッド122のノズル124から吐出されるインクは、光が照射されると乾燥が促進される光硬化型インクである。光とは、例えば紫外線であり、ここではインクは、紫外線が照射されると乾燥が促進される紫外線硬化型インクである。ただし、インクは、例えば水性インクであってもよい。
【0034】
本実施形態では、インクヘッド122から吐出されるインクは、
図3に示すインクカートリッジ126に収容されている。インクカートリッジ126は、例えばケース111の内部空間に配置されている。インクカートリッジ126は、例えば1つのインクヘッド122につき1つ接続されている。ただし、インクカートリッジ126は、1つのノズル列125につき1つ接続されていてもよい。インクカートリッジ126は、例えば図示しないチューブを介してインクヘッド122に接続されている。インクカートリッジ126に収容されたインクは、チューブを通じてインクヘッド122に供給される。
【0035】
光照射装置130は、インクヘッド122のノズル124から吐出されたインクに光を照射する装置である。ここでは、光照射装置130は、支持台140に支持された媒体10に吐出されたインクに光を照射可能に構成されている。本実施形態では、上述のように、ノズル124から吐出されたインクは、紫外線硬化型インクであるため、光照射装置130は、ノズル124から吐出されたインクに紫外線を照射する紫外線照射装置であることが好ましい。ただし、光照射装置130は、赤外線を照射する赤外線照射装置であってもよい。この場合、インクヘッド122のノズル124から吐出されるインクは、いわゆる水性インクであってもよい。
【0036】
図5に示すように、光照射装置130は、キャリッジ120に設けられており、キャリッジ120およびインクヘッド122と共に主走査方向Yに移動可能に構成されている。本実施形態では、光照射装置130は、キャリッジ120における主走査方向Yの一方側(ここでは左側)であって、インクヘッド122における主走査方向Yの一方側に設けられている。しかしながら、光照射装置130は、キャリッジ120における主走査方向Yの他方側(ここでは右側)であって、インクヘッド122における主走査方向Yの他方側に設けられてもよい。
図5では、光照射装置130の数は1つであるが、複数(例えば2つ)であってもよい。光照射装置130は、キャリッジ120の左側と右側の両側に設けられてもよい。
【0037】
光照射装置130の構成は特に限定されない。本実施形態では、光照射装置130は、照射本体131(
図5参照)と、光源132(
図4参照)とを有している。
図5に示すように、照射本体131は、例えば直方体形状であり、中空のものである。照射本体131の底面には、照射口133が形成されている。照射口133の形状は、四角形状であるが、特に限定されない。光源132は、光(ここでは紫外線)を発するものであり、照射本体131の内部に配置されている。光源132から発せられた光は、照射口133を通り、媒体10に吐出されたインクに照射される。
【0038】
図3に示すように、支持台140は、媒体10を支持する。ここでは、支持台140の上面に媒体10が載置される。支持台140上で媒体10への印刷が行われる。支持台140の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。
【0039】
本実施形態では、
図3に示すように、プリンタ100は、移動機構150を備えている。移動機構150は、支持台140に支持された媒体10に対してインクヘッド122を相対的に3次元方向に移動させる機構である。なお、移動機構150の構成は特に限定されない。ここでは、移動機構150は、ヘッド移動機構151と、媒体移動機構152とを有している。
【0040】
ヘッド移動機構151は、支持台140に対してインクヘッド122を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構151は、キャリッジ120、インクヘッド122および光照射装置130をガイドレール118に沿って主走査方向Yに移動させる機構である。
【0041】
なお、ヘッド移動機構151の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構151は、図示は省略するが、例えば左右のプーリと、ベルトと、スキャンモータとを有している。左のプーリはガイドレール118の左端部の周囲に設けられ、右のプーリはガイドレール118の右端部の周囲に設けられている。ベルトは、例えば無端状のベルトであり、左右のプーリに巻き掛けられている。ベルトには、キャリッジ120が取り付け固定されている。スキャンモータは、左右のプーリのうちの一方のプーリに接続されている。ここでは、スキャンモータが駆動することでプーリが回転し、左右のプーリの間においてベルトが走行する。このことで、キャリッジ120、インクヘッド122および光照射装置130は、ガイドレール118に沿って主走査方向Yに移動する。
【0042】
媒体移動機構152は、インクヘッド122に対して支持台140に支持された媒体10を相対的に副走査方向Xに移動させる機構である。本実施形態では、媒体移動機構152は、支持台140を副走査方向Xに移動させることで、支持台140に支持された媒体10も副走査方向Xに移動させる機構である。
【0043】
なお、媒体移動機構152の構成は特に限定されない。ここでは、媒体移動機構152は、図示は省略するが、支持台140を支持する支持台キャリッジと、支持台キャリッジをスライド可能に支持し、副走査方向Xに延びた左右一対のスライドレールとを有している。媒体移動機構152は、図示は省略するが、更にスライドレールの前方および後方に設けられた前後一対のスライドプーリと、前後一対のスライドプーリに巻き掛けられたスライドベルトとを有している。このスライドベルトには、支持台キャリッジが固定されている。前後一対のスライドプーリのうちの一方のプーリには、フィードモータが接続されている。ここでは、フィードモータが駆動してスライドベルトが走行することで、支持台キャリッジと共に支持台140および媒体10が副走査方向Xに移動する。
【0044】
本実施形態では、詳しい構成は省略するが、
図3に示すように、プリンタ100の移動機構150は、支持台140および媒体10を昇降させる昇降機構153を備えている。
【0045】
プリンタ100は、制御装置160を備えている。制御装置160は、印刷に関する処理を実行する。本実施形態では、制御装置160は、媒体10に第1印刷層11(
図1参照)および第2印刷層12(
図1参照)を印刷するように制御を行うようにプログラムされている。なお、制御装置160の構成は特に限定されない。制御装置160は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置160は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置160は、ケース111の内部に設けられている。ただし、制御装置160は、ケース111の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置160は、有線または無線を介してプリンタ100の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0046】
本実施形態では、
図4に示すように、制御装置160は、インクヘッド122と、光照射装置130(詳しくは光源132)と、移動機構150(詳しくは、ヘッド移動機構151、媒体移動機構152および昇降機構153)と、に通信可能に接続されている。制御装置160は、インクヘッド122、光照射装置130、および、移動機構150を制御する。
【0047】
以上、本実施形態に係る印刷物5の第1印刷層11および第2印刷層12を印刷するプリンタ100の構成について説明した。次に、本実施形態に係るプリンタ100によって作製される印刷物5の第2印刷層12について詳述する。
図6は、印刷物5の第2印刷層12を示す平面図である。
図7は、印刷物5の第2印刷層12から抽出した抽出領域30を示す平面図である。ここで、印刷物に関する図面において、符号D11は第1方向を示している。符号D12は第2方向を示している。第1方向D11と第2方向D12とは、平面視において交差(ここでは直交)している。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、印刷物の配置向きなどを何ら限定するものではない。
【0048】
本実施形態では、上述のように、第2印刷層12は、
図1に示すように、媒体10に印刷される層であり、例えばクリアインクによって形成される層である。第2印刷層12は、印刷物5の表面(ここでは最上面)を構成する層であり、印刷物5の外部に露出している。第2印刷層12は、印刷物5に触感を付与する触感付与層であり得る。第2印刷層12には、凹凸が形成されている。そのため、第2印刷層12によって、印刷物5の表面に凹凸が形成される。ユーザは、例えば印刷物5の表面を指先で触れることで、第2印刷層12を触れることになる。その結果、指先に印刷物5の触感が与えられる。ここでは、第2印刷層12の凹凸の間隔や大きさなどを変更することで、様々な種類の触感を表現することが可能になる。
【0049】
本実施形態では、第2印刷層12は、第1印刷領域21と、第2印刷領域22とを備えている。なお、
図6において、第1印刷領域と、第2印刷領域との違いを分かり易くするため、第1印刷領域には、網掛けが施されている。第1印刷領域21と、第2印刷領域22とで異なる触感を指先に与えることができるように構成されている。
図7に示すように、1つの第1印刷領域21は、複数の第1突起25を有している。1つの第2印刷領域22は、複数の第2突起26を有している。ここでは、第1印刷領域に網掛けが施されている図面では、第1突起および第2突起の図示は省略されている。
【0050】
本実施形態では、
図1に示すように、第1突起25および第2突起26は、それぞれ媒体10上において上方に向かって突出している。
図7に示すように、各第1突起25における大きさ、高さH11(
図1参照)、平面形状、側面形状は、同じである。しかしながら、一部の第1突起25は、他の第1突起25に対して大きさ、高さH11、平面形状、側面形状の何れかが異なっていてもよい。同様に、各第2突起26における大きさ、高さH12(
図1参照)、平面形状、側面形状は、同じである。しかしながら、一部の第2突起26は、他の第2突起26に対して大きさ、高さH12、平面形状、側面形状の何れかが異なっていてもよい。
【0051】
本実施形態では、第1印刷領域21における第1突起25の大きさ、高さH11、平面形状、配列間隔L21、配列方向D21のうちの何れか1つ以上は、第2印刷領域22における第2突起26の大きさ、高さH12、平面形状、配列間隔L22、配列方向D22と異なる。このことで、第1印刷領域21の触感と、第2印刷領域22の触感とを異ならせることができる。本実施形態では、第1突起25と第2突起26とにおいて大きさが異なる。ここで、「大きさ」とは、突起25、26の平面視における面積、体積、平面視における最大寸法の少なくとも1つ以上のことをいう。
【0052】
本実施形態では、第1突起25は、第2突起26よりも大きい。ここでは、第1突起25の最大寸法(ここでは直径)L11は、第2突起26の最大寸法(ここでは直径)L12よりも大きい。また、平面視において、第1突起25の面積は、第2突起26の面積よりも大きい。第1突起25の体積は、第2突起26の体積よりも大きい。ただし、第1突起25は、第2突起26よりも小さくてもよいし、第2突起26と大きさが同じであってもよい。例えば、第1突起25の最大寸法L11は、第2突起26の最大寸法L12よりも小さくてもよいし、最大寸法L12と同じであってもよい。
【0053】
本実施形態では、平面視における第1突起25の最大寸法L11、および、第2突起26の最大寸法L12は、1mm以下、好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.6mm以下である。
【0054】
本実施形態では、第1突起25と第2突起26において高さH11、H12、平面形状、配列間隔L21、L22、配列方向D21、D22は同じである。
図1に示すように、例えば第1突起25の高さH11は、第2突起26の高さH12と同じである。ここでは、第1突起25の高さH11、および、第2突起26の高さH12は、10mm以下であり、好ましくは8mm以下、特に好ましくは6mm以下である。
【0055】
図7に示すように、第1突起25および第2突起26における平面形状は、共に円形状である。しかしながら、第1突起25および第2突起26における平面形状は、円形状に限定されない。第1突起25および第2突起26における平面形状は、例えば三角形状や四角形状などの多角形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、リング形状であってもよい。ここでは、
図1に示すように、第1突起25および第2突起26における側面形状は、半円形状であるが、特に限定されない。第1突起25および第2突起26における側面形状は、四角形状や三角形状などの多角形状であってもよい。
【0056】
本実施形態では、
図7に示すように、複数の第1突起25の配列間隔L21と、複数の第2突起26の配列間隔L22は、同じである。配列間隔L21とは、第1方向D11または第2方向D12に隣り合う第1突起25の中心C11の距離のことをいう。同様に、配列間隔L22とは、第1方向D11または第2方向D12に隣り合う第2突起26の中心C12の距離のことをいう。本実施形態では、複数の第1突起25は、規則的に配列されており、例えば等間隔で配置されている。複数の第2突起26も規則的に配列されており、例えば等間隔で配置されている。しかしながら、複数の第1突起25、または、複数の第2突起26の一部の配列間隔L21、L22は、他の配列間隔L21、L22と異なっていてもよい。
【0057】
例えば隣り合う第1突起25の間隔(ここでは第1突起25の配列間隔L21)、および、隣り合う第2突起26の間隔(ここでは第2突起26の配列間隔L22)は、2mm以下であり、好ましくは1.8mm以下、特に好ましくは1.6mm以下である。また、第1突起25の配列間隔L21、および、第2突起26の配列間隔L22は、20μm以上、好ましくは30μm以上、特に好ましくは50μm以上である。
【0058】
第1突起25の配列方向D21と、第2突起26の配列方向D22とは、同じである。本実施形態では、配列方向D21、D22は、第1方向D11である。言い換えると、第1突起25は、第1方向D11に沿って配列され、第2突起26も第1方向D11に沿って配列されている。ここでは、複数の第1突起25、および、複数の第2突起26は、第1方向D11および第2方向D12に等間隔で配置されている。そのため、第1突起25および第2突起26は、第2方向D12に沿って配列されているともいえる。よって、第1突起25の配列方向D21と、第2突起26の配列方向D22は、第2方向D12であるともいえる。なお、配列方向D21、D22は、第1方向D11や第2方向D12に限定されず、例えば第1方向D11や第2方向D12から傾いた方向であってもよい。
【0059】
本実施形態では、1つの第1印刷領域21における第1突起25の数、および、1つの第2印刷領域22における第2突起26の数は特に限定されない。ここで、1つの第1印刷領域21における第1突起25の数と、1つの第2印刷領域22における第2突起26の数は同じであるが、異なっていてもよい。また、第1印刷領域21の単位面積当たりにおける第1突起25の数と、第2印刷領域22の単位面積当たりにおける第2突起26の数は同じであるが、異なっていてもよい。
【0060】
なお、本実施形態では、第1印刷領域21において、第1突起25が形成されていない部分には、インクは吐出されておらず、第1印刷層11が露出している。同様に、第2印刷領域22において、第2突起26が形成されていない部分には、インクが吐出されておらず、第1印刷層11が露出している。しかしながら、第1印刷領域21において、第1突起25が形成されていない部分には、インク(例えばクリアインク)によって形成された層(ここでは、第1突起25よりも高さが低い層)が形成されてもよい。同様に、第2印刷領域22において、第2突起26が形成されていない部分には、インク(例えばクリアインク)によって形成された層(ここでは、第2突起26よりも高さが低い層)が形成されてもよい。
【0061】
次に、第1印刷領域21と第2印刷領域22との位置や大きさなどの関係について説明する。本実施形態では、
図6に示すように、第2印刷層12における第1印刷領域21の数、および、第2印刷領域22の数は、複数である。各第1印刷領域21の大きさ(例えば面積、第1方向D11の長さ、第2方向D12の長さ)は同じであり、各第2印刷領域22の大きさも同じである。ただし、複数の第1印刷領域21のうち一部の第1印刷領域21の大きさは、他の第1印刷領域21の大きさと異なっていてもよい。同様に、複数の第2印刷領域22のうち一部の第2印刷領域22の大きさは、他の第2印刷領域22の大きさと異なっていてもよい。
【0062】
例えば1つの第1印刷領域21の面積、および、1つの第2印刷領域22の面積は、400μm2以上であり、好ましくは500μm2以上であり、特に好ましくは600μm2以上である。
【0063】
本実施形態では、各第1印刷領域21の形状は同じであり、各第2印刷領域22の形状も同じである。ただし、複数の第1印刷領域21のうち一部の第1印刷領域21の形状は、他の第1印刷領域21の形状と異なっていてもよい。同様に、複数の第2印刷領域22のうち一部の第2印刷領域22の形状は、他の第2印刷領域22の形状と異なっていてもよい。
【0064】
本実施形態では、第1印刷領域21と第2印刷領域22とは、大きさおよび形状が同じである。ここでは、第1印刷領域21の形状と、第2印刷領域22の形状は、共に多角形状であり、例えば四角形状である。詳しくは、第1印刷領域21の形状、および、第2印刷領域22の形状は、正方形状である。ただし、第1印刷領域21と第2印刷領域22との形状は、異なっていてもよい。また、第1印刷領域21および第2印刷領域22における具体的な形状は、多角形状に限定されるものではない。
【0065】
本実施形態では、第1印刷領域21の第1方向D11の長さL31と、第2印刷領域22の第1方向D11の長さL32とは、同じである。また、第1印刷領域21の第2方向D12の長さL41と、第2印刷領域22の第2方向D12の長さL42とは、同じである。1つの第1印刷領域21の面積と、1つの第2印刷領域22の面積とは同じである。ただし、第1印刷領域21と第2印刷領域22とは、大きさが異なっていてもよい。言い換えると、第1印刷領域21と第2印刷領域22とにおける、第1方向D11の長さL31、L32は異なっていてもよいし、第2方向D12の長さL41、L42が異なっていてもよい。また、第1印刷領域21と第2印刷領域22とにおける面積が異なっていてもよい。
【0066】
複数の第1印刷領域21は、離間して配置されている。同様に、複数の第2印刷領域22も、離間して配置されている。本実施形態では、第1印刷領域21と、第2印刷領域22とは交互に配置されている。詳しくは、第1印刷領域21と第2印刷領域22とは、第1方向D11に沿って交互に配置されている。また、第1印刷領域21と第2印刷領域22とは、第2方向D12に沿って交互に配置されている。
【0067】
本実施形態では、第2印刷層12から一部の領域を抽出し、この抽出した領域のことを抽出領域30という。抽出領域30は、第2印刷層12の任意の位置から抽出した領域である。そのため、抽出領域30は、第2印刷層12のどの位置から抽出してもよい領域である。
図6に示すように、例えば抽出領域30aのような位置で、第2印刷層12から抽出領域30を抽出してもよいし、抽出領域30bのような位置で、第2印刷層12から抽出領域30を抽出してもよい。
【0068】
この抽出領域30は、3cm四方の領域である。本実施形態に係る抽出領域30では、第1方向D11の長さが3cmであり、かつ、第2方向D12の長さが3cmである。抽出領域30の大きさは、指先が印刷物5に触れたときの接触面積程度の大きさである。例えば印刷物5を指で触れるときの指は、人差し指であることが多く、特に人差し指の第1関節よりも指先の腹(例えば爪と反対側)の部分であることが多い。成人の人差し指の腹の部分の面積は、凡そ3cm四方の領域に収まり得る。そこで、成人の人差し指の腹の部分で印刷物5に触れることを想定して、抽出領域30の大きさを、3cm四方の大きさとした。
【0069】
本実施形態では、
図7に示すように、1つの抽出領域30には、第1印刷領域21および第2印刷領域22の両方が配置されている。1つの抽出領域30に配置されている第1印刷領域21と第2印刷領域22とのうちの少なくとも一方の領域の数が複数である。本実施形態では、1つの抽出領域30に配置されている第1印刷領域21の数は複数であり、第2印刷領域22の数も複数である。ここで、例えば
図6の抽出領域30bのように、抽出領域30に第1印刷領域21(または第2印刷領域22)の一部が配置されている場合であっても、一部の第1印刷領域21(または一部の第2印刷領域22)を1つと数えることとする。
【0070】
次に、本実施形態に係る印刷方法について、
図8のフローチャートに沿って説明する。
本実施形態に係る印刷方法は、
図2に示すプリンタ100によって実現される。ここでは、印刷方法は、
図1に示すように、媒体10に第1印刷層11および第2印刷層12を印刷する方法である。印刷方法は、
図8に示すように、準備工程S1と、印刷工程S2とを包含する。
【0071】
まず準備工程S1では、第1印刷層11および第2印刷層12を印刷する媒体10を準備する。ここで、媒体10を準備するとは、プリンタ100で印刷できる状態にすることをいう。ここでは、媒体10の準備として、
図3に示すように、プリンタ100の支持台140に媒体10を支持させる。例えば媒体10を支持台140に載置する。
【0072】
このように、
図8において準備工程S1で媒体10を準備した後、印刷工程S2では、プリンタ100で媒体10に印刷する。本実施形態では、印刷工程S2は、第1印刷工程S21と、第2印刷工程S22とを含む。
【0073】
印刷工程S2において、まず第1印刷工程S21では、媒体10に第1印刷層11(
図1参照)を印刷する。プリンタ100の制御装置160は、ヘッド移動機構151を作動させて、インクヘッド122を主走査方向Yに移動させている間、インクヘッド122から媒体10に向かってインク(例えば下地インク)を吐出させて、第1印刷層11における1ライン分の印刷を行う。1ライン分の印刷の後、制御装置160は、媒体10を支持する支持台140を副走査方向Xに所定の距離、移動させるように媒体移動機構152を制御する。その後、制御装置160は、インクヘッド122を主走査方向Yに移動させて、次の1ライン分の第1印刷層11の印刷を媒体10に行う。このように、1ライン分の第1印刷層11の印刷と、支持台140における副走査方向Xへの移動とを交互に繰り返し行うことで、媒体10に第1印刷層11の印刷を行うことができる。
【0074】
第1印刷工程S21における第1印刷層11の印刷が終了した後、
図8の第2印刷工程S22では、媒体10に第2印刷層12(
図1参照)を印刷する。ここでは、媒体10に印刷された第1印刷層11に重ねて、第1印刷層11に第2印刷層12を印刷する。第2印刷工程S22では、第1印刷領域21の第1突起25と、第2印刷領域22の第2突起26とを媒体10に印刷する。例えば第1印刷層11の第1印刷領域21(例えば第1突起25)、および、第2印刷領域22(例えば第2突起26)に関する画像を含む画像データが制御装置160のメモリーに記憶されている。第2印刷工程S22では、上記画像データを読み込んで、当該画像データに基づいて第2印刷層12の印刷を行う。
【0075】
第2印刷工程S22では、プリンタ100の制御装置160は、ヘッド移動機構151を作動させて、インクヘッド122を主走査方向Yに移動させている間、インクヘッド122から媒体10に向かってインク(例えばクリアインク)を吐出させて、第2印刷層12における1ライン分の印刷を行う。1ライン分の印刷の後、制御装置160は、媒体10を支持する支持台140を副走査方向Xに所定の距離、移動させるように媒体移動機構152を制御する。その後、制御装置160は、インクヘッド122を主走査方向Yに移動させて、次の1ライン分の第2印刷層12の印刷を媒体10に行う。このように、1ライン分の第2印刷層12の印刷と、支持台140における副走査方向Xへの移動とを交互に繰り返し行うことで、媒体10に第2印刷層12の印刷を行うことができる。以上のようにして、印刷物5を作製することができる。
【0076】
以上、本実施形態では、
図3に示すように、プリンタ100は、媒体10を支持する支持台140と、支持台140に支持された媒体10にインクを吐出するインクヘッド122と、支持台140に支持された媒体10に対してインクヘッド122を相対的に移動させる移動機構150と、媒体10に第1印刷層11および第2印刷層12を印刷するように制御を行う制御装置160と、を備えている。プリンタ100によって印刷物5(
図1参照)が作製される。
図1に示すように、印刷物5は、媒体10と、媒体10上に形成され、かつ、インクによって形成された第2印刷層12と、を備えている。
図7に示すように、第2印刷層12は、複数の第1突起25を有する第1印刷領域21と、複数の第2突起26を有する第2印刷領域22と、を備えている。第1印刷領域21における第1突起25の大きさ、高さH11(
図1参照)、平面形状、配列間隔L21、配列方向D21のうち何れか1つ以上は、第2印刷領域22における第2突起26の大きさ、高さH12(
図1参照)、平面形状、配列間隔L22、配列方向D22と異なる。
図6に示すように、第2印刷層12の任意の位置における3cm四方の抽出領域30を、第2印刷層12から抽出したとき、
図7に示すように、抽出領域30には、第1印刷領域21と第2印刷領域22が配置されると共に、抽出領域30における第1印刷領域21と第2印刷領域22のうちの少なくとも一方の領域の数が複数である。
【0077】
図9は、実施例1~実施例12における第1印刷領域21、第2印刷領域22、第1突起25および第2突起26の大きさなどを示す表である。本実施形態では、上記印刷方法で、
図2のプリンタ100を使用して、
図9に示すような実施例1~実施例12に係る印刷物5を作製した。実施例1~実施例12において、第2印刷層12の第1突起25、および、第2突起26の平面形状は円形状であり、側面形状は半円形状である。
【0078】
実施例1~実施例3では、第2印刷層12の第1印刷領域21および第2印刷領域22の1辺の長さ(第1方向D11の長さL31、L32(
図6参照)、および、第2方向D12の長さL41、L42(
図6参照))を0.5mmにした。
図6に示すように、第1印刷領域21と第2印刷領域22とは、第1方向D11に交互に配置され、かつ、第2方向D12に交互に配置されている。
【0079】
図9に示すように、実施例1では、第1印刷領域21の第1突起25の最大寸法L11が50μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、150μmである。第2印刷領域22の第2突起26の最大寸法L12が100μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、150μmである。
【0080】
実施例2では、第1突起25の最大寸法L11が50μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、300μmである。第2突起26の最大寸法L12が250μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、300μmである。実施例3では、第1突起25の最大寸法L11が50μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、150μmである。第2突起26の最大寸法L12が50μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、300μmである。
【0081】
実施例4、実施例5、実施例6は、第2印刷層12の第1印刷領域21および第2印刷領域22の1辺の長さが1mmである以外は、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3と同じである。実施例7、実施例8、実施例9は、第2印刷層12の第1印刷領域21および第2印刷領域22の1辺の長さが1.5mmである以外は、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3と同じである。実施例10、実施例11、実施例12は、第2印刷層12の第1印刷領域21および第2印刷領域22の1辺の長さが2mmである以外は、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3と同じである。以上のような実施例1~実施例12に係る印刷物5を作製した。
【0082】
本実施形態では、例えば3cm四方の抽出領域30(
図7参照)の大きさは、指先で第2印刷層12に触れたときの接触面積の大きさに基づいて決定された大きさである。本実施形態では、プリンタ100によって印刷された第2印刷層12では、第1印刷領域21と第2印刷領域22とで触感が異なる。ここでは、媒体10に印刷された第2印刷層12を指先で触れたとき、触感が異なる第1印刷領域21と第2印刷領域22とを同時に触れることができると共に、第1印刷領域21と第2印刷領域22のうちの少なくとも一方の領域を同時に複数触れることができる。よって、指先で同時に触れられる第1印刷領域21と第2印刷領域22との触感を変化させた複数の印刷物5を作製することで、様々な種類の触感が得られる印刷物5を作製することができる。
【0083】
例えば
図9に示すように、実施例1~実施例12のような印刷物5を比較すると、第1印刷領域21と第2印刷領域22とのうちのどちらかの触感が少なくとも異なる。そのため、実施例1~実施例12で作製された印刷物5であっても、異なる触感が得られることができる。
【0084】
本実施形態では、
図6に示すように、第1印刷領域21は、離間するように複数配置されている。また、第2印刷領域22も、離間するように複数配置されている。このことで、触感が異なる第1印刷領域21と第2印刷領域22とを点在させることができる。この点在の仕方を変更することで、様々な種類の触感を表現することができる。
【0085】
本実施形態では、第1印刷領域21の形状と、第2印刷領域22の形状は、全て同じである。このことで、第1印刷領域21と第2印刷領域22とを連続的にかつ規則的に点在させることができる。
【0086】
本実施形態では、第1印刷領域21と第2印刷領域22とは、第1方向D11に沿って交互に配置されている。また、第1印刷領域21と第2印刷領域22とは、第1方向D11と交差する第2方向D12に沿って交互に配置されている。このことによって、第1方向D11および第2方向D12において、第1印刷領域21と第2印刷領域22とを規則的に点在させることができる。そのため、指先で、第1方向D11に沿って印刷物5をなぞったときと、第2方向D12に沿って印刷物5をなぞったときとで、同じ感触のパターンが得られることができる。
【0087】
本実施形態では、
図7に示すように、平面視において第1突起25の最大寸法(ここでは直径)L11、および、第2突起26の最大寸法(ここでは直径)L12は、1mm以下である。仮に第1突起25および第2突起26の最大寸法L11、L12を1mmより大きくすると、突起25、26を点字と間違える可能性があり得る。しかしながら、本実施形態のように、第1突起25および第2突起26の最大寸法L11、L12を1mm以下にすることで、点字と間違えることを抑制できると共に、第2印刷層12でミクロなテクスチャを表現することができる。
【0088】
本実施形態では、隣り合う第1突起25の配列間隔L21、および、隣り合う第2突起26の配列間隔L22は、2mm以下である。仮に第1突起25および第2突起26の配列間隔L21、L22を2mmより大きくすると、間隔が開き過ぎて、突起25、26を点字と間違える可能性があり得る。しかしながら、本実施形態のように、第1突起25および第2突起26の配列間隔L21、L22を2mm以下とすることで、点字と間違えることを抑制できると共に、第2印刷層12でミクロなテクスチャを表現することができる。
【0089】
本実施形態では、隣り合う第1突起25の配列間隔L21、および、隣り合う第2突起26の配列間隔L22は、20μm以上である。仮に第1突起25および第2突起26の配列間隔L21、L22を狭くし過ぎる(例えば20μm未満にする)と、第1突起25および第2突起26が凝集してしまうため、突起25、26による凹凸が適切に表現することができないおそれがある。しかしながら、本実施形態のように、第1突起25および第2突起26の配列間隔L21、L22を20μm以上とすることで、第1突起25および第2突起26を適切に形成することができ、凹凸を適切に表現することができる。
【0090】
本実施形態では、
図1に示すように、第1突起25の高さH11、および、第2突起26の高さH12は、10mm以下である。仮に第1突起25および第2突起26の高さH11、H12を高くし過ぎる(例えば10mmより大きくする)と、プリンタ100による突起25、26を形成するために要する時間が長くなるおそれがある。しかしながら、本実施形態のように、第1突起25および第2突起26の高さH11、H12を10mm以下にすることで、プリンタ100による突起25、26を形成するために要する時間を短くすることができる。
【0091】
本実施形態では、平面視において、第1印刷領域21の面積、および、第2印刷領域22の面積は、400μm
2以上である。例えばプリンタ100のノズル124(
図5参照)から吐出されるインクの最小ドットサイズは、30μm~50μm程度である。よって、第1印刷領域21の面積、および、第2印刷領域22の面積を、400μm
2以上にすることで、プリンタ100から吐出されるインクによって、第1印刷領域21の第1突起25、および、第2印刷領域22の第2突起26を適切に形成することができる。
【0092】
本実施形態では、制御装置160は、媒体10にクリアインクを吐出することで第2印刷層12を印刷するように制御を行う。すなわち、第1突起25および第2突起26は、クリアインクによって形成されている。第1突起25および第2突起26は、触感を与えるために形成されるものであり、目視で確認されなくてもよいものである。そのため、第1突起25および第2突起26をクリアインクで形成することで、印刷物5の表面を目視したとき、第1突起25および第2突起26を見難くすることができる。
【0093】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
図10~
図13は、第1実施形態の変形例に係る第2印刷層12から抽出した抽出領域30を示す平面図である。第1実施形態では、
図7に示すように、第1印刷領域21の形状、および、第2印刷領域22の形状は、四角形状であった。ただし、
図10に示すように、第1印刷領域21aの形状、および、第2印刷領域22aの形状は、円形状であってもよい。
図10では、第2印刷層12の全領域のうち第1印刷領域21および第2印刷領域22を除いた領域24は、インクで突起などが形成されておらず、第1印刷層11が露出している。
【0094】
また、
図11および
図12に示すように、第1印刷領域21b、21cの形状、および、第2印刷領域22b、22cの形状は、三角形状であってもよい。この場合、
図11に示すように、第1方向D11および第2方向D12において、三角形状の第1印刷領域21bと、三角形状の第2印刷領域22bとが交互に配置されていてもよい。また、
図12に示すように、第1方向D11において、三角形状の第1印刷領域21cと、三角形状の第2印刷領域22cとが交互に配置されており、第2方向D12において、第1印刷領域21cと第2印刷領域22cとが交互に配置されていなくてもよい。この場合、例えば第1印刷領域21cが第2方向D12に沿って連続で配置され、第2印刷領域22cが第2方向D12に沿って連続で配置されてもよい。
【0095】
このように、第1印刷領域21、21a、21b、21cの形状、および、第2印刷領域22、22a、22b、22cの形状を円形状または多角形状にする。このことで、第1印刷領域21、21a、21b、21cの形状、または、第2印刷領域22、22a、22b、22cの形状に応じて、様々な種類の触感を得ることができる。
【0096】
第1実施形態では、第1印刷領域21と第2印刷領域22の形状は、同じであった。しかしながら、
図13に示すように、複数の第1印刷領域21dの形状が異なっていてもよい。複数の第2印刷領域22dの形状が異なっていてもよい。なお、
図13において、第2印刷層12の全領域のうち、第1印刷領域21dおよび第2印刷領域22dを除いた領域24は、インクで突起などが形成されておらず、第1印刷層11が露出している。
【0097】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る印刷物5Aについて説明する。
図14は、第2実施形態に係る印刷物5Aの第2印刷層12Aから抽出した抽出領域30を示す平面図である。本実施形態に係る印刷物5Aは、媒体10(
図1参照)と、第1印刷層11(
図1参照)と、第2印刷層12A(
図14参照)とを備えている。
図14に示すように、第2印刷層12Aは、第1印刷領域21Aと、第2印刷領域22Aとを備えている。
【0098】
本実施形態では、第1印刷領域21Aの外周形状、および、第2印刷領域22Aの形状は、円形状である。第1印刷領域21Aの大きさと、第2印刷領域22Aの大きさは異なる。ここでは、第1印刷領域21Aは、第2印刷領域22Aよりも大きい。第1印刷領域21Aの最大寸法(ここでは直径)L51は、第2印刷領域22Aの最大寸法(ここでは直径)L52よりも大きい。第2印刷領域22Aは、第1印刷領域21A内に配置されている。そのため、第1印刷領域21Aの形状は、リング状である。ここでは、第1印刷領域21Aの中心C21と、第2印刷領域22Aの中心C22とは、一致する。
【0099】
なお、本実施形態において、第2印刷層12Aの全領域のうち第1印刷領域21Aおよび第2印刷領域22Aを除いた領域24は、インクで突起などが形成されておらず、第1印刷層11が露出している。詳しい説明は省略するが、第1印刷領域21Aの複数の第1突起25、および、第2印刷領域22Aの複数の第2突起26は、例えば
図7に示すような第1実施形態の第1突起25および第2突起26と同様のものである。
【0100】
図15は、実施例13~実施例24における第1印刷領域21A、第2印刷領域22A、第1突起25および第2突起26の大きさなどを示す表である。本実施形態において、上記印刷方法で、
図2のプリンタ100を使用して、
図15に示すような実施例13~実施例24の印刷物5Aを作製した。実施例13~実施例24において、第2印刷層12Aの第1突起25、および、第2突起26の平面形状は円形状であり、側面形状は半円形状である。
【0101】
実施例13~実施例18では、第2印刷層12Aの第1印刷領域21Aの直径L51(
図14参照)は、1mmであり、第2印刷領域22Aの直径L52(
図14参照)は0.5mmである。
図14に示すように、第1印刷領域21Aは、第1方向D11および第2方向D12に並んで配置され、第2印刷領域22Aも、第1方向D11および第2方向D12に並んで配置されている。
【0102】
図15に示すように、実施例13では、第1印刷領域21Aの第1突起25の最大寸法L11が50μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、150μmである。第2印刷領域22Aの第2突起26の最大寸法L12が100μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、150μmである。
【0103】
実施例14では、第1印刷領域21Aの第1突起25の最大寸法L11が50μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、300μmである。第2印刷領域22Aの第2突起26の最大寸法L12が250μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、300μmである。
【0104】
実施例15では、第1印刷領域21Aの第1突起25の最大寸法L11が50μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、150μmである。第2印刷領域22Aの第2突起26の最大寸法L12が50μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、300μmである。
【0105】
実施例16では、第1印刷領域21Aの第1突起25の最大寸法L11が100μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、150μmである。第2印刷領域22Aの第2突起26の最大寸法L12が50μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、150μmである。
【0106】
実施例17では、第1印刷領域21Aの第1突起25の最大寸法L11が250μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、300μmである。第2印刷領域22Aの第2突起26の最大寸法L12が50μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、300μmである。
【0107】
実施例18では、第1印刷領域21Aの第1突起25の最大寸法L11が50μmであり、第1突起25の配列間隔L21は、300μmである。第2印刷領域22Aの第2突起26の最大寸法L12が50μmであり、第2突起26の配列間隔L22は、150μmである。
【0108】
実施例19、実施例20、実施例21、実施例22、実施例23、実施例24は、第1印刷領域21Aの直径L51が2mmであり、第2印刷領域22Aの直径L52が1mmである以外は、それぞれ実施例13、実施例14、実施例15、実施例16、実施例17、実施例18と同じである。
【0109】
実施例13~実施例24のような印刷物5Aを比較すると、第1印刷領域21Aと第2印刷領域22Aとのうちのどちらかの感触が少なくとも異なる。そのため、実施例13~実施例24で作製された印刷物5Aであっても、異なる触感が得られることができる。よって、本実施形態のような印刷物5Aであっても、様々な種類の触感が得られる印刷物5Aを作製することができる。
【0110】
本実施形態では、第1印刷領域21Aの大きさと、第2印刷領域22Aの大きさが異なる。このように、触感が異なる第1印刷領域21Aと第2印刷領域22Aとの大きさの異なる度合いに応じて、様々な種類の触感を得ることができる。
【0111】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る印刷物5Bについて説明する。
図16は、第3実施形態に係る第2印刷層12Bから抽出した抽出領域30を示す平面図である。本実施形態に係る印刷物5Bは、媒体10(
図1参照)と、第1印刷層11(
図1参照)と、第2印刷層12B(
図16参照)とを備えている。
図16に示すように、第2印刷層12Bは、第1印刷領域21Bと、第2印刷領域22Bとを備えている。
【0112】
本実施形態では、第1印刷領域21Bは、複数である。第1印刷領域21Bは、離間するように複数配置されている。第1印刷領域21Bの全ての形状は、同じである。ここでは、第1印刷領域21Bの全ての形状は、多角形状(ここでは四角形状)である。
【0113】
複数の第1印刷領域21Bは、第1方向D11に沿って配置されている。ここで、第1方向D11に隣り合う第1印刷領域21Bの間隔は、第1間隔L61である。また、複数の第1印刷領域21Bは、第2方向D12に沿って配置されている。ここで、第2方向D12に隣り合う第1印刷領域21Bの間隔は、第2間隔L62である。本実施形態では、第1間隔L61と、第2間隔L62とは同じである。しかしながら、第1間隔L61と第2間隔L62とは、異なっていてもよい。
【0114】
本実施形態では、第2印刷領域22Bは、第2印刷層12Bの全領域から第1印刷領域21Bを除いた領域である。
【0115】
本実施形態では、第1印刷領域21Bと第2印刷領域22Bのうちの一方の印刷領域(ここでは第1印刷領域21B)は、離間するように複数配置されている。このことで、第1印刷領域21を点在させることができる。この点在の仕方を変更することで、様々な種類の触感を表現することができる。
【0116】
本実施形態では、第1印刷領域21Bと第2印刷領域22Bのうちの一方の印刷領域(ここでは第1印刷領域21B)のそれぞれの形状は、同じ形状である。このことで、第1印刷領域21を規則的に点在させることができる。
【0117】
本実施形態では、第1印刷領域21Bと第2印刷領域22Bのうちの一方の印刷領域(ここでは第1印刷領域21B)は、第1方向D11に沿って第1間隔L61で複数配置されている。また、第1印刷領域21Bと第2印刷領域22Bのうちの一方の印刷領域(ここでは第1印刷領域21B)は、第2方向D12に沿って第2間隔L62で複数配置されている。このことによって、第1方向D11および第2方向D12において、第1印刷領域21Bを規則的に点在させることができる。そのため、指先で、第1方向D11に沿って印刷物5Bをなぞったときと、第2方向D12に沿って印刷物5Bをなぞったときとで、同じ感触のパターンが得られることができる。
【0118】
<第3実施形態の変形例>
次に、第3実施形態の変形例について説明する。
図17~
図20は、第3実施形態の変形例に係る第2印刷層12Bから抽出した抽出領域30を示す平面図である。第3実施形態では、
図16に示すように、第1印刷領域21Bの形状は、四角形状(例えば正方形状)であった。しかしながら、例えば
図17および
図18に示すように、第1印刷領域21Ba、21Bbの形状は、円形状であってもよい。例えば
図17に示すように、隣り合う円形状の第1印刷領域21Baは、接していてもよい。例えば
図18に示すように、隣り合う円形状の第1印刷領域21Bbは、離間していてもよい。
【0119】
また、
図19に示すように、第1印刷領域21Bcの形状は、三角形状であってもよい。
【0120】
このように、第1印刷領域21B、21Ba、21Bb、21Bcと、第2印刷領域22Bのうちの一方の印刷領域(ここでは第1印刷領域21B、21Ba、21Bb、21Bc)のそれぞれの形状を、円形状または多角形状にする。このことで、第1印刷領域21B、21Ba、21Bb、21Bcの形状に応じて、様々な種類の触感を得ることができる。
【0121】
第3実施形態では、第1印刷領域21Bの形状は、同じであった。しかしながら、
図20に示すように、複数の第1印刷領域21Bdは、形状が異なっていてもよい。
【0122】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態について説明する。
図21は、他の実施形態に係る第2印刷層12Cから抽出した抽出領域30を示す平面図である。
図21に示すように、第2印刷層12Cの第1印刷領域21Caにおける第1突起25の配列方向D21と、第2印刷層12Cの第2印刷領域22Caにおける第2突起26の配列方向D22とは、異なっていてもよい。
図21では、第1突起25の配列方向D21は、第1方向D11から45度傾いた方向である。第2突起26の配列方向D22は、第1方向D11である。
【0123】
図22は、他の実施形態に係る印刷物5Cの断面図である。
図22に示すように、印刷物5Cにおける第2印刷層12Cの第1印刷領域21Cbにおける第1突起25の高さH11と、印刷物5Cにおける第2印刷層12Cの第2印刷領域22Cbにおける第2突起26の高さH12とが異なっていてもよい。
図22では、第1突起25の高さH11は、第2突起26の高さH12よりも低い。ただし、第1突起25の高さH11は、第2突起26の高さH12よりも高くてもよい。
【0124】
上記各実施形態では、第2印刷層における印刷領域の種類は、第1印刷領域と第2印刷領域の2種類であった。しかしながら、第2印刷層における印刷領域の種類は、3種類以上であってもよい。
図23は、他の実施形態に係る第2印刷層12Cから抽出した抽出領域30を示す平面図である。例えば
図23に示すように、第2印刷層12Cは、第1印刷領域21Ccと、第2印刷領域22Ccと、第3印刷領域23とを備えており、3つの印刷領域から構成されている。第1印刷領域21Ccは、複数の第1突起25(
図7参照)を有し、第2印刷領域22Ccは、複数の第2突起26(
図7参照)を有している。ここでは、図示は省略するが、第3印刷領域23は、複数の第3突起を有している。
【0125】
ここでは、第3印刷領域23の第3突起の大きさ、高さ、平面形状、配列間隔、配列方向のうち何れか1つ以上は、第1印刷領域21Ccの第1突起25の大きさ、高さH11、平面形状、配列間隔L21、配列方向D21と異なり、かつ、第2印刷領域22Ccの第2突起26の大きさ、高さH12、平面形状、配列間隔L22、配列方向D22と異なるように構成されている。
【0126】
上記各実施形態では、第1印刷領域の第1突起25と、第2印刷領域の第2突起26とは、規則的に配列されていた。しかしながら、第1突起25または第2突起26は、ランダムに不規則に配置されていてもよい。
図24は、他の実施形態に係る第2印刷層12Cから抽出した抽出領域30を示す平面図である。例えば
図24に示すように、第2印刷層12Cの第1印刷領域21Cdにおいて第1突起25は、第1方向D11および第2方向D12に沿って等間隔で配列され、規則的に並んでいる。一方、第2印刷層12Cの第2印刷領域22Cdにおいて第2突起26は、ランダムに配置されている。すなわち、第2突起26は、不規則に配置されており、隣り合う第2突起26の間隔は、異なっている。各第2印刷領域22Cdに配置される第2突起26の数は、異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0127】
上記各実施形態では、第2印刷層12などは、クリアインクを媒体10に吐出することで、クリアインクによって形成されていた。すなわち、第2印刷層12などの第1突起25および第2突起26は、クリアインクによって形成されていた。しかしながら、第2印刷層12は、クリアインクおよびカラーインクを吐出することで、クリアインクとカラーインクとによって形成されていてもよい。制御装置160は、媒体10にクリアインクおよびカラーインクを吐出することで第2印刷層12を印刷するように、インクヘッド122および移動機構150の制御を行ってもよい。すなわち、第2印刷層12の第1突起25および第2突起26は、クリアインクおよびカラーインクによって形成されてもよい。第2印刷層12を形成するカラーインクは、例えば第2印刷層12と重なる第1印刷層11で使用されたカラーインクと同じ色のインクであってもよい。
【0128】
更に、第2印刷層12は、クリアインクを吐出せずに、カラーインクを吐出することで、カラーインクによって形成されてもよい。すなわち、第2印刷層12などの第1突起25および第2突起26は、クリアインクによって形成されずに、カラーインクによって形成されてもよい。制御装置160は、媒体10にカラーインクを吐出することで第2印刷層12を印刷するように、インクヘッド122および移動機構150の制御を行ってもよい。
【0129】
このように、第1突起25および第2突起26をクリアインクおよびカラーインクで形成することで、第1突起25および第2突起26を、第1印刷層11で使用されたカラーインクと同じ色のインクを使用して形成させることができる。よって、印刷物5の表面を目視したとき、第1突起25および第2突起26を見難くすることができる。
【符号の説明】
【0130】
5 印刷物
10 媒体
11 第1印刷層
12 第2印刷層
21 第1印刷領域
22 第2印刷領域
30 抽出領域
100 プリンタ
122 インクヘッド
140 支持台
150 移動機構
160 制御装置